●神の獣を屠りへと
神獣である四凶の似姿を持ったサーバントの討伐を受けた8人の撃退士達。
「久々の依頼だからなぁ。ワクワクするな♪」
楽しげに話すcicero・catfield(
ja6953)。言葉とは裏腹に、表情は獲物を探す猫そのもの。
「四凶、ね?
どうせ戦うのなら、同じ神話上でも四神の方が遣り甲斐はありそうね」
ブリギッタ・アルブランシェ(
jb1393)は、神獣と聞いて思い浮かべるのは四神であった。四神、すなわち天を支配する四の獣の事を。
「今度はサーバントな四凶?題材にし易いのか?」
過去にディアボロタイプの四凶退治に参加した事のある礼野 智美(
ja3600)は、またも作られている四凶の姿の敵について考える。
「って言っても、油断や手抜きなんてするつもりはないけど」
「…まあ…もっと強く作りたかったのでしょうが、それがこうなって捨てられたと…。
それでも、何かと厄介になりそうですから、本領を発揮される前に倒してしまう事にします」
四神への遣り甲斐を考えるも、ブリギッタは四凶についても気を許さず、仁良井 叶伊(
ja0618)は野良となったサーバントだからと油断せず、面倒が起こる前にと早急に討伐へと向かっていく。
「四凶は怪物だ。言い伝えでは、善人や誠実な者を忌み嫌い、悪人に媚びる。」
cieroは『四凶』に関する書を読みあさり分かったことを皆に伝える。
「しかし…悪人を好むって何だろうな。やっぱ優先的に狙ってくるのかねェ」
「アウトロー使用で敵の戦意を逸らせるかも知れませんね」
ヤナギ・エリューナク(
ja0006)は善人、悪人について考える。そしてアウトローを使う仲間をフォローしながら戦うと決める。
一方、雫(
ja1894)はアウトローを使用で、敵の注目を外せると考えた。そしてその隙に写真を撮ることを考える。戦闘中の写真を欲することは酔狂と思うも、安全な勝利の上で、できることなら依頼主の望みも叶えようと考える。
「写真より、動画の方が良さそうな気もするけど」
「私は、ICレコーダを用意します」
ブリギッタが写真以外の媒体を気にかけていると、雫がそれを準備していた。
「しかも写真撮ってくれって…退治はするけど写真上手に撮る技能なんて俺持ってないぞ」
「写真は他に任せて戦闘に専念させて貰うわ」
そして礼野とブリギッタは写真は撮らずに、戦闘に集中する。
「機械は苦手だけど、これ位なら大丈夫そうだね」
支給されたカメラを使ってみた各務 与一(
jb2342)。使用方法を確認し、戦闘の瞬間を撮れるようにする。
「絵デスカ…
デキレバウチノ子ノ雄姿ヲ…ゲフンゲフン
…イエイエ、依頼人モ納得デキル良イモノヲ写シマショウ
正直最近懐ダケガ冬ヲ迎エツツアルノデ大富豪カラノ依頼ハ持ッテk…ゴホンゴホン
…人々ノ安寧ヲ守ル為ニ戦イマショウネ!」
箱(
jb5199)は、悪ノリ好きな片鱗を見せるも、平和の為にと締めくくる。
「臨場感溢れる写真が撮れるよう、派手に動くとすっかね」
ヤナギは、華やかに戦うと決め、仁良井は拳の武具の見栄えを気にかける。
「一応全員で1体1体倒すようにしませんか?」
敵による各個撃破を危惧した礼野は皆に提案する。
そして皆は提案を受け作戦を立てる。
撮影するのは、雫と各務、箱の3人。
虎と猪を先に倒すと。羊には食べ物を試し、犬の不明な行動に注意をし、羊の食欲に気を付けると決めるのであった。
●現地へと赴く
サーバントの元へと、裏山を進んでいく。
「撮影も大事だけど一番大事なのは勝つことだからね。状況次第ではすぐに参戦するね。
もちろん、みんなだけで倒してしまっても構わないよ」
少し悪戯っぽく微笑んだ各務は、味方が劣勢にならば応戦すると言う。
「この依頼、必ず成功させてみせる。神よ、どうか我に力を与えたまえ」
ciceroは胸の十字架を手に祈りを捧げ、気持ちを戦闘へと切り替える。
進んでいくと、虎型が目に入る。
虎が翼を持ち、空を飛んでいる。
視線を下ろすと他の3体が集まっている。
猪型が暴れ回り、羊型は動物を食している。猪の乱暴に巻き込まれた山の動物達が羊の餌となっている。
そして犬型は、1体離れた所でぐるぐる回っている。尾を加え唯々回る。しかし、それは大きさを示す。しっぽが通常よりもやけに大きい。
視認すると雫がアウトローを使用し、レコーダーをONにする。
敵に気付かれる前にと、遠くから全体を写した写真を撮る。
戦闘前の写真を十分に撮ると、間合いへと詰めていく。
8人が近づいて行くと、敵が撃退士達を認識する。
虎がいち早く気付き、空から仁良井へ目がけて突き進む。
「頭ヲ狙ウトイイマスガ…コノ子ノ頭ハドコニアルノデショウ?」
箱がスレイプニルを、虎へとけしかける。
そこは。
竜と虎の舞台。
人ならざる者の対決。
カメラに写す。竜と虎の対峙を余すことなく写していく。
しかし、スレイプニルを気にする事なく虎は仁良井へ勢いよく向かってくる。
皆は予想していた。虎は頭を狙うと。
「基本は弓と同じ、かな。視野が狭くならないようにするのも大事だね」
遠くから各務がカメラを構える。
弓で敵を射抜く時と同じように対象の一挙一動に集中する。
虎は1番大柄な者、仁良井を狙った。
虎が頭を狙うと予測していた仁良井は、拳に光を纏い、目にも止まらぬ速さでジャンプアッパーを放つ。
その瞬間を写真に納める各務。
カウンターが見事に決まる。
腹部へと確かな感触を持った仁良井。
虎の動きが一瞬止まる。
しかし、直ぐ様、態勢を整えた虎が仁良井へ向かう。
空中では、翼を持つ虎が断然有利。不意を突き、有効な打撃を与えるも、その後の着地までの時間が命取りとなる。
そこに、ciceroがを弾丸を放つ。仲間の危険を見るや即座に撃った。
続いて、ヤナギが翔扇を放つ。
放たれた攻撃は虎へと当たり、動きを遅くする。
その間に仁良井はかろうじて着地した。
周りに構わず、虎は仁良井へと食いかかる。
仁良井は頭を防ぐ。皆の作った時間がその時間を与えた。
虎が噛みつくも、それは大きな痛手と成らずに済んだ。
地に降り立った虎へと、礼野が闘争心を解放して槍を突く。
翼を穿つも、敵は依然と弱みを見せない。
一方、猪も暴れ回っている。
雫が猪を正面に見据える。敵の突進の回避から攻撃を入れる為だ。
「猪突猛進だけでは、いつまで経っても当たりませんよ」
動かずに自らを見る者。暴れる猪にとって格好の敵だ。
勢いを付けた猪が雫へと突き進む。
雫が猪の直進軌道から横に躱す。
即刻、大剣を構える。
しかし、猪のはその場で止まり、雫へと牙を向ける。
突進の勢いを殺す事ができた。だが、猪の移動は真っ直ぐに進むだけであり、止まり、方向を変えられない訳ではない。
雫の大剣がそのまま噛みついている猪へ振り下ろされる。
斬られ、雫から牙を抜く猪。
瞬時に、ブリギッタが銃を発する。雫と猪、2人が離れる事で、射線が敵のみとなった。
敵へとあたり、雫との距離を取らせる。
そして、皆に伝える。猪は猪突猛進だけではないと、突進の勢いを殺せば威力はさほど無いと。
虎は憤然たる面持ちである。
地に落ちた虎。
頭を狙う虎。
地から頭を狙うには、小さき者が最適である。
猪との戦闘をする、雫とブリギッタの方へと虎は向かっていく。
加えて羊も怪しい素振りを見せる。
見ると、羊は今まで食べていた物がなくなっている。
各務に箱が羊の変化に即座に気付く。
「食べ物ヲ粗末ニスルノハイケマセンガ…コレモ人類ノ平和ヲ守ル為…」
箱が羊へと、カレーパンを投げる。虎、猪と合流しないようにと、気を逸らす為だ。
しかし、羊はパンを一切気にしなかった。
猛獣と呼ばれる饕餮の似姿の羊型。猛獣、すなわち肉食の荒々しい獣であった。
加工された食品を心にかける事なく、動物である人へと向かう。
「やらせはしないよ、与一の名に賭けてね」
各務は素早く弓を構えて矢を射る。
敵に回避する間を与えず羊を射貫く。
羊は向かう。人の集まる、戦場へと。戦いではなく捕食の為に。
3体の集合は危険を増すだけ。
皆は猪、羊に注意しつつも、1番攻撃を与えている虎へとできる限り集中する。
ブリギッタと雫は、周囲を注意する。猪の攻撃に虎に羊がどれほど近づいているか。
礼野が虎へと焔で燃え上がった槍を払った。1体ずつ倒すように、1番被害を受けた虎へと、純粋な破壊力で押す剛撃を放った。
続いて、弾丸に棒手裏剣が到達する。ciceroにヤナギが放った物だ。
翼にあたり、虎は両翼を失う。
しかし、敵は虎である。翼が無くとも、地の動きに不自由はない。
虎が雫へと走り、噛みつこうとする。
そこに、身の丈を超える大剣を打ち落とす。
唐竹割り。
「狙いが分かれば、対処もし易い物です」
小さな身体であっても、大剣により敵の頭上から一閃したのであった。
虎は散々受けた攻撃に、動きが鈍くなっている。
獰猛な目を残すも足が既に遅くなっている。
鈍い虎へとブリギッタは鉄槌に持ち替え、追い込みをかけ、仁良井が拳を放つ。
しかし、虎は未だ倒れない。大きな生命力を持っている。
羊は、手近な者へと向かっていた。食事目的の羊にとって、身近な者を襲うだけで十分であった。
至近の者はヤナギであった。羊は口を広げてヤナギに噛みついた。
猪は興奮していた。暴れ回る猪にとって、人が集結することは感情を高まらせる。
突進する猪。雫へ向かう。
真っ直ぐ進む猪。
今度は雫は躱した。敵はそのまま直線上へと突進し続けた。
一直線上には、礼野がいた。
皆が密集したこの場所では一直線の攻撃は他者を巻き込みやすい。
礼野は勢いのまま体当たりされた。
しかし、今は虎を倒すべきと、猪が突進のまま遠くへと行ったことを良かったと考える。
皆が虎へとトドメを刺しに攻撃を放つ。
ciceroが銃をぶっ放し、各務が矢を射る。遠距離からの攻撃で身動き捕れない虎へと、礼野は闘気を解放した突きを放った。
虎はに地に倒れていった。
その場は、箱によってカメラに納められた。銃での援護からの近接の攻撃。トドメの突き。
1つのサーバントの終わりを確と写真に捕らえるのであった。
虎が死ぬも、羊や猪は依然、好戦的だ。
犬は未だにぐるぐる回っており、危険は現在無いと、各務は再度写真を撮りに距離を取った。
羊は再度、ヤナギへと噛みつく。近くの者へと噛みつき回る。虎と違って頭を狙うことはない。只食べたいだけ、その為に特段どこかを狙うことなく噛みついている。
虎を討伐し、皆のターゲットが猪となる。
猪へと連撃する。
雫が大剣を振り下ろし、ヤナギが雷のごとく速さで飛び出し鉤爪を奮う。
ビクンッ。
攻撃を受け猪が震える。
そして、そのまま走り出す。仁良井の元へと突進する。
攻撃を受けてもそれに耐えることなどせずに、動き回る。受けた攻撃の方向の威力を消さないように走り出した。
仁良井は正面から来る猪を見る。
フェイントを入れて、サイドに回り込んだ。
猪はそのまま突進し続ける。
仁良井も猪に沿って進む。そして猪の横から眉間目掛けて強打を放つ。
猪は止まる。無理矢理止まらされた。
仁良井の強打は止まらざる得ないほどのダメージを与えた。
そして皆が続く。
動きが止まった者への攻撃。全てが的中する。
礼野が闘気を纏い槍を突いた。
直後弾丸二発をもろに受ける。
ciceroとブリギッタが放った物だ。ブリギッタは特に足を狙った。
足をつぶされた猪。一瞬のショックではなく、本当にまともに動けなくなってしまった。
羊は未だに人に食ってかかる。
だが、猪は動かないまま撃退士に囲まれた。
弱った猪へ雫が大剣を薙ぎ払う。それはスタンを与え、敵は噛みつくことさえできなくなる。
その隙に、礼野が槍を突き、仁良井が拳を振るい、ブリギッタが鉄槌を振り下ろす。
猪は死す。最期には抗いすらできなかった。地からある物に囲まれ死んでいくのであった。
羊へと向かう。犬は未だに参戦してこない。
1対8と圧倒的に有利である。
余裕ができてか、箱がスレイプニルを羊に向ける。
「カッコイイ!カッコイイデスヨ!流石ウチノ子!ヨシソコデチャージラッシュデス!」
スレイプニルをベストポジションまで移動させて、タイミングを合わせてシャッターを切る。
竜と羊の写真をたくさん撮りだした。
「ひょっとして敵同士でも食い合ったりするのかねェ?」
ヤナギはサーバント同士の共食いを考えた。
そして犬の位置を羊の位置を近くに誘導し、犬からの攻撃があったように翔扇を放つ。
依頼主より求められた写真のネタになるかも知れない。
しかし、特段犬へと向かうことはなかった。羊にとって犬が特に有意義な食材かは不明だ。
犬を食べない以上、仲間は食材と成らないか、もしくは人の方が美味かのどちらかだろう。
羊はブリギッタへと向かって行き、かぶりつく。
しかし、皆が周りにいる。致命傷とならない攻撃。
受けるも即座に攻撃に転化する。
続いて、皆も羊へと攻撃する。
ciceroが弾丸を放ち、雫が大剣を振り下ろし、仁良井は雷の刃を生み出す。
そして礼野が槍を突き出し、ヤナギは扇を放つ。
羊は死す。皆の攻撃で確実に息の根を止めたのだった。
残るは犬のみとなった撃退士達。
「あの犬・・・何してくるのか、全然予想できないわね(溜息」
「…まあ、何の為に造られたか分らないですが…」
ブリギッタは意味不明な行動を取る、何かあるかも知れないと不安に思い、仁良井は犬の移動方向にゴライアスの刃を置く。
そして、雫が頭を狙って斬り込んだ。敵がしっぽをはな採用にする為だ。
即刻、ciceroとブリギッタが銃を放ち、礼野が接近して槍を払う。
犬は尾を離す。
そして回転する。
辺り一面を巻き込んだ攻撃。近くにいた雫と礼野がまともに攻撃を受ける。
しかし、犬はその場を動かない。
そのままずっと尾を振り続ける。
皆が離れた。
そしても未だに尾を振り続ける。
近寄れないと遠距離から攻撃を放つ。
ciceroとブリギッタが弾丸を発し、ヤナギがアウルを集め、影手裏剣を放ち、仁良井が雷の刃を生み出していく。
何度も当てる。倒れるまで当て続ける。
そして犬は倒れるのであった。
●依頼主へと届ける
皆は依頼主に写真を届ける。
「写真だけでは無く、音もあった方が臨場感があると思いましたので」
雫は説明しながら、ICレコーダーも渡すのであった。
絵描きは満足する。音があり、より想像を沸き立たせると。
また、写真には撃退士がやられている物も含んでいた。それは、戦いのすさまじさを示し、敵の強さ、神々しさを示していると満足するのであった。