「頼んだわよ…相棒」
出撃前の格納庫に、自分の搭乗する機体を見上げる七種 戒(
ja1267)が居た。
ロケットペンダントを握りしめ、物言わぬ機体に話しかける。
決戦は刻一刻と迫っていた…。
エリュシオンを載せた空中戦艦は巨大悪魔が暴れている場所に到着した。
街は破壊され、見るも無残な瓦礫の山だ。それをエリュシオンの中から見ていたパイロットの玄武院 拳士狼(
ja0053)
が己の拳をバシンッと合わせる。
「許せんな…艦橋!こちらは何時でも行けるぞ!」
「待たせたな。各機準備は良いか!?」
艦橋に居た部長から各パイロットに声が届く。
「よし、エリュシオン・アスラ…出る!」
徒手や脚甲による格闘戦が主で、武装は篭手型のナックルと脚甲という黒色の格闘機を操る拳士狼が今、
悪魔に向かって降下した。
「いざ、決戦なのー!!」
エリュシオンを発進させるあまね(
ja1985) 回避、撹乱に特化した『エリュシオン・シャドー』を駆る。
「エリュシオン・コキュートス、天城影人、発進する!」
天城 影人(
ja6865)が駆る機体は攻撃に特化したシャープな機体だ。
「エリュシオン・レッド…go!!」
悪魔を倒すために、人類の希望を背負ってカタパルトで出撃したのは、エルレーン・バルハザード(
ja0889)だ。
目を閉じ祈る様に胸元を握り、管制の指示を待っていた七種 戒は静に目を開いた。
「いつでもイケるわ…エリュシオン・ブラック、go!」
「エリュシオン・ホワイトgo!」
愛・友情・希望・勇気・アウル。己の全てを燃やして悪魔を殲滅する!カタパルトから今、エルム(
ja6475)が発進した。
「初陣から随分ヘビーな相手だな。エリュシオン・ブルー準備完了だ、第三カタパルトから射出してくれ!」
如月 敦志(
ja0941)がカタパルトから射出される。彼の機体は大型魔力炉を搭載しており、
アウル能力を直接エネルギーに変換する。変換効率は非常に良いが安定性が悪い機体となっている。
腕組をしながら飛来し、ドヤ顔を決めつつ着地する機体がある。
「俺のイメージ通りに動く――それ即ち、この機体は俺自身という事。故に、俺はこの機体をこう呼ぶ。
ネハン・ザ・サードと…!」
或瀬院 涅槃(
ja0828)が今、悪魔を根絶せしめんと戦いの舞台に降り立ったのである。
「ほほぅ!人間共もようやく本気を出してきたと言うわけか!よろしい。ならば私も少し本気を出すとしよう!」
巨大悪魔の体がぶれたと思った瞬間、なんと悪魔は2体に分身したのだ。
艦橋にいたクルー達から絶望の悲鳴が上がる。機神エリュシオンを出撃させ、
希望が見えたその先に悪魔の戦力が増したのだ。
「ふん。数を揃えれば勝てるというものではないのだ!悪魔の真の恐ろしさ、その体に刻み込んでくれるわ!」
8体の機神は2体の悪魔を相手取ることとなった。そこで4体ずつに別れ各個撃破する作戦に出る。
拳士狼と影人が先陣をきる。涅槃は援護に回り、あまねは悪魔の撹乱を担った。
ワイヤー付きの苦無を放つと見せかけ、突き刺す。
「うぬぅん!」とエリュシオン・シャドーを捕まえる行動に出た悪魔の隙を突いて瞬時に回避。
回避したと思えば、苦無を投擲するなど、戦場を縦横無尽に駆け巡るあまね。
「矢でもてっぽーでももってこーいなのー! かわしきってぎゃくしゅうなのー!」
しかし、そこは悪魔だ。伊達にマッシブな体を持っているわけではない。
あまねの軽い攻撃をうざいと思いつつも耐え、逆襲に転じた。が、その時だ。数発の銃声が響く。
「初めましてだな、悪魔。俺の名は涅槃三世。仏の存在に心奪われた男だ!」」
悪魔の手足を狙って動きを阻害し、さらに頭を狙った狙撃で悪魔の注意をスタイリッシュに逸らした。
拳士狼と影人が互いに連携を取り前後から攻撃、あまねと涅槃はそれぞれの間隙とサポートに回る見事な連携だ。
互いに互いの行動が読める!それは新たなる人類の可能性を示すものでもあった。
「こ、この虫けらどもめ!調子に乗るなぁあああ!」
ぷっつんした悪魔の両腕が黒く輝きだした。そして自身を軸に回転しだしたのである。
「この『悪魔ダブルラリアット』で木っ端微塵にしてくれぶるあぁぁあああ!」
半径3600kmはどこに居ても吸い込むと言う悪魔の大技に、なす術もなく吸い込まれていくかと思われた。
しかしその時だ!
「俺のこの手が煌き猛る、お前を倒せと轟き唸る!ひィィィっさつ、ゴルドフィンガァァァァ!!」
「俺のこの手が零下に染まるッ!全てを砕けと唸って吼えるッ!凍結!コキュートス・フィンガ――――ッ!!」
黄金色の輝きを放ちながら、悪魔の両腕にエリュシオンアスラとエリュシオンコキュートスの必殺技が炸裂する!
「デェーッドエーンドッ!!」
「ザミェルザーチ・フィーニス!!」
悪魔の大技と二体のエリュシオンの必殺技が拮抗した。しかしそれはほんの瞬き。閃光と爆音を撒き散らし、
双方が吹飛ばされる。
煙が晴れ、悪魔がその姿を現した。悪魔は両腕が潰され使い物にならない状態だ。
エリュシオンの必殺技が勝ったのだった。
「おのれ…おのれおのれぇぇえ!!もう許さんぞ貴様ら!!この私に楯突いたことをあの世で後悔させてくれるぁあ!!」
黒い瘴気が悪魔から溢れ出しその全身を包む。やがて瘴気は徐々に大きくなる。
なんと、悪魔を更に巨大化させていたのだ。
潰されて使い物にならなくなっていた両腕も完全復元されており、その巨体は絶望を体現していた。
そして、その巨体を生かし、暴れまわる超巨大悪魔。「悪魔ドロップキック」「悪魔ボディプレス」などを受け
エリュシオンが劣勢に立たされる。
艦橋のクルー達から悲鳴が上がった。それはそうだろう。互角以上に戦えていた戦況が一気に覆されたのだ。
「ぐぅ…このままでは!」
「こんなこともあろうかと!エリュシオンには合体機構を備えてある!!さぁ、合体だ!!GO!エリュシオン!!」
合体だとっ…!艦橋に衝撃が走る!ある者は「ロマンがキター!」とか「あふれ出るパトス!」など盛り上がり、
お祭り騒ぎだ。
各エリュシオン機のパイロットモニターに『合体承認』の文字が映し出される。そして叫ぶ影人。
「見せてやる…神光機変!合神!エリュシオォォォォォオオオオオオンッ!!」
突如4体のエリュシオンが謎の異次元空間に突入し一つの巨大のロボに合神すべく変形をしていく。
あまね機が足の部位に拳士狼が腕部と胴体に機がヘッドと背中になる。
「これが人類の刃!ブレイカーエリュシオンだッ!!」
ガッシィィィン!!っと決めポーズを経て、ブレイカーエリュシオンが光臨した。
「小癪な真似を!」
激しい攻防が始まった。その巨体に見合わず、すばやい攻撃を繰り出してくる悪魔に対し、
「予測を元に回避を行えば、そう、当たらなければどうということはないのー!!」
足部を担当するあまねが全力の回避で対応する。それどこの零システム!?と言わんばかりの回避だ。
素早さで劣るならパワーでと言わんばかりの力で押し切っていく悪魔。
しかし、その攻防に終焉が訪れる。拳士狼の放った拳の一撃が悪魔にクリーンヒットし、大きな隙が出来たのだ。
「皆、アークブレイカーを使う…!」
ブレイカーエリュシオンの足が変形展開し地面に固定された。
確実な一撃を放てるよう足場を固定したのだ。
更に諸行無常砲は唸りを上げ4人のアウルがチャージされていく。
「天魔覆滅!勝利への水先案内人はこの涅槃三世が引き受けた!…アウル充填90…100…120%!いけるぜ!」
砲身の先に極彩色のエネルギーが目に見えて収束された。
カッと目を見開く影人。
「貴様が負ける理由…それは俺たちを怒らせたからだ…ッ!!全てを切り裂け!」
「「「「アークブレイカ――――ッッ!!!」」」」
4人同時の叫び声とともに巨大なエネルギーが砲身から発射された。螺旋を描き巨大悪魔に直撃する!
「ばかなっぁあぁぁあぁあ!!!!」
超巨大悪魔が爆散した。悪魔の片割れはエリュシオンの勝利で決着がついた。文句のない大勝利だ。
艦橋に歓声が沸く。
では、もう一体の分身した片割れはどうなのか?戦況を見て見るとしよう。
●
エリュシオンブルーが魔符を展開し五芒星をいくつか形成する。
「この出力では直接攻撃は無理か…戒!この五芒星を通過するように敵を狙え!ブースター&属性付与の陣だぜ!」
敦志の放った攻撃が強化され、炎と氷の属性を帯びて悪魔に直撃する。
「オーラィ敦志、派手に魅せてあげるわ…!」
エリュシオンブルーの展開した陣を通るようにショットガンで弾幕をはるエリュシオンブラック。
そしてその隙を突きエリュシオンレッドが自身の兵装であるトマホークを縦横無尽に奮い構成を仕掛ける!
「エリュシオン・トマホーク・ブーメラァンッ!」
トマホークを投げつけ、悪魔を切り裂いた後に再び手元に戻ってきたトマホークを難なくキャッチする。
「あなたに味あわせてやるなの…エリュシオンの恐ろしさをね〜〜〜〜ッ!!」
エルムが駆るエリュシオンホワイトもレッドに追随し、剣で攻撃をする
しかしその時だ。エルムの心に何かが囁いてきたのだ。
「誰?私の心に話しかけるのは…きこえる、天の声が…。そう、これを使えと言うのね。わかったわ!」
エリュシオンホワイトの両腕が突如ドリルに変形した。
「ドリル・ナックル!」
艦橋が大フィーバーする。「キター!」「男のロマン!ドリルだー!!」やんややんやの大盛況である。
「ドリル!!…見ているか友よ!あれが正義を貫き、天を穿つドリルなのだっ!!」
司令がぐっと握りこぶしを作り滂沱の涙を流す。友って誰?とか突込みが追いつかないほどにもう、
色々とダメな艦橋だった。
「ぐぬぅ!ドリルとは味な真似を!」
ドリル攻撃を受け、たたらを踏む悪魔。
エリュシオンホワイトはそのドリルナックルを繰り出した直後、体制を崩してしまっていた。
それを見逃さない悪魔は巨体に似合わぬ俊敏な動きで『悪魔ドロップキック』を放つ。
「あぅう!」
倒れたエリュシオンホワイトに更に追撃がかかる。足を持たれそのまま『悪魔ジャイアントスイング』に移行する。
「派手に飛ぶがいい!!」
豪快に放り出されるホワイト、このまま地面に叩き付けられれば多大なダメージは必死だ!
「やらせるかよ!」
地面に叩きつけられる前に放物線上に割って入ったのはエリュシオンブルーだ。
ガシンッと自分の機体に損傷を出しつつもなんとかホワイトを受け止める。
それを見た悪魔は黒い瘴気を体から噴出し始める。その時、何かの兆候をライフルのスコープごしに感知した戒。
「待って、様子がおかしい…!?まさか!」
「もはや小細工は無しだ!ぶるうらあああああ!!」
やがて瘴気は徐々に大きくなる。そして、悪魔を更に巨大化させたのだった。
「このタイミングで巨大化ね…でもそういうの自分だけの専売特許と思うなよ?E−LINK起動。
魔力炉出力安定!これならいけるぜ!エルレーン!!」
合体シークエンスを開始し、各機の変形・合体後の姿がパイロットモニターに映し出される。
「わかったの!みんな!心を一つに合わせるのっ!」
エルレーンの言葉に皆のアウルが燃え上がる!
「「「「機・神・合・体!エリュシオン!」」」」
謎次元に突入し、レッドは頭部、ブルーは胴体、ホワイトは脚部、ブラックは腕部にそれぞれ変形した。
ガッシィィン!!とまたもや決めポーズを出し『超魔機神エリュシオン』がここに出神したのだ!!
「あはあぁぁ…カ・イ・カ・ン、なのっ…」
合体の衝撃に身を震わせたのはエルレーンだ。甘美な興奮のあまり笑顔で鼻血を出す。とても満足したようだった。
「ぶるぁああああ!!!」
悪魔チョップや悪魔ドロップキック。悪魔ブレーンバスターなど激しい攻撃を悪魔が繰り出すが、
超魔機神エリュシオンも負けてはない。
それはまさに激戦。お互い一歩も譲らない攻防に艦橋のクルーたちも固唾を飲んで見守る。
「ちょっとアツいかも…ねッ!」
戒の兵装である銃が超魔機神エリュシオンに成る事により荷電粒子砲をへと変形していた。
それを取り出し構え発射する。
唸りを上げた正義の粒子は見事に悪魔に直撃した。それをみた敦志が叫ぶ。
「よし、ラストの一撃と行くぜ。アルティメットフォーメーション!」
超魔機神エリュシオンはなんと一旦合体を解いた。再び謎の異次元に突入する4機。
ブルーは胴体、ホワイトは上半身、ブラックは下半身、ブルーは巨大な高出力ブレードへとそれぞれ変形した。
謎な異次元はまだ続く。エリュシオンはその手にした高出力ブレードを天へ掲げた。
「最高出力はもって10秒だ!その間に決めろ!エルレーン!」
敦志は己の機体にある魔力炉の出力を最大にし、光波ブレードに変換。
いつの間にか荒野に立っていた超魔機神エリュシオンのブレードが青白く輝く。
その輝きと共に大地が鳴動し地が割れていく!
「こ、これは何だ!」
悪魔が怯む。謎な異次元のカで自身の力がまったく発揮できないのだ。何かに拘束されたかのように体が動かない。
そう、悪魔は捕らわれてしまったのだ。『お約束』と言う異次元に!
超魔機神エリュシオンが巨大悪魔に向かって飛んだ。
その機体から金色のアウルを振りまきながら一筋の光弾となって。
エルレーンが叫ぶ!
「決めるの!秘剣・久遠Vの字斬りィィッ!!」
その言葉通り『V』の字に斬られた悪魔は断末魔を上げながら爆散した。
艦橋が再び歓声に沸く。勝ったのだ!絶望的といえるこの戦いに奇跡的に勝利した。
暗雲は晴れ、雲間から穏やかな日差しがエリュシオンを優しく照らしていた。
帰還したパイロット達は大歓声と共に迎えられる。
そんな中、自分の機体の前で動かない一人のパイロットがいた。七種 戒だ。
「アナタの愛したモノ…守れたかしら?」
そっとロケットペンダントを閉じて物言わぬ機体を見る。
照明の当たり所がよかったのか、その機体が一瞬きらりと光ったように見えた。
それは戒を優しく励ますような、そんな光だった。
了