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マスター:小田由章
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:10人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/07/01


みんなの思い出



オープニング

「ここのディアボロ増加も終わりごろだな。すり減らしてからバトンタッチと行こうぜ」
「交替せずに、新人たちを動員して実戦に慣れさせんのも良いんじゃねえか?」
 とある廃ゲートを包囲する撃退士達が、小屋から望遠鏡を片手に様子を窺っていた。
 中から現れるディアボロの総数は減少傾向。
 数度の突入か、数を動員しての小合戦を経れば、後は監視班が影響が消えるまで見届けて終わりだろう…。
 そんなつまらない話をしていた時だった。
「しかしもったいねーよなあ。牧場があったんだろ?少しずれてくれれば上手いモンを喰いながら包囲出来たのによ」
「贅沢言うなよ。だいたいダチョウ牧場だし、そうそう都合良くは……とっと、小鬼が出歩きやがった出撃しないと…。あれ?小鬼ってあんなに数が居たか?」
「アン?貸してみろ、おおかた中に籠ってるやつを見間違え……。違ぇぇ!小鬼だけど、ありゃ明らかに違う奴だ!」
 脱出でもしようとしたのか、小鬼たちが森側へ繋がる外延に見かけられたのだが、把握しているより数が多い。
 おかしいと思って念の為に望遠鏡をひったくって詳細を確認すると…。
 良く良く見ると、確かに小鬼であったのだが…。ボロであっても鎧を身にまとい、手に手に剣や斧槍を構えていたのだ。
 別口の小鬼がやって来たと見るべきだろう。即座に全員に連絡を飛ばす!
「ずっと隠れさせていたのか?…いや、奇襲っぽいな。こりゃ読み間違えると悲惨だぞ」
「仕方ねえ。依頼で増援を呼ぼう、取り返されて、またゲートを開かれたらコトだ。せっかくここいらが平和になったってのによ!」
 阻霊符を起動した者が試しに移動すれば、効果範囲に次々と現れる小鬼たち。メンバーの顔に焦燥と怒りが浮かぶ。
 せっかく悪魔を撃退し、もう少しで包囲を解除して、住民たちも安心して暮らせる時だったのに…。
 だが怒りに感情が揺れ動いて居ても、やらねばならぬ想いに代わりは無かった。
 なんとか落ち着きを取り戻し、依頼書を作成すると援軍を要請したのである。

「廃ゲートを包囲して雑魚潰しをしていたメンバーが気が付いたんだが、ここを襲撃して取り戻そうと新手が来たみたいなんだ」
「そこで救援メンバーを募集します。基本的には一般人は居ないし、ディアボロと戦うだけなんだけどね…」
 張りだされた依頼書には、簡単なメモが書かれていた。
 地域住民は避難しており、わざわざ取り戻すほどの価値はなさそうだ。
 よほど強力な悪魔が巨大なゲートを張るなら前提は覆されるが、そんな事をするなら、もっと良い立地は沢山あるはず…。
「…そこを考えると、ゲート予定地?を取り戻すってのは陽動ッポイな」
「ん〜。資料を見る限り、牧場らしいから馬…じゃなくてダチョウ型を回収して騎馬隊でも造りたいとか?」
「いや、そのくらいなら一から造るじゃろ。悪魔ならその方が早いしの。人間への意趣返しか、それとも他の何かがあるのかのう」
 ゲートを失って逃げ帰った悪魔が逆襲を挑んで居る…。
 それならばまだありえる話しかもしれない。
 人ごときに敗北して、勝利をもぎ取らねばメンツが立たないとか…。単にそう言う理由で暴れたいだけで出撃した?
「何はともあれここで敗北する訳にはいきません。みなさんには防衛に回っているメンバーの代わりに、攻勢に回っていただけると助かります」
「援護はする必要は無いけど、してもらえるのは難しい?」
「そんな感じですね。防衛班は包囲網を崩さない様に、見張りポイントや主要路を抑えてますから。ただ、全部終わればそれなりの回復は可能のはずです」
「あとは迎撃の途中で寄る事も出来るから、現地での詳しい話が聞きたいなら聞けるかも」
 逃げ出すデイアボロを見逃して、周囲に危険をばら撒く訳にもいかない。
 そんな風に説明しながら、彼らは防衛と見張りに専念しているのだと詫びを入れて来たらしい。
「まあ仕方ねえな。逆に言えば、敵を全部潰さなくてもいいんだろ?」
「敵が仕掛けてる試みを潰すか、そこまでしなくても、大半潰せば何とかなりそうだよな」
 肩を竦めて仕方ねえなぁ。とか言いつつ、興味を覚えたメンバーは書類を手に採った。
 会議室へ向かう傍ら、どこから潰す?と早速相談を始めて居たと言う。


リプレイ本文

●来援と来襲
「到着したか…。連中は何処だ?」
「少し待ってください、直ぐに確認します」
 染みわたる緑の臭い…
 急いだ分だけ乱暴ながら、クライシュ・アラフマン(ja0515)は牧場へに転移を果たした事を把握する。
 双眼鏡を脳裏から現出させた田村 ケイ(ja0582)の視線は、問いに応えるべく素早く動き始めた。
「例の小屋の向こうに敵影を確認。まだ離れた相対位置を抑えれますね」
「聞いてた通り随分と居るわね。最後の足掻きというやつかしら?存分に叩き潰させてもらうわよ」
「悪あがきって?」
 ケイが指差した方向には、建物と大柵の影を抜け数体どころでは無い影が連なる。
 思わず苦笑したナヴィア(jb4495)の言葉に、形の良い眉を跳ねて珠真 緑(ja2428)が尋ねた。
「失敗続きの天魔って処刑されちゃうの。だけど悪魔って基準があやふやだから、早めに行動すればなんとかなることもあるって話」
「成程。でも、その為の報復だとしても、これだけなんて有り得るのかしら?ただ攻め返して終わりなんてねえ…」
 ナヴィアの言葉が何を意味しているか納得したものの、縁には幾つか腑に落ちない点が浮上した。
 失敗を別の成功で補おうとするとか、末期の軍隊っぽいし、ただ手下を戦わせるだけで目的を為せるのだろうか?
 それだけなら対して面白くもないし、もしこれしか策がないならがっかりね…。と戦場を眺めて歩き続ける。
「やられたらやり返すとはまるで子供だな、我侭な子供の玩具は早々に片付けないといかんが…。援軍だ!直ぐに移動して適宜に迎え討つが、何か気付きはあるか?」
「助かったよ。…もう少し行ったところで地形が入り組んでる所がある。そこさえ注意しておけば撤退するまで退けれるはずだ」
 二人のやり取りを聞いていたクライシュは感想をもらしつつ、すれ違いざまに建物へ言葉を投げた。
 ややあって軽く警戒していた先行班から、紙にマジックで『3』のような形を緑で描き、林の形状を教えてくれる。
 そこを回り込まれれば奇襲されかねないし、手早く抑えてしまうとしよう。
「撃退といわず、殲滅しちゃいっても良いんでしょ?」
「…一体一体は弱くとも戦列を組んできている以上、なめてかかる訳にはいきませんね。こちらも相応の対応を取る必要がありそうです」
 景気付けに豪語するブリギッタ・アルブランシェ(jb1393)の言葉に、侮ってはなりませんよと言う楊 玲花(ja0249)はお姉さんの様に忠告する。
 そんな彼女の心配だけは受け取りつつ、ニコリと笑って自分の持ち場を探し始めた。

●今日の天気は晴ときどき血の雨
「長方形の陣形で、後ろにちょこんと何かいるな」
 おーおーせーぞろいだぜ。
 面倒でないのは良いけどな。と七瀬 歩(jb4596)は背筋を伸ばしてストレッチを掛ける。
 小鬼たちは一定以上に散開する様子は見せず、まとまった数で進軍してきた。
 足並みはそろわず軍靴の足音など聞こえもしないが…。
「それでも不気味…。囲みきるまで、できるだけ発見されないようにしようか」
「大丈夫だって先輩。典型的な鉄床戦術だから読み易いしね」
「鉄床なんて先に叩いちゃえば良いんだから気にしたら駄目よ。だいたい、本格的な戦だったら勝手に集まって来ちゃうのよね」
 小鬼たちが連携するなんて構図はあまり見ない。
 少しだけ怯えた様子を見せる瑞姫 イェーガー(jb1529)へ、見た事のあるクロエ・キャラハン(jb1839)がフォローする。
 戦いはそう言う物だと思いながらも、ブリギッタも鉄槌を取り出して叩くような仕草で調子を合わせて笑って見せた。
「了解、コワイコワイは此処まで〜。主犯もどこかにいるらしいから…不意打ちや読まれた上の反撃に注意ね!こちらの策くらいは上手くいかせて貰わなくちゃ」
「…廃ゲートの奪還が目的だとしたら、何処かで見てるのかしらね。ともあれやるしかないんだし、やり遂げましょ」
 自分より年下の子たちが頑張ってるのに、カッコ悪いおばさんだよねと豪快に笑って瑞姫は心を奮い立たせる。
 だがこちらが相手の作戦を読めるなら、あちらだって同じだ。
 もっともな話よね。と相槌を打ちブリギッタは動き出した戦況を平易に観察し始めた。
「数は?動きに変化はないなら。このまま詰めて殲滅するぞ」
「問題なーし」
「おっけいです。……逃がさない、よ?はい、集合。大人しくしてなさい……」
 敵との距離が縮まり、後方からの射線が明確になる。
 視界範囲に互いが全て収まり、クライシュが後衛に確認した後でタイミングを合わせてゆっくり進撃を開始する。
 草薙 胡桃(ja2617)は長大な射程を活かして牽制しながら小走に距離を詰め、全員がするするとピッチを上げ始めたころ…。
「そろそろお互いの射程に…って。赤帽ども全員弓で裸待機かよ!早いとこ混戦に持ち込まねえと一方的に誰かがやられちまう」
「あ…そういえば前に後衛潰しをされた事もあったっけ。接敵距離で戦うと汚れちゃうけど…仕方ないかな」
「戦う以上は仕方の無い話です。…汚れる事よりも、怪我の心配をした方がいいですよ?」
 相手の装備を確認していた歩の目に不吉な物が見える。
 後方に位置したレッドキャップが矢尻を揃えて、クロスボウの準備をしていたのだ。
 防備の薄い後衛が集中砲火を喰らったら、熟練撃退士と言えど針ネズミは確定だろう。
 のんきに汚れる事を心配するクロエに、対翼側へ向かうケイは表情も変えずに、ただ歩調だけを早める。
「接敵射撃開始、包囲次第に潰しましょう」
「あーあ、やぱり汚れちゃった…。……。まずいですね。畜生臭くて吐き気がします」
 ショットガンの咆哮が戦場に木霊した。
 稲妻の様な速度で飛び出したケイが蹴り込むように槍を抑えつけ、至近距離から散弾をばら撒く。
 続いて予定よりも深く踏み入ったクロエが、指先から火の粉を散らして敵陣後方から射列の前面に至るまでを巻き込んで行く。
 飛び散る帰り血は、やはり華麗でも美味しくもない。
「あんまり突出すんな〜。特に初手は数減らし難しいからよっと!」
「ああもう、数ばかり集まって鬱陶しいわね。…一体どんな奴が手を貸してんのかしら?」
 歩が片手を銃口へと滑らし撫でるように印を着ると、少しだけ重みに耐えるような仕草を見せた。
 掲げるライフルが煌めきを浴び始めるごとに、その重みを増したように見え…。
 トリガーと共に吐き出される弾丸は輝きを帯び、赤光の剣が敵陣を横合いから切り裂いた!
 その様子に思わずやったか?と言いたくなる衝動をこらえて、縁は水剣に稲妻を這わせる。
 案の定、陣列を維持したままこちらに襲いかかってくるではないか。
 振り上げる剣列の内から、先ほど傷ついた一体を選び雷撃で粉砕。反撃とばかりに繰り出される一撃で肋一本は覚悟した時…。
「……やらせもしないし、逃がさない、よ?」
「さんきゅ、助かったよ。連携してなきゃこんなモンよね」
 間一髪の所で胡桃が横合いからもう一体を撃ち殺し、それで退路を確保した縁は、危うい所で避ける事に成功した。
 複数から同時に攻撃を受ければ実力差が通用しない…。背中に嫌な汗を感じると共に、今と言う記録を自分自身と言う筆で描いている事を自覚する。
 良く良く見れば、敵味方の入り乱れる光景で、戦場は血の雨を演出しているではないか…。

●死線の向こうへ
「大人しく固まっていろ、掃除の邪魔だ!…状況は?場合によっては一部を下がらせる必要がある」
「せっかく大勢で来たんだもの。存分に楽しみましょう。それに今からじゃ対して変わらないわ」
 光を剣の形に変えて別の敵へ縫い止めた所を、横合いから強烈な気風が薙ぎ払う。
 大盾を肩や腹に重ねて槍や斧を受け止めたクライシュは仁王立って周囲を拳始めた。
 背中合わせに立って互いに後方を守っていたナヴィアは、血を拭いながら男のタフさ加減に呆れながら、崩れ落ちるゴブリン二体と後方のレッドキャップを見比べる。
「大丈夫ですか?結構辛そうですけど」
「心配掛けてごめんね。あたいは、打たれ強くないよねこんなおばさん体型なのに…。でもさ、みんなで一緒にやり切ろう。そう思ったら頑張れるんだよ」
 敵味方が殴り合えば、当然攻撃を受ける者も多い。
 退がる事を勧めるが、退くよりも攻めきった方が早い…。そんな状況なのだから退くはずもなかった。
 玲花もため息ついて状況を後押しする為に、緋焔を解き放った後で、指先へ無数の手裏剣を引き抜いて行く。
 確かに敵陣を拘束し終わる頃だ、怪我人が増えない内に殲滅してしまうとしよう。
 そんな彼女に親指を立て送りだすと、血を吐き出して瑞姫は魔法の火花を叩きつける。そのまま体型に合わぬ機敏さで別の仲間と並び立ち、小鬼と至近で向かい合って混戦を維持して集中砲撃のレンジから外れた。
 だけれども、そんな綱渡りが何処まで続くのだろうか?
「ここらで勝負に出る気は?」
「受け身と言うのは性に合わんな。攻勢は壁役の俺達で喰い止める、混戦を維持したまま敵の視界を振り切れ!」
 一周二周と繰り返す状況はシュミレーションゲームにも似ている。
 ぶつかり合って消耗戦に突入し、地力が勝る分こちらが生き残っているが…綱渡りには違いない。
 ブリギッタはクライシュの方を振り向くと、顎で敵列に空いた隙間を指した。
 沢山の攻撃を受ける事になるが、防御に長けた彼女たちが引きつける事で、相手は後方の位置を悟れず正面だけに挑んでくるだろう。
 咆哮上げて仲間達を叱咤すると、進撃を再開すべく声をかけ始めた。
「敵はこっちで引きつけるから、そのまま両翼を押し上げて!計画より早いだけでやることは変わんないんだからっ」
「おーらいっ。元の意図通りに戻すってのは楽でいいよね」
「なるほど、状況を維持したままダメージ比率を傾斜させるんですね…。乗りましょう」
 弾丸をばら撒くと銃架を放り投げ、ブリギッタは走り出して空白の1つを埋めた。
 僅かな隙間からは、クロスボウを撃とうとするものや、ゴブリンに混じって斧槍を構えるレッドキャップの姿が見える。
 同じ様にクライシュが別の空白を埋めようとするのを見て、歩やケイにも二人がやろうとする事が理解できた。
 小鬼たちに判断力があると言っても、あくまで見える範囲での事。混戦を維持して再編成すれば、後方に安全地帯を造れるだろう。
「死に番の先手は任せました。次が必要なら担当するから気にしないで」
「きっつー。まあその必要があると思えないけどな!」
「そうそう、必要ないって!あはは、好きなだけ悲鳴を上げていいんですよ。もっと、もっと、痛くしてあげますからぁ!」
「倒すのは簡単ですけど、味方の被害が気になりますね。…鬼さんこちら?ただ、追い込むのは貴方達じゃなくて……私達、だけどね?」
 脳裏に描いた銃へと得物を取り変え、ケイは魔弾を放って周囲を焼き払う。
 爆裂の中から飛び出る個体にトドメを刺して歩は間を詰めた。
 前衛二人の斜め前方に立ち、崩れかけて居たこちらの陣形を再び造り上げ、クロエはその影に隠れるように移動し、味方の頭越しに重力を捻じ曲げ始める。
 胡桃も肩に突き刺さった矢を口で引き抜くと景色が歪み始める前に、目を右に左に踊らせて、自分が飛び込むべき位置を確認し始めた。
「せっかく何人も居るんだから無茶は禁物よ?さっさとソレ使っとけば?」
「だいじょうぶだいじょうぶ。まだやれます。です。貴方達の相手は私。……行かせない『生かさない』」
 ナヴィアが分厚い斧による豪撃を叩き込んだ所で、すかさず胡桃も追随。
 頭をカチ割った一撃に紛れ、仲間の横腹を突き刺そうとする小鬼の頭へ鋼の蛇顎を突き立て…そのままトリガーを引いた。
 その強烈な反動で肩の傷が痛むが、手に持つ傷薬は仲間の為。自分に使う気は無かった…。

●立つは赤き盾、撃策の勇士たち!
「フハハハ!今更、雑魚どもを脅威として思えるとはな!その力、喰われて俺の糧となれ!」
 その時、無貌の仮面が歪んだ。
 血風の中に立つクライシュの眼光は鋭く敵を睨み、恐らく口元は確かに吊りあがってアギトを開く。
 そう幻視しそうな闘気の中で、振り下ろす剣と血濡れた大盾が次々と槍衾を退ける。
 その傍らで少女はポツリ、と。
「ごきげんじゃない大将。こっちはスコアを気にしてそれどころじゃなっていうのにさ」
「撃破数を気にしている状態では無いのだと思いますけどね。正直、相手の策を誰も読んで無かったら…と思うとゾっとします」
 ギンギンギン!
 指先に花でも掲げる様にブリギッタが盾で矢を落とし続ける後ろで、玲花がゴブリン達の絶命を確認し始めた。
 彼女が投げた手裏剣は四肢を、喉や目を穿ち、倒した全ての敵にトドメを刺していると念入りに確認し、ため息と共に戦況の変転を把握する。
 死んだ振り出ない以上、過半数の数を撃破しこちらと同数に持ち込むの時間の問題だろう。
「今頃は主犯さんも困ってる頃かしらね?追撃と先行班を助けに行くメンバーで別れるとしましょうか」
「逃走図る固体が優先だけど、でも無理な追撃は不可ね。適当に散らしたら先行班を助けに行きましょ」
 指で拳銃でも持つかのように構えた瑞姫は、腰を落として狙いを傷ついた敵へ移す。
 BANG!と見えない弾丸がまた一体を葬り去り、祈る様に刃槍を構えて居たブリギッタは、後方まで引き裂く光の柱を打ち立て崩れ落ちそうになる体を引き起こした。
 支えようとする瑞姫に礼を返し追撃へ移る。
「無意味を悟って後退をし始めたみたいね。…今回は比較的弱い敵だったから何とかなったけど、今後こういう風に連携の取れた部隊が多数出てくるとかなり厄介ね」
「何かが後ろで糸を引いているのなら、恐らく今回だけでは済まないでしょうね」
 ケイの呟きを拾って、縁は一連の行動を思い出した。
 今後、もっと強いランクの敵が陣形を組んで来たら恐ろしい事になるだろう。
「俺はともかく全員が防御と攻撃を両立させてる訳でもないし、後衛狙われると辛いよな」
「何かの対策なり、新しい定石が必要になるかもね。とはいえこれは良い情報だったわ。記録するには相応しい…。記録完了、っと」
 こればっかりは相性だよなーと歩は自信とも見解ともにつかぬ呟きを洩らす。
 その言葉に縁も苦笑して、今は良しとしましょうと締めくくった。
 そして…。
「もー。あの連中、好き放題にやってくれちゃって…。次があったらまた全滅させてやるんだから」
「まあまあ。悪魔はきっと酷い目に合うだろうし、放っておいても大丈夫よ。…そっちはどう?」
「応急処置を施しましたです。先行班の回復力がどれだけ残ってるかですね」
 殲滅出来ず悔しそうなクロエを宥めながら、ナヴィアは胡桃へ尋ねた。
 彼女は追撃戦よりも、大怪我をした仲間の治療と手配に奔走していたのだ。全治した者もいれば怪我が残った者も居るが…。
 ともあれ一同は血戦の果て、勝利をもぎ取ったのである。


依頼結果