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マスター:桜井直樹
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/07/05


みんなの思い出



オープニング

●捨てられた村

そこは山深いところだった。
『村』というよりは、『集落』という表現の方が的確なような、うら寂しい佇まいの場所だ。
 過疎化して久しく、今住んでいるのは七十をとうに過ぎた高齢な者たちばかり。
 その子供たちは物心つけば生まれた家を出て街へ行ってしまうため、もう学校も廃されてしまい、農協や郵便局や役所といった公共機関ですら、彼らが徒歩で簡単に行ける範囲にはなかった。
 軽自動車を持つ老人もいたが、運転技術もおぼつかず、近くの街までの二時間さえ苦になる。田舎道はともかく、都会の道路など怖くて走れない。
 持っていた山の手入れすら難しく、とは言え林業に重きを置かないこの国では、生活の糧になるような値で売れることもなかった。
 老人たちは慎ましく、自分の家の庭先に畑を作り、隣人たちと収穫物を交換し、日々食に困らなければいいという気持ちで、ただ穏やかに暮らしていた。
 年に数回ほど、田舎暮らしを夢見た若者が移住を試みに来るが、24時間営業のコンビニエンスストアもカラオケもボウリング場もない場所では三ヶ月も保たず、やがて無言で去っていった。
 老人たちがここでそれなりに暮らしていけるのは、週に一度やってくる役所のトラックが生活用品を売ってくれるからだ。
 日用品や嗜好品、消耗品は困らない程度にあり、手紙や荷物も請負ってくれる。
 もちろん、電気も水道も電話も通っているが、ここの住人たちは自虐を込めて自分たちの住む場所をこう呼ぶ。

 ──見捨てられた村。
 ──地図にない村。

 と。



●山の中の敵

こんな土地柄のせいか、年齢の割には皆健康だった。
 農作業はできるし、季節ごとの美味を求めて山に入ることもある。
 ほとんど手の入っていない山なので、自然の動物も生息していたが、動物が村におりて悪さをすることもなければ、人間が山を荒らすこともしなかったので、うまいバランスで共存できていると言えた。

 今の季節は、この地特有の赤く甘い果実が採れる。
 悪天候の日を除き、男たちは交代で山に入っていた。
「もう日暮れが早いですからね。あまり奥深くまでは行かれませんよう」
 妻に見送られて、一人の老人が山へ入る。
「たくさん採って、孫に送ってやろう。都会では見られないものだから」
 老人はほくほくとした笑顔で出掛けていく。

 初夏とは言え、山奥は冷えることもある。
 万一の際の雨合羽も兼ねたジャンパーを羽織り、老人は山へ行く。
 ある時期にしか入らないため、数日前に誰かが通った道以外は草深い。
 老人たちは腰に鎌を持ち、生い茂る草を切り分けながら山へ入るのだ。
 既に草が刈り取られているところは、先日隣人が通った道だろう。
 そこはもう収穫されているから、また新しい道を自分の鎌で開いていく。
「キ────!!!」
 バサバサッと、大きな影が飛んできた。
 老人は慌てて身を低くする。
 飛び去って行ったのは、大きさと色からしてカラスだろうか。
 しかし、「カーカー」ではなく「キー!」という鳴き声だった。
 餌がなく、気が立っているのかも知れない。
 辺りが静かになったことを確認して、老人は再び山の中へ歩き出す。
 そこへ──再び。
「キ────!!!」
 先ほどカラスと見えた大きな鳥のようなものが、二羽こちらへ飛んでくる。
 老人は避けきれず、手にしていた鎌で夢中で薙ぎ払った──はずだった。
「お……?」
 確かに命中したかと思ったのに、刃先には血もついておらず、二羽のカラスのようなものは大きな羽音をたてて高く飛び上がった。
「これは……?」
 老人は慌てて来た道を引き返す。
 自分で刈った草の道のおかげで、迷うことはない。



●生き物に非ずもの

 一時間と経たずに家に戻った時、毎週やってくるトラックに、村人たちが群がっていた。
「おやマサさん、今日は山じゃなかったかね?」
 隣人が声を掛けてくる。
 マサさんと呼ばれた老人は、先程の出来事を話した。
「マサさんの鎌さばきが通じないたぁ、えらいカラスもいたもんさ」
 カラカラと笑う老人を見て、トラックの運転手が怪訝そうな顔をした。
「当たっても血が出ないって、そんなカラスいませんよ?」
「当たらなかったんだろうよ。もうマサさんもいい歳だしなぁ。あ、ワシも同じようなもんだが」
 また笑う。
 トラックで村人に生活用品を売りに来た青年は、「まさか天魔じゃないですよね?」と心配を口にした。
 しかし明朗な老人は軽くかわす。
「こんなシケた村ぁ、襲っても何の足しにもならんだろう。若い女もいやせんのに」
「吸血鬼じゃないんですから、若い女性ばかりを選んで狙ったりしませんよ。村の大小も関係ないですし。気をつけた方がいいですよ」
 集まっていた村人の間に、ざわめきが広がる。
「僕、戻ったら撃退士に連絡してみます。それまで皆さん、山に入らないでください。なるべく早く、様子を見に来てもらうように話しますから」
 そこで、最も高齢と思われる、豊かな白髪の背の低い老人が、心配そうに口を挟んだ。
「しかしワシら、討伐を依頼できるような金持ちはおらんぞ?」
 トラックの青年は少し驚き、すぐに人懐っこい笑みで彼らを励ます。
「何言ってるんですか。皆さんが『見捨てられた村』って呼んでいても、ちゃんとこの村はこの県の一部です。役所がちゃんと責任持ちますよ。僕だって役所勤めです。ちゃんと皆さんの生活を守ります」



●役所の責任

「これってやっぱり、何か魔物ではないかと思うんです」
 村から戻った青年は、すぐさま上司に話を申し出た。
「なるほど。鎌では切れないカラスか。今はカラスだけかも知れんが、あそこなら熊でも猪でも狼でも、いてもおかしくはないな」
 喫煙所で紫煙をくゆらせながら、白髪混じりの長身の男が応じた。煙草が苦手な青年は缶コーヒーを手に、顔をしかめながら我慢している。
「撃退士をお願いできるでしょうか?」
「当たり前だ。住民が安心して暮らせることが、役所の責任だ。俺が上に話を通しておく。お前は久遠ヶ原に連絡を頼む」
「はい!」


リプレイ本文

●下準備

 その村までは、約束通り役所の職員が車で連れて行ってくれた。
 数少ない村人たちは全員が村長宅に集合してくれていた。役所の職員が気を利かせてくれたらしい。
「それで、その山の地図などはありますか?」
 御崎緋音(ja2643)は最高齢と思しき白髪の老人に訊ねた。
 機能性重視だが、年頃の女の子らしいかわいらしいアウトドアルックファッションだ。村の誰かが「都会風じゃのう」と感心している。
「そんなものはありゃせんよ」
 やや肩を落として老人は言う。
「……地図にない村、か」
 そう呟いた鳳月威織(ja0339)の言葉に、天野那智(jb6221)は「地図にない村と言われてますが、地図くらいあるでしょう?」と聞き返す。
 本当に地図に載っていないなんてひどすぎるからだ。
 すると役所の職員が地図を取り出して広げて見せた。
「この村はここにあります。ちゃんと地図には載っていますよ。まぁ……本当に名前だけですが」
 申し訳なさそうに青年は肩をすくめる。
 確かに村の名前は乗っているが、駅はおろか、山の名前すら載っていない。これでは何の役にも立ちそうになかった。
「じゃあ、わかる範囲でいいから、ちゃっちゃと書いてもらうことはできないのか?」
 ロベル・ラシュルー(ja4646)は聞いてみる。横から礼野智美(ja3600)が文具セットを取り出した。
「ああ、用意がいいな」
 ロベルは感心する。智美は老人たちから聞いたとおりにてきぱきと地図を描き、最初にカラスのような天魔を見たという地点に赤ペンで「×」をつけた。
 それから、三週間前に山に入ったという老人から、ちょうどその地点と反対側になる道への行き方も教えてもらうことができた。草を刈ってあるから、多少伸びていても周囲と成長が違うのでわかるだろうということだった。
「それで、もし天魔以外の野生動物が出た時にはどう対処したらいいかな?」
 今回のメンバーの中では唯一の天魔で撃退士である、うらは=ウィルダム(jb4908)は訊いた。
「獣がディアボロじゃなくても退治して欲しいなら喜んで引き受けるよ」
 一見かわいらしい女の子のような少年、キイ・ローランド(jb5908)も追って言う。
「そうじゃな、熊も狼も山から降りてくることはないし、襲われることもないので、これからもうまく共存していきたいと思っておる。しかし、猪は畑を荒らしよるから、出来れば見つけ次第駆除を願いたいのう」
 老人一同も、うんうん頷いている。余程猪の被害に困っていたのだろう。
「わかりましたなの。それじゃあ悪いディアボロ以外は、猪討伐ですね」
 そう言う八歳の少女である、周愛奈(ja9363)を見て、役所の青年は少し胸を痛めた。
 こんな小さな子に現場に行かせる世の中なんて……と。
「じゃ、予定通りA班B班に別れて行きましょう。準備はいいですね?」
 那智の声に、皆頷く。事前に携帯番号の交換は済ませたし、携帯が圏外の場合に備えて、愛奈と那智がトランシーバーを持っていた。
「あ、良かったら雨合羽か何か、悪天候の時に邪魔にならないものを貸してもらえないか?」
 ロベルの言葉に、役所の青年がトラックから雨合羽を数点取り出し、自前で持ってきていないメンバーに手渡した。
「どうかお気をつけて」
 老人たちの心配気な表情に、威織はにっこりと微笑む。
「すぐに帰ってきますよ」



●山中・A班

「あった、ここなの、おじいさんが刈った痕」
 愛奈が地図を覗いて確認する。さすがは現場の人間の言葉を元にした地図だけあって、すぐにわかった。智美もうまく描いてくれていたから助かる。
「上に道がつながってます」
 緋音はゆっくりと身を低くして進む。同じA班のロベルとキイも、周囲を気にしながらゆっくりと進む。
「道が途切れたな。ここでじいさんが襲われたってことか」
 ちょうど草の刈り取られていない場所まで来て、ロベルが立ち止まる。血痕等がないので、やはり相手はディアボロなのだろう。老人の血痕もなくて幸いだ。
「このまま奥に進もうか? カラスの棲家があるかも知れないよ」
 キイの言葉に一同頷き、歩く順番を入れ替えて進んだ。
 先頭からキイ、ロベル、愛奈、緋音という、戦闘に適した布陣にしたのだ。



●山中・B班

「島の奥みたいだよな」
 智美がぼそりと呟きながら、落ちている石を幾つか拾ってポケットに入れている。
 うらはは虫除けスプレーをかけ、汗拭きタオルを腰に掛けている。
「ここでしょうか? 草の成長が少し違うような」
 那智が三週間前の草刈り痕らしきものを見つける。なるほど、草の背丈が他と違っているのがわかる。
「コンパス通りですね。ここから入ってみましょう」
「私が先頭になりましょう。草を刈って進みます。田舎育ちで作業は慣れているから」
 威織の提案に智美が進んで先頭に立つ。その後ろに威織、うらは、那智となる。
「何も出ないといいんだけどね。威織は両手に花どころの騒ぎじゃないね、美女三人に囲まれて悪い気分じゃないだろう?」
 うらはは前を歩く威織の背中に、肘でうりうりとする。
「ははは、光栄ですよ」
 威織は言われるままににっこりと微笑み返す。



●カラス

「キィ──!」
 どこからか、高いところから鳴き声が聞こえた。それはA班の全員が耳にしていた。
「来るぞ!」
 ロベルの声に全員臨戦態勢に入る。黒い大きな影が上方に一つ見えた。
 キイが冥魔認識を使う。愛らしい少年の面影は消え、大人びた撃退士の顔になっている。
「間違いなくディアボロだ!」
 巨大なカラスのディアボロが射程距離に入った瞬間、間髪入れずに緋音が雷帝霊符を発動させる。木々に当たらないように、空中の一点のみを狙って。
 ゴゥ、と音がして、カラスは落下した。撃破できたはずだ。
「死体は別の獣を呼んじゃうから回収するね」
 キイがカラスの落下地点へ向かう。しかしそこへあと二匹の巨大なカラスが飛んできた。先ほどの気配を察したのだろう。
 キイは身をかがめ、愛奈の放つ桜花霊符の進路の邪魔にならないようにした。
 カラスは桜の花びらのようなものに巻かれ、また一匹墜落する。キイは少しずつそちら側へ移動する。
 獣の死体の臭いは別の獣を呼び寄せる。それがディアボロならば倒すまでだが、猪以外の獣とは共存したいという村人のために、余計な暴動は避けたいのだった。
「ほらほら、もう一匹いるんじゃないの?!」
 キイは声を上げて、二匹の落下地点に走った。ここに集まってくれればいい。
 予想通り、キイを目掛けて三匹目が滑降してきた。それをロベルのオートマチックが撃ち抜く。カラスは弾けるように落下した。
「ありがとー!」
 キイは持ってきていた袋に死体を回収する。特殊加工してあるので、丈夫で腐敗臭も漏れない袋だ。現場に残った臭いは風が消してくれるだろう。しかし雲行きが怪しくなってきた。雨で臭いは流れるだろうが、これからの戦闘がやりにくくなりそうだ。



●熊と狼と猪

 遠くで何かの鳴き声と、銃声のようなものが聞こえた。きっとA班が成果を挙げたのだろう。誰も心配はしなかった。それより、ウサギ一匹出てこないこちらの方が不気味に感じられるB班だった。
「雲行きが怪しくなってきましたね。こういう時は、雨雲は早いですから、今から雨具を身につけておきましょう」
 威織の提案に、三人も雨合羽を羽織る。途端に大粒の雨が頬を打った。
「うわぁ、本当にすぐ来た。山の天気が変わりやすいって本当だね」
 うらはは人間界の知識をまたひとつ実感する。
「自然とは素晴らしく大きな存在なのですよ」
 笑みを浮かべてうらはに言う那智は、自然が大好きで、とても詳しいのだ。
 思ったより和やかに捜索していると、上の奥の方からガサガサという音が聞こえてきた。A班と合流する道ではないはずなので、獣かディアボロに違いない。村人には山には入らないように言ってあるのだし。
 ガサ、と顔を出したのは猪だった。鼻をヒクヒクさせている。人間の臭いがわかるのだろうか。
 咄嗟に智美はポケットから拾った小石を取り出して投げた。
「当たった!」
 うらはが叫ぶ。と言うことは、ディアボロではないということだ。
 しかし猪は駆逐対象だ。驚いて逃げようとする猪の前に、威織が神速で回りこむ。そこへ那智がアイスウィップで急所を刺した。思わず智美は顔を背けたが、これは仕方のないことだと割り切る。
 来る前にキイに言われた通りに、他の獣を呼ばないように威織はキイから渡されていた袋に死体を収納した。
 しかし、既に猪を追ってきていたらしい熊が、顔をあげるとデーンと立ちはだかっていた。
 威織も落ちていた石を拾って投げてみる。当たった。熊はディアボロではないのだ。
「手を出せないな……」
 威織は困った顔で、熊と目を合わせたまま後ろに進む。熊はじっと威織を見つめていたが、追ってきた猪の臭いが途絶えたせいか、元来た道を帰って行った。
「本当に人間と共存してるんだね」
 うらはが驚いて言う。那智も驚いていた。こんなに明らかに共存が確立しているとは思わなかったからだ。
 すると、反対方向から猪が突進してきた。何かに追われているようだ。見ると、すぐ後ろに狼が走っている。
 うらはが気迫で確認すると、どちらもディアボロではなかった。しかし、狼の目の前で獲物を奪うのはどうしたものだろう。
 取り敢えず、猪の走っていく方に一緒に駆けていく。狼と猪の距離は縮む一方だ。
 そこで那智は気付く。今走っている方向に真っ直ぐ行けば、A班と合流するかも知れない。
 トランシーバーで愛奈に連絡を入れたところ、カラスのようなディアボロの討伐は終わり、他のディアボロを探しているとのことだった。こちらの事情を説明し、狼に見つからないように猪だけを狩れるか訊いてみた。相手がキイに変わり、「やってみるよ」という答えが返ってきた。
 ひとまず、そこまで狼を猪に追いつかせるわけにはいかない。
 うらははもう一度気迫を使い、しばらく狼の動きを封じてなんとか間を持たせる。



●遭遇

「来たぞ!」
 最初に気づいたのはロベルだった。すぐに猪が走ってくる。その後ろの狼に対して、愛奈は異界の呼び手を使って束縛した。狼が動けない間にも猪は走っていく。
 合流したB班の智美が縮地で猪に接近する。那智がサンダーブレードで攻撃し、ロベルがオートマチックで急所を打った。
 狼とはだいぶ距離が離れたので、こちらまで来る心配はなさそうだ。
 キイがナイフを取り出し、すぐに猪の胸を開いて動脈を切って、血抜きをした。
「こーしないとお肉は不味くなっちゃうからね」
「えっ? 食べるの?」
 緋音が驚いて訊く。
「友達のおみやげに貰って帰ろうかなって。あとはおじいさんたちに精をつけてもらうよ」
 きれいに処理して、キイは一旦袋にしまった。



●帰還

「おお、帰ってきよったぞい」
 戻るまでに日が暮れかかったのは、智美が昼食として軽いランチを持ってきてくれていたのを皆で食べたからだった。
 あれからもうすこし山深いところまで進み、猪を四匹ほど始末した。ディアボロはもちろん、熊や狼に遭うこともなかったので、遅いランチを摂って山を降りてきたのだ。
 心配させて申し訳ない。
「大丈夫でしたか? 怪我などされていませんか? 救急道具もありますが」
 役所の青年が心配そうに声を掛けるが、雨に濡れて服が泥だらけになった以外は、いたって元気だった。
 キイが猪の死体を取り出し、
「それじゃあおじいさんたち、これで精をつけてね」
 と、差し出した。
 喜んだ老人たちは、この時期にしか採れないという、赤く甘い果実を皆に持たせてくれた。
「うわぁ、美味しそうです!」
 緋音は故郷を思い出して喜んでいる。那智もその見知らぬ果実に興味津々だった。
「とりあえず山の捜索は済ませましたけど、また変なものが出たら連絡お願い致します」
 智美は村人と役所の青年に注意を促した。
「人口の大小は関係ないんですよ。人の少ない所が襲われて全滅した例も少なくないですから」
「わかりました。どうもありがとうございます」
 青年は礼を言う。老人たちも各々頭を下げて礼を言った。
「あのう……」
 愛奈はおずおずと言う。
「……愛ちゃんにいろいろと教えて欲しいの。その、山のこととか、村のこととか」
「おお、いいともいいとも。こっちへ来なさい。ばぁさん、まんじゅうでも持ってきてくれや」
 孫のような愛奈はあっと言う間に老人たちに馴染み、自然の話を聞いたりしていた。
 それを見て、威織も近くにいたおばあさんに声を掛ける。
「僕も……してもいいならちょっと力仕事手伝ってから帰ります」
「あらまぁ、ありがたいね。じゃあ、こっちの屋根の修理、手伝ってくれないかしら」
 成り行き上、ロベルとキイも若い男手ということで、一緒に手伝うことにした。田舎の村で、汗を流すのも悪くはないだろう。
「お嬢ちゃんたちもこっちへおいで。濡れて寒いだろう。風呂でも入って行きなね」
 老人たちは雨が降った折に、各自家で風呂を沸かしてくれていたらしい。
 皆で一つの風呂、というわけにはいかなかったが、各自各家に招かれ、汗と泥を流してさっぱりすることが出来た。
 あとから男性連中も風呂を借りた。



●決意

「あのう……」
 役所の青年は、一番穏やかそうな威織に声を掛けてみた。
「はい?」
「撃退士って、素質があれば今からでもなれるんでしょうか?」
 威織が見たところ、青年はまだ二十代そこそこだった。アウルの素質さえあれば、久遠ヶ原に入ることは可能だ。
 しかし威織はそうは言わなかった。
「あなたにはあなたにしかできない仕事がありますよ」
「そうだよ。役人さんからこうして依頼がきたから自分たちもここに来れたんだし、なら、ここは役人さんが守るに値する場所ってわけだ」
 キイも隣で言う。ロベルは簡易吸殻を持って一服しながら、一緒に立っていた。
「お前がいたからここの村人は救われたんだよ。撃退士だけが人を守る仕事じゃないんだ」
 自分より若い三人の男性に力付けられ、役所の青年は「そうですね!」と笑顔を輝かせた。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

死神と踊る剣士・
鳳月 威織(ja0339)

大学部4年273組 男 ルインズブレイド
心に千の輝きを・
御崎 緋音(ja2643)

大学部4年320組 女 ルインズブレイド
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
良識ある愛煙家・
ロベル・ラシュルー(ja4646)

大学部8年190組 男 ルインズブレイド
ウェンランと一緒(夢)・
周 愛奈(ja9363)

中等部1年6組 女 ダアト
撃退士・
うらは=ウィルダム(jb4908)

大学部3年153組 女 ルインズブレイド
災禍塞ぐ白銀の騎士・
キイ・ローランド(jb5908)

高等部3年30組 男 ディバインナイト
V兵器探究者・
天野 那智(jb6221)

大学部6年125組 女 アカシックレコーダー:タイプA