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マスター:ムジカ・トラス
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
形態:
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/10/02


みんなの思い出



オープニング


『欲望は満たされないことが自然であり、多くの者はそれを満たすためのみで生きる』

                    ― アリストテレス ―

 望めば望むだけ、道は作れよう。願いも叶いはするだろう。
 そうして、次の欲が生まれ、目標が――あるいは障害が生まれる。
 生ある限り、欲を持つ限り、その連鎖は避けられはすまい。

 さて。
 これより描かれるは、単純なる鋼の律動か。はたまた――。



 私の、数少ない――これですら見栄を張った言い方だけれども――友人のはぐれ悪魔ユー・インはあの日以来少しだけ、変わった。

 互いに寄る辺の無い私達は、概ね一緒に居たけれど。
 互いに慮ってはいたけれど。

 でも。踏み込みはしなかった。互いの事情に。互いの領域に。

 友達ごっこ、とかでは、無いと思う。
 私はそういうの、よくわからないし。多分、ユーもそうだ。
 本質の、根っこの所で私達は凄く似ている。似ているせいで、ズレている、って、最近解った。
 ――安心が出来ない私達は。今の領域を護る事に無自覚に、無意識に固執していた。
 それが変わったのは。
 彼が、強く問いかけたから、かなと思う。

 ユーは、死にかけたあの時のことを殆ど覚えていない。
 以来、ミロスファという大天使に。六万秀人という、あの寂しげな男の人に……ひょっとしたら、私達、人間にも。
 ユーは、私には図りきれない怯えを、抱いているようだった。

 それが、変わった。



「初めて会った時以来ナリを潜めてるから忘れかけてたけど、アンタって、マザコン? よね」
「……か、かもね」
 ユーは、確かにちょっと変わった。
 だからって、その無遠慮な踏み込み方はどうかと思う。
 こういう時にどういう風に返事をしたらいいのか――解らない。
「そ、それがどうかしたの?」
「んー……」
 何事か考えているみたいだった。最近、ずっと、こうだった。

 ――“此処”に残るか。“此処”を去るか。

 もしかしたら、って。ユーの考えごとの中身が気になった。
 でも、言えない。

「アンタの母親も、はぐれだったんでしょ」
「……うん」
「写真を見た感じ、結構長ーーく一緒に暮らしてたのよね」
「う、うん」
「父親は?」
「い、いません」
「ふぅん……そう。ところで、なんで敬語なの?」
「こういうの、慣れてなくて……それに」
 堪えきれなくて、深く、息をはいた。

「周りに、他の人、いるし」

 この辺りの空気の読め無さはどうにかならないかな……。
 私達は、今、依頼の説明を受けるために集合しているところだった。説明者が現れないから、待ちぼうけをしていたのだった。
 他の学生の視線が気になるけど、怖くて周りを見れない。

「そう」
 ユーも、溜息をついたようだった。ちらりと見た、その時に見えた色は。
「……今日はこの辺にしとくわ」
 確かめようとした頃には、消えていた。



 転機、という言葉を知ってるか。
 俺は身を持って知っている。

 まず、あいつが居なくなった。
 あいつの変わりに、前線に送られる事が多くなった。
 次第に、前線が俺の居場所になった。
 天使と戦う日々が続いた。精神が擦り切れていくのが解った。

 東北を揺るがした動乱を調査しろ、と言われたのは二回目の転機だった。
「なあ、おい」
 俺はこれ幸いと飛びついたものだった。
「俺ァ落とし所って言葉が大好きでね」
 ちなみに、陽はまた昇るって言葉も大好きだ。
「俺ァご覧の通り悪魔なんだが、落とし所は付ける主義だ。その点で良心的だと思ってる」
 声を荒げる事なく言うのがコツだと、今の俺は解っていた。
「いいか? 今から俺が言うとおりにしろよ」



 俺は心底満たされた。この世界には神が居る。俺の孤独を癒やす神だ。
 なお、名も知らないニンゲン君は用が済んだら当然、殺した。
 俺は没頭したい主義だった。



「東北に、ディアボロが……」
 説明を受けた後、現地に辿り着いた一同の中、城之崎リンは口を開く。
「こんなに天使に困らされていて、漸く一段落がつきそうなのに……今度はディアボロだなんて」
 うろこ雲を見上げるリンの長い金髪が、彼女の胸の裡を示すように、風に吹かれて揺れていた。
「――やっぱり、戦争はまだ、終わらないんだね」
 零れ落ちた言葉には、罅が滲んでいる。
「……」
 傍らに立つはぐれ悪魔、ユー・インは暫く考えに耽っているようだったが。
「ん?」
 何かに気づいたようだった。突然の事に、リンも聞き返す。
「え?」
「アンタ、説明、ちゃんと聞いてたの?」
「……え、何、アタシ変なこと言ってた……?」
「あのね」
 ユーは腰に手を当てて、続ける。
「現れたのは『ディアブロ』よ」
「人間大の、ディアボロだよね? 機械っぽいディアボロ」
「だから、ディアブロ」
「ディアボロでしょ?」
「でぃ」
「…でぃ」
「あ」
「…あ」
「ぶ」
「ぶ……ディアブロ?」
「そう。ディアブロ、よ」
 ユーは、息を吐いた。やけに重い息を。
「あるアニメがあってね」



 秋も立ち、随分と過ごしやすくなってきた時分。多数の『ディアブロ』が目的されるようになったという。当初は赤い異形としか表現されていなかったのだが、ある日から『ディアブロ』と明言されるようになった。
 あるアニメの視聴者が居たのだという。
「ディアブロは、その中に出てくる機体なのよ」
「機体?」
「そう。攻撃特化型でね。古めの機体だけど……」
「…………」
「…………」
 リンのもの問いたげな視線に気づいて、ユーは言葉を呑みこんだ。
 やけに思い切りよく、空を見上げる。
「き、キレイな秋空ね!」
「……ユー」
「……」
「前々から思ってたけど、好きだよね」
「な、何がよ」
「ロボット」
「……………………」



リプレイ本文


「……暑いな」
 降り積もる日差しに、熱が篭る。影野 恭弥(ja0018)は日陰で茫と佇んでいた。辺りには人の気配などありはしない。十五機の行軍が、周囲から人の気配を消していた。
 少年の視線の先には、道路を歩くディアブロ達が居た。硬質な音が建物を叩き、木霊する。
 撃退士達は、まずは静観を選んでいた。
「大丈夫、ですか?」
 そんな中、城之崎リンが気遣わしげに白蛇(jb0889)に言う。
「ああ、大事無い」
 白髪の少女――非公式、つまり自称二千歳とのことだが――は、苦々しげに応じた。
「我ながら情けない……が、依頼はしかと果たさせて貰おう」
「……無理はしないでくださいね?」
 リンは言いながら、赤坂白秋(ja7030)を横目に見る。同行者が深い傷を負っている場面は初めてではないが、そういう者ですら無茶を通さんとする事を過日目に焼き付けたばかりだ。
 当の白秋は、何事か思索に耽っているようでもある。
 もう一度視線を転じる。眼前の少女はどうだろうか、と思っての事だったが。
「無茶はするんじゃないぜ。White Girl」
「!」
 命図 泣留男(jb4611)が、白蛇を挟んで反対側に居た。行く先を見据える男の、硬く引き結んだ口元が見える。
「お、おう……?」
「ブラ男の未来を託された男が、悪魔なんざに遅れをとっていられねえ……」
 白蛇が訝しげに言う頃には、メンナクは既に呟きながら去って行った後であった。
「あ、あの人も、心配してるみたい、ですね」
「そうじゃろうか」
 どちらともなく、吐息が零れた。


「天魔由来である事は解るが、被害を出してねえってのが妙な話だな」
 白秋がそう零した。男は、紡いだ思考を言葉にすることで、明確にしていく。
「目立ちすぎ、だ。仮に、強力なディアボロに暴れさせることで囮を立てるつもりなら、警戒を産んじまう……だがこいつは被害を出してねえ」
 言いながら、横目ではぐれ悪魔ユー・インを見る。と、ユーは直ぐに視線に気づいたようだった。
「な、なに?」
「……いや」
 どこか慌てた様子のユーに、白秋は言葉を濁した。
 ――見てくれも、ごく一部には親しみがある。
「なんでなんやろね。天界が大きく動いとるこの時期に、冥界側が急に」
 亀山 淳紅(ja2261)が言葉を継いだ。
「それも、ゆーちゃんが好きなロボット」
「ロボットじゃないわ」
「……モビなんちゃらって人乗っけるロボットちゃうっけ?」
「ナイトフォーゲルよ」
 割って入ったユーの言葉に、少年は苦笑した。
「そかー」
 そのまま、掌大のデジカメを取り出す。
「ゆーちゃん、あれと一緒に撮る?」
「と……撮ら、ない、いらない! アンタ分かってんの、アレ、敵よ?」
「からかっただけやし――」
 にしし、と笑っていう淳紅に、ユーは盛大に溜息を吐いた。
「アンタねぇ」
「ユーさん、あの機体について伺いたいのですが」
 言葉は、双眼鏡でディアブロ達の様子を眺めている御堂・玲獅(ja0388)のもの。
「ん?」
「いえ、私はあの機体のことを知らないので――良ければ、教えて頂けたらと」
「あ、ソレは俺も聞きたイな」
 そこに、一挙一投足を見逃すまいとディアブロ達を眺めていた狗月 暁良(ja8545)が続いた。帰国子女の彼女には、一時期放送されていたという作品については知りようもなかったのだろう。
 ――尤も、国内に居たとしても、暁良がその番組を見ていたかは怪しい所だが。
「オッケー、いいわよ」
 嬉しげに金眼を細め、ユー。青白い肌も上気しているようだった。そのまま、意気揚々と告げる。
「話せば長くなるわ!」
「Нет。簡潔に」
「……」
 暁良の鋭すぎる否定に、ユーは押し黙った。


「何かの囮、かもしれねえ」
 ユーが気を取り直して話始めるのを待ってから、白秋は続ける。
 先日の、白秋自身の問いがそうさせた。その答えが、これからどう出されるか、解らない。ただ、徒に刺激するつもりも彼にはなく、声のトーンは落とされたままだった。
「これが東北天魔のゴキゲンジョークだってんなら笑ってやるがな……今は戦争中、だ」
「せやねえ」
 頷く淳紅。白秋と同じものを眺めて、小さく呟いた。
「……偶然も重なりすぎれば必然よなぁ……」
 ――ゆーちゃんは今、幸せ、なんやろか。
 ぽつ、とそんなことを思いながら。


「特に隠された装備とかは、無いんですね」
「そうね。ただ、パイロットによって装備が違うけど」
「動き方にもさして違いはない、と」
「ブースト機動したりはするけどね。基本はあんな感じ」
「ふゥン……」
 と、玲獅と暁良、ユーが話していた、その時だ。
「あの、レッド・デビルのことか」
 声が、落ちた。キメキメの渋声。 
「……レッド?」
「お前がディアブロと呼んだ、アレだ」
 サングラスの両端を右手で支え、空いた左手をジーンズのポケットにねじ込んで立つ。脚を肩幅で開き、重心をやや後方に置くポージングでそう告げたのは――そう、メンナクである。
「問おう」
「う、うん?」
 メンナクが身に纏うオーラは独特にすぎた。それ故に、相対する者はどこか身構えてしまう。
 今回もそうだ。暁良はそっぽを向いてディアブロ達を眺め、玲獅はお空を見上げて敵影を探した。
 言葉と視線に射抜かれたユーに対して、メンナクは。

「――こんなことをやりそうな奴に、覚えでもあるのかい?」

 そう言った。
 こう見えて、元天使だ。知性はまとも――のだろう。多分。
 ガイヤに囁かれし男のオーラは、人を遠ざける。平素から話が通じないのが、彼の不運な所であった。
 兎角。
 視線が集う。至近にいた暁良と玲獅だけでなく。白蛇やリン。そして、淳紅と、彼と話していた白秋も。離れた位置に立つ恭弥は、ちらと横目で見るぐらいであったが。
 その場にいる誰しもが、ユーを見ていた。

「……」

 視線の中、ユーは少し驚いたようにその金眼を見開いて。

「そう、ね」

 仄かに苦味を孕んだ笑みと共に、こう告げた。

「知ってるわ」



「名前は、リブロ・レブロ」
 ユーは淀みなく告げた。
「アタシと同じ、下っ端の悪魔よ」
 視線は遠く、ディアブロの行軍へと向けられたままだ。
「……違うわね。アタシの方が下っ端。アタシは最前線にまわされてたけど。リブロは違ったみたい」
 自嘲の色が鮮やかに散りばめられた声で、続ける。
「ついでに。アタシがロボット好きなのもリブロの影響。ひょっとしたらアタシ達以外にも、そういう悪魔が居たのかもしれないけど、アタシは知らない。リブロの戦い方も知らないから、アレが本当にリブロのものかは解らない」
「何か、そいつだと確定できるものは?」
 メンナクの続けての問いに、ユーは小さく頭を振った。
「アタシがいる戦場には、リブロは居なかったから」
「……そうか」
「確証も持てなかったから、話さなかったの。変に誤解されるとイヤだったから――そういう事」
 ユーはそう言って会話を切った。

 そろそろ、行軍は自然公園にさしかかろうという頃であった。



 木々の隙間を抜けるようにして、撃退士達は先回りすることにした。 
「――畢竟、状況は変わらないという事じゃな」
 枝葉を払うリンの後ろを通りながら、白蛇が言う。
「何より、懸念が在ることは変わらないままじゃ。特に、あの、でぃあぶろとやらの内部に人が居るか、否か」
「居る『かも知れない』、っていうのが面倒くさいナ」
 視線の端にディアブロを収めながら、暁良が応じた。拳を固めて、続ける。
「タダぶん殴って済むもンじゃない」
「めんなく殿、御堂殿が調べられると良いのじゃが……」
 メンナクと玲獅は彼らよりも先行し、生命探知の術を使うために木陰に待機していた。
「二つの反応が重なって居た場合、懸念は現実となる。即ち、今回の事柄が、めか好きなゆぅ殿を誘引し」
 見れば、ユーは何ともなさそうな表情で歩んでいる。白蛇には、その内面を見通すことは出来なかった。
 虚栄かもしれない。何かを押し隠すための仮面かもしれない。
 それでも続きを言う事を選んだのは、警句を兼ねてもいた。
「ゆぅ殿を知る悪魔の陰謀である、と」
 あのディアブロ達の中に人が居た場合、はぐれ悪魔であるユー、もしくは撃退士が手を下したとなると、後に尾を引く事態となり得る。
「……」
 ユーは応えないままだ。だが、その無反応故にユーの内奥が漸く知れた。
 ――頑なじゃのう。
 メンナクの問いで、複雑な立場になったことを自覚しているのだろう。白蛇が吐息を零した、その時だ。
「どう、なんでしょう」
 前方を行くリンが囁くように言った。
「……敵は」
 リンは首を振る。線の細い金髪がはらりと揺れた。
「悪魔は、ユーの事を知っているんでしょうか?」
「……ふむ」
「ユーは、この土地で死にかけた。けど、そこには……他の悪魔は居ませんでした」
「ゆぅ殿を釣るための餌ではない、という事かの?」
「解らないです、けど……」
「行方不明扱いになったのだとしたら、アイツのコトを探しているのかもしれないゼ?」
「……そ、か。す、すみません」
 暁良の指摘に、リンは恥じ入るように俯く。

 玲獅が戻ってきたのは、それから間もなくしての事だった。



「ディアブロ以外に反応は、ありませんでした」
 玲獅の報告に、白蛇が問いを投げた。
「全ての個体で確認できたのじゃな?」
「ええ」
 回答を得て、漸く白蛇は安堵したようだった。
「なら、遠慮は要らぬというわけじゃ」
「……そういえば、アイツは?」
 見渡していた暁良が言う。この場にいないメンナクの事だろう。
「メンナク様なら……『レッド・デビル達をこの俺の聖域から見張ろう』、と浮上されました」
「あ、そ」
 玲獅の生真面目な言葉にと暁良は短い溜息と共にそう言いながら、大太刀を取り出した。
「よ」
 そう言って、ディアブロ達が通り過ぎた場所に突き立てた。大太刀は硬く踏み均された大地を容易く貫き、微音と共に揺れる。
「――さテ。アイツらはどう反応するかね」
 挑むような言葉でも、暁良の表情には特に何の感情も浮かばないままであった。



 自然公園を過ぎる。撃退士はこの公園を戦場に選んでいたから、打ち合わせで決めた戦闘まで、もう暫く時間があった。
 だから。
「なあ、ユー」
「……」
 白秋は、言葉を投げた。声の主を確認して、ユーは深い息をつく。
「……何よ」
 不機嫌そうな仕草ではあったが――緊張を解きほぐす為のもの、だったのだろう。かつて向けられた殺気を思えば、彼にとってはこのくらい容易いものだった。
 ――いや、それもどうなんだ?
 自問するが、掘り下げても悲しみを背負うだけだと知れて白秋は己の問いを無視。
 まっすぐにユーの金眼を射抜いて、言う。
「あのな」
「うん?」
 近いな、と。白秋は思った。瞳だけでなく、その青白い肌の艶が目に残るほどの、近さだ。
 そうして、言った。

「冗談を抜きにして。ユー。俺はお前が好きだ」
「へえ……」

 転瞬。はたり、と音が止んだ。リンも。白蛇も。暁良も。玲獅も。淳紅も。恭弥――はやはり我関せずと言った調子だが。
 風すらも、忽然と湧いた言葉にその息を潜めたようだった。
 玲獅と暁良はそれぞれ明後日の方向を見ている。が、その耳は標的に固定されていた。リンと白蛇は小さく目を見開いて固まっている。恭弥は脚を止めた一同に倣って面倒臭そうに立ち止まっていた。淳紅は辺りを見渡している。『え、ちょ、今、なんてゆーてた? 誰か? ね?』という視線を放射していれるが、誰も受け止めないまま、時は流れ。

「え?」
 驚愕が満ちて、舌先から零れた。そんな声だった。
「……え?」
 呆然と見開かれた瞳に射抜かれて、白秋はどう思ったか。
「いや……」
 男は目はそらさずに、続けた。
「リンも好きだし、影野も好きだ」
 瞬間。絶対零度の視線が背中を貫くのを白秋は察した。片方は殺気。片方には呆れ。ある意味でとても漢――男らしい白秋は、それでも淀まず、続ける。
「御堂も、淳紅も、狗月も、白蛇も、命図も、な」
 瞬間落ちた、慨嘆と嘆息。数多の吐息に混じり、ディアブロ達の行軍の音が、にわかにその存在を示すかのように響く。
「――何それ」
 眼前の金瞳。吸い込まれそうなくらいに見開かれていたそれが、細められるにつれて、見る見る内に斥力を孕む。
 斥力は距離の二乗に反比例する、という。
 直近で放たれた拒絶の色に、男らしい繊細な搦め手が瞬く間に冷え込み、吹き飛んだ。
「いや、待て、違……や、違わないけど、」
「は?」
「違」
「何?」
「……」
 白秋の中の冷静な部分が何かを囁いていた、が。それに手を伸ばすと死地が見えそうで、踏みとどまる。
 そこに。

「特にぁゃιぃところは無かった」

 救い主が、そんな言葉と共に現れた。

「俺様のダークでダーティなセンスに……どうかしたのか?」

 メンナク。それは、戦場に降臨した、一枚の黒き癒やし手の名である――。



「あれはないのぅ」
「ないわぁ」
「ウルセぇな……」
 白蛇と淳紅が頷く。居心地の悪さに白秋は呟き、空を仰ぎ見た。
 自然公園。生い茂る木々の隙間から見る空は、手が届きそうなくらいに低い。
 整備された通路――即ちディアブロ達の経路から離れ、木々に身を隠している撃退士達。
「……」
 その中で、恭弥は周囲の雑談など極めてどうでも良さげに装備の確認をしていた。白秋の一幕も、彼にとってはさしたる感慨も抱き得なかった、ということだろう。

 今。ディアブロ達が、先ほど暁良が突き刺した大太刀の付近へと至ろうとしていた。
 それは即ち、開戦の予兆。陽の降る公園が、途端に陰鬱な気配を漂わせたかのようだった。
 大太刀との距離が縮む。闘争の香りが溢れんばかりに張り詰め――。

「ん?」
 ディアブロ達は、大太刀を器用に避けながら行軍を継続。完全なる無反応だった。
 怪訝そうに見やる暁良の、その隣。
「……」
 恭弥は、ディアブロ達を示すように小さく首を振った。
 先にいけ、と。
 彼らは仕掛けるなら此処だ、と決めていた。その中で、恭弥は自らが動くべき機を図っている。
 だから。
「おし、なら、調べたいことあるし……」
 淳紅が、茂みから身を乗り出そうとする。ダアトの異能によって、ディアブロ達から情報を読み取ろうとしてのこと、だった。
「……あ。ユーちゃん」
「どうしたの?」
「ユーちゃん狙いの可能性もある、し。あまり、積極的に戦わんよーにな?」
 柔らかな笑みと共にそう告げると。
「――ん、ありがと」
 苦笑混じりの言葉が返った。応答に、淳紅は頷きを返す。
「んじゃ」
 狙いを、探る。
 そのために、淳紅が一歩を踏み出し。


『ディアブロの額に、手をのばそうとした』。



 反応は、劇的だった。






「キシ」

 何処かで。誰かが。嗤った。



 轟音が響いた。幾重にも重なる鋼の駆動が、塊となって少年の髪を叩く。軋む高音が連綿と連なり、耳朶を打った。
「――あ」
 戦慄が、淳紅の背筋を貫いた。
「や、ば」
 眼前。幾重にも重ねられ、向けられた銃口。そこに連なるディアブロ達の身を、新たに湧き上がった真紅の光が包んでいる。先ほどの行軍の無熱さが嘘のような、濃密な殺意。獰猛な、獣の気配。
 遅れて気づいた。
 瞬前まで密集していた陣容が嘘のようだ。蕾が開くように、ディアブロ達は各々の距離を開いて展開していた。そうして描かれるのは、濃密なる交差火線。一つ。また一つと。少年に近しい所から銃火が咲き狂った。
「……!」
 少年は身を――その喉を護るように、両手を翳す。

 幾重もの銃弾はその手を貫き、肉を千切り、肺腑を抉り、腹を喰らい、少年の軽い身体を容易く押し飛ばした。



「……ち、ィ!」
 数多の機銃から、血の華を咲かせながら吹き飛んだ淳紅に即応し、白秋の双銃が火を吹いた。機銃へと向けられた射撃に、尤も淳紅に近い位置で射撃していたディアブロの機銃が、掲げた左腕ごと大破。
「ユー! あんたが一番近い! 淳紅の確保を!」
「ん……!」
 白秋の言葉を受ける前にユーは走っていた。身を低くして、眼前で弾け、斃れ臥した少年を公園の茂みへと引きずり込むようにして撤退。大樹の影に飛び込むようにして、少年の身を横堪えさせた。
 少年に刻まれた銃痕。そして口元から血が溢れる。
「か、」
 ふ、と。淳紅は盛大に喀血。
「ご、め……よごし、て」
「黙って」
「こん、ど……曲、おぼえ、る……から」
「いいから、黙って!」
 血を浴びながらも両手で創の止血をしながら、ユーは周囲を見回す。玲獅。メンナク。そして、リン。
 ――この中で、一番経験が薄いのは。
「リン!」
 声を張り、名を呼んだ。眼前の少年には、緊急の処置が必要だった。



 淳紅の救護に向かうユー、リンとは別に、撃退士達は前へ出た。
「――中身は居ない、な」
 そう呟いた恭弥は、双銃を手に、音もなく疾走。藪間を貫いて、影のように往く。白秋の射撃で機腕が弾けたディアブロを見て、そう判断した。ディアブロの創部からは血が弾ける様子はない。残った部位に人を収めている空間はあり得無い。
 感嘆すべきは恭弥の精神性、か。彼は淳紅の重傷に引きずられないまま、現状を見据え、動いている。
 犬歯で親指の先を噛み切る。珠のように血が浮くと同時、恭弥はそれを足元へと振り落とした。
 少年の周囲が目まぐるしく変転。血を代償に、暴威を孕んだ魔法陣が展開し、恭弥の足元から、濃密な漆黒のアウルと共に闇色の獣が顕現する。
 足元に獣を従えた恭弥は、玲瓏ですらあるその目で敵を――獲物を、見た。
 ディアブロ達の『展開』は、機銃を前提に展開している。行軍が解け、密集は解除された。狙い、一息に喰らうには不適な間隙だ。
「……まあいい。行け」
 その中で、最大効率を見極めて恭弥は命じる。主の視線をなぞり、跳ねるように、黒影。
 開戦の寸前まで高められたアウルが、まるで爆ぜるかのように刻まれた。三機のディアブロを双で刻み、牙で喰らう。盛大な破壊音を背に、獣は溶けるように消えていった。
 対して。恭弥の身は展開されたアウルの中に紛れていた。彼は紛れも無く其処に居る。だが、明確に所在を掴ませない。アウルの異能が為せる御業であった。

 殺戮を背に、戦場は目まぐるしく、動いた。
 玲獅は周囲を見渡す。淳紅を癒やしに行くか、否か。判断を強いられた。薄く広がる敵の群れ。淳紅を食いちぎった敵は、その多くが健在だ。次の一弾で、違う誰かが落ちるかもしれない。
 ――先手を取られてしまいました。
「……なら」
 このまま後手に回る事を、女は厭うた。故に、魔法書を開く。書の間から生まれるように湧き上がった燐光は、一息に戦場を横切った。燐光は羽根を纏っていた。軽やかに羽ばたくそれは、ディアブロ達の眼前を舐めるように浮遊し――。
「――――ッ!」
 同時。呼気と共に、身を低くした暁良が疾走。滑るように加速し、最短距離を瞬く間に食いつぶした暁良は、尤も近しいディアブロに、死角である横合いから接近した。
「……へェ、早いナ」
 電光石火のような踏み込みだった。
 並み居るディアブロ達の中で、『その』ディアブロだけが、反応してみせた。
 殷、と高音が鳴る。瞬後には、ひたりと機銃が向けられる。虚のように暗い銃口と邂逅した暁良は。
「――疾ッ!」
 更に息を吐く。そのまま、更に一歩を踏み込む。銃口に、その身を押し付けるように。
 同時だ。その銃口が、逸れた。
「させません!」
 機構が弾ける音と、玲獅の声が遅れて響く。
 玲獅の掲げた書から放たれた燐光が、横合いから急加速して暁良を狙う機銃を撃ち抜いていた。機銃が大破した後に残ったのは、遮るモノのない、暁良の間合い。
 最後のひと踏みは、短く刻まれた。
 腰の回旋を滑らかに伝えるべく畳まれた左膝。機械仕掛けのように淀みない美しさで上体が下がり、残る右脚が奔る。竜鱗の脚甲が、赤色の閃光となってディアブロの顔面、そして肩口に叩き込まれる!
 ディアブロの装甲が、内部から爆ぜた。
「残り――十一機か。多いナ、っと」
 ぽつ、と暁良は呟いた。呟き、蹴り足の勢いのままに、飛んだ。
 軌跡を薙ぐように、剣閃。内から湧く爆発に飲まれながら、ディアブロは機剣で斬撃を放っていた。
「しつこい……ナッ!」
「――いえ」
 着地した先に立っていた玲獅が、短く言う。
「限界のようですね」
 伏したディアブロに、動こうとする『意志』は見える。だが、叶わない。暁良は見届ける事なく、次の獲物を求めて視線を走らせる。
「……」
 玲獅も、戦場を俯瞰してはいたが、視界の端にそのディアブロを留めていた。深い理由は無い。その個体には最早脅威など抱き得無い。ただ。
 ――何かが、引っかかります。
「この戦場は、どこかが……歪です」



「……くっ、やはり堪えるな」
 己の権能――自称――である翼を顕現させた白蛇は、僅かに身を浮かせながら、吐き捨てた。
 狙撃用の銃を構えるのですら一苦労だ。白蛇のさらに高空から、声が掛かった。
「無理はするな。狙われたら堕ちるぞ」
 メンナクだ。回復を任じてはいたが、今は手が開いていた。故に男は進み、呆気にとられた白蛇を背負うように、前に立つ。
「……すまぬな」
 不器用な優しさを感じ、白蛇はそう零したが、応答はない。メンナクはそのまま、魔法書を翳した。
「――俺のダークな魅力に縛られな」
 漸く告げられた言葉と共に展開されたのは、聖光を帯びた鎖。ダークさなど微塵も感じさせない鎖が、至近のディアブロを殴打すると同時、瞬く間にその身を拘束した。
「ジャッジメント……ッ」
 意味のない喝采を聞いた白蛇は半眼で目を逸らした。
 その、先。恭弥が二度目の猛攻を仕掛けようとしていた。



 動作はシンプルだ。恭弥は闇色のアウルに身を隠したまま、先ほどと同じく指先を振るう。血滴が踏み均された土に黒々とした染みを作ると、瞬後には魔法陣と共にアウルが湧く。
 描かれる再演。
「……対応してくるか」
 先ほどと同じく獣を従えながら、敵を――その配置を恭弥は見据える。有効射程もあるのだろうが、その中で陣を更に広げようとしている。
「面倒くさいな」
 短く言いながら、瞬く間に二機を喰らう。そうして、身を包む暗いアウルに身を浸すように姿を消し――。

 殺気を感じた。

「影野殿!」
 白蛇の声が、アウルを抜いて響く。理解よりも先に、恭弥は銃を翳し、急所を庇っていた。
 翳した銃把に、衝撃。
 襲ってきた弾丸は恭弥の身を削って、その後方へと抜けた。灼熱に近しい痛みを追って知覚する。
「……ッち」
 隠れていた。筈だ。それは間違いない。
 だが、敵は、まるでこちらを見ているかのような正確さで射撃を為した。
 ――そういう敵、ということか。
 度重なる戦闘経験から、恭弥はそう了解した。隠身は無効だと。
 だが、その仕組みが解らない。
「いかん、逃げるのじゃ!」
 白蛇の声に追われるように。少年は身を低くして疾走した。
 一歩目で、先ほどまで居た位置に落ちた銃弾を回避。
 二歩目。踏んだ大地の直ぐ傍らが弾けた。
 三歩目。右脚首に、熱。支えを無くして恭弥の身が傾げた。
「――ッ」
 恭弥は怪物じみた動体視力で銃把で幾つかの弾丸を叩き落とすが、次から次へと放たれる銃弾に、身を抉られ、削り取られた。身体から血が噴き上がる。
 痛みより先に、意識が抜け落ちた。

 ――恭弥が最後に見たのは、赤光を纏ったディアブロ達。
 無骨な見た目。機械の身体は無感情に銃を構えるのみ。
 にも関わらず、まるで血に酔ったかのように笑っているように感じられた。



「私が!」
 血煙を上げて斃れる恭弥に向けて、応じるように走りだす玲獅を暁良は見た。銃声が響く。白秋の弾丸だろう。無傷のディアブロの機銃を撃ち抜いていた。
「……ン?」
 気になったのは。
「赤光が消えてるナ」
 ディアブロ達が身に纏っていた赤光が、消えていた。疑念を抱きながら、拘束されてる機体の機銃を蹴り砕く。
「ちゃんと捕まえてろヨ?」
 暁良はそうメンナクに言い捨てて次の獲物へと転進。

「ゆぅ殿! 加勢を!」
「……ん」
 白蛇の声に、ユーは横目で淳紅を、恭弥を見た。淳紅は一命を取り留めたよう。対して、恭弥は玲獅が翳した種子で見る見る内に活力を取り戻していく。
「気をつけろ!」
 安堵を切り裂くように、メンナクが叫んだ。
「一機足りん!」
 見渡す。恭弥が五機を喰らい、玲獅と暁良で一機。残るは九機の筈だ。
 直ぐに、知れた。計八体。白秋が片腕を食い千切った機体が、居ない。
 樹林の木陰を抜いて、影が直ぐに見えた。玲獅と、恭弥に覆いかぶさるように迫る影。
 ユーは、黒仮面を召喚し、砲撃を放とうとした。
 そこに。

「キシ、キシシシ、キシシシシシッ!!!」

 軋んだ狂笑が響いた。視線の先、赤光を纏ったディアブロからだ。

「ユー!! おまえ、『撃つんだな』ァッ?!」

 罅割れた声に。嗜虐的な色を孕んだ言葉に。『その意味』に。
 はた、と。ユーの手が、止まった。止まってしまった。

 玲獅に覆いかぶさるようにして、『恭弥へと』突き立てられた機剣。
 血飛沫と。
 そして――自爆の爆煙が、その対価だった。



「恭弥さん!」
 爆煙の中から、玲獅の声。
「やっぱり爆発したナ……」
「悪魔共……許さねぇぜ」
 揺るがぬ暁良とは対照的に、メンナクは憤怒の気配とともに恭弥の治療へと向かう。玲獅もリンも動けない以上、彼が可及的速やかに傷を塞がねばならない。
「「キシ! キシシシ!! こいつァお笑い草だ!」」
 その背を叩くように、違う場所から、先ほどと同じ声が響いた。広い間隔を開けて残った八体。それらが皆、寸分の狂いも無く同じように小首を傾げていた。
「「ユー! お前! 生きてたんだな!」」
「リブロ」
「「キシシ! 生きて! 人間についたんだな!?」
「違ッ!」
「「違う?」」
「……っ」
 ユーは言葉を呑んだ。
 思い出したからだ。リブロ・レブロが、どういう悪魔かを。
「「そうだよなァ、お前、撃たなかったもんなァ?!」」
 銃声が、間を抜いた。白蛇が放った銃弾だ。
「五月蝿いぞ、戯けが!」
 だが、威力が足りない。一機の身が僅かに傾き、直ぐに元に戻る。
「「お前、はぐれたんだろ? なのに、撃たなかった」」
「黙って!」
 リンが、戦鎚を振るっていた。無反応でそれを受けた八機の内の一機の頭が潰れる。
「「キシシ、キシシシッ!!」
 罅割れた哄笑。哄笑に続いて、動きがあった。

 ディアブロ達の統制が、一斉に解けた。ばらばらに一番近しい位置にいる撃退士――白秋、暁良、リンへと襲いかかる。今までの機械的な動作が嘘のように、生物的な、ケモノのような動きだった。
「くそ……ッ、ユー、聞くな!」
 白秋は叫びながら遮蔽に身を潜めるべく、距離を取る。迫る銃弾を恭弥と同じように銃把で叩き落とした時、その威力も、動きも、これまでと比べて精彩を欠いていると知れる、が。
 それどころでは、なかった。
 リブロの毒が、耳に沁みる。
「「オーカタ、オレの事も喋って無かったンじゃねーの? 残念でしたね。人類と裏切りモノ諸君。俺とユーは――」
「黙って!」
「キシ、キシシシシッ!」
 乱戦。混戦の只中で、ただ笑い声が満ちる。斬撃。蹴撃。銃撃。壊撃。そこに在るのは、原始的な闘争だ。連携も何もない。傷付きながら力を振るい、夫々の敵を倒さんとする、純粋な闘争。
「「はー。楽しめたナー」」
 それらを背景に降り注ぐのは、無邪気な喜悦だった。
 ディアブロ達と撃退士達の闘争を置いて――リブロの声は、それ以降紡がれることはなかった。



 戦闘が終わり、淳紅と恭弥の搬送が終わった後。
 足早に離れていく玲獅や、搬送されていった二人を眺めるユーに。リンは言葉を掛けられずにいた。
 開いた距離。そこを埋めるには、リンは臆病に過ぎた。

 だから。
 その背中が、少しだけ、憎かった。

「なあ、ユー。さっき、言いかけた事だけどな」
 そう言って、男――白秋は踏み込んだ。
「ユー。お前はもう、俺の中では仲間になっちまってるみたいだ」
 応答は無い。だが、心中を推し量れる程度には、彼は器用な男だった。
「……だからよ。仲間に銃口を向けるなんて、俺は御免だ」
 表情は伺えない。拒絶を感じる距離で。彼は確かにそれを見た。
 小さく震え始めた、細い肩を。
「なあユー……もしもだ。もしもお前が、俺達の手の届かない場所に行くつもりになったなら、その前にデートしてくれ」
「……」
「ああそれと」
 早口で言い、一枚の紙片をユーの手に握らせた。
「一人で悩むな。俺じゃなくてもいい。誰だっていい、連絡しろよ。じゃあ、な」
「……狙われたのが、恭弥じゃなくて、アンタだったら良かったのに」
「ん?」
 そっとしておこうとその場を後にしようとした所だったから、聞きそびれてしまった。
 聞き返すも、返事はなかった。小さく息を吐いて、その場を後にする。


「なんとまあ、青いのう」
「何が?」
「……お主」
 興味がないのか、それとも素で解らないのかそう言った暁良に、白蛇は慨嘆した。
 そうして、黙考する。
 メンナクはどこかに消えた。他方、玲獅は直ぐに調査に動いている。
 ――リブロ・レブロ……彼が、住民に化け潜伏した可能性も否定出来ませんから。
 そうして、避難していた人々に事情聴取に行った。避難前後の所在不明者から探るという。
 白蛇は、ユーの孤影と、白秋の後ろ姿を見て。
「ゆぅ殿は彼の悪魔に認識された」
 呟いた。
「心情的に『はぐれ』きれていないゆぅ殿は……どうなるじゃろうか」

 予感があった。決して、幸せなだけの道行きにはならないだろう、と。



 なにやら見た感じ、ヒト共の動きが怪しい。ルートを確認しながら、足早に離れる事にする。
「練力が切れるまでにあと二人はヤレると思ったンだけどなー……」
 キシシ、と。笑みが零れた。
 人間と戦うのは初めてだったが、それなりに勝手は知れた。
「次はもっと愉しめそうだし、殺せそうだ」
 嗤う。
「なぁ、ユー」


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: サンドイッチ神・御堂・玲獅(ja0388)
 時代を動かす男・赤坂白秋(ja7030)
 ソウルこそが道標・命図 泣留男(jb4611)
重体: God of Snipe・影野 恭弥(ja0018)
   <天魔の攻撃により>という理由により『重体』となる
 歌謡い・亀山 淳紅(ja2261)
   <天魔の攻撃により>という理由により『重体』となる
面白かった!:20人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
サンドイッチ神・
御堂・玲獅(ja0388)

卒業 女 アストラルヴァンガード
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
時代を動かす男・
赤坂白秋(ja7030)

大学部9年146組 男 インフィルトレイター
暁の先へ・
狗月 暁良(ja8545)

卒業 女 阿修羅
慈し見守る白き母・
白蛇(jb0889)

大学部7年6組 女 バハムートテイマー
ソウルこそが道標・
命図 泣留男(jb4611)

大学部3年68組 男 アストラルヴァンガード