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マスター:小田由章
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/01/24


みんなの思い出



オープニング

●血河山屍の陣
「冥魔の介入を防ぎ、同時に撃退士の援軍を阻む。その為には多少の消耗は…仕方無い」
 紅の天使は、自らの血を振りまきながら、それを霧状へと替えた。
 紅い霧は薄く広がって、辺りに柔軟して行く。
 それで大した事はできないし、人間が立ち入っても…基本たいした害は無いのだ。
「これで私は戦力としては此処で脱落だな。口惜しいとは思うが…。だが全ての敵は通させん」
 バタリ、バタリ。
 紅の霧の中で、偶然か必然か入り込んだディアボロが苦悶の表情で落ちる。
 一匹、また一匹と、潜伏して居ようが堂々と走り込もうが、時間が経過した後に残る者はいない。
 そう、この紅霧の中では人間はまだしも、冥魔やそれに近い能力を身につけた者は、少なからぬ影響を及ぼすのだ。
 長く居続ければ、死すら免れないほどに。

●漁夫の利を狙う猟師は、血の河にて…
「あ、ああ…また落とされた。酸には見えないし、あの中は毒なのか?」
 研究所を彼方に臨む場所で、魔性の男が端正な顔を歪めていた。
 偶然を装って送り込んだ偵察用のディアボロは、ばたばたと落とされて、連絡を寄越すどころではない。
 このままでは、立ち入りを許された事を良い事に、好き勝手をした手前ただでは済まされない…。
「ど、どうする。このまま何も成果が無かったじゃあ消される…。あの中で何が起きてるんだ?もしかして、天使の奴らが失敗しているツケを取り戻しにきてるのか?まさか街一つを消したあの話…」
 ガリガリと頭をかきむしりながら、ようやくその考えに至った。
 同じ四国に立ち入りを許された冥魔の中でも、卒の無いコー・ミーシュラがある程度見抜いたのに対して、コンチネンタルはその辺の才能がサッパリだったからだ。
 ヒステリックに近くのディアボロを殴ろうとして、それが貴重な護衛で有る事を思い出した。
「マズイまずい、何も邪魔が出来て無い!くそっ、せめてもう少し戦力を連れて来てれば天使を人質に…ああ、それも駄目だ。天使の捕虜なんて何の役にも立たなかったじゃないか。迂闊な連中が撃退士にさえ負けたりしなければ…」
 このままでは消されてしまう。
 消されないとしても、所詮その程度と使い捨てられるだけ。
 こんな運命は許せないし、自分をそそのかした上級悪魔たちも許せない!
「…待てよ。そ、そうか。あそこには撃退士たちが一杯いるじゃないか。相性次第で天使より強いんだよねぇ♪彼らには是非とも頑張ってもらわないと…」
 死にたくない、死ぬのは嫌だとみっともなく喚いた処で、コンチネンタルは気がついた。
 状況次第で天使も倒せる撃退士が居るのなら、自分が犬死に覚悟で出向く必要など無い。
 彼らにとって、状況打開に必要な状況と言う物を、他ならぬ自分が整えれば良いのだ…。
 思いついた策を実行する為に、コンチネンタルは行動を開始した。

●紅い霧の中を進め
「あーもう。さっさと研究所まで辿り着きたいのに…なんでディアボロなんていんのよ」
「せっかく近くに居たのに、これじゃあ手助けする時間が無いかもしれん…」
 研究所近くを巡回していた撃退士が、巡回を打ち切ってささやかな援軍として直行していた時…。
 天使の臭いに偶然誘われたのか、それとも偵察に来ているのか…。ディアボロを見つけてしまった。
 見つけた1体目は即座に倒せるレベルだったが、次のは勝てないとばかりに逃げ出される。
 それなら別の方向に逃げれば良い物の、よりにもよって研究所の方向へ逃げ去るのだ。
 もしかしたら研究所の偵察なり、サーバントを見つけただけなのかもしれないが…、急いでいるメンバーとしては、面倒が増えただけである。

「このままじゃあイタチごっこだ。サーバントと出会わない内に、全力で走るぞ!」
「おっけ、あたしの足なら簡単にっ…」
「待て、様子が変だぞ!」
 ディアボロは足が速い部類だが、俊足の者が全力で行けば追いつけないほどじゃない。
 三すくみで面倒な事になる前に、さっさと倒そうとした時…。
 走っていたディアボロが、突如として苦しみ始めた。
 即死するほどではないが、明らかに苦しがっている。それでも何かを探しているのは、おそらく偵察用なのだろうが…。
「毒か、天使の俺が大丈夫ってことは…冥魔だけ…?いや、お前は用心しては下がってろ」
「了解。天使の仕掛けたトラップなら、あたしら人間もヤバそうだもんね」
 巡回メンバーはカオスレートがマイナスの者も多く、仕方なく本部へ連絡を出す事にした。
 代わりに必要な情報は全て集める為、外周をグルっと東から南へ移動して行く…。

「急報だ!南東に紅い霧が発生した。この中では天魔生徒を始めとして害になる毒で充満している!このままでは大規模な援軍を出すどころじゃない。これを排除に向かってほしい」
「ってことは、じわじわと広がってんのか?仕方ねえ」
「それもあるが、秘密裏に『雫』を、第二霊査室に移動させる作戦が行われるそうだ。東棟の安全を確保する為にも、この霧は確実に晴らさなければならない」
 連絡のあった本部では、急いで研究所の内側からトラップ排除班を出す事にした。
 天魔生徒や忍者が混ざる事もあるだろうが、少数の転移で基点に近い場所から探せば最小限の傷ですむ。
 だが、このまま放置して広がった場合…。大規模な援軍を出した時に明らかな問題となるだろう。
 増援を検討している段階で躊躇する訳にも行かず、動けるメンバーが急遽呼び集められた様である。
「現地で起点となるアイテムなり魔法陣を探しだして壊せばOK?」
「そうだ。迷い込んだディアボロは最悪放置しても構わん。だが、サーバントは必ず要るだろうから、気をつけろよ」
 カオスレートがマイナスの者に強く効く毒があるなら、ディアボロは放っておいても死ぬだろう。
 だが、そう言った者にしか効かないのならば、絶対にサーバントが守っているはずである。
 これを探し出して倒す事は、難しく無いのかもしれないが、非常に神経を使う仕事になるだろう…。


リプレイ本文

●紅い霧
「基点が割れてるならそう難しくはないと思いたいけど、敵の情報がないのが困った所だね」
 研究所の南東で、撃退士達は紅い霧と対峙する。
 既に駐車場全体を覆い、広がる気配すら見せていた…。
 待ち受ける危険に黛 アイリ(jb1291)は眉を潜める。自分の様に全く影響を受けない者が居るなら、その為の邪魔は確実にあるはず。
「真っ赤だねー、中が見えないし気味が悪いねー…」
 あの霧は…、なんだか不思議な気配がする。
 苦笑しながら、紫ノ宮莉音(ja6473)は後ろを振り向いた。

「ルーガさんたち、気を付けてくださいね。…危なくなる前に呼んでね、絶対だよ。絶対だよ?」
「ああ。ちょっと待ってくれるか?『【ぴんち】駆逐されそうなう(;´∀`)』…と良いぞ」
「せっかく調整してるんでしょ?外すのは止めなさいな…」
 調達の為、後から駆け付けた仲間に、莉音は大切な事なので二度念を押した。
 話を適当に聞き流したルーガ・スレイアー(jb2600)は携帯を弄りながら、装備をつけたり離したり。
 その度に彼女が顔色を一変させるのを見て、田村 ケイ(ja0582)は忠告しておいた。
 紅い霧からは、神社でも滅多にない清浄な気配がする。

 消毒液ですらここまで不自然ではあるまい…。
 普通の人間である自分が居心地を悪く覚えるほどなら、冥魔である彼女はより一層だろう。
「判ってる。一刻も争う事態だ。余計な事はせんさ…。『はぐれ悪魔のルーガ、神聖なる霧の効果に戦慄(;´∀`)!』っと」
「だいじょ……中も赤いわね。居心地悪いし、視界も悪いし、さっさと見つかればいいのだけど」
「まさに五里霧中ってやつだな。どれ、いっちょ晴れ間を作りにいこうぜ」
 念押ししようとルーガ近づいたら、呟き記事の中身が見えた。
 もはや心配も要るまいとスルーする事にして、ケイも他の仲間に続いて霧の中へ。
 その様子を見ていたらしい向坂 玲治(ja6214)が肩を竦めて、相槌と共に軽口で出迎える。

●霧の中
「まったく、どうにも息が詰まるな……。そっちは大丈夫か?」
「とりあえずはね。…ちょっとだけ待って置いてくれる?後ろの方でも実験してるしね」
 玲治はケイの返事を待たずに、視線を周囲へ。
 …彼女が腰を屈めて蛍光シールを張っているのと同時に、突風が吹き荒れていたのだ。
 首元を緩めながら紅い霧に辟易としつつ、念の為に警戒。

「春よ来い〜、ventus〜!」
 集うアウルを中心として、エマ・シェフィールド(jb6754)の周囲で風が渦を巻く。
 指先に集う最中は微風であったが、押し出される時は烈風と化していた。
「晴れたかー?」
「駄目駄目ー。ボクの力でも霧が晴れないって事は、霧に見えるけど自然現象じゃないんだろうね〜」
 突風が止むのを待って、後ろの光点に声を投げる。
 玲治は捲れあがっていたワンピースが無事な事を確認すると、移動を再開しようと声を掛けた。
 判ったーとが元気よく返事が返って行進の再開だ。

 っとその前に、列の反対側に御電話をしよう。
 一同の反対側ですら、姿はともかく確かな様子が判らないのだ。
「はいはーい。エマだよー。ボク達の位置判る?」
「はぁい。小梅なのぉ。ボク達の位置からはぁライトと人影くらい?…ちょっと待てってね」
「…っとみんなの反応を見つけたよ。…あと、外からこっちにヨタヨタと一つ」
 だそうですー。
 エマの電話を白野 小梅(jb4012)が受け取って、パーティラインが機能している事を教えてくれる。
 その後、少しだけ間があって…。んしょっと背伸びする可愛らしい掛け声の後で、アイリの声が聞こえて来た。

「これって例のディアボロだよね?」
「向こうから襲ってこない限り戦闘はなし。こちらが不用意に囲まないよう気を付けましょう」
 アイリの確認に、ケイは予定通りに無視しましょうと答え…。
 追い込まれた冥魔が、向かって来る事にだけ注意を促す。
「だな。このまま探索域を狭めて解決。その後に生きのこっていたら退治って事で旦那も良いだろ?」
「ああ、それで問題無いよ」
 玲治はその意見に頷きつつ、その間に周囲を警戒してくれたディザイアにも確認。
 彼は用件が済んだ事を確認すると、仲間が描いた地図や、残された蛍光シールを見て、もう一度頷いた。

「探知魔法も目印も、見え難い中では本当にありがたいな。時間を掛けてもなんだし、当たりを付けた段階で、一気に動こう」
「迷子はぁ大変だもんねぇ。もぉ!…霧なんて出してるぅ、悪い子はぁメッするもん」
 外延だとか見え易い場所にはないだろう。
 ディザイアは中心点や巴位置など、その代理候補数点の数点に絞り、速やかな処理を要望した。
 全員で途中途中を確認すれば、直行してハズレていても、大きく絞れるはずだった。
 ぷんすかぴー。と可愛らしい怒り方で小梅も賛同しながら…仲間を追いかける。
 ちっちゃな彼女としては、遅れないでいるだけで精いっぱいなの。霧なんてメッ!

●霧より伸びる、紅の影!
「全く、歩くのにも一苦労とはな。…早い内に探したい物だ」
 口元を覆ってみても変わらないので、ルーガは気晴らしに(いつもの様)に携帯を弄る。
 思わずGPSを確認する前に、『冥魔用バルサ●とは…とんでもない世の中だぞー』と呟いてから地図確認。
 地図につけたメモには、今まで通って来た場所のサインと、自分達の位置情報がピコピコ。

 一同は警戒網を造って、一息に中心点らしき場所を目指す。
 そこに待ち受けるモノは…。
「でも。こんな中を偵察にディアボロが入ってくるなんて、僕らと同じように基点を壊そうとしてるのかなー?」
「そうだな。壊すか、サーバントを倒そうとしているか…。(どうしたんだ?)」
 方位磁針を使って、少しずつ地形を確かめる莉音にルーガは近寄る。
 ドヤ顔で携帯に映ったGPSを示し、『こんな事も出来ちゃう。そう、アイフォ●ならね♪( ´∀`)』と、顔文字付きで説明してあげた。
 ゲートに準じてるかもしれないからねー。と切り返し、ドヤ顔をどう封じた物かと悩んで居ると、少し奇妙な反応があった。
 莉音が突如として顔色を変えた事に気付いたルーガは、小声で尋ねる事にした。
「(奇妙な反応がある…。もしかしてコレ、サーバントやろかな)」
「(それは相手をしてやりたい処だが、…いよいよ基点が近いと言う事だし、担当分けに従おう)」
 探知魔法に示された、新たな生命反応。
 莉音の言葉から察し、ルーガは素早く移動を開始した。

 後は発見次第、戦うのみ。
 ただし、一部の者だけが…戦うのだ。
「あちらに敵影…悶えてる様子もないし、サーバントっぽいわね。後は任せるわ」
「任せて置いてくれ。俺達が張りついて、必ず止めて見せる」
「そう言うこった。どれ、一つ天界側に踏み込んでみるか…」
 白色のライトが、霧の中で蛇の鎌首の様な様何かを写す。
 それが腕の長い甲冑だと気がついて、奇妙な反応だろう…と判断したケイは歩調を変え、緩やかに列を離れると捜索を続行する為に移動する。
 彼女たちには行かせぬ。とディザイアは巨大な手甲を掲げて前に出た。
 同様に玲治は闘気を纏い、その身へ眩い光を纏わせる。

 ここまでは順調かと思われた、その時!
「…っ!もう一体、奥に隠れて斜線状に居るよっ!」
「かー。流石に都合よく一体なんてこたあねえよな」
「だがしかし、ここで迎え討つと言う事は、この奥がいよいよ怪しいと言う事だ!今の間に破壊を頼む」
 不自然な動きに対して、念の為に進んだ位置でも生命探知を掛けたアイリの声が飛ぶ。
 玲治は飛んで来る何かを受け止めながら、行かせやしねぇとひっつかむ。
 ソレは長く伸びた紅い爪で、ロングレンジを狙い撃つべく、腕自体が伸びているようなのだ。
 ディザイアはその様子に、近くに基点がある事に確信を抱いた。

●罠の基点を求めて
「なんとか一体目はやり過ごしたけど、二体目は少し危なそうね。気を付けて行きましょう」
「本調子ではないし、了解だ…」
 皆に足止めしてもらっている間に、ケイとルーガは警戒して前進を再開した。
 急ぐ必要はあるが、無理に進んでも危険なだけだ。
 イザとなれば援護を頼める位置を確保しつつ、捜索地点を1つ1つ巡って行く。
 場所によっては中間点で複数同時に巡れるのだが、爪が飛んで来た方向なので現段階では後回しにせざるを得ない。

 静謐な神社に乱入したような、どこか居心地の悪い気分。
 神罰だとか仏バチに力は無いが、この紅の霧は体力を奪って行く…。
「ううっ…ヤキトリの気持ちがよくわかるんだぞー(´;ω;`)。何の因果で落ちた百円を探す様な真似を…」
「それは言わないでくれるとありがたいわ…。あ、ねえ。あそこの車ちょっと変じゃない?」
 パッと見で見えないのなら、車の下に?時々膝を付けて…垣間見ていく。
 ルーガの言葉に苦笑しつつ、むしろ活きたまま茹でられる上海蟹ね…。と返した当たりで気がついた。
 少し先にある車のボディが、奇妙な形に歪んで居るのだ…。
「高級車みたいだし、ぶつけたまま乗っているなんて事はないわよね?」
「ふむ。ここまで調べた場所を考えると、残るはあそこと、その向こう位か…。ここらが勝負時かもしれん」
 車の周囲には、タイヤが引きずられたような跡が見えなくもない。
 ケイの指摘を確認した後、これまで巡って来た場所に張った蛍光テープやGPSを見ても、怪しい場所は残り数えるほど。
 ならばと2人は調査活動を終えるべく、最後の賭けに入った。

 仲間の戦っている場所。そして死にかけたディアボロを確かめる。
 一体目が猛攻を受けて大きく傷つき、それを盾にして仲間達への攻撃へ専念する二体目。
 タイミングを合わせて…、飛び込む事にした。

●闘いの転機
「二体で守る…。ううん、もしかしてだけど、一体に見せ掛ける気だった?」
「かもー。そういうズルは禁止なんだよ」
 紅の霧に、紅の影。
 アイリの呟きに、小梅は怒りに身を振わせて、ズルっこ無し無し!と頬を膨らませる。
 一体ずつ遠距離攻撃を仕掛ければ、数は誤魔化せるし…。何も知らない撃退士だったら警戒して時間を浪費するだろう。
 その間にドンドン体力が削られて、奇襲を繰り返すだけで、何倍もの数を足止めする気だったのだ。
 実際に自分たちですら、捜索班を無事に送りだす為…、そして位置確認の探知術で時間を奪われていた。

「みんなのぉ、後はぁ追わせないもん!ニャンニャン、ゴー!」
「そうだね。此処で僕らが気を引いておかないと…」
 それは、まるで二人が同時に踊りだしたようにも見える。
 小梅は自分の身長よりも大きな箒を手に、クルクル振り回してアウルを集中。
 箒の先から黒猫が飛び出て、にゃ〜んとでも啼きそうなポーズの後で、たたっと爪目がけて疾走して行く。
 やや遅れて薙刀を回し終えた莉音は、光を糸の様に束ね、輝きを刃に変えて撃ち出した。
「未来のエース、小梅参上ぉ! ボックの仲間に手を出す悪い子はぁ、メッ! だもんね!」
「…僕も合わせた方がええんかな?」
 その攻撃自体は、それほどでも無い。
 だが前衛たちが攻防に専念するのとは戦い方が違うのだ。

「…魔法の方が効き良いみたい。合わせていこか」
「おっけ。良く効く方で攻撃した方が、早く倒せるもんね」
 見た感じ、莉音の刃の方が通りが悪い。
 直撃した時の様子を見るに、甲冑型だけに物理防御の方が高いのだろう。
 情報を全員に伝えると、ボクが試してみるよ〜っと上の方から声が掛かった。
 上空を制したエマの声が、高らかに鳴り響く!
「炎は得意じゃないから、手加減出来ないよ〜?…ふみ!Gladius flammae!」
 ペラペラと捲れあがる魔導書が、自動的に停止して、旋律を力に変え始めた。
 エマの言葉と共にアウルが結集し、その運動はやがて炎となって燃え盛る!

 膠着状態に見えた闘いに、ようやく転機が訪れる。
「好機が見えたな。そろそろ陣列を押し上げるべきか…」
「さっき呟き拾ったぜ。『秘密の花園、発見?』みたいなのに、顔文字がくっついてた」
「じゃあこのまま進んで、捜索班を援護しようよ。私たちはその為に来たんでしょ?」
 決まりだな、時間との勝負だ急ぐとしよう。
 一体目に切り込んで居たディザイアと玲治は、顔を見合わせると呼吸を合わせた。
 アイリたちの援護もあって、2人の傷は大したことは無い。
 むしろ捜索班の方が、少しずつ毒で弱っているはずなのだ。

●紅い霧の晴れる時
 ならば危険は俺達が引き受ける!
 それは男の子の役目、怪我など負わせないと誓った…前に立つ者の覚悟!!
「いっくぜぇぇ!」
「あんまりルートを逸れたくねぇし、ここで終わらせようか。雷帝よ!」
 玲治は盾を掲げて突き進み、握り込んだ手に光が宿る。
  っ! 全てを打ち砕く力が甲冑深くにめり込んだ。
 彼が爪を延ばす甲冑の元に上手く切り込むと、ディザイアは雷鳴を呼んで神鳴る刃を…振り下ろす!

 一体目の敵は一刀両断、ガランと崩れ落ちる。
 大振りで出来た隙を狙って訪れる死神は、爪が分裂する無数の刃…。
「させないって!」
「そうそう。そっちが二体で一組なら、こっちも六…八人で一組ってゆう事なんだよね」
 前衛達も盾で全てを受け切れない。
 鋭く伸びる爪を食い千切り、 額当てて受け、腹の筋肉で止めて満身創痍。
 だが、彼らは孤立無援では無いのだ。
 アイリと莉音は、タイミングを合わせて、一気に治療に掛かった。
 重傷になんて、させたりしない!

 そんな時、更なる朗報が舞い込んで来る。
 先ほど莉音が人数を訂正したのは、同じ様に走る姿を見たかららだ。
「ビンゴ!ここに有るわよ、私達でもやるけど、急行してくれる?」
「早くしないと、出番を取ってしまうぞ?ルーガちゃんのドーン★といってみよーう( ´∀`)!」
 目の端に映った光景であろうと、アウルで強化したケイの目は誤魔化せない。
 彼女が仲間達に叫んでホイッスルを鳴らすのと、ルーガが白閃を放つのはほぼ同時だった。
 光の柱が通り抜けた時、紅の霧が歪んで、甲冑の姿が顕になる。

「あはは。ボクたちとどっちが早いかな?競争しよっか」
「待って待って〜。ニャンニャン ゴー!」
 空飛ぶエマが一撃受けつつも一足先に駆け付けると、小梅はピーっと指笛吹いて黒猫を召喚。
 火炎や猫さん突撃隊が飛び込んで、甲冑型の姿を大きく歪ませる。
 全員揃って、敵の居場所が判った一同が、苦戦するはずもなかった…。

「やれやれ、これで一息つけるぜ……」
「四国の人たちの為に多少は役に立てたかな」
「きっと立てたよぉー」
 二体目を倒した段階で、体力を回復しつつ周囲の捜索。
 ディアボロは流石に保たなかったのか、サーバントの手前で死亡している。
 喉を潤しながら玲治が眺めていると、天魔の脅威が去ったからかアイリが少しだけ緊張を解いて空を眺めた。
 小梅が機嫌よく、スキップしながら微笑む。

 そこには、晴れ間が広がっていたと言う。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

cordierite・
田村 ケイ(ja0582)

大学部6年320組 女 インフィルトレイター
崩れずの光翼・
向坂 玲治(ja6214)

卒業 男 ディバインナイト
夜の帳をほどく先・
紫ノ宮莉音(ja6473)

大学部1年1組 男 アストラルヴァンガード
銀狐の見据える先・
黛 アイリ(jb1291)

大学部1年43組 女 アストラルヴァンガード
駆逐されそう。なう・
ルーガ・スレイアー(jb2600)

大学部6年174組 女 ルインズブレイド
Standingにゃんこますたー・
白野 小梅(jb4012)

小等部6年1組 女 ダアト
護黒連翼・
ディザイア・シーカー(jb5989)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプA
混迷の霧を晴らすモノ・
エマ・シェフィールド(jb6754)

大学部1年260組 女 アカシックレコーダー:タイプA