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マスター:佐嶋 ちよみ
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/11/05


みんなの思い出



オープニング


 神無月――神去月とも呼ぶ。
 日本国に住まう八百万の神々が、ひとつの地へ集結するという話から付いた呼称だ。
「綺麗な月だ」
 人であった頃と変わらぬ金色の光を放つそれを見上げ、銀髪のヴァニタスは紅の瞳を細める。
 長身痩躯の、その手には深紅の刀身の日本刀。
「今は 神が不在 だそうだ」
「あは ホント、あなたの世界は面白いわね」
 同行する黒髪の女悪魔が、大きく翼を広げる。
 並べば、まるで姉弟のように酷似した、そして対照的な姿。
 互いが出会ったのは、霧が、濃く立ち込める日のこと。月の見えぬ暗闇の中でのこと。

 ――ひとごろし!!

 そう、こんな叫び声の響いた夜のこと。
 ヴァニタスは笑みを消し、刀から滴る血を払う。
 耳元へ口づけを、そして女悪魔は飛び立った。

「さて―― 撒き餌の準備を しないと な」

 たくさん撒いて、おびき寄せねば。
 成長する『力』もつ者たちを。



●去りし日々
 弱いままでなど、いない。
 敗北も、悲しみも、積み重ねながら全てを己の糧として生きてゆく。
 生きてゆく、生き抜いてゆく。
 そう誓い、暑い夏は終わりを告げた。


 久遠ヶ原学園。放課後。
 どたばたと、学園の廊下を走る赤毛。
「先生! 情報入ったって、本当ですか!!」
「とりあえず、その出血を止めろ。なんのサービスにもならんわ!」
 
 応急処置を受け、卒業生である筧 鷹政(jz0077)は在学時代より馴染みの場である生徒指導室へ通された。
「いや、仕事終えた直後にメールに気づいてですね」
「一人でやってるのか」
「ケースバイケースです。一人で出来るものは、一人で」
 撃退士の治癒能力は人並み以上、とはいえ――フリーランスが引き受けるレベルの依頼後に、ろくな手当てもしないで駆けつければ傷口だって開くだろう。
 調査レベルで懸賞金の賭けられるヴァニタス、通称『刀狩』を巡り、鷹政は学園入学当時からの付き合いである友人、そして仕事の相棒を喪った。
 それ以降も何食わぬ顔で依頼を持ち込んでは、学園で『刀狩』に関する最新情報の聞き込みをしていた。
 もともと、撃退庁に選抜されるほどでもない二流フリーランス二人組。それが一人になってしまえば知名度・信頼・ネットワークも一気に狭まる。
 額に巻かれた包帯に手を当てながら、鷹政は印刷された資料に目を通した。
「……黒狼、ですか」
「お前も持ち込んでいたろ、あの類のディアボロが頻発してる」
「珍しいタイプではないと思いますが……」
 鷹政は報告書の幾つかを照らし合わせ、考え込む。
 耳の奥には、夏の日の遠吠えがこびりついている。
 夏の暑さ。刃の起こす風の鋭さ。
 神出鬼没の、長い銀髪、切れ長の赤い瞳――背後の……
 そこで目を伏せ、改めて鷹政は教師を見据える。
「お話が、あるんです」



●昇る日に
 日本刀による連続殺傷事件。
 物騒なことだが、武器が特定されていることから『犯人は人間だろう』とされ、撃退士のネットワークでは重要度が低く紹介されていた情報がある。
 白髪の青年だか老人だかが、刀を持ってうろついていると。
 通報しても、警察が駆けつける頃には消えていると。
「救急が間に合わず失血死した例もありますが、基本的に致命傷までは負っていません。だから、表面化しにくいですが……」
「『刀狩』だと?」
 鷹政が頷く。
「黒狼の出没地点と、一定距離を取ってる。撃退士の目を向けようとしてるんじゃないでしょうか」
「だったら、狼と出ればいい」
「狼殲滅だけに派遣される撃退士じゃ足りないというサインでは? 背後にヴァニタスが居ると解ればそれなりの対策で当たりますが、今度は出動が派手になるでしょう」
「基本的に、一対一を好む、だったか。サムライか!?」
「元は日本人……の、ようでした。あるいは、そういう気質なのかも」
 武器。言い回し。容姿は変化されたといえ、造り手たる悪魔の趣味なのか、意思の根幹は残されている、そんな気がする。
 鷹政が、ここしばらくの新聞のスクラップを見せる。
 眺め、教師は唸る。
「単純に、人による事件であったとしても見逃せない。けれど――警察も追い切れていない。万が一、ということがあります」
「……変なことを考えていないか?」
「考えていたら、一人で行きます。わかってるでしょう?」
「…………」
「痛い痛い痛い!!」
 教師は瞑目し、鷹政の額の傷を抉った。


 微力でも、前に進むと決めたのだ。
 放っていても日が昇るように、立ち上がり、高みを目指すと決めたのだ。
 いつかは沈む、そうであったとしても。



リプレイ本文


 フリーランス撃退士を狙う通り魔
 そもそもの始まりは、そんな事件だった。

(今回の意図って……。待ってる? ……待ち伏せてるんは、彼?)
 宇田川 千鶴(ja1613)は押し黙り思案する。
 『力もたぬ一般人を活かさず殺さず』、らしくないといえばらしくない事件。
「なぁ、筧さん――」
 長く事件に携わっている卒業生へ見解を問おうと、その横顔を見上げ、
「――なんや、暗い顔して。削ったろか?」
「ぶは」
 やたら思いつめた表情をしているものだから、千鶴は言葉を変えた。
(仕事を人に任せられず何でも自分で抱えてしまう中間管理職もいるけど……)
 千鶴の一言で笑いを取り戻した筧に対し、狩野 峰雪(ja0345)はその内面を考える。
(相手を信頼して任せるということは、とても勇気の要ること―― 僕は年嵩の後輩だけれど、応えたいね)

「さて、ここら辺りが分岐点だ。俺は周辺警戒に徹底するけど、皆も無茶はしないで。アレの厄介さは――」
「……相手があの刀狩ならば何か妙にも感じます」
「またあの顔を拝む事になるたぁね」
 交戦経験のあるレイラ(ja0365)、常木 黎(ja0718)が小さく頷いた。
「これは心して掛からないといけないんだろうな?」
 張り詰めた空気に、榊 十朗太(ja0984)も状況を察する。
「よろしく頼む。皆を、死地に送るつもりはない。全員無事で、また会おう」
「鷹政くん、それってフラグ〜?」
「……ちがいます」
 御手洗 紘人(ja2549)――否・チェリーにシリアスを折られ、最後は笑顔で筧は別方向へと去って行った。


「過去の報告書で一度出てきた黒髪の女の悪魔……刀狩の上役? 彼女の目的も謎だね」
「ああ……。見たのは、遠くで一瞬だったけどね。それ以降は、出てこないんだろ」
「私は遭遇してませんね」
 峰雪の問いへ、黎とレイラが顔を見合わせる。
「……背後に、悪魔の意図があるのかも知れませんね」
 レイラが真剣な表情で先を見据える。それを聞きだすことも、任務の一つ。

 鈴・S・ナハト(ja6041)にとっての夢は『師匠のように人を守れる撃退士になること』。
 いかに敵を倒すか、ではない。
 『一般人が襲われている』、今回の事件において、そのことを強く問題視していた。
 話を聞くだに、力と力をぶつけてオシマイと簡単に済む敵ではないようだ。
(うちの目標は『一般人への攻撃の中止』ですね……)

(ボクに、どこまでできるだろう? ――どこまでも、やるだけだけどっ)
 提げた刀に触れ、一条 朝陽(jb0294)は武者振るいをする。
 敵も、刀の使い手だという。
 藤川一刀流剣士として、どれだけ力を示せるだろうか。



●無人の領域
 仄かな街灯に照らし出された公園。
 生き物の気配はなく、冷たい夜風がそっと吹くだけであった。

「刀狩か〜☆ 呼びにくいな……。イケメンだったら名前聞こう〜☆」
「チェリーさん……」
 チェリーの発言に毒気を抜かれながら、千鶴は阻霊符を展開させた。
 これで、周辺のブロック塀を破壊されない限り、公園の入り口は一つだけだ。
 塀の破壊、あるいは跳躍での突破があったとして、充分に警戒できる。
「そうだ、これ、渡しとくねっ☆」
 千鶴の脱力に気づくことなく、チェリーはインカムを仲間たちへ配る。
「先手を取れた、……で、いいのかな?」
 インカムを装着した黎は、前髪をかき上げながら公園内の遊具や地形把握へと行動を移した。
(『俺強いんで』みたいな、あのイケ好かない面に泥を塗ってやりたいんだけどなあ……)
 筧の情報を信じるとしても、さて上手いこと現れるだろうか。
 まさかとは思うが、アッチに向かわれちゃたまらない。
「……」
 しばし考え、黎はあえて隠れたり気配を断つことはせず、見晴らしのいい場所を位置どる。
 見つけやすいように。見つけられやすい、ように。

 対照的に、峰雪は木陰へと身を潜める。
 遠距離攻撃の出来る自分たちインフィルトレイターは、切り札の一つと成り得る。立ち回りは、慎重に。
(刀狩の興味は今……武器から人間そのものへと移ってきている。短時間で、どんどん力を身につける人間自身に。意志の強さに……)
 今回の一般人を狙ったやり方は、彼を知る人間を誘き寄せるもの。峰雪は、そう判断している。
 必ずや事件と事件を結び付け、喰らいつく存在が現れるであろうと。
(彼が強さを求めるのは……かつて、力が無いために何かを失ったのだろうか。それとも、彼には強さ以外に頼む物が無い空っぽの存在なのか?)
 
「……何を思って行動しているか分からないが、難敵なのは間違いなさそうだな」
「報告書や対峙した友人の話聞いても、一般人を意味もなく襲うタイプには思えんわ」
 十朗太や千鶴を始めとする、近接攻撃部隊はフォーメーションについて打ち合わせを始めた。

 遠く、犬の遠吠えが響く。



●闇にまぎれ
「はぁい、ロメオ。私よ私」
 遊具の頂上に腰かけ、照準を合わせながら黎は『色男』と呼びかける。初めて対峙した、あの時のように。
 わざとらしい艶やかな声、口元には薄笑みを浮かべて。
 黎の射程圏内に捉えられた銀髪のヴァニタスは、紅の刃を左手にダラリと提げて――
「……」
「本当に、腹立つわアンタ」
 あの頃、サポートに徹していた黎は、対象へ直接攻撃はしていない。だから『覚えていない』?
(私たちをおびき寄せる挑発だったとしても、これ以上凶行を許すわけに参りません)
 撃退士達を前に満足気な笑みを浮かべるヴァニタスへ、レイラが間合いを確認する。
「及ばずとも全力を尽くさせて頂きましょう」
 以前の戦いでは、隙を作り、逃げるのが手いっぱいだった。
 けど、今なら?
 ヴァニタスの視線が、レイラに移る。
「本当なら一対一で手合せ願いたいところなんだけど……。キミ相手に、そうはいかなさそうだね?」
 ヴァニタスが喉の奥で笑う。刀身と同じ赤の瞳が三日月のように細くなる。
 朝陽の刀――蜥蜴丸へと視線が注がれていた。
(興味自体は、確実に移ってるはずだ。けど、刀への執着は一体……? 弁慶のように数を集める、という訳でもなさそうだけど……)
 峰雪は、じっと成り行きを見守る。
 攻撃・援護、どちらも『今』ではない。ジリジリとした緊張感が闇を支配している。

「わぁ! イケメ……ッ」

 そんな空気を、チェリーが鮮やかに破った。そこに迷いなど一切ない清々しさである。
「ゴホン。初めまして☆ 今回はお招きありがとう……かな? 私はチェリー☆ 貴方の名前を教えて貰える?」
「知ってどうする?」
「『刀狩』は、他人が勝手に付けたものでしょう? ホントの貴方を知りたいな☆」
「与えられたものに 変わりない。 名付けられた折りより認められたものであればこそ 名は尊い」
 ヴァニタスとなってから、あるいは生前の名前でも―― 誰もが機があれば訊ねようとしていたことだったが、サラリとかわされた感触だ。
「……何か探してたん? 私ら? それとも他か?」
 千鶴は、敵の動き一つ一つ取りこぼすことの無いよう観察しながら言葉を選ぶ。
(しっかし、ホンマに武器しか見ん奴やな……)
 千鶴にとって愛用の忍刀・雀蜂は自慢の武器であり、それを認められて高揚しそうな心を冷静さで抑える。
「以前、一緒にいた女性は、今日は居ないのかな」
 峰雪の問いかけに、ぴくり、細い眉が動いた。
「一般人を囮に誘き寄せる作戦は、彼女の指令じゃなくて、あなたの意思なのかな」
「……あれは 命令などしない」
(ヴァニタスに命令をしない悪魔……?)
 目的なく、力を注ぐとは思えない。どういうことだろう?
「……刀など平時の武器に過ぎない。戦場の花形武器は槍。その意味をその身体に叩き込んでやろう!」
 十字槍を数度振り回し、十朗太が挑発的な言葉を掛けた!
 『刀狩』と称され、本人も受け入れている対象に対して―― それは、地雷だろう。
「来るで!!」
 千鶴が叫ぶ。
 間合いは充分、回避できる!
 前衛陣の鼻先を、赤い刃が横薙ぎの軌跡を描いて消えた。

「ボクの刀は蜥蜴丸って言うんだ。キミの刀は紅いね…… 名はあるのかな?」
 集中攻撃を仕掛け、隙を作る。
 そのタイミングを伺いながら朝陽は問いかける。
(……ひたすら見るんだっ。完全には見切れなくても一瞬、一撃の隙なら!)
 初撃は、相手も本気では無かった。
 向こうが油断しているのなら、全力で付け入る!
「名など無い ただ――出来が良かった」
 名は無い。出来。刀への、執着。
「キミは、まさか――」
 造り手?

(あの刀……すごぞうですね)
 銘無しというが、武器の力に他称など関係ない。
 ヴァニタスが所持するのだから尚の事―― は、置いとくとして。
 鈴は小さく頭を振って、意識を切り替える。
「撃退士と戦いたいなら、なんでこんな回りくどいことをしてるのですか!?」
 朝陽と別方向へ踏み込みながら、単刀直入に訊ねる。
「回りくどいのは そちら だろう?」
「――とは?」
 フリーランス撃退士を狙う通り魔
 そもそもの始まりは、そんな事件だった。
 変わってきているということか?
「斬っても斬っても斬っても つまらぬ者ばかりだ。が――、おぬしらは、違う」

 刀狩は、気配を消して死角へ回り込んでいたはずのレイラへ向き直った。
「!!」
 渾身の薙ぎ払いを、ステップ一つで避けられる。
「いい筋だ 前より鋭さが増した な」
「ッ! 戦いを望むならば、挑戦状でも送り付けなさい!」
「受け取っただろう? 充分だ」
(一連の事件は、やはり)
 体勢の立て直しを図るレイラへ、容赦なく刀狩が刃を振りかざした。
 至近距離で、鋭い風がレイラを襲う。
 ――――、
 回避できたのは、僥倖だろうか?
 レイラの頬を汗が伝い、黒髪が張り付く。
 鼓動が頭の芯に響く。

(今の攻撃は初めてだね)
 確実にレイラのみを、標的と絞っていた。鋭利な風を纏った剣撃は、今までの報告書にはない。
 援護射撃をしていた黎は、そこで気づく。
(こっちには、何もない?)
 興味対象が近接武器だけ、というわけではないように思う。
 峰雪と黎は仲間たちの回避の助けとなるよう射撃を続けているが、敵は回避や受け止めはすれど、一瞥するだけで反撃をしてこない。
(アイツの武器は、あくまで刀であって…… 巻き起こす風も副産物ってこと?)
 銃火器のような遠距離の能力は持ち合わせていない、そこまで便利な能力では無い?
 ……ならば、利用させてもらうまでだ。
「Jackpot」
 通常攻撃を続けざまに受け止めさせた後、黎はアシッドショットを撃ち込んだ!
 造作もない、という色男の表情が、にわかに変わる。
「たまにはコッチも気にかけてよ、寂しいじゃない?」
 ニヤ、黎が刀狩へと呼びかける。
 ゆっくり、ゆっくり、腐食効果がヴァニタスを蝕み始める。赤い瞳を大きく見開き、刀狩が口を開く――

「どこを見ている!」
 十朗太が縮地を発動させ、一気に側面へと回り込み、十字槍で薙ぎ払いを試みる。
 金属音が響き、火花が散った。
「くっ!!」
 槍を跳ねのけられた十朗太は反動を利用してそのまま後方に下がり、再起を伺う。
 一度の機で、深追いすることは危険だ。

 その横で、嵐の如き強風と轟音が巻き起こった。
「さっきからまァ、けったいな攻撃やな! 本気出しぃや!」
 闇の中に、白銀と黒のオーラが立ち上り千鶴を包む。
「千鶴ちゃん、フォローするよ! さぁ、千鶴ちゃんをエスコートしてあげて!」
 それを合図に、チェリーが疾風符を千鶴に掛ける。その効果を敵は知らない。
「さっきから自分の攻撃、1ミリも私に当てられてへんやん」
「……よく 回る舌だな」
 レイラに対してと同じ技を、今度は千鶴に対して繰り出す。
「当たらんなぁ!! それしか芸はないんか!」
 チェリーの援護あってこそだとはわかっている、恩恵があるうちに千鶴は技を見切れるよう体に刻みこむ。
「手加減・出し惜しみは無し! 武器召喚系魔法少女を嘗めないでね!」
 チェリーがセルフエンチャントを発動する。
(――今!!)
 レイラが、朝陽が、鈴が、十朗太が、薙ぎ払いを仕掛けるべく各方向から間合いを詰める。
(剣速の速さで……勝負っ!)

「だめだ!!」

 峰雪が叫び、黎と共に出来る限りの回避射撃を放つ。しかし銃口は二つしかない。
 刻は、一瞬。

 熱風が、吹きすさぶ。
 
 刀狩に動きを読まれ、全員が『射程圏内』に収められた。バックステップで放たれた衝撃波が撃退士達を襲う。
「一条さん!!」
 なんとか耐えた鈴が、吹き飛ばされた朝陽のもとへ駆けつける。
 返事はない、しかし心臓は確かに動いている――気絶で済んだようだ。
「ここで決める!」
 深手を負った十朗太が叫ぶ。
 太刀筋を見切り回避できたレイラも、踏み込むことを選んだ。
「必ず、繋ぎます!!」
 上段から十朗太、下段をレイラが。
 二つの攻撃が交差し、そこへ峰雪がスターショットを撃つ。

「いっけぇええええっっ☆」

 チェリーがセルフエンチャントに龍虹笛を乗せ、最大火力で破魔弓から白きアウルの矢を放つ!!



●神去りて
 ――バサリ
 大きな翼の音がした。

 公園の街灯が、夜空からの来訪者を照らす。
(女悪魔……!)
 峰雪が目を見開く。
 闇より黒い髪を背に滑らせ、悪魔が己のヴァニタスのもとへ降り立った。
「派手に、噛みつかれちゃったみたいね」
「……今なら 大丈夫だと思ったんだが な」
「どうして?」
「神去月だ。邪魔する天界勢は 居ないだろう?」
「あなたの世界のソレと あたし達の世界のソレは別物よ。……馬鹿ね」
 同じ色の赤い瞳を笑いに歪め、女悪魔は刀狩を抱き起こす。
 そして、ゆっくりと、固唾を飲んでいる撃退士達へと視線を上げる。
「話は、彼から聞いてるわ。――クオンガハラの、ゲキタイシさん」
「……貴方の目的って、なに?」
 弓を構えたまま、チェリーは問う。
 刀狩へ、致命傷ともいえるダメージを与えたアウルの矢を番えて。
「目的? 彼の自由だわ」
 その言葉に、一同が眉を顰める。
 死者に仮初の力を与え、戯れに人を傷つけさせる自由?
「月が、綺麗ね ……あなたたちの世界では、そう言うのだったかしら」
 悪魔は笑い。そしてヴァニタスを抱きあげ、飛翔していった。

「これからは、まっすぐに私達を狙って来るでしょうか」
 悪魔の消えて行った空を睨み、レイラは呟く。
「今度こそ……負けないよ」
 気絶から回復した朝陽は、鈴に支えられながら蜥蜴丸の柄を握った。


「Hey、生きてる?」
『かろうじて。そっちは?』
「悪魔が出たよ」
 通話の向こうで咽こむ筧へ、黎は意地悪く笑った。



●報告書
主人である悪魔を含め、興味対象を『撃退士』に絞ることに成功
『久遠ヶ原の』と強調していたようなので、今後の動向に注意


追加情報:
刀狩
・対接近戦の高威力攻撃有りと判明
・遠距離攻撃という手段は持っていない様子
・魔法耐性は低い

女悪魔
※名前、目的等の詳細は不明のまま
・撃退士に関しては刀狩を通して情報を得ている
・刀狩へは強い私情を抱いている



依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 雄っぱいマイスター・御手洗 紘人(ja2549)
重体: −
面白かった!:13人

Mr.Goombah・
狩野 峰雪(ja0345)

大学部7年5組 男 インフィルトレイター
202号室のお嬢様・
レイラ(ja0365)

大学部5年135組 女 阿修羅
筧撃退士事務所就職内定・
常木 黎(ja0718)

卒業 女 インフィルトレイター
『榊』を継ぐ者・
榊 十朗太(ja0984)

大学部6年225組 男 阿修羅
黄金の愛娘・
宇田川 千鶴(ja1613)

卒業 女 鬼道忍軍
雄っぱいマイスター・
御手洗 紘人(ja2549)

大学部3年109組 男 ダアト
撃退士・
鈴・S・ナハト(ja6041)

大学部4年115組 女 ルインズブレイド
特攻斬天・
一条 朝陽(jb0294)

大学部3年109組 女 阿修羅