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マスター:狭霧
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:6人
リプレイ完成日時:2014/06/12


みんなの思い出



オープニング


 夜の帳が下り、人気の失せた中学校。
 常ならば沈黙が支配するその校庭で、二つの影が対峙していた。

 一つは人型。
 未だ少年といえる体格ながら、右腕のみがまるでその存在を誇示するかのように異形と化している。
 右肩から拳にかけて鎧を思わせる装甲に覆われ一回りほど肥大している腕は、ただの少年が持つものではありえない。
 それは左肩から血を流しながらも、己に傷を負わせた相手を臆せず睨みつけていた。

 一つは獣型。
 真っ白な毛並みが美しい兎だが、その大きさは1mはあろうか。明らかに天魔の類だ。
 異常に発達した鋭爪を赤黒い液体で湿らせ、人型を観察するかのように見つめる深紅の瞳からは何の感情も見て取れない。

 両者睨み合い、先に動いたのは獣だった。
 弾丸の如き跳躍を見せた白兎が夜の闇を裂き、人型の首を刎ね飛ばさんと急襲する。
 これに対し、人型は咄嗟に左腕で首を護るように構えた。
 当然、生身の腕で完全に防げるわけもなく。
「――ッ!ォォオオオ――ッ!!」
 腕を深々と切り裂かれ声にならない悲鳴を上げるも、腹に力を入れ声を絞り出して。
 全力で、目の前の兎に黒いオーラを纏う拳を振り下ろした。

「ヴォーパルバニー撃破。どーよ師匠。実験は成功でしょ?」
 東北の地。
 どこかのゲートの中で、モニタを見つめていた少年は得意げな笑みを浮かべ、彼が師匠と呼んだ男に向き直る。
 彼に呼ばれた“師匠”もまた、大仰に何度も頷き唇端を歪めた。
「及第といったところだね。人間に寄生させて育てると聞いた時はどうなるかと思ったが、良い方向に予想を裏切ってくれたか」
「寄生直後はザコいから最初は苦労したけど、融合率が上がれば御覧の通り」
 そう言って少年は再びモニタに目を向ける。

 そこに映し出されていた少年の腕は先程までの異形ではなく――右腕が炭化したように黒ずんでいる以外は――普通の腕の形をしていた。
 変化はそれだけではない。深々と切られ出血していた筈の傷が徐々に塞がっている。
 それを確認すると彼はその腕を隠すようにいそいそと、しかし愛おしげに包帯で覆っていった。
 しかし変化はもう一つあったことに彼は気付いていないだろう。
 右肩から背中を覆い、そして左腕まで炭化が進行していたことに。

「お、やりい。レベルアップー」
 その変化を見て少年はガッツポーズ。その顔は満足げであった。
 が、すぐにソファに身体を投げ出して脱力する。
「育成ゲームみたいで楽しかったけどもうやりたくないや。1体育てるのに手間かかりすぎだって」
「実験とはそういうものだよ」
 励み給え、と軽く笑い部屋を後にした師匠を目の端で見送って。
「――ま、そろそろ精神異常がヤバくなるだろうし潮時かな。早いとこ回収しますか」
 玩具を片付けるかのような気軽さで少年は笑った。


 ――時は僅かに巻き戻り。
 斡旋所、相談室。

 日はとうに沈み、普段ならば部屋で身体を休めているか、歓楽街にでも繰り出している時刻。
 緊急の案件で集められた生徒たちは、こんな時間に事を起こした天魔への憤りを抑えつつ資料に目を通していた。
 といっても情報量はそう多くない。
 中学校の校庭で天魔が交戦中であるという状況の他は、通報者から伝え聞いた2体の外見的特徴のみだ。
「読んだな?校庭で化け物が戦ってる。まあ大方、サーバントとディアボロの小競り合いだろう。
 連中の潰し合いは歓迎だが…生き残って街中に逃げ込まれるのだけは避けなきゃならん」
 いつ戦闘が終わるとも知れず、時間の猶予はない。
 だからこそ、それを察した生徒たちの行動は迅速だった。
「転移装置の準備はさせている。すぐに転移すれば間に合うだろうから急行して――」
 潰してこい、と。
 職員の言葉を背に、生徒たちは転移装置へと駆け出した。


 ――――。
 はは、アハハハハハ。

 白い毛を赤い血で汚して、ゴミのように転がる兎を見下して少年は歪んだ笑みを浮かべる。
 自分は選ばれた存在、“特別”なんだという驕り。
 そして人知れずこの町の平和を守ってきたという自負が彼を酔わせ、心を麻痺させてしまっていた。
 最早この力は彼の一部で、天魔狩りは日常の一部だ。
 ゆえに今更それを疑問に思うことはなく、同じ日常、手をつけていない宿題のことを考えながら、少年の意識は暗い闇へと墜ちていった。



リプレイ本文


 バサリと闇が翼を広げる。
 闇に溶けるような闇色をしたそれは巨大な鴉だった。
 大人数人分はあろうかという大鴉が町の裏手にある山にいるなど、町民は想像すらしていないだろう。
 伝達用のディアボロを通して主の命を受けた黒鳥は、月を一瞥すると眼下に広がる街並み、その一点を見つめ飛び立った。


 校庭は薄らと月明りに照らされ、静まり返っている。
 転移装置で現場に跳んだ撃退士たちが目にしたのは、校庭に伏す巨大な兎と人影だった。
 視界を確保するため、暗視装置を持参した者たちは装置を起動させ、東條 雅也(jb9625)がフラッシュライトで少年を照らす。
 光の中に浮かび上がったその姿は少年だった。膝をつき、俯いた状態では表情は窺えないが、おおよそ不自然な点は見受けられない。服に血が染みているところを見るに、少年の目の前で死んでいる天魔にやられたともとれる。
「アレは…人間と天魔? いや、確か天魔の1体は人型だったハズだ。ケド…あの左腕の炭化は何だ…?」
 だが、ヤナギ・エリューナク(ja0006)が違和感に目を留める。
気になったのは少年の左腕。右腕は包帯が巻かれていて判らないが、むき出しの左腕は炭のように黒く染まっていた。
「見た所、怪我をして倒れてるだけにも見えるが、不用意に近づくのは危険、か」
 訝しんでいる友人にロベル・ラシュルー(ja4646)がそう返し、注意深く様子を窺う。
 彼らの言葉に、情報を反復した雅也が警戒を上げる。一対の剣をヒヒイロカネから取り出すと、告げた。
「君は誰だ? 何故今、ここにいる?」
 ――反応は無い。
 聞こえていないのか、それとも無視しているのか。判断に悩む雅也をしり目に、彼を被害者と考えた彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)がおもむろに近づこうとする。
「あァ、ちょっと待ちな」
 近づこうとした彩をヤナギが引き止めた。
「……何か?」
「あいつが被害者か天魔か、確かめるのにいい方法があるゼ」
 行動を制され、説明を求めるように顔を向けた彩にそう言い放つと、彼女に変わって一歩前に出た。
 不敵に笑って口を開く。
「おいお前、ここで暴れてた天魔を知らねェか?」
 声をかけると同時、ニンジャヒーローを発動する。
 その声に、あるいはアウルに。ピクリ、と反応し、ゆっくりと顔を上げる少年。
 露わになった虚ろな瞳、生気の抜けたような顔色。その濁った眼がヤナギを捉えた瞬間。
「………………ァ……」
 僅かばかり漏れた声は撃退士たちの耳に届く前に空気に溶ける。
 代わりに黒く炭化した皮膚が震え、金属のような光沢を帯びる。包帯が弾け飛び、鎧のように隆起すると同時、空虚だった瞳は血走り、爛々と狂気の光を灯した。

「やはり天魔でしたか」
「人型って、これですか」
 一目見た時から天魔と予想していた天宮 佳槻(jb1989)は少年の変化に動じず、彩は素早く眼鏡を外して意識を切り替える。
 各自が素早く自らの武器を具現化し戦闘態勢に入るのと、変化を終えたEFが動き出すのは同時だった。
 膝をついた姿勢から地を蹴り、猛然と突進した先にいたのはヤナギ。
 結論から言えば、彼のニンジャヒーローはEFを注目させるまでには至らなかった。しかし、ヤナギに釘付けにすることはできずとも、不快感を与えることはできていた。故にEFはヤナギを真っ先に狙ったのだ。
 が、距離が開いていたこともあり彼の懐に入るには数歩足りない。その距離を、手に纏わせた魔力を撃ち放つことで強引に埋める。即ち、魔力によるロケットパンチ。
「そんなんアリかよッ!」
 予想外の攻撃に反応が遅れたか、鳩尾に攻撃を受け、ヤナギが後ろに数歩たたらを踏む。その隙に距離を詰めて打ち込まれた第二撃は、突如として深まった闇に視界を奪われ空を切った。
 天海キッカ(jb5681)が発動したナイトアンセムがEFの周囲をより深い闇に落としたのだ。
 闇が晴れてなお頭に纏わりつく薄闇によって視界困難となったEFは、側面に回り込んだ雅也の動きを見逃した。
 曲線的な軌道で襲い掛かる斬撃は、しかし振り回す腕甲に傷をつけるに止まった。
 苦い顔をする雅也だが、EFは今の一撃で雅也の位置を把握したのか、逆の腕で殴りつけてくる。
 咄嗟に空いていた剣で受け流すも、少なくない衝撃にフラッシュライトを取り落としてしまった。そも、両手が塞がる双剣でライトを保持するには無理がある。ましてその状態で戦闘などできるはずもなかったのだ。
 雅也は舌打ちを一つすると、双剣を構え直す。
「明かりはわんに任せるさー」
 その後ろから、魔法書を片手で保持したキッカがペンライトでEFを照らしていた。範囲は狭いが、無いよりはずっとマシだ。
 キッカは、素早く次の術を紡ぎ始める。
 響く音色は和太鼓。軽快なそれが腹の底まで響く快音に変化した瞬間、キッカの周囲に獄炎が燃え猛った。夜闇を眩く照らした炎は一直線に飛ぶと、EFを内に飲み込み爆ぜる。
 次いで、鮮烈な炎色を覆い隠すように砂塵が舞い上がった。
 八卦石縛風。佳槻が紡いだ、石化の呪詛を内包した風が炎のアウルごとEFを包み込み、ともに弾ける。
 獄炎と呪風が爆ぜ、EFが姿を現した。
 鎧の端々が石化しているが、すぐに剥げ落ちるところをみるに佳槻が望んでいた効力は発揮していない。加え、爆発で吹き飛んだであろう鎧が徐々に元の形を取り戻している。
「どうも、回復が常に掛かっている様だね」
 観察に徹していたロベルが呟く。
 攻撃を受けてカウンターを放てる程に反射速度に優れ、いくらか飛び道具も持っている。更には再生能力。ロベルは一連の攻防で判明した能力から、一対一で力を発揮するディアボロだと結論付けた。
 そして回復する敵を叩く方法など相場が決まっている。つまり
「全員での猛攻が効果的かね」
 言って、自身も猛攻に参加すべく剣を構えた。

 未だ顔を覆う薄闇が健在であることを確認したヤナギは、すぐさま鎖鎌を腕の動きを奪うように巻き付ける。確かな重量があるそれを両腕で抱え上げると、頭から地面に叩きつけた。
 受け身を取れず頭から落ちたEFだが、しかし意識を失った様子は見られない。
 ヤナギはチッと舌打ちを零すが、EFの視界を覆う闇が薄れていることに気付き、距離を取る。
「認識障害が解けるぞ!」
 即座に皆に警告。それと同時に、EFの視界が開けた。

 EFはクリアになった視界で周囲を素早く確認すると、傍にいた人影に殴り掛かった。
 影は雅也。双剣を同時に扱い拳を完璧に受け流す。
 僅かに崩れた体勢をすぐさま持ち直し、追撃が来るか、と身構える雅也に対し、EFが取った行動は意外なもの。すぐ傍の雅也には目もくれず、駆け出したのだ。
 一瞬、逃亡に移るのかと危惧した撃退士たちだったが、その向かう先にはキッカ。
 彼女が放った先の一撃、そして視界を奪った一撃。それらはEFに浅からぬダメージを与えていた。それはEFに危機感を抱かせ、閉ざされた視界の中にあってなお眩い炎を繰ったキッカへの特攻に至ったのだ。
 特攻に反応できず、攻撃を受け吹き飛ぶキッカ。
 だが、その無謀な特攻は、僅かに撃退士たちへ傾いていた天秤を大きく傾かせることになる。


 キッカの負傷と同時、ロベルが動いた。
 固まった溶岩の如き大剣を振り被る。その隙間から漏れ出る赤光は、刀身と同じく黒い光に変わっていた。
 即座に彩も動く。
 手にした右文を虎を思わせる黄色の外骨格アームに変化させつつ、EFの背後から急襲する。
「痛いのを、どうぞ」
 ぽつりと呟き、その背に虎神に覆われた拳撃を打ち込んだ。同時、発生する超震動。
 背の装甲を通して肉体まで伝わった振動はEFの意識を揺らし、混濁させる。
 のみならず、硬質な装甲から聞こえる軋み。
 彩は確かな手応えを感じると一歩引く。
「やるねぇ。じゃあこいつも喰らっとけよ」
 次の瞬間、ロベルの大剣から解き放たれる光の砲。砲撃に譬えられる黒光の奔流は一切の迷いなく直進し、障害を薙ぎ払った。
 受け身も取れず転がる体、砕ける鎧。辛うじて起き上がるものの、離れず追い縋る雅也がその隙を逃さない。
「カウンターに注意しな」
 鋭く警告を飛ばすロベルに内心で頷き、両の剣を振り下ろす。狙うは鎧甲が砕け、生身を曝している生体部。鎧甲に比べると脆いそこを狙い違わず切り裂き、噴き出した返り血を浴びる。
 反撃に転じようとしたEFの腕に、白い光を纏う蛇が咬みついた。
 天界の気を纏う幻蛇が送り込むは身を蝕む猛毒。だがEFが咄嗟に腕を振り払ったことで毒の注入はならなかった。
 しかし、蛇を振り払うことで生じた隙は、速度に優れる彩に離脱の隙を与えるには十分すぎた。同時、キッカも殴られた場所を押さえ、ふらつきつつも魔書を構える。
「わんは負けん!この程度、痛くもないさー!」
 烈火の如き気合いと共に周囲を闇に包む。
 全ては仲間との連携による一斉攻撃のため。再び視界を奪えば今度こそ倒せると信じて。
 しかし
『――――――ッ!!』
 咆哮。視界を覆った闇を払い除ける。それでも、ただの一瞬だとしても無駄ではなく――
「ええ、十分です」
 ギシリ、と。EFの動きが止まった。
 背後には彩。虎神と化した右手で空を掴んでいる。まるで不可視の腕が伸び、EFを握り締めているかのように。
 しかし動きを止めてもEFの再生能力は十全に機能している。じわりじわりと確実に。出血が止まり、傷が塞がり、元の形を取り戻していく鎧甲。
 さらにEFは強引に、力尽くで体を捻り腕を引くと、彩に対して気弾を放つ。
 だが無理な姿勢での攻撃ゆえか狙いは逸れ、あらぬ方向へと飛んでいく。
「この機を逃さず一気に叩くとするかね」
 満足に動けない今こそ好機。
 雅也が剣を振り下ろし、ロベルの封砲が薙ぎ払う。
 ヤナギが迅雷の如き速度で駆け、鎖鎌で一撃を叩き込んだ。装甲に弾かれ、傷は浅い、が。
「残念、ハズレだゼ」
 動けぬEFの反撃を軽く避け、置き土産とばかりに鎖を首に掛ける。常ならば相当な技量を要しただろうが、動けぬ敵の首に鎖を掛けるのはそう難しくはなかった。そのまま後退し、鎖を弛ませぬように張って締め上げる。
 晒したうなじ目掛け、佳槻の蠱毒が食らいついた。幻の蛇は暴れるEFを意にも介さず、今度こそ突き立てた牙から毒を注ぎ込む。
 そして響く和太鼓の調べ。気炎とともに放たれた獄炎はEFを飲み込み炸裂する――!
 ――ガァッ、と苦痛の声を漏らしたEFは、しかし動けない。彩の束縛を振り解けない。
 だがついに限界が来る。念動波が維持限界を迎えて掻き消える。
 何の予兆もなく突如として自由になった身体に、力尽で払わんと力んでいたEFは面食らうも、首に食い込む鎖に意識を戻す。張った鎖の先にはヤナギ。EFがヤナギに狙いを定めるのは当然だった。
 そして当然、それはヤナギも十分に承知している。
 迷いのない踏み込み。腕に紫焔を纏わせて、鎖の長さ分の距離を詰める。
 肘を引き、鎖の端を持って飄々とした笑みを浮かべる男の顔面に――

 轟と突き放った腕は空を切り、体を横に逸らして躱したヤナギはアウルを込めた足で地を蹴ると、同様にアウルを込めた拳を撃ち放った。
 鋭く、力強く。雷の如き速度で放たれた正拳は鎧甲に覆われていない心臓部を打ち抜き、その活動を停止させた。


 戦士が地に伏したのと時を同じくして、黒鳥は風を切っていた翼を一度羽ばたかせると反転する。
 闇に輝く一対の紅眼が映したのは、人間たちに討ち取られた“荷物”の姿。
 運ぶ荷物がゴミに変わった以上、もうここにいる意味はないと、今まで住処にしていた山すら越え、主人が待つ巣へと帰還していった。


 倒れたEFは沈黙を守っていた。
 変化した装甲は戻らなかったが、苦悶の表情を浮かべ息絶えたその顔は……
「これ、普通のディアボロじゃありませんよね?」
 彩がそう思ってしまうほどに“ヒト”だった。
「あーあ……。厄介なことを」
 気付いてしまった雅也が空を仰ぐ。
「(一見普通の人間に見えるけど、もう人じゃないとはね)」
 斃したことに間違いはないと信じているが、それでも感情は素直に喜ぶことはできなかった。

 EFの骸を一瞥し、舌打ちを零すヤナギの肩を叩いたロベルが煙草の箱を揺らして笑む。
「一本、いくだろ?」
「…おう」
 ふぅ…、と。長い溜息を誤魔化すように煙を吐き出す。
「何にせよ、裏で糸引いてるヤツの気がしれねェ」
 煙草を咥え、視線を宙に。討伐は果たしたが、何とも言えぬ後味の悪さ。
 視線の先には何を見ているのか、ヤナギはしばらく無言で紫煙をくゆらせていた。
 そしてロベルも、そんな友人の横で黙って煙草を喫み続けた。

 一方で、佳槻の興味は別のところにあった。
 人型にしては知能も低く、人の中に紛れられるとも思えないお粗末な結果だと断じながら、EFが生まれた経緯には聊かの興味があった。
 悪魔が有無を言わさずディアボロ化したのならいつもの事だ。だが、もし本人が力を求めていたのなら。自ら望んだことだとしたら、今回のような事は別の形でまた起こり得る。いや、必ず起こると断言できる。
 人は誘惑に弱い。力の存在で簡単に堕とす事が出来るのだから。
 そこまで考え、
「(厄介な事象だよ、本当に)」
 天使の血が流れる青年は人の弱さに煩わしさ、嫌悪にも似た感情を抱いていた。

 ――後日。検死の結果が報告書に付け加えられた。
 ディアボロ化していた少年は地元の中学校に在学。当日も登校しており不審な点は見られなかった。長期に渡りディアボロと共存していたと思われるが、洗脳によるものかは不明。
 『右腕に埋め込まれていた種子に酷似したディアボロが大本であり、変異の原因と考えられる』

 それを目にした彩は表情は変えなかったが、ひとり拳を握り締めるのだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: Eternal Flame・ヤナギ・エリューナク(ja0006)
重体: −
面白かった!:2人

Eternal Flame・
ヤナギ・エリューナク(ja0006)

大学部7年2組 男 鬼道忍軍
撃退士・
彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)

大学部6年319組 女 鬼道忍軍
良識ある愛煙家・
ロベル・ラシュルー(ja4646)

大学部8年190組 男 ルインズブレイド
陰のレイゾンデイト・
天宮 佳槻(jb1989)

大学部1年1組 男 陰陽師
ゴーストハント・
天海キッカ(jb5681)

大学部4年239組 女 ナイトウォーカー
撃退士・
東條 雅也(jb9625)

大学部3年143組 男 ルインズブレイド