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マスター:サラサ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/01/21


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。


 新しい一年が始まっても、彼の日課は変わらない。
 まるで変わることを拒むように今日もそこにあった――

「……いつもより、ぼろくない?」
 大丈夫? といつもの図書館の一角で突っ伏していた月見里 叶(jz0078)の顔を覗き込んだ友人は眉を寄せる。
 今この状態の叶を一言で言い表せと言うのなら、有り体だが……ぼ、ぼろ雑巾? とか……幽体離脱後?

「ふ……ちょっと、な……」
 意味ありげに口角を引き上げて呟き、遠くを見て黄昏てみても、所詮叶なので恰好は付かない。

「おみくじがさ……」
 ひらりと机の上に置いた長方形の紙。
 印字されている文字に目を見張る。
「お、おぉー……大大凶凶……」
 明らかなるプリントミスだ。が、こんなものを手にした衝撃は想像に難くない。
「た、たかがおみくじだろ?」
 慰める声も震える(注:決して笑いを堪えてではない)
「あぁ、たかが神籤だ……」

 そう、そのたかが神籤に振り回された。
 悪夢は初詣の帰りから始まる。


「いや、ないない。大大凶凶とか、何の冗談だよ……。ある意味宝くじレベルで……」
 自分で言っておきながら、それなら、宝くじが当たれば良かったのに……と自己突っ込み。
「えぇー……と、何々……」

『何をやっても上手く運ぶことはない。人生の試練と思って受け止めよ』
「……こえぇ……」

『そなたが歩けば、棒に躓き側にあった石段を踏み外し、上手く着地したと思ったところで、バナナの皮が落ちていて、一番下まで――』

 妙に詳細に書かれている神籤だなと思った矢先、神木に足を引っかけ、おとととと……。

 ――ぼろっ☆
 まさか記載されているとおりになろうとは……神様侮れない。
「ふ、ふふ……今どきバナナの皮とか……俺、撃退士で良かったな。一般人だったら、足の一本や二本逝ってたかもしれない。ああ、足は二本しかなかったんだった」

 苦し紛れの自己突っ込みも切ない。
 そして、大大凶凶の不運はこれでは終わらない。
 ことごとく裏切らない形で災難は降りかかり、極めつけは……。

『勉学に励めば、矢の雨に見まわれ――』
 ようやく纏め上げた資料を満足げに両腕に抱えて歩きながら、気にはなっていた神籤の内容を思い出す。
「流石に矢はないだろうから、だいじょ、ぅ、ぶーーっ……!!」

 風を切る音がして振り返れば、鼻先を薄紫色の矢が光の軌跡を残し掠めていく。

「エ、エナジーアロー……?」
 つぅ……と、こめかみから冷や汗が落ちる。
 遠くから、ごめんなさぁぁい! という声が響き、気をつけろよと答える暇もなく、

――どすっ☆
 足下に矢。
――どすっ☆どどどど……っ!
「嘘だろーーーっ!」
 矢、矢、矢、避けるために右へ左へ、何本か刺さった気がする。痛い。
 肩で息をし始めたころ、矢の嵐は収まって……両腕に抱えていたファイルも中身も散乱。がくりと地面にひざをつくと同時に、ひらりと目の前に神籤が落ちた。
『昨夜はみぞれが降りました、まる』
「――って、日記かよ! みぞれ……あぁっ!」
 しっとりと濡れそぼった丹精込めた資料の山は七色に染まっていました、とさ――


「――という夢を見たんだ、もうどこからどこまでが、夢だったのか、現実に起こったのか、俺にはもう、もう……」

 そのままぐったりと机と仲良くなる叶の肩を「どんまい☆」と、そっと叩いた。


リプレイ本文

 どこからが夢なのかそれは貴方にしか分からない――


「叶先輩…そんなに体を張ったネタを披露しなくても…」
 笑いをかみ殺した表情を叶へ向けるのは一条常盤(ja8160
「常盤は良いことあると良いな」
「私は大丈夫ですよ! 任せて下さい」

 そういって力強く笑ったのはいつだったろう?
 くしゃり
 手の中で三枚の長方形の紙が皺を掴む。隙間から見える文字は『凶』
 常盤は愕然と己の行いを振り返った。

 参道は左側の隅を歩いた。手水もしっかり…そして、二礼二拍手
(家内安全、無病息災、恋愛成…)
「はっ! 邪念が…!」

 首を振った時には遅かったのだ。
「もしや…天啓」
 三回連続凶等あろうはずもない。そう、もしもそれが存在するとすれば――その昔、明智光秀が本能寺の変を起こす前に引いたお神籤は三連続凶だったという逸話があり…つまり!
「時は今…敵は実家にあり!」
 俯いていた顔を上げた時の常盤に迷いはなかった。

 実家に里帰り(訂正線)乗り込む様は討ち入りのよう。
 前髪で隠した額の傷に触れ、重々しく首肯。引き違い戸に手を掛けて
「たのもー!」
 積年の『おでこの恨み』を晴らすべく父に下克上を試みる。

 高い位置で結い上げた髪がさらりと元の位置に戻ると共に、風を切った木刀は腰の位置へと収まった。
 背後で、道場の床板へと膝を突く音がいやに大きく響く。
 初一本を獲得した晴れ晴れしさの後に襲ってくるものは――

「先生!」
「…おっと、大丈夫ですか?」
 戻ってくるのはやはり此処。よよよ…と倒れこむ常盤を支えたのは常盤楓(jz0106)だ。
「私、余命三日になってしまいました…死ぬ前に一目先生に会いたくてですね…」
 弱々しげな声で告げられ、楓は美眉を不安げに寄せる。
「こ、これを…」
 凶神籤を握りしめた手を差し出し事情を説明。聞く楓が目に留めたのは凶の文字ではなく…
 勝負運:下克上叶う
 健康運:殺しても死なない

「先生、今生の別れにお願いがあります」
 常盤は至極真剣な姿で楓の胸に当てた手を握りしめた。
「…キスしていいですか?……ほっぺ」
 言った! 楓の反応を見る勇気がなく逡巡すれば
「なるほど…では、私が…」
「え――」
 落ちてくる影。
 早鐘の様に高鳴る胸は早すぎて痛い。
 此処は目を閉じろと自分に叫ぶが見開き、先生の睫毛長いなーとか観察。
 頬に吐息がかかる瞬間強く両目を閉じて、暖かい感触が頬に触れ――

「――…退いてください」
 常盤は盛大な溜息と共に顔を覗き込んでいた愛犬の顔を押し退ける。そして膝を抱え込み「何という夢を……」羞恥心と共に襲ってくる絶望。
 その日一日、素振りに専念する常盤の姿があった。


 自分を動物で例えるなら、ウサギだろうとは思っていた――

 紙擦れの音と共に飛び込んできた文字は『吉凶半々』
『あなたはこのむすがたになれることでせう』
『さまざまなものからちかづかれることでせう』
 星杜 藤花(ja0292)は小さく首を傾げ、好む姿に行き当たると表情が明るくなる。期待を胸に鏡の前へ。
 だが…写ったのはぬいぐるみ的な…藤花はぱちくりと大きく瞬きを一回。
 茶色のロップイヤーが一匹ちょこんと鎮座している。

(ど、どうしてこんなことに…)
 確実に目の前には黒髪ストレート。市松人形のような自分を想像していたのに。
 短い前足で頬をふにっ☆ふわっと沈む感触の奥に潜む肉級の弾力。間違いなくウサギだ。
(と、とりあえず、気を取り直して!)
 養い子の面倒を見なくてはいけない、ここで気を取られている間に泣いているかもしれない。

「――…♪」
 泣いてなかった。
 どうやってあやせば良いのかと言う不安に、おろおろと鼻をスピスピ鳴らしているのを――寧ろ喜んでいる。
 そして、小さな手のひらは遠慮なしに、もっふもふ☆
(ああっ、もふもふしないでっ)

 半ば逃げるように、家を後にした藤花。
 視線を感じる。何かが見ている。
 藤花(ウサギ)は、恐る恐る背後を振り返った。犯人は近所の半野良猫たちだ。向けられた瞳に、たらりとこめかみあたりに冷たいものが滑り降りた。

(ここは旦那様に連絡…)
 もふもふ…体をまさぐってみても…携帯電話を持っている筈がない。

「ったく…」
 そこへ知った声が耳に飛び込んできた。
「なんで野良たちが集まってんの?」
 妙に気の立った猫たちに声を掛けたのは叶だ。叶が膝を落とすと共に腕に茶色の毛だまりが、ひし☆としがみ付く。
 刹那訪れる沈黙。
「――…」
「野良ウサギも居た」

(何か和む…)
 野良猫から救出すると一礼したウサギ。何か伝えたい事があるらしい。
 叶が持っていた折りたたみのキーボードを開けば藤花は器用にキーを叩く。そして、小さな画面に打ち出される文字で状況理解した。
「にゃーとか、わんの変わりに、なんとからびっと、かな?」

 暫らくすれば必ず戻る。そんな確信から、不毛な会話がなされた結果――

「わぁ…今日はなんだかご馳走だねー」
 食卓に並んだ沢山の藤花の手料理を眺めて、夫は頬を緩める。
 そんな夫に微笑み、腕に抱いた子どもの頬を撫で
「うさぎの語尾は『うさ』だと思います」
「…どうしたのー?」
「いえ、何でもありません」
 不思議そうに目を丸くした夫に、ふふっと藤花は微笑んだ。


 すれ違う人が振り返る。
 淡い桃色の地に舞う花々と同じ様に、ひらりと長い袖を翻し神社の鳥居を潜ったのはNicolas huit(ja2921
 女装趣味ではなく、あくまで可愛いから着るに過ぎない。そんなニコラは本日も和の正装『フリソデ』を身に纏いご満悦。

 両手で神籤箱を持ち、棒を引く。番号で受け取った紙を丁寧に開いた。
 その動きにあわせて首が徐々に傾き、完全に開ききったところで傾げる形になった。
「これは…おおき…だい、だいよし…えっと、多分、良いやつだな!」
 漢字力はまだまだ残念だが、運は良い。ニコラが引き当てた籤は『大吉』
 健康運:大きな病はなし
 失せ物:根気よく探せば見つかる
 等々
「おみくじって、むずかしい漢字がいっぱいのだね。んー……と、けんこうには気をつけてるから大丈夫のと思う…保健部だからな!」
 花の咲くような笑みに、それは関係ないのではなんてつっこめない。
「うせものは…無くし物のこと? んー、なくなるは困るな。根気よくー…」
 言いつつ本気で困ったように眉根を寄せる姿を見ると、その際は是非に手を貸そうと思ってしまう。そのまま読み進めたところで、ニコラの表情がじわじわと明るくなっていく。
「あ、これはわかるな! 筋肉の漢字です!」
 筋運:信ずれば叶う
 金運との、誤字や誤植でもなく筋運だ。
「信じれば叶うということは…今年は僕も沢山筋肉ができると! いうこと!」
 ぐぐっと拳を握り締める。
「ついに僕も! 筋肉で、2メートルの、強い男になれるということな!」
 ぱぁっと周りに花が咲いたような笑顔。
 大切に神籤を折り木の枝に結びつけながら熱心に祈る。将来の夢を具現化できるかどうかが掛かっているのだ。
(神様お願いします、僕、沢山神様のこと信じます…)
 めり……っ
 何かが軋むような音がした。
 枝に触れていたニコラの細腕が、むきむき……。
 どこからともなく効果音が、ゆあっしゃーっ☆とか聞こえてきそうだ。
 ばりばり……バリーン!
 飛び散る桃色の布。
 桜吹雪が舞い散る中のようだ。残った着物から覗く肉体は血管浮き立つ筋肉。それは音を立て更に成長。もうこれ以上は視覚的に『見せられないよ!』状態だ。
 ニコラのご満悦顔は心なしか世紀末救世主的な劇画タッチになっているような気がする――

 ちちち……
 今朝も朝日が眩しい。
「せちがらいよのなか、という事だったか…」
 いつもと変わらない自分の体に触れ、ニコラは嘆息した。


「先輩も初詣かな、一緒に行かない?」
「ああ、一人で行くのも切ないしな」
 主人を発見したワンコよろしく来崎 麻夜(jb0905)は、麻生 遊夜(ja1838)の元へと駆け寄った。
(先輩とお出かけだー!)
 の喜色が全身から溢れる麻夜を横目で見ながら、遊夜はバレないように小さく息を吐く。
(何か嫌な予感がするんだよなぁ…)
「先輩、どうかした?」
「いゃ、最近夢見が悪いんだよなぁ…って思い出してな」
「あー、夢は何かを暗示してるって言うよねぇ」
 人混みの所為にして麻夜は遊夜の手を取りぎゅぎゅーっと握り、くすりっ
「追われてたり、逃げたりが多いな。黒服やら、人食いネズミやら…果ては洪水、津波やらだ…」
 この辺は映画とかの影響だろうが…。そう続けて、がっくりと肩を落とす。
「気が逸ってたり、悩みがあったりするんじゃない?」
「あとは…目的地に着けないってのもあるな。行かなきゃいけないっていう強迫観念っぽいのがあるのに…」
「焦りもありそう。ストレス発散した方が良いかもだねぇ」
「所詮は夢だからな…だが、いい加減おさらばしたいところだなー」
 げんなりと言った風な遊夜の腕を「今日は大丈夫」とぐいと引っ張っる。
「お神籤あったよー」
 ちゃりーんっ♪小銭が落下する音。転がり出てきた紙を開く。
「んーと、ボクの…【大吉】だね。ふふっ望みが叶うだって」
「麻夜は…良い年になりそうで何よりだな。俺は【大凶】だ。艱難辛苦に絶えず、だってさ。今年も運はなさそうだ…」
 他にはと、読み上げる
「待ち人あり。手を離すこと無かれ、手を差し伸べれば運が広がる」
 なるほどと頷きつつ、麻夜は遊夜へと手を伸ばす。
「俺は、離れるべからず、見誤ることなか、れ……」
 カシャン。
「…今、カシャンって聞こえて…」
「あらら…取れないねぇ、これ」
 突如降って湧いた二人を繋ぐ手錠を見つめ、遊夜が手を持ち上げて短く唸る。麻夜は、その腕に引かれ挙手しつつ続きを読み、離れられない現状に役得だとくすくすと笑った。
「無理に離れた場合、あらゆる災いが降り掛かるだろう…って、ぅおい…ってて!」
 離れようとすれば頭に激痛が走り、遊夜はこめかみを押さえてその場にしゃがみ込む。
 麻夜はその隣りに膝を折りにんまりと微笑んだ。
「大丈夫。ボクには解消の方法もわかるよ」
 残念ながら、遊夜の神籤は大事なところが塗りつぶされていた為、これは麻夜に従うしかない。

「で、どうすんの?」
「ボクの望んだとおりに…」
 繋がれた手を、ぶんっと振り上げて即決♪
「デートに行こう!」

 商店街で屋台売りされていた肉まんを頬張る。
 溢れる肉汁が零れ落ちないように…外気が冷たい所為で、ふわりと上がった湯気が暖かく、立ち上る美味しそうな香りに食欲が湧く。
「温かくて美味しいよね」
 食べたら喉が乾く。そうなれば、やはり
「喫茶店だな、何か注文するように書いてあった」
「それは、カップルジュースとか?」
 一つのグラスにストロー二本のあれだろう。

 有難うございました。の声と共に店員の視線は、二人を繋ぐ鎖に釘付け。
「なんだか視線が痛いねぇ」
「そら、手錠だからなー」
 外れないんだ。どうしようもない。脱力気味の遊夜とは対照的に手錠を撫で愉快気な麻夜。

「ショッピングモール散策ってともあったし、行くか?」
 ここまできたら最後まで付き合うしかない。
 神籤に明記されていた通り提案した遊夜の言葉は予想以上に麻夜を喜ばせた。
 そのはしゃぎっぷりは、遊夜も目を見張る。
 神籤の結果は散々だが、家に帰るまでが試練とあったから、期限は決まっているし、何より
(ま、麻夜が嬉しそうだから良しとするかね)
 そう思った矢先。下着売場にまで引っ張り込まれそうになり焦った。頭痛とどちらを取るか真剣に悩んだ。

(しかし、噂になったら彼女が怖そうだ。信じてくれんだろうし、言い訳もできねぇよな…これ)
 思案しつつ歩いていると後ろへ引っ張られる。
 麻夜を振り返れば、アクセサリーのショーケース前で止まっていた。
「何、欲しいのか?」
 遊夜の問いに、さっきまで全て即答だった麻夜が遅疑逡巡する。ケースに写る気だるげな瞳は物言いたげに揺れるが、その瞳は遊夜を見ない。

「…欲しかったんだ、凄く」
 並んで歩く帰り道。二人の影は長く伸びた。

「――繋がったままでも、良かったんだけど、ね…」
 瞬きをすると見慣れた天井だった。
 ぽつと零した麻夜の声は喜びと切なさを孕む。
「うん、良い夢…だったよ」

 同じく目を覚ました遊夜は、ベッドの上で寝返りを打ち頭を抱えた。
「夢で良かった。色んな意味で…」


 日本の正月といえば御神籤。
 犬乃 さんぽ(ja1272)は、えいっと勢いよく一本神籤棒を引き、揃いの番号で手渡された紙を開く。
「えーっと、大…」
(今、大って見えた、わーい、大吉かな)
「だぃ……スキ?」
 読み上げ、頭の上に浮かんだ疑問符と共にかくり首を傾ける。大吉でも大凶でもなく『大スキ』
 スキの意味をさんぽが理解するよりも早く体感する。
 何故だか参拝客から、異様な空気を感じ取る。そして
「さんぽちゃんよ」
「犬乃さん」
 口々に名を呼ばれ、さんぽは背筋に冷たいものを感じながら
「どうして、ボクの名前を知ってるのかな?」
 じりじりと後退する。
 一歩下がれば一歩詰め寄られる。
(こ、これは…?)
 意味が分からない畏怖に駆られ、ぐるりと回れ右。脱兎の如く駆けだした。撃退士の足だ、追いつかれるはずはないと思っていた。
「さんぽちゃん、大好きだー」
「愛してる!」
(追いかけてくるの?!)
 どどどっと土埃が上がる。
「か、彼女いるもん!」
「大丈夫じゃ、わしゃその程度気にせん」
「そ、そうじゃなくて、おじいちゃん、ボク男だから…」
「性別なんて傷害だとは思わない!」
「えぇっ! みんなどうしちゃったのぉぉ」
 逃げるさんぽ。追いかける参拝客。
 参道を抜け鳥居を越えて、追いかけっこは商店街まで続く。

 ――ズザザッ
 滑り込むように店が並ぶ通りへ、威勢の良い呼び込みをしていた人も今夜の献立に悩んでいた主婦も。
「はわわっ!」
 道幅いっぱい人は群がり、一瞬でも足を緩めれば、あの人混みに飲み込まれることを考えるだけで恐ろしい。
「スキになって貰えるのは嬉しいけど、これはちょっと怖いもん」
 ぐすんっと鼻をすすり全力で…壁を走り、建物の上を駆け抜け、必死の逃走。

 ばたんっ☆
 やっとの思いで全員を撒き、部屋へ戻る。はぁはぁとあがった息を整えながら、ほっと一息。
 ずるずると膝から落ちるように座り込めば、ふと視線を感じた。その視線の先を追うように顔を上げていく。
 そこにあるのは神棚。神棚は普段閉まっているものだ。それが、僅かに開いて…その隙間から見つめる目が…
「神棚に、神棚に…」

 はぅあ! とばかりに飛び起きた。
 眠った時と同じ場所だ。さんぽは今学園を離れギアナ高地に修行にきている。そう、あんなに人が溢れるような場所ではない。
 ゆっくり息を吐き、くしゃりと髪をかきあげた。
「暫くまだ、人の居る所は行っちゃ駄目かな…」
 ぽつと呟き、錆びた刀を手繰り寄せ抱きしめて、小さく震えた――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
ヨーヨー美少女(♂)・
犬乃 さんぽ(ja1272)

大学部4年5組 男 鬼道忍軍
夜闇の眷属・
麻生 遊夜(ja1838)

大学部6年5組 男 インフィルトレイター
お洒落Boy・
Nicolas huit(ja2921)

大学部5年136組 男 アストラルヴァンガード
常盤先生FC名誉会員・
一条常盤(ja8160)

大学部4年117組 女 ルインズブレイド
夜闇の眷属・
来崎 麻夜(jb0905)

大学部2年42組 女 ナイトウォーカー