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マスター:小田由章
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/03/24


みんなの思い出



オープニング

●奇妙な構図
「面白い事をされてますな」
「…ただの思いつきだ。それに前例が無い訳じゃない」
 参謀役の老教師が九重・誉に話しかけて来た時、彼は奇妙な碁盤と向き合っていた。
 種子島の地図に線を引いて、南部域へ白い碁石を乗せている。

 ただし奇妙な点とは、地図の事ではなく…誉の手に将棋の駒が握られている事だ。
「予想はつきますが、一応は尋ねて置くとして、何故そんな事を?」
「行動の推測…。いや相手の気持ちになって…というやつだな。定番だが、中々どうして考えが整理できる」
 将棋の駒は、次々と北部から並べられていく。
 南部の白石が天使の勢力を現しているなら、この駒は冥魔の勢力だろう。

 碁と将棋を同じ盤面で…というのは奇妙だが、構図としては簡単だ。
 ガッチリと南が白で覆われているのに対して、北は重要な場所だけを確実に抑えている。
 この奇妙な構図が、今の種子島を如実に表していた。
「天使側の指揮官は堅実的で、対して冥魔の方は効率重視に攻めて来る。双方の考え方は、だいたいこんな所なんだろうが…」
「…なるほど、冥魔が起こした先日の一件で、見えて来た物があると?」
 南部の天使に関しては、かなりの所が掴めていた。
 反面、冥魔に関しては効率を重視する程度しか判っていない。というのが実情だった。

 先日におびき出された罠で告げられたのは、天魔の狙いは島その物で…。
 天使は譲らないだろうが、冥魔はそこまで必死では無いと言う主張。
「冥魔の話を信じるのですか?」
「全ては無理だな。真実の一部を語ることで、より多くの真実を隠す。…それこそ悪魔の常套手段だ」
 話を吹き込む為に用意された場だ。鵜呑みにする訳にも行くまい。
 問題なのは隠されている内容だろう。
 そこまで言いきった所で、誉は少し間を置いて新鮮な空気を吸い込んだ。

●嘘と真実の裏側
「冥魔に関しては連中の本気を探る必要がある。向こうの本陣が失敗者にそれほど優しいとは思えんからな」
「本気では無いと言うのは嘘か、…何らかの言い訳を用意していると?」
 天使の件はひとまず置くと言った上で、誉は一組のレポートをばさりと投げる。
 そこにはヴァニタスの行動を中心とした、報告書の数々だった。
 効率的に進軍しながらも、時折に衝動へ駆られた行動に打って出る事があると記載され、言動や外見から来る推測が幾つか添えられている。

 不確定な情報や予想も多く、ヴァニタスの目的や行動理念の断定は出来ないのだが…。
「冥魔は不統制で勝手気ままだからと思っていたが、それも含めて計算の内だとしたら?」
「成功により『天使が狙っているもの』を横取りすればかなりの功績になるが、例え失敗しても元々が誰も注目していなかった場所だ」
 この状況ならば、マイナスにもなりにくいとでも考えたのか?
 そうであるなら、これはリスクの少ない博打と言えるし、今回現れた冥魔の性格に合致していると思われる。
 いざとなれば、ヴァニタスの独断や不手際で済むからだ。

 矢継ぎ早に話す誉の話に納得した上で、老教師は一応の反論をしてみせた。
「しかし希望的観測ではありませんか?冥魔が失点を覚悟して、やれるところまでやる気もありえます」
「そこで…さっきの本気を探るという話に戻る。敵陣営の探索を目的としたチームを作成し、冥魔の裏側を暴く」
「偵察行動を本分とするが、必要ならば戦闘や陽動申請、本土への資料請求など好きにして構わない」
 老教師の反論を予想していたのか、誉は次々に指示を下す。
 ここで冥魔に関する確信を得られれば、今後の方針を決める事ができるだろう。

●敵陣に切り込め!
 種子島北部のとある場所。
 そこは沿岸部の一つで、小さな漁港のある場所だ。
「あそこか?連行された人が詰め込まれて居るって噂があるのは」
「そうだ。ヴァニタスの性格的にワザワザ人狩りはしてないそうだが…。それでも皆無って訳じゃない。特に逃げ出す途中で捕まった人はな」
 今は無人になっているはずのその場所に…幾つもの足跡が存在していた。
 足跡はまだ新しく、人々が連れて来られて、間が無いのかもしれない。

 問題なのは靴痕が大多数だが、小鬼タイプらしき素足の足跡が混じる事だ。
 迂闊に飛び込めば、助けるはずの住人を殺しかねない。
 報告を受けた誉は、集めた生徒達を前に呟いた。
「……匂うな」
 もし、冥魔の目的が採算を取った上での博打なら、魂を集める為の準備を行っている可能性もある。
 ならば、一刻も早く助け出さねばならないだろう。
「お前達はここへ行き、住民救出と可能な限り状況を得てきてくれ」

 助けて、とどこかで声が聞こえた気がした。


リプレイ本文

●波間の陰より
 波に囚われて、岩場に押し上げられた小さな舟。
 元は釣り船だろうか?物悲しくキィキィと櫓が揺れて響く音だけが零れる。
「そこ…なら、大丈夫。顔はあまり…ださないで」
「了解。…余裕があれば、あっちの桟橋について聞いておきたいね。凄く気になる。おあつらえ向きに壊さず残してるようにしか思えない」
 すーっと頭を上げ、敵の目が無い事を確認した紅香 忍(jb7811)は、小さな体を低くして前進。
 目指すは岩場の中で視界が通る場所。
 彼の導きもあり霧谷 温(jb9158)達も問題無く進める。

「…常識的に考えればスムーズに人を運ぶ為残したのでしょう。懸念の確認も含めて冥魔勢の情報が欲しい所ですが……、とりあえず住民救助ですね」
「捕まってる人…助ける…普通の仕事。今回は…取っ掛かり、探す…問題ない」
「順番的にはそうだよね。了解、まずは救出作業と行こう。全部終わったら、今度こそ種子島リターンズ(!!)」
 最初に常識的な意見を述べて、まずは土台となる基本案を提示。
 リアン(jb8788)は優雅に砂を振い落としながら、少しだけ考えを巡らせた。
 その上で忍も言う様に、あくまで助けた上での情報収集、聞き込みはできれば御の字というところだろう。
 せっかくの種子島。面倒くさい作業は終わらせようと、温も納得して任務へと向きあった。

 忍は携帯を取り出すと、声を更に小さくして二・三の呟きを放つ。
「…配置…ついた」
『予定の場所に来てくれたから、こっちからもなんとか見えたわよ。ええ、向こうの状況は変わりなし。巡回タイミングはさっきのまま」
 忍からの連絡を受けて、漁港の入り口側で陽動班が行動を開始する。
 双眼鏡の端にチラりと映った挙動を見て、Julia Felgenhauer(jb8170)は全員にゴーサインを出した。
 そこは予め指定して置いた場所の1つであり、辿りつけた以上は問題無いと判断したのだ。

 そして…。
「行動開始。二手に別れ…囮…敵を引き寄せ…その隙に…、こちら潜入…加工場制圧…住人逃がしておく」
『ん、僕らも動き始めてる。複数の方法で合図するから、適当に動いて』
 動き始めたからか、忍の小さな声が更に遠く聞こえる。
 その返事ソイテから、走り出す仲間の後を穂積 直(jb8422)は追い駆ける
 何故、彼が少し遅れたか?
 それはメールの送信の後…、花火に火を付けたからである。

●陰ある所に光あり
 陰に潜む者が声すら潜めるなら、光に身を晒す者はむしろ派手に。
 表口から漁港を掛ける囮班は、ロケット花火の下を飛ぶように走る。
「花火が上がりました! 今頃は潜入班も動いてるから、派手に引きつけますよ」
「たまーやーって叫ぶんだっけ?了解、せいぜい派手に張らせてもらうぜ。総員、散開!後衛に近づけさせるなよ」
 チャキリと銃を構え、男達は前へ前へとひた走る。
 目指すは加工場を抜けて市場へ、戦部小次郎(ja0860)たちの目的は見張りや巡回を引きつけて、後方へ回った潜入班を動き易くする為だ。
 その為ならば多少の危険は覚悟の上だと、ロベル・ラシュルー(ja4646)ともども、銃の射程に入るや、タンタンと乱射気味にぶっ放し始めた。
「動きながらだと良い所に中々当たりませんが……、まあ当たるだけマシですか」
「囮は惹きつけるのが役目だからな。殲滅は狙えるなら…で、強すぎる奴が居るなら今回は遠慮する方向で行こう。人質を巻きこんだら、目も当てられない」
「御二人さん。まずはあそこを抑えて、ジリジリと下がるわよ。戦いがオマケとはいえ効率良く戦うに越した事は無いもの」
 確かに、楽が良いに違いない。
 小次郎とロベルは、肩を竦めて迫り来る魚人達から逃げるように動きを変える。
 ユリアが指した場所には小さな倉庫があり、繕う前の網なり小道具か何かを放りこんであるのだろう。
 漁師さんには心の中でごめんなさいよと謝りながら、魚人を相手に銃撃戦を開始し始めた。

 そんな折である、キーンと音を立てて学校行事でつきものの機械音が聞こえたのは。
 拡声器から流れる声は棒読みで、ことさらに事務的に内容を伝え始めた。
「えー。業務連絡、業務連絡。住民の方は、2階で待機をお願い致しますこちら駆け付けた撃退士です。繰り返します…」
「イザとなったら飛んで二階に翔け込むけど…色々苦労を掛けるわね」
 フルフルと首を振り、この程度は造作も無いと御祓 壬澄(jb9105)は苦労を否定した。
 現在進行形で人々は怯え、命の危険にさらされているのだ。
 その助けとなるならば問題無いと、ユリアに答えながら銃を構えて飛び立った。
「誰かを助ける為に動けるのは嬉しい事です。…あの子達も、元は生き物。ですが倒すしか手段がないなら倒しましょう」
「なら後は適当に戦って、危なくなったら後退してちょうだいな。みんな無事でないと意味が無いのよね」
 無意味に殺したくは無いが、壬澄にも戦う覚悟は出来ている。
 ただ、あくまで目的は陽動であり、助け出した後は無事に連れて逃げる事だ。
 ここで殲滅出来たとしても、増援や別口の敵に見つからないように逃げる必要、いや、助けた一般人を逃げさせる必要があった。
 その為にも無理は禁物。ユリアの言葉を受け止めて壬澄は引き金を引き続ける…。

 かくして正面の作戦は滞りなく進行している。
「こっちは順調だけど…向こうは大丈夫かな?人数次第だけど…大勢の人をどうやって運んでいる?」
 直は潜入班の心配と共に、もう一つの懸念に囚われていた。
 定期的にどこかに連れて行かれる…そんな噂がある以上は、何らかの手段があるに違いない。
 その方法は何だ?
 東北で起きた戦いの様に、何らかの方法があるのか?
 出るはずの無い答えを探して、焦りを抑えるように呪文を唱える。
 仲間を癒し、敵の猛攻を跳ねのけることで、いつかその答えが出る気がした…。

●その裏側で
 最初に見た時はいなかったのだが、流石に岩場側にも見張りは居た。
 正確に言うと見張りではなく巡回で…、その個体が戦闘音を聞きつけて街道側へと引き返して行く。
「ようし、ようし。そのまま行っちゃえ…。そうすれば見える範囲には…」
 そいつが遠ざかるのを、温は心待ちにして居た。
 倒そうと思えば何時でも倒せるが、それでは今まで潜伏していた意味が無いからだ。
 留まり続ける見張りなら、倒してしまえば済むのだが…。

 僅かな時間を無限と思えるほど感じた後で、ようやく周囲から気配が消える。
 頭の回らないディアボロの事、巡回に専念しろと言われていても、ちょっと違う状況になれば命令だけを守り切れないのだろう。
「…居ない? でも、見てくる…」
「お願いします。雲雀返しではありませんが、ここまで来たのに油断は禁物ですからね」
 だけれども念には念を入れて、忍が先行して進み始めた。
 リアンが言う様に、ディアボロの判断と移動タイミングが二重であるかもしれないからだ。
 匍匐前進の状態から少しずつ顔を上げ、中腰になると一気に陰から陰へ、岩場をすり抜けて加工場の裏手に立つ。

「くーじれったい…」
「もう少しだけ我慢してください。中に一体でも居た場合、命令を無視してつまらない事をしかねません」
 温がじれったそうに遠巻きに眺めるが、隠れて見張りに専念している奴が居る場合、迂闊に動く事は出来ない…。
 巡回に関しては有利に働いたディアボロの低い頭脳が、今度は逆に働くかもしれない。
 リアンが言う様に見張るだけだと言う命令を守れず、衝動に走って誰かを殺されても困る。
「…誰も…いない?…いい、よ」
「待ちかねたよっ。このまま住民を助けちゃおう」
「では手はず通りに」
 忍の手招きで、ようやくリアン達の静止が解ける。
 ここからが撃退士の本領発揮だ、『潜入!映画みたーい!』なんて言いつつも小声で喋り続けていた鬱憤から、温はようやく解き放たれた。
 もし見張りが居ても、動き出した以上は倒すだけ!
 ここから先は時間の勝負だと、扉を蹴破り見取り図で覚えた階段目がけて走り続けた!

 彼が階段で地上から、飛行して二階からリアンが同時に侵入する作戦である。
 これならば見張りが居ても関係ない、どちらかが吹き飛ばせば済む話だ。
「俺達は撃退士だよっ!付いて来て」
「撃退士!?助かったのか!」
「できるだけ静かに…。転げない様に移動してください。動けない人やお年寄りは、私達でお連れしますので…」
 自分が戦うのとは、別種の焦りが彼らを襲う。
 温としても潜入任務は、狙撃手として耐える仕事だと理解している。
 だが、ここから先は一般人を保護するという戦いだ。…戦ってディアボロを倒す事は容易いが、一撃も浴びせない覚悟で守り続けるのは想像以上にキツイ。
 我先にと階段へ向かう人々を誘導しながら、リアンは優雅さを武器に人々へ冷静さを呼び掛ける。

「とは言っても、静かにし続けて貰うのは無理っぽいよね。だから…」
「…警報を、利用するの? …了解。…代わりに殿軍は…引き受け…た」
 温はそう言って階段の傍にある配電盤近くの非常ベルを指差した。
 住民たちが出た後でベルを鳴らして、まだここに居るぞと名乗りを上げて、敵を引きつけるつもりなのだ。
 ならば敵を引きつけて去る役目は任せてと、忍は退路を計算し始めた。
 目を欺いて逃げ切るのは忍者の得意なのだから…。

 やがて鳴り響くベルと同時に、『もう一人』の忍が動き始めた。
 その間に本体は少し離れた場所に移動し、倒されても逃げ水が引くように…少しずつ逃走を開始する。

●幽霊船あらわる!
 既に1チームか2チームか判らないレベルで、迫る魚人型を撃破。
 所詮、相手はディアボロのみ…このまま何事もなく脱出できると思った時…。
 彼方に不思議なモノが現れた!
「なんだ、アレ!?でっかい船みたいだけど、何時の間に…」
「今日の潮に乗って…。この場合は隠れてですかね?やって来たのかと」
 仲間達が驚愕する中、壬澄は手帳を取り出して冷静に観察した。
 この位置からでは見えないが、満潮に隠れて潜水しておけば、接近に近づかれないハズだ。

 その言葉にハっとしたのか、再び双眼鏡を取り出した者が居る。
「…そうみたいね。貝殻は取ってるみたいだけど、全身から水が滴ってる…。アレは、思ったより大きなディアボロなのかな?」
「近づいて見ないと何とも言えないけど、住民を移すつもりなら、回数を分けるとしても大きいと思う」
 幸いにも近くのディアボロは、雑魚と言って差し支えない。
 ユリアは仲間にフォローを任せると、雷鳴の剣を消して双眼鏡で確認を始めた。
 攻撃を続けて一手・二手早めるよりも、もっと危険な魔の手から、全員を助ける方が重要だからである。
 直は彼女に攻撃が行かない様に注意しながら、懸念が当たっていた事を悟った。
 移動用のディアボロで乗り組員も水陸両用なら、搭載量も移動力もかなりの幅が効かせられるだろう。

『と言う事は桟橋もアレに乗せる為に残した?あった方が乗り込み楽だし…』
「可能性はあるかな。僕らみたいに見つけちゃう人も居るはずだから、妨害を嫌うならさっさと詰め込んだ方が良い」
 パーティ回線の為に繋げっぱなしにして置いた携帯から、温の言葉が漏れる。
 岸壁に横付けして乗り込ませる事もできるだろうが、スムーズに行くかは別だ。
 ヴァニタスや下級悪魔を指示や管理の為に付けて置くのも馬鹿馬鹿しいだろうし、自前で作るならともかく、既にある物ならば残しておくだろう。
 直はそう説明しながら、他にも用途や、存在を示す証拠が無いか来た道を見返し始めた。

「いずれにせよ、話は後です。助けた人を守り切ってから、可能な範囲で質問してみましょう。今はこの子たちを倒さないと」
「だな…。これで煙草がふかせると思ったんだが、まあ良いさ。後退戦闘するなら、さっさと片つけないとヤバイぜ」
「そうですね。さっきとは逆に、是が非でも殲滅しないと…」
 探している暇は有りません…。
 壬澄はそう告げながらも、まずは人命優先、必要ならば後で戻って来ようと決意を固めた。
 今は群がる魚人たちを先に倒そうと、仲間が狙った相手に照準を合わせ、一体でも早く倒せるように攻撃を掛けた。
 ロベルも同意して、頭の中で優先順位を切り替える。
 牽制に向いた銃から、小次郎たちは近接と攻撃力に長けた剣へと持ち替え…温存しておいた攻撃魔法を次々と叩き込んで行く。

 幽霊船とでも言うしかない…不気味な船の出現により、戦闘は振り出しに戻る。
 現時点では戦局は有利なものの、『できれば倒す』から、『速やかに倒す』への急激なシフト。
「さっきまで余裕だったんだがな…。出現されただけでコレとは。何度も現れるなら倒すか逃げるか悩むとこだ」
「今回は言っても仕方がありませんよ。本格的に参戦されたら始末に負えません。さっさと逃げましょう」
 接近されるまでに追う足だけでも仕留めようと、ロベルや小次郎を中心に撃退士たちは光柱に魔弾にと、大攻勢をかけた。
 現れただけでこの有様、水上なり空中から遠距離砲撃されてはたまらない。
 火力は全開、治療は終わってから…。
 刻一刻と迫る期限の中、薄氷を踏む思いで勝利をもぎ取った。

●凱歌では無く、情報を持って帰還せよ
「全員居るか?捕まってた人も、仲間もだ」
「ちょっと待ってください、忍さんが遅れてます。あの船に撃たれた後遺症かも?」
 漁港を後にして、ロベル達は後ろも見ずにひた走った。
 その間にユリアは汗だくになりながらも、仲間たちの様子を確認して報告した。

「…問題…無い。あれは分身」
「心配しましたよ。…あれが一応のボスって奴ですかね?何か聞いてみました?」
 追っ手の確認をしていた忍が、ぽつりと呟いて撤収終了を報告。
 小次郎は安堵のため息を漏らしつつ、潜入班が聞き出して居るかを尋ねる。

「あんまり大きな船じゃないから、定期的に訪れてるくらいかな?」
「誰か落ちついて居る人から、何時捕まったとか、何処に連れていかれたか聞けますか?」
 温は可能な限り思い出そうと、どうだったかな…と唸る。
 色々と聞いたものの、十数人も居ては不明確だ。
 壬澄は1つずつ順序を追って、情報を整理し始めた。
「頻度は割りと高目のようです。ここを見つけたのは偶然ではなく、数か所あるのかもしれません」
「かもね。それほど大きくなかったし…。離島を確保して中継点にしてるのかな?」
 足の悪いお年寄りの面倒を見ていたリアンに尋ねると、おぼつかない話しながらもお年寄りから聞き出せたようだ。
 どうも完全にディアボロ任せ立ったようで、直にはどうも本命とは思えなかった。

 おそらくは…、何処かに冥魔の隠し基地でもあるのだろう。
 幽霊船を待ち構えて撃沈するか、それとも基地を見つけて叩き潰すか?
 調査隊の前に、1つの選択肢が浮かびがった…。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

クリームパンの皇帝・
戦部小次郎(ja0860)

大学部4年70組 男 ディバインナイト
良識ある愛煙家・
ロベル・ラシュルー(ja4646)

大学部8年190組 男 ルインズブレイド
Lightning Eater・
紅香 忍(jb7811)

中等部3年7組 男 鬼道忍軍
リコのトモダチ・
Julia Felgenhauer(jb8170)

大学部4年116組 女 アカシックレコーダー:タイプB
伸ばした掌は架け橋に・
穂積 直(jb8422)

中等部2年10組 男 アストラルヴァンガード
明けの六芒星・
リアン(jb8788)

大学部7年36組 男 アカシックレコーダー:タイプB
撃退士・
御祓 壬澄(jb9105)

大学部2年32組 男 インフィルトレイター
黒い胸板に囲まれて・
霧谷 温(jb9158)

大学部3年284組 男 アストラルヴァンガード