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マスター:望月誠司
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
形態:
参加人数:9人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2016/01/29


みんなの思い出



オープニング

「依頼です」

 二〇一六年の冬。
 深夜の斡旋所に緊急の依頼が三つ、ほぼ同時に飛び込んできた。
 内容はいずれも天魔を撃退してくれ、というものである。
 しかし、この時、深夜であった事もあり、様々な理由から折り悪く、斡旋所内には十人の撃退士しかいなかった。
 人数を増やす事も検討されたが徒労に終わる可能性や一つ一つの報酬は低額であった事もあり、報酬分配などの問題からこの十人で片をつけようという運びとなった。

 撃退士の移動に使われるディメンションサークルは基本的に片道切符である。
 サークルで繋げられる空間は、起動者たるスフィアリンカーの技量にもよるが、平均、目標に定めた地点より半径5km〜半径10km程度の誤差がでる。
 また、二分程度で空間を繋げ跨ぐ光の輪は消えてしまう。
 ならびに、空間を繋げるには、ある程度の時間はどうしてもかかってしまう。
 その為、基本的に片道切符なのだ。ワープした後の帰りは交通機関で帰る事になる。

 つまり――この、サークルの性質上、十人揃って固まって行動し一つ一つ順番に討伐してゆく、という事は不可能ということであった。何日もかけていてはその間に暴れまわる天魔によって市町村にもたらされる被害は甚大なものになってしまうだろう。

 故に、三箇所をそれぞれ手分けして担当し、並行して迅速に鎮圧にあたらねばならなかった。

 以下、それぞれの依頼人からの通信記録である。

●A市からの通信記録
(バリバリバリと雷鳴のようにコンクリートか何か固く重いものが砕け崩れ落ちる音)

 た、助けてください。影が、巨大な影が街で暴れていて。
 ああっ!
 なんて事だ、撃退署のひとが、今、打たれて。

 ああ。

 あれは、

 あれは、

 まるで、ギリシャ神話のサイクロプッ――

(人々の絶叫、何かが唸る音、砕ける音、あとは「プツッ、ツー、ツー、ツー」という電子音が聞こえるのみである)

●B村からの通信記録
(依頼人の声は平坦だった)

 食べられてしまいました。

 ええ、私の子供達は食べられてしまいました。

 今、奴等はうちの牛を貪り喰っています。

 小学生の低学年くらいの身の丈の、人間のようなシルエットですが、醜悪な生き物です。

 手には鉄パイプやバット、柳刃包丁を持っています。

 数は、私が確認した所では五、六匹、もしかしたら、もっといるかもしれません。

 どうか退治してください。

●C町からの通信記録
(若い男の声だった。うなり、おしよせ、くだける、波の音が響いていた)

 こちらX県撃退署のC町駐在の撃退士・内藤貴志という者です。
 今、天魔を監視しています。
 はい、町外れにある海岸の浜辺に、天魔らしき異形の亜人が一体立って、町のほうをじっと見ているのです。
 身動きせずじっとして、こちらを眺めているのです。
 上半身は美しい人間の女の身体で、下半身は魚です。手に三叉の鋭い穂先を持つ槍を持っています。
 町を監視としているようにも見えますが、ただぼーっと立っているだけのようにも見えます。
 私は町の安全を預かる者として、今のうちに至急、この天魔を退治すべきだと主張しているのですが、相棒は「まだ何も悪さしてないのに殺すなんて可哀想よ」と言って反対するのです。
 そりゃまあそう言うならそうなのかもしれませんが、被害が出てからでは遅いのです。
 応援を署のほうに要請しましたが、他の箇所で事件がおこってアウル持ちは皆出払ってしまっているようで、戦える者が私しかいません。
 万一、私が戦って敗れてしまったら、この町がどんな目に合うのか。
 学園に至急応援を要請します。報酬は定額お支払いいたしますので、どうか。

 可能な限り急いでください。

 今、ふと思いました。

 もしかして、こちらが応援を待っているように、あの天魔も応援が到着するのを待っているのではないかと――


 録音された通信を聞き終えると、報酬の分配が云々言っていた撃退士の一人が突然、腹痛を訴えて離脱した。夕食に悪い物を食べたらしい。

 時間が無い。

 かくてその場にいた撃退士達は、九人で解決にあたる事となったのだった。


リプレイ本文

 闇。
 月。
 野良犬が遠くで吠えている。
 閑散とした斡旋所内。
 職員の前に九つの影があった。
「事件が同時多発ですかー……」
 珍しく憂いを帯びた表情で櫟 諏訪(ja1215)が呟く。
「よりにもよってこんな時間に三件同時なんて……」
 ナナシ(jb3008)もまた大粒の赤瞳を曇らせている。
「この前からの争いが活発化してる影響でも出てるのかしら?」
「うーん、何か大きな動きの前触れなのかもしれませんねー。わかりませんがー……」
 諏訪が頷き――そして、深刻な空気が広がり始めたのに気付いたか、
「まぁ……でも、この三件だけなら、このメンバーなら、人手は十分そうですねー?」
 緑髪の青年は場を和ませるようにニッと笑う。
「そうね」
 とナナシも諏訪に微笑して頷く。
(――いやいやいや、このメンバーってボクも入ってるアルか?!)
 桃々(jb8781)、歴戦達の会話に対し胸中で叫ぶ。戦々恐々である。
 実は、実戦はまだほんの数回しかこなしていない彼女が探していたのは程よくへたれていて優しそうな依頼であって、このような修羅場戦闘依頼群では断じてないのである。
 明確にアウトオブ眼中だったのに、その場に十人しかいなかったために拒否することも出来ず、なし崩し的に参戦する羽目になっていた。桃々、涙目。
「桃々さん、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫ですとのことよ」
 見た目十一歳程度のおかっぱ少女は、ほほほと漫画で覚えたお嬢様口調で年長者のおじさん――狩野 峰雪(ja0345)に返す。
 既に一人減ってるしこの状況で今更戦えませんとか言えない。
 こわいー、こわいけれどなけなしの勇気を桃々は掘り起こそうと葛藤する。
 そんな様子の少女にナナシはちょっと小首を傾げてから、職員へと目を向けると、
「大丈夫だと思うけど、一応、万が一のために他に出られそうな人がいないかは探し続けて貰えるかしら? 三ヶ所の何処かで失敗して緊急の応援要請があったら向かわせてあげて欲しいの」
「了解です」
 かくて、九人の撃退士達はそれぞれ担当を分担すると転移装置へ向かい、光の輪をくぐって、各地域へと空間跳躍したのだった。


 冬の地方都市。
 月明かりが住宅街の家々を淡く照らし、蒼白い陰として浮かび上がらせている。
 区画が整理され整然としていた街並は、いまや大きく表情を変えていた。
 月光を浴びて影を巨大に伸ばす、10mにも及ぶ蒼白い体躯の巨人が暴れまわっていたのだ。
 瞳は単眼、右手に金属製の巨大な棒を持ち、左手には直径5mにも及ばんとする巨大な円盾を持っている。
 鉄棍が振るわれる度に家々が破砕され、マンションですら発砲スチロールの如くに薙ぎ倒される。通りは無惨な様と成り果てていた。壁が砕けて落ち、アスファルトに激突して土煙を噴き上げる。
 通報によれば撃退署の署員達が鎮圧にあたっていた筈だったが、諏訪、ナナシ、そして天羽 伊都(jb2199)の三人が現場に駆けつけた時には、既に皆、叩き潰されてしまったのか、それとも逃げ出してしまったのか、周囲に抗戦する撃退士の姿はなく、巨人は野放しで暴れまわっている状態であった。
(あれか……以前海賊と戦った時に似たようなヤツが居たな)
 全速で駆けながら伊都は、ナイトヴィジョンに暴れまわる巨人の姿を捉えると、かつての戦いを思い出していた。
 海賊達はそのほとんどが捕縛されるか討ち取られるかした筈だが、ブランカート・ハーツ、あいつだけは逃げ延びていた筈だ。今もどこかで暗躍しているのだろうか。西園寺らによって人知れず討ち取られている可能性もあったが。
(南さんと約束した手前、無事に帰りたいところだけど……)
 少年は懐にある願い石の事を思った。
 が、
(一人でも欠けると不味い……)
 暴れまわっているこの巨人には超強力な再生能力があるという。こちらの総火力が、それをどうやっても超えられなくなったら、その時点で詰む。
(やっぱり俺が前にでるべきだ)
 伊都はそう判断した。南はやるべきことやって全部叩き伏せてその上で胸張って無事でいろ、と平然と無茶振りする女だから――無茶を通してその上で無事を求めるから願うんやろ、とか言う女だから――文句は言うまい。
(俺が無理を通す)
 伊都はそう決意する。
 かくて、駆ける三人は手筈を打ち合わせると、それぞれの方向へと散る。
 ナナシは遁甲の術を発動して住宅街の小道へと飛び込み、伊都は銀色のコインを翳すとアウルを込め、魔具魔装を解き放った。その身を武者装束が包み込み、手に白色に輝く刀身が出現する。黒い光が甲冑と刀に纏わりついて漆黒に染めあげてゆく。
「――今夜もフルタイム営業中、今年も全開!」
 少年は背から翼を展開して矢の如くに飛翔し、
「黒獅子の活躍、その目に刻んで逝くと良い!」
 刀を構え見得を切りながら巨人の顔面めがけて突っ込んでゆく。
 他方、夜目を発動し闇を見通して駆ける櫟諏訪は、周囲を見回し、逃げ遅れている一般人が居ない事を確認――警察や記者関係らしき人の姿が見えたので下がるようにと声を張り上げておく――しつつ、その手にスナイパーライフルを出現させ、構えていた。
 射程に入ると足を止め、銃底を肩につけ、左手で銃身を支えながら右手で銃把を握り、銃口を巨人へと回す。滑らかな動作でスコープを覗き込み、レティクルを単眼輝き猛々しく口を開いて咆吼をあげている巨人の顔面へと合せる。トリガーを絞る。発砲。
 銃声と共にライフル弾が飛び出し、唸りをあげて巨人に迫る。
 刹那、月光を受けて鈍く輝く鋼鉄の壁が出現した。
 盾だ。
 弾丸は盾の表面に激突すると爆ぜ、光をばらまいた。光が盾に付着すると見る見ると煙が噴きあがってその表面を溶かしてゆく。アシッドショット。
 巨人は盾を降ろすと牙を剥き、月に向かって耳をつんざく咆吼を轟かせた。大地を揺らし、アスファルトを爆砕し、諏訪目掛けて猛然と突っ込んで来る。
 速い。
 手足を振る速さ自体は人間のアスリートより若干速い程度なのだが、10mの巨体である。一歩の長さは数倍だ。凄まじい爆速。猛然と駆け迫る巨人の迫力には心胆を寒からしめるものがあった。
 三十メートル以上を一気に詰めてきた高速で駆ける巨人は、単眼で諏訪を睨み、その瞳孔に緑色の光を収束させた。刹那、真っ直ぐに光が解き放たれる。
 怪光線。
 怪音を響かせながら緑色光が一直線に伸び、諏訪へと迫る。
「きましたねー」
 目線の向きを観察し、備えていた櫟諏訪は、ひょいと軽やかに横に飛び退いて回避した。
 アスファルトが抉れ、幅は拳大程度だが深い深い穴があく。
 貫通力は凶悪なものを持っているようだ。
「行かせるか!」
 伊都は交差するタイミングで巨人の側面に迫ると、漆黒の天之尾羽張を振り下ろした。黒い閃光が半月を描いて巨人の頬に炸裂し、ごっそりと壮絶に斬り裂きながら抜けてゆく。ただでさえとんでもない一撃が、眷属殲滅掌でより鋭さが増されている。
 巨人は目も眩むような凄まじい痛みを感じたのか、足を止め急停止した。アスファルトが爆砕されて、巨体が止まり、巨人は大きく身を後ろにスウェーさせると、蜂でも払うかのように巨大な鉄棍をワイパーのように伊都へと振るった。
「よっしゃ〜、歯食いしば――」
 伊都は『肉を切らせて《クロスカウンター》』、を発動し鉄棍を受け止め――そして、そのまま猛烈な勢いでぶっ飛んでいった。少年の身が砲弾の如くに夜空を舞ってゆく。反撃の天之尾羽張は、ちょっと、届かない。
 シュウシュウと煙を噴き上げながら巨人の頬が再生されてゆく。
「目が光ったら即座に怪光線とんできますよー!」
 諏訪は声を張り上げて周囲へと報告しつつ、鉄棍握る巨人の右手指へ狙いをつけ発砲。アシッドショットが中指に炸裂する。血飛沫があがり、アウルが侵食を開始する。
 ナナシはてててっと建物の陰を素早く抜け巨人の背後に密かに回りこむと、背から悪魔の翼を出現させて跳躍、月光を浴びながら空へと飛翔した。
「やったな!」
 戻ってきた黒い閃光――天羽伊都、負傷率二割六分、人外魔境の装甲、マンションより頑丈だ!――が巨人の顔面に再度向かい、翳された盾を回り込んでかわし、こめかみへと斬撃を叩き込んだ。またも泥のようにごっそりと斬り裂いて、深々と骨肉を削り取ってゆく。
 しかし巨人は見る見るうちに肉体を再生させ、再びスウェーすると後退しながら今度は目を光らせ怪光線を放った。諏訪の声を聞いていた伊都は、目が光った瞬間に護符を出現させて翳し、激突、光が護符にあたり砕けて散ってゆく。
 ビクともしない。
 黒い魔鋼の鉄の塊である。
「ぐっ――! そろっそろっ、パッカーンするっすかねっ?」
 が、重いことは重いらしく歯を喰いしばっている。その間に諏訪は路上を駆けて前進。

 やがて、輝く月を一つの影が遮った。

 遁甲の術で気配を薄め、悪魔の翼を広げて夜空に舞った紫髪の童女は、巨人を見下ろし、その手に巨大なピコピコハンマーを持ち肩に担ぐと、疾風と化して巨人の頭上より急降下を開始した。
 落雷の如くに迫ったナナシはピコピコハンマーを振り上げると、降下の勢いを乗せ、渾身の力を籠めて振り下ろした。
 ポキュ☆ という気の抜けた可愛らしい音と共に魔の力が開放され、触れた物全てを粉砕し消滅させるというその力が轟音と共に巨人へと襲い掛かってゆく。潜行からの不意打ちバックアタック頭部狙い、役満だ。
 刹那。
 噴火でも起こったかの如く爆音と共に赫いものが飛び散った。大爆砕。
 返り血に染まりながら、鬼神の如き一撃を叩きつけた童女は崩れ落ちてゆく巨人を見下ろし、言った。
「この街の人達の安らかな夜を守るためにも余り時間をかけていられないのよ。悪いけどこれで終わらせてもらうわ」
 崩れ落ちてゆく巨人へと諏訪はライフルを向けピアスジャベリンを発動し、そのレティクルを頭部に合わせて発射。貫通力が増されたライフル弾が巨人の眉間を貫き、その奥の脳をも貫きながら抜けてゆく。
 唸りをあげて黒い閃光が迫った。
「お前さんが脳無しで良かったよ、これで言葉通りになって俺もすっきりってもんさ!」
 巨人が両膝をつく、身が傾く、天羽伊都は急降下して追いつくと、陥没して消し飛び中身が剥き出しになっている頭頂部と迫り、漆黒の天之尾羽張を一閃した。
 即座に離脱する。
 返り血が吹き上がり、中身が真っ二つに断たれた。
 轟音と土煙をあげながら巨人の身が路上に叩きつけられ、そして、転がった。
 一同が見守る中、それは、再び再生することはなく、うつ伏せに倒れたまま、二度と動かなかったのだった。


 塗り込められた闇の中で、白色の月が皓々と輝いている。
 巫 聖羅(ja3916)、クリスティーナ アップルトン(ja9941)、後藤知也(jb6379)の三人はB村へと駆けつけていた。
「ここからがB村ね」
 年の頃は十七、八に見えるだろうか、暗視ゴーグルで目元を覆っている茶髪の少女が呟いた。手元で輝きを放っている機器は文明の利器、スマートフォンである。艶やかなディスプレイには地図が映しだされている。
 巫聖羅はその細い背より翼を広げると夜空に向かって飛翔した。冷たい夜風に赤いリボンで二つに結われた長い髪を靡かせながら周囲を見渡す。高所からは良く見える。
 見るからに――暗視装置越しだが――牧場らしき草原が数キロに渡って広がっているのが確認できた。
 聖羅は斡旋所にてしっかりと確認としていたので依頼人の住所は、アプリもあって良くわかる。松明の色の瞳の少女は闇の中、先頭を飛んで先導した。
「ここがB村ですのね――『久遠ヶ原の毒りんご姉妹』華麗に参上!ですわ」
 と全速で駆けながらいつもの台詞を言うのは、同じく暗視ゴーグルで目元を覆っているブロンドの娘、クリスティーナ・アップルトンだ。
 撃退士達が依頼人宅を目指し村内を駆けてゆくと、遠く黒夜の彼方から身の毛もよだつ絶叫が、風に乗って微かに響いてきた。耳を傾けるに人の声ではなかったが、家畜やペットなどの動物が犠牲になっているようだ。
「……むごいわね」
 断末魔の叫びに聖羅は唇を噛み締める。
 そして、阻霊符を展開した後は無言で駆け続けている男の姿を空よりちらりとみやって、その心情を慮った。
 男――後藤知也は、
(子供が犠牲になったか。……もっと、なんとかならなかったのか)
 依頼人からの通信記録を聞いて心を痛めていた。
 彼も妻との間に一子をもうけていた。故に思う。殺された子供達や、その親達の無念はいかほどだろう、と。
 暗視ゴーグルを装着した男は左右に視線を走らせ、奇襲を警戒しながら駆けている。
 B村内は牧場が多く、家々はまばらに僅かに点在するのみである。動物達の悲鳴は時折聞こえてきていたが、村人達とは遭遇しなかった。
 既に避難しているのだろうか?
 飛行が切れた聖羅が地上に降り、やがて撃退士達は一軒家である依頼人の邸宅へと辿り着いた。
 クリスは周辺の偵察へと向かい、知也と聖羅は玄関へと向かう。
 戸に手をかけて横に引けば、がらりと開いた。
「久遠ヶ原の撃退士です!」
「どなたかいらっしゃいませんか!」
 知也と聖羅は声を張り上げて家の奥へと呼びかけながら侵入する。
 すると、
「ああ、来てくださったんですね。有難うございます」
 奥から作業着に身を包んだ三十代程の、蒼白い顔をした虚ろな瞳の婦人が一人、姿を現した。
 やはり口調は記録と同様、平坦に淡々としていた。
 まだ避難していなかったのかと二人が問うと、
「うちの子供達を置いていけませんもの」
 婦人は生気の抜けた表情の無い顔で答えた。
 子供は既に喰われている筈である。

――はたして正気を保てているのか。

 知也と聖羅の脳裏をそんな言葉がかすめる。
「時間がないので、手短に状況を教えてください」
 知也は以下三点を問いかけた。

1.馬を所有する村人達の住所
2.子供が喰われた時の状況
3.依頼主の馬小屋にまだ敵はいるのか

 である。
 1については少々思い出すのに時間はかかりつつも、人口が少ない村なのでおよその所は聞き出せた。
 2については「牧場でやつらがうちの子供達を食べてしまいました。石を投げて撃ち殺して、光る棒で滅多打ちにして、捌いて」と虚ろな双眸で述べた。
 3については解らない、との事だった。
 が、そんな事を話していると、

『敵影、発見ですの!』

 索敵に出ていたクリスティーナからの報が聖羅のスマホに入る。
 睨んだ通り、例の馬喰鬼達は手近な牛を喰らい尽くした後は、馬小屋へと向かい馬達を惨殺した後、その骸を喰らっているようだった。
「馬小屋ってここから500m以内の場所にあるかしら?」
「……ええ、そんなには離れていないです」
「解ったわ」
 聖羅はスマホ番号とアドレスをメモ用紙に書いて渡すと、
「阻霊符を展開しているから、私達から500m以内の天魔達は建物や地面を擦り抜ける事はもう出来ないわ。片をつけるまで出入口や窓を塞いで表には出ないで」
 バリケードを築いて待っててね、と聖羅は婦人に述べる。
 かくて二人は依頼人宅を出ると馬小屋へと向かった。


 クリスと合流した二人は、息を殺しつつ付近の納屋の陰から馬小屋の様子を窺う。
 馬喰鬼、その体長は1m程度だろうか。白いザンバラ髪に皺深い顔はまるで人間の老人のようだ。肌は褐色、手足は細く痩せているが腹はでっぷりと異常に出ていた。
 この五匹ばかりの馬喰鬼達は、小屋内で馬達の骸を貪り喰っていた。びちゃびちゃゴリゴリと浅ましく貪欲に食事する音が響いている。
 三人は機を見計らって踏み込――まずに、

「星屑の海に散りなさい。スターダストイリュージョン!」

 馬小屋の外から壁をぶち抜いて奇襲した。
 ブロンド美女が一閃した透刃よりきらきらと幻想的に輝く流星群が轟音と共に撃ち放たれ、それは小屋の木製の壁を粉砕し、その奥にいた小鬼を貫き、さらにその奥の一匹を貫いて、奥の壁を突き破って真っ直ぐに闇の草原へと抜けていった。
 一方、巫聖羅は魔法書を開き、全身より己の瞳の色と同じ真紅のオーラを立ち昇らせると、手に紅蓮の巨大な火球を出現させていた。
 そして、
「爆ぜなさい」
 クリスの流星波で生じた穴へと間髪入れずに火球を放り込む。
 火は、小屋の内部へと無造作に侵入すると、鬼達の中央に着弾し、赤く膨れ上がった。
「ゲエェ!」
 血相を変えた鬼達は食事を中断し咄嗟に飛び退くも、阻霊符の効果で小屋内の壁や柵に身をぶつけて動きを阻害され、次の刹那、猛火が爆裂して馬小屋内で紅蓮が荒れ狂った。
 後藤知也は無言で花札の札を長くしたが如き豪奢で派手な霊符を翳すと、虹色の光を立ち昇らせた。
 刹那、虚空より彗星雨の嵐が招来される。
 闇夜を切り裂いて出現した光達は、宙に眩き光の尾を曳きながら、唸りをあげて次々に馬小屋へと降り注いで、一切合財を爆砕しながら小鬼達へと突き刺さってゆく。レート差が爆裂していた。
 炎が収まり、光の彗星雨が収まった時、後に残ったのは、肉片と、そして瓦礫の山だった。
 知也提案の奇襲作戦は、絶大の破壊を場に撒き散らしていた。男は仁王立ちで破壊跡を見つめる。
「やった、かしら……?」
 魔法書を構えながら聖羅が呟き、注意深く視線を周囲へと走らせている。
”何体潜んでいるか分かったモンじゃないわ”
 という事で、新手からの不意打ち等に用心深く備えている。
 三人が馬小屋の残骸を見つめる中、数秒が経過すると、突如、瓦礫の一部が吹き飛んだ。
 鉄パイプを手にした、特に強靭そうな血塗れの小鬼が勢い良く立ち上がり、知也目掛けて腕を一閃したのだ。
 知也と馬喰鬼の彼我の位置は、腕の間合いの遙かに外、しかし、その手から赤黒く輝く瓦礫の破片が放たれた。
 魔力でコーティングされた、木片の礫だった。
 黒髪の男は、咄嗟にフローティングシールドを出現させ受け止めんとする。しかし、レート差で加速した礫は盾が出現するよりも前に智也の身に突き刺さった。
 強烈な破壊力が男の身を貫き、尖った木片が深々と知也の身にめり込む。負傷率四割九分。
「ぬっ……!」
 知也は眉を顰めつつ再び札を翳す。
 その時には反応した聖羅がアウルを解き放っていた。
 激しい風の渦が馬喰鬼へと襲い掛かり、強烈な衝撃力を叩き込んで朦朧とさせる。
 さらに、クリスティーナが駆け寄って、常人の目からは掻き消える程の速度で透明な刃を一閃した。
 鬼の身が袈裟に斬り裂かれ、そして、知也は翳すと札の先を血飛沫をあげる馬喰鬼へと向けると、その先より風の刃を撃ち放った。
 放たれた風の刃は、唸りをあげて飛び、鬼の首を刎ね飛ばして闇の彼方へと抜けてゆく。
 首を失った鬼は倒れ、そして、そのまま動かなくなったのだった――


 一方、峰雪、桃々、川内 日菜子(jb7813)は港町に辿り着いていた。
 海辺の車道沿いには家屋が一つあり、内藤を加えて四人はその陰に身を潜めている。そこから海岸を見下ろせた。
「人の考えは千差万別、相棒さんと意見が衝突してしまったのは残念だけど。僕は内藤さんと同意見だよ。被害が出てからでは遅い」
 挨拶後、峰雪は駐在所勤めの撃退署員へと己の意見を述べ、早急に退治しようと言った。
「ご協力、感謝いたします」
 駐在の青年は峰雪へと敬礼する。
「しかし、あれはいったい何をしているのでありますかねー?」
 桃々は家屋の陰よりナイトヴィジョンのゴーグル越しに浜辺を観察し、確かにそこにサーバントが一体佇んでいるのを確認していた。
 上半身は美しい人間の女のもので、下半身は魚である。それだけなら人魚のようだ。
 ただし全長は6m程度、人の部分がおよそ1m、魚の部分が5mといった寸法であった。魚の部分は蛇のように細く長い。
 そして手には三又の槍を持っていた。
「応援が到着するのを待っているのでは?」
「それは考えにくいと思うのです。仮にそうなら、どこかに身を隠すなりの行動をしそうなものではありませんか?」
 こんな風に攻撃してくださいと待ち構えているのは些か解せない、と桃々。
「言われて見ると……確かに怪しいですね」
 目を凝らして唸り内藤。
「しかし、サーバントの大半は獣のようなものです、単純に頭悪いという可能性もありませんか?」
「上半身だけ人型とか知能どんなものなのでありますかね……」
 相手の知能レベルを判別できないのは厄介である。
「迂闊なだけなら良いのですけど、実は海の中に狙撃系の敵が既に潜んでいる、とかだと不用意に飛び込むのは危険でありますよ」
「けれど、もし内藤さんの考えが正しいのならば、増援が来てしまう前に一体でも減らしておきたくはあるよね」
 峰雪が唸った。
「連携が得意なサーバントだって情報もあるし、集結されてしまうと厄介だ。早期に倒して各個撃破したい」
 ううーんと撃退士達は悩みつつも、やはり悩んで時間を与えるよりはと、攻撃を開始する事に決め、役割を分担する。
 かくて、日菜子は敵の注意を惹き付けるべく前にでる事に決めた。
 少女は思う。
 この少人数で対処できるかどうか。
(果たして私は盾を演じきれるだろうか)
 考えれば考えるほど、日菜子の空っぽの筈の胃袋が、掻き回されるように重くなってゆく。
(出来れば内藤にこそ『タウント』で引き付けて貰いたかったが……)
 しかし彼はタウントを活性化していないようだった。
 頼めば変更してくれたかもしれないが、内藤には内藤の事情があるのだろう、と日菜子は思いを巡らせる。
 もしかしたら、常日頃から簡単に現場放棄する相棒や人手不足の署が頼りにならないので、自分一人で敵を斬り倒せるよう攻撃重視の装備構成になっているのかもしれない。
「まずは私が敵の注意を惹きつけよう。私が倒れた時は皆の盾を頼む、内藤」
「了解。微力ですが最善を尽くします」
 両手剣使いのディバインナイトはそう言った。
 近接組みは月下の闇の中、姿勢を低く、稜線や物陰に身を伏せながら間合いを詰めてゆく。狩野峰雪も身を伏せながら移動し、拳銃の射程ぎりぎりの所で停止した。
(水中で戦うと不利になりそうだ。遠距離からの引き撃ちで、浜辺に引き寄せたい)
 やがて全員が初期配置につく。
 峰雪は路上に立ち上がって射線を通すと、拳銃を眼下に広がる浜辺に佇むサーバントへと向け発砲した。
 轟雷の如き銃声が響くと同時、人魚の豊な曲線を描く左胸部に弾丸が突き刺さって破壊力を炸裂させ、ぱっと赤い血を散らせる。
 人魚は身の毛もよだつ奇怪な声音で苦悶の叫び声をあげると、魚蛇の身をうねらせ人の身を高く持ち上げ、そのほっそりとした指先を峰雪へと向けた。
 刹那、水弾が勢いよく噴出され、峰雪は咄嗟に横に身を捌いた。が、鋭く飛んだ水弾は中年男の脇腹に喰らいついてきた。身が穿たれ、激痛が走り、中年男は眉を顰めた。負傷率二割九分。
 峰雪は敵を陸地へと引き寄せるべく後退し、人魚側も水弾を峰雪へと撃ち込みながら後退、波打ち際へと向かって動き出した。
「下がる? ……逃がすか!」
 路上から飛び出し浜へと駆け降りていた日菜子は人魚へと接近すると跳躍、紅蓮の炎を全身に纏って宙で回転すると急降下、右脚を伸ばして人魚の上半身を蹴りつける。紅蓮火のアウルが人魚の胴に収束し、次の瞬間轟音と共に爆ぜた。
 派手だ。
 人魚は苦悶の声を洩らしながら片手で腹部を抑えて後退し、内藤が両手剣で魚蛇の下半身へと斬りつけ、鱗を飛ばし裂き血飛沫を噴出させる。
 日菜子はばちゃりと水音をあげながら浅瀬に降り立つ。
 桃々は大陸仙道と日ノ本陰陽道、修験道、刑法の融合の元に編み出した秘呪――猥・褻・物・皆・陳・列・罪・斬を唱えて心を落ち着かせていた。上級者向けの高度な精神操縦法を用いて覚醒し、気配を薄くして闇に潜行する。
 懸念していた狙撃は飛んできていない。
 波打ち際まで駆けた桃々は海へと視線をやって注意深く監視した。
 水面下はよく見えない。
 雲が風に吹かれて流れる。
 月光が海面に降り注いできらきらと照らしていた。
 他方、人魚が日菜子へと水弾を放ち、日菜子は炎拳を振るって水弾を砕き打ち払い前進――重く強烈な衝撃に手が痺れる――その背後へと回り込まんと側面を抜けようとし、人魚は後退しながら槍を振るう。穂先が日菜子の肩を強打したが、表面を滑って抜ける。物理装甲が厚い。
「地の利は与えない」
 日菜子は攻撃を掻い潜って沖側へと浅瀬を回り込む。高々と紅蓮の炎を纏った脚を振り上げ、鞭の如くに振り抜いた。
 身を捻り日菜子へと向き直っている人魚の魚蛇の下半身に脚が鈍い轟音と共に直撃し、人魚の巨体が木の葉の如く吹き飛んだ。
 浅瀬に水飛沫を盛大に散らしながら転がり、浜へと打ち上げられる。
 直後、豪雷の音が鳴り響くと共に、狙い澄まされた精密な一射が飛来して人魚の頭蓋を撃ち抜いた。峰雪が浜で拳銃を構えていた。
 人魚は血飛沫を撒き散らし、そして身を弛緩させ、動かなくなる。
「仕留めたか――?」
 日菜子が呟いた次の刹那、
(……あれっ?)
 桃々は日菜子の背後の浅瀬の海中、なにか大きな黒い影を一つ、水面下に発見していた。
「先輩! 後ろの足元!」
 桃々は駆け叫ぶと、翼頭杖を翳し、炎の球体を出現させて投射した。紅蓮の火の球が唸って飛び、日菜子の背後の海面に突き刺さって爆砕、水柱を噴き上げる。
 日菜子が振り向くと、その瞬間、水面下から伸びてきた魚蛇の尾が日菜子の膝裏に巻きついた。
 勢い良く引かれ、日菜子が転倒し水中に身が没し、さらに沖の方へと引きずり込まれてゆく。耳元で水音が唸る。息が出来ない。さらに何か巨大なものが膝裏から胸元まで螺旋を描くようにぐるぐると巻きついてきて、強烈に締め上げてくる。
 身が強烈に圧迫されて肺から息が洩れる。周囲は海水で、息が出来ない。
 不意を突かれればパニックに陥る所であったが、幸い桃々からの警告を聞いて意識を向けていた日菜子は慌てなかった。
 アウルで動くゴーグルは水中でも陸上と同様に動作する。見える。
 海面を砕き水を割って、鋭い輝きが日菜子の顔面目掛けて迫って来る。日菜子はステュクスバンドを出現させると炎の両拳を翳して穂先をブロックした。
 そう深い位置ではない。せいぜい膝程度の水深だ。
 海面上、浅瀬を駆けた内藤が両手剣を一閃し、日菜子に巻きついて浅瀬に沈め槍で突き降ろしている人魚の上半身へと斬りつけた。血がしぶき、叫びがあがる。
(蛇じゃない蛇じゃない、これは魚だ。魚介類!)
 海中の日菜子は束縛されつつも、己に巻きついている蛇魚の身へと拳を叩きつけ続けた。
(皆の盾であると同時に、私は皆の拳、この想いだけは絶対に譲らない……!)
 そんな日菜子の腹へと人魚は指先をつけ、至近距離から水弾を発射して痛烈な打撃を与えた。日菜子の口から、ごばり、とさらに空気が洩れてゆく。
 しかし、人魚の反撃もそこまでだった。
 内藤がさらに斬りつけ、桃々が炎陣球を撃ち込み、駆けつけた狩野がアイビーウイップを放って拘束すると、さらに両手剣で切り裂き、杖で殴り、雷鳴の銃弾が脳天をぶち抜いて、ついに仕留められ、日菜子は窒息する前に無事に拘束を解いて海面へと姿を現し、生還したのだった。


 かくて。

 A市で三人の撃退士達が単眼巨人を倒したその直後、ナナシは斡旋所へと連絡を入れていた。
「ええ、無事に倒せたわ」
「良かった、お疲れさまです」
 また消防や救急にも連絡を入れ瓦礫の撤去と怪我人の救助の手伝いを依頼する。その辺りは既に市民などから通報は入ってはいたようで、出動開始はしているらしかった。ただ、巨人は倒した、という事を伝えると感謝された。じきに市民全体にも撃破の報は伝えられる事だろう。
 ナナシはそれらの連絡を終えると、諏訪や伊都と共に救助活動を開始する。
「とりあえず電車かバスの始発が出るまでは帰れないわね」
「あー、帰るまでが依頼っすよねぇ」
 伊都がぼやいた。無事に帰らないと折角のゲン担ぎが台無しになってしまう、と少年。またさらに帰還前に伊都をどうにかできるような厄介事などそうそう飛び込んではこないだろうが、夜は長そうであった。
「他の所が無事に済んでると良いんだけど……」
 紫髪の童女は夜空に浮かぶ月を見上げてそう、呟いたのだった。


 一方のB村。
 聖羅、クリス、知也の三人は広大な村内を駆け回って探索と討伐を続行していた。
 クリスの主張により朝になり明るくなるまで見回りは続けられ、結果、さらに三体の馬喰鬼を屠っていた。
 恐らくは確実に敵はいなくなったであろう事を確認し、一同は依頼人に報告した。
「有難うございます。これできっとあの子達も浮かばれます……」
 無表情だった依頼人は初めて表情を変化させ笑顔を浮かべた。
「そういえば……ご亭主は?」
 子供達は食べられてしまったのだとしても、夫はどうしているのだろうとふと三人は疑問に思った。
「私は独身です」
「えっ?」
 曰く『子供達』というのは自分の牧場で育てていた牛や馬達の事であったらしい。
「ほんと、愛情籠めて可愛がって育ててきたのにっ、皆食べられちゃって! それだけでも悲しいのに、大損害ですよ! これから私、どうやって生活していけば良いんですかッ!!」
 おいおいと依頼人は涙する。
「お先真っ暗でちょっと生きる気力を失いかけましたが、仇を取っていただけたのでまた頑張る気力が沸いてきました。有難うございます」
 との事だった。
 知也は、俺の葛藤と怒りは一体なんだったのだ、といった感じではあったが、
「まぁ……幼子の犠牲者がいなかったというのは、不幸中の幸いだったかもしれないな」
 と、苦笑したのだった。



 了


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 華麗に参上!・クリスティーナ アップルトン(ja9941)
 誓いを胸に・ナナシ(jb3008)
 ゴミックマスター・桃々(jb8781)
重体: −
面白かった!:5人

Mr.Goombah・
狩野 峰雪(ja0345)

大学部7年5組 男 インフィルトレイター
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
新たなる平和な世界で・
巫 聖羅(ja3916)

大学部4年6組 女 ダアト
華麗に参上!・
クリスティーナ アップルトン(ja9941)

卒業 女 ルインズブレイド
黒焔の牙爪・
天羽 伊都(jb2199)

大学部1年128組 男 ルインズブレイド
誓いを胸に・
ナナシ(jb3008)

卒業 女 鬼道忍軍
魂に喰らいつく・
後藤知也(jb6379)

大学部8年207組 男 アストラルヴァンガード
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅
ゴミックマスター・
桃々(jb8781)

中等部3年9組 女 陰陽師