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マスター:立鳥鳴秋
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/06/10


みんなの思い出



オープニング

●ある日の出来事
「誰だ。こんなふざけたことをした奴は?」
 先生の背中には写真が貼られていた。顔写真。只の物ではなく落書きが施されていた物である。
 しーーん。クラスは静寂に満ちた空間となる。
「廊下を歩いてるとそこかしらの人に笑われた。やった者は手を挙げろ」
 何が何だか分からなく戸惑っていた所に、同僚に教えてもらった。しかし、大笑いをしながら背中の写真のことを話され、恥をかき怒っている。
「誰かいないのか?」
「先生、他のクラスの人ではないんですか?」
「それは違う。授業を終わって廊下に出たら皆に笑われたんだ」
 他の児童は誰も応えない。必死に笑いをこらえるように、無言の児童達が顔を伏せている。
「それなら、何か知っている者はいないか?
 大勢の前では、言いづらいかも知れない。だから、みんな、目をつぶってくれ」
 皆が身を閉じ、顔を伏せる。
「よし、みんな目を閉じたな。何か知っている者は手を上げろ」
 ズシッ。
 突如、衝撃が走る。
 ドカンッ。
 飛ばされ、壁にぶつかる。
 ようやく何が起こったのかと意識を向ける。それは身体を横から殴られたのであった。
「何をするんだ」
 不意の殴打に、怒りを露わに怒鳴りだす。
「先生が、手を上げろって言ったんですよ」
「何を言っているんだ」
 平坦な口調で話す少年に、訳も分からず怒鳴りつける。
「『手を上げる』って殴ろうとして手を振り上げる事じゃないんですか?
 親に手を上げるような事はしてはいけない、って前に言ってたじゃないですか。それに手を上げろの、『ろ』は命令を表す活用形ですよね。これも前に教えてもらった物ですよ。
 だから言われた通りの事をしただけですよ」
 如何にも平気な様子で自分の行動を説明し出す。少年は教師達の間では、言わずと知れた悪ガキであった。痛みをこらえ詰問する。
「おまえがやったのか?」
「やってませんよ。ただその写真は、授業の前から張り付いてましたよ。僕を怒るのは筋違いですよ」
 いけしゃあしゃあと言ってのける少年。
「そんなのは、屁理屈だ。それに『手を上げろ』ってのは手を上に伸ばすって意味で、そんな事分かりきっているだろう?」
「屁理屈も、理屈ですよ。僕には、どんな意味で先生がおっしゃたか何か分かりませんよ」
 やり場のない怒りを抱え、拳を握りしめる。
 さらに質問を続けるも、教師はそれ以上何も知り得る事はできなかった。

●相談する教師
「どうにかできませんかね?」
「困りましたね〜」
 学園の教師を困らせる児童について話している。
「最初はかわいい者だったんですけどね」
「本当に、最初は良かった。下手に知識を身につけて、今でもどうしようもない悪ガキですよ」
「この前なんて、殴られた教師がいるみたいですよ。教師の言葉に揚げ足を取って行ったからやっかいですよ。怒るに怒れなかったらしいですよ」
「それは災難ですね」
 2人の教師が話し合うのは、手に負えない子供の話だ。度が過ぎた悪戯を慣行する双子の児童。出会ったばかりは、2人揃っておとなしく、可愛かった。
 しかし現在はどうしようもない悪ガキに育っていた。
「お二人さん、お二人さん。いいお話を持ってきましたよ。海斗、夏輝兄弟の話ですよね」
 笑みを浮かべながら、話に加わってきた。
「この前、殴られたって本当ですか?」
「事実ですよ。しかし、今日はやっとあいつらを懲らしめられるいい物を持ってきましたよ」
 殴られた事よりも、現在持ってきたいい話の事に夢中である。
 そしてこれ見よがしに紙を出すのであった。

●遡ること数時間前
「夏輝、海斗、優秀な2人にやってもらいたいことがあるんだがいいか?」
 嬉々とした様子で教師が2人に話し出す。
「何ですか?」
「何をするんですか?」
 双子の少年達は声を揃えて話し出す。
「訓練の話なんだけどな。突然、襲われても対処できるかってことを見てみたいんだ。いつもの多くは万全の準備をしてから依頼を受けるだろう。しかし、それができなくてもきちんと対応できるかを試してみたいんだ」
 今度やる訓練の話と切り出し、説明をする
「そんなこと教えたら意味ないじゃないですか?」
「襲われると分かっていたら準備しますよ」
 真っ当な返答が来るも、用意していた答えを教える。
「そんなことは分かってる。だから一日を与える。其所のどこかで襲われる事で代用するんだ。一日中、絶えず万全とは行かないだろう」
「まあ、いいですけど」
「何で僕らなんですか?」
 本心は、日頃の行いを懲らしめる為だが、正当な理由を考えておいた。
「おまえ達、双子は手加減する事を身につけているからな。間違っても相手に重体なんて負わせるなよ。加えてルールは守るだろう、だから安心なんだ」
「僕たちは最終的に何をすればいいんですか?」
「逃げ切れば、おまえ達の訓練の成功だ。万全ではない時は、戦わないのも一つの選択だからな。だが、他にも相手を2人以上のしたら成功だ。
 2人にもメリットがあるからな。私個人で貸せる装備なら貸すから。いつも以上の装備を纏えるぞ」
「分かりました」
「分かりました」
 そう言って、声を揃えて訓練を了承するのであった。

●依頼の内容とは
目的:突如、襲われた時の対応についての訓練
   相手を倒す

役割:襲う側

相手:海斗、夏輝(双子)

日時:○月○日

詳細:
 夏輝、海斗兄弟には質の良い装備が提供されています
 2人には、朝:公園、昼:ショッピングモール、夜:橋に行く事が決められています
 2人は、手加減を身につけており、重体等は起こりません

※教師からのお願い
夏輝、海斗をできるだけ懲らしめて下さい。
2人が反省するように、攻撃して下さい。
以下に私が考えた懲らしめる方法を記載します。参考に使ってください。
○案1
 着ぐるみや布などを身に纏い、人の区別を付かなくし、「俺はやっていない」等と言って、やられた事は分かるも犯人が誰なのか分からない状況を作って懲らしめる。
○案2
 「教師から聞いたぞ、おまえら悪ガキなんだって、揚げ足を取って……」等と言ったら、おそらく2人は、揚げ足を都合良く解釈して挙げた足を取ってくる所を、逆に挙げた足を取る。
 相手を挑発し、慣用句などを用い、その行為を仕返す。
○案3
 相手の逃走経路を絞り、そこに恥ずかしいような罠を仕掛ける。(例:身体の半分だけ、真緑になるようにペンキを仕掛ける)
○案4
 背中等に、付いていたら恥ずかしい紙を付ける。(例:私はバカですの張り紙をマーキングの代わりと理由付けする)


リプレイ本文

●感じることは。問題点は?

 依頼を受けて感じる。問題の本質はどこなのかと。
 双子が悪いのか。理由があるか。
 教師の対応はどうなのかと。

「撃退士たるもの、いついかなる時でも危険に備えなくてはなりません。
 と、言うわけで危機管理能力の育成ですね」
 訓練の必要性を考える、鈴代 征治(ja1305)。そして双子の悪事に、教師の対応、あるべき姿を思案する。
「双子もやりすぎだとは思うが、この程度で根を上げる教師もどうかと思うな」
 鳳 静矢(ja3856)は教師のその情けなさを憂う。
「・・・とんでもない悪ガキだなぁ」
「まぁ・・子供ってのは覚えた知恵を使って、遊んでみたいもんだよな」
 飾音 静良(jb5020)は、懲らしめてやった方がいいと思い、蒼桐 遼布(jb2501)は子どもの新しい事柄に対する行動を考える。
「わしにもこのクソガキ共みたいにやたら周囲に反抗してた時期があったのぅ」
 自らの過去を思い浮かべる馳貴之(jb5238)。
「悪ガキねぇ・・・」
「まぁ・・・悪ガキの更生ってのは色々と扱いが難しいし、昨今の教師の立場的に手が出しにくい問題だから他を頼るってのもしょうがないわな」
 外部に頼った教師に不満を感じる鬼灯(ja5598)。対して、蒼桐は教育の立つ瀬も考慮する。
「教師の方の依頼は懲らしめるですが、理由を知りなんとか更正させたいですね」
 ユウ(jb5639)は、依頼を超えて、双子の更生を第一に考える。
「だが、やりすぎた子供にはキツイ仕置きを与えるのも大人の努めよ」
「ふむ…どんな理由があるにせよ…他人に迷惑をかける様な行為はよろしくないねぇ☆
 そこの所、弁えさせてあげよう♪」
 馳は双子を倒すに留めず、懲らしめると決め、ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)は双子に正しい道を知らしめようと。
 撃退士たちは動き出す。
 全ては双子を懲らしめた後にと。
 勝利を収めた後に、問題解決に進むのだと。
 教師と双子、双方を最善に導く為に、進んで行った。

●悪戯に留める日中

 時刻は12時を回り、海斗と夏輝の二人はショッピングモールをうろついている。
「昼飯どうする?」
「どこかの店で済まそうー」
 辺りは人でごった返す中、ショーケースに並ぶ商品を前に、昼飯を考える。
 鈴代は2人の姿を確認すると、防犯ブザーの留め金を紐で結び、柱に結ぶ。
 そして双子へ忍び寄る。
 すれ違い様にポケットへブザーを仕込む。
 最強の『普通』。そんな呼び名を持つ鈴代は、一段と目立たつ事なく、気付かれることなくその場を去る。
 2人が商品を決めて中に入ろうと歩き出す。
 その時。
「ブーーーーーーブーーーーーブーーーー」
 大音響が響き渡る。
 何が起こったのか意味が分からず、あたふたする夏輝と海斗。
 周りの人々が双子に注目する。
 皆に見つめられ、自分から音が出てると気付くや否や、ポケットから物を取り出した。
「何でこんなの入っているんだ」
「早く止めろ。皆が見てる」
 音を止めようと労する2人。
 しかし、それは防犯ブザー。音が簡単に止まらない仕組み。
 鳴り止まぬブザー。
「光纏」
 叫ぶと共にアウルを纏い、手に持つブザーを破壊する。
 やっとの事で音が止まるも、周りから視線が注がれている。
 衆人達はクスクス笑う。双子の子どもが防犯ブザーをうっかり鳴らしてしまったと思っているようだ。
 慌てる様をまじまじと見られ、笑われ、2人は羞恥の念に駆られるのであった。

 その場から離れようと双子は歩き出した。恥ずかしい様を見た人がいない場へと、遠くへと進んで行く。
 走って直ぐ様遠くに行きたい。しかし、込み入ったモールで走るのはみっともない。
 子どもと見られ笑われた直後。走って、さらに注目を集める事は耐え難い。
 そこに蒼桐は近づいた。翼を顕現し、透過能力を駆使して、ばれないように。
「パンッ」
 炸裂したペイント玉。2人は、何か当たった背中を見ようと振り返る。
「おーい、君たちペンキが付いているぞ」
 声を張り上げて言う蒼桐。2人が己の現状に気付くよりも早くに指摘した。
 双子は互いを見合う。ペンキまみれの姿。相方のだらしない身なりを。
「何だよこれ」
 気が荒立っている。先ほどのブザーに、現在のペイント。
 あからさまにおかしい。こんなに事が1度ならず2度までも。
「おまえがやったのか」
 近くにいる者、話し掛けてくる者、怪しく思い蒼桐が犯人と決めつけている。
「俺だという証拠があるのか?」
 何食わぬ顔で問い返す。もちろん声は大きく、周囲の目を集めるように。
「おまえしかいないだろ」
「人が親切に教えてやったの・・これだから・・・」
 2人を相手にしない。十分恥をかかせたのだと、立ち去るのであった。

●痛い目を

 悪戯に留めた日中。本命を夜と計画した面々は既に橋に集まり準備する。
「人が学ぶのは自分が失敗した時…ま、まずはしっかり失敗してもらいましょう☆」
 ジェラルドはウサギの着ぐるみを着て、風船を配り周囲に溶け込む。
 2人を確認すると、ユウは出口が分かり罠の仕掛けに取り組み始め、皆は態勢を整える。

 双子は橋へと歩を進める。
「まだ襲撃はないな」
「ここで襲われるんだろうね」
 2人は話す。一日も終わりに近づき、襲撃地の残る可能性はここが大きいと話し合う。
 そこに、鳳が近づいていく。柴犬の着ぐるみに身を包んでいる為に、特段警戒される事なく接近する。
「ピカッ」
 夏輝は突如な光に狼狽える。鳳の持つ懐中電灯に目が眩んだ。
「光よ」
 しかし、即座に光纏する。警戒していた為に不意の攻撃に直ぐ様対処した。
「視界が悪い…確実に行こう」
 態勢を整えられる前に、鳳はアウルの力を込めて弾丸を放つ。
 続いて海斗もアウルを纏う。
「ドスンッ」
 突然、足をつかまれ、海斗は尻餅をつく。
 足が引っ張られていた。
 橋の元から手が出ている。蒼桐が橋を透過し、足を引いたのであった。
 結果は見事な尻餅、成功である。
 鳳が離れ、蒼桐が手を引くと、馳が2人へとバケツをぶちまけた。
「なんだコレ?」
「くさいーーー」
 双子は喚く。臭さのあまりに騒ぎ立てる。バケツの中を想像するのも嫌な面持ちで。
 馳を見る。ぶちまけられたバケツを持つ人。
 怒りを露わに、海斗は大剣を振り下ろす。
 盾で剣を受ける馳。撃退士の活動を始めたばかりの馳には盾を用いるも大ダメージである。
 夏輝は、やられた者へと鳳に斬り込んだ。初撃を受けて訓練が始まったと分かるや全力で当たる。
 鬼灯が銃を海斗に放ち2人を分断していく。
 続いて鈴代が海斗を刺激し、気持ちを興奮させ、飾音が弓を射り、双子を別れ別れにする。
 夏輝の背後に忍び寄るウサギさんのキグルミ。
 光纏を見えなくしたジェラルドは闘気を解放し、おしりを蹴り上げた。
「イタイッ」
 夏輝は思わず声が出る。先ほどの海斗の尻餅を見て、そのあまりの恥ずかしさに足をこらえて立ち通す。
 後ろを見ると風船を手に持つウサギ。
「ボクじゃないウサ☆人違いウサ〜☆」
 光纏が見えないウサギは、本当にしたかどうかは分からない。
 ウサギは何を聞いても応えない。他のキグルミ、柴犬にネコを指すだけだ。夏輝の苛立ちは増すのであった。

 挑発が功を奏して鈴代へと向かう海斗。
「カキンッ」
 大剣と斧槍が当たる。
 魔具で受けた鈴代は、即座に槍を突く。
「屁理屈こねてまともな話しねぇのは聞いてる。来いよ、いっちょ揉んでやるからよ♪」
 間を置かずに、鬼灯が超接近し、斧を振る。
 海斗は盾を活性化して受ける。
「いいねぇ!使いこなせんのかぁオイ!!」
 相手の実力を認めた上での本気の立ち回り。一切、手を抜かず放った一閃は防がれるも、相手を踏ん張らせその場に留める。
「双龍矛 active。Re-generete」
 そこに蒼桐が槍を払い、ユウがアウルを集め魔法を放つ。
 罠の仕込みが終わりユウが戦闘に合流したのであった。海斗は続く攻撃で自由に動けない。
 その頃、馳は川に飛び込み全力で移動していた。己の力量を誤らず敵の攻撃を受けない距離へと移って行く。

 一方、夏輝は鳳と鍔迫り合いになっていた。抑えられて動きが制限されている。
「そうやって揚げ足をとって…」
 ジェラルドはそう言うと、夏輝が揚げ足を取りに、足を目がけて討ち取りに斬り込んだ。
 真っ直ぐ進んでくる夏輝。鳳の鍔のせいで右方が動けず短絡に進んでいくジェラルドの方へと。
 確と正面から相対したジェラルド。
 取りに来た瞬間、躱す。
「…ばかりいるとこうなる☆」
 そして瞬時、顔面に膝蹴りをお見舞いする。
「ぐぎゃぁ」
 武器すら持たぬウサギのキグルミに夏輝は翻弄される。
「何がボクじゃないだ。おまえに決まっ」
 と、先ほどの蹴りの正体を決めつけ叫ぶも、最後まで言えずに矢を受ける。
 飾音が放った矢が的中し、敵に落ち着く時間を与えない。

 戦いは続く。
 幾度と刃を交える撃退士たち。
 鈴代は海斗の攻撃を受ける。
 そこに鬼灯が斧を振る。罠の方へと導くように。
 反対からはユウが魔法を放ち牽制し、進む方向を絞っていく。
 夏輝の行く先々に銃を放つジェラルド。馳はペイント弾をネチネチ放ち、飾音が弓を射る。
 射撃に囲まれ、夏輝は出口へと誘導される。動ける方向も限られている。
 そこに鳳が放つ痛烈な一撃。
「ぐわぁー」
 子供である夏輝はいとも簡単に飛ばされた。
 進む罠の方へと。ロープに当たる。
「バサッ」
 ロープが押されシーツが落ちる。
「イタッ、目が」
 夏輝は目に何かが入り、視覚も閉ざされ動転する。
 もがく。がむしゃらに手足を動かし、シーツをどかす。
 海斗は夏輝の姿に愕然とする。
 夏輝が、やっとの事で目を開ける。そして自分を見るとペンキだらけ。
 なんともだらしない格好。鎧からペンキが垂れる。
「そんな格好で戦えるか」
「逃げるしかないよ。それでも勝ちだ」
 罠へと誘導した為に2人は合流していた。息を合わせて、逃げに転じる。
 全力で移動する2人。全てを逃げることに徹底する。
 ユウが双子の位置を仲間に伝える。
 鈴代が追う。ユウからの情報で無駄なく進み、海斗へ槍で払う。
 瞬時遅れて、皆が追随する。
 射撃がいち早く、攻撃を届かせる。飾音の弓に、ユウの魔法。
 敵の走りを遅くし、その隙に近接型が追いつく。
 海斗へと鬼灯が斧を振り下ろし、蒼桐が槍を突く。
 続いて、既に弱った海斗に鳳がトドメを刺す。
 相方がやられ夏輝が狼狽える。
 海斗を放置して行けないと、攻めに転じる。
 しかし、その後に囲まれた。
 鬼灯が斧を振り上げ、飾音が弓を引き、蒼桐に鈴代が槍を構える。馳にジェラルドが銃口を当て、ユウに鳳がアウルを集める。
 それを見るや、夏輝も降参するのであった。

●降参した、その後は

「オレらの勝利だ。おまえら反則だ」
「そうだ、俺は昼間そこの蒼髪を見たぞ。目撃だって初撃の1つだ」
「最初、突如襲った訳じゃないんだ。オレらの勝ちだ」
 2人は屁理屈をこねる。蒼桐を昼間に見たと、目撃も初撃と言葉を並べ立てる。
「…天魔が屁理屈で屈すると思うか…死ぬぞ?」
 殺意を隠さず、鳳が刀で突く。首筋に掠る程度に留めるものの首に当たった刃は、己を現状を知らしめるには十分だ。
 戦く2人。
 口答えが無くなると鳳は刀をどかす。
 話せるようになると、教師から2人の悪戯のことを聞き、懲らしめるようお願いされたと告げる。
「わしにもお前らのようにやんちゃな時期があったもんよ。…だが、お前らのしてきたことは人の心を踏みにじるものや。あかん。…今回の件で身にしみたろう」
 馳は2人の行為が如何に悪いことか説明する。しかし、それは自分も通った道だと、フォローも欠かさない。
「君達はちょっとオイタが過ぎるようですねえ。人の恨みを買うってのは一つ一つは小さくても積もり積もれば痛い目を見ます。これも因果応報というやつですかね」
 今の現状は過去の行動による物と鈴代は言う。そして未来は今この時からの行動によると道理を説く。
「で、自分らが何をすべきかは理解したかな?得た知恵を使うのは悪いことじゃないけど、やっていいことと悪いことくらい判断しないとね。あぁ・・そうそう、直さないようなら今度は悪戯すらできないようにするからな」
 蒼桐は2人の理解を確認し、反省無き悪事の報復をほのめかす。
「ぐす、ぐっ、わかった」
「ごめんなさい」
 耐えられずに涙を流す。そして、海斗と夏輝は理解する。どれだけ自分達が酷いことをしていたか。
 今までしてきたことを己の身に受けることで理解した。その悪さ、ひどさ、惨めさを。
「なぁ、本当はお前ら先生にどうして欲しかったんだ? 話してみろ、見ての通り俺はガキだ」
 成長の止まった身体を見せ、鬼灯は理由を聞く。
「……なぁ、話、聞かせろよ…。なんか、理由あんだろ?」
 ジェラルドは悲しむ2人を辛そうに見る。
「一体何がお前達をそこまで捻くれさせたのだ?」
 鳳が先程の殺意が嘘のように事情を聞く。
「ぐすっ。やってもない事も、オレたちのせいにするんだ」
「何でもかんでも、俺たちが疑われた」
「どうせ、疑われるならって、どんどんいろんな事を…」
 きっかけは海斗と夏輝、2人の悪戯だった。しかし、それ以降は教師にも落ち度がある。
「全部の責任を背負う必要なんてない」
 断言する鬼灯。自らの行い以上を負うのは、絶対に間違いだと力強く明言する。
 そして、夏輝と海斗が落ち着くまで話を聞き続けるのであった。

●歩み出す一歩

 2人が落ち着く頃には辺りはもう真っ暗になっていた。双子をそのまま寝かせ、教師に報告を済ます。
「お〜、ありがとう。双子達は十分に懲りましたか。良かった良かった」
「俺たち撃退士はテメェの気分満たす為にこんな力持ってんじゃねぇんだよ!」
 鬼灯はブチ切れた。教師が満足したことが許せなかった。
「……」
 切れた鬼灯を目の前に、教師は言葉をなくし、何もできずに突っ立ていた。
「…今回の件、教師と生徒の問題として解決させるべきではなかったでしょうか。依頼にするのは少々大人気無かったのでは?」
「やり込められた逆恨みは実力行使ではなくて、今度から教育方針を上と相談してみてはどうですかね?
 子供は少しくらいやんちゃな方が元気が有る証拠ですよ」
 鳳は苦言を呈し、鈴代は別のあり方を申し上げた。
「まぁ、今後どうなるかはあなたたち次第ですからがんばってください」
 そして蒼桐があなた次第と問題を投げかけた。


 翌朝1番に、教師は2人に会いに行った。双子が寝てるのを承知で、起きたら直ぐ会えるようにと。
 夏輝と海斗が目覚めると直ぐ様、会った。
「ごめんなさい」
「ごめんなさい、先生」
 海斗と夏輝が謝った。
「本当に悪かった」
 教師も謝り、皆が顔を上げる。
「先を越されてしまったな」
 照れ笑いをする教師。寝間着姿の教師を見て、真っ先に駆けつけたと分かり、海斗と夏輝は笑みをこぼす。

 そして、3人は新たな一歩を、歩み出すのであった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
貫く気迫・
鬼灯(ja5598)

大学部8年203組 男 阿修羅
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
闇を斬り裂く龍牙・
蒼桐 遼布(jb2501)

大学部5年230組 男 阿修羅
撃退士・
飾音 静良(jb5020)

大学部3年261組 女 阿修羅
罪を憎んで人を憎まず・
馳貴之(jb5238)

中等部3年4組 男 インフィルトレイター
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅