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マスター:立鳥鳴秋
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/05/08


みんなの思い出



オープニング

「ここは久遠ヶ原学園だ」
 学園のとある一角で教師が突然と話し出す。
「学園、すなわち教育の場である」
 何だ、何だと、皆が注目し始める。
「撃退士の養成、これが学園の目的である」
 声に熱気がこもり、勢いを増していく。
「何が言いたいか、諸君らには分かるだろう」
 ふんふんと言いそうに顔を上下にさせて語っていく。
「目標を持って取り組むということだ!!」
 何のことだと一瞬クエスチョンを浮かばせ皆が戸惑う。
「依頼には、目標を持て!」
「目標と言っても何でもいいんだ。仲間との密な連携や、強い敵との戦闘や子供の護衛を想定しての行動でも良い。まあ〜、避難訓練とかと同じだな。あー、それに友情を育むのも良いぞ」
 生徒の皆も教師の意をやっと理解した。
「ここに簡単な依頼がある。真面目にやればほぼ100%成功すると思ってもらって構わない」
 ごほんと咳払いをし、依頼の説明に入る。
「森にグドンと言うディアボロが12体。大きさは6、7歳の子と同じくらい。これは雑魚と言って過言ない敵だ。攻撃と言っても殴るやぶつかってくるなどしか報告されていない。さらに好都合なことに、雑魚としては生命力が大きく、攻撃や防御は小さい。すなわち、一撃での討伐はなく色々なことを試せるだろう」
 満足げに話を続ける。
「そう、そう、目標は持つだけでは意味がないぞ。持つだけなら誰でも出来る。目標に対して努力をしなければいけない。具体的な策を考えるのも大事だ。例えば、さっき言った子供を護衛しながらの戦闘ならば、他の撃退士を背負いながら戦うという事で代用するのも一つの手だ。その場面をよーく考えてみろ」
 目を閉じて、想像を働かし出す。
「森の中でディアボロが子供を連れ去ってしまう。子供は恐怖のおののき気絶してしまっている。一刻も早い救出が必要だ。そして救出後の安全な場への移動。周りには依然としてディアボロがうろついている。……」
「これはほんの一例だが、撃退士たる者様々な場面に出くわすだろう。それに対して訓練するのもいいだろう。他にも木を傷付けないや仲間との連携など、色々なことを考えられるだろう」
 間をあけて生徒の注意を引く。
「自分で目標を設定し、達成に向かって努力をする。これがとても大事だ。そして学園での学びはかけがえのない物となる。皆は依頼を通して、成長し、友情を育んでいくだろう」
 自分の学生生活を振り返り、感慨深く話す。
 そして力強く生徒の顔を一望する。
「では、諸君の健闘を祈る」


リプレイ本文

●語り合う目標
 依頼を受けた撃退士の皆は目標を話しながら森へと進んで行く。
「‥‥敵そのものは余り強くないと言うことですから、普段余り出来ない戦い方を試してみるのも悪くないかも、ですね」
 楊 礼信(jb3855)は、今までの多くの依頼では仲間への支援に盾役であった。そのために今回の戦闘を通して、先頭をきっての積極的な戦い方を学び取ろうと準備する。
「敵が弱くても油断はなりませんね…
 私はそれより弱い自信がありますから(えっへん 」
 武器を振るった経験が皆無の村上 友里恵(ja7260)は、折角の機会ですからと、実践練習を想定する。消極的な性格が影響してか、戦場の地理を調べておいて、いざというときスムーズに皆の所へ逃げられるようにする。
「戦闘中、挙動がおかしく見えるかも知れないけど気にしないで♪」
 そうみんなに告げる雁久良 霧依(jb0827)は、如何なる状態でも戦えるようにとハンデを負って戦う為に準備していた。
(「強烈な尿意に耐えつつ全ての敵を殲滅するよ♪」)
 さすがに具体的には教えない♪、と思いながらも冷たい緑茶をがぶ飲みしている。
「天候も問題ないです。よろしくお願いします」
 卜占を用いて生命の気流から天候を読み、海野 翔(jb4855)はディアボロの元となった生物に思いを巡らす。事前に皆を誘って神社に行き、場の上質な空気を吸うことで感を養っておいた。
「クリスの目標は『皆を護る』ですの!
 クリスの大切なもの…いろいろたくさん、全部護って見せるですの!」
 クリスティン・ノール(jb5470)は護る戦い方を考える。前衛にて、盾で受けつつ、あえて前出ることで敵に隙を作り、皆で攻撃してもらうと。
「目標は敵の攻撃を全て回避し被弾しないこと」
 仲間を守れる前衛を目指すべく、陽波 透次(ja0280)は速度を武器に回避を特化し戦闘に挑む。
「透次さまとは少し目標が似てますですの。
 クリスはまだ弱いですし、透次さまには到底力も及びませんけれど。ですの」
「仲間守る前衛目指す所が似てますね」
 そう語り合い、クリスティンが前へ出るときに、透次は後衛へと気を回したり、敵の隙に追撃するなど連携を考える。
「みんなと一緒にいろいろ学ばせて貰いますね。」
「よし、頑張ろう(ぐっ 」
 皆が目標を語り、礼信が締めくくり、透次が意志を言葉にして進んでいった。

●戦闘を通して学びを
 撃退士の面々は、森の中でグドンを慎重に探す。皆で警戒方向を補い進んでいく。いくら雑魚のグドンと言えども、囲まれてしまえば通常の2倍ほどのダメージを受けてしまう。
「ううっ、は、早く倒しちゃいたい」
 霧依は落ち着かないようで、もじもじしながら木陰や茂みに敵が潜んでいないか確認する。
 森の奥に入っていくと皆はグドンを発見。報告通りの12体。9,3に分かれており、12体全ての連携はないようだった。
 3体をさらに2つに分けて友里恵が戦闘訓練を出来るようにする。友里恵が1体と対峙し、翔が2体を引き付ける。残りの者で9体と戦闘をし、各々目標へ努力する。
 戦闘開始前にと友里恵はアウルを集めて衣を作る。仲間達は透明なヴェールで覆れることで、霊気に守られ魔法に対する耐性がつく。技を知るが効果知らずのアウルの衣の意味を知る。
「学園の屋上にスキル効果について教えてもらえる場所がありますよ。屋上について説明している場所の下にあります」
 同じスキルを習得している礼信が便利な学園の施設について連絡する。超マンモス校の学園では、必要な施設を探すのも一苦労だ。仲間の助けなしでは、探すことも困難を極める。
そして、態勢を整え戦闘を開始した。

「まじかる巫女さん、ただいま参上♪」
 敵と向き合いロッドを構え、形にぴったりな宣言をする。
「悪い子にはおしおきしちゃうぞ☆」
 容姿に合った、いかにもな台詞と共にアウルを込めてロッドを振る。初めての武器の振る舞い。これでいいのか疑問を持ちつつ振ったロッドから、光が飛んで行き敵に的中。
 攻撃を受けグドンは友里恵に近づき、突き当たる。威力も弱く正面から相対し受け止める。
「このロッドで浄化してあげる♪」
 使い方を理解し、次にはロッドらしい振り方をしてみる。アウルに覆われ光り輝く友里恵はロッドに調和した姿である。
 それでも敵は撃退できず、友里恵を殴ってくる。友里恵は敵が近づいた所に、ロッドで打撃をお見舞いする。どれ位使えるか知るための攻撃。しかしそれで敵が撃退できた。ロッドの打撃もそこそこの威力があった。

 一方、翔はグドン2体と対峙している。
 最初に風の刃を生み出し攻撃した。威力が弱いながらも確実に当て、敵を引き付け、仲間の元へ向かうのを阻止するのであった。2体を引きつけ友里恵の元へと1体を進行させた。
 狙い通りに攻撃を受けグドンも翔を殴ってくる。2体が動き連続の攻撃をする。しかし力が弱い。然程のダメージとはならない。
 続けて、翔がアウルを集め攻撃する。グドンへ当たり、グドンは先程と差異なく翔に向かって攻撃する。以前の同様の打撃に翔はきちんと受けて相対する。
 そうこうする内に友里恵が合流した。1体との戦闘の友里恵は直ぐに撃退し終わり走ってきた。
 グドンはすでに攻撃を受けている。そこに2人でアウルを集め、風の刃に魔法の光が飛んでいく。1体に2撃を与え討伐する。残った1体が仲間がやられるや否や友里恵へ向かい突進する。
 友里恵は突進を受けるも即座に態勢を整え、ロッドを振る。打撃も試したが魔法の方が強いと光を放つ。続けて、翔がアウルを集め刃を放つ。
 敵は2人に囲まれ攻撃を受け、倒れていった。

 グドン9体と対峙した銘々は武器を構えて相対する。
 礼信がアウルを集め、彗星を作り出す。グドンが密集している場所へと解き放つ。楕円を描き彗星がグドンにぶつかっていく。半数を超える5体を巻き込み、グドンに圧力を及ぼす。圧力を感じグドンは愚鈍、愚かでのろまな動きとなる。
 続いて透次が前へ出て、刀の間合いを維持し、最短の動きで隙少なく素早い剣閃で攻めていく。
 攻撃を受けるも倒れないグドン。前へ出てきた透次へと殴りかかる。
 避ける、避ける。
 5体ものグドンが連続に攻撃するも、熟練を遥かに超えエリート並の身の躱しを持つ透次はいとも容易くよけていく。木々を使って、上下左右全ての空間を駆使して立体機動で回避する。
「連携をとって、みんなで一緒に敵をやっつけますですの!!」
 クリスも同様に攻撃を受けていた。ぶつかってくるグドンに盾で相対する。冷静に攻撃を受けつつ、攻撃の直後にあえて前へ出る。
 グドンは不意に押されて、隙が出来る。
 そこに霧依が雷の矢を放つ。油断をついて一直線に向かった雷の矢。的中するとグドンが倒れる。彗星に加えて不意打ちの雷矢の攻撃。手際よくまずは一体グドンを討伐。
 攻撃の元の方をクリスが振り返る。そこには遠くから見ても分かる程、霧依の顔を紅潮している。さらに汗まで垂れ落ちている。
「だ、大丈夫よ気にしないでっ。ううっ、は、早く倒しちゃいたい」
 自らの挙動が不審であると自覚して、不安を減らすようにと声をかける。
 続いて、透次が再度攻撃する。クリスが前に出たことから後衛への突破、迂回防止に気をつけ位置を取る。グドンは全ての攻撃を躱す透次の早さに徐々に慣れつつある。そこを狙って、まずフェイントをかける。透次の動きに敏感になったグドンは透次の動きががあると即座に守備に入る。動きを確認、即刻、側面へと回り込み斬りつける。防御のない箇所へと力強く斬り込みグドンを討ち入った。
 グドンは透次に、ノールにと攻撃する。
 透次は、前に後ろにと攻撃が来る。冷静に対処するも攻撃を受けてします。たとえ90%の回避が出来たとしても、7回も攻撃されれば5割以上の確率で攻撃を受けてしまう。
 クリスは盾で攻撃を受ける。先ほどは前へ出て隙を突いた。2度も同じ事では隙を突けないと、今度は空へと飛んでいく。先刻に光の翼を顕現しており、空へも自由に動けるようになっていた。
 攻撃されていたと思いきや、突如、上空へと飛んだクリスにグドンは慌てる。
「幽き命よ、全ては神の御心のままに、光に還れ。ですのー!」
 クリスは盾を剣に持ち替え、アウルで銀色の焔に包まれた剣で高速の一撃を振り下ろす。
 続けざまに礼信は前へ出て、力を込めた重く鋭い一撃。2人の技を受けグドンは倒れ、残り6体となる。
 前に出たことで礼信にも攻撃が向かう。礼信は盾に持ち替え、防戦に回る。未だ多くの敵が残る中、包囲されたら危険と無茶はしない。
 霧依の間近に敵がいた。コメットを受けてから攻撃せずに森を遠回りして近づいていた。
(「敵は背が低い、お腹の辺りを攻撃されたら終わる!」)
 敵の攻撃を、ぎりぎりに盾で応対する。
「喰らいなさあうううっ!」
 雄叫びを上げ、武器に星の輝きを込め撃ち放つ。至近のグドンに攻撃を当て討滅する。

 戦闘が長引く中、友里恵と翔が合流する。12体いたグドンも既に残り5体。しかし残っている敵は、未だ攻撃を受けていない者がほとんどだ。
 現在、礼信とクリスが敵に囲まれている。礼信は盾で防いでおり、クリスは剣を構えて防戦には適さない。
 そこに、透次が駆けつける。グドンが殴りかかるところに横ざまに払って斬りつける。駆けつけざまの攻撃で威力は弱い。
 しかし、グドンに隙を作った。直ぐさま、礼信は防戦から切り替え、剣を振りかざす。敵は剣戟を受け血しぶきを上げ、弱っていく。
 瞬時遅れてクリスも剣を振り下ろす。3人の連撃を受け、とうとうグドンも地に倒れていった。
 数多くのグドンが死して行くも、終わらない。残った者は怒りを露わに獰猛になる。
 グドンは駆けつけ、現れた透次へと突進する。先ほどよりも素早くなるも透次の身の躱しは尋常ではない。全ての攻撃を回避する。
 突進に気が取られているグドンは突如、横手から攻撃を受ける。
 友里恵が放ったものである。続けて風刃に雷矢が飛び交う。合流した友里恵に翔が後衛に位置して攻撃を放っていた。味方への射線に気を付けていた為、全てを当てるには能わない。
 しかし、突然の攻撃で注意を引いた。敵を倒すまでには至らなくとも、1体がこちらに向かってくる。
 後衛にて、撃退士3対ディアボロ1。撃退士が敵を囲める状態に既になっている。
 グドンが霧依に向けて突進する。顔は紅潮し身体はぶるぶる震えており、如何にもピンチな者へと攻撃する。
(「駄目よ霧依…年長者でしょっ…決壊したら皆に見られる。それはそれでイ…じゃなくてっ!兎に角) 」
「早くやっつけるわよおっ!」
 霧依は突進を盾で受け、即座に雷の矢を生み出し解き放つ。
 遅れて、友里恵が魔法を放ち、翔が風の刃で攻撃する。
 3人に囲まれて三度の攻撃を受けグドンも地に臥し倒れていった。
 一方、前衛ではクリスが盾で攻撃を受ける。敵は獰猛になるも狙いが単調になっていた。クリスが翼を顕現し空へと飛ぶ。すると敵はそのままクリスに向かって殴ろうとする。身近にいる他の撃退士のことを忘れている。
 上に気を取られているグドンに向かい、首を目がけて斬り込む透次。その一閃をなぞるように、礼信が力を込めて切り伏せる。
 残りは2体、6人の撃退士でグドンを取り囲む。
 体当たりするグドンを、透次は横に躱して、背後に回り斬り込む。そこに翔が放った風の刃が到達しグドンを切り裂いていく。加えて剣を構えたクリスが剣を振り下ろし、とどめを刺す。
 ラスト1体となったグドンに、友里恵がアウルを集め魔法を放ち、礼信が剣を構えて振り下ろし、霧依が雷の矢を解き放ちつ。グドンは最後に攻撃する暇もなく斬られ、射貫かれ、討伐された。

●終えての成長
 全てのグドンが撃退されるや否や、霧依がダッシュして行った。残りの皆は戦闘中にも挙動がおかしく、顔色悪く、何か悪いことがあるのかと疑問に思う。しかしいない人には何も聞けないと、学園に向かって歩き出す。
「‥‥普段とは違った戦い方を試してみるというのは良い経験になりますね。もちろんこの戦闘で上手くいったからと言って驕るつもりはないですけど。もう少し強くなって、状況に応じた戦い方が出来るようになると良いですよね」
 礼信は、学びが目的の今回の戦闘を評する。
 翔は持ってきていた花を添え、お祈りする。生りたくて生ったわけではないディアボロの元の生物に思いを寄せて。
 そうこうする内に霧依が戻ってきた。先程までとは打って変わった至福の表情。
「大丈夫でしょうか?顔色も悪かったですが」
 友里恵が霧依を心配し言葉をかける。
「大丈夫よ。友里恵さん、聞こえた気がするのよね、まじかる巫女さん…と」
 何をしていたかは教えられないと、大丈夫と伝えて話を変えようと別の話題を振る。後衛で友里恵の近くにいた霧依は練習中の言葉を聞こえていた。
「……」
 言葉を聞かれていたと恥ずかしがり屋の友里恵は顔を真っ赤にする。
「えと、お疲れ様」
 透次は皆に声をかけ、クリスティンさんと握手する。
「透次さまの戦い、凄かったですの。クリスも負けない様に頑張りますですの」
「本当に天使みたいに可愛い子だな。天使が皆こういう素直な子だと良いのに…」
 クリスと透次は親愛のしるしでもある握手を笑顔で交わす。
 皆が目標に向けて努力し頑張り、友情を育み成長したのであった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:4人

未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
春を届ける者・
村上 友里恵(ja7260)

大学部3年37組 女 アストラルヴァンガード
群馬の旗を蒼天に掲げ・
雁久良 霧依(jb0827)

卒業 女 アストラルヴァンガード
闇を解き放つ者・
楊 礼信(jb3855)

中等部3年4組 男 アストラルヴァンガード
『九魔侵攻』参加撃退士・
海野 翔(jb4855)

大学部3年177組 男 陰陽師
繋ぐ手のあたたかさ・
クリスティン・ノール(jb5470)

中等部3年3組 女 ディバインナイト