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マスター:佐嶋 ちよみ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:12人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/04/21


みんなの思い出



オープニング

●ふるさと定期便
 いちめんのなのはな、そよぐ風、いちめんのなのはな、暮れる夕日、いちめんのなのはな、……

 ここは久遠ヶ原の片隅にあるレストラン菜花亭。
 マスターの出身地は菜の花栽培で有名な場所。シーズンになると実家から産地直送の菜の花が届き、メニューを賑わせることで評判だ。
 が。今年は少し、様子が違うようだ。

「おはようございまーす ……あれ? 今日はクローズでしたっけ」
「ああ、柏木さん。困った事があってね…… うん、今日は臨時休業だ」
 厨房で腕組みをしたままのマスターが、真剣な表情を解いて向き直った。
「事件ですか、怪異ですか!」
「学園で変な噂を流さないでよ!?」
 彼女の手にかかれば、些細なことでも『学園の七不思議』に取り込まれてしまうので要注意。
 長く働いてくれていて、アルバイトスタッフとしては優秀なのだけど。
「安心して下さい、私が興味あるのは『学園の七不思議』だけなので。……それで……今日から菜の花メニュー開始のハズでしたよね?」
 厨房を覗くが、それらしい材料が並んでいない。
 お浸し……天ぷら……パスタ。恒例ではあるが春の訪れを知らせるメニューは、柏木も一緒になって考えたのだ。
「それが、地元が天魔被害により避難勧告を受けたらしくて、収穫前に離れなければならなくなったそうだ」
「えーッ、そんなぁ」
「天魔撃退は自治体が動いているらしいから問題ないそうだけど……菜の花……」
 三十路越えの男がションボリ項垂れる。可愛らしい姿ではないが哀愁は充分に伝わる。
 子供の頃は、収穫を手伝わされた。マスターにとって、ただの『材料』ではないのだ。
 それに、実家直送だからこそ格安でメニューを提供できる。
 身びいきではないが、味も格別。
「今年は諦めるしかないかな。しばらく警戒は解かれないだろうし、そうする間に時期は終わってしまうね……」
「何をおっしゃいますか、マスター! 私を誰だと思っているんです?」
 ふわり、背まである黒髪を肩上でかきあげて、柏木は胸を張った。
「誰って。眉唾広報器」
「怒りますよ…… 久遠ヶ原学園の撃退士です。避難勧告なんてなんのその、無事に菜の花を収穫してごらんにみせましょう」
「本当かい!?」
「もちろん、タダとは言いません」
「…………」
「『依頼』として広報すれば、有能な撃退士が集まりますよ。その方が確実でしょう?」
「自分で言わないの……」
 丸い眼鏡の位置を直しながら、マスターはへちゃっと笑顔を見せた。


●ふるさと臨時急行
「うわ」
「人を見るなり、その声はナイと思うの」
 依頼斡旋所での応対へ柏木はニコリと笑い、依頼書を提出した。
「真っ当な依頼よ。バイト先のマスターからなの」
「菜の花狩り……ですか」
 受付の生徒は、依頼書に目を通し問題点がないか念入りに確認する。
「ああ、この地域は」
 テレビで報道される規模ではないが、天魔被害の発生情報は流れている。
「自治体から避難勧告が出されているから、一般人は入る事ができないの。でも、撃退士なら許可を得て入ることができるって、問合せて確認しておいたわ。学生証を見せればパスよ」
 手回しの早さに、受付の男子生徒が閉口する。
 彼女は確か、学園内の噂を確かめると言って行方不明になり、捜索願を出されていた人物ではなかったか。
 それに懲りての事前行動なのか、懲りない鉄砲玉なのか、よくわからない。
「私的なことだから、本当は許されないのだけどね。『マスター個人による撃退士の雇用・依頼』ということで、泥の全てを被ってもらったの」
「最悪や、この人!」
 災厄かもしれない。悪びれない柏木の表情に、受付の生徒は戦慄する。
「そのかわり、近隣の菜の花畑も収穫してもらうようにしたわ。避難勧告と言っても、被害が実際に起きているのはずっと離れた町だから、大目にみてもらえたのよ。サーバントがうろついているらしいけれど、遭遇したとしてこの依頼人数なら対処できると思うの」
「ああ、なるほど…… ? この報酬は?」
「個人営業のちっさいレストランに、多額の雇用費を求めないでください」
「胸を張らないでください。それは構わないけど、この『現物支給』が解らないよ」
「菜の花を摘んで、バラの香りがプレゼントされるわけがないでしょう、しかもレストランよ。お好きな菜の花メニューを御馳走するので、そちらも考えて下さいね、っていう事。肩たたき券並みの微笑ましさだわ。あ、おかわり自由も足してもらえるかな」
「ふうん……。学園には、作る方が好きな子もいるよね。いいんじゃないかな」
 問題なし。そう判断して、気を緩めたのがまずかった。
「あっ、じゃあ、『マスターと一緒に料理体験』も足しましょう! プロ指導のもとという名において、自分の料理をお客様に食べてもらえるチャーンス!」
 良いこと言ったとばかりに、柏木が黒マジックを受付の生徒から奪う。
「主旨がズレてきていませんか!」
「問題ありません。全ては菜の花を刈り取ってからのことなんだから、ねぎらいも込めて全力で楽しんでもらわないと! 報酬やすいんだし!」
「あああ言っちゃった!」

 天気予報を基に、日取りは決めてある。
 悪だくみをする様子しか印象にない『七不思議制作部』の、意外な一面を見た気がして、斡旋所の生徒は複雑に笑いながら依頼書を貼りだした。




リプレイ本文

●無人のふるさと
 そよぐ風、広がる青空、豊かな緑。無人の町。

「たまにはゆっくりした時間を過ごすのもいいですね」
 イアン・J・アルビス(ja0084)が、澄んだ空気を胸一杯に吸い込む。
「日本でも菜の花畑の風景は変わらないのですね!」
 北欧生まれのフェリシア・リンデロート(ja7423)は瞳を輝かせた。
「リンデロートの国では菜の花って食べるの?」
 声を掛けたのは新井 司(ja6034)。トマトジュースを愛してやまない彼女であるが、同じ農作物を収穫するという経験は、なかなかに良い機会だと捉えている。
「いえ……。風景も写真や映像からの記憶に過ぎませんけれど、不思議と心が和みますね」
「……ん、ここはいいとこ」
 人の多い場所を苦手とするユウ(ja0591)も、言葉少なに同意した。
 同じく人付き合いを好まない影野 恭弥(ja0018)も、軽く目を細める程度には満足しているようだ。
 並んで車から降りた蒼波 セツナ(ja1159)が、周囲を見渡してから表情を暗くしている仲間に気づく。
「収穫直前に避難を強いられるなんて、気の毒だ……」
 無人の畑。その無念さを木花 小鈴護(ja7205)は知っている。実家が農家なのだ。
 栽培しているものは違うから、留意点は細かにチェックしてある。初等部生ではあるが、今回の依頼において頼もしい適役の一人であった。
「おでかーけ♪ おでかーけ♪ たのしいなぁの♪」
 その彼の傍で、遠出にはしゃぐ姿がある。ぴっこ(ja0236)だ。小鈴護を始め、依頼や部活での顔なじみが沢山居ることが嬉しい。
「日頃、生きるの死ぬのと切羽詰った依頼に囲まれてる身としては、こういう依頼も悪くないですね 」
 のんびりを具現化したような礎 定俊(ja1684)が、収穫・宿泊に対して完璧な装備でもって臨む。アウトドア派。今回の適役、もう一人である。
「畑仕事なんて、北海道の学校で触った以来だ」
 鳥咲 水鳥(ja3544)が大きく伸びをして、車内で硬くなった体を解す。視力のほとんどを失っている彼だが、草と土の香りが甘く鼻先をつき、心地いい。
「花が咲く前に収穫しないとダメなんですね……」
 村上 友里恵(ja7260)は、複雑な気持ちで幸運を眺めた。
「ふふ 楽しみにしましょう」
 レイラ(ja0365)がご機嫌に発言したところで、昼の仕事がスタートとなった。


 既に咲いてしまった花は、菜花亭と土産用。
 蕾の状態は出荷用。
 明日と明後日の早朝に、それぞれ納品するスケジュールだ。
「水分補給、忘れないでね。まだ春とはいえ太陽の下で作業するんだから」
 司が、年少組に気を配りながら声をかける。
 しかし、小鈴護がしっかりとした手つきでアドバイスしているから心配不要に思える。咲いてしまった花を、ぴっこ、友里恵と共に刈り取りながら、その中でも出荷基準をクリアしているものをきちんと選り分けていた。

 司と一緒の畑で作業をしているフェリシアは、虫除けと日焼け止めでガードしていると言っているが、Tシャツにホットパンツという出で立ち。白い肌が葉や茎で傷つかないか、見ている方がヒヤヒヤする。軍手に水分準備と、本人の気合は伝わるのだが。
 『英雄』の定義を追い求める司は、彼女の姿を見て思う。
(可憐で、儚げで、ふわっとした雰囲気を纏いながら、果敢に畑へ立ち向かうリンデロートは――『猛者』だわ)
「新井さん?」
 クスクスと笑いを見せる司を、フェリシアが不思議そうに見上げる。
「なんでもないわ。がんばりましょう」

 収穫作業に勤しむチームとは別に、レイラは畑の周辺に鳴子を張っていく。
「周辺の野生動物対策になるな」
 そう言って、イアンが鳴子の幾つかを引き受けると反対側の見張りも兼ねて、同じ作業に取り掛かる。
 しゃがむことでサーバントへの警戒がしにくくなることを嫌った恭弥も、レイラへ歩み寄った。
「手伝う」
 ぶっきらぼうな口調と裏腹な彼の行動に、「あら」とレイラは微笑を返した。


●はじめての夜
 サーバントの出現もなく、空がオレンジ色に染まってきたところで今日の仕事は終了とした。
 納品物のチェックをする者、夕飯の支度をする者、後片付けをする者へと、自然な流れで分かれて行く。

 マスターの実家は、なかなかの広さだ。寝具はさすがに足りないので、持ち寄った毛布を使う事になる。
 風呂は交代での使用。その間に洗濯や掃除。
「ねー おーうち帰ないなーの?」
 居間で夕飯の準備が進む中、風呂からあがってきたぴっこが小鈴護のシャツを引っ張った。
 その一言に、周囲の空気が固まる。
(まさか、レジャーか何かのつもりだった……?)
「おにちゃーん おねちゃーん!!」
 帰れないと悟ったぴっこが、半泣きになる。普段であれば、親しんだ寮の人々と共に過ごしている時間なのだ。
「えっと、ぴっこさん…… どうしよう」
 小鈴護も困り顔だ。
 そこへ、ふうわりと胃袋を刺激する香りが漂ってくる。
「簡単なものだけど―― ……何かありました?」
 残されていた食材で作った煮物。懐かしのおっかさんの味。炊き立てごはん。
 定俊が鍋を手にして台所から出てくると、ぴっこの涙が引っ込んだ。
「おーなか すいたー なぁの♪」
「……食べたら爆睡コースだな」
 対応に困ってた一人、水鳥がほっとして茶化した。
「多少の食材は用意していましたが、さすが農家ですね。依頼中は食べるものに困りませんよ」
 定俊の言葉に、明らかに安堵した者が数名。それは、食材備蓄という意味ではなく――
「影野も自炊は苦手な方なの? 私も駄目でね。普段出来あいに頼ってる分、どうしてもね……」
 同志を見抜いた司が、肩をすくめながら取り分けた小皿を恭弥へ手渡す。言葉に冷やかしは込められていないから、恭弥は眉根を軽く寄せる事で応えとした。
「得意な事を、分担すればいいですよねっ」
「賛成」
「異議なし」
「……おいしい」
 フェリシアの一言に、料理を苦手とする面々が便乗する。
「えーと、じゃあ……明日の昼は弁当でも用意しましょうか」
 定俊と同様に、料理を苦にしないイアンが提案する。
 これもまた、全員可決で通った。


 寝室は男子が居間、女子が二階――だが。
「んー、ぴっこ、寝る支度したか?」
 女子部屋に、男子2名。
 水鳥と、その膝の上に座る、ぴっこ。
「ふふ、準備はよろしいですか?」
 友里恵が兄弟のような二人へ声を掛け、用意していた数冊の絵本の中から一つ、選び取る。
「では折角ですので、ドジな狼が羊と友達になる絵本を……」
 狼=怖い、そんな子供が抱くイメージを、少しだけ明るくさせる物語。
 友里恵の柔らかな声が、優しい物語を紡ぐ。ぴっこが眠りに落ちるまで、それは続いた。

「ふぁ……、俺もそろそろ限界だな。ありがとう、村上さん」
「楽しんで頂けたようで、安心しました。おやすみなさい、鳥咲さん、ぴっこさん」
「ん、おやすみ」
 ぴっこを抱き上げ、水鳥は居間へと下りていった。
 入れ違いに夜の散歩組が帰ってくる。お疲れ様でした、と友里恵が迎える。
 サーバント襲撃への備えも兼ねていたが、何事もなかったという。
 さあ、これからはガールズトークの時間。

 静かな静かな夜は、心地よい疲労感と共に更けていった。


●土の香り、太陽の恵み
 早朝に納品へ行ったメンバーが戻ってくる頃に、ちょうど休憩を取る頃合いとなった。

「全員集合ーー」
 弁当を準備して来た定俊とイアンが、敷物を広げて重箱を開ける。おにぎり片手におかずをつつくスタイルだ。
 卵焼きに魚肉ソーセージの醤油炒め、竹輪の胡瓜挿しマヨ添えなどシンプルなものだが、自然の中・労働の後ということが最高の味付け。
「い、いびつで……その」
「美味しいです、木花さん。朝のお味噌汁も上手でしたし」
 お世辞抜きのレイラの言葉に、小鈴護が頬を染める。朝食の味噌汁とおにぎりを作ったのは彼である。
「……むぐ」
「大丈夫ですか? 慌てなくても、すぐにはなくなりませんよ」
 友里恵が、ユウの背をトントンと叩いてやる。
 おにぎりを多めに手にした恭弥が、一団から離れようとする背へ、定俊がすかさず声をかけた。
「物足りなければ、畑の畦あたりに生えてるノビル掘るから、味噌つけて食えるよー」
「…………」
 そうじゃない。
 視線で返し、恭弥は見晴らしのいい――サーバントの出現に備えられる場所を探し、歩き始めた。

「んー、これは……何がいいでしょうか?」
 すっかり、料理好きの魂に火が着いたらしい。
 イアンは、午後からの作業では、手に取る菜の花でどんな料理に合うのか想像してしまうようになっていた。


●月夜の狩り
 長いと思っていた2泊3日が、あっという間に終わろうとしている。
 明朝、納品組が帰ってくる間にこの家の清掃を終えれば、戻るばかりだ。
 今夜も、ぴっこは友里恵に絵本をせがみ、月夜を楽しむ者は散歩する。

「……月見酒ならぬ月見バナナオレ、わるくない。流行らないかな」
 どうやったのか屋根に上ったユウが、まんまるい月を眺めながらバナナオレを一口飲んでは呟いた。
 夜目が効く方ではないが、星明かりの下、散歩する仲間の姿もうっすらと確認できる。

 菜の花に纏わる句や童謡を口ずさむフェリシアに、司は驚いていた。
「詳しいのね、リンデロート」
 昨夜に続き、二人で夜道を散歩している。
「全部、紙の上でしか知らなかった事です……。同じ情景を目の当たりにして、ようやくその気持ちがわかりました」
「私も一緒よ」
 2人の手には、「まだ夜風は冷たいですから」と、友里恵が用意してくれた暖かなドリンクがある。
 友里恵の細やかな気配りは、作業以外の場面でも助けとなっていた。
 幼い頃から撃退士の力に目覚め、戦う事を信条として来た司には、この緩やかな時間がとても尊く感じられた……。


 真っ先に異変に気付いたのは、高所にいたユウだった。
 見下ろす先には、奇遇にも恭弥がいた――遇、ではないのだろう。
 夜中の見回りを請け負っていた彼だ、感づいて警戒していたに違いない。
 同じく行動を取っていたレイラとイアンが駆けつけるのを確認し、ユウもひらりと屋根から舞い降りた。

「サーバント、この一体だけかしら」
 武器を構え、牽制しながらレイラが周囲を見渡す。
「仲間を呼ばれると厄介だな。早めにケリをつけよう」
 イアンがタウントを発動する。敵の意識を引きつける瞬間に、迷いなく恭弥が攻撃を仕掛けた。
 足止めにダガーを一撃。更に距離を縮め、持ち替えたダガーで接近戦に持ち込む!
 そこへ、不意に白い小鳥が飛んできた。鎖に繋がれる姿は月明かりに不釣り合いな雷であり、ダァトの創りしものである。
 ユウだ。
 立て続けに薄氷の花弁が咲き――裂き乱れる。
 恭弥の連撃と相まって、狼は吠える間もなく飛散した。
「ふぅ…… 全員を起こすまではないでしょうか」
 戦闘を終えた4人が、他に異変は無いか感覚を澄ませる。
「見回りを、交代にしましょうか」
 意見を求めたイアンへ、レイラが案を示す。彼が頷きを返したところで、散歩をしていた司やフェリシアも集まった。
「とりあえず、携帯で連絡しましょう。全員が寝呆けていることはないはずだわ」
 司が素早く行動に移した。


●ふるさとより
「「「おまちどうさま!」」」
 菜花亭に届けられた段ボールに、マスターは涙を流す勢いで抱きついた。
「ありがとう、ありがとうございます。実家からも連絡が来ました。サーバントが……出たんだって?」
「一体だけでしたから、畑への被害は及びませんでした」
 マスターが、言葉も出ない様子でイアンの手を握りしめる。
「君たちに頼んで、本当に良かった。さぁ、リクエストの品を作るよ。柏木さん、手伝って」
「はーい」
「あっ、僕も手伝います」
 料理の技を盗もうと、イアンが名乗りを上げる。
 同様に定俊も厨房へ入った。
 ――その隙に、ユウが紛れ込んだ事には誰も気づいていない。

「フェリシアさんは、部員さんの依頼を解決したんだ」
「ぴっこさんと木花さんは、柏木さんを救出なさったんですね」
 柏木――菜花亭でバイトをする彼女は学園にて『七不思議制作部』なるものを作り、何かしら誰かしらを巻き込んでいる。
 巻き込まれた者同士と知って、3人は笑いあった――もっとも、ぴっこにとっては、この3日間で仲良くなったお兄さん・お姉さんたちが楽しそうにしているから、自分も楽しい。それが第一である。

 お土産用に貰った菜の花を、綺麗に整えているのはレイラだ。
「レイラさん、それは……? ドライフラワーになさるんですか?」
 その様子に、フェリシアが覗きこむ。
「あ、押し花にしようと思いまして。綺麗な色を、そのままにしておけるでしょう?」
「なるほど……。私はお風呂に浮かべて楽しもうと思っていました」
「……女子力高い」
 食べる事しか選択肢になかった水鳥が、2人の会話に驚く。
(海やユウの為に何かしら料理を覚えて帰ろうかと思っていたけど……こういう方法もいいな)


 天ぷら、オムレツ、サラダ、お浸し、胡麻和えに辛子味噌和えワサビ和え、塩昆布も使った焼きうどん。〆はお茶漬け。
 できたての料理を、定俊たちが運んでくる。
 宿泊中も幾品か菜の花を使った料理はあったが、プロの設備・材料で作られたものは見栄えからして違う。
「菜の花って美味しいな……」
 焼きうどんに酢を回しかけながら、水鳥が感激の声を上げる。
「なのはぁなのはた オムレツなぁの!」
 リクエスト通り、ほくほくジャガイモも入って完璧。ぴっこが、ご機嫌にフォークをのばす。
「……私も少し練習しようかしら、こういうの」
 司は真剣な顔で呟く。好きだから、と頼んだ胡麻和えだが、隠し味の塩が効いていて意外な美味しさだ。
 辛子味噌やワサビといった和えものも、それぞれに違いを活かした味付けとなっている。
 天ぷらを誰よりも楽しみにしていた友里恵は、カラリと揚げる秘訣を教わる。
「…………」
 出されたものを、もくもくと食していた恭弥が手を止めた。
 続いて咽かえったのはセツナ。
「あれ? このドリンク、いつの間に」
 苦味の効いた、……お茶?
 イアンが首を捻り、
「菜の花ジュースは、お約束ですよね」
 胸を張ったのは定俊。必殺料理人。宿泊中の生殺与奪を握っていた男。
「菜の花の量は抑えて果物メインで作ったから、そんなに酷くはないと思いますよ? ――私は飲んでいませんが」
((鬼や!!))
 全員の心が一つになった。
「ぴっこちのは おぃしー なのよ?」
「ん? うん、いい匂い」
「私も、甘みと苦みが良いバランスです」
 ぴっこ、水鳥、友里恵には、どうやら違うドリンクが行きわたっているらしい。
「……バナナノハナオレ、大成功」
 仕込んだのは、ユウであった!
「その手があったわ」
「トマトジュースミックスがなくて安心しました」
 司の隣で、イアンが肩を落とした。


 レストラン菜花亭、翌日からは『期間限定・菜の花メニュー』の数々が、例年よりも賑やかに彩った。



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: God of Snipe・影野 恭弥(ja0018)
 安心の安定感・礎 定俊(ja1684)
 古多万の守り人・木花 小鈴護(ja7205)
 春を届ける者・村上 友里恵(ja7260)
重体: −
面白かった!:11人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
守護司る魂の解放者・
イアン・J・アルビス(ja0084)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
一太郎のそこそこチーム・
ぴっこ(ja0236)

中等部1年4組 男 ダアト
202号室のお嬢様・
レイラ(ja0365)

大学部5年135組 女 阿修羅
ちょっと太陽倒してくる・
水枷ユウ(ja0591)

大学部5年4組 女 ダアト
憐憫穿ちし真理の魔女・
蒼波セツナ(ja1159)

大学部4年327組 女 ダアト
安心の安定感・
礎 定俊(ja1684)

大学部7年320組 男 ディバインナイト
残された傷痕・
鳥咲水鳥(ja3544)

大学部3年155組 男 阿修羅
撃退士・
新井司(ja6034)

大学部4年282組 女 アカシックレコーダー:タイプA
古多万の守り人・
木花 小鈴護(ja7205)

高等部2年22組 男 アストラルヴァンガード
春を届ける者・
村上 友里恵(ja7260)

大学部3年37組 女 アストラルヴァンガード
白百合の花冠・
フェリシア・リンデロート(ja7423)

大学部3年23組 女 ディバインナイト