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マスター:望月誠司
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
形態:
参加人数:10人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/04/10


みんなの思い出



オープニング

 京都、宇治川、撃退士側の本陣。
「……状況は?」
 プレハブの本部で鬼島武が問いかけた。
「最悪は免れました」
 儀礼服に身を包んでいる青年が答えた。
 大天使と使徒が率いる一大反撃部隊の攻勢を受けた西要塞は、部隊長が倒れるなどあわや陥落かと思われたが、残存の撃退士達が奮闘し一時後退させる事に成功した。その際に使徒を討ち取るという殊勲をあげている。
 ダレス部隊が退いた事により、救援隊の包囲殲滅を慣行していた米倉も挟撃を受けるのを恐れたのか、途中で包囲を解いて一度離脱している。
「しかし、それでも包囲を受けていた救援隊は半数が討ち取られています。それに一度後退したダレス隊ですが、ほぼ無傷だった米倉部隊と合流すると西要塞へと再度の猛攻をかけています……今は奮戦あってなんとか凌げていますが、このままでは」
「……長くは保たん、か」
 鬼島は眉を顰め、低い声で呟いた。
 その時、扉が開かれ部屋に眼鏡をかけた青年が入って来た。書記長の大塔寺源九郎だ。
「やぁ状況は聞いたよ。厄介な状況になってるね」
 本陣に帰還した参謀は言葉とは裏腹に平然とした様子で言った。
 鬼島が視線をやると大塔寺は答える。
「半数を失ったのは痛いけど、使徒を潰せたのなら痛み分け程度には悪くないだろう。普通に考えれば、大天使も使徒も健在で西要塞が陥落し、救援隊は殲滅されていた事態だったのだからね。普通よりも随分と良い。厄介な状況ではあるけどね」
「痛み分け、か」
 鬼島武が呟いた。親衛隊員十五名の命と、敵の片腕たる使徒の命の交換。戦力で見るなら、源九郎の言う通りなのだろう。しかし、脳裏をよぎるのは、帰ってこない面々の顔だ。
 苦楽を共にしてきた仲間達。
 戦いは畢竟、殺し合いだ。血を血で贖う。源九郎はそれを知っているのだろう、しかし。
 鬼島は瞳を閉じて唸った。そもそも、敵の狙いを見抜けなかった自分の責任だ、これは。
 息を吐き、目を開く。言う。
「……西を助けなければならない。何か良い考えはあるか?」
「西は放っておいて、一気に大収容所を攻めよう」
 源九郎はそう言った。
 場の一同が一斉に青年を見た。
「まぁ最後まで聞いてくれ、西の連中を助けたいんだろう? 敵というのは振り回すものであって、こっちが振り回されるものじゃない」
 源九郎はボードの前までゆくと地図を指差し、図面上に置いた指先を滑らせる。
「天界軍は、あれだけの戦力を西に割いた。敵だって無限の兵力持ってる訳じゃないだろう、指揮官や精鋭はほぼ出払っていると見て良い。中央の守りは、薄くなっている。今まで踏み込めなかったのは、ダレスが中央で構えていたからだ。そのダレスが精鋭を引き連れて西に張りついたなら、こちらは南からこう中央へ踏み込めば良い。
 敵味方には失えない場所というのがある。この京での戦いにおいて、敵側のそれは市の中心部にある大収容所だ。
 大収容所に囚えている市民を救出すれば、敵はこの地にゲートから精神の収穫をあげられなくなる。収穫が出来なくなれば、ゲートを張っている意味の大半を彼等は失う。
 故に、大収容所へと攻め込めば、ダレス・エルサメクは必ずそれを阻止せんと守りに戻って来る筈だ。そこをこちらに有利な態勢で待ち構えて叩く」
 どんと、源九郎は拳を図面にあてた。
「西を助けたいなら、馬鹿正直に西へ救援に向かうんじゃなくて、それよりも敵の急所を殴りにいけば良い。それで西要塞から敵戦力を引き剥がせると同時に、こっちに有利な条件でカウンターできる、一石二鳥だ」
「……もし敵が中央へ戻らなかったら?」
「僕等からしてみりゃ、大収容所の市民を救出できるのなら、西要塞を引き換えにくれてやっても全然構わない。むしろその方がプラスだ。僕等は市民を救出する為に、戦っているんだからね」
「……その際には、西は見捨てると?」
「ある程度引きつけさえしてくれれば西要塞を放棄して逃げて貰って構わないさ。ただ、その上で、僕から言わせてもらうと、あれも可哀想これも可哀想で結局何も出来ずに全部を無駄死にさせるのが一番酷いと思うけどね」
 鬼島は沈黙し、やや経ってから言った。
「…………敵に狙いを読まれる可能性は?」
「米倉創平と合流してるならまず気付くだろう。けれども、その為の大収容所攻めだ。解かっていても乗らざるをえない。彼等はそこを絶対に失えない。そして、終点が解かってるなら、どう動いても嵌め殺せる。動かないなら、構わず収容所を陥とせば良い」
 その言葉に対し鬼島が言った。
「理屈は解かった……だが、現実問題、実際にそれを実行可能に出来るだけの戦力を捻出できるか?」
「この際、本陣を空にするぐらいで良いと思うよ? 南西と南東には一部隊張りつけてあるから、横を突かれる心配はほぼない。東はこっちが抑えている。北東も押しこんでくれてる筈だ。対大天使は学園から会長送って貰うように依頼しといたからなんとかなるだろう。今のダレスは片腕が使えないって話だしね」


 二千十三年、三月下旬、京都を巡る戦いにおいて。

 米倉部隊と合流し西要塞へと再度の猛攻をかけるダレスの動きに対し、本陣に構えていた鬼島武は源九郎の策を採り、神楽坂茜が到着するとおよそ六十余名の撃退士を引き連れて出撃、京都市の中心部目指して北上した。
 狙いは市の中心部に存在する大収容所である。
 途中、先に陥落させた南要塞の守備兵の一部も合流し百名近くまで膨れ上がった撃退士達の集団は、四つある大収容所のうち南側の物を陥落を目指して市内を進んでゆく。

 市民を囚えている大収容所は天界軍にとっても重要施設であり、この状況においても五〇体程のサーバントが守備についていたが、それでも神楽坂茜や鬼島武を含む百名の撃退士を防ぎ切れる程の戦力ではなかった。
 元より、大収容所は四つあり総てを重点的に守れる訳ではなかったので、危急の際には八要塞と中京城からの援軍を前提とした防備である。
 しかし、南の大収容所を守っていた南要塞は既に陥落しており、中京城の虎の子はダレス・エルサメクが率いて西へと出てしまっている。防御機能は低下していた。

 この動きに対し、西要塞を攻めていたダレス・エルサメクは米倉創平と共に大収容所陥落を阻止せんと東へ取って返そうとしたが、先の戦いでダレスを撤退させた事により、救援隊の残り十五名は生き延びて西要塞に入っており、秋津らも回収されて重体の身ながらも指揮に復帰していた為、西要塞の戦意は高かった。特に救援隊の生き残り達は復讐に燃えていた。

 この状況でただ踵を返せば天界軍は背後からの猛撃を受けるのは火を見るよりも明らかであった。
 ダレス・エルサメクは次善策としての米倉創平の言を容れ、部隊は再び二つに分割され、米倉が殿として三十体のサーバントと共に西に残り、ダレスが残りのサーバント集団を率いて東へと急行した。
 ダレス隊の数は四〇程度だったが、サブラヒナイト、ファイアレーベンを中心とした精鋭である。

 大塔寺は収容所に籠るサーバントへ牽制に鬼島等の四〇名をあてて封じ込めんとし、神楽坂等の五〇名を西からやってくるダレスの迎撃へとあてた。
 その一方で、十名ばかりを密かに南に回して伏勢とした。

 ダレス隊と神楽坂隊が激突し、激しい戦いが繰り広げられる中、その横を突く形で、決定打としての役割を任された十名の撃退士達が動き出そうとしていた。


リプレイ本文

 正面部隊が互いに激突している最中、激突点より南方に密かに伏兵として配置についている十名。
「強襲になる可能性がありますかね……」
 仁良井 叶伊(ja0618)が呟いた。
 強襲とは、その攻勢に対する備えの有る敵に対して仕掛ける攻撃であり、突然横合いから沸き出て不意打ちする場合には作戦的には奇襲と言う。奇襲する為には、敵に備えを与えない必要があり、故にこちらの動きを気取られない必要があった。
「確実に奇襲を決める為にもタイミングは重要よね」
 と言うのはナヴィア(jb4495)だ。仕掛けるぎりぎりまでは、敵に察知されるのは避けたい。
「そうですね。正面の味方と激突しているとはいえ出来るだけ注意して接近しましょう」
 機嶋 結(ja0725)がその言葉に頷く。
「遮蔽物を利用して、あと足音も出来るだけ抑えて」
 地上で鍔迫り合いをやっているサブラヒナイトに余裕はないだろうが、空を飛んでいる連中は視界が広い。
 何も考えずに出ていったら気付かれる可能性は普通にある。ここで躓くと優位を十分に発揮できなくなる。奇襲を仕掛ける為には、敵に気付かれないようにする、というのは最重要項目の一つだ。
「状況的に……広域殲滅からの各個撃破も有り得る危険な賭けですけど、出来る限りの事をやりたいと思います」
 仁良井はそう言った。ダレスには圧倒的火力を誇る広範囲攻撃がある。開幕で使わなかった以上、使い所は選んで来るだろう。その選択権を持つのは自軍でなく敵だ。切り札を仁良井達に向けてくる可能性は十分にあった。
「大天使を迂闊に追い詰めすぎると纏めて吹っ飛ばされかねませんから……手は出したくないですね」
 男はそう、所感を述べた。
 他方。
(あの使徒は逝ったのね……)
 鴉女 絢(jb2708)は打ち合わせに耳を傾けつつ思う。西要塞の攻防において、この右目で左目を奪った相手は、先の戦いで討たれたらしい。
「それじゃあ次はあの天使ね……」
 ぽつりと呟いた。天使、天軍を殺すためなら我が身の無事など問いはしない。
「……鴉女さん?」
 水葉さくら(ja9860) がおそるおそるといった様子で呼びかけた。仁良井も言っているが、下手にダレスに手を出すのは危険だ。
「解ってる、早々に無茶はしないよ。まずはサーバントを倒さないとね」
 鴉女はそう笑顔を見せて答えた。
 フラッペ・ブルーハワイ(ja0022)はそんな一同の様子を眺めながら胸中で呟く。
(天使と、悪魔と、人間と……何が、誰が正しいかっていうのは一先ず置いておくとするのだ……)
 帽子のつば摘み深くかぶり直す。
(……走る時に枷になっちゃうし……)
 疾風のように軽やかに、吹き荒れる嵐の如くに激しく。最速こそが信条だ。速度を尊ぶ。
 重い荷物は、動きを鈍らせる。
 だから。
 しかし。
 それでもちらつく考えを、女は首をふって追いやった。戦いに集中だ。
「お空ではあのこわぁい天使とかいるけど……生徒カイチョーさんがいるから、だいじょぶだよねっ」
 新崎 ふゆみ(ja8965)はお気楽そうな調子ながらも微かに不安を滲ませた表情を浮かべている。
 ダレスは現在本調子ではないので、恐らくは大丈夫だろうという話だったが。
「ただ、会長が危なくなったら援護はした方が良いと思うかな」
 鴉女はそう言った。
「余裕があったらレーベンを牽制して支援するのが良いかもしれませんね」
 と頷いて水葉。
「レーベンは魔封じの領域があるから、落としていきたい所ね。でも無暗に大天使に狙われるようなことは避けたいわね」
 レヴィアはそう言った。やはりダレスがどう動くのかが問題だろうか。
「生徒会長がダレスを引き付けている間に、どこまで敵を減らせるかが勝負の鍵って訳だな」
 千葉 真一(ja0070)が状況をまとめるように言った。天秤をこちらに傾けることが出来れば、全体的な流れを引き寄せられるはず、と。
 かくて、撃退士達は手筈を打ち合わせると北へと向かう。
「せっかくの京都、しかも桜の季節やのになぁ……」
 亀山 淳紅(ja2261)が行軍しながらぽつりと呟いた。
(京都か……そういえば初かもな)
 その呟きを耳に拾い、桝本 侑吾(ja8758)は胸中で呟く。
 桝本の周囲では彼自身というよりは、先輩等が拘っていた、京都には。
 これが、間接的にでもいいから、少しでも手助けになればいいと、剣を手にして男は思った。


 京都。
 碁盤目状に交差する道、その一画、およそ70m程の高さの高層マンションの、道路に面した庭、舗装された敷地内で、十体の木乃伊武者と十五名を数える撃退士達が激しく激突していた。
 前衛と後衛とに分かれて展開し数で勝る撃退士達だったが、強固な装甲を持ちさらには対物障壁を纏うサブラヒナイトに対して攻めきれていなかった。
 空では大天使ダレス・エルサメクが生徒会長の神楽坂茜と高速で飛行しながら斬り合っている。空には他に焔をまとった大鴉、ファイアレーベンが三羽あまり展開していて、地上の撃退士達の後衛に迫り魔法攻撃を封じているのも、撃退士達が攻めきれていない要因の一つだった。
 この戦域に南側より密かに迫った十人の撃退士達は、物陰に身を隠しながら進み、それぞれ所定の位置へとついた。
 既に目前の敵との戦闘に突入している大天使やサーバント達は、十名の撃退士達の接近にはまだ気付いていない――ように見えた。
 奇襲に先んじてふゆみは縮地と闘気開放を発動させた。「よーし、ふゆみ、フクヘーとして、がんばっちゃうんだぞっ★ミ」というノリである。
 他方、同じく闘気開放を持つ千葉だが、チャージアップすると目立つので、突撃と同時に発動させる予定のようだ。曰く「下手打てば味方全体に影響し兼ねないからな」との事である。待機。
 合図と共に、最初に仕掛けたのは水葉だった。
 マンションの四階に登っていた少女は、一度敵の分布を確認すると、狙いをレーベンの魔封じの範囲外である南端に定めた。
 一度後退してから助走をつけて通路を駆け抜ける。通路端の柵が迫った所で意を決して踏み切り、一気に跳躍して柵を飛び越えた。
 高所から跳び下りた少女の身は、放物線を描きながら宙を落下し、重力に引かれて加速度的に落下速度を増してゆく。
 風が唸る音が聞こえ頬を冷気が打ち、地面が勢い良く迫り、撃退士が繰り出す神聖槍と激しく太刀を打ち合わせているサブラヒナイトの姿が急速に迫った。
 少女は宙で身をしならせて杖を振り上げると、杖先より白く眩く光を噴出、収束させて光の刃と化した。アウルを全開にパールクラッシュを発動、渾身の力を篭めて振り下ろす。側面上空からの奇襲だ。
 地上の木乃伊武者は上空でも神楽坂茜が飛行している北の方角なら多少、警戒はしていただろう。だが、その逆となる南側までは流石に意識が回っていなかった。
 高所からの落下により著しく加速し、自重の全てが乗せられた光の魔刃は、狙いたがわず、がら空きの武者の頭部に炸裂し、武者の兜を泥の如くに叩き割り、さらにその下の頭蓋をもかち割って、深々と首元までに食い込んでようやく止まった。少女は着地の勢いのままに引き斬り、光刃が抜けて武者が倒れる。生き残れている訳がない。必殺の一撃。
 ディバインランスの撃退士が、ぎょっとしたように水葉を見た。
「――味方です。上から失礼いたしました」
 水葉は何処かおどおどとした表情と態度でそう答えたのだった。
 他方。
 他メンバーも物陰から飛び出して仕掛けている。
 大きく距離を取っているフラッペは、スナイパーライフルの銃床を肩の付け根にあてて固定し構えていた。
 スコープを覗き込み、激しく機動しながら撃退士と斬り合っているサブラヒナイトの背中を照準に納める。
 外すと味方に流れ弾が飛ぶ恐れがある。
 外せない。
 呼吸を止め、敵の動きを予測しつつ良く狙いをつけ、寒夜に霜の音を聴くように、引き金を絞る。発砲。偏差射撃。
 アウルが銃身に集中し、弾丸が宙を裂いて飛び出した。敵の意識外からの射撃。ライフル弾は螺旋状の回転を帯びながら真っ直ぐに飛び、唸りをあげて木乃伊武者の背に直撃した。
 対物障壁が展開するも、クリーンヒットした弾丸は、障壁を貫通してその強烈な破壊力を解き放った。
 ライフル弾の強烈な衝撃力に武者がよろめき、正面で斬り合っていた黒髪の撃退士がすかさず剣に闇を纏わせ一閃し、一撃を叩き込んだ。
 一方、亀山もまた、紅光を纏い宙に彗星のような朧の残光をひきつつ物陰から飛び出している。
 フラッペの射撃でサブラヒの体勢が揺らいだのを見ると標的を合わせ、紅革張りの楽譜を翳した。宙に図形楽譜の形の光の陣が浮かびあがる。青年はアウルを集中させると旋風を解き放った。風の旋律。
 逆巻く魔力の風がサブラヒナイトの足元を薙ぎ払い、強烈な破壊力がサブラヒナイトの態勢を大きく崩させる。
 好機を見て取ったナヴィアが戦斧を振り上げて突進してゆく。
「最初から飛ばしていくわよ」
 緑髪の女は光纏と共にオーラを噴出させると薙ぎ払いを発動、噴出した闇が斧刃に纏わりついてゆく。
 一気に戦斧間合いまで飛び込んだナヴィアは、突進の勢いを乗せて長柄の戦斧を袈裟に振り下ろした。闇を纏ったの肉厚の斧刃がサブラヒナイトへと迫り、朦朧状態のサブラヒナイトは反応出来ず、刃が素通しで炸裂した。レート差が乗った凶悪な一撃に対し、対物障壁が展開するも鎧が大きく陥没して破砕され、さらに闇が鎧武者に絡み付いて武者の動きを阻害してゆく。
 同じ前衛のナヴィアに追随していた桝本は、闇に束縛されて完全に動きが止まったサブラヒナイトの側面へと踏み込むと、装飾が徹底的に排除された無骨な大剣を振り上げた。
 全体の流れに乗せて標的を定め、自らの動きもまた、勢いに乗せて放つ。『レッセクーラント(流れに任せる)』と銘打たれた無骨な剛剣が風の間を徹すように一閃され、木乃伊武者の首が跳ね飛ばされて宙を舞った。首無しの胴体が崩れ落ち、やや経ってから宙を舞っていた首も地に落ちる。そのまま動かなくなる。撃破。
 他方。
 仁良井は進路を確保する為に、友軍撃退士と斬り合っているサブラヒナイトを標的に定めると、セレネで殴りつけるべく間合いを詰めてゆく。
 サブラヒナイトは、迫ってくる音に気付いたか、首をわずかに動かし仁良井の姿を視界の端に捉えると、青年が杖を振り下ろすのに合わせて振り向きざまに太刀を振り上げた。杖と太刀が激突して激しく火花が散る。確かに、真っ直ぐ駆け寄って殴るだけだと、完璧な奇襲を決めるのはちょっときつい。物陰からは距離がある。
 味方の動きに合わせるべく動いていた新崎が、高い機動力で素早くその側面に回りこむように踏み込んだ。
「ふゆみだって、カタナ使えちゃうんだぞっ」
 言葉と共に日本刀を一閃。曰く、どっちが強いか、ショーブだあっ☆彡 である。ノリは軽いが阿修羅の少女の太刀は重い。鮮やかな朱色の刃は、闘気を纏って赤雷の如くに奔り、仁良井と刃を合わせているその鎧武者の側胴に炸裂した。対物理障壁が展開するも、薙ぎ払いの猛烈な衝撃が突き抜け、木乃伊武者の意識が空白になる。スタンだ。
 ナイトウォーカーのはぐれ悪魔、鴉女は地上を駆けて射線を通すと、二人からの攻撃を受けて完全に動きの止まっているサブラヒナイトへとアサルトライフルの銃口を向けた。殺意を込めて猛射、瞬くマズルフラッシュと共に弾丸の嵐を木乃伊武者へと叩き込んでゆく。多大なカオスレート差が乗った弾丸は、対物理装甲をぶち抜き、激しい火花を巻き起こしながら和鎧に穴を開けてゆく。火力が高い。瞬く間に蜂の巣にされたサブラヒナイトへと、覆面をつけた忍者が忍者刀で追撃を入れてトドメを刺した。撃破。
 他方。
「変身っ!」
 この力は皆の笑顔を護るために、同じく物陰から飛び出した千葉真一、戦場を駆けながらアウルを集中させると裂帛の気合と共に光纏を発動させた。
「天・拳・絶・闘、ゴウライガぁっ!」
 轟く獅吼の轟音と共に光のオーラを噴出させ魔具・魔装を展開、装備を身に纏うと闘気を爆裂させて己の能力をさらに上昇させる。何処からともなく「CHARGE UP!」とアナウンスの声が響き、黄金の光がゴウライガの頭、胸、肩、腕、脚の各部に鎧の如くに装着されてゆく。
「気合入れていくぜ!」
 変身を終えたヒーローは、ゴウライソードを手に真紅のマフラーを靡かせて駆けてゆく。派手だ。
 他方。
 戦場の中心を目掛けて前進する機嶋結。
「……無事だといいのですけど、ね」
 ちらりと上空へと視線を走らせる。
 ダレスの嵐の如き大剣突撃を黒髪の少女は紙一重でかわし続けている。いつもの太刀ではなく天属性の蒼槍を持ち手数が少ないのは、防御を重視して立ち回っているのだろう。
 遠目に見た限りでは、上手く翻弄しているようにも見えるが、一撃でもかわし損ねれば一発で墜ちそうにも思えた。
 不安が胸をかすめるのは、感傷ではない。彼女が沈めば全体に影響する。
(それが怖いだけ……)
 自らの心境を強引に論理完結させた童女は地上に視線を戻す。意識を分散していられる状況でもない。
 中央で斬り合っているサブラヒナイトを標的に定めると、クロセルブレイドにアウルを集中して一閃させた。剣の間合いの遥かに外。しかし、その瞬間、光の衝撃波が刀身より飛び出し、宙を切り裂いて飛んでゆく。フォースだ。閃光波がサブラヒナイトの斜め後方から炸裂し、衝撃力を爆裂させて砲弾の如くに吹き飛ばした。
 武者が飛んでゆく先に立っていた阿修羅の撃退士は、ぶっきらな動作ながらも即応して大剣を竜巻の如くに振り下ろした。サブラヒナイトが大剣に打ち返されて大地に叩きつけられる。
 しかし、鎧武者はそのまま横転すると阿修羅の足を刈るように弧を描く斬撃を繰り出した。軸足を薙ぎ払われた阿修羅の男は足から血飛沫をあげながら、とんぼ返りするように大地に倒れる。
 この段階になると天界軍は南からの撃退士側の増援に気付いたようだった。各々、背後を取られぬように北側へと回り込むようにしながら、目の前の撃退士達へと稲妻の如く、旋風の如く、閃光の如く、それぞれ鋭く太刀を振るって斬りかかってゆく。友軍撃退士達の数名は受け損ねて、次々にその身から血飛沫を噴出させた。
(名前は同じでも偶にレベルが違うから要注意だな)
 千葉は胸中で呟いた。
 サブラヒナイトは、物魔遠近完備でさらに非常に頑強な対物理防御能力を持っている。火力も低くはないので、大抵は強いのがサブラヒナイトだ。京都の精鋭である。正面からまともにぶつかるなら、手ごわい相手だ。
 しかし、
「上の怖ーい人には聞こえへんように、君らだけに歌いましょう」
 状況がまともではない。亀山は北進して再び楽譜を翳すと光の図形楽譜魔方陣を浮かび上がらせた。
 友軍撃退士の反撃を後方に飛び退いてかわしたサブラヒナイトの着地点を狙い澄ませてマジックスクリューを撃ち放つ。
 狙いは足。
 端から着実に潰す。
 亀山淳紅、戦場を良く見渡している。
 追撃の旋風がサブラヒナイトに襲い掛かり、螺旋の破壊を巻き起こして武者の態勢を大きく崩させる。痛烈な破壊力と朦朧効果。
「さて、どれだけ楽しませてくれるかしら?」
 ナヴィアが言葉と共に長大な長柄戦斧を振り上げ、動きの鈍っているサブラヒナイトへと迫る。発動させるスキルは勿論薙ぎ払い、本日二度目、刃に再び闇が収束されてゆく、慈悲など無い。風と闇を巻いて振り下ろされた斧刃がサブラヒナイトの肩部に炸裂し、蠢く闇が木乃伊武者の動きを完全に束縛する。
「俺達の前に立ったのが不幸だなぁ」
 桝本はスタンしたサブラヒナイトへと、フリーになった友軍撃退士と共に斬りかかる。十字に剣線が走り、全撃の直撃を受けたサブラヒナイトは、堪えきれず崩れ落ちるように大地に倒れる。撃破。
 亀山の魔法を起点にした強烈な連携攻撃だった。
 しかしながら、敵にも考える頭はある。有象無象ならともかく、今回は敵に指揮官クラスが多い。
 友軍撃退士後衛を抑えていた三羽のファイアレーベンのうち二羽が、指令を受けて旋回し、亀山目掛けて猛然と突っ込んでくる。
「……レーベン、来ますよ」
 機嶋が注意を喚起する声をあげながら魔具を換装する。
 フラッペが既に移動しながら狙撃銃を空へと向けて狙いをつけている。高速で接近する焔纏の大鴉をスコープに収めて発砲、対空射撃。レート差を乗せて弾丸が勢い良く飛んだ。ファイアレーベンは身を傾がせると宙をスライドするように急降下した。弾丸が黒い羽先を掠めて蒼空を貫いてゆく。黒い羽が一枚、宙を舞った。外れた。速い。
 鴉女もまたアサルトライフルを空へと向けている。粉々に粉砕してやるべく猛射。嵐の如くに弾幕が解き放たれ、しかしファイアレーベンはローリングしながら鮮やかに弾丸を掻い潜ってゆく。中らない。みるみるうちに距離を詰めて来る。
「速い、ですね……!」
 仁良井、ファイアレーベンの進路を見据え、その範囲内ように駆けて間合いを保ちつつ、雷帝霊符を出現させて空へと翳す。記号と文字が描かれた符にアウルが集中されると、刃状の雷が出現し、一閃の閃光と化して空へと向かって撃ち放たれた。雷刃が唸りをあげて鋭く飛び、ファイアレーベンはこれもまた急降下して回避。
 水葉、天翔弓に武器を持ち帰ると同じくファイアレーベンへと狙いを移して射撃。矢が空へと撃ち上げられたが、しかしやはりレーベンはスライドして回避。
 バラバラにただ撃つだけでは、なかなか中てられる相手ではないようだ。
 対空射撃を突破した二羽の黒頭は、高速で亀山の頭上へと飛来し、顎内より燃え盛る紅蓮の焔が膨れ上がらせた。次の瞬間、火の球と化して地上へと撃ち放たれる。二連の火球が亀山を襲い、猛烈な爆発が飲み込みその破壊力を炸裂させてゆく。
 グリースに換装している機嶋、亀山を爆撃したうちの一羽を目掛けて駆け、跳躍して鋼糸を放つ。糸が鋭く伸びたが、大鴉に届く前に伸びきった。射程が足りない。
 他方。
 ゴウライガは赤い稲妻の如くに駆けると、足をやられて転倒した阿修羅に襲いかからんとしているサブラヒナイト目掛けて跳躍する。
「ゴウライキィィック!」
 起き上がったサブラヒナイトは声に反応して素早く振り向き、迎撃に太刀を掲げんとする――が、しかし、流星の如くに放たれた蹴りは、防御の太刀を掻い潜ってサブライナイトに直撃した。小細工抜きで素で強い。チャージアップしレート差が乗った破壊力が対物障壁の上からその衝撃力を炸裂させる。
「助っ人参上! まだやれるか? やれるなら手を貸してくれ!」
 蹴りを叩きこんだ後に、一歩後退して間合いを計りながら千葉は阿修羅に声をかける。
「ふゆみ必殺★ずばばーんっ!」
 その間に新崎が追随して踏み込み、よろめいているサブラヒナイトへと追撃の薙ぎ払いを放つ。強烈な衝撃が炸裂し、サブラヒナイトの動きが止まる。
「おお!」
 起き上がった阿修羅は答えると、大剣を振り上げて踏み込み、スタンしたサブラヒナイトへと渾身の一撃を叩き込んだ。さらにフリーになった忍者とディバインランスが突進してきてサブラヒナイトへと次々に追撃を入れて打ち倒す。
「――あの鳥嫌いぃぃぃ!!!」
 こんがり焼かれた亀山が悲鳴をあげて、魔法封じの範囲から逃れんと駆けている。魔法攻撃を封じられたダアトなど幾つかの例外を除いて無力に等しい。
 サブラヒナイトは指揮官クラスなので、それなりに戦況は判断出来る。現在の最南端となっているサブラヒナイトともう一体は、一度飛び退いて眼前の相手から間合いを外すと、素早く鬼火の弓を出現させ亀山へと二連の矢を放った。一気に仕留める腹のようだ。
 矢が亀山へと襲い掛かり、機嶋は再びクロセルブレイドを出現させると庇護の翼を発動させた。間に割って入って一本を斬り払って叩き落し、二本目は剣が間に合わなかったので身を捻って肩で受ける。ローブと戦闘服を貫いて矢が突き刺さった。
「邪魔な鳥は撃ち落とさないとね」
 ナヴィアが言って、アサルトライフルを出現させて空に構えた。味方の射撃タイミングに合わせバースト、波状攻撃。
 対空射撃をかわし続けていたファイアレーベンだったが、連携射撃されると流石にかわしきれない。ナヴィアの弾丸に片翼を吹っ飛ばされて態勢を崩した所に、仁良井の雷刃が炸裂し、血飛沫を撒き散らしながら落下してゆく。撃破。
 もう一体は再び亀山の元へと急襲し、火球を爆裂させ機嶋もろとも爆撃してゆく。機嶋は庇護の翼を広げて亀山を護衛しているが、その分ダメージ二倍だ。
「ゴウライソード、ビュートモードだ。喰らえ!」
「ふふん……今のふゆみ、燃えちゃってるんだからねっ☆」
 千葉が蛇腹剣を叩き込み、新崎は再び闘気を開放している。千葉に続き五人の撃退士が殺到して包囲し刺突の嵐を繰り出して滅多刺しにしてまた一体を打ち倒した。
「ちっ、こいつは効くかな……? 来いっ」
 桝本は亀山へ射撃する木乃伊武者へと向かって駆けると、大剣を消してルーンブレイドを出現させ、挑発を発動させる。
 木乃伊武者は桝本をちらりと見たが、意に介していない様子。敵の魔法攻撃力が高い。今の状況下では、直接射線上に割って入ってぶん殴った方が良さそうだ。
「今ならば……飛ぶ鳥を落とすくらいの勢いは、作れます」
 背から風の翼を発生させている水葉が和弓を再度空へと向ける。火線が集中し、態勢を崩したファイアレーベンへと、はっしと矢を放つ。疾風の如くに飛んだ矢が大鴉の身を撃ち抜き、鴉は断末魔の悲鳴をあげながら落下してゆく。三体目のファイアレーベンは友軍の後衛組が集中射撃して撃墜していた。
 桝本は再びアスカロンを出現させてサブラヒナイトへと突撃して剣撃を叩き込み、フラッペは戦場を駆けながら射線を通してリボルバーに持ち替えて射撃する。続けてナヴィアが突進して放った薙ぎ払いは今度は抵抗されたが、亀山が追撃に光球を叩き込んで粉砕した。
 仁良井が雷刃をサブラヒナイトへと放って直撃させ、千葉は「ゴウライ、パァァンチ!」と追撃の拳を叩き込んでいる。ふゆみが三度目の薙ぎ払い。スタンした所へ、水葉が翼の光刃を一閃させて斬り裂き、機嶋が背面に回りこんでエメラルドスラッシュを放ち斬り倒した。
 残りの二体のサブラヒナイトは、鴉女と十五名の友軍撃退士達からそれぞれ飛び道具の猛射と近接組の包囲からの滅多打ちを受けて沈んだのだった。




「何とか上手く行ったか」
 地上を殲滅した後、周囲を見回しながら千葉が言った。
「中央の援護にゆこう」
 友軍撃退士のアスヴァンの女が回復術を傷ついた者達へと飛ばしながら呼びかける。
「了解、もうひと頑張りだな!」
 一同は頷き、北へと移動を開始する。
「私も空を飛びたいものですね」
 途中、仁良井は空を見上げてぽつりと呟いた。上空ではダレスがまだ健在であったので、万一の範囲攻撃を警戒し、皆、分散しながら進んだ。
 一部を除いて。
「…………アヤ?」
 味方の様子を気にかけていたフラッペが気付いた。足を止めて振り返る。
 視線の先では、ただ一人、はぐれ悪魔の少女が路上に空を見上げて留まり続けていた。
「先にいってて」
 鴉女は怪訝そうにしているフラッペへと言った。南のサーバントは既に倒した。ならば。
 女は背から漆黒の翼を広げた。意を決して跳躍すると一気に大空へと飛翔してゆく。
「アヤ!」
 ここで空にあがる意図は明白。大天使に仕掛ける気だ。
「待つのだ!」
 フラッペが制止の声を投げる。
 しかし、鴉女が振り返る事はなかった。
 悪魔の少女は生徒会長と斬り合っている大天使の背後へと迫ってゆく。
「あなた達天軍を殺すためだけに研がれた私の刃……あなたに何かされたわけじゃないけど……死んでくれる?」
 女は呟き、京都代将の背を射程に捉えると、アウルを全開に壮絶な負の刃を解き放った。



 解き放たれた三日月の刃の嵐が大天使を飲み込んだ。対物理障壁が展開するも、壮絶な勢いでダレス・エルサメクの全身が滅多斬りに斬り刻まれてゆく。必殺のカオスレート−6、意識外からのバックアタック。
 しかし、神楽坂茜は鴉女の姿に気付くと顔色を変えた。
「ッ! 危険です、さがって!」
 その一発で墜とせるなら先の西要塞の攻防の時点で勝負がついている。
「天使を、天軍を殺す為ならこの身など惜しくない!」
 鴉女、一発で墜とせないなら墜ちるまで叩き込むまで。アウルを集中させ二発目のクレセントサイスを猛然と解き放つ。瞬間、大天使は回転して頭から倒れこむように急降下した。刃の嵐が虚空を斬り刻んで突き抜け、ダレスはUの字を描くように身を捻り様に転回する。一瞬で進行方向を切り返して来た。スプリットS。
「やってくれたな背約者ぁああああ!!」
 大天使は憤怒を表情に浮かべ、身から鮮血を噴出させつつも、背から光の粒子を爆発的に噴出し、稲妻の如くに鴉女へと突撃してくる。速い。間合いが一瞬で詰まり、右手一本で振るわれる剛剣が爆風を巻いて一閃される。肉厚の刃が鴉女の肩口から入り、胴を通って、脇腹から抜けてゆく。壮絶な衝撃が炸裂し、悪魔の少女は木の葉のように吹き飛んだ。盛大に赤色の血肉を撒き散らしながら落下してゆく。
「砕け散れ!」
 ダレスは既に意識を失って自由落下してゆく鴉女へとさらに追いすがると、トドメを刺すべく大剣に蒼光を収束させて振り上げた。だが振り下ろされる瞬間、神楽坂茜が追いついて閃光の如くに大天使の右腕に太刀を叩き込んだ。斬鉄の破壊力に大剣の軌道が逸れて鴉女から外れて空を斬り、ダレスの腕から血飛沫があがる。
 しかしダレスは鮮血を撒き散らしながらも猛然と反撃に転じた。壮絶にタフだ。身を捻り様、蹴りを繰り出し神楽坂の腹に脚甲を叩き込む。凶悪な打撃力に黒髪の少女の動きが止まった所へ、瞬間、地上から一発の弾丸が飛来してダレスの顎を斜め下方より撃ち抜いた。地上でフラッペがスナイパーライフルを構えている。ダレスが衝撃に吹っ飛んでいる間に、S'で加速したフラッペは風の如くに路上を駆け、鴉女の落下点へと入った。ライフルを消して両手を伸ばし、少女を受け止める。神楽坂茜も既に意識を失っていたように見えたが、疾風たるフラッペも分身は出来ない。瞬後、鈍い激突音と何かが破砕し崩れてゆく音が盛大に鳴り響いた。生きている事を祈ろう。
 青髪の少女は血まみれの鴉女を抱えたまま、付近の家屋の窓を蹴破って飛び込んだ。
 ダレス・エルサメクの怒声が上空で轟いている。
 フラッペは息を殺して身を潜める。今、大天使に襲われたら終わりだ。

 時間が、やけに長く感じられた。






 危地に陥ったフラッペ達だったが、しかし戦況はダレスに彼女達を探し出して抹殺するだけの余力を残していなかった。
 ダレスは急ぎ崩壊しかけている中央の援護へと飛び、しかしそれでも数に勝る撃退士側は南から敵の戦線を突き崩す事に成功した。大収容所の援護としてやってきたサーバント部隊はついに潰走し、合流した撃退士部隊は、さらに大収容所の門を破り内部へと大挙してなだれ込んだ。
 あわや陥落かと思われたが、空より急行したダレス・エルサメクが収容所内へと入り、ここでついに雷竜を発動させた。突入の為に狭隘に密集していた撃退士側は甚大な被害を発生させ、天界側は血塗れながらも大剣を嵐の如くに振り回す猛将ダレスを先頭にサーバント達が猛反撃し、侵入部隊を押し返した。
 被害を嫌った源九郎は一旦後退の指令を出し、天界軍と撃退士部隊は収容所の壁を挟んでにらみ合う事となる。

 かくて、ダレスは大収容所の陥落を防ぐ事にはかろうじて成功したが、さしものダレスも連戦により蓄積された負傷の度合いが深刻である事と、大収容所の防衛の為に南に留まらざるをえなくなり、以降、その機動を実質封じられた形となったのだった。


 了


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 秋霜烈日・機嶋 結(ja0725)
 歌謡い・亀山 淳紅(ja2261)
 エレメントマスター・水葉さくら(ja9860)
 影に潜む殺意・ナヴィア(jb4495)
重体: −
面白かった!:8人

蒼き疾風の銃士・
フラッペ・ブルーハワイ(ja0022)

大学部4年37組 女 阿修羅
天拳絶闘ゴウライガ・
千葉 真一(ja0070)

大学部4年3組 男 阿修羅
撃退士・
仁良井 叶伊(ja0618)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
秋霜烈日・
機嶋 結(ja0725)

高等部2年17組 女 ディバインナイト
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
我が身不退転・
桝本 侑吾(ja8758)

卒業 男 ルインズブレイド
ひょっとこ仮面参上☆ミ・
新崎 ふゆみ(ja8965)

大学部2年141組 女 阿修羅
エレメントマスター・
水葉さくら(ja9860)

大学部2年297組 女 ディバインナイト
子鴉の悪魔・
鴉女 絢(jb2708)

大学部2年117組 女 ナイトウォーカー
影に潜む殺意・
ナヴィア(jb4495)

大学部4年259組 女 阿修羅