.


マスター:佐嶋 ちよみ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2012/11/15


みんなの思い出



オープニング


 先の会戦に勝利した撃退士達は、京都市街へと歩を進め、その中心部を包囲するように展開していた。
 京都市の中心、中京区にはゲートの発生点である中京城があり、その四方には残存の京市民が囚われている大収容所がある。
 四つの大収容所を守るよう、中心部を取り囲むように、八つの小要塞が建てられていた。京市の外観に相応しくない、西欧の砦を思わせる造りである。先の会戦で敗れた天界軍はこの小要塞に籠って防備を固めていた。
「なかなか守りが硬いね」
 執行部書記長、大塔寺源九郎が遠方に立ちはだかる小要塞を指して呟いた。
 一応は試しにと自衛隊から借り受けた無反動砲を遠距離から一斉に叩き込んでみたが、まったくの無傷だった。どうやら天魔の特殊な技術が施されているらしく要塞はV兵器でなければ破壊できない様子だった。
 各要塞の城牆の上には飛び道具を所持したサーバントが配され、さらに上空には飛行型のサーバントが配されている事からヘリ等で空から降下するという方法も難しい。
「V兵器は有効射程が短い」
 負傷した為に学園へと後送された神楽坂から後の指揮を引き継いだ副会長の鬼島武が呟いた。
「敵の方が射程が長い。城壁なり門なりを破壊する為にはこちらの攻撃が届く距離まで踏み込まねばならんが……」
「正面から攻めるのは骨が折れそうだねぇ」
 源九郎がやれやれと嘆息する。
「けど、敵にはゲートがあるからね。かつてザインエルがやったように一気に召喚というのは無理だと思いたいが、サーバントは増えていくだろう。時間をかければかける程、敵は戦力を回復してゆく」
「こちらにも援軍が来る見込みがまったく無い訳ではないだろう。焦りは禁物だ。時間を無駄にする訳にはいかんが、無理攻めをして逆襲を受けるのだけは避けたい」
「我慢比べか……ま、堅実に一つ一つ、確実に削っていってやろうじゃないか」
 源九郎はそう述べたのだった。



●命の道
 サーバントのように消耗したなら新しく造ればいい、撃退士はそういうわけにはいかない。
 京都奪還は確かに果たしたい悲願だが、学園の全勢力を一気に注ぎ込むには時期はまだ早い。
 中京城、そして大収容所。それらを囲む要塞を八つ落とすことが先決であり、出撃できる撃退士の数も限られている。

『補給部隊参加撃退士募集』

 斡旋所に依頼が貼り出されたのは、そんな折の事であった。


「よく集まってくれた。こちらで請け負うのは八要塞のひとつ、東の要塞だ。
正確には、そこから約1km地点の撃退士陣地への救援物資輸送に当たる」
 ミーティングルームで、職員が説明を始める。
 会戦を繰り広げた地域――及び、偵察潜行を行なった地域よりも、深く入り込んでいる。
 そこで今も、戦う撃退士達が居るのか……。
 歯を食いしばる者、溜息をつく者、現実味のわかない者、反応は様々だ。
「今は互いに出方を伺っている状況で、大きな戦闘に至ってないということだが。
救援物資到着によって、影響がでないとも言いきれない」
 その辺りの行動も、指導は受けているので迅速に対応できるはずではあるが。
 『敵は要塞に逃げ込んだ』形である、無理にあちらから攻撃を仕掛けてくるとも思えないが、隙アリと見たら――?
 要塞内部までは誰も知らない。どれだけのサーバントが詰まっているか、解らない。
 召還され、膨れ上がる時がいつか――……
「現地の撃退士達の休息も兼ね、補給部隊には半日程度、前線警護を頼みたい。
無理に突出さえしなければ、危険は伴わないはずだ。
諸君らの中でも、いずれは小要塞攻略の任に当たるものが現れると思う。
そう志願するのならば尚の事――『現在の京都』を目の当たりにしてきてほしい」
 歴史ある日本国の京都。
 そこに、風情も情緒も無く建てられた要塞。
 その奥に、生かさず殺さずを保たれている力なき人々が囚われている……その現実を。

 いずれ、自分たちも小要塞攻略に携わる。その時のために。

 そのためには救援物資も確実に届けなくてはいけない。
 ひとつひとつの行動が、常に命懸けだ。
 しかし、替えの利くサーバントとは違い、人間には心がある。意思がある。
 経験を積み、学び、成長してゆく。

 取り戻そう、あの街を。

 微かなことでも吸収し、力を付けて、忌々しい要塞を打ち崩す。
 我慢比べ――生徒会書記長は、そう形容したという。
 時間を無駄にする訳にはいかない――それは、現在指揮を執る生徒会副会長の言葉だ。
 撃退士達は、それらを胸に刻み、京へ臨む。



リプレイ本文


 天界勢力によって、封じられた都。
 京都がそう呼ばれて久しいが、少しずつ状況が変化していることを、支配領域へ踏み込んだ撃退士達は肌で感じていた。
 戦闘により荒らされた町並み。
 しかし、驚くほどに静かだ。
 時折、要塞に逃げ損ねた――あるいは指示を受けるほどでもない低レベルのサーバントが瓦礫の合間を縫って駆けてゆく姿が見える程度。
 一時は、たしかに天界の支配下に完全に置かれていた。
 そこへ喰い下がり続け、こじ開けた穴は一つの扉となり『会戦』での勝利を経て、彼らを『要塞』へ封じるに至った。
 
 封じられたは誰か。
 奪い、奪い返されるは、どちらか。

 道はまだ、この先に。



●東要塞攻略部隊・陣地にて
「ここで、いったい何人の『英雄』が散ったのでしょうね……」
 長髪を風に揺らしながら、神埼 煉(ja8082)は目を細める。
 優秀な者は早死しやすい、とはよくいう話だ。
(ただの『個』である私には、あまり関係ありませんが)
 そうはいっても、今は団体に所属する身である。不安はないが、軽い緊張が身を取り巻いていた。
(あの日、駆け抜けた瓦礫の市街地……)
 ケタ違いの『多勢に無勢』。見つかったらオシマイ――そんな任務もあった。
 加倉 一臣(ja5823)は、暑い夏の過ぎ去った街を難しい顔で見据えた。
「あんまり気負うなや、削るで?」
 音なく忍び寄り、宇田川 千鶴(ja1613)が友人である一臣の後頭部をペシリと叩く。
「……サンキュ。お仕事しますか」
 肩の力が抜けた笑顔で、一臣は補給物資を背負い直す。
 感傷に浸っている場合ではない。


 鴨川に架かる御池大橋、その東手前に要塞攻略の拠点となる陣地は構えられていた。
 常時数十名が詰め、攻略対策・防衛ラインの警戒に当たっているという。
「お疲れさんです、差し入れに来ました」
 努めて明るい声で一臣が呼びかけると、安堵の声があちこちから漏れ聞こえた。
 対照的に、こちらは戦闘準備に入る。
 前線を守り、砦内の敵を牽制している撃退士達へ休息を。
 その間、ラインを死守すること。それが今回の任務だ。


「そろそろ京都を返してもらう段階に来てるわね……というか、そのつもりで頑張るわよ」
 トレードマークである白いリボンを結び直して気合を入れて。
 橘 和美(ja2868)は前衛に位置どる。
 約1km先――視認できる距離に、京の街に似つかわしくない西洋風の砦がそびえている。
 煉瓦造りの壁には蔦が這い、巨大な蜘蛛がしがみ付いているのが遠目にもわかった。
「あんなに戦ったのに、まだ沢山残されてるんね……」
 同じく前線を守る千鶴が眉をひそめる。
 会戦で敗北を喫した天界軍は、京都中央を取り囲む八つの砦に分かれ、立て籠っているという。
 ゲート、そしてエネルギー源である人間達。必要最低限、それらを守れば再び勢力を盛り返すことが出来るという算段なのだろう。
 もちろん、指をくわえて眺める撃退士ではない。今こそ砦を落とし、中央部まで攻略する絶好の機会だ。
「たった二時間、代わるしか出来ないんか…… あんなに近いのに、な……」
 愛用の薙刀を手に、紫ノ宮 莉音(ja6473)の胸は焦燥感で満たされていた。
(何か力になれるならって…… 最初はそうだった)
 出来る事は増えたはずなのに、壁は高い。
「千鶴さん」
「うん? どした、莉音さん」
「……今度は、ぜったい、まもるから」
「……うん」
 姉のように慕う千鶴と同じ任務に赴き、彼女をフォローしきれなかった経験も、心に影を落としている要因の一つ。
「大丈夫、私は動ける。だからまた、取り戻す為――」
 仲間や大事な人の為に。
 千鶴の言葉にしない思いは、莉音も共有している。
 小さく頷き、莉音も毅然とした表情となる。
 友人たちのやり取りを横目に、月居 愁也(ja6837)も戦いへ向けて意識を研ぎ澄ませる。
 今回、共に戦列を守る友人もいれば、他方で戦う友人もいる。戦いに参加できず、京都の動向を学園で気に掛けるしかできない友人もいる。
 彼らに恥じぬ、行動を。
 一つの戦いで容易に落とせる対象では無いことは目に見えて明らかだ。
 前線状況をしっかり把握し、今後に繋げられるように。
「先輩に、怪我一つ付けさせる訳にはいきませんね」
 後衛で弓を構える黒井 明斗(jb0525)は、悪戯っぽくアナスタシア・チェルノボグ(jb1102)へ呼びかけた。
 クラブで先輩後輩に当たり、こうして肩を並べて戦うのも何かの縁。
「……出来る事を全力でやる。それだけだ」
 まだ、それほど強くは無い……かといって、後ろでビクビクしているのでは何のための依頼か。
 アナスタシアは、明斗に対し憮然と鼻を鳴らす。それを受け、明斗が口の端を歪めて笑った。



●前線防衛戦
 ――バサリ
 羽ばたきの音が空に響く。
 こちらの戦線交代――異変を察知した天界軍が、動きを見せた。
「……じゃ、今まで守ってた撃退士さん達にゆっくり休んでもらうためにも、頑張りますか!」
 愁也の快活な声が響く。
 長距離射程の魔法弓を携えるという銀髪のハルピュイアは、偵察を兼ねているのだろうか、白い翼でもってゆっくりと近づいてくる。
(余裕か? 本気じゃないってことか――)
 照準を合わせた一臣が、弓矢より長い己の射程圏内に入ってくるのを待つ。

 ――銃声、それとともに無数の羽が散る。

 それが戦闘開始の合図となった。
 ジャイアントスパイダーにホワイトジャイアントも砦から出てくる。
 スピードに差があるから、迎撃は順序立てて行なえそうだ。
 煉、アナスタシアのハルピュイアへの援護射撃に乗じ、千鶴はチタンワイヤーを活性化し、一気に距離を縮める。
「飛び道具に夢中になって、ココが御留守になってんで!」
 翼に絡め、地に落とす。鳥人の乙女は咆哮し、剣を取り出し千鶴へ襲いかかるが――
「食らわせる気は、さらさら無いんでね」
 一臣の回避射撃が、太刀筋を狂わせる。
「おおきに!」
 接近戦にもちこめば、分はこちらに有り――
 再びの飛翔を警戒しながら、千鶴は愛刀・雀蜂へと持ち替えた。

「こっちも行くわ!」
「OKです!!」
 明斗が聖なる刻印を付与すると、和美は接近するジャイアントスパイダーへ立ち向かう。
「まとめて行くわよ……!」
 移動速度に違いがある中、蜘蛛と巨人を射程に収め、和美が封砲を放つ!!
 ダメージを受けながらも伸ばされる束縛の粘糸を、槍で断ち切り間合いを詰める。
(喰らったら厄介…… けど!)
 明斗のフォローの効果があるうちに、仕留めたい。
 ハルピュイアは仲間たちが抑えにかかってくれている、それを信じ、和美は地上の敵を真正面から相手取る。
「蜘蛛の分際でおとなしくしなさいよっ!」
「まずは、厄介な口から塞ぎたいね」
 闘気解放し、サイドから回り込んだ愁也が和美と挟撃する形で薙ぎ払いを仕掛ける。
「グッドタイミング。押していくわ……っ」
 スタン成功を確認し、和美は大きく槍を旋回させた。

 他方の蜘蛛は、莉音が単身で抑えに向かっていた。
「こっちや!」
 薙刀で粘糸を振り払う。挑発するよう、声を掛ける。
 後方より、アナスタシアがジャール・プチーツァを放ち、炎の槍が掠めていった。
「――思ったより、素早い!」
 完全に対象の意識の外から放ったにも関わらず回避され、アナスタシアは歯噛みした。すぐさま銃での援護射撃に切り替える。
 照準を蜘蛛に合わせ―― 異変に気付いたアナスタシアが、莉音へ叫ぶ。

「攻撃くるぞ! 避けろ」

 糸は無駄と判断した大型蜘蛛は、巨体ながら地を滑る様に移動し、直近の莉音へ噛みつきにかかった!!
「わわわっ!?」
(モーション、ていうか…… 単純に怖い、ってそんな場合やないなっ)
 動揺したわけじゃない、が―― 回避し損ね、手傷を負う。
「莉音くん!」
 1体を片付け、援護に来た愁也が目を見張る。
「毒は回ってへん―― 特殊対抗値でなんとかなる、んやと思う」
「さっすがアスヴァン」
「糸のが、楽かも…… 噛みつき、すごく避けにくい」
「ほんと、あの口は塞いじまいたいな」




 ハルピュイア2体、ジャイアントスパイダー4体、ホワイトジャイアント2体。
 これらを片付けたところで、一端の収束を見た。
 防衛時間は2時間。まだ半分近く、残っている。
「紫ノ宮さん、大丈夫でしたか」
「ありがと 平気です」
 明斗のライトヒールを受けながら、莉音が口元を引き締める。
 次の襲撃がどのタイミングか――あるいはこれで打ち止めかわからないが、回復できる時に回復しておいた方がいい。
 莉音と明斗は、手の回る限り治癒に動いていた。
「? 明斗くん?」
「あ、気休めかもしれませんけど…… ほら、肉体疲労時の栄養補給に」
 爆裂元気エリュシオンZ。
 躊躇なく飲んでいる明斗へ、莉音はヘチャリと笑った。
 その心構えは確かに大事かもしれない。
「なあ、少し、状況把握のために整理しておきたいんだが」
 アナスタシアが筆記用具を取りだし、一同に声を掛ける。
「それぞれの敵の特徴、気づいたことで良いから纏めておきたい。ここの砦を攻略していく上で、重要になってくるだろう」
 今回の依頼を受けた自分たちでさえ、『現地からの情報』ではザックリしたものしか与えられていない。
 そこを細かに提出することも必要に思える。
 反論は無かった。
「はい 蜘蛛は、速い、です…… あと、噛みつきは多分、命中高い……」
 噛まれた莉音が、力なく挙手。
「糸は、意外と避けられたわよね」
 和美も同意する。避けられる――といっても個人の能力や状況も関係するだろうけれど。
「ハルピュイア――やっけ。あれは、懐にさえ入ってしまえばって感じやね」
 飛行高度も、4〜6mといったところか。当たり所が良ければ、ワイヤー系の武器で引きずり下ろすことも可能だ。
 鳥の翼で、人間が飛んでいるだけに――的として、大きい。
 射程10の魔法属性攻撃こそ厄介だが、それさえなんとか対応できればといったところだろう。
「それと、ホワイトジャイアントですが――」
 千鶴との連携を試みた煉が、スイと言葉を挟む。
「硬いですね、無駄に」
 手数でいえば、一番多く攻撃を撃ち込んだ対象であった。
「俺が前に戦った時は再生能力なし、頭部弱点なしだったけど…… 今回もソレっぽいね」
「硬いけどな、無駄に」
 煉の言葉を借り、千鶴が一臣に続いた。
「敵の情報としては、こんなものか……」
 アナスタシアは言葉を区切り、そして要塞をみやった。
 皆も釣られるように、視線を移す。
 御池大橋のその先に、通りを封鎖するように、その要塞は建っている。
 空間へ無理やり捻じ込んだようなそれは、両脇を倒壊した建物に挟まれているため、迂回して側面からの攻略というのも難しそうだ。
 回り込む間に、砦に詰める天界軍に狙い撃ちにされるだろう。
 塀の上にはサブラヒナイトの影がある。砦上空にはファイアレーベンが旋回していた。この前線から向こうに出れば、あれらも動きを見せるのだろうか。
「正面突破しか、ないんでしょうかね。……そう仕向けられているようで、ゾッとします」
 煉が、目を眇める。
「良くも悪くも、一本道……ですか」
 多くの人の努力によって切り拓かれ、繋げ続けてきたこの道。
 前髪をかき上げ、一臣は道の先の要塞を睨んだ。
(どれだけ歩みは小さくとも、進む意思を止めはしない……)
「歯痒いけどね。でも、今はまだ」
 その時ではない―― 今はまだ、しっかりと備えを固める時期。
「シンプルで、私は好きだわ」
 重い空気を、和美の前向きな言葉が払拭した。



●前線防衛、後半戦
(脚から崩す、が得策でしょうか――)
 煉は、メタルレガースでホワイトジャイアントの足元を狙う。
「止めさせてもらうでぇ!!」
 出来た隙を狙い、千鶴が影縛りを試みる、が――
「っ、さっきは上手く行ったのに」
 不発に終わったところへ、鈍重な拳が振り下ろされる。
「宇田川さん!」
 滑り込むように煉が間に入り、庇護の翼を展開する!
「――終わりですか?」
 痛烈な一打を受け止めきった煉は、笑みを浮かべ巨人を見上げる。

「天のシリウスの加護を! ――天狼斬!」

 最大出力を止められた巨人の背後には、和美。
 後ろからは卑怯? これも連携の一つだ!!!
 白き輝きを纏う槍を、全力で叩きこむ!!

「去ねや!」
「そろそろ、時間的にもな!!」
 サイドへ回り込んだ千鶴が兜割、愁也が破山を仕掛けた。




「もう、大丈夫、とは思いますけど――」
 回復スキル、最後の癒しの風で、莉音は全員の負傷状態を確認する。
 明斗と二人いれば、回復役としての負担はかなり軽減されていた。
「煉さんは、危なかったですねー」
「信じてましたから」
 ホワイトジャイアントの渾身の一撃を正面から受け止めた煉は、立っているのもやっとという状態だったが、お陰さまで全快である。
「結局……奴には弱点らしい弱点は無いってことか」
 アナスタシアが唸る。
「再生能力と引き換えの攻撃力、それに無防備な時間……ということでしょうか」
 明斗の意見に、然もありなんという声が上がる。
「これが……東の要塞、か」
 まとめ上げたレポートに目を走らせ、そして改めて実物をアナスタシアは目に焼き付ける。
「うん。そんで、今の京都や」
「次に、生かしたいわね」
 この空気を忘れない。戦いの記憶を染み込ませる。
 千鶴と和美もまた、強い眼差しで応じた。
(全部を、一度に守ることが出来ないなら…… 譲れないのは何だろう?)
 守りたい。譲れない。取り戻したい。
 様々な感情が、莉音の胸に渦巻く。
(割り切れないけど……一秒でも長く立ち続ける、今は、それしか出来ないや)

 前線交代の合図が遠くから響く。
 後ろ髪をひかれる思いで、撃退士達は前線を後にした。

「必ず落す」

 最後に一度、振り向いて。
 明斗の声が、力強く空に響いた。



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 夜の帳をほどく先・紫ノ宮莉音(ja6473)
 輝く未来を月夜は渡る・月居 愁也(ja6837)
 期待の撃退士・アナスタシア・チェルノボグ(jb1102)
重体: −
面白かった!:8人

黄金の愛娘・
宇田川 千鶴(ja1613)

卒業 女 鬼道忍軍
焔魔と刃交えし者・
橘 和美(ja2868)

大学部5年105組 女 ルインズブレイド
JOKER of JOKER・
加倉 一臣(ja5823)

卒業 男 インフィルトレイター
夜の帳をほどく先・
紫ノ宮莉音(ja6473)

大学部1年1組 男 アストラルヴァンガード
輝く未来を月夜は渡る・
月居 愁也(ja6837)

卒業 男 阿修羅
重城剛壁・
神埼 煉(ja8082)

卒業 男 ディバインナイト
鉄壁の守護者達・
黒井 明斗(jb0525)

高等部3年1組 男 アストラルヴァンガード
期待の撃退士・
アナスタシア・チェルノボグ(jb1102)

大学部9年195組 女 陰陽師