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マスター:小田由章
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/09/10


みんなの思い出



オープニング

●冥魔の防衛策と、サーバントの暴走
 ツインバベルの研究塔に訪問者が訪れ、対応したとある研究者が不満げに鼻を鳴らした。
 最近になって、彼がサーバントを使った実験で、冥魔との戦いの後…、暴走した個体が人間との領域を荒らしているという話に関わって居たからだ。
 戦力増強許可が上層部から降りるまで、人間との戦いに無駄な戦力を費やすなと言う事になっているのだが…。
『ウリエル様からならともかく、騎士団から監査を受ける謂れは無いが? 文句があるなら……』
『勘違は困ります。今日訪れたのは、今後の障害を除く為に、サーバントが暴走したという件を調査する為です』
 訪問者である赤い天使…アブサールは劫炎騎士団に所属しており、研究者達とは同じ指導者旗下であっても命令系統が違う。

 その事を指摘すると、アブサールは首を振って、結果的に人間と戦う問題を否定した。
 冥魔と戦ったサーバントの何体かが、暴走したという話に焦点を当てる。
 人間との間柄に関して、ウリエルへの報告がてら攻勢案と穏健案まとめて提案した事もあるが、それはまた別の問題だった。
『ウリエル様の方針に沿って居るなら、実験に関してはこちらから何も言う事はありません。今回訪れたのは、その暴走現象が将来の問題になるか…』
『そう言うことならサーバント自体の開発担当に言うがいい。俺の研究課題は、無理に人間と戦って経験を積む必要など無い』
 本来は厄介極まりない『サーバントの暴走』という案件に対し、返ってきた言葉は非常に無関心な内容だった。
 研究を抜粋したレポートを投げて寄こすと、研究者はそれっきり興味を無くしたようだ。

 レポートには、単一に限るが……という前置きで、呪文・スキルを長持ちさせるコスト効率化と書かれている。
 確かにワザと暴走させてサンプルが減らすことは考え難い、『シロ』で間違いはあるまい。
『了解しました。無いとは思いますがこの件が問い質されても、問題ないと口添えしましょう』
『納得したか?用が済んだらさっさと出て行ってもらおう。研究の邪魔だ』
 アブサールはレポートを軽く眺めると肩をすくめ、邪魔した非礼を詫びて別の研究者を訪れる事にした。

 そしてラボの中でもサーバント開発に割り当てられている場所に赴くと、見知った顔に声を掛ける。
『暴走したというサーバントの話を窺いたいのですが?』
『あー。あの話ね。ウヒャヒャヒャ。だったら丁度良い、君ィ、確かエンチャント(強化の付与)使えたでしょ?がつーんと抵抗力をあげてみてよ〜そしたら呪いかどうかの判定できると思うんだよねぇぇ』
 一応は上級の天使達も居るので、アブサールが気を使って声を掛けると、研究者達はこれ幸いにと色々要求を突きつけて来た。
 騎士団と違ってエキセントリックな天使も多いので、話が伝わり難いが…。
 話を抜き出して総合すると、冥魔の術に掛ったのか、レアな特殊能力で汚染されたのか、どちらかだろう。と言うことらしい。
『判りました。その代わりに…、暴走したらこちらで処分しても構いませんか?不用意に町に手を出し、撃退士が防衛網を強化しても困りますので』
『いーよいーよ。その辺は適当にやっちゃって。こっちはデータさえ取れれば検証できるからねえ。例えば…』
『研究はトライ・アンド・エラーの繰り返しさ。強化呪文で効果があれば対術抵抗力を上げ、違うなら別の方式を断ちあげるだけだよ。そうだ、その場合はまず……』
 アブサールは研究者たちから言質を取ると、夢中になって検証や新型を考える面々を置いてラボを出た。
 そして溜息つくと、この問題をどう片つけようか考え始めたのである。

●冥魔の領域と、赤い天使の来訪
 一方、四国のとある場所。冥魔と各勢力の領域が重なる辺り。
 人形型サーバントを退治した撃退士の提案を受け、ひとあし早く、人間側でも調査隊が組まれていたのだが…。
 命令に忠実なサーバントを暴走させる様な呪いでもあるのか、あるいは他の手段を確立したのか?それを調べる為である。
「参ったな。あの森だと思うんだが、戦力が多過ぎる。こっちはそう増援を呼べないって言うのに…」
「冥魔の防衛網の1つですからね。敵が多いのは仕方ありませんよ」
 調査隊は森にさしかかった所で、四国の多数のディアボロに足止めを受けていた。
 ドラゴン級やキメラ級など強力な個体こそ居ないが、獣型やら死体型などそれなりの連中が多い。

 冥魔の領域を守る砦の一つなのか、相当数が居る様である。
 幸か不幸か大事件でもなく、現段階では、多数の応援を呼ぶほどの権限は無い。
「幸い頭は良くなさそうです、罠なり囮でも使いますか?おびき寄せて少しずつ倒すか、最低限と戦いながら進むなら…」
「そうだな。詳細な地図と住民の証言を得て、検討するとしよう。町まで戻るぞ」
 調査隊は思案を重ね、採りうる手段を増やす事にした。
 一部ずつおびき寄せれば、増援と力を合わせることで倒せるだろう……そう思って一度帰還したはずなのだが…。

 一同が予想しなかった、それで居て、有り得るべき偶然が重なってしまった。
 怪しい人物が、町の郊外で、冥魔の領域を観察していたのだ。
「(あそこの女性…。ただもんじゃ有りませんよ。つーか、企業撃退士にあのレベルの奴ぁいません)」
「(さっさとデータベースに照合しろ。フリーの撃退士だろうが天使だろうが、顔を見せてるような奴なら、写真くらいあるだろう)」
 一見、キャリアウーマン風の女性が喫茶店のテラスで休んで居るように見える。
 しかし、ここは冥魔の領域が近い町。
 それも敵が現われる事もある郊外なのだ。 まともな神経の持ち主なら、他で営業なり交渉なりしているだろう。

 怪しい女性…、それは赤い天使ことアブサール。
『さて、どうしたものかな…サーバントのテストなどという余計な手間も増えてしまった』
 冥魔の領域に、天使と人の思惑が交錯する。
 その事を察した調査隊は、早々に増援の撃退士を呼び寄せたのである。


リプレイ本文


 四国は冥魔の領域に近い町へ撃退士たちが集結した。
「今回は参加していただいてありがとうございます。現段階で集まった資料は御手元に」
 調査隊の発起人である黒井 明斗(jb0525)は、用意した資料を提示する。
 二例続いた暴走サーバントの事件と、郊外に見られた赤い天使。

 そして…少し離れた位置にある、冥魔の森が記載されていた。
「こう何度も暴走サーバントが出てきたのでは手に負えん。さっさと原因を突き止めねばな」
 以前の作戦にも参加したと言うエカテリーナ・コドロワ(jc0366)の呟きは、ある種の奇妙さと、正論の両方を踏まえていた。
 本隊からはぐれた敵を、偶然かもしれないし、陰謀家もしれないと毎回疑うのも面倒だ。
「確かになぜ暴走しているのかって原因は探るべきだったね」
「そうだ。冥魔の策までは確実として……、単に防衛用なのか、それとも陰謀の一端なのかで対処が変わって来る」
 相槌を打った龍崎海(ja0565)にエカテリーナが頷き返す。
 どんなに優れていても、防衛用ならば局所的な脅威。
 映画で出てくるようなゾンビ的増殖でも無い限り、放置しても問題ないのだが……。
「いずれにせよ、あらゆる可能性を踏まえ、事態を確認する必要があるでしょう」
 明斗は仲間達を見渡し、ひとまず偏見抜きでと確認した。
 天界側は大規模戦闘で失った戦力補充に忙しいと推測が立つが、冥魔側に関しては、まったく動向が掴めない。
 策謀家でもあり、気紛れでも知られる大公爵メフィストの勢力圏であり、放置できぬ脅威だ。
 現在はサーバントの暴走だが、他にも影響があったり、別種の策と併用されるかもしれない。

「さて、どんなカラクリがあることやら……。とはいえ、やることは変わらんがな」
 向坂 玲治(ja6214)は肩をすくめると、指を三本ほど立てる。
「住民への被害を出さないのは前提として。後はぶっちめる過程で、どんだけ証拠を揃えるかだろうよ」
 第一に、原因調査完了まで三つ巴の戦いになることは避ける。
 第二に、暴走状況を映像撮影や音声録音して、可能な限り記録する。
 第三に、必要なら天使とは交渉して休戦ないし時間稼ぎを行う。
 次々に指を折りながら、玲治は順序立てて説明する。
「後は天使だって冥魔退治だろうし、暴走の調査が目的なら妥協できるかもな?」
「こちらは森の調査はいつでもできるのだから、多少妥協しても、天使の監視・対応が優先だろう」
 玲治の示した内要に海が頷く。
 目立つ天使と違って人間側は調査し易いし、無理に闘う必要性も無い。
 可能ならば交渉で戦いを回避し、余裕を造れれば、実際にサーバントが暴走する瞬間を見れるだろう。


「まずは戦場整理ですかね。ディアボロの内、観測に邪魔な連中をカイティングで適当に放置しておきます」
 鈴代 征治(ja1305)がゲームを例に用い説明する。
 戦場に無数に居る雑魚は、本命を狩る邪魔でしかないし。隠れるにしても数が多いと発見される可能性も高い。

 敵を遠ざければ、集団戦闘や隠密に慣れないメンバーでも、それなりに対処できる。
 この概念を応用し、ディアボロの群れをサーバントに倒させつつ、自分達が隠れる場所を確保すると言う訳だ。
「我々全員が潜伏に長けるなら必要ないのですけどね。とりあえず、この辺の地形を使って何人かで……」
「ああ、それなら僕が適任ですね。方針は了解しましたので、ご協力しますよ」
 征治の説明にエイルズレトラ マステリオ(ja2224)がくったくない微笑みで答えた。
 誰もができるように調整するのが征治だとするならば、その真逆、オンリーワンの回避力・退避力を持つのがエイルズレトラである。
 妥当な計画であり、妥当な人選と言えるだろう。
「それではお願いしますね。物を音を立てながら引っ張っていきますので、無理になったら交替と行きましょう」
「お任せあれ。足を使ってキリキリ舞いにさせてみせますよ」
 征治が両手を交差させて入れ違う事を提案すると、エイルズレトラは優雅に一礼した。
 異なる個性の共演こそが、撃退士の本領である。

 そこまで決まれば、後は実行に移すのみだ。
「……天使の方も動き出したようだ。どうやら向こうも調べごとをしていたみたいだね」
「よし。ならば状況を開始する! 各自ディアボロとの戦闘は極力避け、不可能であれば即時抹殺すること」
「「了解!」」
 海が天使の動向を監視役の撃退士に確認すると、エカテリーナの音頭で全員が行動を開始する。
 軽トラックや自前のバイクで森の近くまで移動し、森の中へ侵入して行った。


 撃退士達が森に侵入して暫く、当然ながら最初の相手は斥候らしき単独のディアボロだった。
「貴様らに用はない、邪魔をするなら消えてもらう!」
「おうら! いっちょあがりだぜ!」
 エカテリーナの太刀が音も無く骸骨型を叩き割き、玲治の槍が激しく頭を強打。
 彼は途中で更なる力を込め、次なる敵が来ない内に、目撃者を葬り去った。
「今の内に隠れて進むぞ。……どうしたよ?」
「いえ、ちょっとした異和感があっただけです。確定事項でもありませんし、二人が戻って来てから詳しく説明しますね」
 玲治が親指上げて茂みや樹上を指差すと、明斗は浮かない顔で頷いた。
 なんというか、陣を造って居るはずの敵の配置や巡回パターンに、指向性を感じなかったのだ。
 かといって何パターンも見ている訳で無いので、誘導している征治にも意見を聞いた方が確実だろう。

 それから暫くして、破裂音や笛の音が、離れた位置に向かって遠ざかって行く。
 おそらく、誘導役の二人が物音を立てながら引き寄せているのだろう。
「こんな物ですかね?あんまり離れ過ぎると、合流に時間が掛りますし…」
 笛を鳴らしていた征治は、胸元に仕舞いこんだ。
 音を立てて引っ張るのは、これまで。後は十分に潜伏できるはずだ。
「一足早く撤収しますので、後はお任せしますね」
 征治はロケット花火に火を付けながら、アウルを身体中に巡回させる。
 そして花火を放りつつ、助走も無しに軽やかにジャンプすると、エイルズレトラを残して樹上に消えた。
「了解。ギアをサードからトップに入れるとしましょう。ショータイムの始まりです」
 その時だ、走るペースを合わせて居たエイルズレトラは、こんどこそ本気で走り始めた。
 征治が巡航速度にして常人の二倍なら、彼は三倍速。歩行するガイコツではおいつけもしない。
「それでは、目鼻や足に覚えのある奴だけ始末しておきましょうか。迂回するにしても面倒ですからねぇ」
 エイルズレトラは不敵な笑みを浮かべると、おのれに追随できる獣型の不運を笑った。
 狙うは獣型の内でも、彼を追う事の出来る高速型。
「付いてこれなければ、無駄に死ぬこともなかったでしょうに。さようなら」
 そして手にしたトランプをまき散らし、周囲に群がる獣たちを無残に引き裂いた。

 かくして戦場が整理され、これ以上は戦わずに済むと思われたのだが…。
「監視に回って居た龍崎さんから連絡が……。このまま行ければ良かったのですが…。天使はこっちに向かって来るようですね」
「おいでなすったな。…戦う気なら即座にぶっ放してるだろうし、ちょいとお客さんを出迎えてくるわ」
 隠れて進む明斗たちの元に、赤い天使が足を速めて向かっているらしい。
 おそらくはアスヴァンの様な探知呪文でも用意していたのだろう。玲治は肩をすくめると、茂みの中から姿を現したのである。


 予想通り、赤い天使が隠れた撃退士の方向にやって来る。
『予想は付くが、何の用だ?』
「そっちもディアボロ退治なんだろ?とりあえず俺らが相討って、冥魔が得する様な事は避けたいと思ってよ」
 赤い天使こと、アブサールの問いに答えながら、玲治は周囲を確認した。
 サーバントを何体か連れているが、今のところは大人しい物だ。
 暴走するとあって最後まで信用する気にはなれないが…、撃退士の中でも体力に優れる彼ならば、仲間の到着までは粘れるだろう。
『了解した。ひとまずはこの戦い…いや、この森の冥魔が片付くまでは手を出さぬと約束しよう。周囲の町も同様だ』
「そいつはありがてえな。一回で終われば、お互い面倒無くて済むんだがな」
 話し合い自体は、玲治が拍子抜けするくらいに簡単に終わった。
 やはり会議で出たように、相手も冥魔の罠を調査・破却に来たのかもしれない。
 近くの町を含めたのは、最初に見つけた猫カフェが気に成るというよりは…、単に次回があるならそこで用件を聞こうと言う事なのだろう。
「ああ、そうだ。『何か』あった時は、こっちで適当に何とかしていいか?間にあうなら、そっちでなんとかするんだろうけど」
『それで問題ない。万が一、冥魔が片付く場合に、こちらの『跳ねっ返り』を処理しても、文句を付けたり約定を保護にはしない』
 最後に玲治は、暴走サーバントの事を匂わせて確認すると、天使は軽く頷いて立ち去って行った。

 入れ替わりに敵を後方から追っていた海が合流して、仲間達のもとに帰還する。
「なんか気が付いた事あっか?」
「そうだね。…サーバントは前に出会ったやつなんだけど、赤い紋様が打たれている個体と、そうでない個体がある」
 玲治は至近から記録したデータを、海は遠目にであるが周囲から記録したデータを統括用のカメラに転写。
 仲間達はそれを元に、事前段階での情報を共有した。
「他に気が付いた事はあるか?」
「…そうだな。去年とかの戦闘で、あの赤い天使が使った紋様があったと思うけど、確か『聖なる刻印』と似た術式だと思うんだが」
 エカテリーナが尋ねると、海は記憶を掘り返すように顔をしかめた。
「抵抗力を上げるモノか。ということは、魔術や特殊能力ではないか確認するという訳だ」
「そういうこと。暴走を開始したら、こっちでも刻印とクリアランスを使って……っと。戦いが始まったみたいだ」
 そして仕入れた情報を元に、幾つかの推論を組み立てていくのだが…。
 話をしている間に、冥魔の拠点と思わしき場所についた模様だ。
 サーバントとディアボロの戦いが始まり、一同は討論を止めた。
「今は監視に集中するとしましょう。ひとまず、キカッケくらいは掴みたいですね」
 征治の言葉に仲間達はそれぞれに頷いた。


 迫りくる獣型や骸骨型の群れに、人形たちは足を止めて迎撃した。
 護って居るはずのディアボロが攻め立て、サーバントが迎え討つと言うのも、中々に奇妙な構図だ。
「(武器の差はあれ…移動砲台かフルアーマーのロボットみたいですね)」
 征治は天魔の戦いを見ながら、人形を着た人形のデータを確認した。
 アサルトマシンガン(A種)の個体には大きな紋様、ガトリング砲(B種)には小さな紋様、そしてカノン砲(C種)を持った個体には紋様が無い。
「(大きな紋様は抵抗力の更なる強化として、比較サンプルとしては十分か。それならこちらも利用させてもらいますが……どんな風に暴走するのですかね)」
 征治はそのまま紋様の無い、C種と仮名した個体を中心に確認し、時々B種も視界に入れることにした。
 暴走するとしたら抵抗力の無い個体だろうし、後はどのディアボロが能力なり術を使うのか、はたまた別のトラップでもあるのか?
 それを確認するのが、今回の仕事と言って良いだろう。
 原因が不明だからこそ謎の事件であり、特定さえすれば、後は排除なり回収できる。

 そんな時、明斗が、一番最初に異和感に気が付いた。
 彼が『対象の範囲』に関して、注目していたからかもしれない。
「(ちょっとおかしくありませんか?ここは冥魔の防衛網なのに無秩序過ぎます。知性自体が無い骸骨はともかく、獣たちなんか酷いものです)」
「(そういえばそうですね。…でも、ゲート産のディアボロは、こんなもんじゃあ?魔力で命令するほどの価値なんて……なんだ。人形達の動きが…)」
 明斗の疑念に対し、征治は頷きはしたが、当初それほど気にしていなかった。
 魂を吸われてディアボロ化した生物は、間にあわせの戦力であるし、便利な道具でもあるからだ。
 そう思って見ていたのだが、決定的な変化がサーバントにも訪れていた。
「…逃げる獣を追撃してる?ワザワザ追い掛ける意味なんて無いのに…。もしかして既に暴走しているのか」
 獣型を追い掛けてカノン装備の人形が追い掛け始め、征治も立ちあがると追い掛け始めた。
 間近で確認したいのもあるが、それより重要なのは町に向かうコースだからだ。
「やっぱり…。多分ですけど、ナニカはディアボロにも効いているんだと思います。それに感染したのか、あるいはこの周囲に結界でもあるんでしょう」
「仕方ない、破壊して止めましょう。残骸を確認すれば噛みつかれて伝染したのか、時間の経過か判別できます」
 明斗の言葉に頷きながら、征治は脳裏に待機させておいた武装を展開する。
 そして足と槍にアウルを込めて疾走し、後方から突撃を食らわせた。
「以前と同じなら対象を変えないはずだ!そのままディアボロを囮にして、視界外から攻撃するんだ。その間に俺は、他の個体に色々試す!」
「ありがとうございます。傷は抑えたいし、試させてもらいますよ」
 何度も戦った海は、征治にアドバイスを送りつつ、他のカノン装備型にゆっくりと近づいて行った。
 まだ暴走していない様であるが、そのうち暴走する可能性があるだろう。

 その時に能力を解除し、抵抗力を上げれば…元に戻せるかもしれない。
「暴走したら暫くなんとかできないかな?できれば四肢を砕いてくれればありがたい」
「まあ、その辺はなんとかしますよ。天使が先に駆けつけるかもしれませんけどね」
 海の無茶ぶりに、エイルズレトラは笑って請け負った。
 使徒クラスの命中精度を持っている様であるが、彼には上級天魔並の体術がある。
 誘導時に使った大量のカードではなく、一枚つづりのカードを持ち出し、手足に向かって投げつけていった。
「四肢を砕けば良いのだな?ならば私も手伝おう。…材料としては微々たるものかもしれないが、ここから何か分かるかもしれん」
 話を聞いていたエカテリーナも参戦し、捕獲を手伝う事にした。
 サーバントたちは実験用なのか、あるいは暴走の影響か、定めたターゲットを最優する。

 苦労しつつも捕獲に成功し、撃退士達は貴重なサンプルを手に入れた。
「結局よ、暴走っていっても、お馬鹿になったけど同士討ちはしなかったよな?何が起きたんだ」
「おそらくこれは命令を強制的に解除しているのだと思います……もし想像通りの物なら、僕ら『人間には』意外と役立つかもしれません」
 起きた現象は、オーダー・キャンセラーとでも言うべき事態。
 作戦進行中の命令を、初期状態にプリセットする力だ。
 撃退士の召喚獣はその都度命令できるので、解明すれば、研究施設などの防衛に役立つかもしれない。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 最強の『普通』・鈴代 征治(ja1305)
 鉄壁の守護者達・黒井 明斗(jb0525)
重体: −
面白かった!:5人

歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部9年1組 男 アストラルヴァンガード
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
崩れずの光翼・
向坂 玲治(ja6214)

卒業 男 ディバインナイト
鉄壁の守護者達・
黒井 明斗(jb0525)

高等部3年1組 男 アストラルヴァンガード
負けた方が、害虫だ・
エカテリーナ・コドロワ(jc0366)

大学部6年7組 女 インフィルトレイター