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マスター:小田由章
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:5人
リプレイ完成日時:2013/06/24


みんなの思い出



オープニング

「おい、通報にあったのはあすこの連中じゃないか?」
「ただ者じゃなさそうだな。学園生でないフリーの能力者か?それとも…」
 闇夜に融け込んだ二人の撃退士たちが、不穏な陰を二つ見つけた。
 ローブで姿を隠した怪しげな二人、一般人であるはずがない。仕掛けようにも二対二で心もとない。
 ましてや向かう先の神社は、四国に現れた悪魔の一体がゲートを開こうとした場所の一つなのだ…。警戒してしかるべきだろう。
 その怪しげなローブ姿を、数人の男達が取り囲んだ。
「てめえらか?人間様の町でやんちゃしてくれてる異界どもは!」
「(…アウルの輝き。こっちはどこの所属か知らんが能力者みたいだな。連中も連中で会社なりシンパから連絡をもらったのか…)」
「(しかしあの連中、シュトラッサーやヴァニタスの強さを知らんのか?)」
 アウルを消して技を使う事は、一部の例外を除けば無理な話だ。
 全身に輝きを纏って武器を展開する連中はフリーの会社雇いなり卒業生辺りだろうが、無謀にも人型の天魔へ挑もうとしている。
 現にローブの片方へ撃った魔法を難なく弾かれて、驚愕しながら全員で襲い掛かり始めた。
「ミサイルパーリングじゃなくてマジックパーリング?あうち、それがシンカゲ・スタイルとか言うやつですカ!?上等デース!」
「(新陰流以外の流派を知らんのかアホウ!…それはそうと犬死にさせるのも目覚めが悪いな)」
「(…待て、思ったよりも馬鹿じゃないようだぞ?伏兵を置いてるようだ、介入するとしたらその後だな…)」
 水の紋様を付けた敵は、流れるような動きで魔法を撃ち落として行く。
 腕前だけではなく、場を制して戦う動きそのものが、攻撃を単調にさせて弾き易くしているのだろう。
 救援というか、場を濁して逃がそうと思った撃退士を、もう一人が止めた。
 みれば神社の裏手に潜み、スナイパーが伏射態勢で狙っている。良く良く考えれば、これまで範囲攻撃を見て居なかった。
 奇襲と同時に畳みかけるつもりなのだろう。
「今デス、ロックンロール!」
「っ!」
「見たか、これが人間の力…、ちぃか…ら…」
「増援!?だ、だめだに、逃げろ!」
 暗黒の光が弾けた後、連続で畳みかける火砲や雷迅の一撃。
 次々に叩き込まれる攻撃に、防御に優れた刀使いはともかく、爪使いらしき奴が崩れ落ちた。
 勝ち誇った彼らの前に、無慈悲な死神達がやって来る。
 同じようなローブ姿の敵が、神社の奥から顕れたのだ…。
「まだ居る!?あれはシュトラッサーじゃなくて、重戦闘型のサーバントか!ええい仕方ない!」
「仲間を連れてさっさと逃げろ!援護くらいはしてやる!まったく碌でも無い日だ」
「第三勢力!?悪魔じゃなくて撃退士とはツイテルネー。逃げるよエスケープ!」
 こっそり援護ですませようとした二人は、ローブ姿の出現に、仕方無く自分達も姿を現した。
 それで勝てる相手とは思えないが、事態の混乱を考えれば、相手だって躊躇するはずだ。
 サーバントは冷静かもしれないが、使役している天使の方はそうも行かないだろう。
 事実、弓使いがスナイパーを撃った後は、攻め行っていた足早の小太刀使いが引き返している。
 流れ出る汗を拭いながら、二人は後退することに成功した。

「調べたんだが、敵はゲートの調査か、開く準備に来たみたいだな。戦力を周囲に配置して神社を守ってる」
「戦闘型のサーバント六体相手に死んでこいって?冗談じゃねえぞ」
 事件を調べて居たという撃退士が、神妙な顔で依頼書を持って来た。
 そこには戦闘型のサーバントが六体と書かれており、いずれも強力そうだと注釈がある。
「それなんだがな。ここまでの戦力を一気につぎ込むのは無駄が多い、逆に言えば、向こうにも事情があるんじゃないかと思う」
「向こうからしてみればフリーランスや、以前にあそこを襲おうとした悪魔勢力の事もある。護衛を潰せば、調査を途中で切り上げる可能性は高い。ましてゲート儀式の場合、半端に途中で止めれないそうだからな」
「つまり…、全部は倒さなくていいって事?」
 不安定な状況の上で成り立っているのなら、その危険性を露呈させてやればいい。
 そう言う事だと頷いて、神社の周囲に散ったローブ姿の連中を指差した。
 リスクによる脅しや、ハッタリ込みで沢山連れてきているだけなら、確かにやり様があるだろう。
 単純に場所が欲しいなら、雑魚サーバントを無数に用意して天使が占領した後の方がはるかに早いからだ。
「あー、ゲートは途中で止めれない上に、すっごい力を使っちまうんだっけ?」
「そこで強力なサーバントとは判っているが、こいつらの相手を頼む。別の面子には俺らで足止めを行うから、ひとまずどれか一体を倒して欲しい」
「二体一組で三箇所か。確かにやりようによっちゃあ…。いや、どうにかして増援を止めるなら二体ともいけるか?」
 事情を飲み込んだところで、話しを聞いていた面々は詳細を読み込み始めた。
 小さな町のはずれに位置し、移動ルートは正面と裏手の二か所へ一組ずつ。
 遊撃なのか、それとも神社の中央部で何かしている奴を守っているのかしらないが、もう一組。
 判っている能力を確認して、興味のある者が中心に会議室へと向かって行った…。
 はたして、此処で何が起きて居るのだろうか?


リプレイ本文

●漆黒夜の猟兵たち
「此処か、強力そうなサーバントが六体も出たというのは…」
「こんな所に篭って何を始めようとしているのでしょうか?」
「何処でもいいんだが、六…いや、既に倒されているから七体。七人……そしてここは四国、だ。奴らにやられて七人の中に加えられないよう気を付けないとな」
 暗夜へ待ち構える敵に挑む。
 恐ろしさよりも対抗心を覚え、キャロライン・ベルナール(jb3415)は腕組みを解いた。
 首を傾げる龍玉蘭(jb3580)の疑問や詠代 涼介(jb5343)の助言とも茶々入れともつかぬ言葉に頷き、携帯のスイッチを入れる。
「聞こえるか?こちらは間も無く突入する」
「足止めと情報を回収してもらう事になるが、陽動で十分だから攻めすぎる必要は無い。押し引くタイミングを誤るなよ?」
「了解。こっちも順次連絡するね」
 端末を操ってキャロラインは別班達と連絡を取り合い、返事と共にデータが共有され始めた。
 自分の端末にもラインが繋がったの確認し、天風 静流(ja0373)はこちらが倒すまで相手の気を散らす事なのだと、忠告がてらに念を押す。
 あとは手堅く対戦情報を持ち帰ってくれれば十分だ。
「まずは情報だな…。そのためにも一当てとするしようか。とはいえ消極的では意図を悟られる、いざとなれば……。こいつで適当に本殿へ『触る』がね」
「発煙手榴弾…。奴らの介入を防ぐのにも良いかもしれんな」
 静流の取り出した手榴弾に気が付くと、キャロラインは改めて明かりの灯る本殿や裏手口を垣間見た。
 この位置は範囲外だろうが、技や状況次第で裏口へ援護可能だと見るべきだろう。
「そうね、本殿からの攻撃はあっておかしくない。あたしの方でも注意を払っておくわ」
「いざとなれば頼みます」
 裏手口に連なる緩やかな女坂にさしかかった所で、ケイ・リヒャルト(ja0004)は本殿を視認できる木を選んで、樹上に移動する。
 増援が来る前に短期決戦のつもりだが、監視や援護を頼みつつマキナ・ベルヴェルク(ja0067)は醒めた目で己を…、自分達を再確認する。
 この選択は正しいのか?
 正しいはずだ…、だが泥沼に首をつっ込むような既視感を拭えない。
 拳を討ち合わせれば、コツンとガンドレットを叩くような音が小さく響いた。
 いつもの物音…、ああ、そうか。
 最適解を選ぶとき、シュミレートの答えに重なる瞬間へ似ている…。

●奥義の位
「余り時間もかけていられません――早々に幕を引かせて貰いましょう」
 …誘き寄せられた感がある。
 裏口に立つ敵影が見えた瞬間に、マキナは幻想の中に火を入れた。
 個人としては戦闘と言うよりは情報収集。
 状況把握も含めて何が起きているのか、起ころうとしているのか。
 知らねばならない、だが…。
「ゲート…今度は天使の…。させないわ。絶対に…!だから、頑張りましょう」
「ええ。罠なら噛み破るまで!」
「来たっ!」
 加速する脳内に合わせ、幻想の中で舞踊するような感覚。
 踏み出そうとしたアクアの手前へケイが矢を撃ち込み、マキナは隣で静流の気が膨れ上がるのを他人事のように味わう。
 撃ちこまれる誰かの弾丸に強烈な脅威を感じながら、世界と言う黄金が剥がれ落ち、時間と言う名の砥石になった様な喪失感が苛む。
 神々の戦場へ踏み入れたと、自分ですら防げない一撃を切り落とされた瞬間に、ようやく理解が追いついた。
「あれを止めたか。…天使クラス、いやそれ以上だな。だが…」
「撃ち落とされた?でも、聞いてた通りよ。押し切れば問題ないのよね」
 ありえない光景に驚く事もなく、影野 恭弥(ja0018)は自分の銃口とイシュタル(jb2619)の放った稲妻の紋章と見比べ、冷静に事態を把握した。
 自分の放った弾丸は、尋常ならざる動きで寸断された。
 だが、結果としては同じであるが彼女の雷撃はそれほどでもない。そうそう繰り出せない技での話なら、攻め手である自分の方が有利。
 二度・三度と撃つだけで、いつか貫くだろう。勿論…、その何時かを待つ気は無い。
「予定通り仕掛ける」
「了解しました、こちtらも予定通りに。あらあら…強そうなサーバントさん達ですね…でも人様にご迷惑はかけてはいけませんよ?」
 恭弥は弾倉を思い描くと、込めた弾丸に更なるイメージを注ぎ始める。
 次なるは、いや次こそが本命。これは死に至るカウントダウン。
 必中の弾道を見切られてなお、平然と受け止める彼が居るのに、玉蘭が取り乱す訳にもいくまい。
 悠然と微笑んで、囮となるべく…もう一体のサーバントへと歩き始める。
「あなたは私がお相手しましょう。あまり…てこずらさないでくださると助かります」
「この動き…。勘弁してほしいな。いつの時代の修験者だ」
「だが好都合だ、このまま少し引っ張ろう。幸いと言うか、俺の方はいざとなれば離せる」
 ぬるり…。
 玉蘭の隣へキャロラインが移動し所で、アイスに半歩下がって間合いを外し、そのまま彼女たちの脇を駆け抜けた。
 振り向けば恭弥へ軽い斬撃を浴びせた後で、召喚獣の格闘圏内を抜け、少し離れた位置へ距離を取った所である。
 反射的に繰り出した大鎌は当たり、銃弾は避けられた。もしキャロラインが長柄でなければ、恭弥の本命が拳銃でなければ…。
 まともに相対する事自体が出来なかったろう。

●例え相手が何であれ
「今の動き、見た?人間型で出来る動きなの?」
「対処なら簡単だ。まともな立ち合いを無視すればいい」
 自分の敵を撃ちながら横眼で見たとはいえ、上から一部始終を確認したケイから見ても、アイスの動きはとうてい信じられる動きでは無い。
 蝶の様にかわし、蜂の様に刺すという言葉があるが…、それどころか、一挙動で飛び掛かれる距離に敵が収まらない。
 剣術の試合であれば、相手を完封できる術理を前にして、恭弥は平然と言い放った。
 彼らは狙撃手、相手がそういうモノだと把握して頭におけば良い。
「逃さない…。せぃ!」
 神足の踏み込みで、闇夜に長大な斬撃が走り抜けた。
 静流の指先から伸びる鋼の糸は、意図のままに大地すら分断する!
 だが迎え討つアクアは見えない一撃を切り落とし、絶技と絶技の対決はサーバントの側に軍配を…。否、パックリと大きな傷を穿ち完全に防ぐことなど許さない。
 防御型サーバントが誇る最大の奥義を持ってしても、防ぎ切れない恐ろしいほどの威力…。
「調度いいデータだ…。さて、こいつを防いで見てくれないか?」
 その様子を見て恭弥はデータを積み重ね、計算を加速させる。
 弾丸に込められたアウルは、切り落とした瞬間から受け止めた太刀を侵食し始める!
 姿こそ武芸者風だが、守護騎士だと思えば狙うべきは簡単だ。…その防御力を削ぎ落してしまえば、何と言う事は無い。
「その手裁きだけは確かに脅威。(…ですが、あとどれだけ続きますか?)」
 受けられると判ってなお放つ駄目押しの一撃を、マキナは同様に狙うことにした。
 マキナが鋭く手刀を振り上げると、弾かれた直後、込められたアウルが鎖となって絡みつく!
 防御を抜いて一撃与えたが返す刀で黒焔を切り裂かれ、片膝突かせるには至らない。少しだけ残念に思うが、悔しいとも思わない。
 今の動きを何処まで維持できるのか?出来なければ一撃で重傷…いや、途中で束縛し動きを止めればその時点で終わりなのだ。
 元々の剣腕で高い耐性を備えていても、遠い話ではない。
 問題なのは…。この場に居ない別班の安否や、本殿を守る敵である。
「技の冴えは恐ろしいが対処は可能だな。少しづつ押し込もう、不用意に囲もうとすれば上から狙われかねん」
「…別班の方も迎撃が始まったみたいだし、早めに切り上げたいもんだ」
 右から左に持ち手を変えるフェイントで、アイスはキャロラインの肩口を切り裂いて離れた。
 彼女のおかげで後方と冷静さを確保し、涼介は推移を眺める。
 アクアの手捌きやアイスの脚捌きは恐ろしいが、他の能力はそこそこ。得意分野を天使クラスにする為の反動だろうか?
「今のところ作戦は当たって居るな。敵が得意な武器や技でくるなら、こちらも自分の得意な戦い方で相手をするまでだ」
「態勢が整い次第、確実に潰すとしよう」
「その準備は整いましたよ。こちらはもう大丈夫だと思います」
 拳銃で撃ち掛けながら、涼介は召喚獣の姿を念頭に浮かべて置く。
 思い描いたもう一体の相棒へいつでも顕現し直し、致命的な状況に対応できるようにする為だ。
 彼の言葉を聞いたキャロラインも、自分と仲間の傷を見比べる。
 玉蘭が引きつける準備を終えた事で決心がついたのか、キャロラインは自分よりも静流へと治癒を施し始めた。
「別動班に正面口組が仕掛け始めたなら、上もそろそろじゃない?さっきから嫌な感覚がするの」
「良くも悪くも調度良い。アレを使うとしよう」
 数手が経った所で地上に降り立ち、周囲を詰め始めたケイの伝言に、静流は痺れる指先を奮い立たせた。
 閉じて開いて…多少はギコチないが暫くすれば治りそうな気配だ。
 懐に入れた発煙手榴弾を引き抜くや、本殿方向に放り込み視界を遮断する。
 この煙が思わぬ効果を発揮するのだが、それは少し後の話…。

●剣豪は墜ちるは定めなり
「視線が失せたか。少し試すぞ」
「そうするとしましょう。これで…」
 白煙によって膨れ上がっていた気配が途切れる。
 何者かの視線を感じなくなった恭弥は、確認の為、ただ引き金を引いた。
 特殊なアウルを込めない弾丸に使い惜しんだのか、先ほどの冴えを見せずアクアは受ける事に失敗し少なからぬ傷を負う。
 そこへ畳みかける様に、マキナの貫手が炸裂!流水さえ断つ剣閃ともう一度向かい合う。
「……選択を間違えましたね」
「やはり…な」
 先ほどと同じ光景の再現?いいや、アクアはその動きをゆっくりと止め、棒立ちになる。
 マキナの内から噴き上がる黒きアウルが、今度こそ縛鎖となって蝕んで居たのだ。
 その一撃の最たる物は威力にあらず。
 『触れた対象を縛する』と言う性質こそ真なれば、弾丸の一撃を叩き落とし、炎鎖の貫手は必死の覚悟で避けるべきだった。
 恭弥は一連の流れに相手の限界を見る。
 撃退士にも言えるが奥義は奥義ゆえに何度も使えない。サーバントに勝負勘は無く、ただ効率的に判断してしまうのだろう。
「攻め潰しましょう。救援を阻止できる?」
「その為の作戦だ。行け、こちらは私達で抑える…」
「痛たた酷いですね。…ですが、ここで足止めする為に居るのですから」
 弾丸にアウルを込めながら確認するケイに、キャロラインと玉蘭が応じた。
 アクア組は切り札を連続で叩き込むつもりのようで、その間にアイスを止めて置くのがお仕事。
 この好機を邪魔させれぬと、白い指に血を滲ませながら稲妻や白光で牽制し、チャンスがあれば大鎌やランスの一撃を見舞う。
「キッチリ決めてくれよ?別班が相手にしているのは攻撃力過多みたいだからな…」
「その心配は無用だ」
 涼介はアイスの移動を邪魔するルートを計算しつつ、いざとなれば割って入るつもりだった。
 別班はまだ開戦早々だと言うのに手痛い攻撃を受けたようだ、長引けばこちらはともかく、別班が全滅と言う事になりかねない。
 そんな彼の心配を静流は受け流すのではなく、当然の様に答えを指し示す。
 薙刀に持ち変え直し、構えると蒼白いアウルが集い始める。
「君を、黄泉へと誘う風を贈ろう」
 踏み出す足音は、まるで死の国から聞こえる鐘である!
 手榴弾を投げる為に取った数歩を、僅か一歩であるかの如く烈風が駆け抜けた。
 突き込んだ刃先を引き抜く間に、あまりの衝撃でアクアの体は吹き飛び、木々をへし折ってようやく止まる。
「無様な所を申し訳ありませんけど、失礼」
「容赦無用」
 何れかの剣豪を模して造られたとしても不思議の無い強さでも、人形のように動きを止めてしまえば防ぎようが無い。
 非情だがこれも世の常、ケイと恭弥は迷うことなく引き金を引いた。
 込められたのは天を穿つ闇色のアウル。弾丸に込める禁忌の色、夜に融けてアクアの身で弾ける!
「造られた英雄が居るなら、造られた英雄殺しが居るのも道理です」
 …ただ、それだけの事。
 マキナは指先に在らんばかりのアウルを込めて、アクアの前にかざした。
 いかなる時代の剣豪や英雄も、秘密を知られ、対抗策を練られた時点で末路は一つ。
 力が解き放たれると…ゆっくりとアクアという名のサーバントは、本当の意味で全ての動きを止めた。
 残るはアイスを潰すだけ、そう思った矢先である…。
「こんな夜更けに羽音とはな…」
「鷹の召喚獣…リンク射撃!?みんな気をつけて!」
「…用意はしている。私の後ろで陣を組みなおせ」
 警戒を請け負っていた恭弥とケイの耳に奇妙な羽音、そして夜にも関わらず鷹が白煙の上を旋回しているのが見える。
 キャロラインは本殿側に移動すると、己の身を盾として飛来する矢を迎え討った。
 その白き天秤の盾を掲げ見事に防ぎ止める!
「足止めに回っている方々はご無事でしょうか?もう一体いければ良いのですが」
「最低限の目的は果たしたんだ、気にするな。ここは無理をせずに下がるとしよう」
「当たり。…槍使いが沢山の武器を使い分けてるって。この調子じゃあ全員油断できないね」
 念の為に確認する玉蘭へ、涼介はゆっくりと首を振った。
 召喚獣を落とせば白煙を焚く間は大丈夫だろう。
 だがアクアやアイスのような初見殺しの技を全員が持っていれば、攻撃特化と戦うぶん別班が危険だ。
 携帯で確認したらしいイシュタルの言葉にため息ついて、涼介が視界を閉じ、もう一度開く頃には黒青の竜が目を覚ます。
 力は周囲に満ち始め、半ば世界を遮断する。
 途中までアイスの追撃や、弓使いの攻撃があったものの難なく撤収に成功。
 傷の深い順から治療ができ、戦力確認に置いて大きな成果を上げたといえよう。

「術式の痕跡があり解析待ちだそうです。解除はその後になるとか」
「次は逆にこちらが守る側になりそうだな。フリーの連中が当てになるなら声を掛けても良いが…」
「それなんだが、連中はどこで情報を手に入れたんだ?それも含めて調べた方が良いかもしれんな」
 翌日、無人の神社で一同は集う。
 玉蘭の話に静流は頷いて、キャロラインの提案を検討し始める。
 戦力として数えるにせよ、第三者として警戒するにせよ、考えからは外せないだろう。
 混迷した状況で、1つだけハッキリした事がある。
 この町を揺るがせた悪魔の噂はこの日を境にパッタリと途絶え、新しい噂が広がり始めたのだ。
「噂なら俺も聞いたぜ?出逢った者に祟りを為す七人御崎と人は言う…ってな」
 気にするなと涼介は肩を竦めて噂の中身を口にした。
 確実なのはただ一つ、七人御崎はきっとやって来る…。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 撃退士・マキナ・ベルヴェルク(ja0067)
 撃退士・天風 静流(ja0373)
 セーレの大好き・詠代 涼介(jb5343)
重体: −
面白かった!:6人

胡蝶の夢・
ケイ・リヒャルト(ja0004)

大学部4年5組 女 インフィルトレイター
God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
撃退士・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

卒業 女 阿修羅
撃退士・
天風 静流(ja0373)

卒業 女 阿修羅
誓いの槍・
イシュタル(jb2619)

大学部4年275組 女 陰陽師
心の受け皿・
キャロライン・ベルナール(jb3415)

大学部8年3組 女 アストラルヴァンガード
祈望の翼・
龍玉蘭(jb3580)

大学部7年204組 女 ディバインナイト
セーレの大好き・
詠代 涼介(jb5343)

大学部4年2組 男 バハムートテイマー