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マスター:佐嶋 ちよみ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/12/24


みんなの思い出



オープニング

●野球やろうぜ!
 撃退士野球組合なるものをご存知だろうか。
 超人的身体能力を誇る撃退士は、一般人のスポーツ競技各種へ参加することが出来ない。
 同列に技を競い合うことが出来ない。
 『だったら撃退士同士でやればいいじゃん』と、熱狂的野球好き有志が結成した組合である。
 全国各地にあるのだという噂の真偽は定かではないが、とりあえず一定数、存在していた。

『お〜い、筧。野球やろうぜぇ』
 留守電メッセージを聞いた瞬間、久遠ヶ原学園卒業生にしてフリーランス撃退士である筧 鷹政(jz0077)は自身の事務所内のカレンダーを見た。
 12月。正気か?
 正気はともかく、彼らが本気であることは知っている。


「なんですかこれ」
 学園斡旋所にもちこまれたチラシを、担当の男子生徒が冷ややかにつきつける。
「フリーランス撃退士で、組合作ってるんだ。野球好きの。年齢層に幅があるけど、みんな久遠ヶ原の卒業生だもんで、同窓会を兼ねて試合をしようっていう。
撃退士が平和に全力で身体能力を発揮できる場所なんて限られてるだろ。
学園のグラウンドを借りられるのが、みんなの都合を聞いてたらこの時期しかなかったんだってさ」
「この、寒い時期に……?」
 ドームでもなく、……屋外?
 皆まで言うな、鷹政も諦めの表情で首を横に振った。
 冬? 寒い? 『だって撃退士だから』大体はこれで切り抜ける、そんな組合なのだ。
「さて、っと」
 一呼吸置いて、鷹政はアナウンスを始めた。どこにその拡声器を隠し持っていた!


 ――若者たちよ、野球やろうぜ!!
 こちらは指折りの選手が待ちかまえている。
1番〜遊撃手、俊足を誇る最年少 ※三十路
2番〜二塁手、燻し銀の魅力・バント職人
3番〜一塁手、お前が打たなきゃ誰が打つ・信頼安打製造機
4番〜捕手 、このポジションは胃に負担を掛け過ぎじゃないかキャプテン ※最年長・五十二歳
5番〜三塁手、当たればホームラン守備はザル。頼もしい俺らのクリーンナップ!
6番〜右翼手、走攻守三拍子そろったバランスタイプ どれも平均的とか言わないでください
7番〜DH 、ランナーがいない時しか打たないのはどうにかならんのか?
8番〜中堅手、驚異の広守備範囲・驚愕の低打率!!
9番〜左翼手、バットに当てる技術はピカイチ、出塁するためなら手段も選ばぬ強心臓!

「なお、組合のピッチャーは3イニングごとに交代するんで、個性豊かな攻防を楽しめるよ!」



●撃退士特別編
「よく集まってくれた、撃退士球児諸君。監督の筧だ」
 即席で用意した野球ユニフォームに身を包み、メガホンを片手に振り向く鷹政。
「敵は撃退士野球組合――野球好きが高じた集まりだ。基本的にはルールに則ったフェアプレイ。
けど……それだけじゃあ、つまらんだろ」
 だって俺たち撃退士。
 ニヤリと笑う表情は、悪ガキそのものである。
「中盤を担う、この3イニングだけはスキルの使用を取りつけた。
……まぁ、能力補助みたいなもので、危害を加えるようなスキルは即退場となるよ」

 たとえば、守備の時にヒリュウを召喚してホームランボールをもキャッチ、
 無音歩行や遁甲の術で盗塁、逆にシールド系のスキルでクロスプレイも楽々アウト、
 ――こんな感じでアクロバティックに野球を楽しもう、ということである。
 ただし、相手も承知の上なので、成功するかどうかは技術次第。

「どんなスキルを使ったとしても、投げる・打つ・走る・捕る――
盗む・刺す・殺す・生還するといったシンプルなゲームが野球の醍醐味。はりきっていこう!!」
 物騒な用語が混ざっているような気がしなくもないが、実際に使われている言葉である。


 さて、作戦だけど――
「相手は手練と言えど、全員オーバー30、上限50の体力下降年頃チームだ」
「監督もオーバー30ですよね! だから諦めたんですか?」
「が、若いこちらを甘く見ている、付け入るとしたらそこだ!」
 チームメイトの発言を聞かなかったことにして、監督は話を続行する。
「守備陣は第一試合と変わらない。特性は、斡旋所で募集かけた際の説明通り。
ちょっと疲れが出てくるか、あるいは波に乗ってくるか。こちらも、甘く見ないことだね」
 問題は、とグラウンドの端でキャッチボールをしている投手へ、鷹政は視線を走らせる。
 左のサイドスロー。
 それだけで、ちょっと物珍しい。
「打者から見ると、自分に向って抉ってくるように感じるんだよね。打ちにくいし、見逃せばストライクなんて厄介だろ」
「監督は何打席何三振しましたか?」
「その上、心臓に毛が生えた様な投手で、死四球が極端に少ない。――が、球種も少ないんだよ。ストレートとスライダーしか、無い」
 チームメイトの発言を聞かなかったことにして、監督は話を続行する。
「キャッチャーが、良い選手でさ。たった2種類で、勝負を成立させてくる。ま、当たるか外すか、結局はそれだからね」
 投手の特性を活かす。打者の弱点を見抜く。老獪な、と言える捕手だ。
「たった3イニングしかない、ヘタすると一人一度しか打席のチャンスは無いかもしれない。
そんな状況で、それぞれの感触を伝えあい、情報を共有し、敵の思いこみを逆手に取る。心臓が強いというなら、それを利用して勝負に出るんだ!」

 兵は詭道なり!

 なんだかソレっぽいコトを声高に、監督はメガホンを手に打ち鳴らした。



リプレイ本文

●第二試合
 第一試合終了の後グラウンド整備が入り、いよいよオレらの出番到来!
「さー、しまっていこう!! 久遠ヶ原―― ふぁいおぅ!」


「『久遠ヶ原の毒りんご姉妹』華麗に参上! ですわ」
 変化球各種の調子を確認したクリスティーナ アップルトン(ja9941)は、キャップを脱いで額の汗を拭った。
 第一試合が始まってから緩やかに始めた投球練習で、程よく肩が出来たと言えよう。
(野球アニメでは、エースが完投することが多いですけれど……『中継ぎ』とは、こういう心境なのかしら)
※野球の知識は、主に二次元で習得しました。

「よろしく、志堂。せっかくなんだ、勝って見せようじゃないかぁ」
「ふふっ、もちろん勝ちに行くさ。野球なんて何時振りだろうな…… 久々に燃えてきたよ」
 交友のある雨宮 歩(ja3810)と志堂 龍実(ja9408)は、三遊間の連携バッチリ。
「それにしても……まずは形からって言うけど、中々いいねぇ、こういうの」
 そう言って、歩は今回の試合を提案した撃退士野球組合――チーム名『撃退士フリーファイターズ』略称GFs――側で準備してくれたユニフォームを指す。
 クリーム色の無地ユニフォーム、アンダーシャツやキャップなどのアクセントは黒。
 正統派青春熱血野球漫画の主人公になった気分である。

 ひとりだけ、ミニスカートのアレンジなのは九曜 昴(ja0586)。
「堅実な守りと繋ぎのバッティングを頼むの…… 大振りとかはしないでいいの……」
 助っ人として参加するメンバーへ、念入りに指示をしておく。

「わあ。何だかいいですね、こういうの!」
 ユニフォームに、キャッキャとはしゃぐレグルス・グラウシード(ja8064)。
 今回、最終試合には恋人が参戦しているのだ。張り切らないわけがない。
「野球! 野球なのです! 超楽しみなのです! でも、ちょっとユニフォームがきついのです……」
 レグルスと二人で、ユニフォーム着こなしにおかしな点が無いかチェックしあうのは、はぐれ悪魔の内藤 桜花(jb2479)。
 スリーサイズは伝えたはずだが、冗談と受け取られたらしく、これでは何かの拍子でボタンが弾けて飛ばないか不安である。
「けど、某女性監督もたゆんたゆんなのです。はっ、ポジション:監督 こっちでしたでしょうか!」
※人間界の情報源は二次元です


 後攻となる学園生チームが、元気よく守備の配置へ駆けてゆく。

「プレイボール!!」

 12月の寒空に、球審の声が力強く響き渡った。



●4回・表
(投球の極意は、打者のタイミングを外すこと! ですわ)
 マウンドから打者を見据え、クリスティーナは今までの特訓を思い出す。
 投球はもちろん、フィールディング、ベースカバーまで自慢のボディに刻みこんできた。
 捕手とサインの確認も余念なし。
(一番打者には『脚』がありますのね。初回セーフティも警戒ですわ!)
 サイン交換の後、首を縦に振り。
「毒の白球、受けてごらんなさい!!」

 第一球―― 高めのストレート!!

 判定はボール。
 バント警戒でダッシュしたクリスティーナは、力んでいたことを自覚する。
 今の一球で、自分の球速は印象付けられたはず。140km後半といったところか。
 そしてこちらはバント警戒の姿勢。
 ……毒は、じわじわと侵食するもの。

 タイミングを外してのチェンジアップ、『打たされた』打球はフラフラと宙へ。
 スキルで脚力を上げるまでもなく、龍実のグラブにあっさりと収まった。


 幸先の良いスタート……そう、思っていた。
 敵の二番打者はバント職人とだけしか情報がなく、では塁に走者がいない場合は―― 燻し銀の二つ名通りの、喰らいつくバッティング。
 敢え無く四球を出してしまう。
 三番打者を迎えたところで、決め球として隠していたフォークボールで三振。
「ツーアウトー!!」
 ライトのレグルスが、マウンドまで届く声で叫ぶ。
(この四番を抑えてしまえば……!)
 硬球が指先から離れた瞬間、後方から声が上がった。
「!!」
 クリスティーナが振り向く。
 四球で出塁した二番打者が、盗塁を決めていた。
「バッター勝負だ、アップルトン!!」
 集中するよう、龍実が声を掛ける。
 進塁されようが、あと一つアウトを取れば問題ない。
 とっておきの、高速スライダー!!

 ――カァン!

 木製バットの快音が響いた。
 打球は地を走り、一・二塁間を抜ける。
「ここは僕が!! これ以上は、進ませない!」
 レグルスが突出し、レーザービームさながらの送球を龍実へ。守備に特化した能力をいかんなく発揮し、2塁走者を進ませない。
「ツーアウト、一・二塁……なの。ここは一点もやらない、の……」
 レフトの昴が、外野陣へサインを送る。
『当たればホームラン守備はザル』――この情報が、怖い。
 センターを守る桜花の『闇の翼』があれば、外野へ届く球はホームランボールだろうが問題なくカバーできるだろう。
 先ほどのようなゴロ性のヒットや、半端なポテンヒットが怖い。
 長打が出れば1点は入るだろう。
 自ずとクリスティーナの肩に力が入る。
(後逸しても、三塁が空いてますわ…… ここは、大胆に攻めるところ!)
 竦み上がって棒球ばかり投げるような、か細い神経はしていない!
 思い切り腕を振り、速球を放つ!
 打ち返された球へ、龍実が飛び付く―― が、
「なっ!?」
 フォローに入りかけていた歩も声を上げる。
 直前で打球はイレギュラーにバウンドし、二人の間を抜けていった。
 桜花が駆ける。
 走者が三塁ベースを蹴る。
 昴が本塁を指し、桜花は全力で――
 投げられなかった。
 打者を二塁で止めるのが精いっぱい。
 自分たちも撃退士だが、敵もまた撃退士。その走力は――そして愛好会を立ち上げるだけあっての経験による走塁技術は――予想を上回った。



●4回・裏
 6番打者は凡打のゴロで抑え、4回表の守備は1失点で終了した。
 落ち込むクリスティーナの肩を、歩がポンと叩く。
「取られたら取り返す。まぁ、見てなってねぇ」
「……えぇ、存分に『見』ますわ」
 DH制であるため、クリスティーナは打席で返すことすらできない。
「私が、そこらのピッチャーと同じと思ったら大間違いですわ!」
 で、あるならば―― 一塁のベースコーチを買って出て、出来る限り攻撃をサポートしようではないか!


 一番、ショート、雨宮 歩。
 探偵として培ってきた観察力を活かす、絶好の場である。
 バッティングは決して得意とは言えないが、投手の特徴を掴み、仲間たちへ情報を引き渡すことも可能だろう。
(勝率を少しでも上げられるなら努力は惜しまないってねぇ……)
 打席に入り、噂の左腕を見据える。なるほど、ふてぶてしい面構えだ。

 ――バン
 
「ッと」
 何が起きたか、一瞬、把握できなかった。その背から、ストライクのコール。
 ストライク? あれが??
 サイドスローから投げられるストレートとは、こんな感覚か……
 土を蹴りながら、歩は今のイメージを脳内でリピートする。
 二球目はボール。
 同じ軌跡が、わずかに低く入る。
 相手の球種は、ストレートかスライダー。二球続けてストレートが来るなら、次は……
「ここは……!」
 歩に打つ気無しと見たのか、立て続けにストレート。
 慌ててバットを出し、ファールボール。
(スライダーを見ておきたかったんだけどねぇ……)
 出塁専念、と意識を切り替え、歩はバットを構え直した。


 3球ファールで粘った後の、内野ゴロ。
 出塁できなかった悔しさを押しとどめ、歩は擦れ違いざまに桜花へアドバイス。
 頷き、桜花は表情をキリリとさせる。
「2番、ナイトウォーカーの内藤桜花なのです!!」
 二番、センター、内藤 桜花。
 歩が出塁すれば、バントで進塁打を……と考えていたのだけれど。
(イレギュラー狙い…… ここです!)
 先制点を許してしまった、三遊間でのイレギュラー。
 先の試合での影響が少なからずあるだろうと思う。
 歩から耳打ちされたのは、そんな『怪しい』個所についてだ。
 転がすか、叩きつければ何か起こるかもしれない――
「アウトー!!!」
 などと狙っているうちに、空振り・空振り・ストライクの罠にはまった。
 攻撃力の極端な低さが響いたか……。


 三番、サード、志堂 龍実。
 龍実はネクストバッターズサークルから腰を上げる。
 ションボリする桜花へ、球筋をすべて見ることが出来たことへ礼を告げて。
(実際に打席に立つと、また別だろうが……)
 できるだけバッターボックスの外側に立ち、チラリと内野の守備位置を確認する。
「なんとか盛り返したいところだな」
 流れを、ここから変える――!
 一・二球目、とにかくバットに当て、球のタイミングを覚える。
 投手の癖は、確信レベルまでいかないもののそれなりに掴んだつもりだ。
(確か、相手の三塁手は守備が苦手だったはず……!)
 甘めに入ってきたスライダーを、思い切り引っ張る!!

「「抜けたーーッ!」」

 サード強襲のヒット。
 ベンチで応援していたメンバーたちも総立ちとなる。
「まわれまわれー! ですわ!!」
 一塁横でクリスティーナが腕を回す。龍実は一塁ベースを蹴り、二塁へ。
(届け……!)
 ヘッドスライディングで二塁に触れる。ほぼ同時に、相手選手のグラブが背に触れる、が、

「セーフ!」

 塁審の声に、一同がざわめく。
 ツーベースヒット!


 そして――四番、レフト、九曜 昴。
 昴は、悠々とバットを構える。
 捕手のミットの向こうで丈の短いスカートのすそが揺れる。至近距離で実に目の毒である。これも作戦である。あざとい、女子高生あざとい。
(スライダーだろうがストレートだろうが、結局は向かってくるボールなの)
 立て続けのボール球に、見送った昴が小さく笑う。

「女の子の……インコースも狙えないの?」

 当てる気で来い。暗に挑発する。しかしこの場合、違う意味の挑発にも思える。

「……これで何球目ですか?」
「8、だねぇ」
 ボール球はひたすらカットし、ファールにして粘り続ける。
 フルカウント。投手もヘタな球は投げることはできず、昴も条件反射だけで手を出すことはしない。
 張り詰めた展開に、ベンチのレグルスは息をのみ、じっと観察を続ける歩が問いに答えた。
 二塁では、縮地を持つ龍実が三盗のモーションを見せている。
「来るとしたら――」
 今までの配球から、歩が次を読む。

(インコース、なの……!)

 粘り勝ち。
 昴のバットは白い輝きを纏い、白球を打ちつけた。

「天まで届くの、スターショット打法!」

 打球は右中間を割り、その間に龍実が生還する。
 まずは1点!!
 打撃に全力を懸けた昴は、一塁を回ったところでストップ。
 ――と、そこで相手チームの監督がベンチから出てきた。
 学園生チームの監督・筧が一拍置いて、気づく。慌ててベンチを飛び出す。

 スターショット――攻撃スキルの使用についての審議だ!!

「今のは正当でしょう!」
「万が一、打球が阿修羅にでも当たったらどうする、致命傷だぞ! よって、今の打席は無効だ!!」
「そうはいっても、打撃です。いわば、球に対する攻撃だ。対選手ではありません」
「ぐっ……」
「……その辺で。学園生側のいう通り、今のヒットは打球の方向からして悪意のあるものではない。よって、問題ないものとする」
 球審が両監督の間に入り、宣言した。


 五番打者も続いてのヒット、このイニングで2点を上げ、学園生チームが逆転に成功!



●5回の攻防
「アップルトンが良い投手だというのは解ってる。だからこそ、俺達を信じて欲しい」
 1点リードでのイニング開始前。
 龍実がクリスティーナへ告げる。
「どんな打球でも捕球してやるのです!」
 翼を具現化させ、桜花が拳を突き上げた。
(そうですわ…… 私もみなさんを信じて、打たせて取るのですわ!)
「私は…… 私の、一番良い球を投げますわ!!」
 クリスティーナの胸の中で、アニメで聞き覚えのある台詞が再生されていた。

「つきましては――筧さん、抑えたら食事を奢ってほしいですわ」

「へっ!?」
 青春劇を微笑ましく見守っていた監督が、矛先を向けられ腕組みを解いた。
「モチベーション向上のために!」
「「久遠ヶ原―― ふぁいおぅ!」」
「えっ!?」

 一丸となったチームに死角は無かった。
 打たせて取るピッチングを心がけ、三振にこだわらず丁寧に。
「こいつは読んでたさぁ」
 歩が打球に飛びつき、三塁へ送球、アウト。続けて龍実が一塁を刺しダブルプレー!
「ナイスプレーだ…… やったな!」
 龍実と歩がハイタッチを交わす。
「さっきの借り、返上だねぇ」

 高く打ち上げられた打球――あわやホームランかという放物線の、その途中へ羽ばたく桜花。
「本領発揮なのです!!」


「スキルも使っていいのか、ようしがんばります……」
「レグルス君、コメットは禁止だよ。あれは無差別すぎる」
「あっ、じゃあ、『星の輝き』で相手に『うおっまぶしっ』させるのは――」
「守備妨害になるねぇ 直接的だから」
「アストラルヴァンガードには何が出来ると言うのですか!!」
「皆へ、能力上昇のスキルを掛けてくれてただろ。有意義だと思うよ。派手さばかりがスキルじゃないさ」
「彼女が見ててくれてるんだから、おじさんたちには負けたくないんですッ!」
「くっ、リア充中学生ッ」


 そんな攻防はさておき、5回裏ツーアウト。
 九番、ライト、レグルス・グラウシード。
「とにかく、何としてでも塁に出ないと!」
 追加点で勢いに乗りたい。粘り強くファールを打ち続ける。
(狙うなら、二・三塁間……!)
 待っていた打ち頃の球を、バットの真芯でとらえる―――

「アウト――! スリーアウト・チェンジ!!」

 当たり所が良すぎ、打球はショートライナーとして相手のグラブに収まった。
「ッ……!」
 悔しさに、レグルスが絶句する。
 次のイニング、守りきれば学園生チームの勝利。裏の攻撃は無い。
 自分の打席は―― 来ない。
 彼女に良いところを見せたかった。
 うなだれるレグルスの背を、歩が叩く。
「ナイススイング。――何より、良い守備してるじゃないかぁ。攻撃ばかりが野球じゃないってねぇ」
「えーっ、次の守備でお終いなんですかぁ!?」
 指折り数えて現状を把握した桜花が嘆きの声を上げた。
「打ち足りないの…… けど、守るとこはキチッとしめていくの」



●ゲームセット
 6回表を守り切り、ゲームセットのコールが響く。
 1−2、学園生チームの勝利で中盤戦は幕を下ろした。

 最終結果。2勝1分け、学園生チームが勝利した。やはり若さか。若さなのか。


 誰より喜んでいるのは、監督であった。
「あら。食事の場所、決まりましたの?」
「おう! 先輩達がおごってくれるって! 学食で!!」
((ショボイ!!))
 選手の心は、ここに来てさらに結束を高めた。


 学食にてプロ野球チーム・ラークスの選手たちと遭遇し、更にテンションが上がるのはこれから少し、後のこと。




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 秘密は僕の玩具・九曜 昴(ja0586)
 遥かな高みを目指す者・志堂 龍実(ja9408)
重体: −
面白かった!:5人

秘密は僕の玩具・
九曜 昴(ja0586)

大学部4年131組 女 インフィルトレイター
撃退士・
雨宮 歩(ja3810)

卒業 男 鬼道忍軍
『山』守りに徹せし・
レグルス・グラウシード(ja8064)

大学部2年131組 男 アストラルヴァンガード
遥かな高みを目指す者・
志堂 龍実(ja9408)

卒業 男 ディバインナイト
華麗に参上!・
クリスティーナ アップルトン(ja9941)

卒業 女 ルインズブレイド
MEIDO・
内藤 桜花(jb2479)

大学部8年162組 女 ナイトウォーカー