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マスター:佐嶋 ちよみ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/05/09


みんなの思い出



オープニング

●魔軍の蠢動
 轟音と共にアスファルトの道が破砕されてゆく。
 破砕するのは剛脚、大蜘蛛の脚、だがそれが支えるのは蜘蛛の胴ではなく、無数の触手を生やした円筒状の肉塊だった。
 そのおぞましさに、街には悲鳴が渦を巻いて広がってゆく。
 息を切らし必死の形相で駆け逃げる人々の背へと、八本の蜘蛛脚がうごめいて高速で肉塊が迫り、触手を伸ばして逃げる人々へと襲いかかり、絡みつき、巻き、捕獲してゆく。
 人間の街へと進撃したデビルキャリアーの群れが猛威を振るっていた。

「悪魔めぇっ!!」
「市民が体内に囚われているッ! 脚だ! 脚を狙ぇぇええ!!」

 町の撃退署の撃退士達が、リボルバーを手に猛射する。弾丸が嵐の如くにデビルキャリアーの脚へと命中し、その皮膚を突き破って体液を噴出させてゆく。四本の脚が折れたデビルキャリアーはバランスを崩して前のめりになり、その前進が止まった。

「やったか?!」
「攻撃は十分通る。いけるぞ!」

 撃退署の撃退士達が歓声をあげる。

「キャハハハハ! だーめだめっ!!」

 不意に、空から甲高い笑い声が響いた。
 ビルの屋上より漆黒の翼を広げて少年が跳び、二本の曲刀を抜き放って地上の撃退士達を見下ろす。

「だって君等、ここで死ぬから!!」

 ハリドゥーン・ナーガは全身から赤紫色の光を立ち昇らせると、クロスさせた二刀に収束、踊るように無数の剣閃を繰り出した。
 刃の軌跡から三日月状の光刃が飛び出し、雨の如くに地上へと降り注いでゆく。
 地上から断末魔の悲鳴が次々にあがり、真っ赤な血の華が咲き、光刃波の直撃を受けて両断された撃退士達の死体がアスファルト上に転がってゆく。

「ヒャハハハハハ! 反抗なぞ無駄無駄無駄無駄ァッ!! 我等こそがザハーク蛇魔軍! 征けよデビルキャリアー! この地の人間どもを狩り尽くせッ!!」

 少年の声に応えるようにデビルキャリアー達が津波の如く進撃してゆく。
 その日、街が一つ悪魔の群れに呑まれた。
 悪魔子爵ザハーク・オルスは、ヴァニタスのハリドゥーン・ナーガの他にも八体の有力な悪魔を各地へと放ち進撃させていた。
 東北地方はさながら地獄の蓋を開いたかの如く、破壊と死が荒れ狂い始めていたのだった。



●北の城跡にて
 青森県青森市浪岡。
 室町の時代に築かれ、戦国の世に落城した城跡がある街。
 青森市中心部と弘前市中心部のほぼ中間に位置しており、青森空港からは車で15分ほどの距離にある。
 桜前線が押し上げ、春の遅いこの地でも桜のつぼみが綻ぶ頃合いに――悲鳴の報告はもたらされた。


 久遠ヶ原学園ミーティングルーム。
「場所は配布した地図の通り。青森市浪岡から救援要請だ」
 各種学校、病院、住宅街……人々が穏やかな生活を営み、さくら祭りも近く控え、のどかな朝のことだったという。
「情報があちこちから飛び込んでいて、整理するのもやっとだが…… 類似案件で、潰された街もある。
青森の撃退署からも既に救援は送られているが、防戦一方らしい。いくつかデータは取れているから、それをもとに加勢を、ということだ」
 平穏な街に、突如として現れた異形の群れ。
 奇怪な触手が次々と人々を捕え、飲み込んでゆく。
 巨大な異形を護衛するように、血色の異形もまた猛威をふるっている。
「気にかかるのは『デビルキャリアー』と呼ばれる巨大イソギンチャクだな。一般人を体に取り込んでいるという」
 悪魔・天使にとって、『人間』の魂および精神が糧となる。殺してしまっては意味がない。
 それを前提として考えるのなら――『一般人の取り込み』には、何かしらの意図がある、と読めるだろう。
「殺すだけなら、攻撃をして血に染めればいい。しかし、奴らはそれをしない。体内へ取りこまれた市民がどういった状況か分からないが……闇雲に胴体を狙うのは危険かもしれんな」
 脚部を攻撃したところ有効であるという報告もあったが、すぐさま波状に押し寄せる護衛ディアボロによって倒壊させるには至らなかったそうだ。
 事件発生から半日と経っていない。
 ディメンションサークルによる到着地点の誤差を考慮しても、援軍として間に合う……間に合うことを祈るばかりだ。
「浪岡城跡へと人々は避難している。そこが最後の砦だ。撃退士たちは、もう少し輪を広げたところで戦闘を展開している」
 街を流れる浪岡川がL字に曲がる位置に建てられていた平城の跡地、北側裏手には神社が広がる。
「正面へ押し寄せる群れの一端を請け負ってほしい。出来うる限り、敵の情報も持ち帰ることができれば言うことはないな」
 教師はそこで、話を締めた。
 語れることは少ない。
 現地で、目にし、対峙することが何よりもの情報となるだろう。



リプレイ本文


 城跡――歴史を紐解けば戦いの跡とも言えよう。
(力のある者が力のない者を糧にする。それは、自然な事でヒトも同じ事をしている以上、悪魔を非難する資格はない……)
 天魔たちは『食糧』として人を襲う。
 ヒトは時として権力を求めヒトと争う。
 恐らくは『食糧』を狙いに押し寄せる軍勢を前に、助けを求めるヒトを背に、佐藤 七佳(ja0030)は煩悶する。
(……敵を殺す事が正義だとは思わない。でも)
「どうしたの、難しい顔してー!」
 ばァん!
 七佳の小さな背を、景気よく砥上 ゆいか(ja0230)が叩いた。
「数が多いから、まずは指揮官倒さなきゃね」
「川、は警戒要素か?」
 龍実が話に加わる。
 機動力のある阿修羅三人で、一気に敵の背後を突く作戦であった。
「あたしが川から奇襲することだし、向こうも川を移動手段にすることは考えるかもですね」
「川を使って、そのまま城址に向かうことも無くはないか」
 出動前に示されたマップは、敵との大まかな位置把握の物で、距離は精密ではない。
 左手に流れる浪岡川――遊泳には季節的に早いと思う、が。
「青森かァ。行くなら寝台特急! って思ってたけど、ディメンションサークルってスゲェ便利だな」
 数キロの誤差がどうした。初めての転移に若干テンション上がり気味なのは鷹群六路(jb5391)。
「しかし、これじゃ観光にもなんねェや。ったく嫌だねェ、悪魔って奴は…… あー、俺も悪魔だ」
「……」
「うん?」
「っと、悪い」
 義憤に燃えていた志堂 龍実(ja9408)だったが、六路の独り言にうっかり毒気を抜かれてしまった。
 くすっと笑い、それから表情を引き締める。
「これ以上好き勝手な真似はさせない…… 必ず助けるッ!」


 浪岡川の上を風が吹き抜ける。
 土地が開けているのは――破壊された後だからだ。
 市民たちが身を寄せている浪岡城址を通り抜け、久遠ヶ原の撃退士たちは指定された戦場へと飛び出した。





(もう誰も死なせない)
 山里赤薔薇(jb4090)は、小さな体で戦斧を握りしめる。
 ダアトの彼女にとって、魔法攻撃が効きにくいという敵情報は不利でありながら有利であった。
 知ることができれば、対処はできる。
 防御に関しては術がある。
「大きな斧だな?」
 声を掛けてきたのは、同じくブラッドウォリアーを相手取るために前線を張る御影 蓮也(ja0709)だ。
「あ、魔法攻撃が効かないということなので……」
 人見知りゆえに気後れしながらも、相手は共に闘う仲間。つっかえつっかえ、赤薔薇は答える。
(行方不明になった、お父さんが使っていた斧……)
 そこまでは、言葉にできなかったけれど。
 物理攻撃の武器は赤薔薇の専門分野ではないため上手に扱えるかは難しいが、威力は破格だ。
 赤薔薇の答えに小さく頷き、蓮也は戦場へ目を移す。
「中にいる人達の救出を迅速に行わないとまずそうだな」
「懸念はあるが試すにはリスクの方が大きい。さて、どうしたものか」
 フィオナ・ボールドウィン(ja2611)は言葉と対照的に、愉快気な表情で顎に手をあてた。
 巨大な異形のデビルキャリアーを前に、ブラッドウォリアー達が包囲する形でガッチリ護衛についている。
 指揮官がいるという情報だが、ここからでは姿は見えない。
「あの足でそのまま駆け去るのか、それとも体内で精神・魂を吸い取ってエネルギーだけ持ち去るとか」
 いずれにせよ、キャリアーの存在が不気味だ。
 『ディアボロが人間を捕獲する』……捕獲して、その先は?
 憶測しか出来ないが、蓮也はだからこそ最悪の形を想定してしまう。
「全て潰してしまえば試す必要も無い、か」
 不安要素はいくらも挙げられる、が。
 潰せばいい。
 ニヤリと自信を現すフィオナの横顔を、赤薔薇がそっと見上げる。
「随分と特殊な敵のようですが…… やる事はいつも通り、狙い撃つだけですね」
 にこにこ。緊迫した戦場に似合わぬ、穏やかな笑顔の石田 神楽(ja4485)。
 手にしているのは、やや大型の黒き銃。
 撃退士。
 ただの人間とは違う、天魔を相手に戦う力をもつ者。
(やっぱり戦いは怖いけど……、自分達にしかできないこと)
 例えばフィオナの自信は、経験の積み重ね故だろうとも思う。
 けれど、赤薔薇とて同じように重ねてゆくのだ。撃退士としての経験を。戦いを。震えながらでも、大切な人たちのために。




「ではいつも通り――狙い撃ちます」
「珍しいカタチだなァ? 中がどうなってんのか、見せてくれねェかな」
 神楽が引鉄を引くと同時に六路は闇の翼を広げた。
 地上で剣を振り回すばかりのブラッドウォリアーを軽く越え、大切に後ろに守っているデビルキャリアーを狙う。
(でけェな、こりゃ…… こんなのがゾロゾロしてるってこたァ、なにかしらの新物、か?)
 上空から見下ろし、六路はその異形に目を輝かせた。
 うぞうぞと蠢く触手は、円筒形の胴体と相まってなるほどこの世界でいう『イソギンチャク』のイメージだ。
 土台から伸びる節足は、しかして『イソギンチャク』とはマッチしない…… 無邪気な少年が編み出した合成獣、とでもいえようか?
「目玉はどこに付いてんだろなァ。アレで前向いてんのか?」
 単純に撃破さえすればよいわけではない。
 各地で同様の敵が暴れていることから、少しでも共有できる情報を持ち帰りたいところだ。

 神楽のアウル弾がキャリアーの脚一本を撃ち抜く。
 それが合図と言わんばかりに、最後方のブラッドウォリアーが杖を掲げた。
 キャリアーを護るべく盾として前線に上がるウォリアー、最前線の数体は撃退士に向かって突撃を開始する。
「飛んで火に入る、だな」
 素早くフィオナも前へ出て、接触する一体へとタウントを掛けた。
「案ずるな。ここは押さえよう。十全でロードへ迎え!」
「纏めて吹き飛ばす、駆けろ!真弾砲哮<レイジング・ブースト>!!」
 フィオナは大剣でウォリアーの攻撃を受け止め、ケイオスドレストで護りを万全にした蓮也が、真弾砲哮を放つ。
 蒼光の砲撃は陣形を動かしてきた出鼻を挫き、2体を巻き込む。
 フィオナとワンテンポ遅らせた行動で、敵の意識を上手く逸らすことができたようだ。
「川側の4体を惹き付ける、援護は頼む」
 蓮也が背を向けたまま赤薔薇へ呼びかける。その横を二筋の風が通り抜けた――七佳と龍実だ。
「……これ以上、犠牲を増やさせてたまるか……ッ!」
 声だけをそこへ残し、龍実は駆ける。


 一気呵成の同時展開がスタートしたところで、デビルキャリアー上空で六路が叫びをあげた。
「なッ」
 寸でのところで回避したのは、火球の爆発。
「仕掛けてくるかも、とは考えてたが…… 遠距離攻撃は勘弁してくれ」
 ロードの動きは部下への指示でなく、長距離射程の攻撃魔法か。
(ロードの指揮能力……、これは特別なものではない、ということでしょうか)
 キャリアーに定めた照準の向こう、巨躯によってここからは見えない敵の指揮官について神楽は思考する。
 明らかに、ウォリアー達は『こちら』に合わせた動きをしている。これはロードの指揮によるものだろう。
(私たちのスキルに置き換えれば、パッシブといったところでしょうかね)
 指揮官でありながら守勢を良しとせず、近寄らば攻撃を。『そういう判断』をするのだろう。

「多少離れたとしても、そこはあたしの間合いです」

 フィオナ、蓮也、赤薔薇で作った前線の隙を縫い、光翼を纏った七佳がロードの背後へと滑走する。
 七佳の細い腕に同化するかのごとく誂えた建御雷を横薙ぎに払った。
「……敵を殺す事が正義だとは思わない。でも、いつか本当の正義に至る為、あたしは戦場に立って刃を振るいますッ!」
 七佳は躊躇いを胸に抱く。自身へ問い続ける。
 その太刀筋に迷い無き、と言えば嘘になろう。
 しかし、振るうと決めた心に偽りはない。だから清らかだ。
 円形の多重魔法陣が刀身の周囲に積層され、放たれるアウルがブラッドロードを襲った。

(早い……、いや)

 七佳の一太刀で切り捨てられた指揮官。足を止めかけた龍実が素早く周囲の状況を確認する。
 群衆の頭を叩けば脅威は薄れる――それがセオリー、だが。
「胴体登頂部の口から、ズズーッと裂けねェかな」
 キャリアーの触手との距離を掴みあぐねていた六路が刀を手に降下したところで異変は起きた。
「うわ!?」
「鷹群さん!」
 ロード撃破による制御の欠落、それによるキャリアーの暴走。
 六路が触手に束縛され、更に攻撃されようという瞬間。
 神楽の弾丸が脚を破壊し、龍実の双剣が触手を切り払う。
 ド……と地響きと共にデビルキャリアーは横転し、そのまま動かなくなった。
「こ、れで 倒せたのか?」
「まだだ!」
 目を見開く六路に対し龍実は気を緩めず、残るウォリアーの掃討へと続く。
「砥上流剣戟術辰乃型・蛟!!」
 水を滴らせながら、追いついたゆいかが真空の刃を放ち、奇襲を掛けた。
「寒い思いしたんだから! 熱くさせてよねっ!!」
 単身、迂回して川の中を通ってきたのだ。
 敵と認識するなり攻撃をしかけてきたウォリアー達であったから、結果でいえば杞憂と言えたかもしれない。だからといって最悪のケースが起きていたら選択しなかったことを悔やんだに違いない。
「いっくらでも相手になるよ!」 
 ようやく本領発揮とばかりに、ゆいかは生き生きとした表情で剣を振るい、赤き戦士を相手取る。
 足を止めることなく、次の敵へと向かう。
「あいにく俺は魔法は苦手なんだ。……一気に切り裂く」
 全力跳躍で距離を取りながら、蓮也はカーマインでウォリアーの首を刎ね飛ばす。
 人型部分と頭の部分で防御面に差異があるかと考えていたが、手ごたえからは違いはないようだ。
「これで、何に気を遣う必要もないな?
「ええ、さくっと済ませてしまいましょう」
 あとは立っている敵を殲滅するだけ!
 フィオナに神楽が本格的な攻勢に周る。
「当たって……! 助けなくちゃいけない人たちがいるの!!」
 マジックシールドで攻撃を防ぎながら反撃を続けていた赤薔薇が叫ぶ。
 キャリアーが撃破されたのならば尚のこと、中に囚われたままの人々が心配だ。救出したいと気が急ぐ。
「居合の奥義は扱えなくとも、神速の刀術。その理念は再現できますッ!」
 七佳の白刃が陽光に反射して煌めいた。




「要救助者がいるかもしれないのよね」
「力仕事なら俺が」
「はい。気を付けないと…… きゃあ!?」
 横転したデビルキャリアーの、頭頂部分。『イソギンチャク』の『口』から内部に取り込まれた人々を救い出せないか……、ゆいかや赤薔薇、六路が行動に移した時。
「液体!? ケガないですか、山里さん!」
「だいじょうぶ、です…… これ、なんでしょうか…… そ、それより早く、中から」
 口を、六路が刀で裂いてみたところで内部から大量の液体が流れ出してきた。
 それと共に、眠りについている人々が露わになる。
「体内の市民は無事か? ……吸い取られてはいないよな」
「とりあえず、この液体は人を傷つける類のものではないのですね」
 神楽は大地へ沁みこんでゆくそれを眺め、小さく頷いた。
 ディアボロの内部。
 内部を満たされた液体。
 取り込まれた人々は皆、眠りについている。
 老若男女、合わせて50名ほど。
 傷を負っている男性も居れば、無傷の子供も居た。
 赤薔薇は、せっせと応急手当てをしてゆく。その横で、ゆいかが一人一人に声を掛け、目覚めを促した。
「大丈夫か?」
「お、おねえちゃん……」
「残念ながら、おにいちゃんだ」
 慣れている反応に遠い目で笑いながら、龍実は子供にケガのないことを確認し、その頭を強く撫でる。
(手を伸ばせば届く……。……届くんだ)
 間にあったこと。助けられたこと。
 撫でたところから伝わる体温が、龍実にそれを伝えている。
「救急隊員の方々も、もうじき着くそうです。そうしたら……もっとしっかり、手当てがしてもらえますから」
 骨折している男性の脚を固定しながら、赤薔薇が励ましの言葉を掛ける。今はそれしかできない。
 囚われてどれだけ時間が経過していたのだろう。
 パニックを起こす人も居り、七佳が真摯な語り口で対応した。


 その様子を遠巻きに眺めながら、フィオナは体を休めていた。
「どう思います?」
「保存……、なのだろうな。忌々しい」
 歩み寄る神楽へ、自身の見解を告げる。
 デビルキャリアー『内部の機能』としては、人を集めるということに突出している。この判断でいいのだろう。
「ケガはどう見ますかね」
 救急隊員が到着し、バトンタッチしてきた六路が会話に加わった。
「ディアボロに一般人が襲われたんじゃ、骨折じゃ済まないですよね」
「ああ、それは確かに」
 危害を加えようとしたからか、制御が外れたからか――ロード撃破が早かったことの対価として『通常時』のキャリアーの対応をじっくり伺えなかったことはあるが、六路に対しては明らかに敵意を見せていた。
「一般人とそれ以外を識別するほどの知能があるというのか?」
「捕獲に特化しているというのなら、あるいは」
 フィオナの推察に、神楽は肯定の言葉を返す。
「こんなのが…… 各地でぞろぞろ、ですか」
「面白そうですよね!」
「え?」
「……え?」
「いえ。たしかに。的としては大きいですから撃ち放題ではありますが」
 好奇心が前面に出た六路の一言へ、神楽がにこにこと笑みを差し向けた。
 

 デビルキャリアー。
 ブラッドウォリアー。
 ブラッドロード。
 今回対峙した敵は、この先もまた何度も戦っていくのだろう。
 能力に個体差はあるだろうが、一つの指針とできるはずだ。
「まずは……みんな、無事でよかった」
 心から安堵の溜息を吐く龍実の隣で。
 ゆいかと赤薔薇が、盛大なくしゃみをした。
「っと、ふたりとも……とりあえず、暖かくしないと!」
 タオルや何やらで水気は取っていたが、風に吹きさらしであれば冷えるのも仕方ない。
 当人を含め、誰もが救助に頭がいっぱいだったが、くしゃみ一つで現実に戻る。
「『<ちょっと時期の早い遊泳をした>という理由で重体』は……避けたいですねぇ」
「えっ それちょっと面白そうです、石田さ はぁあああっくしょん!!」
 お約束の駄目押しと言わんばかりに、ゆいかが再度。


 くすぐるように吹く風は、戦いを終えた撃退士たちへ一時の安らぎを運んだ。





依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 絶望を踏み越えしもの・山里赤薔薇(jb4090)
重体: −
面白かった!:7人

Defender of the Society・
佐藤 七佳(ja0030)

大学部3年61組 女 ディバインナイト
Unstoppable Rush・
砥上 ゆいか(ja0230)

大学部3年80組 女 阿修羅
幻の空に確かな星を・
御影 蓮也(ja0709)

大学部5年321組 男 ルインズブレイド
『天』盟約の王・
フィオナ・ボールドウィン(ja2611)

大学部6年1組 女 ディバインナイト
黒の微笑・
石田 神楽(ja4485)

卒業 男 インフィルトレイター
遥かな高みを目指す者・
志堂 龍実(ja9408)

卒業 男 ディバインナイト
絶望を踏み越えしもの・
山里赤薔薇(jb4090)

高等部3年1組 女 ダアト
撃退士・
鷹群六路(jb5391)

大学部3年80組 男 鬼道忍軍