●キャンプだ!
種子島のとある場所、学生達が鉈を片手に竹林へ。
当然、殺人儀式では無い。
「さぁ…やる事やって、のんびりしようかぁ」
「キャンプだぁ!キャンプだぁ!一人足りないけど、すぐ追いついて来るよねっ」
橘 優希(
jb0497)たちは目指し道を進む。
訓練の一環だが白野 小梅(
jb4012)は実に嬉しそうだ。
お尻をフリフリ、まるでニャンコの散歩である。
巡回ぃ?なにそれぇとばかりに、色んな物に目を止め足を止めキャッキャッと大行進♪
「キャンプ、ですか?確か山や川で野宿をする事でしたよね」
「正しくは野営の仕方を学習する事だけど、過程を愉しむのがメイン…って、玉置ってば先に来てたのか」
「早く来てしまいますた。眠む〜」
御祓 壬澄(
jb9105)の質問に、優希は軽く説明しながら林の前でグーグーやってる姿を見つけた。
そこで玉置 雪子(
jb8344)が、最初の一本目か二本目でリタイヤしている。
徹夜明けのテンションで始発を使ったに違いない。
「現在進行形で体力が無いのでは仕方ありません。復活し次第、手伝ってもらいましょう」
「サーセン。もう何にもする気おきませんお〜」
壬澄は足もとで横たわる雪子を迂回し、竹の伐採を始めた。
抗議とか文句と言うルーチンの無い彼には、無理やり起こして手伝わせると言う無駄をしない。
ゆえに、雪子の黒い笑みに気が付く事は無かった(ニヤリ)。
「光纏すればぁ、早いよねぇ♪」
「きっとこの方が早く済みますよ。少し離れてください」
ぷくーっと息を止めて光纏、小梅は鉈を振り降ろす。
小学生だけにやらせる訳にはいかぬと、円城寺 了(
jc0062)は巨大な大剣を活性化!
小梅が離れた所で、一気に横薙ぎ! ズンバラリンと数本の竹が刈り取られた。
「少し位置が高いかなあ。いけると思ったんですけど」
「次手の早さも考えると。武器も使えない事はないんだろうけど、鉈が便利かな」
了の一撃は確かに数本の竹を刈り取れるが、流石に安定した高さでは無理だった。
その様子に軽く頷いて、音羽 聖歌(
jb5486)は予備の鉈を手渡してあげる。
地を這う攻撃で高さ調節できるが、繰り返すなら鉈の方が早い。
「倒れますよ〜って、何かデジャブを感じますね」
「そういえば、昔のアニメか何かで見た覚えがある。たぶん再放送を覚えてるんだろう」
刈り取られた竹が、ガサガサと倒れる。
礼野 明日夢(
jb5590)と聖歌は警告しつつ、枝葉も拾っていった。
●黄金の竹
「うにゅ、道ってのはぁ、通った後に出来るんだねぇ(うんうん)。何かみーつけたー」
「何かあったの?それって、面白そう!?」
アリさんの行列を追いかけながら突き進んだ小梅が降り返った時。
後方の草薙 タマモ(
jb4234)たちが見えるほどの道と、…脇道にある光るナニカ。
直ぐ近くに居たタマモは好奇心旺盛な小梅が気まぐれを起こしたので、付いて行くことにした。
なんというか彼女もまた、楽しい事が大好きなのだ♪
「おおー。黄金だ〜光る竹だー。カグヤ姫居るかな〜」
「どうかなー何も聞こえないけど…」
金色に光る竹を見つけ、プルプルしながら、一緒になって入ってますかー!?
だが返事はない。入っていたとしても、屍のようだ。
「竹ってよく曲がるんだね。えいやっと。…メモ?えーと手の込んだ悪戯かな」
「あうー。何も入っていませんよーなの。御姫さま居なくて残念なの」
タマモはベイーンと竹を曲げてみるが、反応が無いので切ってみる。
だがソコにあったのはメモだけ。小梅は少し寂しそう。
『これをなんと読む?ハ・ズ・レ』…というフレーズを、一同は思いだした。
「しかし、誰がこんな手のこんだ悪戯を…」
「思い当たる人物、というかアリバイの無い人物が一名」
あー。
了が首を傾げた時、壬澄は冷静に思い返した。
あの時は放置したが、良く良く考えれば『彼女』は先に来ていたのだ。
竹をスプレーか何かで塗装する時間はあった。
「また何かするかもしれないから、彼女の様子見といてください。…さて、リレーの要領で運びますか」
「了解。僕の方で玉置さんに釘を刺しときますよ…やれやれ」
了は苦笑しながら、容疑者と組む予定の優希に声をかけた。
優希の方も心得たもので、溜息ついて竹をかついで行く。
長くバランスが悪いので扱い難い青竹も、撃退士の体力ならブレずに受け渡しが楽だ。
その意味で、バケツリレー方式は正解だろう。
「割る竹、割らない竹に分けておく。あとは用途に応じた数でくくっといてくれ」
「竹を組み合わせる必要ある訳ですしね。必要に合わせておきますよ」
最終段階の聖歌は加工する竹とそのまま使う竹に分散。
明日夢は受け取った竹を、細部調整に使う工具の脇に置いておく。
忘れられても良いよう自然に還らないホワイトロープは使わず、荒縄を使用して転がらないように整理だ。
忘れ去られ……、なんか忘れているような?
「放置プレイですね、判ります。フヒヒ、そろそろ本格的に動くとしますかねえ」
雪子はキョンシーのように起き上がると、暗躍を開始。
頭脳をフル回転させて今後の流れを予測し、楽しくなるように事象へ介入するチャンスを待つ。
…その労力を作業に回せよと言ってはいけない。
●工作のお時間
竹で工作したりテントの設営タイム。
「全部終わった?なら下にダンボール敷いてみてください。それで寝心地が変わるはず」
「おー、いい感じ!やっぱりゴツゴツしてるより、こっちの方がいいもんねっ」
了とタマモは、対角線にテントを引っ張り四隅を固定してパパっと設営。
女性用テントを組み上げた所で、了の指示でダンボールを敷くと、タマモは寝っ転がって何もない時と比べてみた。
「後は男性用を組んだら終わりだね。この後はどーする?」
「近いですしお風呂と着替え手伝って、その後で流し台に行きましょう」
タマモは了にスケジュールを尋ねた後、苦戦する仲間たちの援軍に向かうことにした。
手分けすれば、スムーズに行けるもんね!
「ちょっと低くないですか?一度に何人かは入れる方が良いですよね」
「だってぇ、男の子はぁ下だけでいいでしょぉ?」
と言う訳で川辺に訪れると、明日夢と小梅が頑張っている。
だけれども小学生コンビの工作だもん。ちょびっと小さいよね。
「いやいや、やっぱり高い方がいいですよ。…えっと、聖歌さんお願いしますっ基準を測りたいので」
「なんで俺がって…、身長一番か。少し手伝ってくるから、円城寺には来たそうそう悪いが御祓を手伝ってやってくれ。穴掘りや水流調整はしてるから」
「良いわよ。どうせ私たちの方は終わってるし、ただの応援ですからね」
やっぱり着替えルームは高い方が良いと、明日夢は一番身長のある聖歌に要請。
了が彼の代わりにフォローに入り、お風呂を手伝う感じである。
「あらっ、もう水に入ってるの?」
「実際に体で測った方が早いですからね。トゲ落しは終わってますので、道具の受け渡しと、枠の固定をお願いします」
了はウインク飛ばして軽く挨拶すると、川の中の壬澄を手伝い始める。
既に聖歌が大半をやっていたので、岸から道具を渡したりするレベルだ。
このまま順調にいけば、滞りなく全て済むだろう。
「あれ、一人足りない?こっちも手伝いに来たんだけど」
「流し台自体は完成してるんで、煮沸水のタンクを置きに行ったんだけ…。ほら、そこっ」
着替え場所を終わらせたタマモが、ご機嫌で水着に着替えて上流にやってくると…。
優希が苦笑いで出迎えてくれる。
流しそうめん台は実に簡単で、シンプルに上から流して下で分割するだけの物。
ただ、川の水をそのままは使えないので、もう少し上の場所にタンクを設置したのだ。
「さっきの例があるんで、ずっと目の届く範囲で行動してもらってるんだ。…よし、こんなもんかな?」
「なるなる、金の竹レベルで済めば問題ないんだけどねー。じゃあ一通り完成かな?」
優希にしても悪戯の容疑者を野放しにはできない。
適当にバランスを見ながら、雪子を監視してるのだとタマモに教えてくれた。
とりあえずは今のところ問題が無いのだろう。
「をーい、おっかえりー。変なことしなかった?なら皆で泳ごっか」
「お出迎え感謝、面倒くさいですしおすし変な事はしませんよ?しかし、草薙ネキの水着は良い感じですな。フヒヒ」
手を振るタマモに手を振り返し、満面の笑みで雪子は笑った(ニヤリ)。
小麦色の肌に、さぞ『あの』仕掛けは映える事だろう。
言われた通り今は変な事はしてない。『今』はな!
必ず巻き込んでやろうとは思うが、決して胸のサイズで大きく負けているからではない(血の涙)。
●川遊び
一同は水浴びをして、夕食への流れ。
「……なんでココに?誰かのが紛れ込んだのかな」
「あ、雪子の予備ですね、サーセン(チッ)」
優希は籠に女性物の水着を見つけて、忘れ物かと思って仕切りの上に掛ける。
ソノ気の無い彼には判らないが、雪子が紛れ込ませておいたのは、女性だけではなく男の娘御用達のチューブトップだ。
悪戯に反応されるでなく、スルーされたので思わず舌打ちしそうになる。
「ダディャーナ先輩、どうですかー。さっきのとどっちか迷った結果ですた」
「い、いや……可愛いと思うよ?」
雪子は腕を下で組み、『かわいくてごめんね〜』と胸元から首筋を露出させるホルターネックの魅力を最大限に引き出す。
だがしかし、あざといまでのポーズは逆に苦笑を引きだす結果になった。
胸が無い事を心配されて、ポンポンと軽く撫でられる辺りまでお約束である。
「川沿いを偵察ぅ!」
「夕食までに戻ってくるんだよ。涼しい……んっ、気持ちいい……」
小梅は水玉ワンピースに釣り竿、そして浮輪の完全武装で上流に飛行開始。
適当な所から、浮輪に載って渓流釣りを愉しむつもりなのだろう。
優希は翼を出した彼女を見送りながら、足先で水の涼しさを感じた後、ゆっくりと全身を浸した。
彼が川に浮かんだ時、逆に陸にあがって日向ぼっこするメンバーも。
「泳いでると忘れそうになりますが、水分も大事ですので、一休み中にでもどうぞ」
「すいませんね。明日の分は私が造っておきますよ。山盛りフルーツの残りを使って、ちょっとした朝ごはんです」
先行して水辺で涼んでいたメンバーは次々と上陸し、壬澄は用意しておいたドリンクを配る。
了はお礼と共に朝食担当を請け負った。バスタオルを羽織りながら簡単に説明。
「そのまま出す物と、ドライフルーツを果汁で戻す物を並べて、味や触感を食べ比べるんです」
「ビタミンが豊富に採れそうですね。炭水化物とかが欲しくなります」
「面白そうですね。ならボクが時間次第でホットケーキを焼きますよ。偵察時間を考えたら少し怪しいですけど」
了と壬澄が朝食の話をしていると、明日夢が相乗りして片手を動かす。
フライパンを跳ね上げるような仕草が楽しいパントマイムだ。
依頼である以上は偵察は必要だが、朝食時間の方を調整しても良いかもしれない。
「そういや目撃例は朝だったっけ?こっちでも調べるが気をつけろ?お前に万が一の事があったら…俺がぶっころされちまう」
「何を言ってるんですか、黙って殺されたりなんかしない癖に。…でもありがとうございます、通りがかりの冥魔とは思いますが無茶はしませんよ」
聖歌のぶっきらぼうな心配に、明日夢は笑って肩をすくめた。
多少乱暴だが、これで良い処があるのだ。
「ねえねえ、ちょっと早いけど夕食にしようよ。ご飯の話してたら、お腹すいてきちゃった」
「まあいいんじゃねえか?軽くそうめん食って、そのままバーベキューって流れでいいだろ」
「(油断し過ぎワロタ。…なんということでしょう、楽しい流しそうめん大会が一気に如何わしいDVDの企画モノのように…フヒヒ)」
タマモと聖歌の話を聞きつけて、雪子は密かにほくそ笑むことにした。
最初の悪戯以降、監視の目を盗まず大人しくしていたのはこの時の為だ。
●白い悪夢が来る(ガ●ダムではない)
火の中から時折、焼け石を川へ放り込む。
バーベーキューと一緒に、石焼き風呂の準備だ。
「ほいほいっとね。メシ食いながら温泉なんて、どこの北欧だよって感じ」
「いいじゃないですか。そろそろ流します、位置についてください」
聖歌が火箸で次々に石を放り投げる中、明日夢は銀板に盛られた素麺を指差す。
紐を引っ張って上流側に取り付けたタンクを持ち上げれば、煮沸水が勢いよく流れてくる仕組みだ。
「そんじゃまっひとつ、いただくとするかね」
「じゃあ行きますよ。それっアレ!素麺は交代で…って、そっちはなんで流れないんです?」
「角度が悪いのかな。もう少し強く引いてみようか」
聖歌が位置についた処で、勢いよく流れる片側に素麺を明日夢が流して行くが、もう片方は何も流れない。
奇妙に思った優希が不思議に思って、少しばかり強く引くと…。
突如、何か白い液体が流れ…。
「嫌な予感が。うぇ……ベトベトする……」
「逃がしはし…。ちょ、おま…アッー!勢い強すぎワロタ…らめぇ〜ッ!」
「なんか…コレ甘いですよ?」
勇者(優希)が離れようとするのを魔王(雪子)が回り込んだ!
だが、紐を引くのが少し強すぎたか?希釈された大量のカル●スは、周囲一面を白く染める!
タマモの小麦色の肌にも容赦は無い!
「計算外はあれど、やり遂げました。…できれば先輩、そのまま頬を染めて上目使いを…」
「調子に乗らないようにね。…仕方ない、こっちはフルーツ用にして」
デジカメで写真を撮ろうとする雪子の頭にゴツンとやって、優希は一足早いお風呂へ。
そこにも流れてきているので、軽く流した後で、川で泳ぐことにした。
「お肌には良さそうですけどね。…フルーツいきますよ」
「美味しいね、美味しいねェ。…ボクもやってみるのね、覚えたらお家でみんなにやってあげるの!」
了がフルーツをカ●ピスの中に流し始めると、スタインバイしていた小梅がパクパクぅ〜。
だけれども、移り気な彼女の事。自分でもやってみたくなったそうです。
その愛らしい姿はコロリと丸のスイカを流しそうで、了はクスリと微笑む事にしました。
なんだかスイカ全部だと、一緒に流されそうですよね?
「邪魔はダメ。人間はこうするってきいた」
「野菜は雪子の物です。渡しませんよ、コッテリになるがいい」
「…残すのは勿体ないです。肉も野菜も生き物ですから。好き嫌いなしで」
BBQが始めると、タマモが野菜を取ろうとするのを雪子が奪い去る。
壬澄はお肉が苦手な彼女に多少配慮しながらも、仲裁する事にしました。タマモが言うようにバランスは大事ですからね。
なんのかんのと仲良く喧嘩して、一同は星空の下で牛乳風呂に使ったりしながら一晩過ごす。
冥魔の話も特に無く、キャンプを楽しんでご機嫌だったそうです。