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マスター:佐嶋 ちよみ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/09/24


みんなの思い出



オープニング

●守るべきは大小さまざま
 久遠ヶ原学園・十三委員会がひとつ、風紀委員会。
 『撃退士が撃退士を取り締まる』その権限を与えられた組織。
 撃退士による犯罪――それは大小さまざま。

 
「はい、オシマイ。神妙にお縄につきな?」
 非合法営業店舗へ乗り込んだ風紀委員の一人・野崎 緋華 (jz0054)が、リーダー格と思しき撃退士の男をブーツのヒールで踏みつけ銃口を向ける。
「くっ、この女……!」
「ったく……見苦しいんだよ、アンタら。まず、服の仕立てがなっちゃいない」
 戦闘不能に追いやられた、店舗スタッフ――取引を成立させるための圧力として配置されている彼らもまた撃退士であった――の衣装へ視線を走らせ、それから緋華はヒールに力を込める。
「次。お仕着せのコスチュームで『萌え』を得られると思うな。この業界、そんなに甘くないんだよ」
「な、なんだこの女……」
「10日」
「は?」
「見てな。10日あれば、あたしが健全かつ盛況な萌え萌え外人カフェに生まれ変わらせてやる」
 緋華は、それはいい笑顔で言い放った。



●フロンティアスピリッツ
「ということで、依頼の斡旋だ」
 風紀委員経由の依頼ということで、さぞ物騒なものかと書類を受け取った担当生徒が、『なんて酷いものを』という表情で緋華を見上げた。
「依頼人は、先日取りまった非合法店舗の、元の持ち主。武力で脅され、不健全な営業活動を許す羽目になった被害者だ。
向こうに落ち度はない。再起のため、イメージ一新の手助けが欲しいと、依頼してきたんだ」
「それが……『萌え萌え外人カフェ』ですか」
「もえるだろ?」
「わかりません」
「チッ」
 生徒の即答に、わかりやすく緋華は舌打ちする。

「ならば答えよう。
『萌え萌え外人カフェ』とは言語不要のコミュニケーションカフェだ。
けも耳、メイド、執事、それも良いだろう。
が、けも耳といっても猫や狼、クマにパンダと種類様々。
メイドといっても和風洋風オーソドックスミニスカなどと奥は深い。
ツンデレがもてはやされれば妹属性も今なお強く、男装女装も幅広く受け入れられている。
それは、ジャパニーズに限ったことじゃない。
このカフェでは、あらゆる国籍を取り払い、『MOE』を存分に楽しむ客たちが集うんだ」

 その無国籍感ゆえに、非合法取引を生業とする犯罪撃退士たちに目をつけられた、というわけだ。
 出る杭は打たれる――というが、健全()に夢を追い活動していた経営者にとって、それはあまりにも理不尽なことであった。
 また、そこで『長いものに巻かれる』を善しとしなかった魂も、緋華を動かす要因の一つであったろう。

「カフェは、わかりました。えぇと、それで…… 進級試験に加点されるというのがわかりません。それに……『外国語』?」
「MOEは言語だ。わかるだろ」
「わかりません」
「固いねぇ、お嬢さん……」

 これ以上の説明は面倒だ。
 態度をあからさまにしながら、首を鳴らし、緋華は説明を続けた。

「まず、依頼からだね。
準備期間は5日間。
『萌え萌え外人カフェ』スタッフのための衣装を用意する。手作りだ。
あるいは、自ら『萌え』を指導すべくカフェで働いても良い。
その場合、衣装完成を早め、残った期日でカフェに入るということになる。
自分の体型に合わせて作るんだ、納期が早くても問題ないだろう。
いずれにせよ、作り終えた衣装はカフェ経営者が買い取る形となる。それが報酬として充てられるってことだ。
以上が、依頼内容。
続いて進級試験との関与だが――この時期に、個人の能力を発揮するんだ。ただの経験とするにはもったいないだろう。
あたしが教師陣に掛け合った。
衣装は文化。国籍を超える言語。そういう理由付けで『外国語』に加点してもらうよう仕向け 違う 仕掛け 違うな……交渉した」
 言葉を変えても結論は変わらない。
「つまり、言葉の壁を超えるほどに胸を打つような仕上がりであれば上々。採点はカフェのオーナーに一任、あたしの趣味は反映されないから安心しな。ただし――オーナーもまた、萌えに厳しい」
「意気投合、したんですね」
「そういうことだね」
 オーナーは、オールラウンドで『MOE』に造詣が深いという。
 久遠ヶ原の、ひと癖ふた癖なな癖くらいある学園生たちのアイディアを、きっと喜んで受け入れてくれるに違いない。
 そう添えて、緋華は火のない煙草を唇に挟んだ。


リプレイ本文

●切り拓け、MOE!
 さて諸君、『MOE』である。
 そもそも『MOE』とは何であるのか。
「えっと……」
(『MOE』って何かな……?)
 準備室に入って早々、久慈羅 菜都(ja8631)が戸惑うのも無理はなかった。

 笑顔と共に、菜都の横を駆け抜けるのは城咲 千歳(ja9494)だ。
「今回は、よろしくぅー!」
 両手いっぱいに、和柄の布を抱えている。
「和メイド服は、外せない!」

「言葉の壁を越えるMOE……となれば、これしかないのです!」
 猫耳・猫しっぽの準備は千歳と同様であるが、衣装に違いを持たせるのがRehni Nam(ja5283)。
 広げる型紙はクラシックスタイルのメイド服、スカート丈はロング。
 しっぽの先には鈴つきのリボンでアクセント。
 クラシカルな英国と、どこかで曲がった日本文化の融合。
 これぞ、独自の『MOE』であろう。

(せっかく外人さんがいらっしゃるお店なのですから、日本ならではの雰囲気……と、萌えを味わっていただきたいですね)
 牧野 穂鳥(ja2029)が制作する衣装の案は固まっている。
 ただ、それだけでは不十分だと穂鳥は思う。
「余計な装飾が無くても、日本の和の美はそれだけで萌えですよね……」
 さて、それをどうやって伝えよう?

「ボク、日本のMOEってまだ良くわからないけど、きっと可愛くて、キュンて心に響く、そういう物なんだよね?」
 犬乃 さんぽ(ja1272)はスケッチブックに、思うままのイメージを描きだす。
 『金髪ポニーテール+セーラー服ヨーヨー忍者』は日本の由緒正しき伝統でありMOEではないと、さんぽは考える。
「可愛くて、キュンと来る……。うーん、故郷に居た時は、チアリーダーの衣装なんか、可愛かったな♪」
 アレンジして、上手く取り入れられるかな?

 既に手持ちのメイド服を所有しているアーレイ・バーグ(ja0276)に死角はなかった。
「作業用に仕立て直しましょうか。これはコスプレ用なので仕事に使うには耐久度に不安がありますからね」
 耐久度意外の不安な点は黙殺する。むしろ計算の範囲内。
「これでかなり時間は短縮できます。美味しいお茶と快適な空間は萌えに必須、そこを攻めていきましょう」

「芽吹く……つまり、心に温かさを灯せればいいのですわね!」
 『萌え』を丁寧に辞書で調べたのは白露院 まほろ(jb0500)。大体合ってます。
 接客での対応も大事になってくるだろう。
 店に出るためには、まずは衣装を作らねばならない。
「和装……巫女服と紙垂を付けた御幣を作ることにしましょう」

「MOEって要は、かわいい服装って事……ですよね?」
 各々、準備に取り掛かる様子を佐藤 七佳(ja0030)が不安げに見回す。
「うーん…… 裁縫が得意という訳ではないし、専門店で調達した方がいいのかなぁ」
 考えるイメージに、技術が追い付かない。
「何を悩んでるんだい?」
 そこへ、今回の依頼を持ち込んだ野崎 緋華(jz0054)が七佳の手にする図面を覗きこんだ。
「大正時代女学生風味……ね。いいんじゃないか?」
「依頼人側が手作りにこだわるなら別ですけど…… 提案して購入して貰う方が良いんじゃないかって」
 こつん。
 見上げる七佳の額を、緋華が軽く握った拳の裏で小突いた。
「ただのカフェ立て直しならそれもアリさ。けど、これは進級採点が掛ってるんだよ。そういう依頼なんだ。あたしが直接手を出すワケには行かないが、アドバイスくらいはするよ」

(えっと、いろんな可愛い衣装を見れるのかな……? 楽しみ……)
 周囲の状況を、菜都がようやく理解する。
 『MOE=可愛い』これで良いはず。
「えっと……野崎さん」
 しかし、何をして可愛いとするか。誰にとって何が『可愛い』と感じるかは千差万別。で、あるならば、菜都には先にしておきたいことがあった。
「ん、久慈羅さんだったね。困りごと?」
 七佳の相談に応じていた野崎が振り返る。
「その、先に……カフェを見学することってできますか? えっと……内装を見たり、スタッフの方と一度、お話ししたくって」
「OK、店舗側とのコミュニケーションも大事だね」



●敵は布地にあり!
「縫うのは結構、難しいのね……あ、痛っ!」
 丁寧な手縫いで、まほろが難航する。
 和服と洋服では下手が違うとはいえ、普段から自分たちが身に着けているものを、いざ作ってみろ! となると、なかなか難しい。
 それと同時に、どういった行程で衣装が作られていくのかという勉強にもなる。
 ふ、と視線を逸らすと、先に準備してある狐の耳としっぽがそこにある。
 衣装を作り上げて、それから接客して……。
 道のりは険しい、それゆえに、この努力が芽吹く時が待ち遠しい。
「負けませんわ」
 何に? それは、自分に。


「可愛いし、みんな喜んでくれるといいな♪」
 さんぽが、手際良くチア風の衣装を仕上げてゆく。
 健康的な丈のミニスカートの他に、ボーイッシュだったり男の子でも似合うようショートパンツバージョンも揃えて。
 一人で着るより、数名がチームのようにまとまった方が見栄えのするデザインだ。
(バトリングを応用して、お盆をくるくる回したりアクション入れつつ、活動的な接客応対できるように、スタッフさんを指導しちゃおう)
 自分にできることを、最大限に伝えたい。
(ボクの故郷のMOEと父様の国のMOEを融合させたら、絶対素敵なお店に出来るって思うんだ!)
 

 菜都はミシンを借り、ひたすら衣装作りに専念していた。
 早く仕上げたメンバーには、既にカフェ入りしている者もいる。
 オーソドックスで実用的なもの。
 スタッフの生の声を聞いて、菜都が打ち出した答え。
 直接採寸させてもらい、『その人のための』衣装を作る。
「あっ…… 裏とつながっちゃった……」



●カフェですから
「カフェである以上、まずお茶の味が大事ですっ!」
 ぷるんっ、とアーレイの乳が力説する。
 仕立て直したとはいえ、ノーブラ前提のデザインであり、普段よりご機嫌に乳は語る。
「インスタント珈琲を、もえもえきゅん♪ とか誤魔化して飲ませるのではぼったくりバーと変わりません!!」
「そこまで言うからには、何か策があるのかい?」
 アーレイの乳に動じるでなく、従来の萌え系カフェへのイメージに対する熱弁を愉快気に聞きながらマスターは問い返す。
「美味しい紅茶を仕入れて、淹れ方をスタッフに教育するべきだと思います。私に贔屓の店があるので、そこから茶葉を仕入れればいいでしょう。
勿論紅茶だけではなくスコーンなどのお茶請けも美味しいものに切り替えます。凍茶も仕入れますか。特定の県まで行かないと飲めないお茶なので、話題性がありますよ?」
 パソコン画面を開き、ネット通販もしていることを押し出す。
 マスターは目を細め、顎ひげをざらりと撫でた。


 一方、スタッフ達と紅茶を巡ってあれやこれや行動に移しているのはレフニー。
「いて良かった、本職メイドのお友達!」
 周囲の好感触に、思わず隠れて拳を握る。
 紅茶に詳しい友人から、事前にコツを教えてもらっていたのである。
「同じ茶葉でも、淹れ方ひとつで全く味が変わるのですよ〜〜」
 受け売りではあるが、実際に違いを見せつけられれば誰も反論しない。
 ちょっとだけ、手間を加える。
 それは、魔法のようなもの。
 そして、美味しいものは言葉の壁を超えて、人に幸せをもたらすもの。



●いざゆけ、MOE!!
「うん、よし! 頑張ろう! 楽しんでもらわないと!」
 千歳は頬を叩いて気合を入れる。
 さぁ、飛び込め、MOEの世界へ!!
「うぇーるかむとぅー! ジャパーン!」
 完全に日本語が通じないだろうな、というテーブルへ突撃!
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
 そこから、にぱっと笑顔に切り替えて、腰や頭の角度を意識しつつご挨拶。
「どんなものを召し上がりたいですかー?」
 語りかけは日本語だけれど、身ぶり手ぶりで意思を伝える。
 相手も笑いながら、千歳に合わせた。
「本日のおすすめはー、こちら! 和風すいーつ、たいやーき!」
「ん、じゃ、たい焼きを餡、ドリンクは抹茶を。あっ、できれば粒あんで」
「……日本語オジョウズですネー」
「MOEのために勉強しますた」
 金髪碧眼の青年が、爽やかに言い放った。
 MOE、おそるべし。


「よく出来てる。可愛いよ」
 七佳の耳元で野崎が囁き、その小さな背を押してやる。
「で、でも……大丈夫でしょうか」
 矢絣の御召に海老茶色の袴は、野崎のアドバイスのもと、七佳が自分で作ったものだ。
「その、おどおどした立ち居振る舞いもゾクゾクするね、いいMOEだ」
「!!?」

 七佳が到着した卓は残念なほど無国籍だった。
 痩身からガチムチまで欧米東洋中東各種揃っている。
「オウ、ジャパニーズ姫!! MOE!」
「えー、えっと、ハイ」
 姫カットの髪型をして、欧米系の客人のテンションが上がっている。
 黒髪ロングストレートは、どストレートにMOEど真ん中である。
「あたし個人としては飛行機……特にレシプロ機は萌えで燃えですね」
 わかるかな? わからないかも。
 七佳がそっと世間話交じりに自身の好きなものを話す。
「チョ! そこクワシク!!」
 喰いついたのは中東系の客人だ。
「あ、えぇと……中でも複葉機は最高です。ただ整備士系給仕は汚れとか無いとソレっぽくないから、給仕としては微妙ですけど……」
「オシイ!!」
 七佳と固い握手をしながら、客人は悔しがる。
 どうやら、整備士系給仕を求めているようだった。
 広い。
 MOE、広い。


 アーレイは、王道的・丁寧な接客に努める。
「本日限定の、アッサムティーです」
 有名な茶園の名を告げ、優雅な所作で紅茶を注ぐ。
 ポットをすっと置いて控えめな笑みを浮かべ、
「ごゆっくり、お寛ぎくださいませ」
 寛ぐ乳が、たゆんと揺れる。
「ギャップMOEと来たか、それも良し」
 定番メイド喫茶的衣装と対照的な接客姿勢に、客人が寛大にうなずく。
 『萌え萌えカフェ』などに来るとは思えない老紳士だ。
「うむっ このギャップ! なかなか見事!」
 アーレイが去るその後ろで、絶品の紅茶に再び感銘を受けたようだ。
 こんな老紳士が来ること自体、ギャップだと思う。


「えっと…… 丈が合わなかったり、ほつれがあったりしませんか?」
 菜都は緊張の面持ちで着替え室から出てくる人々へ声を掛ける。
「とても、丁寧に作ってくれたのね。伝わってくるわ」
「あっ、あの、もしも途中で乱れたりしたら、いつでも直しますから、えっと……、いつでも教えてください」
 与えられた日数を、ほぼフルに衣装作成へ費やした菜都は、この日は完全に裏方に徹すると決めていた。
 自分の作った衣装で、接客をするスタッフ達。
 衣装を喜び、見せつけるように動くスタッフ達。
 その行動が、菜都の心を達成感という言葉で満たしてゆく
 これもまた、『言葉の壁を超えるコミュニケーション』なのかもしれない。


「にゃー、にゃん(オムライス、お待たせいたしました〜)」
 ボディランゲージとホワイトボードを駆使し、徹底して猫語を貫くレフニーである。
(猫は喋らないのです!)
 『あーん』サービスも、やらないと決めている。あれは喫茶やMOEじゃない、別の何かと思うものである。
「みゃーお?(どんな絵を描きますか?)」
 ケチャップを手に、レフニーが小首をかしげる。
 一人目は、『ハートマーク』
「みゃん!(お任せなのです!)」
 二人目は、『君の名前』
「みゃぁ!(れ・ふ・にゃ・ん、と)」
 三人目は……
「にゃにゃぁ!?(え? 金閣寺? なんとかなるな……ならないのですよ!?)」


(なんとか……様になりました)
 鏡の前で、穂鳥が胸を撫で下ろす。
 襟から袖にかけて小花が散り、袴は紺色で全体の左足側から右足下部にかけてリンドウの花の群れが流れている。
 布地と、仕立てた際の柄の位置の難しさに苦戦したが、レースのエプロンを付けることで華やかさを増す衣装の狙いを表現することが出来た。
 髪型はお嬢様結びで、頭の上部に大きな山吹色のリボンの櫛を挿してできあがり。
「いらっしゃいませ」
 清楚な大和撫子姿で穂鳥は客をもてなす。
「あっ、こちら…… はい、私が作りました」
 穂鳥の担当するテーブルには、小さな折り紙細工がいくつも置いてある。
 鶴や亀、風船、カメラ、手裏剣など……。
「よろしければ…… 一緒に作ってみませんか?」
 穂鳥の申し出に、客は手を叩いて喜んだ。
「皆様が国へ戻られても、日本を思い出すきっかけになればいいなと思います」
 折り紙は、言葉のいらない交流。
「あはっ 器用ですね」
 どこで学んだのか、ゲームのキャラクターの形に折り上げた客人に、穂鳥が素で笑ってしまった。
 MOEの伝播は止まることを知らない。
 

「笑顔の魔法で、みんなが元気だよ☆」
 アクティブな接客指導をしてきたさんぽが、スタッフ達に声を掛ける。
 指導をしているうちに、何故か自分もチア衣装を着ていたことは不思議の一言だ。
 そして、なぜ自分がミニスカートを身につけているのかも不思議の一言だ。
 希望者の人数の結果ともいえるが、なぜこのことに対して誰も交換を言い出さないのだろう。
※似合いすぎていました
 頬が熱くて赤いけど、必死に接客スタート!
「いらっしゃいませ…… ボク達が、キミを応援しちゃうからっ」
 照れ混じりの、さんぽの笑顔。
(あれ? この方が、よりMOEられてる!??)


 普段の縦ロールは解いて、腰の辺りでリボンで結んで。
「銀の狐に見えるかしら――?」
 まほろは、お手製の衣装に身を包み、姿見の前でクルりと回る。
 唇にルージュと、瞼に赤いアイライン。
 ちょっとした、子狐である。
 衣装を作り上げた翌日は、接客に向けての自主トレーニングに充てていた。
 笑顔と、流し眼の練習、お茶出しの練に、古風な口調の勉強。
「お帰り、人の子よ。外界は疲れたであろう?」
 紙垂の付いた御幣で祓いを行い、笑みを浮かべて来客をもてなす。
「尻尾を触るでないよ」
 席を案内する間に、フラグを立てる。
「あっあっ、耳もダメなのじゃ!」
 時には流し眼、時には年相応のふくれっ面や笑顔など表情をコロコロ変えるまほろに、客たちはMOEそっちのけで癒されモードに突入していた。




「また、戻って来るがよいよ」
「いつも心に萌を!」
 元気よく見送られ、その日のカフェは賑やかに幕を閉じた。


 お疲れ様、と野崎が手を叩く。
「カフェを盛り上げてほしいという依頼としては、まずまずかな? 『萌え萌え外人カフェ』とはいったけど、メイド喫茶じゃないからね」
 言葉の響きから、真っ先にそちらを連想してしまうのは仕方なかったかもしれない。
「相手へ強く訴えかける・主張する行動、というのが採点ポイントだ。別途、連絡が行くよ」
 忘れがちだが、進級試験にも影響する依頼なのであった。
「なんにせよ依頼は完了! 面倒なお仕事ご苦労さん!」

「「自分で面倒なお仕事って言った!!?」」

 ――今夜はMOEにカンパーイ!



依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: Defender of the Society・佐藤 七佳(ja0030)
 喪色の沙羅双樹・牧野 穂鳥(ja2029)
 前を向いて、未来へ・Rehni Nam(ja5283)
重体: −
面白かった!:6人

Defender of the Society・
佐藤 七佳(ja0030)

大学部3年61組 女 ディバインナイト
己が魂を貫く者・
アーレイ・バーグ(ja0276)

大学部4年168組 女 ダアト
ヨーヨー美少女(♂)・
犬乃 さんぽ(ja1272)

大学部4年5組 男 鬼道忍軍
喪色の沙羅双樹・
牧野 穂鳥(ja2029)

大学部4年145組 女 ダアト
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
君のために・
久慈羅 菜都(ja8631)

大学部2年48組 女 ルインズブレイド
逢魔に咲く・
城咲千歳(ja9494)

大学部7年164組 女 鬼道忍軍
『進級試験』参加撃退士・
白露院 まほろ(jb0500)

高等部1年13組 女 インフィルトレイター