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マスター:離岸
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/04/10


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

● 安心してね夢オチだから
「悪いが、少し頼まれて貰えないか」

 偶然朝早く職員室に顔を出した教師の朝は、電話越しの朝比奈 悠(jz0255)の声から始まった。
 普段敬語で話す悠が素の口調で喋るのは、それだけ彼に余裕が無い証であることを、教師は良く知っている。
 まさか、一日で種子島の情勢が大きく変わってしまうような何かが起きてしまったのか。
 内心の緊張を押し込めて、極力軽い口調で教師は声を発する。

「珍しいね。朝比奈先生がそんな口調で喋るのも。何が、あったんだい?」

 一拍。

「――醤油を、持ってきてくれないか」

 数秒の、間。

「……何が、あったんだい?」

 重ねて、問う声。
 悠の頭は朝からわざわざ電話を使ってボケられない事も知っているつもりだった。

「――醤油を、持ってきてくれないか」
「聞き返したのは別に電話が遠かったとかそういう事じゃなくてね。何で醤油なの」
「プラモデルの塗装が出来ないだろう」
「あのね、常識を諭すような声でそんな事言われる身にもなって貰えないかな。醤油で何を塗るつもりなんだい。
 ――いや、良い。朝比奈先生、君は少し疲れているみたいだ。今日はお休み貰うと良いと思うよ」

 会話に意味が見出せず、強引に電話を切る。
 が、あの朝比奈悠がいきなりあんな事を言い出すのはやはり何かおかしい。
 一度、学生達に調査をしてもらった方が良いだろうか。

 教師は依頼書を作成するべくペンを手に取り。

「……」

 少し悩んだ末、一応醤油も持って行って貰うことにした。

●安心してね夢(ry

 八塚 楓(jz0229) は囁く。

「俺にはお前しか居ないんだ……」

 兄が人と手を組んでまで己を殺そうとしている。
 そのことは、少なからず楓に衝撃を与えていた。
 いつか兄とは決着を着けねばならぬ時が来る。それは悪魔の従者となった時から解っていたこと。
 けれど、自分が思っていた以上に自分の中で兄は兄だった。
 身内から向けられる刃は、見知らぬ者からの刃よりもずっと鋭く、冷たい。
 心を抉る裏切りという名の刺し傷。見えない痛みを与え続けるそれに、今はどうしても耐えられない。
 だから、縋るしかないのだ。それが逃避だと、分かっていても。

 ハッ●ーターンの粉に。

「………」

 リコ=ロゼは流れるような動作で迷うことなく回れ右した。
 楓の部屋から何か聞こえてくるから何事かと入ったは良いが、目に入ったのは中毒症状があると専らの噂である魔法の粉を一心不乱に舐めとる楓の姿である。
 本体には目もくれず袋に付着した粉だけを指でぺろぺろする様は正直、千年の恋だって冷めかねない。
 外に出て、何度か深呼吸。

「…きっと、ふー様は色々疲れてるんだよね、うん。
 …………うん」

 強引に自分を納得させ、僅かな違和感を覚える。
 辺りが静かすぎるのだ。

 今は冥魔が支配するこの地。何時もならば存在する、周囲を徘徊するディアボロの鳴き声や、息遣いなどが感じられない。

 ――何かが、起きている?

 もしかしたら魔法の粉を一心不乱に舐める楓に繋がる事なのかもしれない。
 調べてみる必要があるだろう。

●安心し(ry
「楓。決着をつけなければいけないようだね」

 八塚 檀(jz0228)は迷いを振り切るように、閉じていた目を見開き中空を見据える。
 そこに弟、八塚楓はいない。
 けれど、見えるような気がする。己との決着を求め、憎悪に魂を燃やし続ける弟の姿。

 弟の心に灯る、否定と敵意に染まった劫火。それが弟自身を飲み込んで、手を伸ばしても届かない場所へ彼を連れて行ってしまう。
 この地で楓と再会してから、そんな夢を見るようになった。
 迷ってはいられない。彼に手を指し伸ばせる機会もきっと、そう多くはない。

「直に準備も終わるよ、楓。もう少ししたら、兄弟喧嘩をしよう――ダンスで」

 八塚檀はバレエダンサーが着る純白の衣装を身に纏っていた。その衣装の股間から生えているのはあひるさんの首。ほら、コントで良く見るアレ。
 天界仕様なのか、あひるさんの首が檀の感情の高ぶりに合わせてぴこぴこ首を上下左右に揺らしている。

「ええわぁ檀……その表情、色んな心が綯い交ぜになったその憂いの表情ええわぁ……」

 ジャスミンドールは従者のそんな姿を見てハァハァしていた。天使の力で光を作り、彼をより輝かせようと躍起になっている。同時に檀が最高の角度で映るベストプレイスを求めるべく天使の身体能力をフルに活かし、檀周辺を反復横跳びする様な形で動き回っていた。

「……その。目線お願いしてもええ?」

 主の為なら幾らでも。呼びかけに応じて絶妙な角度で憂いの表情を主に向ける檀。
 カメラのフラッシュを思わせる光があちらこちらで光り、その中央でジャスミンドールがガッツポーズを取る。
 彼女の周辺に漂うジャスミンの香りが心なしドクダミみたいになった錯覚。

 残念なことにその場の異常さを正しく認識できる存在が居ない。
 ドクダミの香りを周囲に振りまきながら、二人の撮影会は続く。

●安(ry
 シマイ=マナフは何だかんだで忙しい立場であり、種子島を空ける事も多い。
 例えばその日はリコの主に会うべく島を離れていた。
 幾ら彼女の主が放任主義とは言え、リコの扱いについて話しておくべき事はいくつもある。

「……で、シマイよ。君何やってるの」

 リコの主である悪魔は、自室に通していたシマイが部屋の隅で体育座りしながらカップラーメンをすすっているのを見て、呆れた様な声を出した。

「いや、種子島で色々起きてるみたいでね……巻き込まれなかったのは有難いんだけれど何か楽しそうで…」
「行けば?」
「バカになるのはちょっと…」

 バカになるのは、という言葉に続きを促す目線。

「いや、天界側が特殊なサーバントを連れてきたみたいなんだよ。
 外見はその辺に咲いている様な花みたいでさ、撒き散らす花粉が厄介なんだよね。
 その花粉を吸いこむと、バカになっちゃうんだ。もう常識的な行動が一切とれなくなるの。
 過去にはそのサーバントを使って敵の組織行動を奪おうとしてたみたいだよ」
「……話だけ聞いていると気が抜けるが、それが事実なら厄介じゃないか? 天界が一気に島を制圧しかねない」
「その心配はないだろうね」
「何故?」
「過去の事例では、感染力が強すぎて用意した天界側も一緒にバカになってたらしいよ」

 ずぞぞー、というカップ麺をすする音だけが二人の居る空間を支配した。

「まあ、リコならもしかしたらって所だけれど、一人でどうにかできるとも思えないしね」
「リコが?」
「RPGってあるじゃない。あれさ、状態異常毒の敵に更に毒を与えようとしても――」
「分かった、もういい」

 つまり、リコがバカだから外部からバカにされても言動が変わらないという事だろう。

「理解が早くて良いね。
 幸い、件のサーバントは一日もすれば勝手に死んじゃうみたいなんだ。悪いけど今日は一日ここに滞在させてもらうよ」

 ずずー、と。ラーメンのスープをすする音。

「ねえ」

 ラーメンを食べ進める手を止めてこちらを見るシマイに、悪魔は疲れ切った目線を返す。

「これ、新商品なんだけれど何かしょっぱいよね」

 やっぱり蚊帳の外が寂しいのか、シマイが半泣きしているように見えた。
 塩分過多で死ねばいいのに、と悪魔は思った。


リプレイ本文

●どうしようバカしかいねえ
「ところでリコちゃんって可愛いよねぇ。そのお洋服どこで買ったの?」
「汝も可愛いよサガノサーン☆」
「マイケルちゃんったら嬉しいこと言ってくれるな〜」

 ヴァニタス・リコは頭を抱えていた。
 何かおかしいという状況は聞いているだろうに、平然と雑談に興じる白桃 佐賀野(jb6761)とマイケル=アンジェルズ(jb2200)の声には緊張感が微塵も感じられない。

「…ソースは何故求められなかったのでしょう」
「分かる。醤油なんてナンセンス。やっぱりソースだろソース」

 コンビニの自動ドアが開き、中から樒 和紗(jb6970)とケイ・フレイザー(jb6707)が各々ビニール袋をぶら下げながら出てきた。袋の中には多量のソースが収められている。
 和沙は他所様のお家にスキルで侵入するつもりだったようだが、「ツボを調べてもソースは一つしか入っていないが店で買えばまとめ買いが出来る」だの、「他所様の家の冷蔵庫を開けたらまずマヨネーズを吸わないといけない」だのよく分からない声が周囲から飛んだ結果コンビニで済ませることを容認したようだった。

「おかえりー! 首尾はどうだった?」

こりゃもう撮るしかないと到着直後からカメラを回しているニナ・エシュハラ(jb7569)の問いに、ケイが満足げに頷く。

「上々だな。店員が「ここでそうびしていきますか?」って言ってきたからとりあえず服の内ポケットに仕込んでみたんだ」
「素晴らしいです、フレイザー。これでナイフで刺されても安心です」

 自前の移動力が1上昇するコートをめくり、内ポケットに収まっているミニサイズのソースを見せる様子に和沙も頼もしい存在を見る目線を向ける。

「はいはい、ほら、さっさと醤油届けに行くよ!」

 景気良くハリセンでボケ共の頭を叩きながら白銀 抗(jb8385)が話を元に戻そうと軌道修正に躍起になっている。
 その姿を見て再度リコの目に涙が浮かぶ。
 全員ボケっぱなしじゃないだろうかと不安になった矢先にツッコミの登場である。一人でツッコミ続けることを覚悟していたリコに取ってこれ以上心強い味方がいるだろうか。

「そうデスネー、そろそろ侍のソウルフード☆ソイ・ソースをお届けに惨状仕るのデース☆」
「さーぁ、このソイソースを届けに出発だー!」

 マイケルとニナの声に、おー、とボケ担当五人が意気揚々と気合を入れ、ツッコミ担当二人が深い深い深い溜息をついた。

●どうしよう中毒者だ
 歩き始めて一分もしない内に道路の真ん中でビクンビクンのたうち回ってる人影を見つけ、一同は思わず足を止めていた。
 うつ伏せで大地に横たわっているのは八塚楓(jz0229)その人。
 その右手には付着していた粉を完全に舐め取りすっかり綺麗になってしまったお煎餅が入った個包装。煎餅本体を食べない辺りが徹底している。

「ああ……この地面に散らばる砂が全てお前だったら……」

 ビクンビクン小刻みに身体を痙攣させながら虚ろな目で砂をつかんでは地面に落とすを繰り返しているその様はヴァニタスという存在であることを差っ引いてもアブないヒトにしか見えない。

「あの目がイッちゃってる人って確か楓ちゃん?」
「……そうじゃなかったらどれだけよかったかなーって」
「粉に中毒なんてイケナイ娘なのデース。日本人形のような黒髪美少女が勿体ないのデース☆」

 外人さんのマイケルから見ればアジア系人種の顔の区別が難しい。
 最初から名前で楓を女性だと判じていたことが勘違いにさらに拍車をかけているようだった。

「面白いから撮ってようかこれ」

 既にカメラを回しているニナの隣で抗も一緒にカメラを回し、痙攣している瞬間をズームでばっちり撮影する。
 ニナは小腹が空いたのか先程コンビニで一緒に買ってきてもらったお煎餅を取り出し、封を切る。
 瞬間、わずかに広がった匂いに楓が全力で反応した。
 偶然なのか故意なのか、ニナが持っている米菓は楓が中毒を起こす粉がたっぷり付着したお煎餅。しかもそう、コンビニ限定パウダー250%の代物である。

「そいつを……! こっちへ寄越せ!」
「くっ…! このお煎餅は渡さない!!」
「煎餅とかどうでも良い。袋に付いてる粉を寄越せ……!」
「ああうんけーきの生クリームってけーき本体よりまず包みについてる部分に食指動くよね」

 一瞬ニナと楓の間に真剣な空気が流れかけたが、謎の親近感を覚えるニナに瞬く間にシリアスが投げ捨てられていく。
 そうこうしている間に隣に立っていた抗が魔法の粉が250%増量中の袋を風に流す。
 電光石火を思わせる速度で楓が奔る。腐ってもヴァニタス、その身体能力は普通の撃退士の何倍ものスペックを誇る。
 風に舞う袋を粉を零さぬよう配慮しながら受け止めることなど造作もない──!

「……まあそれ、中身粉からしだけれどね」
「○×△□──ッッ!!」

 袋ごと口の中に粉を突っ込んだ楓が言葉にならない悲鳴上げ地面に倒れこむ。それを見て僕知らねえって顔で舌を出す抗。お前ツッコミじゃなかったのか。
 カラシに悶え苦しむ姿が哀れに見えたか、ケイと和沙は頷き合うとポケットからおたまを取り出す。
 そしてソースをおたまに取って、慈愛の笑みと共に楓に差し出した。

「喉が渇いたでしょう?」
「モルトビネガーもあれば完璧だがとりあえずこれだけあれば事足りる」

 口の中を流せればなんでも良い、と差し出されたソースを一期に飲み干す楓。
 で、当然のようにカラシが充満している口の中にソースなんて含んだものだから追撃ダメージ。タンスの角に小指を思いっきりぶつけた時のように最早身動きすら出来ない。
その反応を拒否と取ったか、和沙はおもむろに推定Dはあろう乳間に手を突っ込み、そこから醤油のボトルを取り出し楓の頬を殴打する。

「ひぎぃ!!」

 ちゃきちー。絶妙のタイミングで1カメのニナが殴られた楓を撮影する。
 ちゃきちー。絶妙のタイミングで2カメの抗が殴られた楓を撮影する。

「ちょっと待ってお姉さん今何処から何出したの!?」

 確かに立派なDだが醤油を隠すには無理がある。リコが思わず和沙に驚愕の目線を向けるが、当の本人は何食わぬ顔でまた殴った醤油を乳間に突っ込んで収納する。
 ほら、ヒヒイロカネヒヒイロカネ。

「やっぱりビネガーもないとだめか…生憎そっちは今手持ちがなあ」

 ケイはケイでビネガーも無ければ彼は満足しないかと頭を掻きつつ悔しそうに唸る。
 食材に芯まで火を通した後は各々好き勝手に味付けすれば? という某世界一料理が不味い国ライクな思考になってしまっているケイは自身が何言ってるかよく分かってない。

 阿鼻叫喚の様子を眺めつつ魔法の粉たっぷりのお煎餅を食べていた佐賀野。親指についた粉をぺろりと一舐めしてから楓の前にしゃがみ込む。

「指についちゃったの楓ちゃん舐める…?」

 差し出された人差し指。そこについているのは間違いない、楓が求め続けていたあの存在だ。
 だが、他人の指を舐めるだなんて。そんな屈辱的かつ背徳的な行為、赦される筈は無いと楓の理性は囁く。
 けれど、佐賀野の笑みはそんな理性の声すら融かしてしまうほど優しく、そして何処までも甘美で抗いがたく。
 知らず、身体が前に出る。半開きになった口が佐賀野の指を咥えようとした瞬間──
 楓の身体が、宙を舞っていた。

●どうしよう変態だ
 その瞬間、タクシーが突如猛スピードで現れ楓を撥ねていた。

「ゆゆゆ許さないよ楓! お兄ちゃんに黙って他所様の○○○○をしゃぶろうとするなんて!!」
「意味もなく伏せ字にするの止めない?」

 人差し指です。念のため。
 抗のジト目も何のその。飛び降りるような勢いで車内から現れたのはバレエスーツwithあひるさんの八塚 檀(jz0228)その人だ。
 檀の感情の昂ぶりに合わせてあひるさんが首をプロペラの如く回転させ、何の前フリも無く空を飛び始めた。

 その後ろでジャスミンドールが運転するタクシーが前進とバックを繰り返し受身も取れず地面に叩きつけられた楓を入念に轢いている。

「プリマドンナ登場なのデース☆」

 マイケルがおもむろにズボンの中に右手を突っ込みゴソゴソと股間の辺りをまさぐり、中から純白のタイツスーツを引っ張り出す。

「だからなんで明らかに収まらないサイズの物体を明らかに物を入れる場所じゃない所から出すんだよぉ!!」

 顔を真っ赤にしながらリコが悲鳴を上げるように叫ぶ。
 ほら、ヒヒイロカネヒヒイロカネ。

「ここは美しすぎる拙者が王子役でダンシン☆するしかないのデース☆」

 0.1秒早着替え。気づけばマイケルの衣装は全身白タイツに股間からつるさんの頭という出で立ちに変わっていた。
 全身に黄金の星を纏わせながら小天使の翼で空を舞い、檀の周囲に星を降らせていく。

 そんな神秘的……な。うん神秘的な光景を佐賀野とニナはしばし見上げていたが、佐賀野がおもむろにジャンプしてプロペラ代わりのあひるさんをむんずと掴んだ。

「俺もあひるちゃん着たいなぁ。ちょっと壇ちゃん貸してくれない?」

 突如プロペラが停止したため為す術もなく車田落ちで落下する檀。
 その股間から生えているあひるさんを佐賀野はグイグイと引っ張り奪おうとするが、中々取れない。

「ニナちゃん、ちょっと手伝ってくれない〜?」
「おっけい! アヒルの頭叩くよ!」

 佐賀野の声によしきた任せろと腕まくりしながらニナが応じ、サンドバックを無心で叩くボクサーの如くあひるさんを殴打する。
 佐賀野を除く場の男性陣が心なし内股になった気配。

「らめぇえええ!? 僕のあひるさんをそんな卑猥な感じで前後左右縦横無尽に叩いたり引っ張ったりしちゃらめぇええええ!!!」

 檀が切迫した声で悲鳴を上げるが二人は聞いちゃいない。

「も、もっとこう右手でマイサンを包み込む時のような母性あふれる手つきで! 優しく! やらs」

 ぶちっ。
 実は余裕あるんじゃないかと疑わしくなる懇願の最中、ついにあひるさんが根元からちぎれる。
 あひるさんが血走った目を見開き、檀は目からハイライトを失いながらも何か恍惚の表情で浮かべて動かなくなる。

 ちゃきちー。絶妙のタイミングで1カメのニナが目からハイライト失った檀を撮影する。
 ちゃきちー。絶妙のタイミングで2カメの佐賀野が目からハイライト失った檀を撮影する。
 ちゃきちー。楓を轢くのに飽きたのか絶妙のタイミングで3カメのジャスミンドールが目からハイライト失った檀を撮影する。ついでにドクダミ臭プンプンさせながら溢れる鼻血を拭おうともせずハァハァ言ってる。
 新しい世界を拓いちゃったかもしれない。

 ジャスミンドールが轢くのを止めたのでようやっと復帰できた楓はと言えば、和紗と共に踊っていた。

「パートナーチェンジ? そんなものはありません、エンドレスで楓と俺が踊ります」
「ハイ」

 先ほど和紗にぶたれたのがよっぽど怖かったのか、逆らう素振りすら見せない。
 その一方でリコは何故か抗と一緒に踊っていた。
 馬鹿には馬鹿を、ということだろうか。一度に色々な事が起こりすぎてツッコミ二人は相当に疲弊しているようである。
 二人して目線がどこか遠くの方にあるのだが、誰もんなこたぁ気にしない。

「──もう、どうにもおさまらないからソースかけて食えるものにしよう!」

 奇跡的に頭の回路が何とか収集をつけようと働いたらしい。ケイのそんな声と共に、彼がまき散らしたソースが周囲に降り注ぎその場にいる一同を真っ黒に染めていく。
 ソース党の和紗及び彼女に調教されてる楓は平然と踊り続けているのだが、それ以外の面々としてはたまったものではない。
 元々阿鼻叫喚だった場が更に混沌模様を増していく最中、トドメとなった張本人はソースも浴びずにニッと笑みを浮かべた。

「これで全員美味しくなって一件落着ってことで!」

 文字通り、美味しい所を持っていった。

●どうしよう色々
 続きはベッドの上やでうふふふふとジャスミンドールは未だ目にハイライトが戻らない檀を肩に担いでえっちらおっちら根城へ戻っていく。
 和紗とケイによる調教もとい必死の説得により魔法の粉からソースへ改宗した楓もコンビニでソースを購入し、満足げに帰って行った。
 そんな楓を見てリコはまあいいかと妥協し、彼を追いかけていく。

「後は悠ちゃんに醤油届けて終わりかー」
「多分これ、もう朝比奈君も馬鹿になっちゃってるよね」

 一日よく遊んだなーって表情で笑うニナの声に応じるように、ハリセンを叩きながら抗がため息一つ。
 全身ソースまみれ自分も十分バカっぽいが口に出すと認めてしまったようで嫌なので心の奥底へ留めておく。

「悠ちゃ〜ん! お醤油持ってきたよ〜」
「ああ、待っていた…!」

 待っていただけなのに何故か口元から血とか滲ませながら、朝比奈 悠(jz0255) が一同を出迎える。
 佐賀野が醤油のボトルを悠へ向けて放り、絶妙のタイミングでそれをキャッチすると流れるような手つきで封を切る。

「ティーチャーの! チョットイイトコみてみたいー☆」

 何を勘違いしたのかマイケルがコールする。

「「「「それ一気! 一気!! 一気!!!」」」」

 手拍子と共に巻き起こる一気飲みコール。
 悠は当然のように腰に手を当て、何の躊躇いもなく醤油の一気飲み。
 追いかけるように和紗も乳間から醤油を取り出し水筒から水を飲むようなノリで一口。

「うっ……! これは毒…!?」
「朝比奈君ー!!?」

 膝を付き苦悶の表情を浮かべる和紗。そして顔を真っ青にしてぶっ倒れる悠。
 毒に耐性を持つ撃退士だろうと醤油の一気は辛いに決まっている。

「…この中に殺人犯がいます。殺人犯と同じところにいられるか! 俺は部屋へ戻らせてもらう!」

 よっこらせと普段悠が作業を行っている机の上で体育座りする和紗。

「俺にはソースしか無いんだ…」

 呟く眼下、口から泡吹いてる悠と大慌ての抗。
 悠が本来塗ろうとしていたプラモデルに佐賀野が醤油だのジャムだの魔法の粉だの何でも塗ったくり、「塗りムラ出ちゃうよねー」と真顔でニナが呟く。

「ならばこれをデコレートするのデース☆」

 マイケルがプラモデルを佐賀野がちぎった檀のあひるさんで隠す。
 塗りムラたっぷりのプラモデルがあひるさんに劇的ビフォワーアフター。

 醤油に始まった種子島の大ピンチは、あひるさんにて終わったのだった。

●で、
 布団の中でケイは飛び起きる。
 時刻は深夜過ぎ。何だか強烈な夢を見ていた記憶がある。

 夢の中身はよく思い出せないが、思い出したらそのまま首吊ってしまいそうな気がしたので思い出す行為は放棄する。
 ただ、一つだけはっきりと覚えていることがある。

「何故料理を冒涜するような真似をしたんだオレ…よりにもよってあの国の理論とかないわー」

 掛け布団を頭から被って、自己嫌悪のため息一つ。
 まだまだ夜明けまで時間はある。さっさと眠って忘れてしまおう。

(了)


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

アメリカン☆ドリーム・
マイケル=アンジェルズ(jb2200)

大学部2年257組 男 ディバインナイト
久遠の風を指し示す者・
ケイ・フレイザー(jb6707)

大学部3年202組 男 アカシックレコーダー:タイプB
看板娘(男)・
白桃 佐賀野(jb6761)

大学部3年123組 男 阿修羅
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
遥かな高みを目指す者・
ニナ・エシュハラ(jb7569)

大学部1年59組 女 アカシックレコーダー:タイプA
澪に映す憧憬の夜明け・
白銀 抗(jb8385)

卒業 男 ルインズブレイド