●結成!神聖騎士団!
「ふふふ……さあ、楽しく殺らせてもらおうかしら。簡単には死なないで頂戴ね?」
十字のデザインをあしらった白と青を基調としたマントに上半身だけ重い鎧、片目には白の眼帯をつけて、草摩 京(
jb9670)は恍惚として、目の前のゾンビ達を見つめる。
その横に並ぶのは3人の撃退士。
女性二人は騎士団衣装をパリッと着こなし、男性は年季の入った騎士団服だ。
この日の為にわざわざダメージ加工を施し、前を肌蹴させて着流している。
「鷹を射抜く不死鳥の漢…、フェニックスガンマン!ロック・カミタカ参上!」
クールに、且つ情熱的に。神鷹 鹿時(
ja0217)は名乗りを上げた。
「ゾンビは全員逝ってよし!」
ふふん、と玉置 雪子(
jb8344)は口角を上げてゾンビの群れを指差す。
「じゃあ、私がトップバッターを務めさせてもらうの」
にこっと、微笑むと若菜 白兎(
ja2109)はとてとてとゾンビの群れに向かって歩き始めた。
●エターナルなんとか
「あ!危ない!」
幼い少女がツインテールを揺らしながらゾンビの群れに歩いていく様は、審査員からすると異様な光景だっただろう。
光纏もしないまま、あっという間にゾンビに取り囲まれてしまう。
「琴音君!キミの斡旋所紹介の娘だろう!?大丈夫なのかね!?」
ゾンビが一斉に白兎目掛けて攻撃をしかける、その刹那、両のひじを付き、口の前で手を組んでいた琴音がニヤリと笑う。
「こ!コレは!?天使様!?」
ゾンビ達の中心で淡青色の光がふわふわと揺れ、まばゆい光が白兎に降り注ぐ。
更に天使の翼の具現化である。
老人なら既に貢物をしつつ祈るレベルの神々しさに、審査員の一人は思わずそう叫び、そっと掌を合わせた。
それでも空気を読まずに攻撃してくるゾンビは居る。
光に怯まず、振り上げた武器を力任せに振り下ろす。
ギィン!
白兎の周りにいつの間にかに展開された六芒星型の白盾、それがふわりと舞い、いくつかに分離して連続する攻撃から主を守る。
「…この程度じゃ、わたしに触れることも出来ないの」
にこっと、天使さながらの微笑みの後、すばやく攻撃に転じる。
分裂した白盾は、風切り音を響かせながら高速回転し、周りの敵をなぎ払う。
「うふふ、このタイミング、待ってたわ」
声は静かに、心は熱く、その闘争心が具現化し、京の身体を黒紫色の焔が包む。
その焔はやがて巨大な武人の幻影へ姿を変える。
武人を背中に宿したまま、風を冠した槍を豪快に左右へ。
槍は風を生み、襲い掛かる。
白兎を攻撃しようと思って集まったゾンビ達は、もはや一溜りもない。
一方の白兎は、その風が発生しきる前にフィールドから逃れている。
「今ですね!わかります!氷の礫!グォレンダァ!」
風を起こす京の傍らで、白雪珠で氷の礫を生み出していく雪子。
礫が風に乗り、巻き上がり吹雪のようにゾンビの足を止める。
━━5ターンかけて。
敵の動きが弱くなった今がチャンスと、京は攻撃を次ぎの段階へ移行する。
天空に槍を掲げ、その状態で高速回転させ、強制的に上昇気流を発生。敵を巻き上げる。
「コレは豪快且つ物理法則を無視してますね、どうやっているんでしょうか。滞空時間も凄い長い!」
ほう、っと興味深そうに審査員が眼鏡を上げる。
今回はいいんです!
ここで、出番を待ち望んでいた男の登場である。
ダメージ騎士団衣装をバッタバッタとはためかせ、満を持しての登場である。
二丁拳銃を構え、翼を生やしての登場である!
━━吹き上げるブリザードの中心で。
「世間はさぁ!冷てぇよなぁ!」
某テニスプレイヤーの幻影を彷彿とさせつつ雪子が叫ぶが、当の鹿時はそれどころでは無い。
早く攻撃を開始しなければ仲間の攻撃で身体の芯まで凍り付いてしまう。
「ふ…不死鳥は不死身だ!弾は冷えても銃身は業炎だ!いっけぇぇーー!!」
吹雪の中を飛び、敵に接近する。
右の拳銃を一体目の腹にゼロ距離射撃したかと思うと、くるりと身を翻して左の拳銃で二対目の頭を打ち抜く。
更に吹雪の中を降下し、上方へ向かって零距離射撃で次々と打ち上げていく。
「…彼は何故射撃武器で近接攻撃なのかね?」
「ロマンだからです」
キッパリ。
鹿時が寒さと戦っている中、他の連中もただ見ていたわけではない。
槍を右手で回したまま、左手でじゃらリと、チェーンの付いたロザリオを取り出し、敵に向ける。
それだけで無数の光の矢が、空中の鹿時ギリギリを掠めながら敵に命中していく。
「京!当たる!これいつか当たる!」
「うふふふ」
鹿時の声が聞こえなかったのか、或いは聞こえたからこそか、攻撃は激しさを増す。
ついでに雪子もワロスとか言いながら氷の礫で援護射撃をしてみたり。
白兎も、私もやるの〜とかいいながら紋章から水の矢を飛ばしてみたり。
あまつさえ水の矢が凍って氷の矢になって鹿時のダメージ騎士団衣装を、ハイダメージ騎士団衣装にクラスチェンジさせてみたり。
幼さ故、無邪気さ故の為、きっと鹿時も笑って許してくれる。
さて、ご愛嬌はここまで、と、京は再び槍を両手で持ち、八の字に振り始める。
槍の流れに沿うように気流はうねり、ゾンビ達をくるりと取り囲む。
同時に雪子が静かに一度目を閉じると、その瞳は光を失い、頭上には光の輪、背中には透き通った羽が具現化する。
「さあ、お終いにしましょう、草摩先輩。いい加減あの醜いお顔には見飽きてしまいました。」
すっと手をかざし、煌く氷の錐を、敵ではなく、京へ。
それも連発で放つ。
バァン!!と。
大きな音と共に、二つの氷はぶつかり合い砕ける。
「うふふ、好きなだけ喰らいなさい!」
砕けた氷を巻き上げ、散弾状にして敵へと放つ!
『エターナルフォース・ヘイルストーム(相手は死ぬ)!!』
ノリと中二と根性の散弾を、高速機動でギリギリで回避した鹿時は、振り向き様に照準を空中の敵に定める。
「鷹を射抜く不死鳥は伊達では無いんでな…、限界まで狙い撃つぜ!!」
狙撃により散弾から外れた敵を再び範囲の中へ押し戻す。
「フィニッシュなの」
ふわっと、羽を広げて白兎が白く輝く巨大な槍を具現化、散弾の中へ放つ。
光の槍は瞬きながら、散弾を砕きながら敵を飲み込み━━。
光が収まった時には砕かれた氷のダストだけが、キラキラと瞬いた。
全ての演目が終わった後、ひゅん、と鹿時が地上へ帰りポーズを決める。
「本当は隠し玉があったが…、こいつら相手には不要だぜ!」
スナイパーライフルを立ててグッ!っと。
だが、無情にもオチとは行くべき人の元へと行く。
破壊されなかった氷の礫の一つが、鹿時へと落ち━━、そこで意識を失った。
●演舞!和装美女軍団!?
鹿時が意識を失い、モブの皆さんの演技も終わり、審査員が若干飽き始めた頃、最後の一組が現れる。
そのチームが現れた途端、審査員達の目つきが変わった。
━━。主に男性が。
「おーっほっほっほ♪わたくしが、華麗に決めてさしあげますわ!」
白い生地に梅花刺繍、青い腰帯のミニスカ着物を軽く着崩して登場したのは 桜井・L・瑞穂(
ja0027)だ。
瑞穂の右隣、赤を基調とした和ロリドレスに、小物類や武器まで和風デザインにアレンジして臨んでいるのは恋人の帝神 緋色(
ja0640)。
「好き物もいるようだねぇ。まぁ、面白そうだから良いけど」
独特の、花魁に足元をブーツにした変則的な和服で、瑞穂の左隣で妖艶に立つ秋桜(
jb4208)。
「華麗にカッコよく……か。とにかく、ちゃんと敵は倒さないとね」
橘 優希(
jb0497)は新撰組のコスプレをしてご登場。口ではマジメな事を言いつつも、鉢巻までつけて割りとノリノリ。
「最後に美女4人の演舞とは、コレだけでポイントが高いですね」
「半数は男性ですけどねー」
にこっと、琴音が審査員に微笑む。
「━━え?」
審査員の頭の上に?マークが浮かぶが、無視である。
●格好良く、華麗に× 華麗に、エロく○
「ふふふふ、わたくし達の演舞。特とご覧下さいな♪」
先陣を切ったのは目立つの大好きお嬢様、瑞穂だ。
その回りにはキラキラと光子が舞う。
それはアイドルのステージさながらに、ミニの浴衣に身を包んだ姿を照らす。
この時点で審査員のうちの一人は10点を書き込んだ。
「行きますわよ、緋色」
軽やかなステップでゾンビの群れを翻弄していく。
右へ、左へ、敵の動きを読みながら、緋色と連携をとりながら。
氷上であればまるでフィギュアスケートのように、躍動感がありつつ華麗に舞って行く。
勿論翻弄しているだけではない。
「なんだ……?何処から花吹雪が…?」
審査員が見間違うソレは、瑞穂特注の蛇腹剣。
攻撃を重ね、ゾンビにダメージを与えつつ優雅さを忘れない逸品である。
「真の美は如何なるものか、其の目に焼き付けて下さいなっ!」
美しく、華麗な攻撃、だがそれだけではない。
ペアの緋色と連携して、徐々にではあるが敵の動きを制御していく。
遠方に逃れようとする者には、突如として無数の腕が絡みつき、あるいはスタンエッジが容赦なく飛び、その行動を抑制する。
すかさず瑞穂の攻撃で輪の中に押し込むという連携。
恋人同士である息のあった二人だからこそなし得る阿吽の連携である。
とはいえ、敵の数も多い。
二人で全体を制御するのは至難の業ということで、もう一つのペアの登場だ。
「久遠ヶ原学園所属撃退士、ルインズブレイド、橘優希……押して参ります!」
鉢巻をふわりと揺らしながら、優希は秋桜に合図を送る。
待ってましたと、秋桜は冥府の風をその身に纏う。
「張り切っていこうず」
花魁の髪飾りをしゃらんとならし、優希に寄り添い。
「わっわっ、ち、近いです!秋桜さん!」
すっと距離をとりつつ、左の腰に差した鞘から、二本の剣を引き抜く。
新撰組の衣装になんともマッチした武器だ。
「今回橘氏は私のペアなんだから、もっと親密にいこうず」
すすっと近寄る秋桜から逃げるように神速発動!
わらわらと居るゾンビに十字の剣で切りかかる。
敵の横をすり抜けるように切りつけ、勢いを殺さないままクルリと他のゾンビの後ろへ移動し、流れるように切り捨てる。
「切り捨てごめん!! ……一度、言ってみたかったんだぁ、これ」
満足そうに剣をひゅんと鳴らすと、瑞穂達同様に周囲の敵を中心へ誘って行く。
そんな優希を見ていた秋桜。
逃げられると追いたくなるのが心情というもの。
それは人間でも悪魔でも変わらない。
すすっと再び優希に急接近し、背中を合わせて腰をくねらせる。
「近いですってば!秋桜さん!」
「背中は任せるといいず」
それっぽい事を言っては居るが、完全にやりたいだけである、この人。
とは言え攻撃は真面目に。
指先から爪を生み出し、靭やかに攻撃を繰り出す。
大げさに衣装を棚引かせ、ダンススキルで優希を支点にクルリと回って魅せる。
「攻撃されたゾンビも一箇所に集められているせいもあって、大人数でダンスを踊っているように美しいですね」
琴音が少し満足そうに解説を入れる。
ここから、フィニッシュである。
「此れにて終幕ですわ。華やかにお散りなさいな!!」
一箇所に集められたゾンビに向かって、無慈悲な攻撃が繰り出される。
まずは瑞穂が先陣を切るように燃え盛る劫火を呼び出す。
「もう少し、温度を上げてみようかな?」
クスっと笑い、緋色の追い打ち。フレイムシュート。
焼け焦げ灰へ帰するゾンビ達。だが、まだ全てではない。
「僕も行くよ!轟け! 必殺の一撃!!」
自分の身長より20cmほど長い、綺羅びやかな大剣を手に、渾身のエネルギーを込めた一撃を振り下ろす。
その軌跡は衝撃波となり、仲間をすり抜け残った敵のみをなぎ払う。
そこへさらにダメ押しの一撃。
数歩離れた所で闇の力を腕に纏う秋桜。
「色々まとめて吹っ飛ぶといいぉ」
ご丁寧にヘルゴートを纏わせた最後の一撃を放つ。
その攻撃は、全てのゾンビと味方の衣装を薙ぎ払う!(仕様です)
緋色のスカートの裾がギリギリまで敗れたかと思うと、瑞穂の右肩から袖口までがビリっと破ける。
危うく胸がさらけ出される寸前で着物を抑える瑞穂。
そしてその姿をスマフォで撮影する秋桜。
完全に確信犯である。
もう滅茶苦茶でも、一応は演技は最後まで。
4人でバーン、と決めポーズ!!
と思ったら、緋色の悪戯心がムクムクと。
瑞穂の帯の端を掴んで、一気に……。
「ふっ、決まりましたわ。……緋色? 何をなさいま、って、あーれぇーっ!?」
既にボロボロになったミニの浴衣を着ているというのに、更に帯回し!
「うわわ!さすがに見えちゃう!」
やり過ぎだと思ったのか、優希が袴の上着をかけようと……
ガツン!
近づいたのは良いが、結局瑞穂と正面衝突、そして転倒。
何故か緋色までその上に乗っかってきて、服もはだけまくりのカオス状態に。
「それでもヤバイ所はしっかり隠れてるんだから凄いぉ…」
始終をスマフォで撮影していた秋桜が感想を呟き、なし崩し的に演技は終了となった。
●結果報告
「もう一回!もう一回お願いします!本当に何でもしますんで!」
時を超えて鹿時が眼を覚まし、寝ぼけ眼に懇願した時には、全ての演目は終了していた。
「あ、神鷹先輩、眼を覚ましたの。ごめんなさいなの」
「若菜さんのせいではないと思いますよ。それに一位になったんだからいいでしょ」
京に言われて辺りを見ると、結果が張り出されている。
一位が鹿時達、そしてエロいで賞が瑞穂達だ。
「ちょっと待て、あの賞!何があったの!?見たい!」
自分達が一位のことより、特別賞に興味が有るのは高校生だからに違いない。
「えっと、とりあえず説明しておきますと、一位の皆さんはコンボの数が多く、流れがしっかりと練られていたので、見ている方としても非情に楽しかったです。神様あり、オチの人ありで、つめ込まれてる感じでした。総点数は48点でした」
今までほとんど何もしていなかったが最後くらい仕事をするようで、琴音がコホンと咳払いをして説明する。
「エロいで賞の皆さんはその…はい。男性からの得票は全チーム中最高の満点でしたが、あの、ごめんなさい━━」
顔を赤らめて瑞穂から目を逸らす。
「と、兎に角、皆さんの格好いい所は十分に見させて頂きました。依頼は無事達成です」
すっと宝の地図の切れ端を渡す。
コレを集めると阿寒湖の特別天然記念物に似た召喚うわなんだやめろ━━。
「実践ではこう上手くはいかないでしょうが、連携は大切にしてください。本日は有難う御座いました」
ニコッと微笑んで、今日のイベントは終了となった。
後日インターネット上にて、破れた衣装でくんづほぐれつする女性3人(顔にモザイクの為正確な性別は判別できず)の画像が再生回数上位になったという噂を聞いたが、真偽の程は不明である━━。
了