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マスター:monel
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/12/01


みんなの思い出



オープニング

●山合いを走る列車
 穏やかな朝日が降り注ぐ山々に気を惹かれ、まだ幼さの残る若い撃退士は窓を開けて顔を出してみる。
 所々に紅葉が広がる木々の間から目覚めの伸びを行うように朝霧が舞い上がっている。開いた窓からは刺さるような冷気を伴った風が絶え間なく吹き付けており、肌がぴりりと引き締まる思いを覚える。ウインドブレーカーの襟を締め直し、それでも生真面目に警戒を続ける撃退士に背後から声がかかる。
「寒いから閉めてくれよ。どうせ天魔なんてこないよ。これまでだって出会ったことなんてないんだ」
 俺が寒いぜ、と呟く乗務員に軽く頭を下げて窓を締める。
 初めての列車護衛任務ももうすぐ終わる。ベテラン乗務員の言う通り何も問題は起きないのだろう。少し緊張しすぎてたのかもしれない、少しだけため息をついて肩の力を抜き、もう一度窓の外を眺める。
 緩やかに流れていく風景にふと違和感を覚えて乗務員に声をかける。
「すみません、あれ何でしょう……」
「あれって、ありゃあ蜘蛛、か?でかいな……?」
 山合いの田んぼを横切るように列車へ向かってくる黒い影が数体。
 ぼんやりとその姿を目で追っていた若い撃退士だったが、その詳細が見えてくると目が覚めたように叫ぶ。
「てっ、天魔ですっ!撃退庁へ連絡をお願いしますっ!阻霊符展開っ!」
 となりでは乗務員が無線に叫んでいる。若い撃退士は光を纏い阻霊符を展開する。
 その瞬間、線路上に居た大蜘蛛がフロントガラスを突き破って飛び込んできた。
 その勢いのまま大蜘蛛の爪が二人を襲う。
 乗務員の上半身が首だけを落としてふらりと揺れ、レバーを握り締めたまま倒れこむ。
 咄嗟に光纏した若い撃退士を、大蜘蛛は軽く足を振り払って飛ばした。
 窓を突き破って外に飛び出した撃退士は受身をとって転がりながら勢いを殺した。
「しまった……」
 徐々にスピードを上げて遠ざかっていく姿を見つめて唇を噛み締める。
「あれは……まだ間に合うかもしれないっ」
 一台のピックアップトラックに目を止めた撃退士は一刻を惜しむように駆け出すのだった。

●とある駅
 誰ひとり傷つくこともなく任務が完了し、ゆっくりと休息をとったあなた達はその日始発電車で帰る予定だった。
 あくびを噛み殺しながら勝ち取った勝利の余韻を味わっていると、目の前をすごい勢いで貨物列車が通り過ぎていく。その勢いは暴走と呼ぶにふさわしく、僅かに湾曲しているホームを削りながらも勢いを落とさずに進む。
 唖然として見つめるあなた達はその列車に数匹の大蜘蛛が張り付いていることに気づいた。飛び乗ろうと一歩踏み出したが、列車の勢いがそれを許さない。
 手をこまねいて見送ったあなた達へ電話がかかってくる。
「正式な斡旋所からの仕事よ。ディアボロに襲われた列車が暴走中、乗務員は死亡。同乗していた民間撃退士は列車から振り落とされて今は無人で暴走してるわ。あなた達は車で追いかけて列車を止めると共にディアボロを退治して頂戴。近くにいる学園生はあなた達だけなの。任務明けで申し訳ないけどこの依頼は受けてもらうわよ」
 電話先で斡旋所の職員の緊迫した声が響く。
「急いで。暴走していることから緊急停止装置が壊れている可能性が高いわ。20分後には曲がりきれずに市街地で脱線、ディアボロも放たれてしまう予測よ。車は駅まで列車に乗っていた民間撃退士が回してるわ」


リプレイ本文


 日は昇りきり、暖かな日差しの元ですずめ達が朝のお喋りを楽しむ。
 紅く染まり始めた山々も日を浴びてその存在感を日常の中へと溶け込ませ始める。
 そんな朝の静寂を引き裂くようにぎゃりぎゃりと砂利を跳ね飛ばしながらトラックは疾駆する。
「少し踏み込みが甘いですね」
 振動で荷台から跳ね飛ばされそうに成りながらも、スピードが足りないと天野 那智(jb6221)は嘆く。巫女装束に身を固め、きっと前を見つめるその表情は激しく吹き付ける風の中でも揺らぐことはない。
「暴走列車の脱線に、市街地に放たれるディアボロ。片方だけでも大惨事だな」
 はためくローブを押えながらも無表情にアイリス・レイバルド(jb1510)は嘆く。その目は淡々と流れる風景と荷台で思い思いに過す仲間達を観察している。その隣では紅葉 公(ja2931)が吹き荒れる風から身を隠すように屈んでいる。
「街へ被害が及ばないようにディアボロを止めないといけないですね」
 心配そうに眉を寄せ、両手に息を吐きかける。
「ヒーローの条件は強い事とカッコいい事、そして一番必要なのは恐れない心だッ!」
 運転席の真後ろで胸を張ってポーズを決める川内 日菜子(jb7813)だったが、ガタガタと揺れる荷台の上では車を掴まなければバランスが取れず、よろけてしまう。そっとその背中を支え支倉 英蓮(jb7524)はぽつりぽつりとささやくように話しかける。
「風圧……揺れや足場への気遣いは……忘れずに……」
「風が強く足場は揺れても恐るるに足らないッ!」
 アドバイスを受け入れ川内は片手で車を掴んで体を支えながらビシッと線路の彼方を指す。その横では面白くなさそうなふくれっ面で来崎 麻夜(jb0905)は二丁拳銃をくるくると回す。同じく二丁拳銃を点検していた麻生 遊夜(ja1838)は慰めるように声をかける。
「時間制限付きたぁ……忙しないね、全く」
 やれやれと肩をすくめる麻生だったが、線路の彼方に見えた列車に目を止める。
「追いついたようだ、気ぃ切り替えて止めるとするか」
 鋭く目線を細め徐々に近づいてくる列車を見つめる。その視線の先にはまだ小さな列車と、その大きさでも違和感を感じ取れる蠢く黒い姿を捕らえている。
「う〜む、中々燃える展開っすね。上手くやってのけてヒーロー気取りでもさせてもらいましょうかね!」
 興奮気味にテンションを上げて天羽 伊都(jb2199)はにんまりと笑うとその身に黒を纏い始める。全ては勝利の為に。完全なる勝利の為に。


「最後尾に一匹、せっせと糸を吐いて巣作り中ってところだな」
 近づいてくる最後尾の車両を、目を眇めて見つめながら麻生は敵の居場所を仲間へ告げる。
 撃退士達は思い思いのV兵器を手に飛び移るタイミングを見計らう。
「もう少しで手が届くっすね!速攻で退治しましょう!失敗して謝罪会見なんてゴメンっすよ」
 天羽が緊張をほぐすようにおどけて見せる。ゆっくり、ゆっくりと、じれったくなるほどじわじわと列車へ車が近づいていく。手を伸ばせば列車へ届く。のこりわずかとなった瞬間に、蜘蛛が撃退士達へ威嚇の声を上げる。
「撃てっ!当らなくても良い!近寄せるなっ!」
 麻生の合図で来崎が、支倉が、紅葉が、アイリスが。撃退士達は一斉に蜘蛛を狙い撃つ。銃撃音が響き渡り、矢がコンテナに突き刺さり、光の刃と虹色の刃が蜘蛛を襲う。飛びくるアウルの刃を受けて蜘蛛はその姿を宙へ躍らせる。
 空中で糸を吐きコンテナと自身を繋ぎとめ、大きく弧を描きながらコンテナの裏側の死角へともぐりこむ。吐かれた糸はもう一つ。身を乗り出すようにして矢を放った支倉の体に絡み、不自然な体勢のまま、トラックへと縛り付けられる。
「一旦離れましょう!このままでは近づけません!」
 鋭利に尖った扇の先端で支倉に絡んだ糸を切りながら天野が叫ぶ。支倉の体は大きくトラックの荷台からはみ出し、そのまま列車に近づくと巻き込まれる可能性がある。
「そう簡単には逃げられると思うなよ。糸を吐く動きは観察した。立て直したらすぐに戻ればよい」
 冷静な口調でアイリスが告げ、トラックは列車から距離を取る。
 天野の助力の元、糸を振りほどいた支倉はその身を起こす。
「ありがとう……ござい……ます。蜘蛛には……速やかな死を以って……謝罪頂きます」
 ぽつり、と礼を述べ、ぎっと列車を睨み付ける。
「ヒーローは失敗に挫けることはないッ!さあ、もう一度行くぞッ!」
 運転席の天井をバンバンと叩いて川内が合図を送る。再びじわりじわりとその距離を近づける。
「俺の目からは逃げられんぜよ……腐れてろっ」
 最後尾と11両目の連結部に潜んでいた蜘蛛を目ざとく見つけた麻生が、毒の花を蜘蛛へ植えつける。
「ふふ、そこに居ると当てちゃうよー」
 麻生の射線をなぞるように来崎が銃弾を打ち込む。ピコピコとアウルの犬耳が揺れる姿は上手く射抜いた事を褒めて欲しがって居るかのように。
 銃弾を受け、生物的な、かつ耳障りな異音を発して蜘蛛はさらに糸を吐く。
「予測できれば対処はできます!あなたの思うようにはいきませんよ!」
 糸を吐く様子をしっかりと見定めていた天野は糸の射線を予測し的確に扇を振るう。華麗な舞のような動きに糸は散らされ巫女装束に触れることはなかった。
 激しい攻防により蜘蛛は牽制され、列車へ飛び移る者を補足することが出来ない。
「私は恐れることはない!なぜならそれがヒーローだからだ!」
 まだ少し距離のある列車とトラックの隙間を、川内は勢いをつけて飛び越える。激しく揺れるコンテナに半ば激突しながらもコンテナの屋根の端を掴むことに成功し、よじ登る。その姿を見て蜘蛛は前方の車両へと走り去っていく。続けて支倉、天羽もコンテナへ飛び移る。
「それじゃよろしくー。あとは任せろー」
 飛び移った3人を置いてトラックは先頭車両を目指す。荷台では来崎が3人に向かってこりと笑い手を振る。


 遠ざかっていくトラックにちらりと視線を送り、天羽は気を引き締めなおしたように前方の蜘蛛を見つめる。
「これで戻ることは出来ないっすね。一気にケリをつけましょう!」
 前方のコンテナに向かって全力疾走で走り出すが、2、3歩足を運んだところで大きく列車が揺れバランスを崩す。勢いが付いたままコンテナの上を転がり、ようやく止まったときには上半身がコンテナからはみ出していた。
「あ、危なかったっすね……これは戦う時も注意が必要っすね」
 駆け寄った川内に手を借りて起き上がり冷や汗を拭う。
 前方の車両では併走するトラックからの射撃で蜘蛛から血飛沫が上がっている。怯んだ蜘蛛は再び最後尾に向かって戻ってくる。その勢いを受け止めるかのように支倉が二人の前に立ち塞がり低い声で呟く。
「戦求めて止まぬ刃の魂達よ……存分に舞い、喰らえ!」
 前方へ向かう支倉の周囲に数本の幅広な剣が現出し、蜘蛛に一斉に突き刺さる。剣を全身に刺した蜘蛛は声にならない声を上げ、上下に激しく震えながらもその足を止めることなく突っ込んでくる。
 とっさに片手に装着した手袋から銀色のワイヤーを射出、蜘蛛の巣状に展開し勢いを受け止めようとするが、蜘蛛はその身を切られながらも支倉を吹っ飛ばす。
 支倉にのしかかり脚を振り上げる蜘蛛に向かって川内と天羽が駆け寄る。
「この距離なら回避できない!くらえっ!」
 川内は支倉と蜘蛛の間に潜り込み、眩く光るレガースで蜘蛛を蹴り上げる。蜘蛛の体が浮き上がったところを天羽は黒く染まった大剣に純白の光を纏わせ振りぬいた。
 真っ二つに切り裂かれ絶命した蜘蛛の体は列車に跳ね飛ばされながら後方へと流れるように消えていく。
「完璧だ!次もこの勢いで行くぞッ!」
 川内は拳を天羽に突き出して親指を立て、次のコンテナへと走り出す。
 天羽は支倉の様子を伺い、声をかける。
「大丈夫ですか?僕達も行きましょう」
「大丈夫……勢いは……殺したから」
 支倉もすぐに立ち上がり川内を追いかけ始める。その様子にほっとした表情で天羽も後を追う。
 列車の上を走るのも慣れてきたのか、3人とも危なげなくコンテナを渡っていく。
 7両目の蜘蛛が視界に入ったところで、川内がコンテナを飛び移った勢いのまま体重を乗せたとび蹴りを放つ。
「私の必殺技を喰らえっ!」
 頭頂部に激しい蹴りを喰らった蜘蛛は8本の足を力なく投げ出しその動きを止める。
 動きを止めた蜘蛛に支倉が飛び乗り、二刀の小太刀を蜘蛛の目玉と思しき場所へ抉るように突き立てる。
「ふふっ……どんな風に泣くのかしら……?でも……コレじゃぁ、泣けません……ねぇ」
 支倉は壮絶な笑みを浮かべて小太刀を突き立てる。飛び散る蜘蛛の体液に手を染めながらもクスクスと嗤い続ける。天羽が声をかけると支倉はようやく飛びのく。一瞬の後に支倉が居た場所へ天羽の大剣が振り下ろされる。頭部を潰された蜘蛛はそれでもなお脚を振り回し立ち上がろうともがく。その脚は天羽の体を持ち上げ、反対側へ叩きつける。
「これで決まりだーッ!」
 川内は飛び上がり、くるりと回ると、気合と共にレガースを暴れる蜘蛛の体へ打ち付ける。
 その蹴りは蜘蛛の体を貫き、ようやく蜘蛛は動きを止めた。
「どんどん行きましょう!時間が惜しいっす!」
 天羽は抉られた傷口にアウルを集中させ血止めを行うとすぐさま次の獲物へと走り始めた。


「見えましたね、先頭車両!」
 紅葉はロザリオに祈りを捧げ、途中の車両に蠢く蜘蛛へ光の刃を飛ばしながら仲間へ叫ぶ。
「俺が援護するのぜ。一気に片付けちまおうぜ」
 威嚇射撃を放ちながら、麻生が仲間へ声をかける。
 先頭車両にはコンテナよりも足がかりが多く、飛び移るのには時間はかからない。
「私が先に行こう。後方の敵は押えておくから安心して列車を止めなさい」
 天野へ黒い粒子を纏わせていたアイリスは列車に飛び移り、後方のコンテナの屋根へと飛び移る。そこにはトラックを追って迫ってきていた蜘蛛が迫ってきていた。
「私も援護しますよ」
 アイリスの横に紅葉が立ち、ロザリオを掲げる。アイリスは小さく頷くと鎌を具現化して蜘蛛へと迫る。
「塵になるまで切り刻んでやろう。遠慮はいらん存分に味わえ」
 高速で振動する黒い粒子が鎌とそれを持つ腕まで侵食するように覆う。蜘蛛の動きを観察しつつ、細かく鎌を上下させ、その動きに反応した蜘蛛の爪を交わしつつ蜘蛛の脚ごと体を切り裂く。
 攻撃を受け流そうとした脚を切断された蜘蛛は糸を吐いて反撃するが、アイリスの動きを追えず、糸は宙を舞った。
 コンテナの側面を伝ってもう一匹の蜘蛛が現れたが、激しい風に切り裂かれて動きを止める。
「これ以上、好きにはさせません!」
 紅葉は蜘蛛をにらみ、凛とした表情で言い放つ。
 アイリスに切り裂かれた蜘蛛は後方へと下がって行く。そこへ小太刀を構えた支倉が駆けつけ、二刀を揃えて振り払い、蜘蛛をひっくり返す。
「まだ、お代を……頂いてません……よ。お代は……その身で……」
 さらに駆け寄ってきた天羽と川内が倒れた蜘蛛に攻撃を加える。
「こっちは任せてください!そちらの蜘蛛は任せたっすよ!」
 天羽の声にアイリスはコンテナの側面で動きを止めていた蜘蛛へ黒く振動する鎌を振り下ろす。
 大きく背中を割かれた蜘蛛は飛び上がるようにコンテナの屋根に上がり、アイリスへ爪を振り下ろす。
 鎌に纏わせていた粒子状のアウルを腕に集中させ、黒い篭手と変えて爪を受け止める。爪による斬撃は食い止めたものの、その重い一撃を腕で受け止めた反動は大きく、骨が折れる痛みを伝える。
 アイリスは痛みにも表情を変えることなく、折れた腕に粒子を纏わせたまま、鎌を振う。さらに紅葉の放つ旋風が蜘蛛の動きを止め、好機を作り続ける。

 先頭車両へは麻生の牽制で蜘蛛が怯んだ隙に天野、来崎の順に飛び移る。来崎はアウルを集中させ、犬耳と尻尾を生やす。くすり、と笑みを浮かべて銃を構えたが、そこへ糸が飛んできて脚を床に固定される。
「もう、服が汚れちゃうじゃないかー。この恨み、晴らさでおくべきか」
 笑みを浮かべたまま二丁の拳銃で狙いを付け、次々に蜘蛛の脚を穿っていく。
 天野は雷を纏わせた扇を振るい、蜘蛛の自由を奪う。その隙に麻生も先頭車両へ飛びつき、コントロールルームへと急ぐ。
 体を痺れさせつつ、蜘蛛は天野へ爪を伸ばす。その動きを予測していた天野は扇で受け流し、かすり傷で攻撃を避ける。
「あなたの動きは全て予測しています。私に攻撃は効きませんよ!」
 受け流した流れのまま扇を振るい、天野は血煙の中で舞い踊る。
 麻生は来崎へ合図を送る。
「こうやるんだ、見てろよ?」
 麻生が構えた銃から白い弾丸が放たれる。その瞬間、両腕を螺旋状に蒼い光が奔り、背中へ黒と赤の翼が広がる。放たれた弾丸はコントロールルーム越しに暴れる蜘蛛を貫き、蜘蛛の内部で白い光を迸らせる。来崎は麻生の銃撃にタイミングを合わせて銃を撃つ。その弾丸は地獄の番犬のように空中を走りぬけ、蜘蛛の体を食いちぎる。
 二人の連撃に半身を抉られながらも蜘蛛は天野に向かって爪を振り続ける。しかし、その悉くが扇でそらされ決定的なダメージを与えることはなかった。

 後ろの車両では、支倉がワイヤーで脚を切り落とし、大剣を銃に持ち替えた天羽がその弾丸に純白の光を纏わせ蜘蛛を滅していた。もう一匹の蜘蛛は紅葉の旋風とアイリスの鎌により、全身が切り裂かれ、動きも鈍っていた。
 そろそろ止めを、とアイリスが鎌を振り上げる。

「もう残り時間も少ない。そろそろか……」
 コントロールルームに乗り込み、運転手の亡骸に上着をかけた麻生はちらりと時計を確認すると、事前に説明を受けていた手順でレバーに手をかける。
「止めるぞ!怪我しねぇように気ぃつけろよ!」
 仲間に対し大声で注意を促すとブレーキをかけて列車を止める。列車は大きく振動し、前方に向かって重力がかかる。
 
 急激にスピードを落とした列車の上では、撃退士達は飛ばされないようにコンテナにしがみつくしかなかった。
 その勢いを利用して蜘蛛は列車を飛び降り、逃げ出していく。
「こちらは喉元に牙を宛がわれたんだ。絶望による報復を覚悟しろ」
 アイリスが逃げていく蜘蛛に手を振り下ろすと、無数の彗星が落ちてきて蜘蛛を押し潰す。
 先頭車両から逃げ出した蜘蛛は紅葉の旋風に翻弄され、来崎の放った番犬に頭を食いちぎられて絶滅した。
 列車は徐々にスピードを落とし、まだ遠くに街並みを望む場所で暴走劇はその幕をおろした。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 夜闇の眷属・来崎 麻夜(jb0905)
 黒焔の牙爪・天羽 伊都(jb2199)
 V兵器探究者・天野 那智(jb6221)
重体: −
面白かった!:5人

夜闇の眷属・
麻生 遊夜(ja1838)

大学部6年5組 男 インフィルトレイター
優しき魔法使い・
紅葉 公(ja2931)

大学部4年159組 女 ダアト
夜闇の眷属・
来崎 麻夜(jb0905)

大学部2年42組 女 ナイトウォーカー
深淵を開くもの・
アイリス・レイバルド(jb1510)

大学部4年147組 女 アストラルヴァンガード
黒焔の牙爪・
天羽 伊都(jb2199)

大学部1年128組 男 ルインズブレイド
V兵器探究者・
天野 那智(jb6221)

大学部6年125組 女 アカシックレコーダー:タイプA
雷閃白鳳・
支倉 英蓮(jb7524)

高等部2年11組 女 阿修羅
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅