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マスター:望月誠司
シナリオ形態:ショート
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/08/16


みんなの思い出



オープニング

 嫌な仕事だ。
 しかし、誰かがやらなければならない――本当に? 疑問に思う事が無い訳ではない。だが、やるべきだろうと理性は言う。
「先日、護衛任務中の撃退士が護衛対象に斬りかかるという事件が発生した。殺人未遂で捕縛命令が出ている」
 撃退士を取り締まる撃退士、風紀委員の長、黒瀧辰馬は写真をボードに張りつけ言う。
「被害者はシィール=クラウン、はぐれの悪魔だ。容疑者の男は東堂昌義。親衛隊のディバインナイトだ。今は親衛隊の名簿からは除名されている。齢は十六。犯行動機については『御前が戦友を殺した事は忘れない』と語っていた事から過去にシィール=クラウンが親衛隊員の一人を殺害した事に起因していると思われる。親衛隊に所属していた東堂は、表向きは天魔を憎むそぶりは見せていなかったが、内心でははぐれ悪魔や堕天使が学園で活動している事を良しと思っていなかったようだな」
 ボードに張りつけられた写真を見る。
 一枚目の写真は十歳程度に見える黒髪おかっぱの童女だった。顔に白粉を塗り紅で星と涙を描いている。
 二枚目の写真は十代半ば程度に見える少年だった。やや長めのさらとした直毛、やや斜に構えて視線を向けて来るそれは、怜悧そうな顔立ちだった。
 黒瀧曰く、まだ若いが撃退士としては優秀で、厳しい戦況であっても多数のディアボロ、ヴァニタスを屠って来た猛者らしい。仲間達と共にデビルを討ち取った事もあるそうだ。
「かつては頼りになる仲間だったが、今となっては犯罪者だ。俺達は奴を捕え、久遠ヶ原の司法の元に裁かなくてはならない……因果なもんさ」
 苦々しそうに黒瀧は言った。
「――シィール=クラウンが、親衛隊員の一人を殺害したというのは?」
 一人の少年が問いかけた。
 事件当時の事情を知る者として、また捕縛の際の戦力として、捕縛隊に加わるように風紀委員から依頼された長谷川景守だ。
 今回の件に関しては親衛隊が「自分達の始末は自分達でつける」と言っていたが、風紀委員は様々な理由からそれを却下し、親衛隊には所属していない長谷川と一般の撃退士達にその役目は依頼されていた。
「シィール=クラウンは裏切り者として冥魔からも狙われていてな。とあるデビルに襲われた事がある」
 黒瀧は手帳を開くと言った。
「その時に、シィールの護衛についていたのが東堂昌義と殺された津川彰祐等、親衛隊の面々だ。
 そのデビルというのが、厄介な技を使う奴でね。対象を魅了して操る事が出来たらしい。そのせいで東堂が危地に陥った。
 操られた津川に東堂が斬り殺されそうになった時、シィールが咄嗟にそれを防ごうと弓を射た……だがその時、手元が狂った。
 腕を狙った筈の矢は鎧を貫通して、心臓に直撃しちまった。津川彰祐はそれが原因であの世行きだ。
 だから、シィールが殺害したという訳だ。しかし、状況が状況だったからな、罪はかなり軽減されたらしい」
 男はページを一枚めくり。
「だが、シィール=クラウンは手先が器用な奴でな、デビルとしては弱くとも人間基準じゃ弓の名手と言って良かった。
 それがよりにもよってその時に限ってファンブルするとはどういう事だ、と大いに揉めはしたらしい。
 だが、当時の状況は、シィールは気が弱い悪魔で恐怖・恐慌しており、東堂も殺されそうだと極限状態にあった。
 加えて津川自身が、最期に意識を取り戻して、護衛であったのに操られた未熟な俺が悪いのだから罪には問わないでやって欲しい、と嘆願したらしくてな。死にゆく仲間の最後の願いだ、完璧に無罪とはいかなかったが、情状酌量で罰則は軽いものになったそうだ。それでケリがついて、東堂他親衛隊員達は納得したものだと思っていたんだが、実際の所は東堂は大いに不満を燻らせていたらしいな。まぁ納得いかんというのも解るといえば解る話か。だからって刃を向けて良い訳じゃないがな。事件後シィール=クラウンは弓を封印している」
 黒瀧は言う。
「案外、シィール=クラウンがわざと殺したのではないかと東堂の奴は疑っているのかもしれない。
 東堂と津川は馬が合ったらしいが、津川とシィールは道中仲が悪かったそうだ。口喧嘩などもしばしばしていたらしい。
 口喧嘩といっても、本気で険悪なものではなかったという証言もあるが……まぁ真実は解らん。
 他人の真実の心なんか、わかりゃあしない。それがどういう事かなんてのは、人の見方によって変わる。例え津川が冗談だったとしても、シィールが本気でキレていたって事だってありえる。
 津川がどういうつもりだったのか、真実は墓の中の津川だけが知っているし、シィールがどういうつもりだったのか、真実はシィールだけが知っている、と、そういう寸法だな」
 風紀委員の長は手帳をしまい、顔をあげると。
「真実がどうあれ俺達がやる事に変わりはない。ハッキリしている事実は、津川は死に、東堂はシィールを殺そうとし、それに失敗して逃亡したという事だ。東堂は犯罪者となり、俺達はそれを捕縛しなきゃならん。
 先日、東堂の潜伏場所が判明した。これは千載一遇のチャンスかもしれん。風紀委員の長として依頼する。東堂を確保してくれ。相手は強敵だ。生かして捕縛するのが最善だが、無茶は言わん、抵抗激しくこちらが危険な場合は殺害を許可する。風紀委員からは野崎緋華が同行する。報酬も高額を用意しよう。とにかく逃がすな」


 関西。
 とある大きな港街。
「元々は別件で、AO――天界を狂信する人間組織が今日この街で動くっていう情報を掴んでいてね。それについて調べていたら東堂のネタが飛びこんで来たんだけどさ」
 火のついていない煙草を咥えた女が緋色の長髪を揺らし夜の路地裏をゆく。
「情報によるとその東堂、AOの組織員達と接触持ったらしいんだ。で、そこに来てタイムリーに東堂の潜伏場所が解ったと……場所がこの街だと来たものさ。どうにも、こうにも、囮かねぇ陽動かねぇ。まぁ、この前事件を起こしたばかりの東堂の居場所がわかっていて、無視する訳にはいかないんだけどさ……面倒な話だよ」
 緋華は嘆息してみせた。黒瀧達は現在この街で狂信組織を捜査中らしい。
 そんな事を話ながら、現在では使われていない廃倉庫が並ぶ区画へとやってくると、野崎緋華はそのうちの一つを指した。かすかにだが灯りが洩れている。
 情報が確かならば、あの倉庫の中に東堂はいる。
「もしも本当にAOと接触を持ったのなら、あの倉庫内にいるのは東堂だけじゃないかもしれない。東堂一人だけでも強敵な所へ、さらに組織員がいるとなるときつい戦いになると思う。でもまぁ、お仕事だからね、やらなきゃならないんだけど……覚悟は、良いかい?」


リプレイ本文

――今回の敵は憎むべき天魔じゃない、人間だ。本音を言えば戦いたくない、これは仲間同士の殺し合いでもあるのだから。
 君田 夢野(ja0561)はそう思う。だが、それが叶わないなら。
「覚悟は、出来ている」
 青年は野崎を見据えて言った。
(覚悟は出来る……出来る、筈だ。俺にだって、それくらい出来る……)
 胸中、己自身に言い聞かせるように男は呟く。
 野崎緋華は君田を見据え返し、切れ長の青瞳を細めた。
「解った。頼んだよ」
 君田は頷いた。
 撃退士達は倉庫に突入し東堂を確保する為の作戦を打ち合わせる。
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、ってか。……全く、やり難い依頼だぜ」
 小田切ルビィ(ja0841)が事件背景を指して言った。
「優秀な撃退士であったとしても……仲間を裏切れば犯罪者……か。他人事ではない、な」
 と水無月 神奈(ja0914)。
(……私も同じ道を辿るかもしれんのだから)
 水無月は悪魔に一族全員を殺された。復讐の念は並々ならぬものがある。
 今回の件に感じる所はそれぞれあるようだ。
「――ヴァニタスやデビルを倒すなんてやばいね、あたいより強いかも」
 東堂の経歴を評して御子柴 天花(ja7025)がしかし、何処となく楽しそうに述べた。「すっごく強い奴と戦うことっ」を目的にこの依頼を引き受けた脳筋娘である。
 まぁ流石に東堂とて単騎でヴァニタス・デビルを狩った訳ではないだろうが、
「どちらにせよ、あたい達は目標をやっつけちゃえばいいのよね?」
 雪室 チルル(ja0220)が言った。こちらも突撃が得意技な清く正しい脳筋娘である。
「ああ、要はそういう事だね」
 頷いて野崎。
「やる事はいつもと変わらないな」
 と長谷川景守。突撃がデフォルト行動の少年。今回も東堂への突撃を宣言している。こちらも脳筋といえば脳筋である。
「……景守、今の貴方は、真骨頂を発揮することが出来ていなくてよ」
 桜井・L・瑞穂(ja0027)が少年へと視線をやって言った。前衛二人はともかくというかそれが仕事だが、景守が突撃は不味いだろう、と思う。
「そうか?」
 少年は不思議そうな顔をした。
「解りませんか?」
「俺は他にやり方を知らない」
 何故この少年がアスヴァンなのだ、と同ジョブの桜井は天を仰いだ。まぁヴァンガード(前衛)という名前ではあるのだが。
「実力差考えなさいな。貴方が突っ込んでもあっという間に斬り倒されますわよ?」
「うむ。しかし、俺が斬られてる間は他は斬られないから、俺が斬り殺されてる間に他が敵を斬り殺せば俺達は勝てるんじゃないか?」
 特攻野郎全開な理論を景守は展開した。それは事実の一端ではあるのだがしかし、
「私達のヒールは何の為にございますのっ! 効率悪すぎですわっ。餅は餅屋に任せて支援を考えなさいな!」
「む、むぅ」
「まー、突っ込むのはあたい達に任せておきなってー」
 光刃剣を二、三と素振りして見せ御子柴。
「むむっ……!」
 その剣閃に景守は目を瞠る。
「どう?」
「……解った。俺は支援に徹するとしよう」
 何やら脳筋だけに通ずるものがあったらしい。不承不承だが頷いて景守。
 桜井は嘆息した。まったく手間のかかる少年である。
「――戦場に於いては、弱ければ老若男女の別なく死にます」
 不意にマキナ・ベルヴェルク(ja0067)が言った。
「敵が強いと踏むのは結構ですが、過大評価は臆病風と同じではないでしょうか。無論、過小評価してもいけませんが」
「そうだねぇ」
 野崎が頷く。
「尻ごみしてちゃ逆に危険だっていう状況はある。ただ、臆病なくらいで丁度良いっていう状況もある。全ては彼我の戦力、状態、地形、天候、その他諸々、つまり場の状況に拠る。慎重にいくべき時は慎重にいくのが有利だし、思い切っていくべき時は思い切りいけば有利。逆を行うと不利。問題は、悪魔殺しの猛者である東堂が居る倉庫に踏み込む時は、慎重にいくべきか、思い切りよくいくべきか、どっちが適切かって事だけど、実際過大評価なのか過小評価なのか、解らないからね。詳細が不明な時は、どのように当たるのが適切なのか? って話なんだろうさ。まぁ情報が少ない時にどう戦うべきかっていうのは、難しい所だね。面倒な話さ」
 緋色の風紀委員はそんな事を言った。
「東堂か……」
 水無月が呟く。
 数々の悪魔を討った東堂には尊敬の念がある。
 ただし、浅慮な行動であったと言わざるを得ないとも思った。
(あれを本気で殺すつもりなら……何度も悪魔と戦ってきた東堂ならもっとうまく出来たのでは……)
 可能性としてあるのは、あの時しか機会が無かったのか、それとも全幅の信頼を置いている生徒会長達への何らかのメッセージか。
(――それを知るのは本人のみか)
 秘められた他人の考えというのは、容易には解りはしない。
(東堂昌義……高潔な理由を語ろうと、全ては虚しい戯言にしか聞こえませんわ)
 他方、桜井はそんな事を胸中で呟いていた。
 桜井にとって親衛隊とは目指すべき高みへの道標だ。その名を汚した東堂昌義には激情を抱いている。犯罪者に堕ち名を貶めた愚か者は必ず裁かれるべきだと。
 激しい感情の波が荒れ狂っているが、しかし、今は任務中だ。完遂までは其れを心の奥底に封じ込め、常に平静を心がけて行動せんと決めている。
 撃退士達は作戦を打ち合わせると、まず目標倉庫に隣接する西、北、東、三つの倉庫を調べる事にした。
 急ぎ調査に出たのは御堂・玲獅(ja0388)、小田切、水無月である。
 倉庫の内部は暗かったが、小田切が懐中電灯を用意してきていたので、それを光源に倉庫内を探査する。
 西と東の倉庫で御堂は生命探知を使用したが反応はなかった。
 廃倉庫は既に使用されていないのか、三人が入った時にはがらんとしていた。しかし、西倉庫に布が被せられていた塊を発見する。布を剥がすと中から単車が一台でてきたので、手早く破壊しておく。あまり派手に音を立てる訳にもいかないので、駆動系の破壊のみに留める。
 調査状況をメールで一同に報告し、小田切は念の為に黒瀧へもメールを入れておいた。
 周辺倉庫の調査を終えると、次に御堂と桜井は気取られぬように注意しつつ目標倉庫へと忍び寄り生命探知を発動させた。
(一つ……二つ……倉庫内にいるのは、東堂だけではないようですね)
 胸中で呟き御堂。
 御堂は二つ、桜井は一つの生命反応を確認した。御堂はこの情報もメールで発信し仲間達と共有する。正面入り口より西端の地上に一名、東端の地上より10m付近、天井近くに一名。
(やはり……罠でもありそうですわね?)
 御堂からの情報を受けて桜井は思考を巡らせる。微妙な数なので確信は持ちにくいが、複数居る。二人。考える。これは本当に敵の総勢だろうか? 自分が感じ取ったのは一つ、だが御堂は二つだという。敵に抵抗されれば、感知は出来ない。もしも自分達よりも遥かに優れた魔法的技術を持つ者がいるのなら、生命探知で発見する事は難しいだろう。二人よりも多くいる可能性もある。
(確実に解っているのは、倉庫内に居るのが最低でも二人という事ですわね)
 野良猫が迷い込んでいて探知にひっかかった等の可能性は除外しておく。その時はその時だ。
 作戦の大枠に変更はなかった。
 撃退士達は目標倉庫へと接近すると、総勢十名で三方から倉庫を包囲する。
(中の連中にまだ気付かれてなければ良いが……)
 一連の作業にはそれなりに時間がかかっている。ばれていないだろうか――全員きちんと忍んでいたか。解らない。小田切は正面入り口の付近の壁に背をつけ待機すると、ケータイから所定の位置についた事を御堂に報せる。
 倉庫北西の位置についている御堂は、全員の準備が整った報を受け取ると、手製の閃光音響弾を取りだした。
 小田切、雪室の協力の元に、大音響防犯ブザー、着火剤、テープ、発煙筒、メタルマッチから削りだした粉、ライターオイル、から作製した即席閃光音響弾である。
 効果は、さて、如何程か。
 銀髪の少女は石を手にしている野崎を見て一つ頷くと、意を決すると頭上にある倉庫の窓を見上げ、その細い手に持つ閃光音響弾を投擲した。


 甲高く、硝子が砕ける音が鳴り響いた。
 破片の煌めきが散り舞って落ち、次の瞬間、何やら内部から声があがると同時、閃光が炸裂した。けたたましい音色の大音響防犯ブザーが鳴り始める。さらに投げ込まれる石が窓ガラスを次々に粉砕してゆく。
 倉庫の北側についていた雪室は抜き放った大剣を構え、その切っ先に極限までアウルを集中させた。それに合わせて水無月もまた構える大太刀に渾身のエネルギーを集中させてゆく。
「さあ、ぶち破るわよ!」
 雪室は勇ましい声と共に剣を突き出し、水無月も大太刀を振り下ろした。次の刹那、大剣から真白に輝く猛烈なエネルギー波が撃ち放たれ、大太刀より漆黒に輝く強烈なエネルギー波が撃ち放たれる。
 白と黒に輝き荒れ狂う二連の波動はコンクリート製の北壁に激突し紙切れの如くに爆砕し、轟音を撒き散らしながら倉庫内へと貫通してゆく。
 ぽっかりと穴が生じ、雪室はすかさず飛びこみ、素早く左右へと視線を走らせた。
 倉庫内。
 上に仄かな光源があるが内部は薄暗い。
 ブザーがけたたましく鳴り響いている。
 右手前方地上、黄金のオーラを纏い、大剣を手に板金鎧を着込んだ少年が見えた。あれが東堂か。背後にスチール製であろう梯子が見えた。
 頭上、左右の壁に沿って走っているキャットウォークの底が見える。地上より高さ4m、幅2m程度か。下から見上げる際に生ずる視線の死角が気になるが、とりあえず視界内に人影はない。
 左手上方、天井、ほのかな光が届きにくい隅の闇、何もいないように見えるが、生命探知の情報を受け取っていたので良く目を凝らす。居た。闇色の服を着込んだ忍者らしき男が天井に張り付いている。
 両名共に視線は向けて来たが動くそぶりをみせない。陽動、見切られている? 取り囲んでいる事に気付かれたか。人数は――
(二人だけ?)
 他は見えない。探知による事前情報では二名だったので、ぴったりではある。これで全部だろうか。疑いはあったが、思考を巡らせる前にとりあえず突撃する事にする。
「天井に一人いるわよ!」
 雪室はブザーに負けないように声を張り上げて叫びつつ剣を構え東堂へと向かって駆ける。水無月、御堂、野崎はその言葉を聞いたが、他メンバーは大音響のブザー音と距離的に聞き取れないか。
 他方。
 御堂は野崎が組んだ手を踏み台に跳躍すると、鎖鎌を窓へと叩きつけ枠にひっかけよじ登る。割れ残っている硝子を叩き割って窓から内部へと転がりこむ。硝子の破片が手に痛かったが怪我する程では無い。
 少女はキャットウォークの上に降り立ち、視線を走らせる。南方向10m程度先の位置、キャットウォーク上で膝立ちに身を伏せ杖を構えている壮年の女が居た。視線が合う、煙草を咥えた女がニヤリと笑ったように見えた。御堂はロープを取り出し素早く枠に結び付けて外へと垂らす。
 他方。
 正面入り口の扉の前に立つマキナは作戦開始と共に「創造≪Briah≫『九界終焉・序曲』」を発動していた。力が解放され増してゆく。
 壁に背をつけていた小田切は、タイミングを見計らって入り口の扉に手をかけると、身体ごと体重を乗せるようにしてスライドさせる。
 薄闇が広がる倉庫への入り口が開かれた。
 桜井の身体が輝いた。少女を中心に光が解き放たれ、満天の星空の如く光子が舞い、周囲の闇が消し飛ばされ、視界がクリアに確保されてゆく。
「交響撃団団長、君田夢野……これより制圧に入る!」
 君田が剣を抜き放って言った。突入に合わせマキナは「創造≪Briah≫『神天崩落・諧謔』」を発動、御子柴は闘気を開放し、小田切はケイオスドレストを発動し混沌の光を纏う。
 一同は一斉に動き出す。
 君田は仲間達と共に入り口をくぐり、突入したマキナは倉庫内部へと素早く視線を左右へと走らせ――ようとしたその瞬間、視界の左上端から赤い輝きが迫り来た。
 巨大な火球が左手上方より撃ち降ろされ、マキナは咄嗟に身を捻って腕を掲げた。飛来した巨大な火球が大爆発を巻き起こす。壮絶な熱波が荒れ狂って膨れ上がり、爆発点を中心に直径10mの範囲が爆砕されてゆく。
 入り口の扉が熱波と共にひしゃげて吹き飛び、壁が粉砕され、内部へ突入中の君田、マキナ、御子柴、小田切、景守をまとめて焼き尽くしてゆく。負傷率、君田七割六分、マキナ八割三分、御子柴八割六分、小田切五割二分、景守七割三分。桜井は後衛を務めるつもりだったのと、罠を警戒して距離をおいていたので巻き込まれていない。
 マキナは苦痛を堪え熱波を切り裂いて駆ける。とりあえず、ダアトから距離を取りたい。前方彼方に駆ける雪室とやや遅れて水無月が見えた。視界の左端に板金鎧に身を固めた黄金の光の塊が見える。大剣をふりかざし猛烈なプレッシャーを撒き散らしながら突進して来る。
(――東堂)
 この状況下において、敵は守勢に回る気はないようだ。安全は脅威を叩き潰して確保する。皆殺しにする気満々である。
 だが、加速しているマキナの方が足が速い。あれに追いつかれる事はないと判断し、北東へと向かって駆ける。
「東堂! こんな事はやめるんだ!」
「後ろッ!!」
 君田が叫び御子柴、小田切と共に、突進する東堂へと向かい、御子柴は駆けながら東堂へと向かって飛燕衝撃波を撃ち放ち、水無月がマキナへと叫んでその背後上方へと黒光の衝撃波を撃ち放った。封砲二発目。
 水無月からの声に反応し、マキナは駆けながら振り返る。その瞳に映ったのは、太刀を構えて黒光を突き破り、猛烈な速さで降下してくるニンジャだった。速い。
 天雷の如くに大太刀が走った。上方からの斬り落とし。稲妻の如き刃が少女の額に直撃し、それを叩き割った。
――痛みは、感じなかった。
 マキナは猛烈な衝撃が突き抜けたと思った瞬間、視界が真っ赤に染まり、次に真っ黒になって、何も解らなくなった。負傷率十四割一分。昏倒した。
 黒軍服姿の少女が血飛沫をあげて沈み、御子柴から唸りをあげて放たれた衝撃波が東堂へと襲いかかった。衝撃波が東堂の身に直撃して強烈な衝撃を巻き起こす。
「……っ! 仲間内で争う道理なんてッ!!」
「なら貴様等が退けぇッ!!」
 君田はミュージックセラピーを発動させて生命力を回復させつつ、自らに注意を惹くべく前進しながら説得の声を発する。負傷率五割五分まで回復。東堂は血走った目で君田へと吼え返した。気合いと殺意が激しくぶつかる。
 東堂は向かって来る君田へと目標を切り替え踏み込むと、純白に輝く大剣を振り上げ竜巻の如くに斬撃を放った。パールクラッシュ。
 君田は一撃を受け流さんと片手半剣を振るう。コンマ数秒の間の高速の攻防。二条の光が交差した次の瞬間、君田の肩から血飛沫が猛烈な勢いで噴出した。負傷率十一割五分。悪魔殺しは伊達じゃない。
 君田の見る景色が歪み、激痛に意識が遠退いてゆく。視界が回る。
「本当に、君の判断は、正しい……のかっ!!」
 だが、君田は倒れなかった。気力を振り絞って意識を繋ぎとめ、床を鮮血に染めつつ踏みとどまる。
 その間に小田切が素早く東堂の側面に入っている。風に蝶が舞うような軽快で弦妙なステップ。東堂の攻撃直後の隙を狙って太刀構え、鎧の隙間、脇下を狙って刺突を繰り出す。アウルにより加速した踏み込みから放たれる神速の突き。目にも止まらぬ速度のその一撃に対し東堂は即応し身を捻りつつ深く沈めた。太刀の切っ先が肩部の装甲の厚い部分に中って弾かれ鎧の表面に火花を巻き起こしながら流れてゆく。衝撃は通っているだろうが、痛打には程遠い。守りが固い。
 駆ける雪室、火球が撃ち放たれたのは目撃している。キャットウォーク上にダアトがいると判断し、梯子へと駆ける。
 桜井、守護聖衣を付与してまわる余裕はないと見て、霊光花園の術式にかかる。優先的に回復させるべきなのは誰か、まずは前線の崩壊を防ぐのが肝要、君田を目標にアウルの力を解き放つ。
 光で構成される花弁が吹雪となって舞い、君田を包みこんでその傷を急速に癒してゆく。君田の鼻腔を芳ばしい花の香りがくすぐった。負傷率六割。
 景守は同じくマキナへとヒールを放って回復させている。負傷率九割四分。
 駆ける水無月、意識を失っているマキナへトドメを刺さんと太刀を振り上げているニンジャへと向かって踏み込む。
 先の身のこなしを見れば解った。
 水無月は大太刀を握り胸中で呟く。
(私程度が手加減をして勝てる相手ではない――)
 故に、殺す気で行く。踏み込む方向はニンジャの左手側、水無月の右手側、ニンジャの左額から頬にかけて走る傷と左目が閉ざされている事から、隻眼と判断した。その死角を突く。
 水無月VS隻眼忍者、一対一。
 ニンジャの左側に一気に深く低く踏み込んだ水無月は、大振りはせずにコンパクトに斬り上げの斬撃を繰り出した。ニンジャはトドメを刺す事を諦め後方に大きく跳んだ。大太刀が空を斬る。
「イィィィヤッハーッ!」
 着地すると、ニンジャは陽気な笑い声をあげ獰猛な笑みを浮かべた、と同時、男の姿が掻き消えた。そう思える程の雷の如き速度、一刹那で水無月の眼前に出現する。
 咽返る程の死の気配が、水無月の喉元に向かって伸びて来る。首狩りの必殺の一撃。
 少女は咄嗟に刀を傾斜させて掲げた。大太刀と大太刀が激突し、ぎゃりぎゃりと鈍い音を立てて火花を散らしながら流れ、耳を掠めて逸れてゆく。
 マキナが気絶から回復して立ち上がり、ニンジャは素早く後退してゆく。
 状況を把握したマキナは景守からさらにヒールを受けて回復しつつニンジャを疾風の如くに追う。
「――逃がしませんよ。この程度の距離なら私の間合いです」
 猛追するマキナが拳を繰り出すと同時、ニンジャの周囲の空間から黒焔の鎖が次々に現れ襲いかかった。
 封神の縛鎖に対し、しかしニンジャは大太刀に光を集め竜巻の如くに周囲へと一閃させた。刃に鎖が断たれ焔が吹き散らされてゆく。抵抗された。敵は強い。
 が、間一髪といった所にも見えた。「封神縛鎖」は優れた技だ、このニンジャの剣技と争うなら、確率は四対六、そんな所か。確率は低いが、狙えない範囲でもない。
 他方。
 東堂は突きかかって来た小田切へと白輝の大剣を振り上げ、小田切は上段からの斬り下げと判断し素早くカイトシールドを構える。その瞬間、東堂は身を捻り様、手首を返して大剣を操り強引に薙ぎに切り替えてきた。刃の軌道が変化し、掲げた盾がかわされ、混沌の光を突き破って刃が小田切の脇腹に直撃する。強烈な斬撃。負傷率八割三分。倒れない。小田切ルビィ、頑強だ。
 君田は再度ミュージックセラピーを発動させて自らを回復させながら説得を続ける。
「目を、醒ますんだ! 君のエゴで悲しむ人もいる!」
「ハッ! 御前は自分が誰も悲しませていないと信じているのかっ?!」
 東堂は一歩後退して小田切から間合いを取りつつ叫ぶ。
「僕は――」
「東堂!」
 言葉の途中、遮るように少女の声が響いた。刃のない柄だけの剣を握り締め、御子柴天花が猛然と突っ込んで来ている。
「ぬっ?!」
 東堂は突撃して来た少女へと視線を走らせ構えを変化させる。御子柴は一気に剣の間合いに踏み込むと手に持つ柄を振るった。瞬間、柄から燃え盛る焔のような緋色の光刃が出現し東堂へと襲いかかる。
「てやぁ!」
 少し気の抜けたような掛け声とは裏腹に緋の剣閃はまさに閃光の如く、壮絶な鋭さで少年の大剣を掻い潜り胴へと斬撃を直撃せしめた。東堂の表情が驚愕に歪み、強烈な衝撃に少年の意識が遠退いてゆく。スタン、通った。悪魔殺しを真っ向からぶちやぶる。ありえん。剣技に特に秀でるという経歴は伊達ではないらしい。
 しかし、東堂は敏腕だ。抵抗力も高い。すぐに意識を取り戻す可能性は高かった。スタンだけでは痛打は与えられない。
 だが、一対一で戦っている訳でもなかった。
 東堂の意識は空白化している。絶好の好機。小田切は即断し猛然と鬼切を振りかぶると、全霊を切っ先に込めて振り抜いた。神速に加速された大太刀は唸りをあげて東堂の右の膝裏に直撃し、その装甲の隙間を縫って喰い込む。クリーンヒット。骨を粉砕する確かな手応えが腕に伝わった。
 桜井は戦況を把握し、敵の手を読まんとする。恐らく、解りやすいだろう。次に狙われるであろう御子柴へと霊光花園を放つ。再び光花が咲き乱れて少女を包みこみ、その傷を癒し、生命力を回復させてゆく。
 他方。
 キャットウォーク上、ターバンを巻いた咥え煙草の女ダアトは立ち上がると杖を御堂へと向けた。御堂は盾を構え全力で防御を固めている。
 レーヴァテインから立ち上る強大なアウルが逆巻き、魔の竜巻となって御堂へと迫る。銀髪の少女はアウルを集中させて構えた盾を中心に、祝福が込められた防壁を展開した。次の瞬間、防壁ごと逆巻く風が御堂を呑み込み、その荒れ狂う破壊力を解き放った。
 猛烈な魔の風に飲まれ、轟音と共に風と防壁が鬩ぎ合う。御堂の全身が悲鳴を上げ、意識が遠退き朦朧としてゆく。だが、祝福の盾はしっかりと効果を現していた。被害は直撃時とは比べ物にならない程に軽減されている。負傷率七分。固いなブレスシールド。
「待たせたね」
 声が響く。窓から野崎が飛びこんで来た。
「ダアトを」
 朦朧としながらも御堂は指差し呟く。
「了解」
 緋色の髪の女は狙撃銃を構えダアトへと向かって発砲。鋭く飛んだライフル弾が壮年の女の身に直撃して血飛沫を噴出させた。しかしダアトは口から血を吐きつつも踏みとどまる。倒れない。だが、攻撃手は野崎だけではなかった。
 キャットウォークの奥、南端、梯子から青い髪の少女が現れる。雪室だ。キャットウォーク上に登った雪室は、女ダアトの背後へと猛然と突進しフランベルジェで斬りかかった。やられる前にやる。
 接近に気付いたか、ダアトは咄嗟に肩越しに振り返ったが、俄然雪室の突撃の方が速かった。思い切りの良さがものを言う。一気に間合いを詰めて袈裟に振るわれた刃を、壮年の女ダアトは避けきれなかった。背をバッサリと叩き斬られ鮮血が吹き上げる。女の身が大きくよろめき、そして糸が切れたように倒れた。物理攻撃されると流石に脆い。
 他方。
 ニンジャは素早く先手を取り、大太刀を一閃させてマキナへと斬りつけた。刃が少女の身を斬り裂いて負傷率七割五分。一撃は軽い。しかし、深刻なのはダメージではなかった。靄が勢い良く噴出し、マキナの身を包みこんでゆく。認識障害を引き起こす靄。目が、良く見えなくなる。
「くっ!」
 視界が阻害される中、マキナは封神縛鎖を再度放つが今度はあっさりかわされる。
 水無月はマキナと挟むよう回り込むように駆け、ニンジャの左側面からコンパクトに鋭く突きを放つ。ニンジャを身を捻り上体を逸らすも、命中を重視しニンジャの視界の死角より放たれた突きが、忍び装束に身を包んだ男の脇腹を掠め抉り斬って抜けてゆく。宙に紅い色が舞った。
 他方。
 東堂はすぐに意識を取り戻したが、既にその片膝は折れていた。
 朦朧状態から回復した御堂は召炎霊符を出現させるとキャットウォーク上から東堂へと狙いをつけアウルを解き放った。翳された護符から燃え盛る炎の玉が飛び出し、東堂の背に炸裂し焼き焦がす。
 野崎はニンジャへと狙いをつけて撃ち抜き、弾丸の衝撃にニンジャがよろめいた所へ水無月が大太刀を叩き込んだ。
「――逃がさないと言いました」
 マキナは拳を振り上げて踏み込む。連撃によろめくニンジャの胴へと右腕を叩きつけ、再度アウルを開放した。黒焔の鎖が、周囲の空間から現れ出で、ニンジャの身へと次々に絡みついてゆく。
 捕えた。
 雪室はキャットウォークから飛び降り東堂へと向かう。
「ぐ、ぉおおおおおおおおッ!!」
 片膝をつきながらも東堂は吼え、踏み込んで来た御子柴へと大剣を振るう。天属性の刃が阿修羅の少女の身に炸裂するが、しかし桜井から回復術を受けていたので負傷率九割一分、倒れない。逆に御子柴から振るわれた光刃剣が東堂の身に炸裂しその意識を再び刈り取る。
 東堂は優れた戦士だったが、意識がないのに防御出来る訳も無く、小田切の剣が易々と鎧の隙間を縫って剣を突き込まれ、君田のアンセムノーツが炸裂し、駆けつけた雪室の大剣が東堂を殴り倒す。無防備な所へ痛打の嵐を受けて東堂の身が地に転がった。
 マキナの鎖に動きを止められたニンジャはアウルを集中させて戒めを破らんとしたが、次の瞬間、水無月の大太刀が水平に一閃され、完全に戒めを破る前に身動きの取れぬままその首を刎ね飛ばされた。鮮血が噴出し、宙に舞った首から瞳の光が消える。絶命した。
 再度意識を取り戻した東堂は、地を這いながらリジェネーションを発動させて肉体を再生させ、負傷を癒し再度剣を取り立ち上がらんともがく。
 しかし、
「ねぇ、もうあんた、勝負はついてるわ。おとなしく諦めなさい」
 雪室が言った。
 さすがにこの状況から勝敗が覆る事はない。
 スタンから足を潰され袋叩きにされ、ズタボロになった東堂は追い詰められ、さらにニンジャを倒した水無月とマキナがやってきて包囲に加わる。桜井と御堂と景守の回復術は次々に学園側の撃退士達を癒していった。
 東堂にはもう成す術はないと、客観的にも明らかなように思えた。
「冗談ではない……ッ!」
 だが、少年は血を吐きながら呻き、君田を血走った目で睨みつけ血反吐を吐くように言った。
「そこの御前、答えてやる……! 総てを丸く納める方法などありはしないと僕は知った。僕等自身がその証左だ! 学園の総てが僕等の心を踏みつけそれで正義を謳うなら! 僕は学園の総てを滅ぼしてやるッ!! だから誰が泣こうが喚こうが、既に僕の知った事ではないッ!!!!」
 駄目だ、と君田は思った。
 この男は説得には応じない。
 そして、放っておけば必ず巨大な災いを学園にもたらす、そんな予感がした。
 君田は息を吐くと、片手半剣を構えた。
「解った……もう、いい、俺はお前を、斬る……!」
「ハッ、来いよヒーロー!! その喉笛圧し折ってやる!」 
 足を再生させた東堂は、剣を地に突き立てよろめきながら立ち上がる。
「御前は何時まで謳い続けられるかな!」
 君田は片手半剣を手に一歩踏み込み――東堂はその場に崩れ落ちるように倒れた。東堂の背後に太刀を手にした小田切が立っていた。
「加減はしてある……峰打ちだ。捕縛が最善……そうだったろ?」
 小田切は大太刀の峰を東堂の延髄に叩き込んで気絶させたらしい。
 君田は片手半剣を降ろした。
 息を吐く。
 勝敗は、決したのだ。


 東堂の手には桜井が持ち込んだ手錠が嵌められていた。
「後の戯言は裁きの場で存分に吠えて下さいな」
 桜井はやがて意識を取り戻した東堂へとそう述べた。
 武装解除されヒヒイロカネを外されれば、丸腰だ。それでも東堂は暴れたが、再び気絶させられた。
「Alber(愚者)――ダチ公の最期の言葉を、ちゃんと聞いてやれ。……お前だって本当は分ってるんだろ……?」
 再び気絶させる前に言った小田切の言葉が、東堂に届いていたかどうかは、解らない。
(護りたいモノを……俺は、傷つけた。傷つけざるを得なかったんだ……!)
 君田は「夢」など存在しない、撃退士同士の殺し合いという「現実」に幾許かの、失望を覚えていた。俯き、拳を握りしめる。
 小田切は言った。
 東堂も頭では友の言葉を理解している筈だ、と。
(…だが。哀しみは怒りに、怒りは憎しみに容易く変化し、人を簡単に闇へ誘う。闇に身を委ねる方が、哀しみを受け入れるよりも楽だから)
 闇への扉は何時でも何処でも開いている。その気になれば、誰でも潜る事は可能だ。その先に何が待ち受けているかは、東堂が一つの例だろう。
 水無月は空を見上げた。
 東雲は黄金色に染まり、夜明けの太陽は眩く光を放っている。
 光の時間が来る。
 学園に、帰ろう、と誰かが言った。
「しっかし、あんた達、凄いね。あれだけの腕前の連中を三人同時に相手して、あそこまで圧勝出来るとは思ってなかったよ」
 帰路の途中、野崎緋華が新しく煙草を咥えながらそんな事を言った。
「ま……任務は成功さ。有難うね。きっと、傷つかなくても良い誰かが傷つく事になる未来は、防がれた筈さ……」



 かくて、撃退士達の活躍により、東堂と組織員の一人が捕縛され、一人が討たれた。
 東堂と組織員は久遠ヶ原に護送され、その法で裁かれる事となる。
 東堂がはぐれ悪魔の命を狙った事から始まった一連の事件は、ここに一応の終結を見せたのだった。



 了


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 伝説の撃退士・雪室 チルル(ja0220)
 サンドイッチ神・御堂・玲獅(ja0388)
 戦場ジャーナリスト・小田切ルビィ(ja0841)
重体: −
面白かった!:9人

ラッキースケベの現人神・
桜井・L・瑞穂(ja0027)

卒業 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

卒業 女 阿修羅
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
サンドイッチ神・
御堂・玲獅(ja0388)

卒業 女 アストラルヴァンガード
Blue Sphere Ballad・
君田 夢野(ja0561)

卒業 男 ルインズブレイド
戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
郷の守り人・
水無月 神奈(ja0914)

大学部6年4組 女 ルインズブレイド
光の刃・
御子柴 天花(ja7025)

大学部3年220組 女 阿修羅