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マスター:サラサ
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:10人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/08/04


みんなの思い出



オープニング

●SIDE:アリス

「皆の衆……これは由々しき事態なのぢゃゾ」

 誰がそう呼んだか――気づけばお祭り教師と呼ばれ早数ヶ月。
 アリス・ペンデルトン(jz0035)は、いつになく真剣な表情で生徒達へ告げた。

「前々から、あやつとは一度腰を据えて話をせねばと思っていたのぢゃがの。
 どうやら話は通じないようなのじゃよ。我々には、拳で語り合う選択肢しか残されていないのぢゃ!
 当然ぢゃな、……相手は悪魔のような男、いや、悪魔そのものなのぢゃから」

 悪魔。その言葉を聞き、生徒達は一時騒然とする。
 あの強大な存在と、アリスは剣を交えようというのか?
 止めるべきなのだろう。だが彼女のここまで真剣な表情を、今まで誰が見た事ある?(反語)
 それでなくとも、火のついたお祭り教師を止められる度量を持つ生徒はいない。
 なにせ学園長さえも篭絡する魔女(笑)である。彼女に対抗できそうな人間なんてこの学園には……、ん?

 待て。いるではないか、人間ではないけれど。彼女を唯一抑止できると思われる悪魔教諭――太珀(jz0028)が。

「……ん? 悪魔?」

 ふと、一人の学生が察する。まさかとは思うが、アリスの言う悪魔って――

「うむ。悪魔の名は太珀、人の世に帰依し甘い蜜を吸う、極悪非道の悪魔……!
 球技大会を開催し、あやつのチームと正々堂々、スポーツで勝負するのぢゃっ!」

 成程、納得である。


●SIDE:太珀

「今朝、ポストに果たし状が入っていた。無記名――だが、犯人は分かってる」

 腕組みをしたまま、悪魔教師は苦虫を噛み潰したような顔をした。
 彼が差し出した件の手紙には、デカデカと赤文字。

『どちらがより多くの生徒から信頼を集めておるか、思い知らせてやるゾぃ。紅白対抗☆球技大会で勝負なのぢゃ☆』

 書き文字なのにバレバレってどういうこと。

「あのすちゃらか魔女、どうも頭の中までお祭り状態らしい。何でも大会にすりゃいいと思ってるのか?
 ……まあいい。売られた喧嘩を買わない道理はない、こちらも全力で行くまでだ」

 なんだかんだ言って、この悪魔ノリノリである。

●巻き込まれるも一興

 ―― ……体育館集合。

「というわけで、頼まれたんだ。某外国語教師に」
 伏せているようで全く伏せていない依頼主を告げ、月見里叶(jz0078)は小さく溜息。

 丁度良いところで会いました。と呼び止められたときに嫌な予感がした。
 うん、なんか職員室とか学園各所が騒がしかったから……一応その原因が知りたくて校内をうろついていたのだが。巻き込まれるつもりは微塵もなかったというのに。
 ……巻き込まれ体質の苦労人という称号は伊達じゃないと誰かにいわれそうだ。

 そこに集まったのは十四人の勇者たち。あえて巻き込まれたとは触れないで置こう。
 叶は、手元のファイルから一枚の紙を抜きだして話を続けた。
「件の教師がどうしても断れなかったからと、一試合こちらでも設けるということで集まってもらったんだ。種目は、ポートボール。馴染みないか? あれだ、バスケットゴールが人間のやつ。ゴールが味方のパスを受け取ったら点数になるんだ」
 その関係上バスケットより、ゴールとそこへのパスを邪魔する為に各チーム二人ずつ増える。一チーム七人で行われる。

「基本ルールはバスケットとそれほど変わらない、というか、うん、ルールは原則そんな感じと言うことで、何でもありだ」
 ひらひらと手にしていた紙を振りながら告げた叶に「何でも?」と問いが返ってくる。それにこくんと頷くと、
「何でも。事前に作戦会議を設けるから、その際、仕込みをしても構わないし、試合中スキルを使っても構わない」
 ざわっとした体育館内に、ほんの少しだけ満足気な顔をする。
 それに、ルール厳守にしたって詰まらない。盛り上がらないようなことを、あの二人は許さないだろう。

「あと、もう一つ伝えることが……ええと、この辺に書いてあった……」

『急な申し出に応えていただきありがとうございます。今回の競技は一つのコート内に敵味方が入り乱れます。
 ということは、どちらも力業ばかりが鍵ではありません。
 心理戦も用いてはいかがでしょうか?』

 叶の読み上げた内容に、あの笑顔でこれを書いたのだろうかと、居合わせた全員の脳裏に浮かぶ。

「ラインズマンには伊駿木音琴(jz0085)、黒峰夏紀 (jz0101)さんに急遽きてもらったから、彼らにお願いする。俺は……スコアブックつけてるよ」

 ……こいつ。

「じゃ、補欠なしの十四人。紅白戦だ。怪我した場合、カズハ先生たち救護班が待機しているから速やかに、回復、試合復帰して欲しい」

 保険医の山咲一葉(jz0066)の名も加え、以上。解散、で締め括った。
 休ませる気は微塵もない――こっちも鬼だ。


リプレイ本文

●いきなりですが、前半戦終了。
 戦いの火蓋は切って落とされた。
 きっかけはどうあれ、始まった以上は終わりへと導かねばならぬだろう。
 前半戦も残る時間は僅か、萩乃杏(ja8936)は遁甲の術を駆使しコート内を駆け抜けた。強羅龍仁(ja8161)の生命探知による指示も的確に飛ぶものの、捕らえるのが困難だ。
 ぐんぐんと白陣営へと乗り込んでくる。一人また一人と抜き残すところはガードマンの龍仁のみ。
「ここは抜けさせないぞ」
 40センチ以上身長差のある龍仁は杏にとって壁ともなる。しかし杏は
 ―― ……行ける。
 確信に似たものを得ているように、にやりと口角を引き上げた。
「邪魔はさせないかんね? 強羅”母さん”」
「っな!」
 来ると思った、いうと思っていた、覚悟も出来ていたはずなのに、龍仁はその一言に僅かにひるんだ。
 抜けたっ!
 出来た隙を見逃さず、杏はゴール万である常磐木万寿(ja4472)へのシュートを試み踏み込む。
 得点係も兼ねた月見里叶(jz0078)もボードに手を伸ばし数字に手を掛けた。しかし、
 ―― ……がんっ!! バコンッ!!
 勢い良くボールが跳ね上がる。目の前に現れたのはシールドだ。
「悪いな、盾にはこういう使い方もあるんでな」
 にやりと不敵に笑った龍仁に、杏は苦々しげに喉の奥を鳴らす。
「ボールはまだ生きてるぞっ!」
 コート内の声に、顔を上げ杏がジャンプしようとした瞬間、背後から
「萩乃さん、避けて」
 反射的に身を引いた杏に陰が落ちる。振り仰げば宇高大智(ja4262)だ。
「常磐木さん!」
 バシーーンッ!!
 シュート? シュートだよねっ!
 ボールに触れたその高い位置からの直接のシュート、というか、アタック! 叩きつけるダンクシュートの勢いだ。ゴウッと風を切る音がする。
 ゴフッ
 ゴール台の足下が揺れる音と、なんだか鈍い音がした。取った? つか、生きてる?
「強、過ぎだろ」
 聞こえた声。常磐木の眉間には皺が、手にはしっかりとボールが握られている。完全に再起不能となったボールだがこの際仕方ない。
 ゴールには優しくっていったのに。
 ―― ピィィィィィッ!
 同時に前半戦終了を意味するホイッスルが鳴り響いた。

●休憩です。  
 今回は特別ルール起用。ポートボールは基本四クオーター制だが、大人の事情で前後半戦・間に十分休憩をいれることにした。助っ人として、高等部一年の柊智宏、同じく三年の高林和真が加わっている。
 ――紅組ベンチ
「このまま、勝ちに行くわよ。はい、これ必要な人飲んで」
 杏は並べられた椅子の一つにミネラルウォーターとスポーツドリンクを載せる。前半戦の彼女の動きは素晴らしく、得点へのきっかけを上手く掴んでいた。同時に発動した分身の術は、分身がほぼ二次元のためあまり使えなかったことは伏せよう。
「こちらにも置いておきますね」
 と加わったのは一条常盤(ja8160)ひんやりと冷気を帯びた冷たいタオルもある。痒いところに手が届く、有り難い気遣いだ。
 前半戦は割とまともな試合が行われたといっても良いだろう。一部の例外を覗いて……。
(私はアスヴァンではないし、シールドは流石に盗めそうな行動ではないわね)
 ふむ、と思案気に唸った後、置かれた水を「貰うわね」と受け取った新井司(ja6034)は天井を仰いだ。青空がちらと覗いている。
「たっだいまー!」
 そんな中、元気良く響いたのは村雨紫狼(ja5376)の声だが、ただいまはおかしい。トイレ休憩とかではなくて、体育館の天井に穴を開け一部陽当たりを良くしたのは彼。もちろん、彼自身若干ボロくなっている。そして
「思ったより元気そうですね」
 先ほどの衝撃による不調はないか万寿を気にかけつつ、水分補給を行っていた大智は、かたんっとパイプ椅子から立ち上がる。そして、次は気を付けてくださいよ、とばかりに軽く注意し、紫狼にライトヒールを施した。

 ――白組ベンチ
 前半戦押され気味ではあったが、特に大した負傷者もなく巻き返しも十分に可能だ。
 それにしても、白組サングラス率が高い。ほぼ全員所持しているように見える。これで黒スーツでも着込んでいれば、エイリアンでも退治に行くのかと思った。
「私が、特定の人の名前を出さないかけ声をしたとき……」
 試合開始前にも打ち合わせたことを、根来夕貴乃(ja8456)は再確認して、チームメイトが頷くとゆるりと笑みを浮かべた。
 相も変わらずTOMMY(ja0749)が或瀬院由真(ja1687)にちょっかいを出していて、その耳に届いていないような気がしたが、きっと大丈夫だろう。

 机上の時計を確認した叶は、コートの脇にいたラインズマンを努めてくれている伊駿木音琴(jz0085)・黒峰夏紀(jz0101)へと視線を投げた。
 それに気が付いた音琴は、壁に寄りかかっていた背を離し了解とばかりに片手を振ってコートに戻る。
 夏紀は、ぴしりとした敬礼を合図にするように、折り目正しく指定箇所に着いた。

●後半戦開始です。
 センターサークルには、大智と由真。小柄な由真は自然と相手を見上げる形になるがその視線は今サングラスの下に隠れている。
(翼の使用はマークされているはず、素早く展開しないと)
 きゅっと由真の体に力が籠もる。
(改めて見ても、壁っていうか……山?)
 大智の目に留まっていたのは白側のトミーだ。彼の身長は240センチもあり、試合開始時、整列したときにも頭一個なんて可愛らしいものではなく飛び出していた。
 そして、主審の構えたボールが、試合開始のホイッスルと同時に高く放られる。そのボールが放物線を描き落下を始める瞬間、ぱんっと小さな羽が散った。大智が床を蹴り出すより一歩早い。展開された小天使の翼が由真をより高く運びボールを奪った。無論受けたのはトミーだ。
 後半戦は白の先制で始まった。

 トミーからボールが離れ由真へと放たれた瞬間を見逃さず、常磐がとんっと軽く奪い去り次へと繋ぐ。
 流石は撃退士同士の競技。攻防戦は常に行われ、ボールの動きを常に追い掛けるだけでも大変だ。
「高い所から見て、今の状況どんな感じ?」
 ちらと背後に立つ八辻鴉坤(ja7362)へと視線を投げて問い掛けた司に、鴉坤はもちろんというように
「白が優勢」
 と答える。その強気な様子に司は「なるほど」と好戦的に頷いた。
 実際はどっちつかずだ。先ほどから勢いを失わないボールは、両サイドを往来している。
 大智がボールカットし、常磐へ、動きを予測して回り込んでいる杏へと上手く繋がった。
「よし、上手いことノーマーク……! 一気に行くわよ」
 ピィッ、紅組追加点。
 新たに動き始めたボールは……ぽすっと紫狼の手に渡った。紅組に僅かに緊張が走る。黒歴史が繰り返されるのか、いや、学習したはずだ、早くボールを回せ。ロリ系の前を抑えろっ。今、紅組の心は一つになった。
「……ボール、ください……」
 しまったぁぁぁっ。
 うるりと、瞳を潤ませて紫狼を見上げてくるのは夜科小夜(ja7988)いや待て、小夜の年齢は彼の許容範囲を超えているはず。越えて……
「ギリオッケーーっ!」(てへぺろ☆)
 いーのかよっ! 学習しろよっ!
 前半戦の悪夢が今蘇る。
 と、いうわけで
「うおーー幼女だいすきーーっボール上げるから俺にぃ」
 あっさりボール放棄。両手広げてカモーンっ! その瞬間不幸な事故が起こった。
 ドガーーーッン!!
「紅組ファイトー! アリスたぁぁん」
 キラ☆
 前半戦で開けた穴に上手いこと吸い込まれていく。
 体育館の床が激しく振動し、一瞬、紫狼向けて巨大な盾がぶん投げられてきたような気がしたし、飛んでいく紫狼の頭部に黒くて硬質なスコアブック的なものが突き刺さっていたような気も……。
 ちらと見れば龍仁とは目が合わない。叶は何食わぬ顔で新たなスコアブックを開く。

 ぽす。
「……ボール、キャッチ、です……」
 思わず紫狼を見送ってしまっていた。その油断を逃さず、小夜はゴールへとドリブルする。
「来たわね。じゃあ、真面目にやりましょうか」
 白組の進軍に司も備えた。
「……八辻さん……シュート、です」
 すっと小夜が構え、もちろん司がその邪魔に立つ、低い位置からのシュートを狙えば上手く遮られ、小夜は全力跳躍使用に切り替えるため僅かに身を引く。
「……!」
 びくりと小夜の肩が強ばった。目の前にはもう一人の自分。その自分が立ちふさがり好戦的な笑みを浮かべている。
「夜科さん、確(しっか)り! 変化の術ですよ」
 背後からの由真の声に、小夜は我に返る。しかし、ボールはがら空き。
 手の内から弾き出され床でバウンド、運良く手に出来たのは由真。それを抜くように攻めてくる紅組を前に、背後へとパスを送る。確実に受け取ったトミーが鴉坤へと納めた。ナイスシュートの声が飛ぶ。
「このまま……巻き返すの」
 失敗を詫びた小夜に夕貴乃は気にする素振りもなくのんびりと微笑み、立ち位置に戻った。
 嵐の前の静けさをはらんだ試合は再会した。
 繰り返される攻防戦にてボールを取ったのは再び白。
 タン、タンタンタン……。
 高い位置で一つに纏めた長い髪が、紅組を抜いていく夕貴乃の後ろに軌跡を描くように靡く。そして、仲間全員へと視線を走らせ、既に準備の整っている由真へとボールを送り、小さく頷いた。
「いくの……!」
 合図だ。
 白組全員がサングラス装着、夕貴乃と鴉坤が同時に星の煌めきを発動させた。
 まぶしっ! 筋肉天使が例の帽子を脱いだせいではない!(因みに彼は禿ではない。多分)
「トミーさんお願いします!」
「眩しっ!!」
 え、一人伝わってない! 由真から放られたボールはトミーの手に渡ったものの超裸眼だった。超影響受けてた。がっつり瞼閉じてますけど。
「アァン?! 俺には見えてるに決まってんだろっ」
 え、心の目? 心眼開いちゃいました?
 ゴールはこっち! とばかりにトミーは力の限り手にしたボールを叩きつけた。
「え?」

 ―― ……あ

 形容しがたい音が響いた。
 刹那訪れた沈黙。体育館の中には、ぐわんぐわんっと一緒にひっくり返ったゴール台が虚しく音をたてる。もちろん原型のないボールからは白煙が……。
「……八辻さん、あの、大丈夫、ですか?……」
 一番ゴール近くにいた小夜が、おそるおそる声を掛け、今は敵として分かれているとはいえ、側にいた司も歩み寄る。
 あれは確実に顔面いった。
 再現VTRとかあったら、三回は繰り返されただろうレベルで入ったと思う。床には破損したらサングラスの欠片が散らばって、星の煌めきの名残を反射し綺麗だ。
「―― ……」
 むくり。
 割と普通に起きあがった。
 大丈夫。鼻出血は間のがれてる。口切れてますけど、血吸った後みたいになってますけど。
 歩み寄った主審が、試合続行可能か問い掛けると、立ち上がりつつ元掛けていた眼鏡をあてがい、手の甲で口元をぐいと拭ってにこり。
「大丈夫。試合、続行しよう…… ――」
 その後、無言でゴール台を元に戻しその上に立つ。
 ――……どうしよう。一瞬、試合が”殺し合い”に聞こえた……。
 だから、ゴールには優しくっていったのに。

 残り時間を僅かに残した試合は、欠員のある紅がどうしても劣勢。確実に、白組が放つシュートは鴉坤の腕に吸い込まれた。
 そして、手隙の際妨害混みのつもりで雑談をこなしていた司は、その後一切背後を振り仰ぐことはなかった。

 しかし、最後の最後まで双方手を休めることはない。
 今、攻め上げてくるのは、常盤。冷静で的確な動きは、とても読み辛い。
「右にパスすると見せかけて、左にパスです!」
 飛んだボールは右。マークに着いていた、小夜と夕貴乃は素直に顔を左へ。揃った姿は愛らしいが、ボールが抜けてしまったことには変わりない。
 はっ! とした二人に「大丈夫だ、気にするな」と龍仁から声が飛ぶ。
 コートを駆け抜けた大智は、ゴールぎりぎり、十分に龍仁を引き寄せてから、右後方に走り込んできた常盤に腕の下から、ボールをパス。そのまま全力跳躍を利用して常盤がシュートを決めた。
 あと一本! 紅組全員がそう思った瞬間、無残にも

 ―― ピィィィィィッ!

 試合終了を意味するホイッスルが鳴り響いた。
 主審の指示により、センターラインに集合。
 とんっとゴール台から降りた鴉坤は
「怪我はない? ……色々とごめんね」
 敵方ガードマンであった司を労う。試合終了のホイッスルが彼を元に戻したようだ。
 得点板を見れば、10対11。派手なプレイはなかったものの、確実に得点を重ねていた白組のフリースロー1本差で勝利が決まった。

●お疲れ様でした。
 両チーム、多少予想外のことが起こったが……終わり良ければ全て良し。天井に開いた穴と、亀裂の入った床が色々物語っているようだ。
 お疲れさまでしたーの揃った声、それぞれの活躍を讃えつつ労う姿。開始前と同じように、万寿と大智はクールダウンのためのストレッチをする。
「お疲れさまでした。楽しかったですね」
 元々、相対する人の心理、動作を予測して行動することは剣術に通じるところありと考え参加していた常盤にとって勝ち負け自体よりも試合内容の方が大事で、それなりに達成感もあった。
 声を掛けられた司も、満足気に息を吐きタオルで顔を拭って水を飲む。冷たい水が喉元を通り過ぎる感覚は試合後の爽快感をより強くしてくれる。

「それなりに、良い試合だったわね」
 多少なりの悔しさはあったものの、部活仲間に声を掛けた杏に、
「おまっ! あれほど言うなと言っただろ」
 龍仁は真っ先に抗議する。それを完全に受け流した杏は、両手を肩の高さに上げ軽く肩を竦めた。その態度は寧ろ潔い。
 そのまま小夜と夕貴乃の間にしゃがみ込みこそり。
「あこちゃん先輩の眼鏡って何のスイッチになってんの?」
 その問いに二人も困惑気味に微笑み、ちらと盗み見れば、件の彼は何食わぬ顔でにこり。触れない方が良さそうだ。
 相変わらず、トミーは由真にちょっかい出しているようだが、微妙にお説教モードかも知れない。
 そして、
「試合は試合だが、終わったらそれまでだ、食うか?」
 さっさと切り替えて、持参したクッキーを皆に振る舞う龍仁。そりゃもう、皆のお礼は
「ありがとう、強羅”母さん”」
 に、決まっていた。

「……で、先生二人は、コレで決着ついたのかな?」
 その答えはまだ誰も持っていない…… ――


●試合結果
 種目:ポートボール?……は、勝者がポイント総取りとなり、白組に20ポイントが加点される結果となった。
 試合が終われば、ノーサイド。紅白共に、お疲れ様でした!


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 揺るがぬ護壁・橘 由真(ja1687)
 水鏡に浮かぶ睡蓮のように・夜科小夜(ja7988)
 撃退士・強羅 龍仁(ja8161)
 場を翻弄するもの・荻乃 杏(ja8936)
重体: −
面白かった!:7人

揺るがぬ護壁・
橘 由真(ja1687)

大学部7年148組 女 ディバインナイト
駆け抜ける風・
宇高 大智(ja4262)

大学部6年42組 男 アストラルヴァンガード
ロリでごめん・
村雨 紫狼(ja5376)

大学部7年89組 男 ルインズブレイド
撃退士・
新井司(ja6034)

大学部4年282組 女 アカシックレコーダー:タイプA
気配り上手・
八辻 鴉坤(ja7362)

大学部8年1組 男 アストラルヴァンガード
水鏡に浮かぶ睡蓮のように・
夜科小夜(ja7988)

卒業 女 ルインズブレイド
常盤先生FC名誉会員・
一条常盤(ja8160)

大学部4年117組 女 ルインズブレイド
撃退士・
強羅 龍仁(ja8161)

大学部7年141組 男 アストラルヴァンガード
コートの煌き・
根来 夕貴乃(ja8456)

大学部4年41組 女 アストラルヴァンガード
場を翻弄するもの・
荻乃 杏(ja8936)

大学部4年121組 女 鬼道忍軍