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マスター:サラサ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/03/07


みんなの思い出



オープニング

「――書けた」
 これ以上にない仕上がりだ。
 完璧・超完璧・超超完璧・超超超完ぺ……まぁ、良い。
 がたりと勢いよく立ち上がったのは、柏原小町。高等部三年。
 高く掲げられた腕の先にある封筒は――

「ああ、ラブレターやっと書けたの」
「ちょっ! あんまはっきりいわないでよっ」
 欠伸をかみ殺しつつあっさり口にした真由美に、小町は顔を真っ赤にして非難の目を向ける。
「ごめんごめん」
 ベッドの上で寝返りを打って、さして悪いとも思っていない態度で真由美は謝罪し
「バレンタインにでも渡すの?」
「バッ! 忘れてたわ。チョコレート、チョコレートを用意しないと。あと、あと、それからっ」

 がしりと寝ころんでいた真由美の肩を掴み、がつがつ揺らす。
「なななな、何? どど、ど」
 舌を噛まないようにするので必死だ。
「どうやって渡せば良いの?」
「そりゃ、本人呼び出して渡せばいいんじゃないの」
「果たし状」
「いや。あんたが書いたのはラブレター、恋文!」
 小町。これからの大仕事を前にかなり天パっている。


「ターゲット発見」
 立ち並ぶ教棟の一室を屋上から狙う者がいる。その怪しい陰に狙われたのは、高等部三年友坂雅也。柏原小町の思い人だ。

 そして事件は起きた。
「――いや、俺もぼんやりしてたんだ。でも、でもさっ! 射ることないと思わないか!」
 ばんっと机を弾く手が、びりっと痺れた。
「小町の奴、俺にどんな恨みがあるのか分からないけど」
「ご、ごめん。確かに一矢に託すとはいってたけど、本当に矢に託すと思わなかったから……」
 傷を負ったのは雅也。大して深くはないが、開いた窓ガラスから突然飛び込んできた矢に射ぬかれて……。
 自身の鮮血により、手紙はところどころしか解読できなかった(泣ける

「ぶら下がってたチョコだったらしきものは、見事に通りすがり奴が踏みつぶして行くし……」
 今度は叩いた手の上に額をすり付ける。
「あれから小町は口利かないし、目も合わせないし、俺が悪いのか、俺が何かしたのか?」
「ところでさ、手紙ってどの部分が解読できたの?」
 ぽつと訪ねた真由美の台詞に、雅也のぶつぶつとじたばたが止まり、腕の間から僅かに覗いていた外耳が赤く染まる。
「……あいつ、好きな奴が居るんだろ? 相談くらい乗ってやるのに……なにもあんな無茶しなくたって」
 吐いた溜息は重い。

 ―― ……なるほど。
 真由美は心の中で深く頷いた。
 この二人に小手先だけの何かは駄目だ。ものすごい微妙な感じでこれ以上ないくらいすれ違っている。
 もう、神業レベルだ。
「友坂ってさ、小町のこと好きなの?」
「っ!!」
「ああ、もう良いです。何もいわなくて……。今あんたの頭の上に生卵落としたら目玉焼きが出来そうよ」
 はぁ、溜息を重ねるのは真由美だ。
「友坂、ホワイトデーよ。というか、どんな形であれ貰ったものはお返ししないといけないんだから。そのときちゃんと自分の気持ちくらい伝えなさい」
 真由美の言葉に、ようやっと顔を上げた雅也は目をぱちくりと瞬かせる。
「決闘的な?」
「うん、私あんたたちは似たもの同士だと思うわ」
 この二人が上手くいったとして、間に入る自分がそのあとまた振り回されることになるだろうことは目に見えている……。
 目に見えているが、今のままこの二人がぎくしゃくしている方が嫌だし、噛み合っているのか居ないのかさっぱりな二人の会話を聞いているのも好きだったりする。

(やっぱり、上手くいって欲しい)
 真由美は心からそう思っていた――


リプレイ本文

●事前調査
 ほんの少し、寒さの和らいだこの頃。
 ――ピンポーン
 夕暮れ時響きわたるインターホン。
(恋愛か…今のとこ、縁がないなぁ)
 持参したおにぎりやサンドイッチの軽食を持ち直した森林(ja2378)は、玄関が開くのを待った。

 雅也のさして広くもない部屋に集まったのは、片霧 澄香(jb4494)・龍仙 樹(jb0212)・アスハ・ロットハール(ja8432)そして、森林の四人だ。
 部屋で過ごす時間が少ないのか、良く言えばこざっぱりした、悪く言えば何もない部屋だ。
 勉強道具すら載っていない机には
「これが例の矢文?」
 黒い染みが全体にこびりつき、かろうじて読める文字も万年筆で書かれていたため滲んでしまっている紙切れがおいてあった。
 それを弾いた澄香の言葉に雅也は眉根を寄せ、小さく溜息。そして首肯する。
 じーっと机上の紙をいろんな角度から覗き込みながら澄香は呟いた。
「……何語?」
 実は小町、象形文字的レベルの、とても個性的な文字を書く。
「え、だからコレは、好き、な、だろ……こっちに飛んで、いつか、聞いてみたいと……」
「愛だな」
「愛ですね」
 この文字が解読出来るとは――同じように覗き込んだアスハと樹の言葉に、雅也は瞬間湯沸かし器になった。
(人の色恋か……面白い『熱』が見れそうよねぇ)
 と楽しみにしていた澄香は、これが愛や恋の熱? というように便せんをつまみ上げてひらひらと泳がせる。
 理解するには難易度が高いかもしれない。

 中央にあるローテーブルには、軽食が並べられる。
「まあ、とりあえず。ただお邪魔するのも何なのでいろいろ持ってきました。皆さんでつまんでください〜」
 そして始まる座談会――主に恋バナ☆
「ですが、貴方に矢を射掛けてくるくらいです。貴方に好意があるのではないですか?」
「ぶっ! どうしてそうなるんですか」
 樹の言葉に全面否定だが、この際どうしてそうならないのか、の方を問いたいところだ。
「では、トモサカはどうなんだ。前情報では……」
「どうっていうか」
 ごにょごにょと顔を赤くして口ごもりながら、雅也はおにぎりに手を伸ばす。もちろん、森林は「あ、美味しい」と雅也が漏らした具材のチェックも忘れない。
「人を好きになる…なんて、いつどうなるか、分からんもの、だ」
 しみじみと口にしたアスハに雅也は
「アスハさんは」
「僕はもう結婚しているが……僕の時は、一目惚れのようなもの、だった」
 一目惚れ……と口の中で雅也は反芻する。
「俺は……いつだったかな」
 呟いて、じっと自身の膝頭を見つめてしまった。
「では、今度みんなで遊びに行く予定がありますし、一緒にいきませんか?」
 切り出した樹に顔を上げ
「場所、どこが良いですかね?」
「動物園…動物園が良いと思います」
 即答された場所に、四人は顔を見合わせて小さく頷いた。


 一方、柏原宅。
「その節はお世話になりました」
 ぺこりと折り目正しく腰を折った小町に氷雨 静(ja4221)は緩やかに微笑み「こちらこそ」とふんわり優雅に膝を折る。
「惜しかったですね……心臓を射抜けば、あるいは恋のキューピッドが舞い降りたかも」
 もの凄く真剣に告げた一条常盤(ja8160)は、冗談はおいておいてと続けた。
 冗談だったんですね。もの凄い真顔でしたけど。
「しかし、校内で矢を射るのは危険ですよ」
「ごめんなさい、今度からはちゃんと荷物の重さも考慮して」
 ――そこじゃない。と誰か突っ込め。
「まさか当たるとは思わなくて……」
「友坂様は怒っていらっしゃいませんよ?」
 すかさずフォローに入った静に、小町は顔をあげ、どうしてという風に首を傾げる。
「怪我をさせるつもりはなかったけど、結果的にさせてしまったし」
「大丈夫です。寧ろ柏原様のことを気に掛けていらっしゃるようです」
 ただ……と続ける静に小町釘付け。
「柏原様に友坂様とは別の意中の方がいらっしゃると誤解されているようですので」
「なぜ」
 最後まで聞けず問い返していた。しっかり、確実に好きの二文字くらいは認めたはずだ。目の前にいる静にだって、協力して貰って教えて貰って、素直な気持ちを書いたはずで、そこに疑う余地なんて……
「実はですね」
 そこで切り出したのは雪成 藤花(ja0292
 ゆっくりと丁寧に、手紙の経緯を説明すると、小町は目にも明らかに――Σあれ、魂抜けてる?!
「柏原先輩、しっかりしてください」
 がしりと小町の両肩を掴んでがくがくがく☆常盤さんそんなに揺らすと幽体離脱するから!
 そんな様子に藤花と静は笑みを零し改めて声を掛ける。
「またお手伝いさせていただきます。ですから、書き直してみてはどうでしょう?」
「え?」
「せっかく心を込めて書いたのです。思いをしっかり伝えましょう」
「想いを伝えること、形にすることそれが大事なんですから」
「いつでも恋する乙女の味方です」
「下書きなど、文章を何処かに残してないですか?」
「あ、ぅん! あるある…確か」
 ここにある種の一体感が生まれた。女の子同士って良いよね。
「あ」
 ここで、藤花の携帯電話が短く鳴り、雅也の好みの伝達が行われた。
「――手渡す機会にも恵まれそうですよ。明日は動物園へ行きましょう」

●動物園
 春の動物園はベビーラッシュで賑わっている。
「可愛いですねぇ」
「はい、可愛いです…」
 樹と静の視線の先にいるのは、カピバラ親子。もだもだしている姿が何とも愛嬌のあるネズミだ。
「……カシワバラ……どうして、僕の陰に隠れている」
「一番大きいので」
 動く柱ではないのだが。アスハは、楽しんでいるメンバーをつかず離れずの距離で見守るはずが、当人が何故かここにいる。
 遠巻きに樹と静を羨ましげに眺め、ちらちらと森林たちと歩いている雅也を見つめ、小さく溜息。
 この繰り返しだ。
 思った以上に、溝が深いというか、思いこみが激しい。 まぁ、矢文るくらいだから、普通の基準が難しいのも頷ける。
 仕方がないなと微笑んだアスハは
「一歩前進したんだ。その一歩を、無駄にするな……」
 ぽむりと背中を押して押し出すと、
「こちらですよ」
 と藤花が手招きする。小町は、アスハと藤花の間で遅疑逡巡したあと、小さく頷いてぱたぱたと駆けていった。
「今日が、良き日にならんこと、を……」
 去り際告げられたアスハの祈りがどうか届きますように……。

「静さん、龍仙さん……なかなか距離縮まりませんね〜」
 きりきりと動物の写真を納めていた使い捨てカメラのフィルムを巻きながら、森林はちらりと雅也を盗み見る。
 自分と話をしている時の雅也は、親しみやすく人好きのする人間に見えた。恋愛関係に疎い自分でも、恐らく小町もそういう人間性に惹かれたのだろうなと想像するくらいは出来る。
「友坂さんには、生まれていた誤解を解いたつもりですが、難しいみたいですね」
「お二人のお気持ちは明らかですのに」
 その証拠に本人たちは気がついているかどうか知らないが、二人ともちら見が激しい……傍で見ているものとしてはもどかしい限りだ。

「そういえば、柏原先輩の好きな動物ってなんですか? わたしはやっぱり犬でしょうか、マルチーズが飼いたいんです」
「え」
「お前は無理だよな。犬怖い系だし、小型犬は特に良く吠えるから怖い」
 刹那息を飲んだ風だった小町の台詞に、雅也がのっかる。
「べ、別にふわもこしたのだったら可愛いと思うよ」
「俺や真由美の後ろに隠れて眺めてるだけだけど」
「う、うるさいな」
 ぶすっと小町は頬を膨らませたものの、険悪感が生まれないのは二人がお互いを必要として思い合っている証拠だ。藤花はようやっと会話をした二人に胸をなで下した。

「ふれあい広場的なのないですかね?」
「……昼の前と、午後にあるな……」
 園内パンフレットをチェックしていたアスハが、その手元を覗き込んできた常盤に短く応える。
「なるほど、はっ!」
 頷くと同時に発見。
 常盤ホイホイがここにあった。
 ふれあい広場で解放されている小動物は、兎と大きなハムスター。子山羊などもいて、どれも大人しく温厚な動物ばかりだ。動くぬいぐるみといわれても頷ける程人にも慣れている。
「何ですかこのけしからんもふもふはー!」
 勢いは良いが、丁寧に兎を膝に抱き上げた常盤は鼻息荒く撫で回す。指先に伝わるふんわりもふもふ、その奥は暖かく、じわりと膝にその熱を伝えてくる。
「静さん、こちらも愛らしいですよ」
「本当でございますね、樹様」
 二人の傍にぴょんこぴょんこと飛び跳ねてきた兎を、柔らかく抱き上げた樹は、静を招き寄せそっとその腕の中へとおろす。
 二人揃って小さな兎を見下ろしている姿はさながら幼子を見つめているようだ。
「――……」
「柏原先輩もどうですか?」
「っい、いや、私は眺めてるだけで満足だから!」
 一心地ついたのか、常盤が立ち尽くしている小町に気がついて、のんびりと足下に絡みついていたハムスターへと視線を流した。

「ほら、今いっとかないと駄目だと思うわ」
 人間の持つ恋愛感情の熱は理解しがたいが、澄香でも今歩み寄るチャンスであることくらいは分かる。
 離れたところで見て楽しむつもりなのに、こうじれったくては首を突っ込みたくもなるというものだ。
「今よ」
「いや、でも」
 何となく行きづらく渋った雅也は、先ほどまで傍にいた森林を探したが、その姿がない。
 小町は常盤の誘いを断ったものの、足下に寄ってくる山羊を、つっと避け仲良さげな樹たちを見て小さく溜息。
「だぁっ! もう!」
 その様子に雅也は、わしわしっと頭をかき混ぜた後、ゲートの内側へと入って兎を抱き上げた。
「ほら、吼えないし、噛みつかないし…大丈夫だよ」
「う…雅也」
「良いから、ほら。好きなんだろ?」
「え」
「は? いぃいいや、だから兎っ兎だよ」
 自らの発言に、ぶはっと赤面した雅也は、兎を片腕に抱き直し空いた手で小町の手首を掴むとぐいと引き寄せその背に触れさせる。
「わ…っ、ふわふわ」
 最初おっかなびっくりだったものの、一度触れてしまえば大丈夫。ゆっくりと、撫でつける手の動きにあわせて光が泳ぐ毛並みを堪能。
 自然と微笑む小町を見つめる雅也の瞳は優しい。
(大丈夫、そうですね)
 そんな二人に常盤も微笑む。
 好きな人を前にしたら誰でも緊張するものだし、不安にもなるだろう。
 今の関係が壊れてしまったら……そう思うと怖くて仕方がない、その気持ちも痛い程よく分かる。
 けれど踏み出さなくてはいけない一歩というものもあるはずだ……自分たちは撃退士という立場でもある、いつどうなるかが見えない。
 だからこそ、今伝えられることは、相手に届けるべきだと思う。
 まるで自身のことを確認するように、彼らを見守った常盤は視線を兎へと戻す――
「もふもふ最高ですねー!」


 広げられたお弁当は、力作。
 動物園なので、ソーセージなどはペンギン、ゾウにキリン。細かく装飾されて目にも楽しい。
『…わたしの恋人は料理のうまい人だから上手くは教えられませんが、料理は愛情、ですよ』
 その愛情を込めさせるために、雅也の名前を出すたび、天パった小町を元に戻すのが大変だったことを思いだし、藤花はくすりと笑みを零す。
 フライ鍋が火柱をあげたのも……多分愛嬌だ。
「樹様、あーん」
「ありがとうございます。美味しいです。静さんもどうぞ。はい、あーん」
 恋人同士って良いよね、アピール中。
「友坂先輩、こちらの卵焼きも甘めになってますから、美味しいですよ」
「ありがとう。俺が甘い方が好きだって良く知ってたな」
「はい。こちらは柏原先輩が焼いたんですよ」
 事前調査も生きてくる。
 藤花はさりげなく、他の好物品も小町作だと雅也に刷り込んでいく。
「お前料理なんて出来たんだな?」
「そ、それはみんなが」
「出来たんですよね!」
 料理上手アピールの邪魔はさせない。確かに半分以上は手伝いにきてくれた静や、常盤、藤花の作であっても、だ。

「この奥に広場があるらしいですよ。そこなら人も少ないし、夕日もよく見えるとか……」
 最終段階の打ち合わせを、場所の下見をこっそりしてきた森林が、アスハの開いた園内図を指して説明する。
「少し和みましたね〜」
「ああ」
 訪れて直ぐのギクシャクした空気を思えば大進歩。後もう一押しすれば、想いを告げることも出来るはずだ。


「最後にみんなで写真を撮ったら解散ということにしますから、頑張ってくださいね」
 森林がカメラを軽く振って雅也の背中を押すとそれに続く形で
「…綺麗な言葉よりも、素直な言葉が一番、だ。キミだから言える想いを、伝えてこい」
 プレゼントも買っただろ、売店に寄った際に彼女への贈り物も提案したアスハに、雅也は無言で頬を染めた。

 雅也と小町を中央に、本日最後の記念撮影。
 フレームに収まった二人の間は微妙に空いていた。

「恋文のご用意はよろしいですか?」
 去り際、くんっと静に腕を引かれて告げられると小町はぎゅぎゅっと肩から下げていたバッグを握りしめる。
「彼女の事が好きなんでしょう?」
 同じく、雅也の耳元で囁くのは澄香。
「今しか無い、のよ? そして今こそが最大のチャンス……内側で燻っている貴方たちの『熱』を今こそ打ち明けるのよ」
「――……」
 無言で頷いた雅也に、スキル悪魔の囁き効果があったかは定かではないが、ある種の決意が固まったことは確かだ。

 みんなが解散の雰囲気で歩き始めて、想いが固まりきらずに、それについていこうとしてしまった小町の腕を雅也が掴む。
「話、あるから……」
 その一言に、小町は反射的にがばりと頭を下げた。
 膝に、がんっ! と額を打ちつける勢いで
「ごめん! 痛かったよね。本当ごめん。早く謝らないといけないって分かってて、でも……言えなくて」
「……ああ、本当痛かった」
「う」
 目的の手紙もチョコも駄目だったのだからその通りだ。
「でも、良いよ。これ、ホワイトデーのお返し」
 差し出された袋からは、クローバーと兎のチャームがついた首飾り。
「あ、ありが、と……わ、私からも」
 握りしめられていたものは封筒。中身はあの日と同じもの。
 受け取り開く間、心臓が早鐘のように強く脈打つ。

(い、息をするタイミングが……)
(ふふ、『熱』が高まってるわね)
(どうか二人がもうすれ違いませんように)
 見守り隊も息を飲む。

 かさりと紙ずれの音。

「―― ……へったくそな字」
「わ、悪かったわね」
「うん……こんなの読めるの俺ぐらいだよ、本当」
「あんたに宛てたんだからそれで…」
「うん、十分だ」

 ―― ……俺も、好きだよ。

 カチ…カラカラカラ……
 挟まっていたシコリが落ちて、止まっていた歯車が今、ゆっくりと動き始めた。
 微妙に空いた2人の距離がそっと縮まる――

「とりあえず」
「みんなに、ありがとう」
「だね」

 いって笑い合い振り返った二人の見た先では、ひょっこり姿を現した七人がそれぞれにこの結末を祝福した――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:8人

思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
優しき翠・
森林(ja2378)

大学部5年88組 男 インフィルトレイター
世界でただ1人の貴方へ・
氷雨 静(ja4221)

大学部4年62組 女 ダアト
常盤先生FC名誉会員・
一条常盤(ja8160)

大学部4年117組 女 ルインズブレイド
蒼を継ぐ魔術師・
アスハ・A・R(ja8432)

卒業 男 ダアト
護楯・
龍仙 樹(jb0212)

卒業 男 ディバインナイト
演技派小悪魔・
片霧 澄香(jb4494)

高等部3年14組 女 ルインズブレイド