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マスター:離岸
シナリオ形態:イベント
難易度:難しい
形態:
参加人数:25人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2016/08/02


みんなの思い出



オープニング


『ケッツァーの本拠と目される空挺・エンハンブレを自分で調べたい』
 レミエル・N・ヴァイサリス(jz0006)の願いが叶う日が来た。集まった生徒たちを前に、彼は整った顔を引き締める。
 つくば市街の上空に浮かぶ巨大な船。そこがケッツァーを名乗る悪魔たちの本拠であるらしいということの他、実態は杳として知れぬ。

 作戦はなるべく隠密に進めたいが、仮にも敵の本拠地。穏便に済むとは思えない。
「今回の目的は二つだ。一つはつくば上空に浮く空挺の内部を探ること。もう一つは」
 青い瞳に厳しい光を浮かべたまま、レミエルは生徒たちを見回す。
「全員が無事で学園へ帰還することだ。以上、頼んだぞ」

 やや素っ気なく言って彼は、離れた空に浮かぶ遠い敵影を睨んだ。
 今、彼の手にはあの場所へ到達するための『鍵』がある。六分儀に似たこれが、胸に描いた遠い願いに近付けてくれると信じて……彼は生徒たちと共に戦地に足を踏み入れた。


 時間はほんの少し遡り、久遠ヶ原学園の一室。
 レミエルと共に教卓に登る朝比奈 悠(jz0255)は集まった生徒たちを前に、小さく咳ばらいを一つ。

「集まってもらって感謝する。すでに聞いている者もいると思うが、今回の目的は筑波上空に浮遊している船――エンハンブレへの潜入調査だ」

 一般的に、ディメンションサークルによる転送時の誤差は目標とする地点から5〜10kmと言われている。
 故に上空300m程の高さにある船にピンポイントで乗り付けられる可能性は、非常に低いと見られていた。
 だが、先日とある冥魔から得られた六分儀のような道具が、ケッツァーのメンバーがエンハンブレへ戻るための鍵だということが分かると状況は一変した。
 レミエルの解析によってかなり精確な座標が割り出せるようになり、サークルによる転移でエンハンブレへ向かえることが可能となったのだ。

 簡単な経緯を口頭で述べた後、悠は黒板に作戦の概要を書き連ねていく。

「まず、転送先はエンハンブレの甲板部分と思われる。そこから先は相手の出方や戦力に寄る所が大きい。
 出た所の勝負になるのは否定できないが、大まかに三つの役割を頼みたい」

 言って、書き終えた黒板をこつんと一つ小突いた。

「一つ目はレミエルと共にエンハンブレの調査を行う。恐らく動力部などかなり奥まった所へ向かう事が予測される。
 二つ目は、転移先の甲板で暴れ回ることだ。要するに陽動だな。当然、転移すればすぐに相手方に侵入がばれるだろう。そのために甲板で暴れ回って可能な限り迎撃用のディアボロを集める。
 そしてもう一つ。こちらも陽動になるが、船内に侵入しての陽動だな。甲板での陽動が迎撃のディアボロの数を集めることにあれば、こちらの陽動は船内にいる敵の目をひきつけ、レミエルたち調査部隊を目立たなくすることにある。
 勿論、陽動の中で気付くこともあるだろう。何かあれば些細なことでも報告して欲しい」

 そこまで言い終えて、悠は生徒たちを見渡した。

「分かっていることだろうが、相当に危険な作戦だ。だが、ここで成果を上げられれば、関東の状況にも変化が出てくるだろう。
 そのために、力を貸してほしい……以上だ」


 エンハンブレの船首近く。アルファール・ジルガイア(jz0383)はこの場がお気に入りであった。何せ船首だ。一生を捧げると誓ったベリアルも船主だ。つまり近くにいるような気がするのだ。
 だが、お気に入りの場で風を受けていながら、この日は少し憂鬱な表情である。
 何故か。先程からずっと甲板から響いてくる調子っぱずれの歌声にいい加減うんざりしているからだ。

「ブラシをかけるー、ブラシでみがくー、ブラシをかけるー、ブラシでみがくー」

 髪をなびかせ後ろを振り向く。視線の先には歌声の主ことロウワン(jz0385)がデッキブラシで甲板を掃除している姿。

「きゅーけー……嘘ッ! かけるッ! 磨くッ! かけるッ! 磨くッ! かけるッ! 磨くッ!!」
「ロウワン君いい加減うるさいよー…ていうか何で掃除なんてしてるの?」
「お頭から課された修行なんすよ。船の壁という壁、床という床を徹底的に磨き上げれば俺めっちゃパワーアップするって!」

 それ絶対からかいついでの雑用だよね。

 ベリアルの言葉は絶対であるアルファールですらそう思う。
 が、そう信じ切っているロウワン相手にそれを否定し訂正できるとも思えなかった。
 この少年風貌も大概思い込みが激しい。

「ま、いいじゃないっすか。今日みんな出払ってて静かなんすから」
「……あれ、皆いないの?」
「兄さーん、他の人が居るか居ないかくらい把握しといた方が良いっすよ。
 えっとっすね、ジュエルっちは療養でその手の術に長けてる悪魔の所行ってて、リローンは四国? ってとこに行って、カーラの兄さんはそのリロリロ追っかけて行っちゃってるっすね。
 やー、ロロロロイ兄妹はともかく、ジュエルん心配っすよねー」
「君のコロコロ変わるあだ名はともかく、皆いないんだ。ジュルヌは大宮から動かないしね」
「あ、そうなんすか。そうすると、後いるのは葉守の兄さんとお頭くらいっすかね」
「葉守?」
「あー、ヴァニタスの人っす。グムルの兄さんの」

 なんで、後で居残り組だけで飯食わねえっすか?
 ロウワンがそう提案しようとした矢先の事だった。

 突如甲板の中央に魔力が集っていき、空間にぽっかりと穴が開いた。
 そして、そこから幾人もの人影が飛び込んで来るではないか。
 彼らが纏う制服に、アルファールも、ロウワンにも、見覚えがあった。

「へえ、撃退士」
「敵襲っすよ!!」

 ロウワンの鋭い声と共に、透過能力で何体ものディアボロが甲板の床から現れていく。
 が、撃退士の一部はそれを無視して甲板から船内へと入っていった。
 まさかの状況にロウワンは舌打ち一つ、床を蹴ると船内へと走りだす。

「アルの兄さん! 俺は中を! 甲板は頼んだっす!」
「任せて。そっちこそ大丈夫?」
「大丈夫っすよ! お頭の修行の成果、見せてやるっす!」
「大丈夫なんだよね……?」

 とはいえあれだけノリにノっていれば調子もいいだろう。
 案外動きは普段より鋭いかもしれない。

「さて……」

 船首から撃退士を見渡し、アルファールの右手に雷が宿る。

「ベリアル様の寝室たるこの船に土足で踏み込むとは良い度胸だね。大人しく帰れるとは思わない事だ」


「……へえ?」

 鏡越しの友人と共にロウワンが変な歌を歌いつつ甲板を掃除しているのを偵察用のディアボロ越しに笑って見ていたベリアルだったが、撃退士の侵入に表情を緊と張り詰めた。

『ほぅ、撃退士か。まさか嫁殿の家にまで上がり込んで来るとは』
「全くだね。アイツらが揃いも揃って興味を示すだけの事はある。メフィ、悪いんだけどちょっと切るよ」
『出るのかえ?』
「や。一先ずは部下に任せるよ。あたしはほら、戦い始めると周り見えなくなるっていうか……ヘタすると逆に船壊しかねないっていうか……」
『ああ、嫁殿そういう所あるからのう』
「まあ向こうがここを沈めに来てるってなら話は別だけれどもね。その兆候が見えればすぐにでも出るさ。じゃ、また」

 鏡の中が揺らぎ、奥に居た人物が見えなくなる。
 それを確認するとベリアルは椅子から立ち上がり、大きく一つ伸びをした。

「何にせよ、一度くらいは挨拶に出た方が良いんだろうねぇ。
 荒っぽいゲストとは言え、お客様に主人が出迎えないのは失礼だろうし、さ」


リプレイ本文


 いくつもの足音がエンハンブレの階段を慌ただしく降りていく音が響く。
 背後からはそれを追うように荒々しい足音一つ。甲板から船内に入る際に後ろから聞いた声から判断するにロウワン(jz0385)が追いかけて来ているのだろう。
 特段足の速さで負けるつもりはないが、レミエル・N・ヴァイサリス(jz0006)をはじめとする調査班に注意が向かぬよう、そろそろ陽動組も動かねばならない。

 そう思っている内に、妙な扉を見つける。
 作り自体は普通の扉のように見えるが、扉の奥から何か特殊な魔力が存在することを、アウルという力を操る一同は揃って感じるのだ。
 ここがもしかしたら調べるべき動力源か。一瞬そう思うが、レミエルは首を横に振る。今回のような敵襲だって過去になかった訳ではあるまい。こんな浅い層に動力源のある部屋があるとは思えなかった。
 ならば、とその部屋の調査を陽動班の一部が受け持つことをその場で素早く決定。何名かが扉の向こうに飛び込み、残りがまた階段を下る。
 そのまま階段を下りきると、左右に道が開ける。そして真正面には更に船の奥へと進んでいくのであろう階段。
 動力はおそらくもっと先にあるだろう、というレミエルの判断で、残った陽動組が左右に分かれることに決まる。
 頼んだ、と声を残してレミエルたちが船の奥へと消えていくと、派手に音を立てながら残ったメンバーが左右に散開。

 直後更に慌ただしいロウワンの足音が響き、蒼穹の船での長い長い戦いの始まりを告げようとしていた。


 アルファール・ジルガイア(jz0383)が右手に集めた雷を放った瞬間、甲板上に残って迎撃態勢を見せた全ての撃退士が一斉に散開した。
 刹那、撃退士が一瞬前までいた地点に幾筋もの雷が落ち、甲板の床を黒く焦がす。
 流石に何度か手の内を見せただけあるか、とアルファールは内心で小さく呟いて。

「へえ、良い反応するね。おかげで船が汚れてしまったけれど…まあロウワン君がまた掃除してくれるよね」
「手厚いもてなしだねぇ」

 アルファールの電撃を皮切りに周囲に居た数多のディアボロたちが一斉に動き出したことを認めて、佐藤 としお(ja2489)は小さく肩をすくめた。
 周辺を見渡す。鎧を着こんだディアボロとハンマーを担ぐディアボロ。数はざっと数えて20以上はいる。
 アルファールの雷撃は広範囲を一度に攻撃する危険極まりないシロモノだ。当然闇雲に固まっていればいい的になってしまうだろうし、さりとて散開しすぎれば今度はディアボロたちに囲まれて袋叩きにあってしまうだろう。

「あのばかちんにお礼参りと行きたい所だけれど、今回は勘弁してやらあ」

 ウォーウォーと妙な音を響かせながらその身体を凶悪な兵器へと変形させていきながら、ラファル A ユーティライネン(jb4620)はアルファールを睨みながら喉の奥で小さく唸る。
 以前奴の雷撃で丸焦げにされてしまった痛みは忘れない。あの涼しいツラに一撃叩き込んで意趣返しと行きたい所であるが、今回の自分の役割はあくまでディアボロの数を減らすことにあるとラファルは考えている。
 大まかにアルファールを相手どる者とディアボロを相手どる者とでこの場の役割は分かれている。ならばと悪魔用の機械兵装、その肩口から筒を三つ束ねたような装置をポップアップ。ディアボロの視界を奪いアルファールとの戦線を分離すべく、広範囲に煙幕を散布する。

 だが、その時鎧を着こんだディアボロが動いた。鎧の腹部に存在する大きな口が突如がばりと開いたかと思えば、ラファルの放つ煙幕を呑み込んでいくではないか。

「……おいおい、随分と健啖じゃねーの。腹壊すぜ」
「広範囲の攻撃を一手に引き込む、か」

 マキナ・ベルヴェルク(ja0067)と共に迫るディアボロへの対処を始めていたアスハ・A・R(ja8432)がラファルの煙幕を吸い込む黒い鎧を横目で見遣り、小さく呟いた。

「試してみますか、アスハ」
「……ああ。試行は早いうちが良いだろう、な」

 短いやりとりだけを残し、マキナがアスハを置いてやや前進。
 当然出る杭は叩いてしまえとばかりにアーマーもハンマーもマキナへと殺到する。
 横薙ぎに振り抜かれたハンマーの一撃を黒焔を纏う右腕で防御し、その衝撃にマキナの軽い体躯が吹き飛ばされるのと、マキナへと意識の向いた数体のディアボロの頭上へアスハが無数の蒼い槍を降らせるのはほぼ同時。
 不意を突いた挙動、ではある。しかし槍の雨がディアボロたちをまとめて貫くよりも早く再びアーマーが大口を開け、何本あるかも分からない槍を吸い込むようにして平らげてしまった。
 だが、槍を吸い込んだアーマーはガクガクと身体を震わせ、突如風船が破裂した時のような音を立てて霧のように消えてしまう。

「……成程、な。こちらの範囲攻撃を吸い込むことは出来るが、それをすれば普段以上の傷を負う、と」
「暴食は身を滅ぼす……と言った所でしょうかね」

 黒焔を振るってハンマー持ちを牽制しつつマキナが返した言葉に、違いない、とアスハは肩をすくめた。どこの世の中も過ぎたるは及ばざるが如しの概念は共通のようだ。
 加えて言えば、アーマーもハンマーも、そこまで強いディアボロではない。マキナが受けた傷もさほどの物ではなく、防護能力も範囲を受け持つことへのデメリットがあったとはいえ、アスハの攻撃一つで撃破出来たことを考えればそこまで骨の折れる物ではないだろう。

 むしろ問題はその数だ。
 ちらとアルファールの方へと視線を向けると、 翼で飛行しアルファールの背面を取ろうと動く龍崎海(ja0565)と御剣 正宗(jc1380)を追い払おうと鞭を振るう姿が見える。
 今の所アルファールへとたどり着けているのは、その二人だけだ。他にもアルファール対応の者はいるが、群がるディアボロの数に押されて中々アルファールへと向かえていない。
 今の所海や正宗を狙うことに意識が向いており雷撃が飛んで来ることはないが、それも何時まで持つ話かは分からない。

 数を頼りに攻めてくるならば当然範囲攻撃で一気に数を減らしてしまうのがセオリーであるが、敵の能力の前にはそう上手くはいかない。
 あるいは咲村 氷雅(jb0731)が狙っているように、範囲攻撃を吸い込むアーマーを範囲から除き、ハンマーのみを対象にすれば話は違ってくるのだろうが、混戦状況ともなればそれが素直に行えるタイミングも多くは無い。
 そしてその結果、群がるディアボロに邪魔される形で本来やりたいことをきちんと行えないものが出てきてしまう。アルファールとディアボロ、担当を明確に区切るのは必要な考え方だが、相手がその線引きに従ってくれるとは限らない。
 あるいはディアボロの注目を惹きつけるような手立てがあればアルファールへ向かう者も余裕があったかもしれないが、戦闘が始まってしまっているこの状況下ですぐさま最善手を用意することなど出来はしない。

 そうしているうちに、甲板のディアボロの数が増えていく。その登場方法は大まかに二つ――いや、三つ。
 一つは透過能力で床から幽霊にように現れるもの、もう一つは空間転移か何かで突如現れるもの。後者はディアボロにそんな能力があるとも思えず、船内に何かしらの仕掛けがあるのだと考えられる。
 そしてもう一つは先程レミエルたちが降りて行った階段を素直に上ってくるものだ。こちらはごく少数ということもあり、階段付近を確保したラファルと氷雅、そしてザジテン・カロナール(jc0759)が対処している。

 調査班の方で透過が不要と判断されるまでは阻霊符を使わない。それが大まかな方針ではある。だが、この状況下で更に敵の数が増えて陽動班が倒されるようなことがあれば本末転倒だ。
 迷わず阻霊符の使用を決断したアスハであるが、最後にもう一度だけ光信機を持つザジテンへ視線をやった。
 ヒリュウによる視界共有によって階段からの敵と甲板からの敵に挟撃されぬよう立ち回りつつザジテンがヘッドホン越しに通信を取り続け――、直後、顔を輝かせた。

「阻霊符、使って大丈夫ですよ! 向こうも透過できない所が多いって!」

 ならばもう遠慮する理由は無い。符にアウルを込め、周辺一帯に透過のできない空間を作り出す。
 腰の辺りまで出かけていたディアボロの一体がスポンと弾かれる様に甲板に飛び上がったきり、透過で現れるディアボロは無くなった。
 とは言え、別の手立てで甲板に現れる者もいるのでまだ数が増えていく状況に変わりはない。一つ手立てが潰せたこと上々だと前向きに考える。

 ――随分とハードな時間になりそうだ。
 その場の誰もが、そんなことを思う。


 視点を妙な扉の中へ入っていった者たちへと向ける。
 部屋の中には航海に必要そうな器具がいくつも収められていた。中世用いられていた羅針盤のような道具、見たことも無い形の大陸が描かれた地図、見覚えのない文字で描かれる海図。中にはこの地球の世界地図も張り出されている。
 更に、入ってきた扉の対角線上にもう一つ扉がある。この先にも何かしらの部屋が続いているのだろう。
 唯一普通の部屋と異なる点と言えば、それらが全て鏡に映されたように反転している所だろうか。

「まるで鏡の中のような部屋ですね」

 雫(ja1894)の言葉に、ヤナギ・エリューナク(ja0006)も持っている手鏡で部屋の中の日本地図を映してみる。反転したものを反転すれば元の文字になる様に、手鏡の中の文字は見覚えのあるものであった。
 なぜこんな意匠になっているのかは分からないが、いかにも何かありそうではある。捜索してみて損はないだろうと、一同の方針が決まりかけた直後。
 撃退士の立っている地点からやや離れた所に黒く粘性を持った液体が6つ生まれ――、それらが見る見るうちに人間の形を取っていく。

「ってか、……何、この超趣味のイイ部屋…」

 呆れたようにヤナギがボヤく視界の向こう。そこには部屋に入った撃退士6人と全く同じ姿かたちをした者たちが立っていた。一様に生気の無い死んだような眼をしているためよく見れば判別は可能だろうが、中々に気持ちが悪い。
 恐らくは侵入した者の姿をまねるディアボロだろう。

「成程、それでここが鏡の中のような作りになっているのですね」
「イイゼ。どっちが本物か、トライアルと行こうカ。来いよ、ファッキンニューガイ。男の子ダロウ?」

 得心いったと東條 雅也(jb9625)が微笑みながら頷く横で長田・E・勇太(jb9116)がショットガンを構える、鏡写しの雅也と勇太もまた武器を構える。向けられる視線から見るに、狙いを各々のコピー元に定めたようだ。
 しかし、自身に刃を向けられることとなっても、雅也の笑みは崩れない。

「構いませんよ。俺は俺が好きじゃないから」

 その声に弾かれたように、ヤナギと『ヤナギ』が地を蹴った。
 隼が如き瞬速の踏み込みと共に放たれた二つの分銅同士が二人の中点でぶつかり合い、それを引き戻しながら壁面へと戦いの場を移す。
 「よく見れば」判別は可能だろうが、乱戦下では味方を見誤ってしまうとも限らない。両足にアウルを集め、追いかけてくる『ヤナギ』と共に室内を縦横無尽に走り抜けながら武器を振るいあう。

 混戦は避けた方がいいだろうと判断したのは狗月 暁良(ja8545)も同様だった。
 『暁良』が距離を詰めて来るに合わせて烈風が如き突きを叩き込み、ヤナギ達とは逆の壁面へと吹き飛ばし、それを追うように自身も駆けだした。

「自分と戦うのは初めてだシ、楽しもうゼ?」

 暁良と『暁良』の氷狼の爪同士がぶつかり合う近くでは、雫と『雫』の大剣が交錯していた。
 甲高い音と阿呆のような力同士がぶつかった際の衝撃で雫は思わず顔をしかめるが、膂力で押し勝てる事実に、剣が交わった状態での単純な力勝負には自身の方に分があると判断。

「姿かたちはそっくりですが、わずかに能力に劣化があるようですね」
「そのようですね。おおよそ…8割と言った所でしょうか。20%の性能差、どう影響が出るかな?」

 逆に自分から『雅也』へと突っ込んでいった雅也も自身が振るった双剣に返る手応えと、自身に叩き込まれた双剣が生む痛みからそんな風に判断を下す。

 8割。そう聞くと相手どるには易い相手と見なしてしまうかもしれない。
 だが、そこで客観的に自分の能力を考えてみるといい。自分は、自分を捉えることができるか。あるいは、自分の攻撃を、自分はどれだけ耐えることができるか。
 ヤナギと『ヤナギ』の戦いがいい例だろう。ヤナギが相手の脚部に狙いを絞っているという事情もあるのだが、高い回避能力を持つもの同士、中々攻撃を当てることができない。

(やれることだけやる、とは言ったが…ちっとばかし骨が折れるな)

 ヤナギの千日手に似たやりとりならばともかく、攻撃力の高い者同士のダメージレースは有体に言えば危険だ。
 それを示すようにRobin redbreast(jb2203)同士の戦いは早々に決着がついていた。
 まったく同じ動作でアウルを練り上げ、巨大な筆で中空に「石」の文字を描くRobinと『Robin』。
 澱んだオーラが幻想の砂塵を生み出し互いに襲い掛かり――先に痛みを感じたのはRobinの方だった。
 砂塵が内包する魔力が身体中を侵食していくが、全身にアウルを循環させ硬化から抜け出す。相手も同様に石化から逃れたようだ。
 自身の痛みにも歪まぬ意思無き瞳と生気の無い故歪まぬ瞳が交錯し、自身の痛みすらも他人事のように次の動きを組み立てるRobinの頭が、ある懸念をはじき出す。

 ――次に先手を取られたら、倒れるのはあたしの方だ。

 動きの速さで勝っているのは事実。しかしそれでも8割の自分相手に「必ず先手が取れる」とは言い切れない。
 隙の突きようが無いこの状況下で真正面からの正直にぶつかり合って先手を取るために必要なものは、身も蓋も無い言い方をしてしまえば時の運だろう。
 そしてその時の運を呼び込むのは何時だって人の意思だ。
 中空に描く蛇の文字を先に描ききったのはRobinだった。相手が術を完成させるよりも早く幻想の蛇が『Robin』に絡みつき、その首筋に牙を突き立てれば、糸の切れた人形のように小さな身体が地面に倒れこみ――消滅。
 まだ戦う手立ては残しているが、倒しきったほうが早い結果となった。

 同様のダメージレースは雫や暁良にも当てはまる。
 雫と『雫』は互いに蝶の幻影を放ち、暁良と『暁良』は息の止まるほどの痛撃を互いに放ちあうが、互いに抵抗しあい動きを止めることが叶わない。
 互いにダメージは積み上がってきている。雫も暁良も次で決まりだと自身の能力から相手の状況を判断する。
 雫が地を蹴り、暁良が身を低く構え獣のような眼差しで相手を射抜いた。
 上段から振り下ろされる大剣を『雫』は迎撃するように下段から振り上げ、『暁良』が暁良目掛けて駆け抜けていく。

 ぶつかり合う二つの太陽剣が甲高い音を響かせ、弾かれたのは『雫』の剣だった。
 小さな身体に似合わない膂力で流れる剣を保持し、再度構えようとするのだがそれよりも早く雫の剣が『雫』を両断するほうが先だ。

 他方、暁良。矢のように一直線に迫る『暁良』を、体中のリミッターを外した暁良が迎え撃つ。
 拳打の暴風が吹き荒れる。一発、二発、……そこまでを何とかしのいだ『暁良』がそれ以上を受けきれず嵐に呑み込まれる。
 都合5つの嵐がやめば、そこに自身の鏡など残りはしない。

「ま、本物のほうが強いのは王道ってコトで」
「違いありません」

 身体のリミッターを外した代償として動くことのできない暁良を護りながら、雫が返す。
 そも、向こうがコピー元を狙ってきたからと言ってこちらもそれに応じてやる必要はないともよくよく考えれば思う。
 回避が高い者を命中が高い者が相手どる、攻撃力の高い者を防御力が高い者が相手どる。部屋を調査するメンバーの構成次第ではあるが、そんな分担が出来ていればここまで派手に怪我をすることはなかったのかもしれない。
 とは言え、Robin、雫、暁良の三名が敵を片づけたことは事実だ。

「サテ、休んでる暇は無いゼ。男連中を手伝ってやらねえとナ」

 言葉の通り、暁良が身体を動かせるようになったタイミングを見計らってまだ戦闘を続けている三名の援護へと向かえば最早多勢に無勢である。
 ヤナギ、雅也と順に数に任せて敵を倒していき、最後に勇太の写しのみを残す状態に持ち込むことが出来た。

「ミーがどういう動きをしているのか見れたのは収穫だガ…遅いゼ、ファッキンニューガイ。出直してキナ」

 薙ぎ払いが何度か入ったこともあり余裕があったとはいえ、最後まで自身のコピーと戦い続けたこともありそれなりに消耗していた勇太。
 しかし、そんなことをおくびにも出さず『勇太』のこめかみへとショットガンを突きつけ、迷わずトリガーを引く。
 散弾が敵の顔面を埋め尽くし、即座に人の形をしていた者が霧となって消えていく。
 一先ずの敵が居なくなったことを認めて、その場の全員が詰まっていた息を吐き出した。
 全員がそれなりのダメージを受けたが、何とか場を凌ぎきることが出来た。
 休む間も惜しいと鏡写しの部屋を軽く探し、続いて奥にある扉から先へ進む。

 そこには、檻の中に収められたディアボロたちと、何かしらの操作が行えるであろうコンソールが存在していた。檻のディアボロは甲板でちらと見たディアボロたちと同一の種族であることがうかがえる。

「何かの動力源かな」

 体中が悲鳴を上げている事実を無視して平然とRobinがコンソールを指でなぞる矢先、檻の中に居たディアボロたちが転移したように数体姿を消す。

「おそらく、甲板へとディアボロを転移させる装置がこれなのでしょう、ね」

 ヤナギが周辺を撮影している中、雅也がコンソールに近づくと、何のためらいもなく剣を突き立てる。
 剣を突き立てられたコンソールは小さな爆発を起こすとそれきり沈黙。檻の中にいるディアボロが転移されることもなくなったようだ。

「これで少しは甲板のメンバーの助けになった…カネ」
「そう、だと思うがね」

 勇太の独白にヤナギが頷くと、爆発の際に飛び散ったパーツを回収し始めた。
 果たして細かなパーツが何かの役に立つかは分からないが、それはもっと詳しい者が判断すればいい話だ。
 その後も周辺の調査を行い、めぼしい情報が無いと分かると室内に居たメンバーはろくに休むこともせずに部屋の外へと駆けだしていく。

 外ではまだ皆が戦い続けているのだ。今ここで自分たちだけが休んでいるわけにはいかない。



 ロウワンが階段を下りきってすぐに見つけたのは、紅香 忍(jb7811)がこちらを待ち受けるように立っている姿であった。
 一人で待っているとは良い度胸だと装甲に覆われた右腕に力を込めて、忍目がけて全力の拳を振りぬき――拳が宙を切って盛大にバランスを崩す。

「馬鹿め…」

 直後、右から忍の声と共にアウルの弾丸がロウワンを襲う。何発かが装甲で守られていない個所に食い込み慌てたように一度階段まで飛びのいて弾丸を避ける。

「偽物っしたか…」

 幻のように掻き消えた忍だと思っていたものを見て苦い顔。冷静に見れば何のことはない、忍が事前に置いていたアウルで作った分身だ。
 左右どちらに行くにせよ撃退士が分散してくれたのはありがたいが、この階層は丁度数字の0を描くような作りとなっており、そのまま進まれればまた合流されてしまうだろう。

(この通路にはディアボロがいるし、挟みこめりゃ最上っすかね)

 ロウワンはディアボロたちに足止め、数が少なければそのまま押し切れと命じると、改めて左右を順に見遣った。
 左。足が速い者たちが多いのかもう姿は見えない。
 右。対してこちらは何人かが角を曲がった姿が見えるし、何よりも先程銃弾を浴びせかけてきた忍と、砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)が自分を誘うように角で立ち止まってこちらを見ている。

「遊びに…きた…」
「そ。皆で来ちゃった☆ ね、奥って何があるの? 教えてくれたらカーラちゃんも絶賛の納豆菓子をあげよう」
「あれ兄さんのだったんすか!? めっちゃ美味かったっすよ!」

 ちらつかせた納豆菓子にロウワンは一瞬目を輝かせるのだが、それはそれと小さく首を横に振った。

「っは、悪いんすけど流石にベラベラ喋る訳にもいかねえっすね。それにあんな壊れてんの見ても面白くねえと思うっすよ」
「喋ってる……」
「うるせえっすよちみっこ!」

 成程。奥には「壊れた何か」があるのだろう。
 このまま喋っていたら普通に聞き出せそうな気配すらするが、お喋りはここまでだとばかりにロウワンが右方、二人の方へと走り出す。

「ま、壊れた何かは見てのお楽しみかな。折角来たんだし、も少し船見せてよ」

 竜胆がそう言い残し、忍と共に逃げるように角の向こうへ消えていく。
 逃がすものかとロウワンは体中に電気を纏い、床を蹴る足に力を込めた。

 撃退士達を追いかけるロウワンの足音を聞きながら、樒 和紗(jb6990)が分かれた方のメンバーへロウワンをこちらに誘導することに成功した、と連絡。
 その直後、道の先に5体ほどの霧状のディアボロが進路をふさいでいることに気付き、少しだけスピードを緩める。

「目の前の5つの他にも2体くらいいる…かな? 左右の壁に一つずつ反応があるね」

 竜胆が周囲の生命反応を探り、警戒を促す様にそう声を発した直後、ロウワンが角を曲がり、撃退士たちを視界に収める。
 忍が残していた分身には今度は引っかからず、一瞥を返すのみで通り抜け、

「! ちょっと姉さん何やってんすか!?」

 夜姫(jb2550)が走りながら壁や床を刀で削っている痕跡を認めて、悲鳴のような声を上げた。

「来た時に何やら掃除をしていたようですので少しばかり掃除のし甲斐を増やしてあげようかと」
「絶対そんなこと思ってねえっすよね!? あれっすかこの間殴ったの根に持ってるんすか!!?」
「いえいえ根に持っているなんてそんなことは。ただ、前回ぞんざいに扱われた借りは倍以上にして返さなければ、と」
「それ根に持ってるって言うんすよ!」

 後ろからの非難の声も意に介さず、霧を集めて爪のような形状を作る目の前のディアボロと相対するため刀を構えなおす。
 ミストが突き出す爪を刃に滑らせ受け流すと、脚部に雷を模したアウルを収束、相手が引くよりも早く胴と思わしき部分に回し蹴りを叩き込む。
 ばちりと接触箇所に電気がはぜたような音が響き、蹴られたミストは痺れたように動くことができない。
 すかさず和紗と忍が動きの止まったミストに左右から銃弾を浴びせると、そのままミストは文字通り霧となって消えてしまった。

「右」

 忍の簡潔ではあるが鋭い声に、夜姫は左に飛ぶ。
 直後、右手の壁から影のような何かが現れ彼女を狙って槍のような触椀を伸ばしてきた。
 忍の警告でその一撃は回避できたが、今度は左の壁からも同様の影が現れ、夜姫に襲い掛かる。
 先ほど竜胆から存在を知らされていたためいる可能性は想定できていたが、それでも回避直後を狙われると次の回避は難しい。身体をひねり、心臓を貫かんと放たれた槍を肩で受け止める。
 奇襲が決められなかったと分かると左右の影はすかさず夜姫から離れ、壁に同化するように姿を消した。
 同時、前方にいるミスト達が同時に黄色いブレスを放つ。
 もとより横幅がそれほど広い訳ではない場所だ。逃げる場所を埋め尽くされ、四人はその衝撃に呑み込まれてしまう。

「そんな痛くはないけども…下手すると痺れちゃう、ってとこかな?」
「正解、っす!」

 身体にわずかに残る痺れを振り払うようにつぶやいた竜胆の背後、ロウワンが追いついた。
 特撮ヒーローもかくやの飛び蹴りが竜胆の顔面を埋め尽くさんと迫るが、それよりも早く和紗が二人の間に割り込むと、開いた鉄扇で受け止める。

「和紗、」
「俺のほうが反応早いので…竜胆兄、反撃!」

 蹴りの衝撃でたまらず軽い身体が跳ね飛ばされ、それを竜胆が受け止めると同時、聖なる鎖を編み上げてロウワンめがけて放つ。
 飛び蹴りの後の着地を狙った一撃ではあったが妙にロウワンの動きのキレがいい。バク転で後退すると同時、動きに付随して跳ね上げられた両足で鎖を蹴り飛ばしてその一撃を回避する。

「撃退士の姉さんたちはどうにも献身的なヒト多いみたいっすね」

 冗談混じりに笑うもまだロウワンの手は緩まない。地面を蹴って再度距離を詰め、もう一度竜胆めがけて拳を放つ。
 が、これも阻まれた。竜胆に届かないまま止まってしまった拳の感触に、ロウワンは覚えがある。

「よお。久しぶりだな。今日も低周波マッサージ頼むわ」

 背後からの声に振り返る。
 そこに立っていたのは向坂 玲治(ja6214)と龍仙 樹(jb0212)、そして草摩 京(jb9670)。
 ディアボロと共に撃退士を挟み撃ちに出来たと思っていたが、逆に挟まれていたことに気づき、ロウワンの顔に苦い色が混じった。



 ほんの少しだけ時間を巻き戻し、ロウワンが追わなかった方向へ進んだ者たちに視線を向ける。
 全力で角を曲がり、入り口から姿の見えない所まで走り抜けた玲治、樹、京、そして斉凛(ja6571)と葛城 巴(jc1251)。

「向こうに行ったようですね、玲治さん」
「ああ、今向こうから連絡も来た……まあ、あんなに大騒ぎしながら動いてるんじゃ連絡もいらなかったかもしれないが」

 こちらにまで聞こえてくる漫才じみたロウワンの声にやや呆れたような声を出しつつ、玲治は通信機片手に巴の声に応じた。

「悪魔の方舟の中に、どんな神秘があるのかしら?」

 白いメイド服を身に纏う凛の声は、興味で普段よりも少し熱を帯びているようにも見えた。確かに中世の船にも似た作りの船内、時間と状況さえ許すのならばあちこち歩き回ってみたくもなる。
 ただ、今はそれをするタイミングではないということは凛も重々承知だ。

「来たようですね」

 京の言葉と共に視線を前方へ。この場の五人には分からない事ではあるが、ロウワンが追いかけていった方にも居た霧状のディアボロが五体程待ち構えているのが見える。
 巴が生命探知で周囲を探索する。こちらも左右の壁面に二体ほど何か生命反応がある。

「七体、ですか……」

 周辺の警戒を怠らないままの樹の声に、懸念の色。
 手筈の通りならば、ロウワンに追われなかった方の班は更に分かれ、一部を味方の応援へ向けることになっている。
 そのメンバーは玲治と樹と京。では、残った二人で七体のディアボロを果たして相手取れるのだろうか。

「行ってくださいせ」

 じりじりとこちらへ距離を詰めてくるミストたちに向き合い、白いメイドはなんということも無いように三人に告げた。

「メイドは皆様をお見送りするのが仕事ですわ」
「斉さんの言う通り、大丈夫です。任せてください」
「……分かった。だが巴。無理はするなよ」

 ここで逡巡している時間も勿体ない。この場に巴を残すことが心配でないかと言えば嘘になるが、それでも玲治は一つ頷いて、二人にこの場を託すことに決める。

「ありがとうございます、玲治さん。危なくなったらすぐに撤退しますから」
「では、行きましょうか」
「ええ。凛、あなたも気を付けて」
「はい、京。ご武運をお祈りしておりますわ」

 樹の声に京も頷き返し、相棒たるメイドへ言葉を残して踵を返すと、そのまま元来た道を戻っていく。

「それでは、行きますわ。悪魔位の悪食メイド、その攻撃を味わいなさいませ」

 言葉と共に「アフロディーテ」と名付けられた紅色の弓が強く引き絞られ、空気を切る高い音と共に矢が放たれる。
 霧なのにどういう訳か深々と矢が刺さったように見えるディアボロが怒気を見せたように感じる。こちらに来るまでに一矢でも二矢でも三矢でも叩き込んでやろうと即座に次の矢を番えて構え。
 その直後壁面を伝って現れた影が凛を襲うべく影を振るうが、すかさずそこへ巴が割り込む。

「うっ……」

 手に持っているバットで受け止めようとするも捌き切れず、肩を裂かれる。
 狭い所は苦手なのだと毒づきながらもバットを振り回せばクリーンヒット。たまったものではないと影は壁に溶け込むように隠れてしまう。
 だが、その逃げ道を塞ぐように凛の放つ矢が放たれる。
 合切の無駄をそぎ落とした無駄のない動きから組みあげられる射法八節に白薔薇の花びらが付随し、放たれた矢がレートの影響を受けて速度を増して壁面に突き刺さる。
 壁に突き刺さったように見えた矢が、壁面を動き回る。
 それはすなわちシャドウを射抜いた証拠であり、速度が目に見えて鈍っている所を見ればかなりの深手を与えたことに成功したのだろう。

 ――だが。やはり多勢に無勢は否めない。
 レートを正に傾けた凛を二体のシャドウが執拗に狙う。巴が懸命に追い払うのだが、左右同時に襲われれば片方にしか対処できないのも無理のない話だ。
 先程のようなカウンターで一体を撃ち落とすことには成功したが、出来たのはそこまでだ。大挙してやって来るミストのブレスに晒され、二人の身体は確実に蝕まれていく。

「あ、ぐ……!」

 二人は良く戦ったと言っていい。ヒールや神の兵士を駆使して半分の敵を倒すことに成功したのだ。
 だが、その快進撃もここまでだ。既にそのメイド服を赤く染め上げ倒れている凛の隣に、倒し切れなかったシャドウに貫かれた巴も倒れてしまう。
 倒れ伏した二人をディアボロたちはしばらく見ていたが、まだ別所で戦いが続いていることからか、二人を放置してその場を去っていってしまう。

「玲治、さん…」

 最後に彼の名を呼んで、巴の意識は闇の中へと沈んでいった。


 更に視線と時間をロウワンと対峙する者たちへと移す。
 玲治達三人が加わったこともあり、その場の状況は一気に撃退士達に有利に傾いた。

「前回のお返しです! 避けると船が壊れますよ!」
「やっぱ根に持ってるじゃねえっすか!?」

 無数の魔法陣から生み出される鎖に言葉を乗せて、夜姫が強くロウワンを見据える。
 壊れてもそれは仕方ない……が、どうせ後で直すのは自分だと思うと避けることを逡巡してしまう気持ちもある。
 結果、左腕が鎖に絡めとられる。そこから流れる電流を自身の纏う雷で対抗。強く歯を食いしばって衝撃をこらえると鎖を振り払う。

「たまには襲撃される側も悪くないでしょう、ロウワン!」

 痛みの残滓を首を振るって散らす悪魔目がけて、樹が畳みかけるように薙刀を振るう。
 下から上へと切り上げる軌跡の緑の光が迫り、ロウワンは咄嗟に黒い装甲を盾にその一撃を防ぐ。前回邂逅した時のようなデタラメなレートの高さは持っていないようだが、波状攻撃に体勢が整わず、その場でバランスを崩してしまう。
 その追撃に忍や和紗が銃弾を叩き込もうとトリガーを引いたが、一度仕切り直したいのか身体を電気に変えて逃れる。
 現れたのは樹の側面。拳を叩き込むべく力を籠めるが、即座に玲治が盾を振るい弾き飛ばす。

「楽しいってのはあるんすけど心臓には悪いっすね。言ってくれてりゃも少し出迎えの準備も出来てたんすよ?」
「出迎え、ね。そのつもりがあるという割には随分と汚れた船内ね…薄い埃があちこち溜まってる。
 誰だか知らないけど、掃除するなら丁寧にやるよう伝えなさい」
「うるせえっすよ! 姉さんたちが来なけりゃ今頃俺が掃除してたんすよ!」

 壁面から襲ってきたシャドウを八の光球が受け止めると同時、返す刃で敵を裂きつつ京が放つ苦言にロウワンは苛立たしげに怒鳴った。
 拳の届く範囲には常に玲治や京がおり、誰を狙ってもカバーリングされてしまう。
 ではディアボロの応援はどうかと言えば、こちらもあまり望めない。
 最初の内はそれでも閉所で放つブレスが撃退士を襲っていたものの、竜胆の放つ範囲攻撃で弱らされたところを一体一体確実に倒されていき、ミストはもう居ない。
 シャドウの方はまだ健闘しているが、既に存在が割れている以上その警戒もされており、戦況をひっくり返せるほどの一撃など生まれようがない。

 これは引くしかないか。
 いくつもの戦いで何度も勝ち、何度も負けてきたロウワン故、その決定は早かった。
 両壁面のシャドウたちに命じ、自分の背面を取っている者へ攻撃を集中させるように命じる。
 それに応じて玲治と京にシャドウが襲い掛かった瞬間、囲みを突破しようとロウワンが動いた。

「…まだ、だろう……」

 だが、無理やり敵を押しのけて囲みから逃れた先へも忍が追従してきた。
 壁走りで天井を駆け抜けると天井の床を強く蹴り、その勢いのままロウワンの頭を掴めば、頭部を叩きつけるように引き倒す。

「ッ!」

 ロウワンの視界が明滅する。突然の衝撃に意識が飛びかけるが今それをしてはならないと全身で意識を繋ぎとめる。
 樹がすかさず魔導書から白銀の英雄を呼び出すが、騎士が振るう剣がロウワンを捉える直前に再度身体を電気へと変え、大きく退く。

「クッソ。やっぱ強いっすね……一旦引かせてもらうっす」

 覚えてろ、とその場の一堂を強く睨みながらそんな捨て台詞を残すと、ロウワンは一同に背を向け走り去っていった。


 その場に残ったディアボロを片づけ、通路を先に進んでいく。丁度甲板へ続く階段と対角線上にある地点、船首の真下あたりだろうか。

「ロウワンが言っていた壊れた何か、は。これでしょうか」

 そこにあったのは、巨大な大砲のような物体だった。それこそ中世時代の船に備え付けられているような大砲をそのまま巨大化させたような姿は、それなりの専門知識を有する和紗でなくとも何かの資料で見たことがあるものもいたかもしれない。
 砲頭はおそらく、外側に露出していると思われる。
 周囲をあちこち写真に収めながら、竜胆が首を傾げる。

「多分これ、船の正面から発射する目的でここに設置してるよね。主砲ってやつ?」
「だと……思う…」

 あまり興味がなさそうに主砲と思わしき兵器を一瞥し、忍が同意を返した。

「砲弾らしきものは特に見当たりませんが、おそらく魔力を用いて強力な弾丸を放てる物なのでしょうね」
「……壊れているのは幸いかもしれませんね」

 和紗の見立てに、樹が渋面を作って呟いた。仮にこれが健在で、上空から好き放題撃たれていたらと思うとゾッとしない。
 もう一度周囲を見渡す。特に他にめぼしいものは見当たらないようだ。
 一同がそう結論付けた直後、反射的に夜姫の身体が動いた。
 突如壁面から放たれた触腕を抜き放った刀で受け止めると、弾くようにして距離を取る。
 同時、先に続く通路の角から見覚えのある霧状のディアボロが数体現れる。

 これまでの調査状況から察するに、この階層は丁度0を描くような地形となっているはずだ。つまり道なりに進んでいけば、また入口へと戻れるはずだ。
 ならば、その道中に残った二人が現れず、ディアボロが現れたということが何を意味するのか。

 京と玲治が顔色を変え、ディアボロが現れた先へ視線をやる。
 ディアボロたちを無視して先に進みたくなる気持ちに支配されそうになるが、ここで焦ってはいけない、と何とか自制。
 幸い、数自体はそれほど残っていないようだ、それだけ凛と巴が頑張ってくれたのだろう。
 味方の援護をもらいながら残ったディアボロを蹴散らし、玲治と京が二人を迎えに船内を駆け抜けていく。


 ディアボロが振るうハンマーの一撃を飛びのいて回避すると、としおは即座に即座に銃を構え、ろくに狙いもつけずにアルファール目がけて引き金を引く。

「……へえ。良く当てたね」

 放たれた強酸性の弾丸を服の袖で防ぎつつ、アルファールは感心したような声を漏らした。
 少し前までとしおはディアボロへの対処に追われ、到底自分へと弾丸を届けられるような余裕などなかったはずだ。
 としおだけではない。複数のハンマーに追いやられ、獅堂 武(jb0906)が甲板から投げ出された姿だって確かにこの目で見ている。人数差で言えば間違いなくアルファールの側に利があった、その筈なのに、数の不利を物ともせずに確かにこちらへと向かってきている。
 それが出来るようになったのは甲板へのディアボロの増援が途絶えたことにあるだろう。ほんの少し前までは定期的にやってきた増援が、先程からふつりと途絶えてしまっている。
 入口から甲板へと昇ろうとするディアボロはザジテンやラファルが抑え、甲板に現存するものはアスハとマキナが一体ずつ確実につぶし、アーマーの数が減って来た所で氷雅がハンマーのみを範囲に収めて一気に数を減らしていっている。

「チビ、ノッポ、ガリ、デブ…」
「さっきから何を言っているんだい?」

 アルファールの頭上を取った状態から繰り出される海の槍を避けながら、囁くような彼の言葉に首を傾げてみせる。

「いろんな噂があってね、ベリアルって悪魔には。聞いた噂を並び立ててるだけさ」
「それは可哀そうに。あの方を何も知らないんだね。君だって一目見ればそんな噂、言っていたことすら恥に思ってしまうよ」

 ベリアルを強く慕う悪魔であるという話なので悪口に激昂するかと思えば、返ってきたのは存外冷静な返しであった。
 流石にベリアルという存在を何も知らないで繰り出される悪口はそもそも悪口として成立しないということか。

「正宗、行くにゃ!」
「ああ。ボクは負ける訳にはいかない…」

 やや気の抜けたような星野 木天蓼(jc1828)の声と共に、彼が呼び出したヒリュウのブレスが彼女の相方たる正宗を狙おうと動くディアボロを呑み込んでいく。
 そのまま宙を滑るようにアルファールの背面を取った正宗は武器にアウルを収束させ、合切薙ぎ払えと封砲を放つ。
 海に意識を向けていたこともあって、回避が遅れる。
 手に持つ鞭を強く振るい魔力を込めた空気の層を作ることでわずかながら威力を減じるも、アウルの奔流に呑み込まれ体中に痛みが走ったことはまた事実。

「さっきからうろうろと……君は少し、鬱陶しいよ」

 喉から洩れた声は、間違いなく苛立ちを帯びている。
 ばちりと手の中で電気が爆ぜ、それを正宗へ向けることで放とうとして――

「おっと、それは勘弁だぜ」

 そんな声と共に腕に絡みついた何かによって、大きく狙いが逸らされる。
 声のした方を向けば、先程ディアボロに吹き飛ばされて船から落下したはずの武が数珠をアルファールの腕に引っ掛けていた。
 その行為によって、放たれた雷撃を正宗は回避。海と共に再びアルファールの上空を旋回し始める。

「君、さっき落ちなかったっけ?」
「船には突起物がいくらでもあるんだよ」

 反撃を受ける前に数珠を引き戻し、手に持っているそれをアピールするように掲げる武に、それを突起に引っ掛けてまた昇ってきたのかと内心で感嘆。
 復帰した武にとしおが素早く駆け寄り、応急処置を施していく。

「随分と面白い事を考えるね。けど、正直僕もう君たちの相手をするのは飽きたよ。
 服もこうやってボロボロにされてしまっているしね。ここであの方が来たらどうしてくれるんだい?」

 撃退士とのやり取りはそれなりに楽しかったが、もう飽きた。
 そう告げると共に、アルファールの両手にこれまでの比でない出力の雷が集められていくのが分かる。
 咄嗟、ザジテンや木天蓼が召喚獣を送り返し、武と海が炸裂符の爆風と浮遊盾でアルファールの視界を塞いで狙いをそらす。
 が、そんなことお構いなしにアルファールは雷を解き放つ。

「――散れ!」

 正宗が鋭く声を発すると同時、としおが雷の群れ目がけて弾丸を放ち、少しでも着弾点を逸らそうとするが、放たれた弾丸すら呑み込んで雷の群れが海、としお、正宗を巻き込み炸裂する。

「正宗!」

 木天蓼が雷に穿たれた相棒を護るように、力を失い甲板に倒れ伏せた正宗の元へと駆け寄り、アルファールの攻撃に巻き込まれなかったディアボロの前に立ちふさがる。
 炸裂符による爆発を片腕で払い、状況を見渡す。海が重傷、としおと正宗は意識を失い動けそうにない。
 妨害に妨害を重ねられたとはいえ、雷撃を複数放っても、巻き込めたのは三人のみ。その内一人はまだ動けていると来た。
 その事実には驚くべきなのだろう。だが、衣服がボロボロになりもう防御能力に期待できない状況となっても、まだまだアルファールに戦えるだけの力は残っている。

「……ああ、もういいや。悪いけれど君たちの相手をするのは本当に飽きた。
 僕はこれで帰らせてもらうよ。後は残ったディアボロ相手に好きにやっていてくれないかな」

 けれど、アルファールはそれよりも自身の飽きに忠実だった。
 どうせロウワン辺りが直すから良いだろう、と電撃で足元に穴をあけると、そのまま穴から船内へと消えていってしまった。

 そして、その直後。
 ラファルたちが守り続けてきた階段から、ディアボロの物ではない力強い足音がいくつも響いてきた。


 まずレミエルをはじめとする調査班が戻ってきた。甲板に増援を送り込む機器があった部屋を発見した者たちが道中で合流していたのか、機械のパーツを袋に抱えて共にやって来る。
 それにわずかに遅れて、ロウワンと交戦した者たちも戻ってくる。
 京が凛を、玲治が巴をそれぞれ背負っている。血まみれの二人を見て顔を合わせたことのある面々が心配そうに駆け寄る。安静が必要ではあるが、命に別状はないようだ。

 甲板に残っているディアボロも最早大した数ではない。最後の一仕事とばかりに各々が片づけてしまえば、後は装備してきたパラシュートでここから飛び降り逃げるだけだ。
 その時、凛とした声が周囲を圧倒する。

「勝手に押しかけて、あたしに挨拶もせずに帰ろうってのかい? それはちょっとつれないじゃないか」

 輝く陽光の中に紫銀の髪の佳人がいた。ほっそりとしているのに、気圧されるくらいの威圧感と存在感がある女性だった。
 居合わせた全ての者の目が彼女に釘付けになる。

「部下たちから話は聞いてるよ。ダーリンからもね。あたしの大事なダーリンをあんまり困らせるんじゃないよ」

 艶やかな声が冷たさを帯びる。

(……ヤバいナ)

 その姿に、声に。暁良の背筋が震える。
 恐ろしさからではない。確かにその存在感からとんでもない強さを持っているだろうことは想像に難くないが、それに立ち向かっていったらどうなるのだろう――そんなことを考えずにはいられない自分が居るのだ。
 遠くない未来、彼女とも戦う機会はいつか訪れるだろう。その時が、今から楽しみで仕方がない。

 その一方で、緊張感から無縁とも思える竜胆みたいな男も居たりする。

「ベリアルちゃん。決めポーズでこっちに目線、3、2、1、はい」
「中々度胸が据わってるじゃないか? この場で記録に残そうってかい?」
「アルファールちゃんが美しい美しいって言うから是非とも記録に残しておきたいなって」
「中々上手だね、坊や。いいよ、記録の一つや二つ、好きに撮っていきな」
「ありがと。あ、それとこれ後でロウワンちゃんに渡しておいてもらえる?」
「げ。もしかして前ロウワンが持ってきたのも坊や経由?」

 納豆菓子を投げ渡されて少しだけ顔の引きつるベリアルに、氷雅が「そういえば」と思い出したように。

「お前の夫のルシフェル…か。風の噂では他の女性と浮気している、なんて話を聞くが」
「言葉には気を付けるんだね、坊や」

 ぴしゃりと遮るように発せられた声は、先程以上に冷たい物だった。氷雅が思わず息を呑む。

「風の噂、風の噂。成程いい言葉だねぇ。あたしとダーリンを何も知らなくとも使える便利なマクラだ。
 けど、噂は噂さ。人間の噂で疑ってたらダーリンに笑われるよ」

 その噂を流す悪い口を引きちぎってあげようか。
 笑っていない目がそう告げて、氷雅に近寄ろうとしたところで、レミエルが声を上げる。

「刺激するな! 作戦は終わった、速やかに撤退だ!」

 レミエルの姿に目を止め、べリアルは目を細めた。

「堕天使が頭目なのかい。それはまた……ボウヤがさぞかし血眼になって追いかけたがるんだろうね。あーあー、あたしの家をこんなに荒らしてくれて。この礼は必ずさせてもらうよ」
「地球は天魔の遊び場じゃない」

 レミエルはきっぱりと言った。その言葉にべリアルはただ大笑する。

 その笑い声を背中に聞きながら、撃退士たちは次々に地上に向け脱出していく。
 つくばでの電撃作戦はこうして終わりを告げた。

「ハハ。ベリアルを引っ張り出すってのはすげえな撃退士。札幌を取られたのは癪だが、面白いモノ見せてもらったぜ」

 地表目がけて降りていく最中、心の底から愉快なものが見れた、とでも言わんばかりの機嫌の良い声と、ベリアルの驚いたような声が上空から聞こえてきた気がした。

(了)


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: ラーメン王・佐藤 としお(ja2489)
 暁の先へ・狗月 暁良(ja8545)
 新たなるエリュシオンへ・咲村 氷雅(jb0731)
 桜花絢爛・獅堂 武(jb0906)
 ついに本気出した・砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)
 Lightning Eater・紅香 忍(jb7811)
重体: ラーメン王・佐藤 としお(ja2489)
   <アルファールの雷撃を受けた>という理由により『重体』となる
 紅茶神・斉凛(ja6571)
   <ディアボロの猛攻を受けた>という理由により『重体』となる
 永遠の一瞬・向坂 巴(jc1251)
   <ディアボロの猛攻を受けた>という理由により『重体』となる
 『AT序章』MVP・御剣 正宗(jc1380)
   <アルファールの雷撃を受けた>という理由により『重体』となる
面白かった!:15人

Eternal Flame・
ヤナギ・エリューナク(ja0006)

大学部7年2組 男 鬼道忍軍
撃退士・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

卒業 女 阿修羅
歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部9年1組 男 アストラルヴァンガード
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
崩れずの光翼・
向坂 玲治(ja6214)

卒業 男 ディバインナイト
紅茶神・
斉凛(ja6571)

卒業 女 インフィルトレイター
蒼を継ぐ魔術師・
アスハ・A・R(ja8432)

卒業 男 ダアト
暁の先へ・
狗月 暁良(ja8545)

卒業 女 阿修羅
護楯・
龍仙 樹(jb0212)

卒業 男 ディバインナイト
新たなるエリュシオンへ・
咲村 氷雅(jb0731)

卒業 男 ナイトウォーカー
桜花絢爛・
獅堂 武(jb0906)

大学部2年159組 男 陰陽師
籠の扉のその先へ・
Robin redbreast(jb2203)

大学部1年3組 女 ナイトウォーカー
撃退士・
夜姫(jb2550)

卒業 女 阿修羅
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
Lightning Eater・
紅香 忍(jb7811)

中等部3年7組 男 鬼道忍軍
BBA恐怖症・
長田・E・勇太(jb9116)

大学部2年247組 男 阿修羅
撃退士・
東條 雅也(jb9625)

大学部3年143組 男 ルインズブレイド
『楽園』華茶会・
草摩 京(jb9670)

大学部5年144組 女 阿修羅
海に惹かれて人界へ・
ザジテン・カロナール(jc0759)

高等部1年1組 男 バハムートテイマー
永遠の一瞬・
向坂 巴(jc1251)

卒業 女 アストラルヴァンガード
『AT序章』MVP・
御剣 正宗(jc1380)

卒業 男 ルインズブレイド
女好きの招き猫・
星野 木天蓼(jc1828)

高等部3年1組 男 バハムートテイマー