●before of "the QUIZ TIME"
番組開始3分前。カメラは挑戦者に密着していた。緊張してもはや挙動不審になっているもの、楽しみで胸躍るモノ様々である。今回、カメラはその中でひときわ目を引くメイド服の少女、氷雨 静(
ja4221)に話を聞いた。
(カメラ)「まもなく本番ですが、どのような気持ちですか?」
「私、TVに映るのなんて初めてです。本来、メイドとは目立たず回りの方を引き立てるのが本分ですが‥‥。本日は気持ちを切り替えて頑張らせて頂きます。でも緊張して間違えないか不安です。本日はよろしくお願い致します」
その少女は、自慢のメイド服を身に纏い、微笑みながらそう語ってくれた。
●OP
(ごー、よん、さん、‥‥、‥‥)
「人は皆、華やかな夢にあこがれる。大スターになりたいモノ。空を自由に飛び回りたいモノ。大金を手に入れたいモノ。‥‥叶えて差し上げましょう。今週のテーマは2012年宇宙の旅。それでは参りましょう。『The QUIZ TIME』!」
MCである高瀬光のひとことで、今まで光のみを照らしていたスポットライトが消え、スタジオ中の照明が点灯される。華やかな音楽が流れ出し、華やかなスタジオセットが露わになる。そして、ひときわ大きなセットの上部には、6人の『挑戦者』が座っている。
「本日の挑戦者は久遠ヶ原学園チーム! 意気込みを、じゃあ沙 月子(
ja1773)さん!」
「え、えとーあのーそのーぅ‥‥ が、ががが頑張ります!」
テンパり具合が目に見えて現れている様子。しょうがないといえばしょうがないのだが。これだけのカメラに囲まれ、その視線を一身に受けているのだから。
「ははは、緊張してますねぇ。それでは、頑張っていただきましょう。Let's play the QUIZ!」
●クイズ開始
「第一問。上方落語にはあって江戸落語にはない道具は3つあります。全て答えなさい」
光の口から、問題が読み出される。この問題の解答者は‥‥。
「では、ザ、和服美少女こと藤宮 睦月(
ja0035)さん、答えを」
「あ、これなら分かります(ぽん)。見台と小拍子、それと膝隠ですよね」
正解、と言う声と共にファンファーレが鳴り響く。その控えめな笑顔が和服によく似合う。
「第二問。本の巻末にある、書名や著者、発行者、印刷者に出版年月日等を書いている部分のことを何という? 回答は、先ほど緊張しまくっていた、沙 月子さん、どうぞ」
「おおおおお奥付ぇええええ!!!」
少女の悲鳴がスタジオに響き渡る。罰ゲームというわけではなく、ただ単に回答しただけであるのだが。その証拠に、ファンファーレが鳴っている。
「ほはぁ〜……」という声と共に、脱力感が。
「第三問。著作権法第13条より、保護の対象とならない著作物を4種類、全て答えなさい。続けて沙 月子さん!」
「にゃ、にゃうにゃうにゃうにゃう‥‥」と戸惑いつつも問題を考える。テンパってはいるが、考えることはまだ出来るようだ。
「は、はい、ははい! けけけ『憲法、その他の法令』、『国もしくは地方公共団体の機関、独立行政法人、又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの』、『裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの』、『前三つに掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの』ですっ!!」
「‥‥正解!」
テンパっている割にはかなり長い回答を言うことが出来たというのは素晴らしい。
「結構難しい問題だったとは思うけどすごいねー。もしかしてそういう部活?」
「ぶぶぶ文芸部(仮)ですにゃうー!」
緊張でのテンパリの中でも、律儀に回答するのがかわいらしいと言える。
まぁ、正解だといった後、直ぐに「ひへぇ〜‥‥」とへたり込んだわけだが。自分の持ち分を全部消化できたことで緊張の糸が切れたようだ。
●一回目のCM明け
「では第4問。392の約数の総和はいくらか。」
先ほどまでの問題と代わり今度は数学の問題である。計算さえすればイイという問題であるが、果たして。
「回答は、平山 尚幸(
ja8488)さん。どうぞ」
「413」
手を前にだし、祈るような形になる。頭には、チームメンバー全員でそろえで付けている藤色の鉢巻が輝いている。
‥‥。
‥‥‥‥。
この沈黙の先に。
ブー。
ブザー音と共に足下の床が抜ける。その下には衝撃を吸収するスポンジ。そして、落下と同時にスタッフが駆け寄ってきて、手際よくハーネスなどの準備が整う。
「スリー、ツー、ワン、ゴー!」
先ほど下に落ちていった体は逆に上空に打ち出される。打ち出されると同時に「人生に悔いなし!」と言う声が聞こえたような気がした。ちなみに、男であるにもかかわらず、大城・博志(
ja0179)は見上げてしまったようだ。
「解説です。392は、2×2×2×7×7=392となります。ここで、約数は『1,2,4,8,7,14,28,49,56,98,196,392』となります。これを全部足すと、855となります! ちなみに、(1 2 4 8)×(1 7 49)でも解けます!」
4問目にて最初の脱落者が。後からインタビューしたところ、「間違えるかどうか本気で悩んでいた」とも言っていたので、本望なのかも知れない。
「さぁ、ココで初の脱落者が現れました。後5人。では、次の問題」
第五問。久遠ヶ原学園が開校したのはずばり何年? と言う問題に回答するのはたぎるエロス、大城 博志。完全ローカルなこの問題。学園に通っている生徒としては答えたいところ。
「答えは?」
「たしか、2002年に久遠ヶ原撃退士養成学園が開校。
2007年に名称を変更し、久遠ヶ原学園、開校。
って事なので、答えは2007年!」
‥‥。
短めの沈黙の後、正解のファンファーレ。
「解説も同時に行ってくれました。 完璧ですありがとうございます!」
その一言にガッツポーズで応える。
「さぁさぁどんどん参りましょう! 第6問! 現在、ヲタク文化の一部としてブームとなっているメイド。現在の日本のメイド服の主流はフレンチメイド型の派生ですが、メイド服のデザインにはもう一種類あります。ロングドレスの場合が多く、シンプルで装飾が少なく、仕事着である事を重視したこのメイド服は何型と言う?」
回答者のマイク、スポットライトはメイド少女、氷雨 静(
ja4221)に当てられる。
「ふふふ。正統派メイドであるこの私には簡単すぎる問題です! 今、私が着ている服! すなわちヴィクトリアンメイド型です!」
ピンポンピンポン♪
と言う心地よい効果音と共に、画面左には番組ロゴ。カメラは挑戦者全員を収め、一回カメラが切られる。
●2回目のCM明け
「『The QUIZ TIME』。半分の6問終了して現在脱落者は1名。久遠ヶ原学園チームは豪華賞品を手に入れることが出来るのでしょうか! 第7問です!」
光の一言で、収録は再開される。
「第7問。日本の国家資格であり、業務独占資格であるアマチュア無線技士。この資格の所轄官庁はどこ? 回答者は、続けて静さん!」
「これはちょっと難しいですね。どこかで聞いた覚えはあるのですが‥‥」
がくっと上がった難易度に、少し悩みこむ。チーム内での相談も認めているが、口を出せる人もいないようである。
「‥‥思い出しました! 確か総務省です! ‥‥あっていますか?」
恐る恐るではあるが、それでいてハッキリと回答を提示する。そして、その回答に対して沈黙を持って応える番組MC。
その沈黙は1分か3分か。はたまた5秒だったかも知れない。
「‥‥正解!」
「‥‥正解でしたか、ほっ」
というやりとりをした上で、安堵の表情を浮かべる。自分も持ち分全てを終了したこともあり、安心したのだろう。
「第8問。日本ではじめて放送されたテレビ放送。その時に映し出された文字は何? 回答は今回初登場ナイスグラマー、アーレイ・バーグ(
ja0276)さん!」
うずうず。
やっと私の番がきた。待ち続けたこの時間。ネタキャラとして。このときを待っていた。自分でネタキャラと言ってしまうのは少々残念な気はするが。
「うーん‥‥ これはどっかで見たような‥‥ 確か『イ』だとおもいますー!」
という回答するか否かの瞬間に。光のもとに一人のADが駆け寄ってくる。
「えー、問題に不備があったことを報告いたします。本来、ココでの問題文は『日本ではじめて実験されたテレビ配信テスト。その時に映し出された文字は何?』になるべきあり、放送開始時に映し出された文字は不明である、と言うのが現状であります。しかし、今回は先ほどの問題文を想定して作られたモノであり、こちらの想定した回答を得られたこともあり、今回はこのまま進行させていただきます。この度は申し訳ありませんでした」
「いやぁ、ネットサーフィンが役に立つこともあるんですねぇ」
むーん。正解者コメントの裏で、何とも言えない気持ちになっていた。確かに正解した。しかし、納得がいかない。どうせなら間違いにしてくれた方が面白かったのではないか、と思いながら。
「気を取り直して参ります。第9問。久遠ヶ原学園の学園新聞第1回。そこに掲載されていたすごいよ!! 白ヤギさん!! は第何回と表記されていた?」
スポットライトに照らされるは大城 博志。
「ヤギが僕と契約して? は322回? そんな事よりあの回の新聞といえばバーボンハウスだ! 畜生! 表紙に釣られて買ったのに出てきたのがアレってどういう了見だよ!? 読んだコッチがうにょ〜〜んとなったよ!」
もはや回答以上にバーボンハウスについて熱く語ってしまってるが正解は正解である。
「さ、さぁこのマシンガントークに続きましょう、第10問!」
久遠ヶ原学園、生徒会室の壁際の机には、段ボールが積んであります。その段ボールの数は何個? と言う超ローカル問題が出題される。回答は睦月。
「学園の生徒会室のダンボール‥‥ですか?」
裏では『いくらローカルな番組とは言っても、些かローカルすぎる問題では‥‥』と思っていたのはナイショである。
「多分‥‥ですけれど、机の上に積んであったという事でしたら5個、だったように思います」
自信が無いようで、おずおずと回答を口にする。その様子はまさに大和撫子。その姿が栄える。
ファンファーレとともに、ホッとした様子で息を吐くが、カメラが向いていることに気づき、恥ずかしそうに扇で口元を隠す。その様子も雅である。
「さて11問目ですが‥‥ この問題は尚幸さん回答問題ですね。すでに失格になっているので、この問題は無条件で不正解です。ちなみに問題は政府の一機関としての天魔対策戦略室が設立したのはことし、2012年から何年前? 正解は18年前でした。記録によりますと1994年に設立されてるんですね」
宙づりのままにされている尚幸は悔しそうに口びるを噛む。答えは分かっていたのに答えられないとは。しかしルールなのでしょうがない。
●最終問題
「さぁ、最終問題前に確認しましょう。ココまで生き残っているのは5名。商品ランクは1つ下がっています。そして、最後の問題。運命を握るのは、アーレイ・バーグさん、あなたです」
最終問題、先ほどの問題、等様々なことが重なり、やる気十分である。本気モード全開である。
「問題。久遠ヶ原学園の生徒会長の名前はずばり、なに?」
最終問題。学園ローカルの問題であり、しかも生徒会長という重要ポジションの人物である。これは勝っ
「それは当然この私アーレイ・バーグこそが久遠ヶ原の生徒会長に相応しい‥‥きゃうっ!」
音もなく。不正解のブザーが鳴る前に。その床は少女を真下のボックスへと落下させていった。
パシャンという音と共に、ニュルンという感触。睦月は助けに駆け寄ろうとしたが、勝手に席を離れてはいけないのでは、どうしたら良いのか分からなくてその場であたふたおろおろしたりしている。一方当の本人はと言うと。
ふにふに。
ふにふにふにふに。
ローションで軽く透けて黒の下着が見えている中。その胸を揺り動かす。
「ローションをかけられたら胸をえっちぃな感じで動かすのが日本の作法と聞いたのですが?」
この勘違いはさすがに光としてもツッコミのしようがなかったりする。あっぱれなりその芸人魂。ちなみに正解は神楽坂 茜。
●フィナーレ
「はい、と言う事で今回のThe QUIZ TIME終了です!」
宙づりだった尚幸も下ろされ、ローションまみれのアーレイ、アーレイの蔵輪規定上描写不可な妄想に注目、鼻血で衣装が汚れてしまっている博志を始めとして、みんなが回答席からスタジオ中央まで移動してきている。
「それじゃあ、ちょっと感想を聞いていきましょう! 静さん、どうでした?」
「本日は貴重な経験をさせて頂いて有難うございました」
確かにこういうクイズ番組に出演する事なんて滅多に無いですからね−、楽しんで頂いて何よりです。と返しつつ。
「じゃあアーレイさん、どうでした?」
「あの、ちょっと、やってみたいネタがあるんですけど、やってイイですか‥‥?」
もちろんエンディング収録前に体は拭いたモノの、まだローションしたたるいい女状態のアーレイの要望にスタジオが少々ざわめきたつ。ディレクターが、尺を確認し、手で大きな丸を作る。
「うん、まぁ、イイでしょう! やってもらいましょう!」
ありがとうございます、と一礼してアーレイはスタンバイに入る。他のメンバーが緊張の面持ちでそれを見守る。
「それでは、どうぞ!」
光の一言で、会場の電気は堕とされ、アーレイを照らすスポットライトひとつになる。
「我が回答に一片の悔い無し!」
禁呪を使い、どーんと某昇天の真似である。
「禁呪……使い道ないですよね(ぱたり)」
と倒れると同時に照明が点灯する。
「はい、と言う事で今回の賞品のテ「ちょっとちょっと何ですかなんでスルーするんですかそんなにダメでしたか!」」
賞品紹介に移行しようとする光と、そのリアクションに納得できず食い下がるアーレイ。光の指さす先にはADの「巻いて!」のカンペが。
「えー、今回は4人生き残りと言うことで、賞品は『2012円府中の足袋』でございます! おめでとうございます!」
「おい宇宙の旅はどうした」「た、たたた足袋ですかぁ?」「ちょうど新しい足袋が欲しかったんです」と様々なリアクションが渦巻く中、放送は終了した。
「おおお疲れ様でしたーっ」
放送終了後、脱兎の如く逃げ出す月子に、スタジオで片付けをするスタッフ達。
「あ、アーレイさんゴメンねー。アソコは押してたしああいうリアクションした方が良いかと思って」
「こちらこそ、ありがとうございました!」
アーレイをはじめとして、出演者全員に挨拶をして回る光。
「それでは、今日は本当にありがとうございました! また、この番組、もしくはべつのお仕事で!」
光は、今日の出演者にそう告げて挨拶回りをしていったのであった。