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マスター:望月誠司
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
形態:
参加人数:25人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/05/06


みんなの思い出



オープニング

 戦い続ければいつか、つるぎの刃は欠けて毀れる。
 弓の弦は裂けてちぎれる。盾はひび割れ砕け散る。
 人の心も同様に。
 武具には手入れが必要で、心にも手入れが必要である。
 すなわち、癒しと休息だ。
「うーん……」
 黒髪の少女は柳眉を顰めて唸っていた。生徒会長の神楽坂茜である。
――どうすれば人を癒せるのだろう?
 考えているのはそれであった。
 この所、ハードな事が続いている、心身ともに疲労が溜まっている生徒達もいるだろう。癒してあげたい、というのはおこがましいのかもしれない、親しいならまだしもお互い顔すら知らないという場合だってある訳で、ただまぁその一助くらいにならなれればとは思う所ではある。
 こういう場合、自分だったらどうされたいだろうか? という事を基点に考える。好きな人達が幸せそうにしていれば、それだけで自分も嬉しいものだが、けれども好きな人達と常に一緒に行動できるとは限らない。人は畢竟、一人で生きて一人で死んでゆくものだ、と昔誰かが言っていたが、それはさておき、何がどうなってもある程度は一定の効果を見込める必要がある。
 だが、どうされたいかは感性によって人それぞれで、ついでに言うと、自分の本性が微妙に世間ずれしたものであるというのは指摘され続けてきたから、今となってはズレてるんだろうなぁと思ってはいる。
 悩む。どうすれば良いのか。
「むむむ……」
 結局思ったのは、こういう時は世間ずれしている自分が一人で悩むよりも、他の人間の意見も聞いてみるのが良い、という事だった。
 そんな訳で、
「南ちゃんはどんな事されると癒されますか?」
 生徒会室内の机で書類と睨めっこしている親友に聞いてみる。
「……は? 癒しぃ?」
 赤毛の娘は目を瞬かせた後に、半眼でこちらを睨んでくると、
「そーやね、アンタが今後、アタシ等が頭抱えるような場面で頭抱えるような事は絶対にせんと誓うてくれれば、多少は心安らかに生きられるわ」
 どうやら先日の企業会合での事を言っているようだった。
「ご、ご、御免なさい。それは、努力はしますが、お約束できません」
「ゆうと思うたわ頑固者」
 はぁ、と南は嘆息した。
「で、また藪からスティックに今度は何を企んどんねん?」
「企んでいるとは人聞き悪い」
 などと言い合いつつかくかくしかじかと説明すると、
「なるほど……癒しねぇ、そんならまぁ無難なもんでええんとちゃう? 場さえ提供しとけば後は自分らのことは自分らでどうとでもするもんやろ。あんまりでしゃばるもんでもない」
「ほむ、そういうものですか」
「今の時期なら花見……いや、場所によってはもう散る頃か、うーん、春やし普通にピクニックとか?」
「なるほど、野掛けですね」
「むしろそれどういう意味? って感じやけど、弁当食べて日当たり良い草原でごろごろしとき」
「確かにちょっとつまみつつのんびり日向ぼっことかなんか癒されそうですねっ。それじゃ、南ちゃんも一緒にいきましょう!」
「そう来るか」
 呆気にとられたように変な顔をした南に笑って言う。
「南ちゃんも偶には御休みしませんと」
「いやまぁー、仕事も大分片付いとるから空けても支障はあらへんけど」
「じゃ、一緒にいきましょうよ。きっと楽しい気がします!」
「……うーん、まぁ偶にはええか? 折角やし源九郎にも声かけとく?」
「そうしましょうそうしましょう。何処が良いですかね〜」
 と二人は行楽計画を立て始めるのだった。


「なるほど、戦士の休息か。短期間全力疾走するのは気合さえあれば誰でも出来る。しかし長期間を高速で走り続けられる人間というのは案外少ない。怠惰というのは問題以前だが、安定して成果を出す為には効率良く休まなければならない。悪くはないね」
 眼鏡男子はそんな事を言って評価してきた、が、
「でも、昼食取ってだべってるだけじゃ暇じゃない?」
 駄目出しも併せて追加してくる。
「えぇ〜、そうですかぁ?」
 基本的にこの大塔寺源九郎という青年は痩身の華奢な外見の割りに心身ともにタフだ。茜などは休みくらいはのんびりごろごろしてたい派だったが、この男は休みの日でも活発的に活動したい派らしい。
「そうだよ、折角休日を潰すんだからさ神楽坂。こう、何かアトラクションがないと」
「ピクニックでアトラクションて……例えば?」
「う〜ん……流鏑馬とか?」
 茜の脳裏に馬に乗って草原を駆けさせながら弓矢をぱんと撃って的を射抜いている源九郎の姿が浮かんだ。中世騎馬武者のあれである。
「や、やぶさめ?」
「うん、最近凝っていてね、なかなか楽しい」
 至極真面目な顔で青年は言う。
――自分が浮世離れしているとは言っても、この男よりはマシであろう。
 神楽坂茜は強く思った。ここしばらく忘れていたが金持ちは言う事が違う。
「駄目かな?」
「それはちょっと、世間一般の楽しいの感性からはずれているんじゃないかなって」
 金銭感覚はバリバリの庶民派である会長は一般論であろう事を述べた。
「ふむ、楽しいんだけどねぇ」
 名家の御曹司はちょっと残念そうにしつつ、
「じゃあ、川が近くにある場所を選んで釣りとか。確か静岡に良い場所があった」
「普通って素晴らしいと思います」
「カバディ」
「わざと言ってません?」
「連歌会」
「せめて俳句にしましょうよ」
 そんな調子であれやこれやを言いあって、結局の所、ピクニックのオプションは釣りと流鏑馬になったのだった。




■ピクニック概要
 静岡県のいずこかにある自然豊かな春の野原へと出かけます。
 黄色いタンポポや菫や蓮華、つくしなど色々草花が地面を埋め尽くしています。
 天候は晴れで空は青く、鳥はぴーちく歌い、気温はぽかぽかと暖かく、風は緩やかに吹いています。

 小高い丘があるので、そこにシートなり茣蓙なりを敷いて皆で昼食を取った後に自由行動、というのが基本になります。
 弁当は持参か、参加申し込みする時に申し出ておけば、サンドイッチか御握りか希望した方が配られます。執行部メンバー作成ですが、最近は会長も料理の腕前は上がってきているので、味は美味しくいけるでしょう。
 おにぎりの具の中身は、ツナや明太子やプラスでマヨネーズなど、梅干や昆布や鮭などになります。サンドイッチの中身はトマトやレタスのサラダサンドやゆで卵とマヨネーズが混ざった物や、薄くスライスされた鳥肉などです。
 希望すればオプションで鳥のから揚げや水筒入りの緑茶や紅茶などがついてきます。


リプレイ本文

 春の青空だ。
 天高くに雲は流れ、地には草花が緑を成し、黄色いタンポポ、紫色の菫、白と薄紅色の蓮華らが咲き誇っている。
「ピークニッークいえあー!」
 野原を貫く小道を通って目的地に到着した瀬波 有火(jb5278)は喜びの声をあげて万歳した。
「お日様ぽかぽか良い天気なのです」
 Rehni Nam(ja5283)は猫のように目を細めた。日差しは暖かく、春の風は緩やかに吹いている。
「良い所だな……」
 陽波 透次(ja0280)は呟きこの場所に来れた事に感謝した。
 まずは食事という事で撃退士達は柔らかい陽光の元、緑の海を渡り、小高い丘へと登ってゆく。
 丘上に着くと、皆思い思いにレジャーシートを広げるなり、手頃な小岩に腰かけるなりして腰を降ろすと弁当の包みを開いた。
 とりわけテンション高くいそいそと包みを開いているのは黄昏の魔女を号するブロンド娘、フレイヤ(ja0715)だ。
(ふっふっふっ、今日の私は完全無敵! だってお姉ちゃんにお弁当作ってもらったもんね!)
 るんるん気分という奴である。「これもう勝ち組決定ですよ!」という奴だ。
 期待に胸を膨らませてパカッと弁当箱の蓋を開く。
――中に入っていたのは、千久遠札だった。
 一千久遠札。
 石化しているフレイヤを他所に「あ、これ美味しいー」などと周囲からはきゃっきゃっうふふと喜びの声や笑い声が聞こえてくる。
「あ、あの、これ、食べます?」
 気付くと生徒会長が目の前にいて御握りを差し出してきていた。
 貰った御握りは塩味が強く感じられた。
 時刻は昼、黄昏にはまだ遠かった。


「静真くんて、料理も上手なんだねぇ……」
 志摩 睦(jb8138)が九条 静真(jb7992)と弁当のおかず交換をしつつ、ほわっと感嘆の息を洩らしていた。
 一重の小さめの重箱に詰まっていたのは、出汁巻き卵、照り焼きつくね、手鞠寿司、ブロッコリーのごま和え等である。どれも洗練された上品な味がした。逸品であった。
(……うちの普通なお弁当なんかで、喜んでもらえるかな?)
 女が恐る恐る伺うように見ると、静真は睦のそんな思いを察したのか嬉しそうに笑って、
『お い し い』
 と無音で口をその形に動かした。懐からメモを取り出しさらさらと書きつけて渡す。
 受け取った睦が視線を落とすと『志摩さんの 味 すき』との文字が白い紙片に走っていた。
「そ、そうか、良かったよー!」
 ほっと笑顔を洩らして睦。静真の前では標準語である。
 ちなみに睦の方の弁当は、ゆかり・鮭・若菜等が混ぜられたカラフルな御握り、タコカニウィンナー、甘卵焼き、野菜のベーコン巻き、金平牛蒡、等シンプルな弁当箱に定番のおかずであった。
 静真的にはタコウインナーとか好きで憧れなんだそうだ。
 他方。
「前に教えた身……会長に味は負けませんよ」
「ふっ、師よ、貴女を倒し乗り越えてゆくのが弟子の恩返しというもの……!」
 なんだか良く解からないノリで機嶋 結(ja0725)と神楽坂茜が弁当の交換を行っている。本日の結自作の逸品はバケットにチーズやサーモンを挟んだサンドイッチである。
「あら美味しい、シャケ好きですー」
 にこにこと舌鼓を打って会長。
「……会長も腕をあげましたね」
 はむはむと茜作のツナマヨ握りに齧りつきつつ機嶋。
(男子生徒憧れの生徒会長さんの手料理……)
 少し離れた位置に陣取っているのは陽波透次だ、眩しいものでも見やるかのように目を細めて濡れ羽髪の少女を眺める。さり気無くファンらしい。確かに見目は綺麗である。外から見る分には美しい。
(完璧で凄く美味しいんだろうな)
 近くにいれば、機嶋達との会話からアレ? と違和感を覚えたかもしれないが、幸か不幸か声まで拾うには位置が遠い。疑問に思う事なく肉サンドにかぶりつく。パンに挟まれた鶏肉はじわっと肉汁と旨味を溢れさせ、舌の上でとろけていった。とても美味しい。透次の幻想は守られたようだ。
 幸せな気分に浸りつつ完食した青年は思う。御礼を言いに行きたい。
 が、
(神楽坂さんに話し掛けるのは恐れ多いかな……)
 丘上では長い髪を揺らして少女は口元に手をあてころと柔らかく笑っている。
――やっぱり行こうか。
 いやでも変な顔されたらどうしよう。
 ちなみに、
「お茶はやっぱり静岡産?」
「はい、やっぱり静岡のお茶って美味しいですよね」
 などという会話を龍崎海(ja0565)とかわしている最中だったりする。
(なんか偶にイメージと違う言動だけど、さすが完璧超人)
 海は胸中で呟きつつ会長が作ったという各種御握りにかぶりつき、淹れて貰った熱い緑茶と共に咀嚼し飲み込んでゆく。なかなか美味い。一年ちょっと前まで普通に不味かったのだが、そんな様子は影も見えない。訓練の神秘である。
「うん、きちんと特訓の成果が生かせているようですね」
 会長の料理師匠の一人であるファティナ・V・アイゼンブルク(ja0454)は玉子のサンドイッチを一口齧るとうんうんと満足気に頷いた。この調子で精進すればいつか自分を越えてくれるだろう、とそんな事を思う。
「上手く出来てたようで良かったわ」
 お茶を啜りつつ同じく料理先生のナナシ(jb3008)。手作りに意味があるので、と調理部分は直接関わってはいないが、人数が多いので大変だろうと材料の切り分けや完成品の袋詰めなどは手伝いに行っていた。以前に比べれば茜の料理の腕も少しは信用してきた所だ。
「穏やかな場所だね、ここはぁ。余計な事や重い事を少しの間忘れる事が出来そうだぁ」
 人心地ついた雨宮 歩(ja3810)は久しぶりな会長にそう述べた。
「良い場所ですよね。歩さんも日々の疲れを癒してのんびりしていってくださいね」
 嬉しそうに笑って黒髪の少女は答える。
 他方。
――邪魔になったらアレだし。
 いや、でも、待て。
 未だまごまごしている透次であった。
(…………あいつ、神楽坂さんの方ばかり見てない?)
 そんな弟の様子を目撃していた姉の陽波 飛鳥(ja3599)は黒瞳を徐々に吊り上げていっていた。何故か無性にイライラした。
「ちょっと、あんた」
 飛鳥は立ち上がるとツカツカと透次の傍へと近寄り、その襟首を引っ掴む。
「あれ、姉さん? って、な、何っ?」
「いいから来なさい!」
 一方。
「そ、そこは駄目です!」
「あら、でも体調管理の為にも現状はしっかり把握しておきませんと」
 真っ赤な顔で身を捩らせている会長にファティナは後ろから抱きついて腕回し腹部を揉んでいた。最近茜が体重を気にしていたので実際の所、どうなのか気になったのである。
「ん……モデル体型にはちょっとオーバーしているみたいですけど、美容体型の範囲ですね。ちょっとくらい肉付きが良い方が触り心地は良いですよ」
「そんな匠の評価はいりませんっ!」
「うーん……」
 手帳を片手に唸る雨宮歩。赤髪の探偵は面白い事は手帳にメモしているのだが、書きつけておくべきか否か。これもまた良い思い出の1ページに――なるのだろうか?
「会長はモデル体型よりやや肉付きが良い、と……」
「ちょっとぉ?!」
 涙目の少女を前にパタンと手帳を閉じて笑う。実際メモったか否かは不明だ。
「さて、それじゃボクは釣りをしてるくよぉ。会長も、良い一日を」
 青年はひらと手を振りつつ立ち上がり丘を降りてゆく。
「は、行ってらっしゃいませ、って、助けてくださいよー!」
 そんな悲鳴が響く中、
「何をやっているんだね」
 騒ぎの最中、天風 静流(ja0373)がサンドイッチを片手に現れた。
「し、静流さん〜!」
「あら、丁度良い所に。この触り心地は静流さんにも是非一つ触って貰わないとと思ってた所で」
 助けを求めるように茜が視線を向けくる一方、その背後より張り付いているファティナが期待に満ちた視線を送って来る。
「平和なようで何より」
 もぐと黒髪の麗人は手にしたローストポークサンドを齧る。美味い。久しぶりに作ってみたが割と上手く出来たようだ。
「神楽坂さん――え、ええっと、取り込み中かしら?」
「あら、陽波さん――って」
 黒髪の娘の視線が向けられ、次の瞬間、その黒瞳が丸くなった。
「悪いけど、こいつが何か言いたそうだから聞いて貰える?」
 飛鳥はひっつかんで連れて来た透次を押し出すとパンパンと両手を打って払う。
「私に、ですか?」
 ファティナは束縛を解き、解放された茜は居ずまいを正して透次を見た。
 周囲からの視線を集められた青年は多少緊張しつつも、
「お、お弁当! 美味しくて癒されました! 感謝です!」
 そうしっかりと礼を述べた。
 目を丸くしていた会長は、その言葉を聞くと柔らかく目を細めて、
「――お口にあったようで何よりです。そう言っていただけると、頑張った甲斐があります」
 嬉しそうに笑った。
 その笑顔を見つつ透次は、
(おぉ……これは、姉さんに感謝かな)
 と姉に内心感謝した。無論、口に出しては言わない。胸中で呟くのみである。
 ちらりと横目で見た飛鳥はむすっとした表情をしていた。
(うわ、なんか機嫌悪そう……なんで?)
 透次が首を傾げている最中、飛鳥は口を開く。
「まぁちょうど良いわ、私も神楽坂さんとお話したかったのよね。このお弁当、どれが神楽坂さんの作ったものなの?」
「あ、それはですね、唐揚げと鳥肉と卵のと――」
 と茜は品目をあげてゆく。
「……凄いわね。色々噂は聞いてたんだけど」
「う"っ」
「あ、いや、今日のは本当に美味しかったわ」
「ですかっ? 良かったです」
「あ、そうだ、フルーツサンドや小倉とポイップのお菓子をデザートに作ってきたんですけど、良かったら飛鳥さん達もどうです?」
 ファティナがにこと微笑して言った。
「……美味しそう。良いの?」
「ええ、甘い物は外せませんよね。体重を気にされている方は食べ辛いかもですが」
「ほっといてください」
 そんなこんなで甘味を肴にお茶会じみたものが始まった。
「わぁ、あまーい、ですね! 美味しいっ」
「……口の中でとろけるこの甘さ、風味、それでいてしつこくない……ファティナさん、流石ね」
「ふふ、ちょっと工夫してみました」
「そういえば、会長達は専攻変更はもう行った? 俺は攻撃力を高めてみようかなって思っているのだけど」
 龍崎がお茶を啜りつつ話題を振った。
「私は龍崎さんとはちょうど逆ですね。ヴァンガードになって回復スキル取ってみたいなって」
 と阿修羅な会長。
「私は実際に変えてみたよ。しかし学科を変えると弱体が著しいな。思う様に動かん」
 陰陽師になってみたという静流はフルーツサンドを食べつつ述べる。
「少し初歩の技術を齧る為に変えただけだからすぐに戻るが。二足の草鞋を履く人は大変そうだ」
「やっぱりいきなりこれまでの専門と同じレベルでっていうのは難しいんでしょうねぇ……」
「うーん、これってさ、アウルが頭打ちになっても再成長可能なのかな? いや、養成時代の人達も再び強くなれたらって思って」
 龍崎が問いかける。
「現役の学生のようには鍛え直しても伸びないらしいです……若干なら影響はあるそうですが」
「そうなんだ……残念だね」
 そんな雑談に興じている一同を見やって透次はふと思う。
(天界と人間界の関係が違えば、この輪の中でサリエルとリカが笑ってた可能性もあるのかな……)
 仮定の話。
 もしも。
 輪の中に銀色の髪の幼天使と黒髪の水兵服の少女の姿を幻視して――透次は自嘲した。
 自分勝手な感傷。
 そう思った。
「……あれ?」
 飛鳥がふと隣を見ると、いつの間にか黒服の青年は陽炎が掻き消えたかのように、姿を消していた。


 川の畔では雫(ja1894)がのんびりと釣り糸を垂らしていた。春の川は小さくはないが陽に煌きながらさらさらと流れている。菫や蓮華の花が岸辺に咲いていた。
 不意に、対岸に赤毛の青年が現れた。久遠 仁刀(ja2464)だ。
 視線が合うと青年は軽く会釈した後に声をかけてきた。
「釣れてるか?」
「ぼちぼちですね」
 雫は会釈を返しつつ、一度上げた竿を振って再び針先を水面へと落とす。
「偶にはゆっくりするのも良いですね」
「ゆっくり、か……」
 赤髪の青年は呟く。
「……そちらは何をなさって?」
「散策だ」
 調査をしに行く、と言うと数名から気を使われそうなので仁刀はそういう事にして出てきていた。実際、やってる事は調査だったが。
「真面目ですね」
 それが様子から見て取れたので雫はストレートに告げた。
「まぁ……『目』が仕込まれて、撃退士がサボっているだとか流されてもなんだからな」
 ちなみに『目』とは情報収集用のサーバントで、周囲の様子を把握し、その映像を他へと転送する能力を持つらしい。言わば監視カメラのようなものだった。
「でもあまり根を詰め過ぎても身が持ちませんよ」
「解かってはいるんだが……どうにも、な」
 と仁刀。休むのが前にもまして苦手になっている気がするな、と自分でも思う所である。
「まあ、気晴らしついでだ。俺も一廻りしたら釣りでもするつもりだ」
 青年はでは、と手を振ると川沿いを登って行った。
 雫はそれを見送った後、また春の川の流れへと視線を移す。
「……ガチンコ漁は前に怒られましたから、今回は釣りに専念しますか……」
 赤眼童女はのんびり食料確保に努めるのだった。
 

 光に煌めく水面を、勢い良く回転する石が叩き、リズミカルに跳ねて連続して波紋を起こしてから水中に沈んだ。
 この川の幅にしてはなかなか良い回数だったのではなかろうかと静真は自己評価をくだす。弾む心に自然と表情が緩んだ。振り返って手招きする。
 一緒にやろう、の意である。
「静真くん、あんま川近寄ったら濡れちゃうよ」
 女子らしい意見を睦は言った。
 青年は大丈夫、と笑う。
「もー……これ?」
 青年の手から石を受け取り、投げ方のアドバイスを身振り手振りで受けた睦はそのようにして投擲してみる。
 回転する石はキラキラと輝く川面を叩いて、水の飛沫をあげながら、複数の波紋を起こしてから沈んだ。一投目にしては良い記録だろう。
 静真が口を動かし身振りで称賛する。睦は石切りで褒められても感が若干無い事もなかったが、悪い気はしなかった。というか照れた。
 二人はその後も川遊びをしながらのんびり川辺を散歩した。穏やかな自然の中にいると心が落ちついた。
 睦は持参したデジカメでこれはと思った川と周囲の風景を撮ってゆく。水は豊かに流れ、色とりどりの草花が鮮やかに咲き、蝶や小鳥が舞っていた。
 ふと思う。
(静真くんの写真も撮りたい)
 が、口に出しては言い出せなかった。ちょっと気恥ずかしい。
 一方の静真は、カメラを手に何処か恥ずかしそうに視線を動かしている黒髪の娘の姿を見て、その手を取ると歩きだした。
「えっ、静真くんっ?」
 静真は進む先に発見した第一県民とおぼしき赤毛の釣り人(仁刀)に写真撮影を頼んでみる。
「ん、川をバックにあんた達を撮れば良いんだな?」
 ぶっきらぼうながら快諾してくれた釣り人の言葉に静真は頷く。
(大事な、思い出……持っておきたいから)
 男はそう思った。
 そんな訳で、仁刀は渡された使いカメラのファインダーを覗いた。
 枠の中の二人は煌めく春の川を背景に、若干照れながらも笑っている。きっと幸せの一ページという奴なのだろう。
(しっかり撮らないとな)
 仁刀は気を引き締めつつ――こういうのは頼まれると結構緊張するものだ――合図と共にシャッターを切った。


 かくて二人は礼を言って手を振り釣り人と別れ、また川辺を歩いていった。
(春だな)
 そんな事を思いつつ仁刀は釣り竿を振るう。思う。現地のカップルだろうか。ちなみにこの釣りは『魚に気取られないようにすれば気を鎮める訓練にもなるかもしれない』という考えから行っている一種の訓練であり、とことんただ休む事が出来ない男だった。

 なお、後で帰る際に一同が集まった時にお互い学園生同士だったと気づいて吃驚したのはまた別の話である。


 他方。
――ちゃんと来られなかったのが残念ですね。
 と思いつつ陽気の良い野原を散歩していたレフニーは一点に人だかりを見つけた。
(あれは……流鏑馬? 面白そーなのです!)
 てってってーと銀髪少女は野原を歩いてゆく。
「こんにちはっ! ここが流鏑馬会場ですかっ?」
 物珍しさも手伝ってかそこそこ盛況な様子の流鏑馬会場であった。
「む? うむ、そのようだぞ」
 弓を選んでいる最中のフィオナ・ボールドウィン(ja2611)が、弦を引き構えていた手を止めて振り返る。
「何をなされてるんですか?」
「複数の弓の中から一つを選んで射る、というルールらしくてな、合った物を選んでいる最中だ。我(われ)が無様を晒すわけにはいくまい?」
 ブロンドの女は傲然と言い放つ。
「気合い入ってますね」
 ほー、と感嘆の息を洩らしつつレフニー。
 現在鞍上にあるのは銀髪金瞳の青年――影野 恭弥(ja0018)のようだった。普段は銃使いなのでたまには弓でも使ってみるか、と参加である。
「はぁ〜じぃめ〜まぁせ〜ぃ」
 大塔寺の独特の調子の合図と共に白馬に跨った影野は拍車を入れスタート地点よりパカラッパカラッと速度を増して馬を駆けさせてゆく。
(良い馬だ)
 影野、揺れる鞍上で頬に叩きつけて来る風に目を細める。左手に和弓を持ち右手に腰のえびらから引き抜いた矢。両手を眼前に掲げるように構えて矢を番え、上半身を左に捻りつつ弦を月の如くに引き絞る。左前より近づいて来る的へと狙いをつけ、馬と自身と的が横に並ばんとする一瞬に、鋭い呼気と共にはっしと放つ。
 矢は鋭い風切り音と共に鏃を錐揉むように回転させながら鋭く飛んで的に快音を立てながら突き刺さった。中央――よりやや離れた位置か。少し逸れた。
 次の的、高速で馬を駆け抜けさせながら矢をえびらより急いで引き抜き、弓に矢を番えて引きつつ狙いを定め、放つ。
 最後の的、向かい風を切り裂き、駆けさせながら引き絞り、放つ。
「ごぉ〜じゅう〜きゅう〜てぇ〜ん」
 すべてを射抜いてしばし後、計測係を務めている書記長の声が独特の調子で伸びながら響いた。59点、結果は中の上といった所か。
 影野は馬首を返すと一同の待機所まで馬を歩かせて戻した。
「弓矢の癖は」
「……かなり強いな」
 フィオナの問いに影野は言葉少なく答えつつ鞍上から降りて使用した弓矢一式を置き場に戻す。
 むぅ、と眉を潜めてフィオナ。特製和弓はやはり撃退士でも狙って真っ直ぐ射抜くのは難しいようだ。
「やぁいらっしゃい。参加希望かな?」
 眼鏡の書記長もやってきてレフニーへとそう言った。
「はいっ、私にもやらせて貰えます?」
「うん、良いよ、一射やってゆくと良い。今はちょっと順番待ちしてもらう必要があるけどね」
 と今度は龍崎海が黒馬に乗りトットットッと速歩でスタート地点へ移動させてゆく。
「了解です。ところで、あのお馬さん達って……」
「うん?」
「ああ、大塔寺の所の馬らしいよ」
 同じく順番待ちしている桜木 真里(ja5827)が少女の疑問を読み取って言った。
「うわぁ、セレブなんですね……」
 目を丸くするレフニー。
「ま、それは親父殿であって僕ではないけどね。不肖の息子は後光を掠めさせて貰っているって所さ――と位置についたかな」
 龍崎は書記長の合図と共に黒馬を疾走させ、和弓に矢を番えて一の的、放つ、二の的、放つ、三の的、放つ、次々に矢を放ちながら草原を高速で駆け抜けてゆく。
 双眼鏡を目にあてている源九郎が「さぁ〜んじゅう〜にぃてぇえ〜ん」と計測結果を読み上げた。32点。下の上といった所。
「う〜ん、なかなか難しいみたいだね。もし良かったら、コツがあれば教えてもらって良いかな?」
 と真里が問いかける。それに源九郎答えて曰く、
「今回に限って言うなら、第一はまぁ運ですねぇ」
「運……」
 真里は苦笑した。天運だけは人智ではどうしようもない。
「第二は秘密で、第三は大体は普通に撃つと右に逸れて飛んでゆくので、これくらいの近距離だとちょっとだけ左を狙うと良いですね」
「右に逸れるんだ?」
 真里の疑問に対して源九郎は答えた。
「はい、馬上で馬を駆けさせながら放つ時、正面は馬の首が邪魔になり、そして弓は右利き用が基本ですから、左側に上半身を捻って放たれる事が多い。馬を前方に駆けさせつつ馬上で身を左に捻って弓矢を構えると、疾走により生じる風は構える弓に対して右側からあたります。つまり弓身の左に番えると矢が風で押されて落ちてしまう。だから、風圧に対して支える為に弓身の右側に矢を番えます。
 そして右に番えると、矢と弓身の位置関係により放たれる矢は右に逸れてゆく。放つ瞬間に弓身を回転させるように捻って真っ直ぐ飛ばす技法もありますが、慣れてない者では難しい。だから小手先になりますが、割り切って狙いをやや左につけて撃つと良い感じですね」
「へぇー……そうなんだ、有難う」
「日本の和弓は右ですけど、洋弓は弓身の左側で矢を番えるのですよね」
 レフニーが言った。
「和洋の差だな」
 とフィオナ。
「はい、ヨーロッパでも弓兵は発達してましたけど、歩兵が中心だったので射法が違います。ヨーロッパは弓騎兵、ってなると滅多に無いのですよね……遊牧民の弓騎兵を傭兵として雇っていたくらいで」
「おぉ、流石現地の人。ぼかぁ、あちらの国々の歴史も大好きさ。欧州で弓騎の傭兵っていうとマジャール人とかかな? ――っと位置についたね」
 今度は栗毛の馬に跨った天風静流がスタート位置についていた。書記長が合図を送り、静流は馬を勢い良く駆け出させる。
 馬上、艶やかな黒髪を馬の躍動に揺らし風に靡かせながら、武芸百般な娘は手慣れた動作で一の的に向かって和弓を引き絞り、放つ。鋭い音と共に矢が突き立ち、二の的に向かいながら鞍上の静流は手早くえびらから矢を引き抜く。
(やはり、違和感が残るな。勘も鈍っているし……)
 ジョブチェンジによる身体能力の低下とそれによる常との差異を感じつつ、矢を番え再び引き絞る。
(肩の力を抜く位で丁度良さそうだ)
 ぱんっと鋭い音と共に矢が放たれ、二の的に突き立つ。さらに馬を疾走させ、すれ違いざまに上半身を左に捻りつつ弓矢を番え最後の的に向かって引き絞り、放つ。命中。
「ろぉおく〜じゅう〜なぁなてぇ〜ん」
 上の下、といった所。結構良い点数だ。まぁこんなものか、と胸中で呟きつつ静流は馬を戻しにゆく。
 その間に真里は自分に気の合いそうな白馬を選ぶと一撫でして鞍上に上がった。
「よろしく頼むよ」
 ひひーんと白馬は嘶きかっぽかっぽと軽快に進んでゆく。先に影野が乗っていた馬だ。上下の揺れが比較的少なく安定している。騎射的には良い馬な気がする。
 源九郎の合図と共に馬に拍車を入れて疾走を開始させる。徐々に勢いを増して、正面より風が打ちつけて来る。
(なるほど)
 真里は先に教えて貰った事を思い出しつつ、弓身の右側に矢を番え鞍上で上半身を左側へと捻りつつ和弓を満月の如くに引き絞る。交差ざま、的のやや左を狙って、放つ。すぱーんと良い音がして矢が一の的の中央付近に突き立った。
 馬を疾走させつつ腰後のえびらより矢を引き抜きつつ、二の的へと向かう。番え、狙い、放つ。命中。三の的、放つ、命中。
「ろぉおく〜じゅう〜てぇ〜ん」
 中の上といった所。なかなか良い点数だ。
 ブロンド緑眼の青年はぽんぽんと馬の首を叩いて微笑し「ありがとう」と労った。ひひーんと嬉しそうに馬は啼いた。
 他方。
「……馬が私の言う事を聞いてくれれば良いのですが……」
 串に通した焼き魚片手に黒馬に跨っている雫が呟く。
――馬刺し馬刺し馬刺し馬刺し醤油醤油醤油醤油生姜ー。
 脳内の奥深くより無意識にそんな単語がリフレインしてくる。
 童女の純粋な想い(食欲)が伝わったのか、黒馬は脅えるように身を震わせて嘶いた。雫はもぐもぐと焼き魚を咀嚼して胃袋に納めると、ぽいと会場に備えられているゴミ箱へと串を放り入れる。
 囁く。
「大丈夫です……今はお腹一杯ですから……」
 春の新鮮釣り立て川魚焼きは香ばしく、なかなか美味であった。やはり塩が決め手だ。(ちなみに何匹かは大塔寺にお裾分けしておいた)
 身を震わせている黒馬を宥めすかししつつスタート位置についた雫は拍車を入れて駆けさせ、ぱんぱんぱんと的を射抜いてゆく。
 結果23点。
「んー、駆けさせてゆく速度も一応審査してるんだよね」
 ゆっくり移動の方が断然中てやすいので、と書記長はそんな事を言った。どうやら、馬が脅えて大人しくなりすぎてしまったのが低得点の原因らしい。
(いつか私にも懐いてくれる動物を飼いたい……)
 無表情ながら何処か悲しそうな雰囲気を漂わせる雫であった。
 他方。
(あれは……伝え聞く流鏑馬!)
 瀬波有火は野原を散歩中、馬上から弓矢を射ってゆく男女の姿を目撃していた。
 その映像を脳内で、馬にまたがり野を駆け矢を射る自分の姿に置き換える。
(やだ、あたしかっこいい……!)
 頬を蒸気させ碧眼を輝かせた赤毛の少女は頬に手をあて息をはく。瞬後、その幻想を現実の物にせんと決意、てってってーというかドドドドドドッという態で以って土煙でも上げそうな勢いで会場へ駆けてゆく。
「やあ有火」
 途中、アウル研究による遺伝子調整により生まれいでた人工生命である青年は、すれ違った自称普通の生まれの少女に声をかけた。
「あれっ、ジョシュア君っ? なにしてるの〜?」
 突撃娘はききっと止まると銀髪赤眼のジョシュア・レオハルト(jb5747)を振り返って問いかける。
「ん、折角のピクニックだし、あの丘を越えて行こうかと。のんびり花のスケッチでもしようと思ってね。この季節なら綺麗な花も咲いてるだろうし」
「へー! ランララランラでいー絵がかけるといいねーっ」
「有火は?」
「あたしはやーぶーさーめー! カッコイイ女になるの!」
「有火、馬に乗れたんだ?」
「なせばなーるー! それじゃそーゆーことでー!」
「グッドラック」
 ひらと手を振る青年へと少女はぶんぶんと手を振り、また駆け出して行った。
 他方。
 じっくり弓を選んだ後、白馬に跨ったフィオナは少し慣らすように歩かせた。騎士家の出身の娘は、馬術の方は幼い頃からの経験もあり慣れたものだ。弓も洋弓なら経験が豊富なのだが、騎馬民族系の弓は歩兵弓とは勝手が違う。
(まぁなんとかなるか)
 トットットッと速歩の一定のリズムで絹の如きブロンドを揺らしつつ開始位置につく。
「ハッ!」
 書記長の合図と共に拍車を入れ猛然と白馬を駆けさせる。風が唸った。ギャロップで疾走する鞍上、長大な和弓を眼前に掲げるように矢を番え引き絞りつつ上半身を左手側へと捻る。狙う一の的の中央、はっしと矢を放つ。イメージ通りに矢は中央をぶち抜いた。
(いける!)
 手応えに傲然と笑みを浮かべつつ素早くえびらから矢を引き抜いて二の的を狙い引き絞る。放つ。矢は快音を立てて中央よりやや右に逸れた。やはり癖が強い。
「なら、これで――」
 三の的に向かう頃には、当たる当たらないは二の次で、馬を駆けさせる事と弓を射る行為そのものが楽しくなってきていた。
「どうだ!」
 放たれた矢は三の的の中央に鋭い音を立てて突き立った。
「きゅう〜じゅう〜いっ〜てぇ〜ん〜」
 91点。文句無しに高得点である。
「ふ、当然の結果だ」
 鞍上のブロンド娘は馬を歩かせ戻ってきつつ得意げに胸を逸らした。
「まー、和洋の違いはあれど弓と騎兵のプロがあれだけ準備を入念にすればねぇ……」
「何か言ったか書記長?」
「いえ何もー。全力で勝負する人は嫌いじゃないですよぼかぁ」
 睨むフィオナへとわはははと源九郎は笑って答えたのだった。
 他方。
「ダイトウジさーん、一回試し打ちってしてみてもよろしいです?」
「あー、今回のはそんな厳格な催しじゃないし、もうやっちゃっても構わないような気もするけど、一応基本は一発勝負で運否天賦を占うって事だからねぇ」
 どーしたものか、といった態で源九郎。
「ですか」
 しょぼーんとするレフニーである。
「それじゃ鎧兜ってあります? あと、良かったらデジカメで撮って貰いたいなって」
「お、本格派だね。こんな事もあろうかと、という事で、貸そう貸そう撮ろう撮ろう」
 ぽいぽいぽいと某青猫型ロボットの如くヒヒイロカネから鎧一式を取り出して源九郎。
 そんなこんなレフニーが準備をしている間に赤毛の少女がやってきた。
「こーんにーちはー! えーと、執行部のー……トーダイジさん?」
「僕が奈良県世界遺産だったらそいつぁちょっと一大事。こちら大塔寺が源九郎だよ」
「あれっ違った? ごめんなさーいあははー」
 頭を掻いて笑って有火。
「そういう君は何者だね?」
「瀬波有火、十五歳? 特技は突撃です! 流鏑馬しに来ましたー!」
「うん、その勢いや良し、好きな弓と馬を選びたまえ」
「わー、お馬さんたくさーんっ」
 どどどどどっと馬達の元へと有火は駆けてゆき、他方、準備を整えたレフニーがスタートラインに立った。
 少女は銀髪を頭の後ろで結い上げ、古式の鎧兜を着込み、栗毛の馬に跨っている。
「いざ!」
 書記長の合図と共に馬を疾走させ、長大な和弓に矢を番え、満月の如くに引き絞り、鞍上より左手側の的へと狙いを定めてはっしと放つ。
「てやーっ!」
 銀髪の少女弓騎兵は凛と掛け声も勇ましくスパンスパンと馬を疾走させながら的を射抜いてゆく。
「――結果は?!」
 最後の三の的を射抜いた女武者は手綱を引いて馬首を巡らせつつ計測員へと振り向いた。
「ごぉ〜じゅう〜ろぉく〜てぇ〜ん」
 中の上、といった所か。
「うーん、上位には入れませんでした……」
「利き腕じゃない方で射ったにしては良い結果じゃないかな。写真はなかなか凛々しく撮れたと思うよ」
 源九郎は借りたデジカメを返しつつレフニーへとそう言った。液晶には古式鎧に身を包み的を睨んで弓矢を引き絞っている態勢のレフニーが映っている。
「わー、ダイトウジさん、今日はありがとうでしたよ!」
 銀髪の少女はデジカメを受け取り鎧兜を返却する。
 他方。
「ふむ、斬新な遊び方だね」
「ダイトージさーん〜! あそんでなーい!」
 瀬波有火は落馬していた。何度やっても落っこちて、ころころと草原を転がる。
「うーん、撃退士なら大丈夫だと思ってたんだけどねぇ……こっちの馬は?」
 と比較的気性の大人しい馬で試してみるも、
「ぐぬぬ、みんなかっこよく出来てるのに!」
 また鞍上から転げ落ちて、赤毛の少女はダンダンと手の平で草原を叩いて悔しがる。
(このままじゃ乙女のプライドが許さない!)
 きっ、と顔をあげた有火は言った。
「そうだ! ダイトージさん、スレイプニルちゃん貸してください!」
 馬はダメだったけど召喚獣ならいける!気がする! そんな考えである。
「…………召喚獣で騎乗戦闘を行うにはクライムってスキルが必要なんだ」
「えー!」
 残念だが事実である。
「ア、アタシ、流鏑馬できないのかな……」
「仕方無い。あれだ、僕がスレイプニルをクライムして支えるから君は同乗して撃て」
「むー、子供乗馬みたいでいまいち格好悪い……」
「まぁしょうがないね」
 そんな訳で、二人乗りで蒼炎のスレイプニルに騎乗して草原を駆けつつ和弓を構え、バシュバシュバシュと的に矢を中ててゆく有火だった。
 なお、
「やったー! 全部中ったよー! 得点は?!」
「20点」
 馬術も評価のうち、との事。
 最下位を獲得した有火はがくりと項垂れたのだった。


「……あ、だからこうなってるんだ」
 ジョシュアは緑の葉の上に咲く鮮やかな紫色のスミレを鉛筆でスケッチブックの白い紙に模写していた。
 スケッチの理由は、ただ花という一つの「生物」に興味があったからだった。
(生物の構成、命の在り方……)
 今までにない概念を治癒術に応用出来れば、姉の身体も癒せるようになるかもしれないと。
 もっとも、それまで己の肉体が保てばの話だったが。
「それにしても……こうした陽気の良い日は眠くなるね」
 うーんと作業もそこそこの所で背伸びして青空を見上げる。
 有火は馬に乗れたかなー、なんて思いつつ、また模写に戻るのだった。
 他方、桜木真里もまた丘上に移動していた。
 寝転んで目を閉じのんびりとしている。春の風がそっとそよいで草花を揺らしていた。
(風が気持ちいいな……)
 思う。
 ここは戦場ではないけれど、いつかはそうなってしまうかもしれない。
 ここに限らずどこにしても。
――平穏を守るために頑張ろう。
 青年はそう思ったのだった。
 他方、同じく丘上ではファティナがうつらうつらしだし、今は茜の膝を枕にして眠りに落ちていた。日頃の疲れが溜まっていたのかもしれない。
「ん……」
 春の陽光はぽかぽかと暖かく膝は柔らかく風は穏やかだ、快眠するファティナである。
「御休み中ですか」
「あら、雫さん」
 丘上に登って来た雫は先に釣った魚を茜にもお裾分けする。
「今日は手ぶらですので、後日に学園で手合せをお願いできますか?」
「ええ、良いですよ。その時はよろしくお願いいたしますね」
 にこっと微笑して会長は答えたのだった。
 他方。
(職業撃退士過ぎて、そういえば学校の授業も寝てばかりだし、部活も帰宅部だったりで実は学校の事分かってなかったりして……生徒会っていうと奪都の南収容所戦で助けて貰った記憶位かな)
 とそんな状態だった天羽 伊都(jb2199)は、これを機会に生徒会の面々と仲良くしてみたく思い、骨休めもそこそこに、まず大鳥南に絡んでみた。
「……これは?」
 天羽から渡された円形チョコレートを摘み眉根を寄せてしげしげと見つつ大鳥南。
「五円チョコでーすっ! 他にも色々ありますよっ♪」
 ずらーと駄菓子屋のお菓子や五十円コーラなど丘上のシート上に並べて少年。本日は白のパーカー、デニムのハーフパンツ、スニーカー姿である。あの漆黒の獅子鎧の中身は、実は明るくお調子者な中学三年生の少年であったらしい。
(確かお金に五月蝿い人だって聞くからー)
 という事で、五円チョコ他あれこれ上げれば喜ぶんじゃないかと思い、これらを渡して取り入る――いや仲良く話してみよう、という作戦である。
(モノで人の興味を引く、仕事でも有効な作戦だよね……)
 何処か大人びた表情でふっと胸中で呟く少年。しかし、十八歳の女子大生相手に駄菓子屋ラインナップはどうなのか。
「あんた、面ろいやっちゃなぁ」
 ブラウンの瞳をぱちぱちと瞬かせて不思議なものでも見るかのように大鳥南は天羽を見つめて来た。
「あはー、よく言われるかもしれませんー?」
 はっはっはーと少年。まぁ取り合えず興味は惹けたようだった。


 草花が風に揺れている。
 黒百合(ja0422)は草原に横たわりぼぅっと青空を見上げていた。
(私があの時、余計な事を言わなければ、あの子と今だに戦い続けられていたのかしらァ……)
 赤い翼の銀髪の天使。サリエル・レシュ。
 あの時、視線を交わした瞳もまた、この空のように青かった。
 仮定の話。
 結果は複数の要因が互いに影響し合い、束ねて導き出される。
 けれども、もしも、その一つがなかったら――
――運命は、どんな絵を描いたのだろう。
 春の柔らかい風だけが頬を撫でてゆく。
「……IF、を考えるなんて私らしくないわねェ……」
 黒髪金瞳の少女は、くすくすと笑いながら額を手で抑え嘆息した。


 飛鳥は透次を探して丘を降りていた。周囲を見回す。いない。何処へ行ったのだろう。
 彼は何か無理してるように見えて心配で、
(……あいつの心の隙間も埋めてやれない自分に私は苛立ってる)
 その自覚すら出来る程に。
(何処にいったの)
 足早に、急かされるように、気付けば走っていた。
(――居た!)
 川へと向かって急斜面で降り始めるその地点、野原に佇む岩に腰をかけて、陽波透次はぼうっと川を眺めているようだった。
――何も出来なくてもせめて傍にいてやりたい。
 そう思うけれど。
 少女の足は止まっていて、ただ、ただ、立ち尽くして、青年の姿を見つめていた。
 彼方から川のせせらぎが静かに聞こえていた。


「――俺が知ってるのはこれくらいだな」
「そうか、有難う」
 丘南の斜面。イスカリオテに詳しい小田切ルビィ(ja0841)はかの男について尋ねにきた月詠 神削(ja5265)へと基本的な所を答えていた。
「何故、イスカリオテを?」
「とどめを刺したわけじゃないが……サリエルの最期の瞬間、その心をへし折ったのは多分俺だ」
 月詠はそう答えた。
「それが今のイスカリオテの暴走の原因の一端になっているのなら――」
「……なるほど、だが、その辺りは本人に聞いてみないと解らない部分だな」
 なんせ緒戦でサリエルの技を引き出して攻略法を確立し、最後の戦いでも紅爪で死地に叩き込みサリエル討伐という点では戦功第一位ともいえる陽波透次へ言った言葉が「貴様なんぞは砂塵の一握」だった。ルビィはその言葉を実際に耳で聞いていた。
「そんな事を……そうか、世話になった、それじゃ」
「あぁ」
 青年の背を見送るとルビィは再びシートの上に、己の腕を組んで枕にして寝転がった。
 そっとその赤眼を閉じる。
 月詠には教えていない事もあった。
 瞼の裏で、行方不明中の父親とイスカリオテの姿が重なった。
――イスカリオテはルビィの父親と何処となく似ていた。
 その事実はみだりに他人に言う事でもないかと伝えていなかった。
「写真すら無えんだモンな……」
 夢の中でしか想い出せない、朧気な記憶。
 戦場カメラマンであったルビィの父は、多くの風景や人々の姿をフィルムに遺したが、皮肉な事に自身の姿を遺す事はなかった。
 そんな時、懐かしい面影と共に現れたのがイスカリオテだ。
――恐るべき強敵だが、憎む気にはなれない。
 それ処か、何故か胸が痛かった。
「……俺もまだまだガキって事か」
 ルビィは口元に自嘲の笑みを浮かべると目を開いた。
 天の蒼穹の一点を睨む。
「……いつか、灼熱の怨嗟から解き放ってやる。――それまで待っていろ、イスカリオテ・ヨッド」
 太陽の光線が煌と一条、瞬いた。


 野を歩く月詠、不意に脳裏を銀髪天使を袈裟に叩き斬った光景がよぎり、大剣を出現させると漆黒の闇を纏わせ虚空を一閃して斬り裂いた。
「……後悔はしてねぇよ」
 後悔はしていない。
 あの幼天使を斬ったことは。
 ただ、
「……俺だけが特別に何とかすべきって事じゃないんだろうが……何とかすべき、とは思うよな……」
 集めた情報から判断して青年は呟き、剣を消すとまた、春の日差しの白く明るい闇の向こうへと歩いて行った。


「余計なお世話かもしれないけど大塔寺さん、ムリしないでね?」
 フレイヤは流鏑馬会場の大塔寺を尋ねていた。
「いや無理なんて全然、大いに楽しんでますよ。人が射っているのを見るのもなかなか楽しい」
「うん、今はそうよね。それじゃなくて」
 視線を向けてくる青年にフレイヤは答えて言った。
「コミュニティって嫌われ者が必要だから、時にはそう振る舞ってる感じもするし――私はおバカな事してる大塔寺さんの方が好きよ? まぁ私自身頭悪いから作戦とかさっぱりだけど、一緒に笑ってあげる位は出来るから。なんかあったら連絡頂戴よね、そんだけ!」
「あぁ、その辺の事か……有難う、貴女は良い人だな」
 源九郎は多少驚いたようで、
「だけどその意味でも、ぼかぁ無理している訳じゃあない。大体は素だし、そういう時があるのだとしても、僕自身が必要だと思うからそうしているだけさ。ぼかぁ勝手人間なんで、だから気楽なものなので、だから心配する必要は無い。ぼかぁ会長達とは考え方が違う。倒れた奴は見捨てていく、でなければ共倒れになるからだ、だから君も僕が倒れたら見捨てて行け。それでもそういう優しさを向けるのならば、それは僕のような人間にではなく、もっと他人に気を遣って生きてる連中に向けてやるべきだ。ただま、お気遣いは有難く」
 そんな事を言った。


「……大丈夫ですか?」
 ソプラノの声が響き、目を開くと強羅 龍仁(ja8161)の前に黒髪の娘が居た。
「……俺の事は気にしなくていい」
「でも先程からずっと――」
「良いんだ。時期に良くなる」
 顔色の悪い壮年の男は放っておいてくれ、と言外に述べた。
「……何かあったらすぐおっしゃってくださいね」
 生徒会長は心配そうに龍仁に一礼するとまた彼方の皆の方へと歩いていった。
(…………大丈夫かと思ったが……)
 心を乱す原因は龍仁にはわかっていた。だが割り切る事が出来ないでいる。
 静岡は――龍仁の妻が天魔に殺された地だった。
 戦闘中は集中している為に気にしなかったが、平時の今は平常心でいる事が出来ない。
 妻を見捨て逃げた。
 その思いを男はずっと引き摺って生きてきた。
 ここに来てその思いが更に強くなっている。
(俺が許される事は無い……)
 だが、
(いつか……いつか……息子とこの地を踏む為に……その為になら俺は……)
 男は、静岡を開放する為に戦う事を、新たに心に誓った。


 丘上へ戻らんとする途中。
「……貴女ァ、あの子と過去に戦ったのよねェ……」
 不意に、声がした。
 振り返るとそこには、黒髪金瞳の少女が今にも獣が飛びかからんとするかのように、前傾の姿勢で睨みつけてきていた。
(あの子……)
 静岡の大戦の決着時の戦いの様子について、報告は受けている。誰の事を言っているのかは、神楽坂茜にはすぐに解かった。サリエル・レシュは茜にとって――そう、宿敵だった。黒服の青年が幻視したような笑顔は二人の間にはなく、現実としてあった繋がりは、冷たく熱い血色の刃だ。
 黒百合は言った。
「ねェ、貴女なら私の心に開いた傷跡を満たしてくれるゥ……満ち足りた戦いの興奮を与えてくれるのかしらァ……」
 金色に開かれたその瞳は、獲物を見る瞳だった。
「……貴女は」
――悲しいのですか。
 その言葉を呑み込み神楽坂茜は黒百合を見つめた。茜とサリエルの立場は敵同士だった。黒百合と茜は立場としては味方同士だったが、黒百合はサリエルが好きだった。多分、憎いのではないのだろう。
 行き場がないように見えた。
「…………貴女の傷がそれで癒えるのなら、何時でも来て」
 濡れ羽髪の少女は黄金の瞳の少女へと凛と静かに告げた。
「言葉でも、剣でも、望むもので応えます」
 思う。自分が刃を交えれば、目の前の少女は笑ってくれるのだろうか。


「早く、こんな事、無くなってしまえばいいのに」
 機嶋結は呟くように会長へと言った。最近の情勢は色々ときな臭い話も多く、肉体的にも精神的にも大丈夫かと心配だった。
「大丈夫ですよ」
 茜は微笑して機嶋の頭を撫でてきた。
 童女はそんな女を見上げて言う。
「……前に会長、仰っていましたね」
 天魔が仲良く暮らす世界。そんな夢物語。
「私は悪魔が嫌いです。……でも、貴女は天魔を受け入れる」
 茜の動きが止まった。
「誰もが憎しみを振り切る事はできない。……そんな人は、貴女の夢の世界では不必要なのですか?」
「私は……」
 会長は少しの間の後、しゃがみ込むと機嶋を見つめて、柔らかく言った。
「――私にとって機嶋さんは必要です。妹みたいに愛しています。幸せになって欲しいな、と思います。目指す世界にとっては……憎んで、天魔というだけで無条件にいたずらに攻撃して回るなら……それは確かに必要性はないのかもしれません」
 けれど、と女は言う。
「私は、機嶋さんが天魔だからただそれだけの理由で学園に暮らしているような天魔の方に斬りかかったり積極的に傷つけようとした所を見た事がありません。聞いた事もありません。いたずらに他を攻撃して回る天魔や人にのみ刃を向けるなら、それは防衛力であり、必要であると答えます。貴方が憎んでいるのは、どんな天魔ですか?」


「皆すっかりお昼寝ね」
 シート上でなつかしの駄菓子を並べて談笑していたナナシは、春のぽかぽかとした陽光に全滅している周囲を見回してくすっと笑った。
「あ、神楽坂さんお帰りなさい……大丈夫?」
 丘上に戻って来た少女は、何処となく元気がなさそうに見えた。
「問題ありません。あれです、ちょっと食べ過ぎたのかもしれません」
 茜はあはと頭を掻いて笑った。
 ナナシはちょっと考えると、正座して手招きしぽんぽんと膝を叩いた。
「……寝ろと?」
「そ、特別よ」
 笑って言う。
 膝枕してやると黒髪の娘はぼけーっと空を見上げているようだった。
「神楽坂さん、私も貴方の事が好きよ」
 ナナシは言った。無論、友情的な意味でだが、まぁそれは言わなくても大丈夫だろう。
「貴方の夢を私も一緒に叶えたい。
 だって貴方の夢は私の夢でもあるから。
 いつか天魔と人とが当たり前のように手を取り合える世界を。
 約束するわ。
 たとえ百年が過ぎて貴方が居なくなったとしても、
 私の命の限りこの世界を守り続けて行くと。
 貴方の想いは、
 きっと未来に繋げてみせるから」
 告げると、茜は目を閉じて手で額から目蓋にかけてを覆った。
 ナナシは訝しんだが、ちょっとしてから気付く。
「……な、泣いてるの?」
「……御免なさい。嬉しくて」
 会長はそんな事を涙声で言った。


「流れる水面と吹き行く風」
 雨宮歩は川辺でレジャー用の椅子に腰かけ、推理小説の文庫本片手に釣り糸を川に垂らしていた。
「なるほど、今日は良い日だぁ」
 光は大いなる蒼穹で穏やかに輝いている。
 川の水は絶えずして止めどなく流れて行った。


 了


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:18人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
撃退士・
天風 静流(ja0373)

卒業 女 阿修羅
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
Silver fairy・
ファティナ・V・アイゼンブルク(ja0454)

卒業 女 ダアト
歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部9年1組 男 アストラルヴァンガード
今生に笑福の幸紡ぎ・
フレイヤ(ja0715)

卒業 女 ダアト
秋霜烈日・
機嶋 結(ja0725)

高等部2年17組 女 ディバインナイト
意外と大きい・
御幸浜 霧(ja0751)

大学部4年263組 女 アストラルヴァンガード
戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
撃退士・
久遠 仁刀(ja2464)

卒業 男 ルインズブレイド
『天』盟約の王・
フィオナ・ボールドウィン(ja2611)

大学部6年1組 女 ディバインナイト
金焔刀士・
陽波 飛鳥(ja3599)

卒業 女 阿修羅
撃退士・
雨宮 歩(ja3810)

卒業 男 鬼道忍軍
釣りキチ・
月詠 神削(ja5265)

大学部4年55組 男 ルインズブレイド
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
真ごころを君に・
桜木 真里(ja5827)

卒業 男 ダアト
撃退士・
強羅 龍仁(ja8161)

大学部7年141組 男 アストラルヴァンガード
黒焔の牙爪・
天羽 伊都(jb2199)

大学部1年128組 男 ルインズブレイド
誓いを胸に・
ナナシ(jb3008)

卒業 女 鬼道忍軍
バイオアルカ・
瀬波 有火(jb5278)

大学部2年3組 女 阿修羅
白炎の拒絶者・
ジョシュア・レオハルト(jb5747)

大学部3年303組 男 アストラルヴァンガード
遥かな高みを目指す者・
九条 静真(jb7992)

大学部3年236組 男 阿修羅
宛先のない手紙・
志摩 睦(jb8138)

大学部5年129組 女 ナイトウォーカー