●開幕
集められた精鋭は二つのルートに分かれて進むこととし以下の通りに分かれた。
山間ルート:古島 忠人(
ja0071)・雫(
ja1894)・東城 夜刀彦(
ja6047)・田中 匡弘(
ja6801)
直進ルート:天沢 紗莉奈(
ja0912)・或瀬院 由真(
ja1687)・道明寺 詩愛(
ja3388)・焔・楓(
ja7214)
加賀峰 愛央(
ja7459)・ディアーヌ・ド・ティエール(
ja7500)
山間は敵の罠が張り巡らされ、直進ルートは敵の数が山間よりも多いルートだ。
事前情報として入手していたメンバー達はそれぞれに作戦を立てこの戦いに突入する。
詩愛の提案により、他メンバーと携帯番号を交換しイヤホンマイク使用で連絡手段にることも忘れない。
「いざ!これより私達は修羅に入ります!!人と会ったら人を斬り、神と会ったら神を斬って下さい!!
問答無用!容赦無用!アヴァロン(温泉)に向かって進軍開始!」
雫が場を仕切り、皆が時の声を上げる。戦いの幕は切って落とされた。
●山間ルート
雫は感知を頼りに罠が仕掛けられていそうな所にあたりをつけ慎重に進んだ。
結果、二つの罠を解除することに成功し、今度は自身が罠を仕掛けた。
罠にかかって動けない振りをし、敵を自分に引き付ける囮役になるのだ。
自身の罠が発動し、それに釣られた撃退士が1名現れる。確認しに来た所に飛び掛る黒い影。
そう、待ち伏せしていた匡弘と忠人が手際よく撃退士の急所に一撃入れ敵を捕獲したのだ。
「後は個別で連携を取りながらでしたね。皆さん御武運を。夜刀彦さんに連絡を入れないと」
こちらは一人で先に進み潜伏していた夜刀彦だ。携帯で囮組から成功の報を受けると行動を開始した。
「温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉!!!
一日二十時間労働貫徹二日休日返上嗚呼地獄の日々に今、光が!俺温泉に入ってのんびりするんだ!
邪魔する奴は全てコワす」
敵を壊す前に自分がコワレテイルヨウダ。
罠がありそうなところをわざと選び、後進のために安全ルートを確保しながら進んだ。
「道を切り開くぞ…!」
言ってることは男前である。目が死んでいたが。
鉤付き縄を縦横に奮い『無音歩行』『変化の術』『分身の術』『迅雷』などのスキルを多用し敵を蹴散らしていく。
「温泉が俺を待っているんだ!こんな所で!立ち止まっていられるものかっ!」
鬼気迫る勢いで道を踏破していくが、さすがに目立ちすぎた。
度重なる罠(トリモチで体がべたべた。蜂の巣トラップで数箇所の刺され痕、落岩石、投網、オイル等の滑油etc)
で満身創痍な上2人の撃退士に囲まれた。そしてついに急所に一撃を入れられ倒れ伏したのである。
「後は…頼みます!」
ただし、2人を見事道連れにすることに成功していた。温泉にかける執念が伺える。
ちなみに、その後一緒にリタイアとなった女性撃退士に対して
「これが終わったら、俺と一緒に極楽(温泉)に行かないか?」
やたらに良い声で勧誘していた。
後で義姉に殺されようが、俺は今の青春にかける!とフラグも完璧だった。
「おらー、道を開けろ! こいつがどうなってもええのかー!」
忠人は捕獲した敵の撃退士に、ある程度の罠の場所を吐かせ雫と共に進んでいた。
夜刀彦が作った道を進む二人だったが、不意を付いた攻撃で雫がピンチになった。
その時、忠人は雫を庇い敵の攻撃を受ける。
急所には当たっておらず実際には軽傷だったが、わざと倒れて血糊(トマトジュース)を胸元にぶっかけて
大怪我のように見せかけた。
「ぐふっ…どうやらここまでのようだ。俺の…いや、皆の為に進むんやっ。応急処置は自分で出来る」
「…わかりました」
雫は決意を秘め、温泉を目指し駆け出した。
暫く応急処置をして動かなかった忠人。周囲から完全に人の気配がなくなると、勢いよく起き上がる。
忠人は自分が倒れることにより、周囲に自分が脱落したように見せかけたのだ。
「っくっくっく。上手く行ったな。後はゴールを目指すだけや!」
頭には「死亡」っと書いた紙を貼り、温泉へと向かった。
匡弘は『遁甲の術』で潜行し、アフロに木の枝を挿して変装(しているつもり)しながら先を行く山間ルート組の
少し後ろを進んでいた。
「これほど厳重に護っている温泉であればさぞかし気持ちがよいのでしょうね…」
周りを警戒しながら、到着後のことも頭に思い浮かべられる程度には余裕がある。
が、その時だった。前を進んでいた忠人が雫をかばい倒れたのだ。幸い意識はあり、自分で何とかするとも言っている。
ふぅっと一安心し、更に歩みを進める。が、またもや問題発生した。
雫がトラップに引っかかったのだ。鳴子のようなものを鳴らしてしまい、それを聞きつけた撃退士が2人現れた。
その際に運悪く匡弘も見つかってしまい、雫と背中合わせで戦うこととなる。
「ここは私に任せて先に行ってください!この役目、務め上げて見せます」
雫の強い視線に頷いた匡弘は
「必ず辿り着いてみせるよ」
一言、雫に告げ戦線を離脱した。撃退士の一人が慌てて、匡弘を追おうとしたが雫が回り込む。
「ここから先は行かせません。これが貴方達の死線です」
雫が地面に境界線を引く。後に雫と相対した撃退士はこう言った「彼女は正しく阿修羅だった」と。
●直進ルート
直進ルートを選択したメンバーは一丸となって温泉を目指した。誰か一人でも着けばいいのだ。
詩愛は自分と同じ背丈の盾を取り出し活性化させる。
『生命探知』を使用し敵の位置を調べ仲間に伝達する。
「13時の方向、2人います」
紗莉奈はサイドステップで敵の横に滑りこみながら詩愛を援護しつつ、敵の防衛を突破するように戦っていた。
敵の視線が攻撃が、事あるごとに紗莉奈の体に、正確にはバスタオルの合間から見える肢体に集まる。
紗莉奈の服装はバスタオルを二枚しっかりと結んでおき、動きやすいようにスリットを作ったものだった。
これだけの簡易な服?で戦場を激しく動き回っている。敵(主に男性)から視線を集めるのも無理は無い。
「見られて減るものではないがあからさまにこられてはな…ふんっ!」
邪な物を感じた紗莉奈は躊躇せず股間への攻撃を行う。もんどりを打って倒れる撃退士に冷ややかな視線を浴びせる。
なんなく最初の2体を撃破した一同は更に進んだ。がしかし、次は6人同時に襲い掛かってきたのだ。
構図的には6対6となって相対した。
「ここは任せて先に進んでください!」
詩愛は敵の足止めを買って出た。しかし、相手は6人である。
愛央はスキル『星の輝き』を使った。
「\アイラブにんげぇぇぇぇぇぇぇん!/」
人間愛を高らかに叫び、愛央自身を中心とした半径20メートルが明るく輝く。
「さぁ、ここは私達に任せて先に行け!」
盛大に死亡フラグを立てる愛央。
程よい目くらましとなった隙を突き、4人はダッシュで駆け抜ける。
紗莉奈は横を抜ける際に親指を立てて、二人の検討を祈った。
愛央は持ってきていた登山用の杖で、敵の撃退士の股間を容赦なくゴルフスイングの要領で急所を狙う。
詩愛はこの日のために作ってきた特製デスソースを詰めた水風船をペイント弾代わりに投げる。
暴徒鎮圧用トウガラシスプレーより強力なデスソースだ。
当たっただけでその刺激臭から戦闘不能に陥る凶悪な物になっている。
そして男の撃退士には容赦なく股間を蹴り上げる。
「卑怯とは言わないでくださいね?」
悪魔な微笑みをした詩愛であった。
結果的に言えば、この戦いが要であった。
6人を何とか倒したと思った矢先に、また別の4人の撃退士が現れたのだ。
詩愛個人で言えば屠った敵の数は7人。間違いなく殊勲賞物だった。
「道明寺さん…貴方達の犠牲、無駄にはしませんっ」
囮となる詩愛達が開けてくれる突破口を一揆に通過した由真達だったが新手が前方から来る。
「あーん、人が多いー。お兄ちゃん達邪魔なのっ。温泉に入るのを邪魔する人は馬に蹴られて沈んでしまえ、だよーー」
飛び上がり相手の頭部に足で一撃入れると同時に踏み台にし先に進む。
とかく常に動きまわり的を絞らせないように動き回る楓とそれに続く紗莉奈。
途中、敵の攻撃が足などに当たり機動が鈍ることもあったが
「ライトヒール!」
ディアーヌのスキルによりすぐに処置を終え戦線に復帰する。バランスの取れたPTだ。
その最中、敵の第二陣とも言える部隊が姿を現した。しかも後方から自分達を追ってくるのも2名いる。
前後で挟まれる形となった4人。
「ここが正念場ですね。私が残って突破口を作ります。皆さんは先へ行ってください!」
「一人でこの人数はきつい。誰か一人でも辿り着ければいいのだから、な。私も足止めに加わろう」
由真と紗莉奈が敵の足止めをすることとなった。
「所で…別に、全員倒してしまっても構わないんですよね?」
ポツリと由真が呟く。破顔した紗莉奈が答えた。
「遠慮はいらないな。片付けようか!」
温泉旅館はもうすぐ目の前という所で撃退士が4人待ち構えていた。
対してこちらは二人。楓とディアーヌだ。
「むー、もう少しで温泉なんだよ!すぐそこなんだから・・・押し通らせて貰うんだよー!」
「行きます!」
無理やり押し通ろうとするが、さすがに最後の砦を預かっている撃退士は今までの敵とは一線を画した。
とそこへ意外な所から援軍が現れた。山間ルートから駆けて来た匡弘だ。
匡弘は現状を瞬時に把握すると、助太刀に入る。これで4対3となった。
何とか急所攻撃をかわしつつ突破を試みるがまだ戦力差が埋まらない。と、その時だ。
見事なとび蹴りを敵の撃退士の頭にクリティカルヒットさせた人物がいた。
自分の頭に「死亡」と紙を貼った忠人が現れたのだ。
そしてその隙を見逃さなかった匡弘が素早く施設に入った。
「やれやれ、ようやく到着ですか」
がっくりと項垂れる撃退士を尻目に到着した4名は歓声を上げた。
●桃源郷
カポーン
風呂場独特の音がこだまする。
「温泉一番乗りー♪広くて気持ちよさそうだよ♪」
がらっと扉を開け元気よく突入してきたのは楓だ。
水着を忘れたためタオルを巻いてのご登場だ。
さっとかけ湯をして、勢いよく飛び込む。
「お〜泳げる〜広い〜♪」
次に入ってきたのは雫と紗莉奈。雫は湯浴み着を着用しており紗莉奈はバスタオルを巻いている格好だ。
「山間ルートでは立派に敵の足止めをしたそうじゃないか?どれ、背中でも流して…いや、それには及ばずか」
紗莉奈は雫の湯浴み着を見て判断した。湯浴み着などそう着ける物ではない。
それをここで着ているのには何かしらの理由があるのだろうと慮ったのだ。
「ご配慮いただきありがとうございます。何なら私が背中を流してさしあげましょうか?」
「そうか。それじゃぁお願いする」
しばらく間を置いて入ってきたのは由真。
「うぅ、水着を持ってくるのを忘れてしまうだなんて…」
辺りを見回すと、まだ男性陣は入ってきていないようだ。そのことに安堵して隅っこのほうでちっさくなる。
今回の依頼に参加した理由は友人に「混浴も入ったこと無いの?」と煽られたからだ。
次に男性陣の夜刀彦・愛央・匡弘が揃って入ってきた。
夜刀彦は黒サーフパンツ着用済でタオルを一枚持ってきている。愛央はバスタオル1枚…と見せかけて
肌色の水着を下に着ていた。
匡弘は海パン一丁と実に様になるスタイルだ。色眼鏡は最後の砦なので外してはいない。
当然体を洗ってから湯に入るが頭を洗っているとアフロが解ける。
きつめのパーマがかかった長髪になり、それを見た皆から「誰だお前は」と突っ込みを受けた。
その後、夜刀彦と匡弘は一緒に湯に浸かった。
「いい湯です…」
「本当ですね。一仕事した後の湯は最高だ。混浴か…若い頃の情熱を思い出しますね」
「若い頃って。十分に今でも若いじゃないですか」
「ははっ。まぁ、君達に比べると、もう、ね」
「いやぁ、裸の付き合い…素晴らしいねぇ!!」
愛央も体を洗い終え、湯に浸かる。先行して入っていた女性陣や匡弘や夜刀彦を見て褒めちぎった。
「みんなそれぞれの良さがあって素敵だよぉ!そこのキミ!幼さはそれだけで生命の力あふれる魅力がある!!
そしてそこのキミ!男らしさを感じる素敵な体をしてるよぉ!さらにそこのキミ!(以下略」
「本当に変な奴だなー。男のお前が何でタオルで体を隠すんだ」
「そ、それはほら!普段一人でお風呂は入るものだから、大勢の前だと恥ずかしいと言うかなんと言うか」
入ってきたのはディアーヌと忠人。忠人は海パンにタオル。ディアーヌは大き目のタオルを体に巻いている。
最後に入ってきたのは詩愛。
肩ひもなしの青いビキニタイプ水着着用していたがバスタオル巻きで、それとはわからなくしていた。
「きゃぁっ!」
こけるふりをしてバスタオルを落とし男性陣の目を伺った見たが…。
『っぐ』
皆が詩愛にサムズアップをする。
うれし恥ずかしハプニングも幼児体型では「可愛いな」で済まされてしまう悲しい現実だった。
ディアーヌは忠人の背中を流して。男の友情を深められていることに喜んだ。
男のフリしてて得したなぁ…って何考えてるの僕の馬鹿ー!などど一人で勝手に赤くなりながら忠人の背中をこする。
「おっしゃ。俺はもう十分や。やっぱりお前の背中も流してやろう。なぁに遠慮せんでええ」
忠人は突然正面を向きディアーヌのタオルを無理やり引っ剥がした!
……違和感だ。違和感がそこにあった。ディアーヌは男だったはずなのに、ちょっとばかし胸があるのではないか?
それにだ。視線を下に下げると…。
「いやぁ〜〜!!」
ディアーヌの会心の平手打ちが忠人の頬にヒットした。ぶべら!っと言いながらキリモミ状態で吹飛ばされる忠人。
派手に水しぶきを上げながら着弾した先はちょうど女性陣が固まっている所だった。
その余波を受けて、女性陣が付けていたバスタオルやらなんやらがプカプカと水面に浮いている。
数名の女性は生まれたままの姿になっていた。そこで顔を上げる忠人。
「お、おぉ…これが噂の桃源郷。なんちゃって」
米神に青筋を立てた数名の阿修羅が居た。鬼もいる。
「言いたい事は…それだけでしょうか?」
「乙女の柔肌…高くつきますよ」
「ち、ちが!これは不可抗力なんや!だいたいそんなちっぱい胸なんか見ても!…あ゛」
「「「「「「「一回死ね!」」」」」」」
「かんにんやー!」
悲しい男の声が夜空に響き渡る。
温泉はとかくいろいろなことが起きるようだ。
今は戦線真っ只中。たまにはこんな息抜きも悪くない。
明日からまたがんばろう。そして、あぁはなりたくないな…。
そう思った男性陣一同だった。
了