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マスター:monel
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/10/31


みんなの思い出



オープニング

●北村香苗

 こほん。
 えー、今日は○月×日、今の時刻は14:15分。
 今日は……えっと、晴れね。
 ……何よ、緊張するんだから……。
 狩野さんもまだ入院してるんだから、私達が少しでも手伝わないとね。
 最初から、やり直しね。

 ……OK? いいのね?
 えっと、私の名前は北村香苗。
 これは私達撃退士の戦いの記録。
 私達がどのように戦い、傷つき、血を流しながら、何故、どのように、事件を解決してきたのか。
 私達の生の声を後に続く人達へと残していくための記録。

 この事件は最初は天魔が絡んでいるかも分からない子供の失踪事件から始まったの。
 時が経つにつれ、その被害は広がり、子供達の集団失踪事件に発展し、そこに至ってようやく天魔の関与が疑われて学園に相談がきたの。
 ここからは、実際に調査に赴いた遠山君に証言してもらうわ。

 ……はい、それじゃ交代ね。あぁ、緊張しちゃった。

●遠山

 えっと、僕が狩野さんに呼び出されたのは、夏の暑い頃だったね。
 狩野さんが入院することになった事件の少し前だね。

 天魔が絡んでいるのかどうか、その調査が僕の頼まれた仕事だったんだ。
 夏休みの時期だったし、家出したりする子供が増える時期でもあったしね。
 天魔が絡んでいなければいけないってわけでもないんだけど、天魔絡みの事件も多い時期だしね。
 無暗に人を投入しても仕方ない、って狩野さんは言っていたんだ。

 失踪した子供達が最後に目撃されたのは、一定の範囲内に集中してたんだ。
 その中心にあったのは廃園になった遊園地でね。
 警察でチームを組んで調査を行うことになったんだけど、僕は派遣されてすぐにアドバイザーとして参加するように要請されたんだ。
 何人か失踪していた子供が夜遊びで補導されていたこともあって、雰囲気は楽観ムードっていうか、念のため調べておこうって感じだったよ。
 僕も警戒はしていたけど、空気に流されたというか、戻ってから報告したらいいかなって思ってしまったんだ。
 他に地元の撃退署の人もいたし、逃げるだけなら何とかなるかなってね。
 ……今では後悔してるよ。

 あれだよね、人気の無い遊園地って、少し怖い雰囲気あるよね。
 それも廃園になってからあまり手も入っていないみたいで、ちょっと薄気味悪いっていうか……。
 うーん、そんなに広い場所でも無かったから30分ぐらいかな。
 皆で歩き回ってると、そいつが居たんだ。
 特徴は大きな身体と顔だよ。
 僕らみたいに服を着て二足歩行で歩いていたから、用務員さんか何かと思ってたんだけど、顔がね……
 明らかに牛だもん。百歩譲っても水牛かな。
 ビックリして思わず声が出ちゃったんだけど、その声を聞いたのか、僕達の方を見てそいつ逃げ出したんだ。
 あからさまに怪しい姿に、全員で追いかけてね。

 冥魔認識は咄嗟過ぎて間に合わなかったんだ。
 だって、天魔が逃げると思わなかったからさ……。

 追いかけてたら、入っていくのを見たんだ。
 巨大迷路、にね。
 以前植えていたんだろうけど、手入れしていないせいか蔦が地面も壁も覆い尽くしていてさ。
 明るいはずの天井も覆われてしまって、真っ暗になってたんだ。
 これは怪しいなっていうんで、僕と撃退署の人と二人で中に入る事にしたんだ。
 流石に撃退士でもない警察の人は危ないからね。
 ……ほんと、すぐに戻って応援を呼べばよかったよ。
 最近、自信も出て来たから慢心があったのかもしれないな。

 迷路を迷いながら進んでいくとさ、中心に塔みたいな場所があるんだけどそこにさっきの牛男の姿が見えたんだ。
 慎重に近づいて行って、中に子供達が集められているのを見つけたんだ。
 衰弱はしてるけど、みんな生きているようだった。
 近くに見張りみたいにして牛男が立っててさ、今度こそ確認したよ。
 やっぱりサーバントだった。
 そのまま、静かに下がって安全だと思われるところで無線で警察に連絡したんだ。
 ……うん、誰も返事をしてくれなくてね。
 慌てて戻ったら、みんな……。
 ……あぁ、ごめん。
 やっぱりこういうのは慣れないね。
 今でも夢に見るよ。

 もう一体サーバントが居たんだと思う。
 拳銃を抜いて応戦しようとした跡が残っていた。
 誰にも話を聞くことが出来なかったから、予想だけどね。
 それで、狩野さんに連絡して、応援が来るまで迷路を見張る事にしたんだ。
 僕の役目は出入口を見張る事。
 みんなと一緒に仇討ちをしたかったんだけど……僕の様子を見て、残る様に言ったのは狩野さんだよ。
 よっぽど酷い顔をしてたんだろうね……。

 後は潜入した皆の話を聞いたほうが良いんじゃないかな。

 ……え、あぁ、迷路の地図ね。
 狩野さんに聞いたんだけど、地図は有るけど役に立たないんだって。
 迷路は飽きさせないように簡単に作り変える事が出来るようになってたんだ。
 つまり、本当の意味で迷宮になってたってことだね。


リプレイ本文

●橋場 アイリス(ja1078)

 話、ですか。
 事件は無事に解決しましたし、私は自分の仕事をしたまでです。
 傭兵ですからね。
 それ以上他に何か必要ですか?

 順番に……?
 邪魔な壁を壊して、邪魔なサーバントを倒して、見張りも倒して、それで終わり。
 迷路は壊す。サーバントも倒す。それに限りますから。
 他にと言われても……黴臭かったぐらいですかね。
 もう、いいですか? 


●葛葉アキラ(jb7705)

 うちに聞きたいことってなに〜?
 エエよ、何でも聞きぃ。協力すんで〜♪
 そんかし、香苗ちゃんの秘密も教えてもらわんとなぁ。
 ふっふっふ、乙女の秘密は安くないんやでェ。
 ……戸惑う顔もかわええなぁ、香苗ちゃん。
 可哀相やから冗談はこれぐらいにしとこか。
 そんで何から話せばエエのん?

 そうやね、ま、目の前に迷路あるやん?
 そんで、目線を上げれば遠くに目的地の塔があるやん?
 よっしゃ、ゲームのダンジョン攻略したろかー、ってそんな悠長なこと言うとる場合とちゃうしな!
 やっぱ壊してなんぼやろ、迷路やし!
 そう、塔へ一直線や。最短距離突っ走るでーってな♪

 闘刃武舞ってスキル知っとるやろか?
 ぶわーって剣が舞いよんのよ。
 あれな、実は土木用のスキルちゃうかなってぐらい役に立つんやで〜。
 もうびっくりするぐらい壊すの楽なんよ。
 ばばばーって剣が舞ったら、ばっさばっさ壁を削ってな、目の前ぽっかりと道拓けよんねん。
 すっきりすんで〜。
 香苗ちゃんも今度覚えてやってみたらエエやん。
 ……あぁ、そうやそうや。
 そん時うちは阻霊符を展開しとってん。
 不意打ち喰らうのも嫌やん? そない迷路が好きなら勝手に楽しみや〜ってな。
 そしたら、左右からバキバキ聞こえてきてん。
 あいつら多分アホやってんな、透過するつもりでぶつかってんで。
 そもそも迷路を作り変えるような頭もってたんかな。

 ……うん、そうなんよね。
 突進力ってことなら、すこーし、遅かったかもしれんね。
 アイリスちゃんがどんどん進んでいくのに、ちぃとばかし遅れ取ったんは確かやねぇ。
 だいぶ先に行っとんなぁて思ったら、戦いの音が聞こえるやろ。
 流石のうちもすこーし焦ったわぁ。


●雪風 澪(jc1634)

 うむ、大丈夫だ。
 この程度の怪我は怪我の内に入らぬ。
 見た目ほど痛くはないのだ。
 捕まっておった子供達の心細さを考えれば、この程度で弱音を吐く気にはならぬしな。
 子供達を浚うなど卑怯極まりない輩には今でも怒りが収まらぬ。
 ……それで、このどら焼きは食べてしまっても良いのだな?

 そうだな。アイリス殿の後ろを走っておったのは私だ。
 すぐ後ろ、というわけではなかったな。
 壁を壊しながらというのにアイリス殿に追いつくには難儀な事であった。
 近くからサーバントが近づいてきている事には気が付いていたぞ。
 恐らくアイリス殿も気が付いていたであろう。
 警戒はしていたが、どのようなタイミングで遭遇するのか、そこまでは把握出来ておらぬかった。
 アイリス殿が目の前の壁を壊して先へ飛び込んだと同時であった。側壁を突き破って斧が振り下ろされたのだ。
 アイリス殿はその攻撃をかわそうとしたのであろうが、大腿部を切り裂かれておった。
 だが、『脳筋勝負です。どちらが先に倒れますかね!』と叫び、一歩も引かずに上段に振り上げた大剣を振り下ろす姿は女王のように堂々としておったな。
 真紅のアウルを纏わせた大剣で給う死の女王であったがな。

 私は援護の為にアイリス殿の開けた穴へと飛び込んだのだ。
 私の得物は銃であったのだがな、何せ狭い場所だ、近づかねば狙いも付けられぬようであってな。
 奴の気を引こうと叫びながら銃を放ったのだ。
 奴の体に開いた小さな銃痕は忌々しいほど小さかったが、一瞬の気を引けたことは良かったと思っておるよ。
 ……うむ、この先は目まぐるしく回転する世界と、倒れ掛かってくる木片と埃、そして熱く燃えるような痛みしか覚えておらぬのだ。
 肺の空気を全て吐き出すほどの衝撃を受けた瞬間に、何が起きたのかだけは理解していた。
 もう一体のサーバントが私の背後から現れたのだ。
 

●ルチア・ミラーリア(jc0579)

 同士北村、本日はよろしくお願いします。
 同士戦友達、そして私達が守るべき三民達の為にも、私の話が役に立つのであれば、力の限り協力させて頂きます。

 同士橋場が攻撃を受けた瞬間については、私は残念ながら目撃していません。
 子供達を一刻も早く救出するべく、邪魔な壁を壊しながら進んでいた私達は、その速度において隊列がやや崩れていました。
 戦場では壁を破壊する音が激しく、敵が迫ってくる音に私達が気が付いた時には既にすぐ側まで接近しており、声をかける間もなく壁が破壊されていました。
 壁の破壊音とは別の、硬い金属が打ち合うような音と共に、立ち込める埃の奥から同士橋場の声が聞こえてきました。
 同士葛葉が壁の穴を広げるのを待っていては間に合わないと判断し、同士雪風と共に援護の為に駆け出しました。
 私の前を同士雪風が駆け、同士橋場が破った壁のへと飛び込んでいく姿を記憶しています。
 壁の向こうでは、同士雪風が右の瞳に赤い紋様を浮かべて、興奮した様子で何か叫びながら銃弾を撃ち込んでいました。
 後ろから同士シュタイナーも声を上げていましたが、恐らく同士雪風には聞こえていなかったでしょう。
 戦場は騒然としていましたし、それに迷路の構造上先に声が届き難かったのかもしれません。
 私も同士橋場の援護に向かうべく、走っておりましたので同士シュタイナーの警告が何を意味していたのかを理解できていませんでした。
 次の瞬間、同士雪風の姿は壁に押しつぶされ、鈍く光る斧が壁ごと同士雪風へ振り下ろされる光景が見えたのです。

 もちろん私も崩壊した壁に同士雪風の姿が消えて行くのを黙ってみていたわけではありません。
 すぐ様現れたサーバントに矢を放ち、追撃を阻止すべく陽動を行いました。
 幸いな事に同士雪風は立ち上がっているのが見えましたので、サーバントが見せたわずかな隙に、同士雪風は距離を取る事ができました。
 その右目に宿る戦意は失われておらず、私もサーベルを抜いて駆けつけようとしました。
 その時、一陣の風となった同士シュタイナーが駆け抜け、光が爆ぜたのです。


●テト・シュタイナー(ja9202)

 おっ、俺様の話を聞きたいのか。
 いー心がけだ。
 俺様がじっっくりと話してやるぜ。

 最初に壁を壊すって言い出したのは誰だったかな。
 まー、皆ノリノリだったから誰が言いだしても一緒だっただろ。
 敵さんは迷宮で迷わせてどうこうしたかったんだろーけどよ。
 はっ、生憎さまだ。こっちにはそんな素直な輩なんていませんでした、って話さ。

 あー、最初に飛び出して行ったのは橋場だったな。
 大剣を振り回して壁を斬るってかぶっ壊してどんどん先に進んで行ったな。
 姿はすぐに見えなくなったな。
 あ、でもあの大剣の影響かね、氷がキラキラと舞っててきれーだなって思ったのはよく覚えてるよ。
 ただ、それだけじゃ狭いからな。
 橋場の通った道を広げるように破壊しまくっていったんだ。

 あー、そりゃーもう派手に壊しまくってたぜ。
 ありゃぜってー楽しんで壊してたな。
 スキルもバンバン使って道が切り開かれていく様は爽快だったぜ。
 ちぃーっと煩かったけどな。
 俺様か?俺様はのんびり後ろからついて行ったぜ。
 不意打ちに備える為さ。
 派手にやってんだ、どこから狙われるか分からねーだろ?
 ちゃーんと考えてんだよ。使わねーとな、頭をよ。
 だけどあれだな、悪い予感ほど的中しちまうんだよなー。

 奴等が迫ってきてるのは分かってたんだ。
 だが、派手にやり過ぎたのかね、来るぞって警告したんだが聞こえなかったのかもな。
 橋場の援護に向かってた雪風が壁ごと潰されたのが見えたんだ。
 しかたねーよ、予定とは違う展開ってのは起こるもんだ。
 俺の出番ってことだな。

 可愛い女に暴力を振るう野郎は許しちゃおけねーだろ。
 ふざけんじゃねーぞ! この●●野郎! てめーの●●を●●って●●●に●●ってやるぜ! ってな。
 ……あ、今のまずい? 後でカットしといてくれよ。

 ……でだ。
 まずは野郎の動きを止めねーといけねって事で、俺様の特別製の雷弾をぶち込んでやったってわけさ。
 其が成すは暴虐、猛る雷契! ダダーンッ! というわけさ。
 野郎は縮み上がって動けなくなってやがったよ。ざま―みろってんだ。
 その後はもうタコ殴りさ。
 途中で反撃して来やがったが、最後の足掻きって奴だな。
 俺様にとっちゃあ蚊に刺されたようなもんだったぜ?

●アルドラ=ヴァルキリー(jb7894)

 面倒? そんなことは無い。
 北村にとっては必要なのだろう?
 ならば協力してやらねばな。後に続く者へ道を示すのは先に立つ者の務めであろう。
 詳しく話して聞かせてやろう。

 私が選んだ道は空、だ。迷路を攻略するのに俯瞰で見るのは大事であろう。
 上空からであれば壁に視界を妨げられることも無く、全体像を掴めるからな。
 それに迷路は薄暗い、光源を確保する意味でも上空からの狙撃が有効であると判断したのだ。

 うむ、最初は敵の動きは掴めなかった。
 予想以上に蔦が絡んでいたためか、かなり見通しが悪かったのは残念であったよ。
 だが、突入が始まるとすぐに奴等の動きを掴む事が出来たな。
 奴等が壁を壊すたびに、天井が崩落していたからな。
 壁を壊すタイミングは予測するしかなかったわけだが……時折蔦の隙間からわずかに見えるシルエットと、壁崩壊の方向を考えればある程度奴等の行動は把握できた。
 その予測から、奴等が接近してきているのはわかっていたよ。
 だが、残念な事に奴等のみならず、アイリスとアキラが派手に壁を破壊していたからな。
 私の警告の声が聞こえていたかどうか……。
 アイリスが敵と遭遇した時には、もう一体が迫っているのも気づいていたが、警告が用をなさぬのならば、私の仕事は唯一つ。
 狙撃、だよ。
 派手に壊してくれたおかげで天井も崩れ、奴等の姿は丸見えだった。
 充分に狙いを定めて、アイリスと対峙しているサーバントを狙ったのだよ。
 最初の一発は運悪くサーバントが振り上げた斧によって弾かれてしまったが、そのお陰で隙を作れたようだった。
 真正面から打ち合っているアイリスは僅かな隙も見逃すような者ではない。
 期待に違わずサーバントをなで斬りに切った姿は見事であった。
 何度か斬り合った後に、私の狙撃がサーバントの側頭部を撃ち抜き、アイリスに両断されゆっくりと倒れて行ったと同時に、もう一体のサーバントもケリがついたようであった。
 皆の無事を確認し、再び塔へと進み始めたのを見て私も塔へと向かう事にした。

 塔、と言っても遊技場の迷路にある塔だ。
 大した高さでもなく、屋上は囲われてはいなかったな。
 はっきりと見えたよ。先ほどと同じようなサーバントと、ぐったりと倒れた子供達の姿がな。


●葛葉アキラ

 心頭滅却すれば火もまた涼し、やな。
 心静かに動く事で気配も消すことが出来るんやわ。
 え、意味が違うて?
 細かいことはええんよ、ノリで流すとこやんそこ。

 ともかく、突入は少し待ってもらって、うちは塔を回り込む事にしたんよ。
 サーバントが直接手ぇ出さんかったとしても、そない広い場所やないんや、戦いの巻き添えになったらあかんやろ。
 大体の配置はアルドラちゃんからの話で分かっとったし、あれぐらいの高さなら入口とか関係あらへんもんな。
 うちらなら一気に登れるぐらいの高さやったよ。
 で、反対側から回り込んどったルチアちゃんと雪風ちゃんにアイコンタクトや。
 一気に突入して、子供達安全圏においたんや。
 安全圏とはつまり、うちらの背後よ。
 サーバントは階段の前に立ち塞がっとったんで、うちらに気づかんかったんやろうな。
 無事に子供達を確保、準備完了や。
 アルドラちゃんの狙撃を合図に、一気に突入や。
 タタッて足音が聞こえて来たと思ったら、サーバントがすっころばされよってね。
 階段から飛び出してきたんは、大剣を担いだアイリスちゃんやったんよ。
『大人しく肉になりなさい』って凄い台詞やよね。
 正に戦乙女って風情やったわぁ。


●橋場アイリス

 ええ、子供たちの脱出を優先していただく為に足止めを狙いました。
 私とテトさんはアルドラさんの合図までは階段の下でじっと待っていました。
 心配、は余り。
 気付かれたら何かされる前に倒すだけですから。
 ここまで来たら考えることはありません。
 どれだけ素早く剣を振れるか、ですからね。

 銃音が聞こえたら突入です。
 サーバントには気付かれましたが、足止めが役目ですから。
 ……斧? 一撃受ける事ぐらいは覚悟の上ですよ。
 どの程度の相手かは経験済みです。耐えれる事は分かっていました。
 予定通り剣を振るって、私は私の仕事をしただけです。
 テトさんが一緒でしたので、仕留めてくれるのは分かっていました。
 私が転がし、テトさんが焼き尽くす。
 それで仕事は完了です。


●雪風

 それは苛烈な火球であった。
 テト殿の言霊が籠った口上と共に眩い光と熱が私達にまで吹き付けて来た。
 私は腕を広げて子供達を庇っておったので、被害はなかったが。
 とてもとても、無様に床に転がったサーバントには耐えられるものでは無かったであろう。
 一瞬で戦闘は終わったのだ。

 子供達は思っていたよりも元気であった。
 私達が来たことで安心したのであろう、緊張がとけて泣き出すものも多くてな。
 ほとほと参ってしまったぞ。
 ある意味サーバントよりも手ごわかったやもしれぬ。
 アルドラ殿が機転を利かせて持ってきておった菓子を食べさせることで、ようやくまともに歩き出せたのは重畳であった。

 ……いくら私でも子供達の菓子を奪うような真似はせぬぞ。
 な、なんだその目は。どら焼きはすべて食べても良いと言っておったではないか。
 むぅ、このような扱いは納得がいかん……。

 その後は打ち解けて来た子供達を囲んで真っ直ぐ帰っただけだ。
 アイリス殿がアルドラ殿に甘えておったことも緊張を緩める事につながったのであろう。
 甘えるアイリス殿とまんざらでもないアルドラ殿の様子は微笑ましいものであったぞ。
 アイリス殿の様子に怖がっておった子供もおったが、その様子をみて安心したようだ。

 これにてはっぴぃえんど、という事であるな。


●北村香苗

 これは貴重な戦いの記録であり、私達撃退士が確かに生きたという証。
 これから戦いへ赴く者達への経験の共有は、確実に作戦の成功の助けになると私は確信する。
 協力に感謝を。そして未来の撃退士へ生存の祈りを。
 これで報告を完了する。

 ……ばっちりきまっ(ここで記録は終わっている)


依頼結果