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マスター:monel
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/09/09


みんなの思い出



オープニング


「この日差し……これこそ夏だよね!」
 北村香苗は燦々と降り注ぐ夏の太陽を浴びて眩しそうに目を細める。
 天魔事件を通じて知り合いとなった地方撃退署の撃退士達から、ビーチで行われるアマチュアビーチアメフトの観戦に誘われて来たのだった。
 アメフトなどどうでも良い北村であったが、南のビーチの誘惑は刺激的だった。
 そもそもアメフトにいい思い出など無いのだ。
「私は夏の妖精、魅惑のマーメイドになるんだから!アーーーイッ!」
 撃退署からの手紙を渡してきた狩野淳也が『たまには休暇代わりに』などと嫌な思い出が湧き出てくるような不吉な事を言っていたが、北村は過去は振り返らない女だった。

「北村さん張り切ってますね」
 遠山がビーチに駆け出した北村を遠目に見ながら、隣の狩野に話しかける。
 サングラスをクールにかけた狩野も、髪を風に靡かせながら虚無的な笑みを浮かべる。
「ああいう様子を見るとアイツもまだまだ子供なんだな、と思うよ。ふっ、はしゃいでるな」
 波打ち際できゃっきゃと遊び、飛んできたビーチバレーのボールをイケメンに投げ返しながらはにかんで見せる北村を見て、二人は呆れたような会話を交わす。
 なお、二人とも素肌にアロハシャツ、海水パンツにビーチサンダルと思いっきりビーチを満喫した格好だった。
 狩野は大きなバナナボートを足元でせっせと膨らませている最中でもあった。

\キャーッ!/

 ビーチアメフト会場での盛り上がりとは異なる悲鳴が響き渡る。
 一緒に混ざりませんかとイケメンたちに声をかけられ、もったいぶっていた北村の背後に突如浮かび上がる白い巨体。

 だいおう いか が あらわれた !

「……イカ?」
 イカだった。
 紛う事なき白いイカ。
 眩いばかりにぬめる白い体は青い海に映えて、ビーチの視線を独り占めしていた。
「……えっ、と?天魔、よね?」
 迷いを見せた北村にイカの触手が襲い掛かる。
 ビーチでは迷った者からオモチカエリされる運命なのだ!

「……狩野さん、北村さん連れ去られましたけど」
 一瞬の出来事に遠山は唖然として北村が沖に去って行くのを見送る。
「……僕の瞳はごまかせない。アレは自然の生き物だ。アイツも撃退士なら無事に戻ってくるだろう」
 狩野の両手で作った双眼鏡<イマジナリーグラシス>は天魔の類と未確認生物の違いをサングラス越しでも鋭く見分ける!
「それに俺達は丸腰だ。休暇のつもりだったからな!」
「……学園に電話しますね」
 バナナボートを掲げて、HAHAHAと白い歯を見せて笑う狩野をスルーして、遠山は学園に応援を頼むのだった。


 ここはとある海の上。
 人気メニューはイカの叩き。

「はぁ、はぁ……。撃退士を舐めるんじゃないわよ!」
 鋭い蹴りで巨大ダイオウイカを叩きのめした北村は、気絶したイカの上に座り込んで荒い息を吐く。
「あぁ、私のひと夏のアバンチュール計画が……。こういう時颯爽と助けてくれるような紳士な野性味あふれる男は居ないのかなー」
 遠く離れてしまったビーチを思わせぶりにちらっちらっと振り返るが、誰もくる様子の無い遥か遠くのビーチの様子にがっくりと肩を落とす。
「ちょっと休憩……疲れたわー」
 パタリとイカの上で倒れた北村はすやすやと寝息を立てて夢の中へと旅立つのだった。


「北村はあっちだ。ひとりでイカを倒したのは良いが疲れ果てて眠ってしまってるようだ。このままでは日焼けで大変な事になってしまうだろう。救助を頼む」
 駆けつけて来た学園生に向かって、狩野は広げた地図を使って説明する。
 バサバサと悪戯な風が地図を煽るのでほとんど分からない。
 だが、集まった撃退士達は空気を読んだのか、近くの水着美女を眺めているのか、はたまた海の家で焼かれている焼きそばの匂いが気になるのか、誰も指摘せずにとにかく話は続く。
「地方撃退士達も手伝ってくれるようだし、鍛錬がてら競争なんてのも……ん?あれは誰だ?」
 狩野が振り返ると黒い影が波打ち際で整列して準備体操をしていた。
 その背後には地方撃退士達がノックダウンされている姿が散らばっていた。
「そんな、地方撃退士達では準備運動にすらならないと言うのか、奴等にとっては!……さすが森の賢者、いや、海の王者GORILLAだ!」
 狩野は驚愕のあまり本格的な発音で説明する。
 ゴリラ達は驚いたことに水着を着ていた。きわどいぐらいに攻めているブーメランパンツと頭を締め付ける水泳帽だ。
「なんて本格的な装備なんだ……!何が奴等を駆り立てるんだ……?」
 ゴリラ達の背後には地方撃退士達が使っていたアメフトのポールが太陽の光を反射して眩しく輝いていた。
「リベンジ……!そうだリベンジに来たんだ!諸君!負けられない戦いがここにある!」
 狩野はビシッとあらぬ方向を指さす。
 遠山は膨らんだバナナボートの感触を確かながら適当な事を言っている狩野から視線を逸らして、悩まし気に眉間を揉むのだった。


リプレイ本文


「話は後で聞きましょう。分かっています、任せてください」
 ユウ(jb5639)は使い込んだ愛用の銃を手に準備運動をしているゴリラに向かって走り出す。
「待てッ!(ゴリラが)危険だッ!……クソッ!俺は彼女を追う!君達は準備を急いでくれっ!」
 狩野淳也は風に煽られて役目をはたしていない地図を投げ捨て、ユウを追う。
 陽光降り注ぐビーチでセクシーな水着のユウを追いかけるアロハの淳也。
 ユウの手に銃が無ければ、また違う光景に見えた事だろう。
 ゴリラに狙いを付けたユウは、手を淳也に掴まれる。
「ここはビーチだ」
 言葉少なく視線で訴えかける淳也だが、サングラスが邪魔でユウにはその目は見えない。
 だが、勘の良い娘であるユウはしっかりと頷く。
「なるほど、確かに周囲を巻き込むかもしれませんね。つまり、スポーツで勝負をつける、という事ですね」
 ユウの目は真剣だった。真剣に頷き返す淳也の視線はサングラスが(ry

「俺はちゃんと話を聞いてたよ。えーと、つまり……打倒!ゴリラ!」
 マジメにじっと話を聞いていた霧谷 温(jb9158)は、風の音が邪魔で聞こえなかった部分を脳内補完して気合を入れ、おもむろにズボンを脱ぎ始める。

『キャー☆何でここで着替えてるのっ☆』
 両手で眼を覆って……、いや、むしろ指で眼を見開いて霧谷を見つめるのはプリティチェリー。仮初の名を御手洗 紘人(ja2549)と言うが今回の話とは関係ないので割愛しよう。
 今日もチェリーはチア・魔法少女として仲間にエールを送る。寝そべりながら。
 余りの暑さにパラソルの下で椅子に寝そべり、戻ってきた淳也に日焼け止めを塗ってもらっていた。
 海の家から運ばれて来たかき氷を食べながら『がんばれー☆』とエールを送るチェリーの隣で、淳也も南国的なカクテルを楽しむつもりだ。
 まだ淳也の休暇は始まったばかりだ!

「キレッキレですねー。だが、俺も昔とは違うんですよ任せてください!」
 湯坐・I・風信(jc1097)は霧谷の局部から視線を逸らし、ビシッと台詞を決めてゴリラに向かって走り出す。
 湯坐が駆け寄るまでの足止めとして霧谷が始めたドラミングに対抗するようにゴリラ達が一斉にドラミングを始めた。
 多勢に無勢の霧谷は途中でむせてしまうが、その間に湯坐はゴリラへと到達する。
「霧谷さんの死は無駄にしませんよ!前とは違う俺を見せてやるぜ!」
 ここまで熱い砂浜を走って既に足の裏が限界を迎えつつある湯坐は、一生懸命考えて来た決め台詞を端折って翼を広げる。
「出てこい!俺の!陰陽の!つばっさああああ!」
 飛ぶならなぜゴリラの前に出て来たんだ湯坐さん、と遠山は心の中でそっと呟く。
 でも霧谷がドラミングを始めた時に止めなかった時点で、自分の出番はないな、と悟る遠山だった。

 ゴリラの海に湯坐が沈んでいくのを横目に、テト・シュタイナー(ja9202)と瀬波 有火(jb5278)は砂を掘っていた。
 とても楽しそうな二人の様子に誰もが微笑みを浮かべる夏の風物詩。
 だが微笑んでいた人々は、次の瞬間こう思ったことだろう。
 そう思っていた事が私にもありました、と。
 凄まじい勢いで基礎工事からしっかりと行われていく作業は、定点カメラの早送り映像の様に。
 広大な何かが砂浜で展開されようとしていた。

「ゴリラ、だね。またゴリラだね……」
 ブツブツと呟いていたジョシュア・レオハルト(jb5747)は砂浜を劇的に大改造し始めた有火を見て、遂にマフラーで顔を覆う。
 やがて悲しみを拒絶して復活したジョシュアは、とりあえず浜辺に集まっているゴリラ達にコメットを打ち込む。
 降り注ぐ彗星がゴリラを襲い、ゴリラの群れから頭を出しかけていた湯坐が絶望のままに沈んでいく。

「おやおや」
 狩野 峰雪(ja0345)は混沌とした状況に苦笑を浮かべる。
「若い人は元気でいいねぇ」
 峰雪はいつ着替えたのか、ラガーシャツの襟を立てて腕を組む。
「早く助けないと海の上じゃ北村くんも日焼けしちゃうし、火傷みたいになってしまうかもしれないね。……そうだね、僕は審判、といこうかな。流石に老体にアメフトは厳しそうだからね。……彼を借りるよ、お嬢さん」
 そういって淳也の座っている椅子毎持ち上げ、ゴリラに向かって走り出す。
「うおわっ!?なんだ!?」
 淳也はバナナボートを抱きしめたまま、動揺して身動きが取れない。
「プレイボールの前には始球式が付き物だろう?こういう式典を若い人は面倒臭がるけれど、フェアプレーを誓いあう儀式というのは大事な物だよ。だけどボールが無い。こんな時に狩野くんが居てくれて助かったよ」
 はっはっは、と笑って助走をつけた峰雪が投げる。
 淳也は放物線を描いて、ゴリラの前に着水した。
「さあ、キックオフの時間だよ」
 にやりと笑う峰雪はアメフトを知らぬ。ただ、審判らしさに関しては敏感であった。
 

 海の上を這うように進む。
 湯坐は黒い胸板が迫って来て、ブーメランパンツに囲まれたところまでは覚えていた。
 必死の思いで空へと飛び立ったはずだったのだが、そこから先の記憶が無かった。
 そして今、視界は海へ空へとクルクルと目まぐるしく回っている。
「ってこれ俺が回ってる!?」
 ゴリラ達は荒れ狂う海をゆっくりと泳ぎながら、湯坐を使ってパスの練習をしているのだった。

「ルールは分かりませんが、スポーツならばボールを奪えば良いのですね?」
 白波をかき分けてバタフライで進むユウは、勢いを止めることなく『ボール』を持つゴリラに向かって掌を突き出す。
 練り込まれたアウルによる衝撃がゴリラを伝わり、『ボール』を貫く!
「ぎゃあああ!ちょっと手加減してくださいやぁああ!」
 パスを出そうとしていたゴリラの手元から、湯坐がキリモミをしながら宙を舞う。
 湯坐の口から噴出されるヤバい何かが青い空に虹を咲かせる。
(これ、死ぬかも……あ、でもこれはこれでおいしい!ボール……うま……)
 人間の尊厳よりもボールである事の主人公感に酔いしれることで現実逃避を始めた湯坐の体に、鎖が巻き付く。
「危ない、風信!」
 霧谷が放ったアウルの鎖が、波の彼方に消えようとしていた湯坐を一本釣りに釣り上げる!
「生きてたか……って!?」
 霧谷が鎖で身動きの取れない湯坐を受け止めようと腕を上げかけて固まる。
 波に乗ったゴリラ達が殺到してくる様はまさに黒い波。
 慌てながらもブーメランパンツから阻霊符を取り出した霧谷はゴリラに向かって突きつける!
「サーバントならこれが効くはずっ!」
 阻霊符は確かに効果があった。
 サーバントじゃなくてディアボロだったが確かに効果はあったのだ。
 波の力を一部透過してやり過ごしていたゴリラ達は急に背中にかかる波の力が強くなったことにより、勢いを増して霧谷と湯坐を巻き込んで流れていく。
「GORILLAA!!」
 ゴリラと霧谷、そして身も心もボールとなった湯坐は大波によってもつれ合いながら浜辺へと押し流されていくのだった。

 自身の一撃から始まった惨事を見届けたユウは、ふと思い出したように浜辺に視線を送る。
 浜辺では、審判の峰雪の旗は上がっていない。
「良かった。ファウルとは取られませんでしたね」
 レッドカードの不安が解消されほっと胸をなでおろすユウは知らない。
 峰雪が大事な瞬間に、チェリーが食べているかき氷に目を奪われていたことを。
 そして峰雪がいちご練乳がけかき氷を食べたい気持ちを必死で抑えている事を!
 そして、黄色いナニカが背後から迫っていることを。
「いやっほぉぉぅっ!」
 淳也は何かにぶつかってバランスを崩したが、バナナボートの上で上手くバランスを取って体勢を立て直す。
 今一番楽しんでいる男、狩野淳也はユウを引っ掛けた事にも気づかず、バナナボートにしがみついたまま浜辺へと戻っていくのだった。


 一方その頃、浜辺では壮大な城が完成を迎えようとしていた。
 外壁は高く、どれほどの巨人が来ても絶対に越えられないと思わせるほど聳え立つ。
 そして3mを越える高さにある天守閣には、二人の人間が立ってポーズを取っていた。

「見ろよ、このデカい砂の城。俺達の揺ぎ無い勝利を象徴するようだ」
 完成した城の上に立ち、テトは感慨深げに笑みを漏らす。
 その隣では、有火も深い感動を持って周囲を見回す。
「待ってたよ。あの日からずっと待ってた。また、戦うことになる。そんな気がしてたから」
 海からは黒い塊となった霧谷と湯坐(ゴリラの中に居る!)が波に乗って勢いよく押し寄せてきていた。
「地獄の一丁目へようこそ。待ってたぜ」
 その黒い大玉を見てもテトの自身は揺るがない。城壁への信仰心は厚いのだ。
「果たしてこのあたしたちに……何、あれ?」
 空からバナナが降って来た。いや、バナナボートだ!
「これぐらい受け止めてやわぁあああ!」
 テトと有火が空から降って来た新手の敵に対応しようとグッと踏み込んだ瞬間、城は崩壊した。
 崩れ落ちた二人を巻き込んで勢いよく転がってくるゴリラ達。
 砂をぺっぺと吐き出していたテトと有火をさらに砂の中に埋めて転がっていく。
 そして二人の間に突き刺さるバナナボート。淳也とユウは近くに投げ出されている。
 砂上の楼閣はあっという間に崩壊し、そこに広がるのは地獄絵図だった。


「いっけなーい、私も手伝わなくちゃっ☆」
 チェリーは空になったかき氷の容器を置いて立ち上がる。
「あ、間違えちゃった☆」
 チェリーがスリープミストを放つと、ゴリラと一緒に淳也やユウも眠ってしまう。
 テヘッと頭をかるくコツンと叩いて舌をペロッとだす可愛い仕草に、峰雪も審判として「フェアだね」と判定を出す。
 ウキウキとした足取りでゴリラに近づきながら無数の影を放って眠っているゴリラを縛り上げる。
 さわっと通りすがりに淳也の胸を撫でて、その指をぺろりと舐める。
「この庵治……悪くはないわね。でも本命はこっち、さあ、起きて☆」
 縛り上げられたゴリラを電撃が襲う。
 さらに、マイスターの妙技が襲い掛かる。繊細な手つきでリズミカルに、厚い雄の胸板をもみほぐしていく。
 疲れた体に睡眠と整体、そして電気治療にマッサージと、最高の施術を受けたゴリラは激しくドラミングを行って再び戦場へと駆け戻っていく。

 一番最初に起き上ったのはテトだった。
 砂から拳を突き出し、ゾンビのように地上へと這い上がってくる。
「有火ーっ!玉ァ持ってこい有火ー!」
 テトの叫び声で砂から飛び出してくる有火。
 立ち上がり始めたゴリラに向かって一直線に突撃していく。
「有火!ビーチではタックルは禁止だぜ!」
「わかった!テトちゃん!」
 制止の声に有火は掌を思いっきり突き出してボール(湯坐)を持っているゴリラにぶつかっていく。
 湯坐ごとゴリラの巨体は、8mは宙を飛んだだろうか。
 先回りしていたテトは頭上を越えていくボールを追いかけてフィールドを駆け抜ける。


 ゴリラ達と戯れていた有火は汗をかいて、額にへばりついてきた髪の毛が不快になってきた。
「そうだ、涼みに行こう」
 有火は、ゴリラにマフラーを使った関節技を決めていたジョシュアに向かって猛然と突っ込んでいく。
 ジョシュアの周囲は不思議パワーでいつも快適なのだ。一家に一人いて欲しいね!
「ジョーシューアくーん、すーずまーせてー!」
 危険を察知したジョシュアは落ち着いてゴリラを開放し、マフラーを一閃する。
 ふわりと広がったマフラーが有火を包み込むと同時に強く引く。

 なんということでしょう。
 拒絶空間の匠・ジョシュアを起点に有火は勢いを増して回転していくではありませんか。
 鋭いスピンを加えた有火が海に向かって飛んでいく姿は、まるで独楽のよう。
 流石の匠も頬を染めて、打ち上げた独楽の行き先を見つめています。
「というか堂々と抱き着いてこないで!?」
 染まった頬をマフラーで隠し、匠は真面目にゴリラに向き合うのでした。

「震えるぞビーチ!燃え尽きるほどのサマー!刻むぞ常夏のビート!《常夏色のゴリラ疾走(サンライトサマー・ゴリラドライブ)》ッ!!」
 口に出したい見事なライムを叫ぶテトの眼前から、ゴリラの毛並みが波紋のように広がり空へと舞う。
 ゴリラは湯坐を抱きしめていたがその衝撃で投げ出してしまう。
湯坐はようやくボールという思い込みから正気に戻り、ゆらりと立ち上がる。
「ふっ、俺ももてあそばれてばかりじゃないっすよ。ラノベで読んだかっちょい魔法攻撃!燃えよ俺の拳!フレイムしゅほごぉぉぉ!」
 拳の先にアウルを集めて、必殺技を繰り出そうとしていた湯坐を突然のフレンドファイヤが襲い掛かる!
「風に戸惑う弱気な俺の、インパクトォッ!」
 仕方ないことだった。霧谷はブーメランパンツを頭に被ってしまったのだから。
 前が微妙に見えにくかったとしてもこれは仕方ない。ちなみにスイムキャップを腰に巻き付けてあるので何も問題は無い。
「受け取れ!俺の、青春!」
 再び湯坐を衝撃が襲う!
 物言わぬ湯坐はボールと同義なのだ!
「受け止めてやるぜ、お前のブーメランパンツ魂!」
 ボール・湯坐を見事にキャッチして、テトはゴールを目指す。
「ピンチを救うのは魔法少女の使命よ☆いっっっけー!」
 ゴリラ達の前に立ち塞がったチェリーが渾身の力を込めた極大魔法を放つ。
 その魔法の光は海を割り、はるかかなたで大爆発を起こす。
「あれ、何か凄いの出ちゃった……?まいっか☆」
 チェリーはテヘッと笑うとブーメランパンツという戦利品を獲るべく、嬉々としてゴリラの群れに飛び込んでいくのだった。


 テトがあとわずかでタッチダウン出来ると言うところで、ゴリラ達に追いつかれ、猛然とタックルを受けて倒れる。
「くそっ、タックルは反則じゃないのか!」
 悔しそうに叫ぶテトに、審判をしていた峰雪は「え、そうだったのか。はっはっは」とナイスミドルな笑いでごまかす。

 ゴリラ達の勝利を誰もが確信した時、会場が大きなざわめきに包み込まれる。
「TSUNAMIだー!」
 先ほどチェリーが引き起こした大爆発。
 その影響でTSUNAMIが発生していた。もしくは霧谷のせいだろうか。
 誰もが見上げるほどのビッグウエーブに、白い影が見えた。
「乗るしかない、このビッグウエーブに!」
 ダイオウイカで波に乗る有火だった!
 遥かな高みから大波と共に振ってくる有火の腕には、こんがりと焼けた北村が抱えられていた!


\ピーッ!/
 峰雪のホイッスルが鳴り響く。結果は引き分け。
 波が引いた後に残っていたのは、有火が地面に突き立てた北村と、ゴリラが地面に埋め込んだ湯坐の姿が仲良く並んでいた。
 紳士的なゴリラ達はユウとしっかりとした握手をして場を乱さないように静かに去っていた。
 さようなら、また会う日まで!

 なお、ダイオウイカはスタッフがBBQでおいしく頂きました。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: バイオアルカ・瀬波 有火(jb5278)
 白炎の拒絶者・ジョシュア・レオハルト(jb5747)
 伝説を呼び起こせし勇者・湯坐・I・風信(jc1097)
重体: −
面白かった!:6人

Mr.Goombah・
狩野 峰雪(ja0345)

大学部7年5組 男 インフィルトレイター
雄っぱいマイスター・
御手洗 紘人(ja2549)

大学部3年109組 男 ダアト
爆発は芸術だ!・
テト・シュタイナー(ja9202)

大学部5年18組 女 ダアト
バイオアルカ・
瀬波 有火(jb5278)

大学部2年3組 女 阿修羅
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
白炎の拒絶者・
ジョシュア・レオハルト(jb5747)

大学部3年303組 男 アストラルヴァンガード
黒い胸板に囲まれて・
霧谷 温(jb9158)

大学部3年284組 男 アストラルヴァンガード
伝説を呼び起こせし勇者・
湯坐・I・風信(jc1097)

高等部3年4組 男 ダアト