●調査隊は森の奥へ進んでいった!
「はい、ただ今深夜2時を回りました。私は今、幽霊が出るという森の前に来ています。これから、その森に入っていきたいと思います‥‥」
カメラの前、メガネをかけた宅間 谷姫(
ja1407)のレポートから撮影は始まる。ちなみに、レンズも入っていない伊達メガネをかけたいと言ったのは谷姫自身である。スタッフ側からの指示ではない。
「ちょ、待った待ったなんで皆そない冷静なん!??」
リアクションばっちりな彼は亀山 淳紅(
ja2261)。前列中央という絶好のリアクションポジションで、一番”オイシイ”場所である。赤面症&恐がりという二重コンボにもかかわらず前列中央に陣取ったのは『男だから』との事。
「うに、深夜の森は何も出なくても薄気味悪いにゃねー‥‥(汗)」
その左側。普段の魔法少女ルック、猫野・宮子(
ja0024)が併行する。若干ではあるがスカートを短めにしてあるのはテレビ番組だとかなんとか。深夜二時、6人 1人と言う大所帯とはいえ、懐中電灯以外の明かりがないこの状況では、薄気味悪い空気か周囲を包み「「きゃああぁぁぁああぁぁ!」」
ケラケラと笑う露草 浮雲助(
ja5229)の顔が闇夜に浮かぶ。「引っかかった引っかかったー!」と笑顔で構えているその光源は顔の真下にあり、その顔が不気味に照らされている。笑顔である方が逆に怖い。どこかのDVDパッケージみたいに見えなくもないほどである。
そのそばで「肝試し(違)楽しい〜♪自分より怖がっている人がいるともっと楽しい♪」と言うのは葦原 里美(
ja8972)。
「‥‥あ、アレは!」
里美の指さす向こう。足下には、しろっぽく光る物体。仄暗く浮く朱い光が相まって、その物体を美しく映している。この光自体はとあるキノコの効果なのだが、その薄暗く光る感じが、この森を幻想的に、そして妖しく彩っている。
「‥‥この辺だな?」
事前に打ち合わせておいた場所。鴉乃宮 歌音(
ja0427)が確認したその場所には、食い散らかされた鼠の死骸などが転がっている。
「よく出るのは此処なんだっけにゃ?それじゃあ罠を仕掛けて待機にゃ♪」
魔法少女の一言に、軍用の檻、囮となる生きたネズミ、隠れる場所の確認などが行われていく。
「ここが、現場のようです。ご覧ください、周辺には食い荒らしたのでしょうか、ネズミの死骸が転がっていたりします。私達は、ココにこのような檻と、囮のネズミを用意して、その幽霊の正体を掴みたいと思います!」 この檻の仕組みなどを簡単にカメラに向かって説明をしておき、両脇へと人影は消えていった。
一本道にどんとおいた檻を、周囲に分かれた一行が息を潜めて見守る。「ここは任せろ」と鴉乃宮が『忍者』を用いることで明かり無しでもその様子を監視することが出来ている。こうして、幽霊(仮)と調査隊の根比べが始まった。
●調査隊は幽霊の正体に迫った!
‥‥
‥‥‥‥
どれだけの時間が経っただろうか。1時間だろうか2時間だろうか。はたまた5分かも知れないし、まだ30秒も経っていないかもしれない。何か感じる。ような気がする。淳紅はそのような感覚に襲われていた。檻を見ていないといけないのだけど。しかし、この感覚が気になる。ダアト故に、このような感覚に敏感であると言うことは分かってはいるのだが。
「‥‥ ん、アレって‥‥」
仄暗く、朱い光が周囲を飛び交う。その色が違えばほたるだと言ってもいいような、仄暗く、弱々しい光。しかし、確かに飛び回っているようである。
「な、なぁ、アレって『ガシャン!』」
来た! と言う声がどこからともなく沸いて出て、全員の意識がその檻に向けられる。その檻のそばには、なにかが蠢く気配が見える。
檻がしまった瞬間に。淳紅によって阻霊符が発動。
「ご覧ください! ついに、つい‥‥に‥‥?」
煮え切らない様子のレポーター。その手に持ったトーチをそこにかざしてみると。
「‥‥キツネ?」
元幽霊はこん、とかわいく咳をして。落胆する一行。
「これは、伝説のアマツキツネじゃないですか?」
「説明しよう、アマツキツネとは、本当は流星の大きいモノである。決してキツネではない」
里美の解説に、さらにそこに解説を入れる歌音。
「今回はキツネだったようです。また、待って見ま(ヒュンッ)」
カメラの前に見切れる一筋の影。その影が残す一筋の線は緑色に染まっていて。
「「「「「「い、いたぁ!」」」」」」
全員の声が森に響き渡る。と同時に、全員の足がそこに向かう。一本道、この先を行けば何があるのか。それは、神のみぞ知る‥‥ のかも知れない。
●調査隊は幽霊と戦闘した!
一行が追いかけるその先には、一本の緑色の光。その光はソフトボールぐらいの大きさだろうか。
走りながら、淳紅や浮雲助の阻霊符を使って見たものの、上手く当たらないことと、なかなか効果が無いようだ。
「‥‥よし!」
その一言と共に。光り輝く周辺。トワイライトによって仄暗い森を明るく照らす。
「ご覧ください! 先ほど現れました、緑の光、正体が分かりました! これは‥‥」
見た目はヤマネコ。しかし、その頭には‥‥。
「き、キノコでしょうか? こちら、頭にキノコの傘のようなモノを乗せたような形になっております! これは‥‥ ディアボロです!」
合図と共に。キノコのような頭のヤマネコのディアボロ、略称キノネコを取り囲むように、パーティ6人が取り囲む。そして、それを端からカメラでとらえる高瀬。ちなみに、キノネコの命名は高瀬君である。
谷姫のトーチ、淳紅のトワイライトで十分な光量で照らされているこの森は、十分な視野が確保されている。「それでは、今からディアボロ退治、行きますですの!」
そういうと同時に谷姫がマイクを投げ捨てるのと同時、「うわぉぉおぉぉおおぉぉ!」と言う咆吼一発。浮雲助の大声が森中に響き渡り、木々や葉は揺さぶられる。しかし、相手もこれでひるむわけでもなく。まぁ、最初からひるませることを目的にしているわけではない。演出半分、こちらに意識を向けること半分ぐらいである。「よし、こっちだこっち!」
キノネコは、浮雲助の方向へ後ろ足を蹴った瞬間に。
「さらばだ闇の子よ」
動けなくすることが先決である。キノネコの足下を狙い、狙撃する。カメラが回っている状況でこの集中力は見上げたモノである。
「Canta! ‘Requiem’.」
そして、淳紅のその一言と共に、無数の腕がキノネコに向かって伸びていく。その持ち主のない腕達はキノネコを拘束していく。しかし、まだ拘束が完璧では無いタイミングでキノネコの突進が浮雲助にヒット。明らかに当たり方はそこまで強くないはずなのだが、異様なほどに吹っ飛んでいく浮雲助。スキル受け身ってすごい。
「里美さん、大丈夫ですの!?」
レポーターモードではなくなった谷姫が、里美に気をかける。
「よーし、陰陽護符、いっくよー!」
里美の遠距離魔法が炸裂する‥‥ のだが、カメラのアングルが妙にローアングル。
「私、盛り上げるためなら、ぱんちらも厭いません!カメラさん、戦闘時はローアングルでどうぞ!」
とまで言っていた里美は、キッチリ苺のパンティを用意していた。イイ映像頂きました。
「悪い幽霊さんはこの魔法少女・マジカル♪ みゃーこが退治しちゃうのにゃ♪ 覚悟するにゃー♪」
苦無を見に構え、拘束されたキノネコに向かうのは一瞬。パンチラなど気にしない。むしろ自ら率先してパンチラを狙っているような気もするが、そこは気にしちゃイケナイ。もちろんカメラにもバッチリ収まってます。「マジカル♪ソードで成仏するのにゃ!」
顔の正面、キノコで言う傘の部分から、大きく二つに切り分けるように。鍋に入れるキノコを、食べやすい大きさに切り分けるように。そして、今まで、この森に出ていた"幽霊"を成仏させるように。
「うに、魔法少女はどんな時でも負けないのにゃ♪」
●調査隊は街へ帰っていった!
「はい、できたよ」
空が白んできた午前5時。無事ディアボロを倒し、「今回の戦いは、最初に相手を動けなくしてデスね‥‥」と言う谷姫による解説部分も収録終了、歌音によるうどんで早めの朝食である。
「蕎麦もあるよ」と準備万全である。おなかが空くだろうと出発前に作られたうどん&蕎麦は鰹と昆布の合わせだし。具は蒲鉾と葱だけと言うシンプルながらも素晴らしい一品で、浮雲助なんかはもう5杯目に突入している。撮影の休憩時間に持ってきていたサンドイッチとか食べていたような気がするが、気のせいと言うことにしておこう。ちなみに、里美は高瀬と共に収録したVを確認し、「やだっ!私この角度太って見える!」とか言っている。この辺しっかりしている。
「ふぅ、本当の幽霊じゃなくてよかったよ。‥‥幽霊なんていないよ‥‥ね?(汗)」
魔法少女から撃退士の女の子に戻った宮子がそうつぶやく。
「そういえば、あれ、なんやったんやろうな?」
「え、ディアボロだったんじゃないのかにゃ?」
「いや、あの朱い光、あれはなんやったんやろう? と思うてな」
檻を見ていたときに見ていた、仄暗い朱い光。アレは気のせいでもなく、勘違いでも無いはずだ。仄暗いとはいえ、みんなも確認していたであろうあの朱い光。その光については何も分からないまま朝を迎えてしまったのである。
「‥‥朱い光?」
違和感。明らかにその存在を知らないかのような物言い。
「ほら、あの檻を監視してたとき、朱いホタルみたいな光が飛んでたやん! あの光やって!」
見た? と確認する宮子に、見てない、と言う一同。
「それならさ、確認してみればいいんじゃないかな?」
と言う里美に促され、ビデオの前に座り込む。ビデオを巻き戻す時間ももどかしく、焦燥感が支配する。
「よし‥‥ 見るで」
問題の部分。右向き三角形のボタンを押して映し出されるのは、暗視カメラ特有の若干緑がかった映像。そこには何か光っているようなモノもなく、ただただ檻の様子を移しているだけ。
な〜んだ、いないのか〜、と言うような声が漏れる中、みんな帰り支度を始める。そんな中、淳紅だけが動けなくなったようにそのカメラの前に座っていた。
「淳紅様、大丈夫ですの?」
谷姫の声に肩を振るわせ、意識を取り戻す淳紅。
「お、おう! 大丈夫やで! さぁ、帰るで〜!」
その声の奥深く。どうにも形容しがたい感情が渦巻く。言えない。いや、言えるはずがない。
確かに、そこに朱い光なんて映っていなかった。そこに映っているのは檻だけだった。
しかし、淳紅は気づいてしまった。自分がダアトだからか、とも思った。そこに確かに朱い光は映っていなかった。しかし、見てしまったのだ。
カメラ左斜め上、不気味に笑う顔が映り込んでいるのを‥‥。