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公園に到着した撃退士たち。
目にした光景は‥‥。
無惨の一言。鳩がパンを突くように、天魔がヒトを啄んでいる。
「ガキ共は無事だが、鳥を見ただけで怯えるようになっちゃ面倒だ。そういう仕事は俺らの領分じゃねぇ。後は任せるぜ?」
ヴィンセント・ブラッドストーン(
jb3180)は乱雑な口調である物の、子どものその後を考え救出班に捜索を託す。
「救出は任せます。こちらも時間をかけないようにはしますが」
子どもへの接し方に不安を持つアセリア・L・グレーデン(
jb2659)。そのためにも、子どもと同じ人間に捜索を任せるのであった。
捜索班は向かう。植物園にトイレに植え込み。子どもがいそうな場所を手分けして探していく。
紅葉 虎葵(
ja0059)が植え込みを探して、トイレを確認。いないと分かると次へと進む。
「子供たちを救う!」
かつて悪魔に襲われた、自身の過去と重なる事件。何時になく必死となり、次へ次へと探していく。
「誰かいない?」
召喚したネッカルと共に子どもを捜すアルクトゥルス(
jb2305)。植え込みを中心にネッカルと視覚を共有し呼びかけながら捜索する。
「弱き人を救う。それは私の騎士としての誓いだ」
「…助けてみせる、絶対に!」
そう語るのはリチャード エドワーズ(
ja0951)と、紀浦 梓遠(
ja8860)。リチャードは騎士として誇りにかけて、子どもを守ると譲らぬ気持ち。子どもと同じ年頃の弟分に思いを馳せる紀浦は、かなり気合いが入っている。
植物園を探索する2人。外部と区切られ外から見えない植物園。
外での慎重な捜査を切り替え、あちこちを探し回る。
子供を発見。3人が体を合わせ、ぶるぶる震えとどまっている。
「大丈夫だ…よく頑張った。君たちは私たちが来た以上、もう安心だ」
「もう大丈夫だよ、君達を助けに来たんだ」
リチャードは助けに来たことを伝え、鎧を身に纏った姿は子どもに守ることを印象付け安心させる。一方、身軽な服装の紀浦は子ども達を抱きしめ、頭をなでる。
「うぇーーん、うぇーーん」
「こわいよー、えーん」
「藍ちゃんが、藍ちゃんが。翔太君もどっか行っちゃたよー」
子ども達は泣きじゃくり、不安を口にする。
2人は子どもたちの話をよく聞いている。紀浦が持参したお菓子を渡し、少しずつでも落ち着かせる。
子ども達が、落ち着きを取り戻す間に、リチャードは仲間に連絡する。
護送に人数を要すと伝え、紅葉が植物園に駆けつける。ヒリュウと共のアルクトゥルスは最大の視覚で広範囲の捜索ができるのでそのまま探し続ける。
「泣かないで、助けるから!!」
駆けつけた紅葉は精一杯の笑顔で伝え、不安や怯えを取り除く。
「今、仲間が敵と戦っている。これから安全な場所まで誘導するよ」
子どもが動けるようになると、紀浦が現状を伝える。
「大丈夫、お姉ちゃん達に任せなさいっ!」
紅葉はピシッと伝える。仲間の中で一番子どもたちに年が近い紅葉の紳士な対応は子どもに安心を生む。
「大丈夫…だから僕たちを信じてくれるかな?」
紀浦が確認すると、子どもたちは頷き歩き出す。
アルクトゥルスは連絡を受け、藍ちゃんと翔太君の捜索をする。植物園の近くは3人に任せて、それ以外を探し続ける。
「藍ちゃん、翔太君、助けに来たよ」
声をかけながら、ヒリュウを低空飛行させ、植え込みを捜索する。
「ガサッ」
かすかな草木の揺れに気が付き、駆けつける。
「‥‥‥‥」
女の子が、恐る恐る顔を植え込みからちょこっと出す。
「もう大丈夫だよ。助けに来たよ」
藍ちゃんがパニックになって駆け出さないように注意しながら、落ち着かせるように努力する。
仲間に1人保護したと伝えて、その子のケアに努めつつ、周りをできる限り捜索する。
植物園の撃退士と子どもの6人は避難を始めた。敵の攻撃は何が何でも防ぎ、子どもを守れるように位置を取り、進んでいく。
避難しながらも、子どもを探す。未だ1人、翔太君が見つかっていない。敵に警戒しつつも、植え込みを探し続ける。
「あっ、翔太君」
声に反応し、撃退士の皆がそこを見る。視線が低い子ども同士は友達を見つけやすい。
「翔太君、大丈夫だよ」
「お兄さん、お姉さん達が助けに来てくれたよ」
子ども達が話し出す。友達の言葉に安心をもつ。子ども達も皆のケアを通して、友達の心配ができるようになっていた。
「うわゎーん、痛いよー痛いよー」
友達が来て、盛大に泣き始める。1人でとても心細かった気持ちが溢れてくる。
翔太君を見ると頭にたんこぶができ、足も擦り傷だらけである。パニックで木に頭をぶつけ、草木で足を切っていた。
他の3人と一緒に避難するのは難しいだろうと、紀浦が翔太君を保護し、他の子ども3人をできるだけ早く避難させると決めるのであった。
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一方、殲滅班では。未だに天魔がヒトを啄んでいる。あちこちに散らばったヒトに啄む天魔。
「辛かったでしょう、恐ろしかったでしょう。そして、悔しかったでしょう。我が子の命をここで散らしてしまうことを、我が子の将来を見ることが永遠にできないことを。我が子が人生をまっとうできなかったことを。
Alternativa Luna」
アイリス・L・橋場(
ja1078)が怒りで瞳を真紅に輝かせ母子の死体に向かって心情を吐露し、感情を消し、敵を殺すと自己暗示と共に闘争心を解放する。
「これ以上、犠牲者を出すわけにはいかないな」
天魔が動かないと分かると、凪澤 小紅(
ja0266)は仲間と作戦を共有し、アウルをつぎ込み始める。
「サーバントが相手か、真正面からやり合うのはハイリスクハイリターンってヤツだな」
カオスレート差を考え、翼を顕現し上空に位置を取るヴィンセント。
皆が配置につくと凪澤が動き出す。
初手を意地でも成功させると、爆発的な加速で距離を詰め、痛烈なキックを放つ。
「お前たちの相手は私だ!」
的確な一撃と共に、空中からの剣を掴んで言い放つ。移動前に投げていた剣。華麗に掴み、さらに注意を惹きつけ見栄を切る。
凪澤に引きつけられた天魔達。
それと同時に、アイリスが力を込めて白鳩へと力を込めて薙ぎ払う。暗赤色のオーラを纏い、荒れ狂ったように真紅の大剣で白鳩を弾き飛ばす。
白鳩は打撃を受けて瞬時動きが止まる。
止まった動きに狙いを定めるヴィンセント。
しかし、戦闘が始まり即座に動いた黒鳩2匹。凪澤に向かって飛びかかろうとしていた物の白鳩が止まるのを見ると、一匹が瞬時に翼をはためかし、アイリスへと狙いを変える。アイリスの背後へと回り、突進する。
「死角はカバーしてやる、後ろの事は気にせず前だけ見てろ」
言葉と共にヴィンセントが狙いを変えて弾丸をぶっ放す。突進が止まる。カオスレート差の大きな攻撃。
しかし、敵は攻撃性の強い天魔だ。勢いがなくなるも鉤爪で至近のアイリスに襲いかかる。
だがヴィンセントにより攻撃に間ができ確と正面から対応するアイリス。
死角からの攻撃のカバー。それはみんなを戦闘に集中させる。
白鳩のスタンを有効に繋げられなかった。しかし、撃退士たちは天魔以上の連携がある。
黒鳩が凪澤へと体当たりし、勢いのまま上空に飛んでいく。続いて白鳩も怒りをあらわに凪澤へと襲いかかる。
凪澤への集中砲火。
「子供が狙われるよりは何倍もマシだ。来るなら来い」
作戦通り。凪澤へ注意が向いて敵の攻撃が凪澤へと。
一拍遅れ、敵が集まった所にアセリアがアウルを集めて敵の周囲を凍てつかせる。白鳩、黒鳩一体ずつを巻き込んだ。白鳩はすでに怒りがあらわで睡眠を及ぼすには至らない。しかし黒鳩一体を眠らせた。
仲間が眠りに落ちるのを見るや、初動が遅れていた黒鳩がアセリアへと襲い掛かる。仲間との間に位置し、嘴で突いてくる。不得手の防御で被害を受けるも敵に対しては一切怯まない。
続いて、アイリスが紫焔を燃え上がらせ、黒い刃を生み出す。目にも止まらぬ速度で白鳩へ剛撃する。破壊と速度によって死を齎す、死の女王の一閃。
白鳩は再三の攻撃にも未だ衰え見せず、より怒りを露わに獰猛になる。
眠った黒鳩へと凪澤が大剣を振りかざす。不動の黒鳩へ背後からの攻撃。
「グギャァーー」
突如の攻撃に悲鳴を上げる。黒鳩は血飛沫を盛大に上げ、飛び立った。瀕死の有り様。
パニックと共に飛んでいく。鳥型天魔。自分のフィールドの空で安全な方へと。撃退士が少ない湖の方へと移動する。しかし瀕死でふらふらの飛び方。低空を飛び木々が重なり、不規則に動く敵にヴィンセントは狙いが定まらない。
仲間が死にそうなのを感じてか、1匹の黒鳩が死にかけの黒鳩に追随する。一直線に、瀕死の仲間を通り越す勢いでその場を離れる。
ヴィンセントは仲間を見る。アセリアが瀕死の黒鳩へと走っていく様を。
「簡単には外さねぇぜ、手前ぇらの動きを追うのはラクだからな」
瀕死の敵は仲間に任せ、追随している黒鳩へと弾丸を放つ。的確に当て、黒鳩の動きが鈍る。しかし、敵はこちらに見向きもせずに全力で逃げる。
瀕死の敵は低空から水中へと逃げようとする。
「逃げるだけの知能はあるようだが…そこまでだな」
アセリアは先に回り込んでいた。敵の動きを止めると、アウルで冷気を生み、池の周囲を、敵を巻き込み凍てつかせる。着水の瞬間を狙って放った冷気。
動きを止める為の攻撃であった。しかし、既に瀕死の敵は攻撃を受けると、そのまま落ちていった。逃げるでもなく真っ直ぐ水底へと。
アイリスに鉤爪を向ける白鳩。仲間の死にも構う事なく襲い続ける。追従し、1匹の黒鳩もアイリスを突いている。
再三の攻撃でアイリスは痛手が蓄積される。しかし、自らへのダメージは無視して、逃げた黒鳩へグリースを展開する。
肉片が飛ぶ。糸が敵に絡むも、動きを止めるには能わない。
逃げる敵を追って、全力で移動する凪澤。真っ直ぐ進む黒鳩に対して池を回り込む。かろうじて追いつき攻撃するも、躱される。
しかし、敵が逃げるのに時間をかけさせた。
その間にも、ヴィンセントは敵の逃走方向に、捜索班がいるのに気づき、連絡する。
逃げる黒鳩。撃退士へは最初の一撃しか攻撃していない。他の天魔が攻撃している間に只ひたすら逃げている。加えて、鳥型天魔。空を自在に飛び回れる。撃退士たちより圧倒的に有利な空を飛び続ける。
だが、天魔は人を襲う。敵わないと分かった殲滅班から逃げているも、子ども達を見つけるや、そこに直進する。
連絡を受けた捜索班。
既に子ども5人を保護するも、避難は終えておらず、安全とは言い難い。
上空に意識を向ける。黒鳩が飛んでいる事を確認する。
「ネッカル、来なさい!」
アルクトゥルスはヒリュウを手元に来させ、警戒する。子どもを保護するも皆と合流するには至っていない。
藍ちゃんには友達全員を保護し、撃退士のみんなが護衛に付いてると伝えるも、やはり子ども1人だけというのは不安らしい。パニックを起こして危険を生まないようにと、ヒリュウの超音波をいつでも使用できるように警戒する。
紀浦は子どもを抱えて、アウルを集めいつでも移動できるようにする。はっきりと敵を視認するも襲ってくる様子はなかった。
上空を一直線に通り過ぎる。その先にはリチャード達が避難している。
敵の狙いは子どもが3人集まっている紅葉達であった。
「残月の光にて殊類と成るも、その爪牙を以て災禍に立ち向かわん―オン、バザラアラタンノウオンタラク―ソワカ!」
祝詞を唱え紅葉は意識を切り替え、子ども達を守る虎となる。
黒鳩が子ども目がけて突進してくる。
リチャードが影の書から槍を生み出し攻撃する。敵の勢いを削ぐも未だ子ども目がけて進んでいく。
横からさっと子どもの前に出た紅葉は、両刃の直剣で突進を受ける。突進の勢いで後ろへと押されるも、弾き飛ばされずに敵の動きを止める。
前に進めないとなるや、黒鳩は右へと軌道を変えて、子どもへと襲いかかろうとする。
今度はリチャードが大剣で受け応える。そして敵に移動する間を与えずに斬りかかる。見事な切り返しで敵を地に落とす。
再度の攻撃に備える、リチャードと紅葉。しかし黒鳩は動かなかった。敵は死していた。
2人が身の丈を超える剣を悠々に扱う様は、子ども達にはすごい物であった。メンバーの中で最も小さい紅葉の防御は、子ども達に撃退士の打たれ強さを守りの強さを心に残し、リチャードの堅固な防御と、受けきった後の弾き返して苛烈な攻めが騎士の勇猛さを印象づけた。
戦闘班により既に弱っていた天魔だが、不安を覚える暇すら与えない、2人の防御と討伐は子ども達を安心させた。
戦闘班では黒鳩、白鳩1匹ずつと対峙している。
凪澤へと黒鳩が襲いかかった。全力での移動により、がら空きとなった背後へと。上空からの勢いをのせた体当たりで凪澤は吹っ飛ばされる。
少し遅れて白鳩も凪澤へと突進しようとする。身体の大きい白鳩の突進は威力が大きい。しかし大きいことは速さを黒鳩よりも遅くしていた。
ヴィンセントが銃を撃ち白鳩の攻撃を阻止する。
弾丸を受け、動きが止まった白鳩へとアセリアが斬撃を放った。大きく魔界に影響を受けた2人の攻撃は強くサーバントに被害を与え、白鳩の命は風前の灯火となる。
白鳩は最後の命を振り絞るように、直近に攻撃されたアセリアへ鉤爪を振るう。アセリアは大きく被害を受けるが意識を飛ばす程ではない。
そこにトドメの一閃。アイリスの放った剛撃が白鳩を貫き倒した。
白鳩がやられ、残りの天魔は黒鳩1匹。
即刻、その場を飛び立ち逃走を図る黒鳩。白鳩は逃げる気配を見せずに戦った。しかし黒鳩は不利となると逃げ出すようであった。
ヴィンセントへと襲いかかった黒鳩。逃げるついでの威嚇の攻撃なのか威力が弱く、ヴィンセントは攻撃を受けるも、即座に敵を目がけて弾丸を放つ。
右翼に命中。
黒鳩は地に落ち、そこにアセリアと凪澤が挟撃する。アセリアは蛇腹剣で絡め取るように足止めし、凪澤は健在の左翼へと大剣を振り下ろす。
敵は翼に足を封じられ、動けない。
そこに皆が包囲しトドメを刺すのであった。
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サーバントを撃退し、子ども達全てを合流させた。
母子のご遺体にはアルクトゥルスとヴィンセントが毛布をかけ、子どもの目には映らないようにする。
紀浦がその場へと菊の花を置く。
さらなる被害者を生まずに安心するも、既に死んでしまった犠牲者に哀悼の意を示す。
依頼を解決するも、子ども達に事後のケアもする。
トラウマにならないようにとヴィンセントは、遠足の引率に心療医療等の手配を頼んでおく。
子ども達と一緒に遊ぶ紅葉は、事件で傷を負った子ども達の心を救おうとする。
そして、子ども達は笑顔を取り戻した。