.


マスター:扇風気 周
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
形態:
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/11/26


みんなの思い出



オープニング

 難しいことはよくわからん。

 でもこれだけはわかる。

「要するに、暴れてくればいいンでしょう?」





 バカというのはわからないことをわからないままにしているからバカなのである。

 だが槍のように馬鹿正直で真っ直ぐなバカの勢いは時に天を貫く。

 ――かもしれない。




「俺たちはゲートをたくさん開く。邪魔する奴から騎士団総出で守る。そういうことでしょう?」

 リネリアの従士、ロベル=リヴルに問われたバルシークは「まぁ、そうだな」と頷いた。

「で、守るのは性に合わないだろうから、こいつを連れて俺に暴れてこいってワケだ」

 ロベルはリネリアから与えられた大型サーバント・青龍をポンと叩いて笑う。

「……一人で大丈夫っすかね?」

 余裕の表情で語るロベルに反して、上司であるリネリアは浮かない顔をしている。
 言われたロベルがギロリと睨み返す。うっ、とリネリアが気持ち後ずさる。
 頼りない上司に代わって「ロベル」とバルシークが名前を呼んで制した。

「目的はあくまで陽動だ。撃退士たちの戦力を分散させる。ちゃんと無理せず帰ってこい」
「わぁってますよ。重傷で肝心なときにいねぇ、なんてのは俺だってゴメンです」
「わかってるならいい。行ってこい」

 ロベルは槍を担いで青龍を駆り、空へ飛び立っていく

「本当に大丈夫っすかねぇ……」

 リネリアはまだ心配していた。

「戦うたびに大怪我して戻ってくるんすよ、あの子」
「そのたびに強くなってはいるみたいだがな」
「そうなんすけどー……あーっ、でも心配っす! 心配なんすー!!」
「じゃあリネリア、お前も行くか?」
「い、いやぁ……それだけは絶対にすんな! って念を押されてるんすよね……」

 ――どうせアンタはあの人(=バル)の傍にいてぇんだろ。

 と言われたのはこの場において伏せておく。
 リネリアは「うーっ、うーっ……」と唸る。部下に見抜かれた恥ずかしさと情けなさと心配が相まってひどく落ち着かない。

「そんなに心配しなくても戻ってはくるだろう」

 雛には違いないが、羽根と牙を持つ猛禽類だ。
 ――仮に追い詰められても反撃特化の目を駆使すれば撤退は可能だろう。

(……負傷の程度は撃退士たちの腕次第、かもしれんがな)


 ロベルが陣取ったのは、放棄された巨大な鉄塔がある敷地だった。
 かつて高知の通信を支えていた電波発信塔である。

 雨が降りしきる中、遥か上空には青龍を滞空させている。
 ロベル自身は槍を担いで鉄塔の足元に立っている。

 ここに来るまでにさんざん街を荒らしてきた。
 まもなく撃退士たちがやってくるだろう。

「……あいつらとやるのも三度目か」

 最初は慢心してこっぴどく敗走した。
 二度目も重体をくらった。

「そろそろ俺が勝ってもいい頃なんじゃねーか?」

 ロベルの役割は囮に過ぎないが、負けて帰ってこいとは言われていない。

 慢心もなく、臆病もなく。
 ロベル=リヴルは静かに自身を育てた好敵手たちとの再来を待つ。


リプレイ本文

「……来たな」

 雨の中、敵の到来を待っていたロベルは不敵に微笑む。
 撃退士たちの姿が見えたのだ。四本の鉄塔が作るリングの手前で立ち止まる。

「やぁ」とノスト・クローバー(jb7527)が微笑んだ。

「リヴル君に三度会えるとは、ね」
「同感だ。前回受けた屈辱、そっくり返させてもらうぜ」

 二人が話をしている間に御堂・玲獅(ja0388)は生命探知の網を周囲に張り巡らせる。

「……何もいません。単騎のようです」

 最低でもロベルの相棒、青龍がいると考えていたが空振りのようだ。他の伏兵の気配もない。

「今はいないとしても、近くにいる可能性は高いと思うね。彼らは互いを思い遣っている節がある。リヴル君一人で動くことはないだろう」
「承知しました。増援があればすぐに知らせます」

 ノストと御堂の会話は小声で行われている。ロベルには届いていない。
 その証拠に、ロベルは御堂をはじめとした他の面々の様子を窺っている。

「また知らない顔がいやがるな。そこの男は元軍人か?」

 騎士団に通ずる気配を感じたのか、ロベルは島津 忍(jb5776)に目を留めていた。
 指名された島津はフッと笑った。

「戦うたびに強く、か。ならば話は早い。覚えられぬ技を使う必要もない。覚えられぬ体とすればよい」

 ロベルに関する報告書には目を通している。彼の敗因は甘え――いや、持てる者ゆえの慢心か。ロベルは強いから弱いのだ。
 今回で終わりにすればよい、という思考は戸蔵 悠市(jb5251)も抱いている。

「……会いたかったぜ、竜使い。出しな。貴様の竜の羽根、俺が折ってやる!」

 挑発された戸蔵は言葉を返さない。代わりに、皇・B・上総(jb9372)が余裕たっぷりに笑っていた。

「なるほどなるほど、聞いた通りの傲慢っぷり」

 猫口で、とても楽しそうだった。

「さてさて、心を折るのはなかなに得意とするところなんだよぅ。たのしみだっ!」

 ゴロゴロゴロ、と頭上で雷鳴が唸っていた。


 一番はじめにリングへ上がったのは島津だった。

「必要であれば自身を巻き添えにして良い。遠慮はいらない」

 味方に囁き、両手を後ろに組んだ状態で堂々とロベルへ接近する。
 戸蔵もスレイプニルを召喚させ、島津と共に前方へ配置させた。

「三度目の正直、といきたいところだな。捕縛が最善手、そうでなければ……」

 討つ。意図を汲み取った竜が喉を鳴らして唸った。
 島津、スレイプニル、そして御堂の三人が緩やかに接近していく。

「……正面か」

 ロベルは罠を警戒して動かない。

「ふむ」

 島津は一考した後、口を開く。

「天使よ。聞こえているか? 目は見えているか? ――なら。慢心が過ぎるのではないか?」
「……あァ?」
「程度が知れるぞ。高らかに聞こえた天使の騎士団。その末席を汚すつもりか? ならば愚鈍と言わざるを得ん」

 島津が言い切ると同時にロベルの刺突が飛んできた。御堂が代わりに受け止める。白蛇の盾とロベルの槍がせめぎ合い、揺れている。

「良いだろう、経験に生きる天使の一撃。確かに頂いた。が、焦るなよ若造。優先順位を間違えてはいないか?」
「それは、たとえば俺の後ろで姿を隠している奴を倒せってことか?」

 ロベルの背後で景色が歪む。
 前回の戦いで不意打ちを成功させたエルネスタ・ミルドレッド(jb6035)の蜃気楼は早々に見破られた。

「やっぱりバレてるのね」
「あたりめーだ! 同じやり方が二度通用すると思ってンじゃねぇ!」

 ロベルが槍を振り回し、御堂を盾ごと後退させた。エルネスタへ方向転換、猛進する。だがロベルの側面に光が舞う。光玉による魔法攻撃だ。着弾する。

「ぐっ!?」

 攻撃を放った御堂が「よし」と言わんばかりに頷いた。ロベルの勢いが止まる。
 好機と見た撃退士たちが一斉に踏み込む。ロベルの前方からエルネスタ、後方から島津、左方からスレイプニル。舌打ちしたロベルが唯一空いていた右方へ跳んだ。その道を塞ぐように皇がライトニングで狙い打つ。

「にしし、まずは小手調べさね」
「てめぇ!」

 ロベルが歯を軋ませる間に島津が中距離で両手を振るった。指の先から伸びている糸刃が宙できらめき、ロベルの足を狙う。機動力を削ごうという狙いだが――

「舐めンな!」

 槍を一閃、糸が振り払われる。
 島津に続いて力を溜めていたスレイプニルも動く。弓矢を引き絞るように持ち上げていた頭をロベルに突き出し、ブレスを吐き出す。
 ロベルはその場に留まり、ブレスが収まるまで耐えた。そしてブレスの終わり際、誰かが踏み込んでくるのを察知して遮二無二槍を突き出した。

「そうくると思っていたわ」

 エルネスタの槍がロベルの刺突を捌き、逆に返し刃で肉を抉る。

「雑魚がァ!」

 ロベルが態勢を整える。エルネスタは逃げない。

「さて、どこまで通用するのか……」

 一度、二度、一瞬のうちに数度、両者が撃ち合う。
 互いに速度自慢の回避自慢だ。今はロベルが攻めてエルネスタが守勢に回り、凌いでいる。
 地力はロベルが上だが、エルネスタは前回の観察結果を元に動きを予測している。ロベルが攻めきれず、エルネスタのカウンターが三度に一度の割合でわずかに届く。

「それは俺の真似事か? 前にヤラれたときの恐怖を忘れたか!?」
「あなたの方が上なのはわかってるわ。切り札の目も覚えてる。でも怖がっても仕方ないでしょう?」

 紙一重の攻防だ。ひとつでも予測を違えば致命傷を負う。それでもエルネスタは退かない。当人に自覚はないが、死線ギリギリの舞踏を楽しむような笑みが浮かんでいた。

 斬り結んでいると再び皇の雷が落ちてくる。

「ちっ……」

 致命傷にはならないものの、ロベルは焦れる。
 だが気を逸らした瞬間、ハッと気付く。
 ――竜がいない。
 危機を察したロベルが慌てて頭上へ跳び上がる。足元でガチンッ! と牙が鳴った。あと一秒遅ければスレイプニルに翼を噛まれていた。

「空に逃げれば安心――ってわけでもないんだよ」

 鉄塔の向こう側から声がした。ノストの声だ。鉄塔をすり抜け、魔法書を片手に姿を表す。
 しゅぱっ!! とロベルの頬が切れた。

「っ、風の刃かっ!」
「すぐに見抜くとは……ふふっ、成長している姿を見ると嬉しいと言ったら不謹慎かな?」

 ノストは中距離を維持したまま鉄塔から鉄塔へ移動する。

「君が成長しているように俺も成長している。負けないよ。君には落ちてもらう」

 真空の刃が再び連続で放たれる。

「そんな遅ェ攻撃に何度も当たるかよ!」
「君は命中も回避も厄介だね」

 ロベルが宙を舞い、ノストの攻撃をやり過ごす。回避行動を取りつつ、ロベルは「何が狙いだ?」と思考を巡らせた。
「落ちてもらう」と言った割りには攻撃が軽すぎる。
 その疑念に応えるが如く、別の風が吹いた。
 かつての戦い同様、ロベルを地上に叩き落とすべく、スレイプニルが空中にいる。

「ぶっ殺す!」

 屈辱を晴らすため、ロベルは竜に挑む。

「御堂!」

 戸蔵の合図でスキルが発動する。輝く光纏が御堂の手中で鎖状に練り込まれ、即座に顕現する。ロベル目掛けて投擲された。鎖は見事、ロベルの片足に絡み付く。が――

「しゃらくせぇぇぇええ!!」

 歯を剥いたロベルが強引にスレイプニルに迫る。鎖に引っ張られて距離が足りない――ならば、と限界まで突き出された槍がスレイプニルを捉える。
 ガリッ、と嫌な音がした。竜の皮一枚が削れた。スレイプニルが口を開ける。また噛まれる、と考えたロベルが距離を取る。

「いや、これは……!?」

 ロベルが狼狽する。スレイプニルの挙動が今まで違う。

「そこはまだ届く――この技は披露した事がなかったか?」

 地上で戸蔵がクールに呟く。スレイプニルが翼を羽ばたかせ、鉄をも切り裂く強力な真空波を放った。

「……今のを避けるか」

 戸蔵の言う通り、ロベルは間一髪のところで急降下していた。

「御堂、もう一度だ」
「えぇ、心得てます」

 星の鎖がもう一度放たれる。急降下していたロベルが今度は急上昇する。

「さすがだ――しかし惜しい。今度は鎖の方が囮だ」

 高度を上げた先にはスレイプニルがいる。身体をくるりと回転させて放った尾撃がロベルを叩き落とした。
 叩きつけられたロベルが地面を転がり、瞬時に立ち直る。

「くっ、そがあっっ!」

 ロベルが怒りを露わに戸蔵へ突っ込む。無論、そばにいる御堂が無視するはずがない。

「どけ、女ァ!」

 開戦時と同じく、ロベルと御堂が再びせめぎ合う。ロベルの突破は叶わない。防ぐことに関してはロベルも含め、御堂を上回る人物はこの場にいない。冷静さを失って大振りになった今、殊更に差は開いている。

「ほいっ、隙あり」

 皇がまた雷を落とした。

「くそっ、またかよ!」

 大きなダメージではないのが余計にロベルを苛立たせる。

「さっきからなんなん――どわっ!?」

 ぶおんっ、と少し間の抜けた風がロベルの頬を掠めた。メリケンサック風に腕輪を装着した戸蔵の拳だった。

「……避けるとは、さすがだな」
「なんで殴りに来やがった!?」

 言っている間に島津とエルネストが押し寄せる。旗色悪し、と見たロベルが不本意ながら後退する。

「なるほどねぃ……。成長していると言ってもこの程度か」
「……あァ?」

 ロベルが皇に顔を向ける。

「元々慢心が過ぎる者だ。変わったように見えて、その実根っこは変わらぬものさ。聞きかじったキミの人となりと実際見た行動から察するに……キミは勝ち続けないと自分を維持できない人種さね」
「……てめぇの口も傲慢に聞こえるがな」
「私の場合は”これが当然の姿”なのだよ。そしておそらくキミもそうなりたい。そのために必勝の目があるのだろう? 使わないのかね?」

 皇が口上を述べている間に戸蔵がヒーリングブレスでスレイプニルを回復している。
 御堂も仲間の体力を回復していた。

「安い挑発に回復……迎撃準備は万端ってか。へっ、おもしれェ。だったら使ってやる」

 ロベルが眼帯を外す。瞳孔が灼熱色に輝く。

「来やがれ! まとめて畳んでやる!」


 ロベルが切り札を使用した瞬間、撃退士たちは同時に飛び出した。

「よし! どいつから沈みた……い?」

 ロベルが呆けて、固まる。
 確かに撃退士たちは飛び出した。だが全員ロベルから離れていく。
 御堂と戸蔵、島津の三人は一緒だが、エルネスタと皇は別々の方向へ駆け出している。
 ノストの姿も見えない。
 一番遠くまで逃げていた皇が叫ぶ。

「反撃確定の場に飛び込むバカがいるかね!」

 ロベルは青ざめる。単純な策だが、効果的だ。
 どうする――目が開いているうちに全力飛行で全体に攻撃するか? だが距離が離れ過ぎている。今も効果時間が過ぎていく。迷っている暇はない。

 ひとまず人数が多い島津たちの方へ向けて跳んだ。羽根は使っていない。でも一瞬で追い付く。
 だがそこには御堂がいる。盾が防ぐ。
 今のロベルに周囲を警戒する余裕はない。島津のワイヤーが首に巻き付く。

「がっ!?」

 見えていなければ反撃はできない。視界から外れるように高く跳躍していた島津が脳天に踵落としを決める。ふらりとロベルがよろめく。次いで、島津はロベルを背後から抱え上げる。飯綱落としの構えだ。

「ざっけるなぁぁ!」

 見えていなくても場所が分かれば反撃できる。ロベルが島津を振り回し、宙へ放り投げる。そのまま尋常ならざる速度で槍を放ち、突き刺し、引き抜く。ごふっ、と島津が血を吐いた。
 ここまで約十秒。少しでも時間を稼ぐためにノストが空中から魔法攻撃を放つ。全て避けられる。
 ロベルの近くには御堂と戸蔵がいる。だが御堂を突破するのは難しい。
 ならば、とロベルは方向を変える。

「散々コケにしてくれたな! 目が開いているうちにてめぇだけは殺る!」

 狙われたのは皇だ。
 ずいぶん遠くまで逃げていたが、一瞬で距離を詰められた。接近された皇の顔色に恐怖は――ない。

「……雷にも種類があるのは知っているかね? 側撃雷という、直撃雷のすぐ傍で起こる、被雷のことなん、だが」

 槍で腹を貫かれた皇はそれでも飄々と語り、

「ちなみにこれは……直撃雷だ」

 怒りのせいで深く突き刺した。深すぎた。故にロベルは避けられない。

「がっ、あああ!?」

 皇に触れられたロベルに電流が走る。
 普通ならば耐えられる電撃のはずだが、今は水に濡れている。

「……こんな天気なのに、のこのこと電撃使いに近づくのがいかんのだよ……」
「て、めぇ……」

 身体が痺れて動かない。約二十五秒……ロベルの片目から光が消える。

「っ! 増援です!」

 御堂が叫ぶ。
 空に龍の影が見えた。


「回収はさせないよ」

 ノストが頭上に向けて風刃を乱舞させる。
 青龍があらん限りの力で吼えると雨が腐り始めた。スレイプニルも高度を上げて空へ咆哮する。
 龍と竜、風と雨がぶつかる壮大な空中戦が展開される。

 地上では御堂が全速力で皇に駆け寄っていた。

「ロン……!」

 スタンから回復したロベルが空へ飛ぶ。上昇する勢いが空中でガクンッ! と落ちた。

「もう少し遊んで欲しいのだけど、もう帰るのかしら?」

 光纏の鞭がロベルの片足に巻き付いている。陽光の翼を展開したエルネスタの追撃だ。ロベルは槍で束縛を断ち切ったが、間髪入れずにワイヤーと雷撃が飛んできた。

「なっ!?」

 重傷を負わせたはずの島津と皇が復活している。御堂の功績だ。

「壊すだけが撃退士の技ではありません」

 島津のワイヤーがロベルの片手を拘束している。御堂の蒼海布槍も同じ箇所に巻き付いてきた。
 空中と地上の間で綱引きが始まる。ワイヤーは拘束用の武器ではないが、御堂の布は強度が高い。簡単には振り払えない。

「このまま捕縛させてもらうぞ!」

 島津の発言でロベルが察する。撃退士の目的は殺すことではなく、捕える方にあるのだ。

 頭上で青龍が再び吼えた。雨に血が混じっている。風刃の嵐を青龍が捨て身で突破してきている。

 なぜそこまでするのか。
「ロベルを助けたいから」というのもあるが、見ているのはその先だろう。
 もしもロベルが捕まったら何を引き替えにしてでも助けるバカが居る。部下を放っておけないお人好しがいる。ロベルの代わりに死んでもいいと思う可能性だってあるかもしれない。

「ふざ、けるなよ……!」

 なんとしてでも逃げなければいけない。
 だが片腕が拘束されている。どうする。

 ――考えるより先に、身体が動いた。


 ……雨が降っている。
 腐った水ではなく、普通の雨だ。

「やられたな」

 戸蔵が青龍が飛び去った方角を見つめている。
 地上へ下りてきたノストは薄く笑う。

「まさか、ここまでするとはね」

 ノストは地面から何かを拾い上げた。……ロベルの片腕だ。

「腕を捨てて飛ぶなんて――ね」

 自らの槍で片腕を切り落として逃げる。言うのは容易いが、相当な覚悟がなければできない行動だ。

「思えば最初に出会ったときもそうだったな。生き延びると決めたとき、あの天使は野生を剥き出しにする。目よりも、あの気性が切り札なのかもしれん」
「なるほど。まったく、しぶとい子だね。でも少し……楽しいんだ」

 戸蔵の分析にノストは頷き、笑みを深めていた。


 捕獲は成らず。
 だがロベルも青龍も重傷だ。撃退士たちの勝利である。




依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 天啓煌き・皇・B・上総(jb9372)
重体: −
面白かった!:10人

サンドイッチ神・
御堂・玲獅(ja0388)

卒業 女 アストラルヴァンガード
剣想を伝えし者・
戸蔵 悠市 (jb5251)

卒業 男 バハムートテイマー
新世界への扉・
島津 忍(jb5776)

大学部8年12組 男 鬼道忍軍
燐光の紅・
エルネスタ・ミルドレッド(jb6035)

大学部5年235組 女 アカシックレコーダー:タイプB
【名無輝】輝風の送り手・
ノスト・クローバー(jb7527)

大学部7年299組 男 アカシックレコーダー:タイプB
天啓煌き・
皇・B・上総(jb9372)

高等部3年30組 女 ダアト