●さあ行くぞ、●●さんたち!
間も無く出撃のお時間、狭い休憩所は友達同士で隣り合う。
「咲さんと一緒なの、です」
「鎌は大振りになって動きを読まれ易いから、上手く隙をついて〜。後は何があったかな」
えへへ…一緒一緒、嬉しいの…。
華桜りりか(
jb6883)は自分よりも大きな鎌を揺らし、コチンコッチン、隣の子にくっついた。
大鎌を振って見せながら落月 咲(
jb3943)は、大丈夫かなあ?とか思いつつ…。
自分を頼ってくれるのは嬉しいので、つい先輩風を吹かせてしまう。
そんな二人は小動物が寄り添う様で…。
見てる方も出撃前だと言うのに、つい微笑ましくなった。
「えへへニ号〜!私達も、おそろですっ」
「そうだね…。君の方は回避型が命中型と戦うし、相性もあるから注意が必要だよ?」
青鹿 うみ(
ja1298)は羨ましくなって、チームメイトへ走り寄る。
彼女があまりにも嬉しそうに話掛けて来たので、那斬 キクカ(
jb8333)は考え事を中断。
良く似た装備構成を見ながら頷いた。
「あれれ、何か気になることがあるんですか?私で良ければ…」
「うん、ちょっと…でも偵察を頼むほどじゃないから」
「…?」
うみは気になったので、キクカの視線を追ってみた。
見つめられた龍玉蘭(
jb3580)は、思わず首を傾げる。
「普通にフル装備ですよね。でもあのドレス可愛いなぁワンピかキャミソで安かったら、絶対買うんだけど」
「そう。フル装備なんだよね。(これから暑い奴と戦うのに…)」
女の子らしい感性で、うみはあんな服ほしーなー。
お金溜めて…なんて思うのだが、この時…キクカは玉蘭に影響されてしまう。
うみには何を言っているか良く判らないが、後で驚く羽目になる。
「…ディアボロさん達の能力…一応対策は考えてはみましたができれば使いたくは無いですねぇ」
「特殊能力が強い敵さんですか〜…厄介だね。気を引き締めてかからないと、だね」
向けられた視線が何なのか判らないまま、玉蘭は相対する敵の事を想定。
準備は万端、切り札も用意はした。
だけど、切り札は使わずにおくのが良策ですよね〜。と同じ準備をしている針尾 碧(
jb8504)も納得する。
彼女たちは大変な切り札を用意しておりました。
●勝てば温泉、負ければ…
「転移したか…。日の下で生きられない人間が太陽に向かう…か。…笑えるね」
到着と同時に、彼方に敵影を見つけて御剣 真一(
jb7195)は瞬転を開始した。
魔力全開でアウルを灯し、身体の奥底から隅々まで膨大な力が支配する。
その暴力に負けぬ様に抗いながら、獣とも人ともつかない力で、彼は人々を守る…。
…彼が黄昏てるのには仕方のない理由がある。
弱点である御日様の下、…加えて周囲は全員が女の子という羨まけしからん状況。
途方に暮れて歩くのも無理は無い。この太陽の下、彼の立場は何処にもなかった。
そんな彼の心とは裏腹に、状況はさらに加速して行く!
「ややや、来ました。暑かったり寒かったりな敵を倒して温泉宿を守るー!このままでは、えーぎょうぼーがいもいいとこですの」
万里だって温泉入りたい入りたいっ!!
そしたらそしたら、あんなことやこんな事して…。城里 万里(
jb6411)が温泉ならではのスゴイ!(↑)方法を聞きこんで来たらしい。
だが思った事がダダ漏れでは、男の子が居たたまれないのもしかたあるまい。
「…笑っていられるのも今のうちです。覚悟なさいっ!勝って兜の緒は温泉で緩めるのです」
「「おー!」」
「……デスヨネー」
そんな彼女の言葉を聞き、他の女の子たちはやる気を出す事にしました。
男の子は冷静に傍観を決定したとかしないとか…。
「終わったら温泉だって。頑張ろうねぇ〜うちらで洗いっことかしよっか」
「む…しっかりとたおさせてもらうの、です」
咲は自分の後ろに隠れて、人見しりする友人に、リラックスリラックスと声を掛ける。
りりかの方は咲が笑っているので、自分も合わせて笑う事にした。
今はギコチナく造り笑いに近いけど、きっと後から本当に楽しくなるだろう。
●けもなー戦隊!?いいえ、違います!
「また後で!」
「了解。それじゃ、皆いくよ」
戦闘を切るのは忍者装束の二人。
うみとキクカは先頭を走り出すと、軽く目を合わせて逆方向に別れた。
敵する冥魔は笑い仮面、黄色と白の二体である!
うみ達が向かったのは、黄色い方。
突如ダッシュを止めて御札を弾く!
「あちらに向かわせない様に、間合いに気をつけましょう!」
「ならば、こちらの短剣使い、正面は私がお相手しましょう。」
うみと入れ替わる様にして、突っ込んで来た玉蘭の影から…。
氷の刃が襲いかかる!
それが自分に突き刺さることなど思いもせずに、玉蘭は軽くジャンプから全体重で圧し掛かる!
ランスを中心に重量を掛け、開いたガードに氷の刃が深々と突き刺さっていた…。
黄色く、太陽を模した笑い仮面の隣に、もう一人が回り込んだのはそんな時だ。
「ギィ…」
「他所見をしている暇はないですよ。猫科は夜行性、日が昇ると眠くなる…」
そこには、真一がトンファー構えて立っている。
短剣を翻す前に、決め?台詞を言いつつショートステップで更に前へ出た!
「おかげで朝が起きれないから午前中の授業に出られない…。だから僕は太陽が好きじゃないのですよ」
無意識の内に身体を動かしながら、右でガードをこじ開け左で打ちこむ瞬時の連撃!
そのまま脇へサイドスキップ!流水の動きとは、まさにこの事であろう。
八つ当たり気味の台詞を繰り返し、太陽を模した黄色の笑い仮面をぶちのめす!
このまま戦いは有利に進むかと思われたのだが、流石にディアボロは強かった。
「さっ寒いですねぇ。このままではピンチですぅ、りりか…。ここはアレの出番ですかねぇ」
「あの…えっと…んと…う…ん。へ…っへ…ん(ぼそっ)」
鉄塊があたればそりゃあ痛そうだ、なので思わず避けてしまった白仮面班に、寒気が襲いかかる!
ブルブル震えながら咲は、御友達をそそのかして…。
じゃなくて促して、一緒に奇妙なポーズ。
「「へんっ、しん」」
咲、りりか。
二人がちょこんと、肉球の様に指先を、心を重ね合わせた。
そこにフラッシュバックの眩しい煌めきなど無いが、読者の心の中ではきっと輝いて居る!
「あっあっあ!待って待って。万里もご一緒します〜」
「…やっぱり皆着るんだね。良いだろう…。ディアボロ君、実に君は強敵だね。故に私も本気を出させて貰うよ。獣の野生を魅せてやろう…変身!」
二人が可愛らしいポーズを決めたことで、万里の心に焦りが走った。
大慌てで自分も心のトリガーをキック、声とハートを高めながら、唄いあげるように調子を整える。
キリカも軽き脳裏に描いた無限の彼方より、モコモコした荷物を取り寄せる!
「暖かい…これが野生の力か」
「ばん…。じゃなくて、戦場の治癒天使ラビエルが荒んだ心も癒しますのっ★」
「もー、ここは合わせる所だよねえ。いっしょに台詞をいいなおそ?着ぐるみ戦隊〜、ふふふ〜。ほらほら、リピート」
「き●るみ戦隊、にゃんこ(ピンク)なの…」
ここに4人の力が結集した。
だが台詞が合わなかったので、もう一度ポーズと台詞を決め直す!
彼女たちは、自由気ままなケモナーではない!
そう、彼女たちこそが!
「「「「着ぐるみ戦隊、参上!!」」」」
おー!X4。
うさぎ、ねこ、くま、うさぎ…4人の着ぐるみガールが、ここに見参!
冥魔を倒すぞと、可愛らしいポーズを決めて揃い踏み。
●着ぐるみの次は…
「さあ、着ぐるみ戦隊の反撃開始だ!」
でいやー!
キクカはジャンプ一発急激な上昇を掛けると、嬉しそうに急降下を開始した。
その様子はまるでリミッター(ネジ)が外れた様で、実に微笑ましい光景だ。
ぽーいーんと弾かれてもなお、向かって行く!
「ぷぇ…、歩きにくいぉ」
「…じゃあ、後方を巻き込まない様にしてーいきましょうかねぇ。言った事を覚えてますかぁ?」
「うっ、うん。タイミング、を、…じゃなくて、おおぶりに、気をつけるの、ですよね。爪(鎌)の切れ味試してみるの、です?」
後ろの方で、白と黄色の分断役をしている万里、…いや、治癒天使がプルプルと震えだした。
ラビットのラビエルから、癒しの大天使に昇進するのは何時のことだろう?
そんな光景を見つつ、仕方無いですよねぇ〜。とか言って咲は友達を連れ出す事にした。
りりかは引っ込み思案だけど、ここで来てやれない子じゃないよね。
「貴方だけが特殊能力を持っているなんて思わないでほしいの、です。……行くの、胡蝶…」
「行きますよぉー。そーい!」
りりかの刃は、途中で砕けて無数の光になった。
振り回すバトンの先で、光は蝶になって一生懸命に飛行を開始。
それは前方を行く咲の周囲に追いついて、目を引きつけてくれてる彼女の援護として、次々と白仮面に群がり始めた。
仮面を覆う蝶を追い払おうと、もがく白仮面。
その様子に、二体のディアボロの中間に居る三人の少女は、互いに顔を見合わせて頷き合った。
「万里達で合流に気をつければ、このまま行けそうですね」
「うんっ。お互い頑張りましょうね。針尾さんも気を付けてっ」
「そうしたいけど…アレ。やっぱり、有名なあの童話を思い出すね」
分断を心がけ、背中合わせだった万里・うみの二人は、思わず同じ方向を見てしまった。
碧が指差すその先で、黄色と相対する仲間がアツイアツイと言いながら、戦闘中に服を脱いでいる!
ちらりと捲れあがるドレスの裾野。
そして、その絶対領域から必死で目を反らす若者の光景が!
「こ、この能力…結構堪えますね…仕方がありません。少々、時間を稼いでください。できれば見ないで頂けると助かります」
「それは少し無茶が…。いえ、可能な限り努力をします。できれば手早くお願いしますね」
羞恥心とか、そう言う言葉はこのさい投げ捨てよう。
我慢の限界に来た玉蘭は、顔を赤らめながらドレスを脱ぎ捨て白い肌を晒し始めた。
戦闘中に困りますと言おうとして、真一は途中で目線を反らせつつ戦いに専念しようとする(無理だけどな)。
火照った身体に紅い頬、ここでNOと言ったら男じゃない!
まして、ドレスの下からは、神器:体操服が出て来たのだ。
「早く…早く着替えてくれれば、この将熱地獄も直ぐに…」
真一はそんな事を思いつつ、短剣の連続攻撃をなんとか受け止める。
その度に暑くなり、必死の思いで次は避けようと祈るのだが…。
真一が一般常識を信じると言う時点で失敗だった。
「まだですか、こっちはそろそろ限界が…」
「すいません、やせ我慢をした分だけ、次の限界が早いみたいなので…。もう一枚だけ…」
えー!?
●MI・ZU・GI!
「…よもや私に此処までさせるとは…只で済ます気もありませんでしたが…その身をもって思い知らせてあげます」
「えー!あの下、水着だったんですかー!?って、こっちに来た!?」
「そうですよ?例えば…」
玉蘭は上着全てを脱ぎ捨てた。
そこには身体を覆う水着一枚!
うみが驚いて居る間に、黄色の仮面が急接近!!
碧が横入りして炸裂札を足元に投げ、援護することで移動を停止させる!
だが、その行為は返って注目を引いてしまい、今度は彼女に急接近してきた!
「あ、あぶなーい」
「大丈夫っ。こんな事もあろうかとっ!水着を用意してきたから大丈夫だもん」
てれってー!
服の活性化を止めて、碧までもが水着姿になった!
そういえば、彼女たちは混浴の心配などしてなかったぞ!!
「なんでも良いから、早く救援をお願いします」
「回復が届くので、今すぐ癒して差し上げますね。万里が癒せるのはこの手の届く距離っ!」
射程が伸びれば、即ち、ぱわーあっぷ!
今の内にと真一は援護を要請、白側の最後尾…というか、中間地点に居た万里が肉球で顔を覆いながら治癒してくれた。
そんな彼女に、こっちは水着会ではないです言いながら、お礼だけは忘れない。
ここまでくれば、勝利は目前。
何しろ、特殊能力を封じたも同然である!
「ふふふ〜、わかりやすいお仕事でいいですねぇ」
「咲さんとお揃いにしたの…上手に使えていた、です?」
「Yes、上手だったよ。…そして私達の勝利だね」
ウサたんとニャンコさん…。
咲とりりかは一緒になって、両側から斬りつけて、鈍重な白仮面にトドメを刺した。
キクカは二人の雰囲気を壊さない様に割って入り、勝利を祝う。
白い仮面は着ぐるみ戦隊によって打ち倒された!
●塩温泉
黄色仮面が水着によって倒されたのは、そう時間が掛かった訳では無い。
なんだか変な表現だが、気にしてはいけない。
「ふー、汗かきましたっ。温泉、入りたいですねっ」
「もちろん温泉入っていきますよね?がーるずとーく★ をするですのっ!」
「そういえば、おあつらえ向きに温泉がありましたね」
うみが開いた旅の栞には、確か塩温泉とか書いてあったはずだ。
海水を引き込んで温めて居たり、熱した砂で砂浴もをしたり。
万里はモチの論なのですと大張りきりで、水着をどうしようか悩む玉蘭を引っ張って行った。
そしてお待ちかねの塩温泉!
「むぅ…スタイル良いの、です」
「そんな事無いよ?私も変わらないよ?どっちかと言うと、切実なのは…」
「あたいを見た上で、そんな事言う口はどの口だ〜」
りりか・うみのちっぱい組は、先遣隊のちっぱいさんを眺め見た。
彼女は年上で、…ナンだ、胸は気にするな。
「ひっ。ひゃあ…。た、たす、助け…」
「駄目駄目。人みしり直したいって言ってたよねぇ?そーいえば、塩温泉に浸かる前には、傷を直しとかないとツライですよぅ」
「回復魔法は種ギレなのです。ですがっこんな時にこそ、このマッサージクリームの出番!」
りりかが逃げ出そうとした時、無情にも咲は敵に回った。
万里と共には塗れば傷が痛く無くなる…ついでに部分的に大きくなるかもしれない?というクリームを手に挟撃する!
「おっ、大きくなるのか…」
「気になると言う事は、意中の男性が居るのかな?例えば今回一緒の子とか?」
「ほへー。それは聞かせて貰わねばいけないよね。あのドレスは何処で買ったのかとか、ここで美味しい物とか、いっぱい聞かないと」
「ああ、あれはですね…」
先遣隊の女の子が気にし始めると、キクカが飛びついた。
その話に食いつきながら、碧はマイペースに方々へ耳を傾け聞き込み開始。
玉蘭の説明を聞きながら、次は誰から聞きだそうと考え始めました。
え、真一くんですか?
「…酒が美味しいですね」
「うめえが。半分くらいは上がって呑むか…」
「湯あたりしそうですしね…」
本当は水着で混浴OKなのですが…。
北風と太陽ではありませんが、あまりにも温かな女性陣の話題に押し出されるように…。
居心地の悪い男性陣は、壁を挟んで向こう側に居ましたとさ。