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マスター:monel
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/11/02


みんなの思い出



オープニング


「今回の依頼は簡単な警護だ」
 ミーティングルームに集まった撃退士達に、狩野淳也は資料を配る。
「以前破壊された陸橋の修復工事が終わり、開通式が執り行われる。撃退署からも人員は出るようだが、無理矢理押し込ませてもらった」
 狩野はホワイトボードに広げた地図を貼り付ける。
「陸橋は幅8m、高さ6m。前回と同じ場所だな」
 狩野が指し示す場所には、線路と国道が平行に走っていて、直行する国道と交差するところに線路を越える陸橋がある。
「開通式は陸橋の国道側で行われる。仮に天魔が襲ってきても逃げるのは容易だろう。そこは撃退署に任せても大丈夫だと予想される」
 地図の陸橋部分を赤いマーカーで丸く囲み、撃退士達に向き直る。
「もしもの時、君たちに守ってもらいたいのは、陸橋だ。以前よりも補強されて強くなっているが、油断はできない。ここを失うと交通の便が極端に悪くなるからね」
 真剣な表情で告げ、近況をほぐすように肩をすくめる。
「ま、襲ってこない可能性もあるけどね。最近この周辺で天使が確認されている。おそらく使徒も生まれたと考えられる。何か仕掛けてくるならそろそろだろう」
 話は以上だ、と撃退士達を送り出そうとして、思い出したように付け加える。
「あぁ、そうだ。線路の復旧はまだなので、今回は陸橋だけを守れば良いからな。それと、ついでにもう一つ」
 狩野は人差し指を立てて、何気ないように言葉を重ねる。
「本当に襲ってくるのなら、大きなたくらみの前哨戦かも知れない。無理そうな時は情報収集のみで撤退するようにな。健闘を祈る」


 爽やかに晴れ上がった秋空に小さな浮雲がふわふわと漂う。
 他の雲に比べてやけに低い高度で漂うその雲は、風向きとは関係なくあちこちへふわりわりと飛んでいた。
「この辺りじゃ、そろそろ復興するころじゃろ……あっ、あったあった!ほら、そこ!ねっ!」
「あー、ホントだ、いっぱい集まってるねー。」
 浮雲の上で賑やかに会話するのは、天使ドラ・カルフェンとその使徒ジンの二人だった。
「せっかく新しく作った陸橋なのに壊すの勿体なくないー?」
 浮雲に腹這いになり、下界を覗き込むように眺めてジンは心配そうにドラに尋ねる。
「ふふん、それが狙いじゃ。せっかく作り直したのにまた壊されたーっ、ドラ様には何やってもかなわねーってなるじゃろ」
 浮雲の上で胸を張るドラの様子に、ジンは感心したように拍手を送る。
「へぇー、ドラも考えてるんだねー。それでコレ作ってたんだね」
 ジンは身体を起こして背後に浮かぶ浮雲を振り返る。
 ふわりふわりと浮かぶ浮雲はそれぞれがサーバントであり、その上にも個性的なサーバントが乗っていた。
「ジンの初仕事じゃからのぉ。危なくなったら助けるから思いっきりやっておいでよ」
 気楽な様子で笑うドラに、ジンも苦笑を浮かべる。
「それじゃ、行ってくるよ。僕らの夢を叶えるためにね」
 ジンがふわりと浮雲から飛び降りると、背後に控えていたサーバント達も次々に舞い降りていくのだった。


「何だぁ、あれは」
 どこかのお偉いさんの挨拶を聞き流しながら、あくびを噛み殺して空を見上げていた撃退署員は、空から降ってくる異物に最初に気付き、声を漏らす。
 のどかに空を漂っていた雲の一部がふわふわとこちらを目指して漂ってきた。
 目を凝らしてみると近づいてくる雲には手足や頭のような突起があり、人型のようにも見える。
 さらにその背後には黒光りする影が見えた。
「あっ、現れたぞーっ!天魔だーっ!」
 悲鳴を上げて逃げ惑う人々を撃退庁の撃退士達が上手く誘導して避難を始める。
 空からは鉄球、ハンマー、ドリルを頭部と腕の先に持つサーバントが雲のようなサーバントから飛び降りてくる。
 更に後ろからもう一つの影、子供のような姿をしているが、宙にふわりと浮いて撃退士達を見下ろす。
「あれ、ひょっとして僕を殺しに来たのかな。まだ遊びはこれからなんだから、見逃してくれないかな……?」
 ジンは困ったような笑みを浮かべ、絵筆を取り出し筆先を撫でるのだった。


リプレイ本文


 秋らしく透き通った青空を少年姿の使徒・ジンが歩いて降りてくる。
 その周囲をサーバント達が陸橋目指して堕ちていく。

「さーて、やっぱり来たね」
 紫園路 一輝(ja3602)は炎のようにアウルを立ち上らせ、その隻眼で空を見上げる。
 敵の到来を前にして、更にアウルを高め、身を包む炎を金色に揺らめかせる。

 空を歩くジンの姿を蘇芳 更紗(ja8374)は厳しい眼差しで睨みつける。
「よくもわたくしの前に面を出せたものだな。望み通りに微塵に擂り潰して跡形も無く消滅させてやるぞ」
 怒りに燃えた表情で、蘇芳は吐き捨てるように叫ぶ。
 蘇芳の声に目を向けたジンは、怯んだように身をすくめる。
「うわぁ、あの時のおねーさん怒ってるね……。雲ちゃんお願い」
 近くの雲型サーバントに手を振る。
 ジンの意を受け、一体の雲型が蘇芳に向かって真っ直ぐに突っ込んでくる。
「丁度良い、あの雲から狙いましょう」
 只野黒子(ja0049)は複雑な文様が浮かぶ双銃を構え、蘇芳に向かってくる雲型に銃を放つ。
 只野の銃撃に合わせるように日下部 司(jb5638)も銃弾を飛ばす。
 サーバントを使役するジンの様子を見て、疑問を抱いた日下部は誰ともなく呟く。
「あの少年は使徒なのか?」
「そうだ、唯の化け物だ」
 蘇芳もタイミングを合わせてショットガンを放つ。
 3者からの銃撃は雲型サーバントにいくつもの穴を開ける。
 だが、本物の雲を撃ち抜いたように手応え無く、穴は埋まっていく。
「……物理的な攻撃は効果が薄いようですね」
 只野は雲型の身体がわずかに小さくなったことに気づく。
 勢いを落とさずに突進してきた雲型は蘇芳に向かって腕を振り上げる。
 蘇芳はわずかに体を反らし、ショットガンを雲形の腕に添えるようにして勢いを逸らして攻撃をかわす。
「それでも斬るだけだ……雷切!」
 陽波 透次(ja0280)がアウルによる衝撃波を放ち、雲型の身体を大きく穿つ。
 その穴もゆっくりと塞がり始めるが、雲型の動きは鈍りその場を動かなくなる。

「お前の相手は俺だっ!そっちは任せる。頼むぜ!」
 千葉 真一(ja0070)は空から陸橋に降りてくるサーバントに向かって真っ先に駆け出した。
「天・拳・絶・闘、ゴウライガぁっ!」
 次々と陸橋に降り立つサーバント達の間を縫って駆け抜けながら、千葉は掛け声と共に光纏する。
『ROOT OUT!』
 閃光と共にサーバントの頭部の鉄球にヒビが入る音が周囲に響き渡る。
「うわ、雲ちゃん援護っ!」
 千葉の豪打を見て、周囲を旋回していた雲型に指示を出し、ジンは絵筆を宙に走らせる。
 筆を動かすと凄まじい速さでジンの目の前の空間に絵が描かれていく。
 その絵は橋の上に浮かぶ巨大な岩。
 ジンが筆を走らせると同時に、橋の上に絵と同じような岩が浮かぶ。
「よっし、完成っ!」
 ジンが満足げに頷くと、岩は重力に従い千葉に向かって落下する。
 千葉は巨大な岩に押しつぶされたかに見えたが、腕を振るうと岩は脆くも崩れ去る。
 大したダメージを与えられなかった事実にジンは首を捻る。
 砕け散る岩の間を縫って雲型サーバントが千葉に向かって腕を振るう。
 砕いた岩で気づくのが遅れた千葉は背中に強打を受けてよろめいた。

「ふーん……」
 蒼白く透き通った翼を具現化させた玉置 雪子(jb8344)は、ジンの攻撃を撮影して唸る。
「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?って奴ですね、わかります」
 フヒヒ、と笑いながら冷たく光を放つ刀を抜く。
「やる事をやるだけですね。……ゲームスタート」
 撃退士達の攻撃により動きの止まった雲型に向かって刀を振りかざして空から飛び込んでいく。

 サーバントの動きを空に浮かんで眺めていた狗猫 魅依(jb6919)は千葉を襲う雲型を見つけて、ぐっと手を握りしめる。
「それ以上はやらせにゃいよ!」
 飛び出した千葉を追うように、宙を駆け抜けるのだった。


 動きの鈍った雲型を後に、陽波、日下部、紫園路の3人は橋の破壊活動を続けるサーバントに向かって走り出す。

 陽波が向かった先には、両手のハンマーを交互に打ち付け、ヒビの入った橋に頭のハンマーをぶつけて穴を開けるサーバントが居る。
 突っ込んだ勢いのまま数度の突きを繰り返し、勢い余った姿勢を体の捻りで横の力に変え薙ぎ斬る。
 ハンマーに遮られた刀をすぐさま返し擦りあげるように振り上げ、刀の柄で頭のハンマーを殴打、敵が揺らいだ隙間に刀を振り下ろし、止めとばかりに突きを放ちながら手首を返して抉る。
 瞬時に行われた連続攻撃にもサーバントは体表にヒビを走らせるが、僅かに打痕の見えるハンマーを構えて陽波に向き直る。
「まだ終わりじゃない、倒れるまで何百回でも斬る」
 陽波は振り下ろされるハンマーを掻い潜り、再び風のようにサーバントを切り刻む。

 ドリルで橋を砕くサーバントに最初に到達したのは紫園路だった。
「道路工事は邪魔にならないようにやれよなっ」
 レガースからアウルを噴射し、数mを飛ぶように距離を詰めて金色に輝く蹴りを放つ。
 だが、レガースが回転するドリルに舞い込まれ、後方へと放り投げられる。
 傷だらけになった右足を庇うように身体を捻って着地し、血が滲む脚を踏み出して再び敵に向かう。
 一呼吸遅れて紫園路に続いた日下部だったが、2体の雲型が遮るように道を塞ぐ。
 日下部は立ち塞がる雲型を恐れることなく、紫園路が対峙するドリルへの最短距離を大剣を顔の前に立てて真っ直ぐに走り抜ける。
 間を通り抜ける際に左右から攻撃されるが、右からの拳は大剣で受け止め、左からの拳は緊急活性した小型の盾で受け止める。
 肩への衝撃を全て殺す事は出来なかったが、2体の間を通り抜ける事に成功した。
「一輝さんっ!伏せてくださいっ!」
 地面を擦るように構えなおした大剣を斜め前へと振り上げる。
 その攻撃を避けられなかったドリルのサーバントの身体が宙に浮き、咄嗟にしゃがんだ紫園路の頭上を越えて飛んでいく。

「ゴウライパァァンチ!」
 千葉は動けなくなった鉄球に大きなモーションで拳を叩き付ける。
 派手な音を立てて鉄球の頭に大きなヒビが入る。
「あっ、大変だ」
 ジンは先ほどと同じように絵筆を走らせる。
 描いたのはサーバントの頭部にある鉄球にヒビが入っていない姿。
「新しい頭だよっなんてね」
 完成したジンの絵が現実のものとなり、サーバントの頭部はヒビの無いものと変わる。
 それにより、腕の鉄球に反動をつけるようにぐるぐると回し始める。
「その鉄球は使わせないぜ!ゴウライ、キィィック!」
 目の前の敵の傷が一瞬にして消えても、千葉は再び打ち砕くとばかりに蹴りを放つ。
 インパクトの瞬間に激しく光を生むその蹴りは、鉄球の意識を再び刈り取るにふさわしい威力があった。
 だが、当の千葉は怪訝思いを抱いて居た。
(さっきよりも軽くなってる……?)
 この手応えの違いは戦いが終わるまで千葉の頭の片隅に残るのだった。


 只野は動きの鈍った雲型を置いて走る蘇芳にアウルによる聖なる刻印を刻みながら、戦況を眺める。
「一撃離脱……注意してください、雲のサーバントは攻撃してすぐに次の相手に向かっています」
 危惧していた雲型の動き、動き回りながら次々と戦う相手を変えていく様子に気づき、仲間へ注意を促す。
「了解だよ!ミィにまかせて!」
 狗猫は両手で支えるビスクドールを雲型に向かって掲げる。
 道化師のような禍々しいドールはまるで意思を持つかのように腕を振り、黒いナイフを投げる。
 雲型に突き刺さったナイフは周囲の雲を吸い込む様に、大きく穴を広げて通り抜けていく。
 嫌がるようにその場から離脱した雲型は、ハンマーと戦う陽波へと群がる。
 ハンマーに対して無数の攻撃を放っていた陽波は、危険を感じ爆発的にアウルを高める。
 攻撃を無理矢理止める事で1体目の拳を避け、2体目の拳をかわすために更に加速する。
 その姿は一瞬霞み、残された残像を雲型の拳が打ち抜く。
 続けて振るわれたハンマーの両腕の釘抜き側による突きが陽波を貫く。
「喰らえ」
 陽波の声が上空から聞こえる。
 さらに具現化した残像を残し、上空へと飛び上がっていた陽波が全身に巡らせていた膨大なアウルを刀に込めて、ハンマーの頭に打ち降ろす。
 速度と力の乗った刀は、ハンマーの全身を易々と切り裂き、両断するのだった。

「これで最後だァッ!ゴウライ・流星閃光キィィック!」
 陽波がハンマーを仕留めるのと同時に、鉄球と戦う千葉の声が響き渡る。
 背中にアウルの焔翼を背負い、千葉は激しい勢いで蹴りを放つ。
『BLAZING!』
 鉄球は蹴りを受けてよろめき、弾けるように四散するのだった。

「ぶっっとべぇ!」
 狗猫の気合の入った声と共に橋の上に無数の花火が咲き乱れる。
 陽波を狙って集まっていた3体の雲型に、冥魔の気配を帯びた爆発が襲い掛かり、その身体を掻き消していく。
 慌てて散開していく雲型のうちの1体は狗猫に向かって突撃し、その小さな体を橋に叩き付ける。
「……ッ!」
 肺を潰され、悲鳴も声にならない狗猫はそのまま意識を失いかける。
 だが、意識が暗転する直前に、只野が送った癒しのアウルに包まれて辛うじて意識を繋げる。
「ひゃぅ……あ、ありがと」
 慌てて空気を吸い込んだ狗猫は、全身の痛みをこらえながらも、空へと走る。
 戦いはまだ終わっていない。
 勇敢にも再び戦場へと飛び立った狗猫は、更に冥魔の気配を色濃く漂わせ、襲い掛かってくる雲型に向かって無数の刃を放つ。
「あっ……!」
 大きくその身を削られながらも迫ってきた雲型を、狗猫は避ける事が出来ずに橋の下まで叩き落とされるのだった。

 ドリルを回転させるサーバントを前後から挟み、日下部と紫園路は有利に戦いを進めていた。
 ドリルの攻撃に日下部は大剣を合わせ、回転に逆らわないようにわずかに方向を変える事で、受ける衝撃の大部分を逸らして凌ぐ。
 ドリルは両腕を打ち合わせ、腕のドリルに火花を飛ばすと空気が焦げるような匂いが漂う。
 両腕のドリルの放電状態が増し、ピシピシと空気を鳴らす。
「ぐあぁっ」
 危険を感じた日下部は小型の盾を緊急活性して突き出されたドリルを受け止めるが、盾を通して電流に打たれ、感電してしまう。
 日下部が動けなくなったことで、形勢が逆転し、一気に紫園路は攻め立てられる。
 痛めた右足が再びドリルに削られ、片膝をついたところに回転する凶器が迫る。
「ゴウライソード、ビューモード!」
 ガリガリと火花を散らしてドリルに蛇腹剣が絡みつき、その回転を押しとどめる。
 それと同時に只野からの癒しのアウルが紫園路に送られる。
「助かった、もう大丈夫だ」
 痺れから立ち直った日下部が大剣を突き出し、ドリルの身体を貫く。
 ドリルはその回転をようやく止めるのだった。


 蘇芳はジンに向かって戦場を駆け抜ける。
 その目に浮かべるのは純粋なる憎悪、憤怒、殺意。
 その手にショットガンを構え、空中に浮かぶジンに向かって放ち、さらに駆ける。
 ジンは蘇芳が銃を構えたのを見て、絵筆で赤い布を描く。
 その布はジンの姿を覆い尽くし、銃弾が布を撃ち抜いてもひらりとその後ろからジンは無傷で現れる。
「そんな顔で見られると怖いよ」
 ボロボロになった布を投げ捨てて、ジンはおどけて見せる。
「煩い喋るな。人の形を成し人の様に囀り人の様に振る舞う紛い物、化け物風情が」
 ショットガンを布槍に持ち替え、ジンに巻き付け空中から引きずりおろそうとする。
「うわっ……危ないよっ!わわっ!」
 バランスを崩して橋に叩き付けられながら、ジンは拳大の小さな火の玉を描き、蘇芳へとぶつける。
 蘇芳が火の玉を受け力が弱まった隙に、ジンは蘇芳の布槍から脱出し、距離を取ろうと再び空中へと踏み出す。
「フヒヒ、怖いの?ねぇ、怖いの?」
 玉置の放った氷の錐をジンはかろうじて避ける。
 その様子をからかってくる玉置に、距離を取ろうとしていたジンは振り返って舌を出す。
「べーっだ。そんな事ないもんねっ」
 手のひらに向かってさらさらと何かを描き、地面に投げる。
「ん、何それ……うげ、蘇芳先輩ストップストップ!」
 ジンが投げた絵にかいたようなものを見た玉置は慌てて追いかけている蘇芳に声をかける。
 だが、戦斧を担いだ蘇芳は気にすることなくジンへ追いつき、戦斧を振るう。
「残念、ちょっと遅かったね」
 ジンは迫る戦斧を恐れることなくにこりと笑って待ち受ける。
 戦斧が振り下ろされる瞬間、先ほどジンが放り投げたもの――丸い筒に時計が配線で繋がれた、絵にかいたような時限爆弾――が爆発し、蘇芳はその衝撃で体勢を崩して転がるのだった。

 余裕ができたジンが橋を見回すと、破壊工作を行っていたサーバントが全て倒され、雲型を残すのみとなっていた。
「あー、やられちゃったか。悔しいなあ」
 残念そうに呟き、空に向かって絵筆を走らせる。
「このままやられっぱなしも嫌だし、試させてもらおうかな。大分コツも掴んだからね」
 ジンが描き出したのは降りしきる炎の槍。
 次の瞬間、橋の上に広範囲に炎が降り注ぐ。
 千葉と陽波は避けたが、蘇芳、玉置、紫園路の3人は雲型サーバントをも巻き込んだ炎の槍に串刺しにされ、その身を焦がす。
 特に右足の自由が効かない紫園路は、身体を捻って急所を辛うじてかわしただけで、まともに胸に受けアバラを数本折って気絶する。
 玉置も腹を貫かれていたが、瞬時に只野からの回復を受け、意識を繋ぎ止める。
「蘇芳先輩っ」
 玉置は蘇芳に合図を送って発煙手榴弾をジンに投げつける。
「わっ、な、なに?」
 とっさに防御姿勢を取ったジンの周辺に玉置は吹雪を巻き起こす。
「せっかくの視界を奪われて……今どんな気持ち?」
 さっきまでの煽るような口調とは異なる静かな調子で玉置は呟く。
「うん、驚いたけど?」
 だが、何事も無かったようにジンが周りの光景を『塗り替えて』姿を現す。


「そこまでじゃ」
 撃退士達と対峙したジンの後ろに、新たな雲型を引き連れ天使が現れる。
 戦斧を振り上げジンに迫っていた蘇芳は、ドラの姿を認めると飛び退って距離を置く。
「でも、まだ……」
 ふて腐れたように口を尖らせるジンに、ドラは周囲を指し示す。
「ここは諦めて退こう」
 撃退されたサーバントと未だ無事に残る陸橋を眺め、ジンは諦めた様に頷く。
 待て、と声をかける撃退士に空へと舞い上がった二人は振り返る。
「貴様にも奪われる側の痛みを与えてやる。覚悟しておくんだな」
 蘇芳の言葉に、ジンとドラは合わせたように舌を出す。
「やーだよ。僕らは互いが必要なんだ」
 ジンはドラを、ドラはジンを庇うように手を握り、蘇芳に言葉を返す。
 その様子を見て、陽波が問いかける。
「君は、遊びで人を傷つけるのか?」
 陽波の問いに答えを残し、二人は飛び去っていく。
『夢を叶えるため』という言葉を残して。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

新世界への扉・
只野黒子(ja0049)

高等部1年1組 女 ルインズブレイド
天拳絶闘ゴウライガ・
千葉 真一(ja0070)

大学部4年3組 男 阿修羅
未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
『三界』討伐紫・
紫園路 一輝(ja3602)

大学部5年1組 男 阿修羅
屍人を憎悪する者・
蘇芳 更紗(ja8374)

大学部7年163組 女 ディバインナイト
この命、仲間達のために・
日下部 司(jb5638)

大学部3年259組 男 ルインズブレイド
諸刃の邪槍使い・
狗猫 魅依(jb6919)

中等部2年9組 女 ナイトウォーカー
氷結系の意地・
玉置 雪子(jb8344)

中等部1年2組 女 アカシックレコーダー:タイプB