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マスター:にられば
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/09/27


みんなの思い出



オープニング

「撃退士になったばかり? それならちょうど良い依頼があるわ」
 訥々と、銀髪の少女―――シルヴァリティア=ドーン(jz0001)は、まだ依頼に行ったことはない、あるいは行ったとしても数回程度の新米に近い撃退士たちを集めていた。
 今回の敵はスケルトン。目的はそのリーダー格の撃破。
「場所は、郊外の廃墟よ」
 瓦礫などがあり、見通しは良くないだろうが、そこまで足場は不安定でないらしい。
 敵の強さはと言うと、そこまで強くないと推測されるとのこと。
「だから、優先して新人に回せという話になってるわ」
 無表情のまま、ぽつぽつと彼女は語る。
 敵の数は、視認できるだけで10体以上。敵を全滅させても構わないが、リーダーだけを撃破したら撤退しても良いとのこと。
 リーダーは剣と盾を装備しており一見して分かり、他のスケルトンの装備は矢や斧、剣と様々らしい。
 また、リーダー格は厄介なことにスケルトンを新たに召喚する能力を持っていることが多い。この個体も多聞の例に漏れず、召喚能力を持ち合わせているだろう。
「でも、注意すべきはその点くらいだわ」
 それ以外は特に難しいところもない。
「どう、やってもらえるかしら?」
 撃退士となり、何ができるか。
 戦いに明け暮れたいのか、己を磨きたいのか、はたまた人々を助けたいのか、それとも別の想いか。
 それらを模索している段階の貴方たちはこの依頼を受けるか否か。
 選択を求められる。


リプレイ本文

 ザァと砂塵が舞う。
 人のいなくなった街。天魔に攻められ、住むには適していないとされた地域は尽くがこのようになっていく。そして、その領域は次第に広がり、人の住めるべき場所はただただ狭くなっていくだけだった。
 だが、それを食い止めようと人は足掻く。天界と冥界にいる者たちをあるべき場所へ撃退するべく。彼ら、撃退士たちは想いを乗せ動く。


 人を守ると。そんな意思で撃退士となったドニー・レイド(ja0470)と佐倉井 けいと(ja0540)。
 二人とも、まだベテランと言うには遠い。その域に達するためには、とにもかくにも慣れることだ。力を付けるべく、比較的与しやすい敵の戦闘で経験を積むつもりであった。
 与しやすいと言われてはいるが、相手は天魔に数も多い。
(油断はしない)
 ドニーは、そう思う。自分たちに弱さは許されない。弱音を吐くことがあれば、無辜の民に被害が及ぶ。それはどうあっても起きてはならないことだから。
 戦うことはきらいだが、けいとはそれでも戦地に赴く。戦わなければ強くならない。二つの背反する思いを胸に。
 戦うためには力がいる。そんな力から逃げてしまえれば、いっそどれだけ楽だろうかとカルラ=空木=クローシェ(ja0471)は思う。しかし、逃げるわけにはいかない。母を天魔の手によって失った。復讐のつもりはないが、代わりに得た得体の知れない力は、彼女に敵と戦う術を身につけさせていた。
 だから、逃げるわけにはいかないのだ。残された大切な人を守るためにも。
「戦闘は京都以来となりますか……」
 封都。今はそう呼ばれている封じられている京の都。かつての激戦区を潜り抜けた蘇芳出雲(ja0612)は中でも一際落ち着いていた。今回は背中を合わせられる味方がいる。それだけでも、安心だった。
 そんな彼を、シャルロット(ja1912)は後ろから眺めていた。知己の仲。学園での試験期間中に一度会っただけだが、何とはなしに気にいっている自分を感じる。何だろうかと不思議に思いつつも、ともあれ、背中を預けられそうな仲間がいることは心強い。
 そんな撃退士たちの様子を苗屋 締人(ja9051)はつぶさに観察していた。撃退士と言うものがどんな存在なのか。それが気になって仕方がない彼は、それを見るために自身も撃退士となった。変人と言われてもおかしくはないほどに、動機は普通の撃退士のそれと異なっていた。
「それにしても、偵察組は大丈夫だろうか……」
 ふと、シャルロットは今回の作戦の要となる音羽 千速(ja9066)と紫鷹(jb0224)のことが気にかかっる。連絡手段はない。携帯電話を使って情報をやり取りするつもりだっだが、ここは廃墟。圏外となっていた。無線機でも借りていれば、連絡を取れただろう。
 途中までは同行したが、ある程度近づいたところで、敵がたくさんいた。見通しも悪く、倒れたビルの影など、どこに敵が潜んでいるか分からない。
 そのため、鬼道忍軍である千速と紫鷹の二人が、偵察を行うことにしたのだった。

 その頃、偵察組の二人は、敵に気取られぬよう、足音を立てずかつ気配を消しながら、奥地にまで進んでいた。息をひそめ、廃墟の物陰に身を隠す。
 カラカラと、骨だけの化生の歩く音。ガシャガシャと響く無骨な武器の音。すぐそこで、冥界に潜む化け物どもの息遣いが聞こえてくるようだった。
 これが冥魔かと、紫鷹はその存在を間近に感じて滅するべき敵を見定める。顔を覗かせれば、すぐそばを歩いているが、まだ気付かれてはいない。だが、早く目的対象を見つけなければ、ばれてしまうのも時間の問題か。
「そっちは、どう?」
「いないみたい。もうちょっと奥かな」
 千速に問えば、まだこの辺りにはいないようだ。二人して、もう少し先へ進むことにする。ルートの選定も行っている。どうやら、敵はある一定の周期を以て巡回するようにその辺りを闊歩しているようだ。
 タイミングを計らえば、一気に奥まで突撃できるだろうか。
 だが、それもボスの位置を見つけてからだ。
 さらに、慎重に歩を進めていく二人。
 そして、ついに剣に盾を構えるスケルトンを見つける。あれが、リーダー格だろう。動く様子もなく、近くに弓を持ったスケルトン二体と、剣を持ったスケルトンが二体いるだけだ。
 二人は頷くと元来た道を引き返していった。


 千速と紫鷹が戻ってきた後、八人は選定したルートをタイミングよく抜けていく。偵察のおかげか、敵と遭遇することもなく、奥地へとたどり着いた。
「ここからが本番ですね」
 出雲が言う。そう、ここからが目的となる敵の撃破だ。八人はぐっと息をのむ。経験の多い者は少ない。一歩間違えれば、死が待つその世界に身を投じる緊張感に飲まれかけるが、それを払拭する。
「うん、君の背中はボクが護ってみせる……」
 出雲が槍を構え、いつでも飛びだせる覚悟の時に、シャルロットが告げる。しかし、この発言はまるで。それに気付いたシャルロットが慌てたように弁解する。
「あっ、いや特に深い意味はなくて……」
「……はい、頼りにしてますよ」
 乙女の胸中に秘めるは、何か。その正体はまだ分からない。
「では、私たちから。行くぞ」
「こっちも、準備オッケーだよ」
 紫鷹と千速がまずは先制攻撃を行う手はずだ。物陰から、一気に飛び出し弓を持ったスケルトンへ狙いを絞る。
 唐突の攻撃に、スケルトンは反応できなかった。紫鷹の白磁の双剣が骸骨の体に突き刺さる。バキリと鈍い音をたて、肋骨の一部が砕け散る。さらに、そこへ千速のバスタードソードが振り下ろされた。衝撃で吹き飛ぶ骸骨だが、すぐさまに体勢を立て直し、弓を引き絞り矢を放つ。千速は、寸でのところでそれを回避する。
 先手は上手く行った。二人で倒し切るのはきついが、引きつけられるか。一旦、身を退く。
「後は、ボスとそれ以外を引き離せれば……! と、上手くはいかないかっ!」
 走りながら紫鷹が振り返るも、リーダー格は一緒になって付いてきてしまっている。誤算だ。取り巻きだけを引きつけるならば、それなりの工夫が必要か。例えば、一人がリーダー格に張り付くなど。
 とは言え、それには危険が伴う。飛んでくる矢と、振り回される剣を受けつ避けつ、何とか味方のいる地点まで誘導する。
「ハッ、ハッ!」
 迫りくる鈍色の剣を避けるが、矢が紫鷹の腕を貫く。それを引き抜いて、捨てると再び走りだす。剣の骸骨から追いつかれる様子はないが、矢による追撃が厳しい。
 一本、鋭く放たれた矢が、千速の胸目掛けて飛んでくる。
 だが、それを槍斧が弾く。
「ハハハ、鬼道忍軍は実に足が速いですね。良いデータが取れましたよ」
 締人が飛び込むようにして、敵の矢の一撃を弾き飛ばしていた。何とか、味方のいる地点まで敵を引っ張ってこれたか。
 配置としては、剣型のスケルトンが前傾になっている。敵の陣形を崩すという形では成功しているか。
「ハァっ!」
 掛け声と共に、スケルトンの頭上に影ができる。敵が上を見上げた時には遅い。
 出雲の槍斧がスケルトンの前面をバラバラに粉砕した。ガシャリと崩れ落ちる様子を見せるが、まだ動く。ほとんどの骨を砕かれているにもかかわらず。やはりは、冥界の化生か。
 だが、一撃では終わらない。
「イヤァアアッ!」
 続け様に、シャルロットが双剣を振るう。彼女に宿る聖なる力は、冥府の化身たるスケルトンには効果的か、背骨を一刀両断し、それで完全に崩れ落ちた。
 まずは一体。だが、周囲には敵がひしめいている。戦闘が長引けば、リーダーが召喚するまでもなく、増援が現れてしまうだろう。
 加えて、召喚までされたら溜まった物ではない。彼の敵の足止めは必須だ。
「ボスは私が抑えるわ! その間に、雑魚をお願い!」
 けいとがその役を買って出る。
 振り被る敵の剣速は並のそれより遥かに速い。これを避けるのは至難だろう。
 そう判断すると、緊急で活性化させた盾を間に滑り込ませる。だがそれでも、腕が痺れる。
「くっ……!」
 ただ、受け切れないわけではない。防御に回っていれば、持ちこたえることはできそうか。
 その隙をついて、ドニーがスケルトンリーダー目掛けて大太刀を振るう。細身の刀身に灯すは絶大なアウルの力。盾で防ごうとしたリーダーの合間を縫って、強力な一撃を叩きつけた。ぐらりと傾ぐそこへ、カルラのクロスファイアが火を噴く。銃弾は、敵の骨を削り衝撃に怯むが、まだ倒れない。さすがは、一帯を仕切るボスか。
「!? 追加が来たぞ!」
 紫鷹の警戒の声が飛ぶ。
 そうこうしている内に、音に引き寄せられたか周囲をうろついていた内の二体ほどが集まってきた。
 こちらの攻撃を何度か当てねば、さすがに敵は倒れない。
 装備が良ければ、一撃で倒せるかもしれなかっただろうと千速は歯噛みする。だが、持てる力のみで敵を倒す技量は撃退士として常に必要だ。
 現れた増援に対応すべく、出雲が槍を振り回し、一体に流れるような連撃を放つ。思い切り、踏み込み敵を後退させる。剣で受けようとするも、素早い連撃に剣を弾かれて、穂先が突き刺さった。砕かれた骨を撒き散らしている間に、シャルロットが双剣を振るい、完全に止めを刺す。良いコンビだ。
 敵の攻撃は、締人が率先して止めに入り、追随を許さない。
 それでも、まだ、数の優位を保っていると判断したのか、スケルトンリーダーは攻撃の姿勢を見せる。鋭い攻撃に対して、けいとは再び盾で受け、返すカットラスの一撃もまた盾で防がれる。
 続けて、紫鷹がアウルで象った影の剣を投擲する。それもまた盾に阻まれた。
 だが、それは敵にとって隙となる。
 好機とばかりに、ドニーが太刀を一閃。剣を持つ腕を一刀の元に断ち切り、それに対応しようと気を反らしたところで、カルラの銃弾が頭蓋を捉え、完全に砕いた。ガシャリと力なくただの骨となり、スケルトンリーダーは崩れ去る。召喚をさせる間もなく、あっという間の攻防であった。
 これで、目的は達成だ。だが、まだまだ撃退士たちには余力がある。
 八人は頷くと敵の殲滅を開始した。


 矢を番え、弓を放とうとするスケルトン目掛けて、凄まじい速度で千速と紫鷹が迫る。鬼道忍軍の足からすれば、矢の射程など間合いに入っている。弦を切り裂くと同時、二人で一撃ずつを与える。それでも力が足りず、倒しきれはしないが、二撃、三撃と与えれば、さしものスケルトンも倒れた。
 その様子を見て、ドニーは二人の加勢に向かうことにした。だが、周りは敵だらけ。背を向けることになるかもしれないが。
「ちょっと後ろ頼む。怪我しても、確実に仕留めるさ」
「……変わらないんだから。怪我したら怒るわよ!」
 カルラにそう頼む。掃射しつつ、ドニーの背後の敵を牽制するカルラ。その隙に、ドニーは弓を持つスケルトンを一刀の元に切り裂いていく。
「燃え盛れボクの剣……人に仇なす者に断罪をくだせ」
 シャルロットの剣が敵を砕いた。
 出雲とシャルロットもまた、二人で背を預け合いながら、残っているスケルトンを狩って行く。
 周りにどれだけいたのか分からないが、かなりの数がいたことだけは確かか。それを次々と撃破していく撃退士たち。
 締人は変わらず、敵の攻撃を槍で受け流していたが、どちらかと言えば、撃退士たちの様子を観察していた。七人は効率よく連携し、敵を撃破していく。撃退士の力は、この連携にこそあるのではないか。彼はそう判断した。


 何分ほど、戦っていただろうか。気付いた頃には、周囲は骨の山で一杯になっていた。
 同時、敵の気配はすでになくなっている。
「倒し忘れ、ないようだ。いい報告……できそうだ、な」
 少なくない傷を負いつつも、紫鷹がガシャリと武器を下ろすとぐいぐいと目を抑える。眼鏡を付けるのは苦手だ。それでも、付けなければ支障をきたすのだから困りものだった。
「まったく、無茶して!」
「ははは、ごめんごめん……」
 さすがに多い敵からの攻撃は捌き切れず。ドニーの傷を包帯で縛りつつ、カルラが小言を言う。とは言え、何度かは彼女に向かってきた敵の攻撃を捌いたものだ。
「……でも、ありがと」
「ん……良いさ、それが俺の役割だからな」
 お礼を言うくらいは、しても良いだろうか。そんなことを思うカルラだった。
 かくして、郊外に群れていたスケルトンは撃退士たちの手により一掃された。八人は、実力を身に付けた確かな実感を元に帰還したのであった。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: リコのトモダチ・音羽 千速(ja9066)
 天つ彩風『想風』・紫鷹(jb0224)
重体: −
面白かった!:7人

二人の距離、変わった答え・
ドニー・レイド(ja0470)

大学部4年4組 男 ルインズブレイド
二人の距離、変わった答え・
カルラ=レイド=クローシェ(ja0471)

大学部4年6組 女 インフィルトレイター
撃退士・
佐倉井 けいと(ja0540)

大学部5年179組 女 ルインズブレイド
撃退士・
蘇芳出雲(ja0612)

大学部3年249組 男 ルインズブレイド
希みの橋を繋ぐ・
シャルロット(ja1912)

大学部3年132組 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
苗屋 締人(ja9051)

大学部7年282組 男 ディバインナイト
リコのトモダチ・
音羽 千速(ja9066)

高等部1年18組 男 鬼道忍軍
天つ彩風『想風』・
紫鷹(jb0224)

大学部3年307組 女 鬼道忍軍