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マスター:水音 流
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
形態:
参加人数:44人
サポート:0人
リプレイ完成日時:2017/11/13


みんなの思い出



オープニング

 8月31日、朝。斡旋所。

「おーい樫崎、八嶋、ちょっと来てくれ」
「オペ子です」
「なんです?」

 局長に呼ばれ、それぞれ返事をして立ち上がる。
 連れられるまま裏口へ行くと、水や缶詰などの保存食品が段ボールで山積みに置かれていた。

「地下シェルターにある古い物資と入れ替える。運ぶのを手伝ってくれ」
「シェルターがあったとは。オペ子初耳です」
「災害時用の緊急マニュアルに書いてあっただろう。さてはお前、読んでないな」
「マニュアルならちゃんと机の引き出しにしまってあります」

 どの引き出しかは忘れた。

「まったく…」

 ロペ子も呼び、段ボールを乗せた台車をガラガラ押して地下へ。
 そして重厚なシェルターの扉をゴゴゴ…と開けると、

 そこは樹海と化していた。

\ガオーン/
\ぐるるるる…/
\ギョワッギョワッ/
\さふぁりぱーく/

 生い茂った緑の奥から獣達の鳴き声が響き、喋る怪草が木々に紛れてゆらゆら踊r(そっ閉じ

「よし戻るか」

 局長は荷物を放置してロビーへ引き返した。



 屋外。斡旋所の横に付設されている、多目的広場。
 大きく開けたそこに、小規模なロケット発射施設が建造されていた。

 発射台に据えられているのは、全高10mほどの銀色のドラム缶――宇宙型ロペ子――。

「ついに我々の技術力の高さを銀河に知らしめる時がやって来た」

 宙子を見上げながら眼鏡をクイッするロボ研の部長。

「まあ無駄にデカイだけで、中身はただのメッセージカプセルですけどね」

 スマホをポチポチしながら副部長が言う。
 タイムカプセル的な。外装はただの燃料タンクと大気圏突破用の使い捨て装甲である。

「これが成功すれば新しい予算がおりる。予算がおりれば小型化して機動式ロペ子(宙)に改修する為の開発費が手に入る」

 久遠ヶ原にも宇宙時代ktkr。

「そんな部長にかなしいお知らせが」
「言ってみろ」
「打ち上げに使うはずだった燃料が無くなりました」

 スマホの画面見せ。
 そこには、燃料を輸送中だった業者の船が謎の巨大タコに襲撃されて轟沈したとのメールが。

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 部長発狂。

 燃料が届かない。
  ↓
 ロケットが飛ばない。
  ↓
 予算がおりない。
  ↓
 鉄屑や 借金どもが 夢の跡。

 人生オワタ。

「…バイオ燃料だ」
「はい?」
「バイオ燃料を使う」

 肉とか草とかなんか大量にぶち込めば、アウルリアクターの不思議パワーと久遠ヶ原補正でロケットを飛ばせるはず。

「ちょうどよい案件があります」

 気がつくと隣にオペ子が立っていた。
 斯々然々地下樹海。

「今なら有機素材取り放題です」

 ロボ研は燃料が手に入り、斡旋所は地下シェルターの清掃が出来て、まさにwin-win。
 ついでに新しい保存食を保管庫に搬入よろしくどうぞ。

「元々ロケット発射式典のパーリーも開催される予定だったのでたぶん人手は集まります。依頼の経費は斡旋所とロボ研で折半です」
「出費が増えるのは痛いが、この際仕方あるまい。それでいこう」

 依頼発行。
 オペ子はすぐさま掲示板に依頼書を載せた――




リプレイ本文

(アドリブ? そうかもうこのやり取りも最後か…)

 物思いに耽るゼロ=シュバイツァー(jb7501)。
 隣には、ぷるるんとした謎の塊『(水ω音)』の姿。

「なあ水音神」
「どうしたたこ焼き神」
「なんで俺ら月におるん?」

 宇宙の月面で体育座りなう。

「月にも水があったらしいじゃん? 水がある所なら私が住めるじゃん? たぶんなんかそういうアレじゃん?」
「なるほど、そういうアレか」

 ぼへーっと地球を眺める。
 ふと、黒にあまねく星々の光の中に、これまでの出来事が映像となって次々と浮かび上がってきた。
 その中には、リーゼが挙式後しばらくして、和紗・S・ルフトハイト(jb6970)と共に改めて結婚指輪を買いに行くシーンもあった。ツルハシとザックを担いだリーゼ&和紗が、とある宝飾店へと入っていく。

『いらっしゃ…い…ま、せ…?』
『指輪を作りたい(プラチナ原石ごとり』
『工房を貸して欲しいのですが(パラジウム原石ごとり』

 ×:指輪を買いに行くシーン。
 ○:指輪を自作するシーン。

「そうか、いろんな事があったんやな」

 懐かしかったり新しかったりする皆の光景を見守る(ゼ▽ロ)と(水ω音)。

「ところで水音神」
「なんだいたこ焼き神」
「ここって酸素とか大丈夫なん?」
「シュレディンガーの猫って知ってる?」
「箱の中の猫がフィフティーフィフティーなヤツやろ?」
「そう。大丈夫なのか大丈夫じゃないのか、それに気づくまでは何の問題も無いという事」
「つまり?」
「我々はもうダメだ(窒息」



 ハッ、と自室で目を覚ますゼロ。

「夢か…」

 スーハースーハー。
 空気が美味しい。

「そういえばぺーちゃんが何か打ち上げパーティーやるとか言っとったな」

 携帯ぽちぽち。
 何やら探索依頼も発行された模様。

「みんな宇宙とか行くんやろか」

 ならば自分はもっと違う次元に行くとしよう。
 ゼロはいそいそと支度を始めた。



 斡旋所入口の自動ドアをウィーンとくぐる夜桜 奏音(jc0588)。

「オペ子さん、お久しぶりです」
「おひさです。お元気そうで何よりです」
「ちょっと山で修行とかその他諸々してたらこんな時期になり卒業できませんでしたし、今後もお願いしますね」
「こちらこそよろしくどうぞです」

 小次郎の手を持ち上げて挨拶を返すオペ子。
 小次郎の手を握って小さく握手する奏音。肉球をにぎにぎしながら目にしたのは、受付カウンターに置かれた依頼書。

「なるほど、ロケットですか…諸々した時に少し学びましたよ」

 単段、多段、クラスター。

「主流は多段式ロケットですけど、短距離用の小型ロケットなら単段式の方が制御も簡単ですし、ブースター満載で厳つい見た目をしたクラスター式もロマンがあって捨て難いですよね」

 推進剤にバイオ燃料を用いるという事は、宙子は燃料の燃焼による熱エネルギーで飛ぶ化学ロケットに分類されるのだろうか。いやしかしアウルリアクターの不思議パワーも使っているらしいからどちらかと言うとハイブリッド方式か。

「燃焼といえば端面燃焼と内面燃焼とかありますけどどっちにするんでしょうね」

 山籠りするとロケットに詳しくなる系女子。

「まあ理論はさておき、せっかくなので私も燃料探しを手伝おうかと思います」

 と言いながら、てくてくとカウンターの向こうへ回りこんでオペ子の隣の椅子にどっこいしょ。
 ロペ子が運んできたお茶とお煎餅を受け取って2人でぱりぱりずずー。

「このお煎餅も燃料に出来るかもしれませんね」
「今まさにオペ子達の燃料になってます」

 腹が減ってはサボる事もままならぬモグモグ。
 するとそこへ、

\War. War never changes.(人は過ちを繰り返す)/

 意味深なテロップ。
 玉置 雪子(jb8344)がロビーにフェードイン。

「話は聞かせてもらいました。ここは雪子が一肌脱ぐしかないンゴねぇ…」

 そう言って雪子はスマホを取り出し、どこかへと電話を掛けた。
 しばらくしてロビーへやって来たのは、雪子に呼び出された川内 日菜子(jb7813)。

「何の用だ」
「毎日筋トレくらいしかする事のない哀れな脳筋先輩に、慈悲深い雪子が仕事を斡旋してやるんですわ?お?」
「何様だこのバカキ氷」

 顔を合わせて2秒で罵り合いを始めた2人を眺めながら、奏音とオペ子は煎餅ぱりぱり。

「犬猿の仲というやつですね。この場合どっちが犬で、どっちが猿になるんでしょう」
「お手が上手な方が犬に違いないです」

 一方、発行された依頼書に気づく日菜子。

「なるほど、そういう事か」
「先輩の戦闘力と雪子の支援力ならベストマッチフォームですよゴリラモンド先輩!」
「……」

 訝しげに雪子を見る。
 そりが合わないと分かりきっている自分をわざわざ誘うなど、絶対に何か企んでいる。そんな雪子の話をそう易々と聞き入れて良いのだろうかいや良くない。

 対して雪子は、尚もぐいぐいと依頼を勧めてくる。

「大丈夫だ問題ない。雪子はこの斡旋所のプロですしおすし。水音神の加護があるのは確定的に明らか」
「水音? 誰だそれは」

 ともあれ、雪子が諦める様子は無い。
 仕方ない。こうなったら…

「分かった。準備してくるからここで待ってろ」
「おやつとプロテインは300円までですよ!」
「黙ってバナナでも食ってろ」

 雪子の誘いに不本意ながら同意した日菜子は、装備?を整えるべく一旦外へ。

 次いで、自動ドアを潜る日菜子とすれ違いながら、天険 突破(jb0947)がロビーを訪れる。
 オペ子が案内するまでもなく、依頼の事は既に聞き及んでいるようだった。

「無重力空間なら身長伸び放題か」
「行くのは(たぶん)宙子だけですが」

 たぶん(不穏)。

「そうか、生き物を乗せるのは大変そうだしな。じゃあ確認してきてくれ、任せた」

 ロビーの窓から、発射場に据えられている宙子の様子を窺う。
 ドラム缶の身長アップ……圧延加工かな?

 すると宙子の発射台付近にディザイア・シーカー(jb5989)とエリスの姿が見えた。

 根元に立ち、宙子を見上げるディザイア。

「これも戦友の為だ、良い門出にしてやらねば!」

 戦友=量産型ロペ子シリーズ。
 変形合体式パワードスーツ。ロールアウトされたばかりなのでまだ宙子を陸海空子のように装着した事はないが、宙子が量産ロペシリーズの機体であるならば戦友である事に変わりはない。燃料を集め、詰め込み、無事に見送ってやろう。
 ついでに、

「お嬢、デート行こうぜ!」

 隣にいたエリス(嫁)へと振り向く。
 今回はダンジョンデートと洒落込むのだ! でも樹海は虫も多そうだし準備はしっかりしないとね(お嬢にも虫除けシュッシュッ

 だがその時、

「おっとこんなところにでっかい虫が」

 後ろからディザイアめがけて刀を振り下ろすRehni Nam(ja5283)。
 ハッと気づいて、咄嗟に振り返りながら両手をパシーン!と合わせるディザイア。

「いったいどこに虫がいたんですかねぇ?(白刃取りぐぐぐ」
「ちっ、取り逃がしたのです」

 虫?を仕留めそこなったレフニーは口惜しそうに刀を引っ込めつつ、うさぬい&黒うさぬいごとエリスをだぎゅーっとハグ。

「私は探索せず、パーティーの準備を進めておくのですよ」
「あ、そうなの? ちょっと寂しいけど…まあ会場の準備も大事だもんね(こくり」
「です(こくり」

 そうしてエリス成分をたっぷりと補充したレフニーは、つやつやしながらパーティー会場へ。
 その際、ディザイアの横を通り…

「……エリスちゃんに傷の一つも付けたら●ス(ボソリ」

 虫刺され一つ許さん。

 難易度:一撃死モード

「お嬢、虫除けを…! 虫除けをもっと持たねば…!(うさぬい達にもシュッシュッ」
「…ディザイアの残機がごりごり減ってく未来が見える」

 ふと、そこへ陽波 透次(ja0280)がやって来る。
 彼はエリス達にぺこりと挨拶しつつ、

「黒うささんをお借りしても良いでしょうか?」

 デート?のお誘い。

 数ヶ月前に行なわれたエリス達の共同挙式。その花見会の折、自分に差し入れを持ってきてくれた時の黒うさは一瞬エリスの制御を離れて自律で動いていたらしい…という噂を耳にした。
 今はもうそんな事はないのかもしれないが、それでも、やはり黒うさにはエリーの面影が残っている気がするのだ。

「ダンジョン探索、一緒に行きませんか?」

 冒険はきっと楽しい。
 黒うさはじーっと透次を見上げた後、のっそりと頷いて彼の頭によじ登る。

 そんな一同の光景を窓から見守っていた突破は、自らも地下迷宮へと赴く事に。

「ダンジョンの中に宿屋があったりすのも割と定番だよな」

 温泉宿でも探してみるか。



 ――ディザイアや透次らが探索の支度をしに発射場を離れた後。
 発射台の階段を上り、宙子へと近づく者がいた。

「これが最後の依頼だ……思い残すこと無いよう完全燃焼を目指せ!(俺」

 佐藤 としお(ja2489)。
 サインペンを取り出し、宙子のボディ表面に『ありがとう!』の文字をキュキュキュッ。

「水音MSと全ての仲間達に感謝の心を込めて!」

 すると今しがた書いたメッセージの下に、なんと別の文字が浮かび上がってきた。

《こちらこそ、センキューマイフレンド!》

「やあ、不思議な事もあるものだなぁ。さすが久遠ヶ原」

 次いでとしおは、先ほど受けた燃料調達依頼について考える。

「勇気燃料か……」

 それなんてブレイブ。

「…よし」

 何かを思いついて、一旦発射台から下りてどこかへと駆けていく。
 しばらくして戻ってきた彼の手には、愛用のラーメンどんぶりが。

「毎度コレのお陰でプレに個人的縛りが出来て大変だったんだ! カッコよく決めようと思ってもいつもぶち壊しだ」

 それもこれも全てラーメンのせい!(せやろか

「さよなら……ラーメン、世話になったな!」

 言いながら、としおは宙子の燃料ハッチを開けてどんぶりをぽいちょ。
 これでクールでナイスなイケメンに生まれ変われるぞ!!

\万歳/

 そしてとしおは新たなステージへ――



 何やら考え事をしながら斡旋所の中をうろうろしていたシエル・ウェスト(jb6351)。
 小脇に抱えている鉢植えの中で、喋る怪草――シエりじを――の新種が元気に揺れる。

\たんぱく質/

 家庭菜園でこつこつ品種改良を繰り返し、学園生活の集大成として一応の完成を迎えたチーズ版りじを。その名もチチりじを。
 しかし味として何かが欠けていた。
 あとなんか燃料とか探して欲しいって言われた。

 その内に、気がつけば地下シェルターの扉前までやって来ていたシエル。せっかくだから私はこの鉄の扉を選びます(オープンごごご
 すると中の樹海で群生していた野生のシエりじを達が、シエルを見て一斉に反応。

\ご先祖だ/
\ご先祖だ/
\ご先祖だ/
\ご先祖だ/

 瞬間、ひらめくシエル。

「蠱毒のりじを……それだ」

 自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。
 違う種類のシエりじを同士を同じ空間にぶちこみ、勝ち残ったりじをを収穫。
 蠱毒ver.シエりじを。

「迷宮といえばシエりじを。燃料と言ってもシエりじをです」

 きっとエネルギー効率に優れたりじをになる。

「思えばりじをの称号多くね?」

 <シエりじをの迷宮>
 <シエりじ王5D's>
 <シエル目シエりじを科>

 称号欄にまで群生している模様。

 シエルは持っていた鉢植えからチチりじをを引っこ抜き、樹海に放流。
 逞しく生い茂った地下りじを達に当てて、最強のりじをの作成に移った――



 頭にフェルミを乗せた大次郎が、のしのしと街中を練り歩く。
 フェルミの隣には、同じく頭に乗っている月乃宮 恋音(jb1221)。そして大次郎の背中には、恋音が室長を務める『内務室』の面々も。具体的には花祀 美詩(jb6160)、雪篠 愛良耶(jb7498)、鳥辺 雨唯(jb8999)、風香院 涙羽(jb9001)、露園 繭佳(jc0602)、琴ヶ瀬 調(jc0944)、賦 艶華(jc1317)、玉笹 優祢(jc1751)。

「将来、選挙運動車の代わりにお手伝いをお願いできないかしら」
「このもふもふに堕落せず耐える事こそ、人間に与えられた試練なので御座いますね」
「重機にも負けないパワー。凄いな」
「あらあら、アニマルセラピー的に、カウンセリングにも応用の余地がありそうですぅ」
「でも、うっかり踏み潰されないように気をつける必要もありそうなんだよ」
「ねこじゃらしを振る際は、文字通り命懸けですわね」
「パソコンを弄っているとキーボードに乗ってくる猫さんもいるけど、大次郎さんの場合はキーボードと手が大変な事に」
「ほ、ホテルの送迎用シャトルバスとして、大次郎さんを…」

 いっぺんに喋るとこれもうわかんねぇな。

 ちなみに大次郎に先行して前を進むのは、量産型ロペ子…ではなく、その姉妹機であるレン子。恋音にそっくり!(ドラム缶
 レン子を追って歩く大次郎に揺られつつ、フェルミが恋音に尋ねる。

「で、誰を探せばいいんだー?」
「……謎の男性ですぅ……」

 以前、数度に渡って“秘宝”の地図をくれた正体不明の男。
 今日はその男を探し出す手伝いを頼まれて、フェルミと大次郎はこうして恋音達と町を散策していたのだった。

「顔とか見てないのかー?」
「……はい、その、以前お会いした時は、帽子を目深に被っておられたので……」
「住所の目星とかー」
「……謎ですねぇ……」
「そうかー。謎の男だからなー」
「……はい、謎ですからねぇ……(ふるふる」

 あれ? これ探すの無理じゃね?

「探してんの?」

 その時、後方から聞き覚えのある謎の声が。
 レン子と大次郎を停めて振り返ると、今しがた通り過ぎた角の陰に、帽子を目深に被った謎の男が立っていた。

「……おぉ……。……はい、今回は、探しておりましたぁ……」
「あるよ」

 男が差し出したのは、どこかの樹海のものと思しき地図。

「3時間前に滅んだ古代文明の秘宝さ」
「…………い、いえ、その、まだ滅んだ訳では…………(ふるふる)。……とは言え、流石ですねぇ……」

 きっとあると思っていた。

「……ありがとうございますぅ……」
「お代は結構だよ」

 ぺこりと受け取った恋音が再び顔を上げると、しかし既に男の姿はなく、

「…あれ? おやつのお団子が無くなってるんだよ?」

 繭佳のバッグに入っていたはずの三色団子も忽然と消え失せていた。



 ロケット発射を見届ける為の特設屋外会場。
 鴉乃宮 歌音(ja0427)とレフニーが、パーティーで提供する食べ物の準備に勤しんでいた。

「お皿は、このくらいで、良いのです?」

 その手伝いで、紙皿の入った箱を運び入れる華愛(jb6708)。
 彼女のヒリュウ――ヒーさん――も、スプーンやフォークの入った小袋を銜えてお手伝い。

「ありがとう。まあ取り皿だけなら、足りなくなってもコンビニとかにも売ってるから大丈夫だろう」
「大皿の方は洗えば使い回せますし(こくり」

 レフニーも頷く。

 歌音は持参した炊事道具をチェックしながら、今日の手順をシミュレート。
 皆がダンジョンから持ち帰ったものを食用的観点で選別。獲物まるごとの場合はこの場で豪快に解体(見せられないよ!)して、食材に適した部分だけ調理。その他はバイオ燃料として宙子への供物となす。

 やがて、依頼を受けた他の者達がぞろぞろと斡旋所内へ集っていく。
 ふりふりと手を振りながら、彼らの後姿を見送るレフニー。

「皆様、くれぐれもお気をつけを」

 そう、くれぐれも……


●探索開始
 シェルター入口前。

「ガウ、ガウガウ…ガウ」

 ミハイル・エッカート(jb0544)が、その辺で見つけたいつものおつかい人狼と一所懸命会話していた。
 人狼に取っ手付きの桶と柄杓を渡し、身振り手振りで人狼語。

「ガウガウガウ…」

 今から一緒にバイオ燃料を調達する。乾燥した動物の糞は燃料になるから、その肥溜めにたくさん集めるんだぜ。
 でも俺は臭いの苦手だからお前が持て。あと俺の風上には立つな。
 的な。

「OK?」
\ぐる/

 人狼はこくりと頷くと、受け取った柄杓を高々と掲げ…

 カコーン!
 ミハイルの頭にフルスイング。

「おいバカヤロウそうじゃない」

 木魚のように叩かれながらミハイルは根気よく説明し直す。
 すると人狼は今度こそ正しく理解したようで、ミハイルを真似て糞を柄杓で掬って桶に入れるジェスチャーをリピート。

「よし良いぞ、そうだその動きだ」
\ぐる/

 次いでミハイルは、自分の準備に取り掛かった。
 荷物の中から熊のキグルミを引っ張り出し、すっぽりと装着。

「これで俺も野生動物」

 これなら樹海の中で動物に遭遇しても襲われないはずなんだぜ。

「どうやら扉の向こうから野獣が溢れてきたンゴねぇ…」
「物騒だな。大丈夫なのかこの斡旋所は」

 その時、雪子と日菜子がシェルター前に到着。
 熊と人狼のコンビを見て、即座に仕留めに掛かる。

『待て俺達は敵じゃn』

 ドゴォ!
 日菜子の拳が熊の顔面にクリーンヒット。
 衝撃でキグルミの頭がすぽーんと脱げて地面に転がる。

「ん…? すまない、キグルミだったのか。本当にすまない」
「分かってくれれば良いんだぜ(ボコ顔」
「確認もせずに殴り掛かるなんて流石ゴリラ脳筋モンド先輩は格が違いました」
「うっさい氷河期頭。お前こそ『野獣が溢れた』とか言ってただろう」
「2人共ケンカはやめるんだ」

 女子2人を宥めながらミハイルはヨロヨロと熊の頭を被り直し、

「熊がおる。狩らねば」

 直後、緋打石(jb5225)が到着。
 熊を見て飛び蹴り。

 顔面に膝が確定ドゴォ!!
 脱げた頭が地面にころころ。

「ん? すまない、ミハイル殿だったか。大丈夫かのう?」
「なんとなくこうなる気はしてたんだぜ(ボコボコ顔」

 中に入るまで頭は被らないでおこう。

「あらあら、コワイわねぇ」

 一方、部屋の隅で一部始終見ていた華宵(jc2265)。ヘヴホラの同僚(キャシーとマッチョなオカマさん達)と一緒に樹海探索。
 しかし自分も野生の獣対策で変装しようと思っていたので、うっかりすれ違い様にボコられたミハイルは他人事ではない。

「ほら、野生の獣って強者に従うじゃない?」

 ならばその強者に変身すれば無用な争いを避けられるはず。

「獣の頂点と言えば、これね」

 変化の術で変身ドロン。

 その姿はなんとドラゴン。
 背番号1997のユニフォームを身に纏い、ふっくらモフモフとした青い身体と大きくつぶらな瞳で日本のプロ野球界の一角を担う某球団のマスコッtいやこれなんかドラゴン違くね?

「テレビで見た事あるな」
「これには雪子もニッコリ」
「今年の日本シリーズも熱い試合になると良いのう」

 獣の頂点(怖くない)。
 ちなみにユニフォームは自前である。

『私は樹海の獣じゃないから攻撃しないでね』

 女子3人はこくりと頷いた。



 樹海内部を進む砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)。
 そのすぐ後ろには、2人の付き人。何故かレモンをmgmgしている和紗と、いつも通りの仏頂面なリーゼの姿。

 竜胆 with B(バーテンダー和紗/リーゼ)。

「燃料探しと鳥類ガード頼む(真顔」

 with Bにチラリと流し目を向けつつセンターに陣取り、謎のBGMスタート。
 スタイリッシュにねり歩きながら探索の真理を問う。

「樹海にいる働き撃退士の皆。素材の発見から搬出まで全部自分でやらないと燃料確保できないと思ってない? ハハッ。じゃあ、質問だよ。他にも同じ依頼を受けた仲間がいるのに、重い荷物を全部1人で 持 ち ま す か?」

 ジェンティアンは小さく首を横に振り、ぐっと間を溜めた後――

 だが寸前で和紗が割り込み、

「運ばない 探すだけ(キメ顔」

 和紗の周りで、リーゼが落ちている木の実をせっせと拾い始める。

「……」

 センター台詞を奪われて1人立ち尽くすジェンティアン。

「…チェンジ!(指パチーン!」

 謀反を起こしたwith Bを入れ替え申請。
 呼び出されたのは撃退庁所属の撃退士、早上と榊 栄一。

「「何だここは」」

 オフィスで仕事していたはずなのに気がついたら樹海の中。たまげたなあ。
 そんな2人に、ジェンティアンが言う。

「餞に手伝え」

 僕、卒業するし。
 対して早上は、

「そうか、とうとう無職だな」
「無職じゃないし!? ちゃんと進路とか考えてるから…! ちょっと榊ちゃんからも何か言ってあげて!? 七夕の時に手伝ってってお願いしたでしょ!」
「む…そうだな」

 栄一は小さく頷くと、早上の背を押してジェンティアンの右斜め後ろに誘導。
 次いで自分は反対側である左斜め後ろに立ち、BGM再スタート。

 ジェンティアン with B(ブレイカー早上/榊)。
 新たなお供を引き連れて、ジェンティアンは樹海の中をねりねりと歩き始めた。

 それを横目に、レモン(2個目)をmgmgしながら奥へと進む和紗。
 使えそうな植物を見つけては立ち止まって収穫(リーゼが)。

 ――そんな一同の様子を草むらからこっそりと窺っている者がいた。
 段ボールを被って潜伏。ずりずりと後をつける。

 そうとは知らず、てくてくと横顔を晒して歩くリーゼ。
 謎の人物は手にしていた銃で彼のこめかみを狙い…

 発砲(消音)。

 だが寸前、季節外れのクコの実を見つけて屈むリーゼ。
 脇に生えていた木の幹にビシィ!と穴が開く。しかしリーゼはそれに全く気がつかない!

「丁度良く熟れている(こくり」
\ちっ、外したか(このもんポリポリ/

 このもん。いわゆる漬物。美味しい。
 監視続行。気づかず進むリーゼらを追って、謎の襲撃者はずりずりと樹海の中を這っていった。



 その頃、別のエリアを探索していた米田 一機(jb7387)。

「地下になーんでこんなもの作っちゃったの…」

 いや元々はちゃんとしたシェルターとして建造されてたはずなんですけど久遠ヶ原の瘴気に中てられたというか隠しダンジョンネタがやりたかったから斡旋所の地下にシェルターがあったっていう事にしてそれを無理矢理迷宮化させたというかごにょごにょ。
 あと次回作は宇宙も舞台になるらしいって聞いてせっかくだし宇宙繋がりでロケット打ち上げたいなとか思った。

「対話する為にメタリックにならなきゃいけないとかない?」

 それはそれでありだと思います。

 そんなイノベーター一機の隣には、蓮城 真緋呂(jb6120)の姿。
 そしてその真緋呂の後ろには、

「あー……爆破したい」
「アニキ〜、やべぇよアニキ〜。この斡旋所、絶対普通じゃねぇよ〜〜」
「げ、現代っ子のオイラには、この大自然感はツライんだな。ピンチなんだな」
「ギャーギャーうるせぇ! 男はびびったら負けだっていつも言ってんだろうが!(膝ガタガタ」
「ふん…まあ夫婦旅行で南国の島へキャンプに来たと思えば、幾分かマシか」
「わーい、ダーリンとバカンス♪」
\わふっ/

 反リア充の爆弾魔。強盗トリオ。三田夫妻と、その愛犬(人狼)。
 便利な盾げふn…頼れる探索仲間達。ところで我々、なんで呼ばれたの?

「(依頼コンテンツが)最後だし、纏めて債権回収しようと思って」
「おいちょっと待て」

 三田が真緋呂に猛抗議。

「私は去年のクリスマスにこの身を犠牲にしてA5ランクの霜降肉を支払ったぞ」
「ちょっとなにいってるかわからない」

 お腹に入る前に消し炭になってしまったお肉はお肉ではないのだ。

「まずは利子分働いt…協力してね」

 追い立てるように三田達に前を歩かせる真緋呂。
 代わりに終始ぺこぺこと頭を下げる一機。

「あ。すいません。うちのが、ほんと。すいません」

 しかし真緋呂の過払い請求を止める術もなく、一機はただただ恐縮しながら、被害者の会ご一行様と共に迷宮の奥へと入っていった。



 草木を掻き分けながら進む姫叔父…もとい不知火藤忠(jc2194)。
 雑草を引っこ抜いて首を傾げる。

「何故シェルターの中に生えているんだ…?」

 壁も床も天井も、強化素材で隙間なく整備されていたはずなのに。
 対して、一緒に草を毟りながら歩いていた不知火あけび(jc1857)も頭上にハテナマーク。

「シェルターが樹海ってどういう事だろう? 久遠ヶ原七不思議に入れるべきだよね。七で収まるかは分からないけど」

 久遠ヶ原(約)七不思議。

 とりあえず、ただの雑草は燃焼効率が悪そうなのでぽいちょ。

「バイオ燃料といったらトウモロコシか?」

 実に含まれる高純度のデンプンがどうたらこうたら。

「トウモロコシを刈れば良いんだね!」

 合点承知のあけび嬢。
 きょろきょろと辺りを見回し、早速、野生のトウモロコシを発見。刀でズバァ!
 更に、

「竹も見つけた! タケノコ!」
「いやそれもう竹になってしまってるだろう」

 竹って最初に自分で言ってるじゃないですかやだー。
 でも竹もカリウムと塩素を取り除いてやればバイオ燃料にどうたらこうたら。

 トウモロコシを拾う姫叔父に見守られながら、あけびは楽しそうにバッサバッサと竹林を薙ぎ払った。



 温泉宿を探して樹海へと足を踏み入れた突破。
 しかしそれらしい空間は見つからず。無線機のスイッチを入れ、地上にいるオペ子&奏音に一次報告。

「まあ、まだ入口付近だしな。どうぞ」
『了解です(ぱりぱり』
『引き続きよろしくお願いします。どうぞ(ぱりぱり』

 煎餅の音ぱりぱり。

「俺も後で煎餅欲しい」

 短く告げて無線機をしまう。
 さて、もう少し奥へ行ってみるとしよう。

 本命は、補給が必要になりそうな中間エリア。
 大穴で、踏破後のご褒美イベント的な最奥エリア。
 それでも見つからなければ自力で掘る。
 何が何でも掘り当てる。
 全ては宙子を無事に宇宙へ打ち上げる為。

「熱量が得られれば推進力になるだろ?(よくわかってない」

 大丈夫だ。実は(水ω音)もよくわかってない。

 その時、前方の木々の間に熊と狼がいた。
 いかん、野生の獣だ。
 突破は咄嗟にアウルをこめた咆哮を放つ。

 振り向く熊と狼。しかし2匹に怯んだ様子はなく、突破を見た熊はその鋭い爪を高く掲げると、ぶんぶんと左右に振り始めた。
 まずい、威嚇している。
 このままでは襲われると判断した突破は、仕方なく太刀を手にして熊を薙ぎ払う。

 ころすのは忍びないので峰打ちズガァ!
 倒れる熊。その隙に突破は狼の脇をすり抜けて、全力で奥へと逃げていった。

 そして突破が去った後、

『探索仲間だと思って手を振ったら刀で殴られた……何故なんだぜ(ごふっ』

 倒れた熊(ミハイル)。
 だが俺は諦めない!



 ジャングルを見渡しながら歩く数多 広星(jb2054)。

「学園のシェルターをこんなになるまでほっとくって、外部のマスコミにバレたら普通にやばいよね」

 いやーたぶん『久遠ヶ原なら仕方ない』の一言で済まされるんじゃないですかね。

 まあそれはそれとして。
 広星は、燥いであっちこっち駆け回ろうとする同行者――春都(jb2291)――の後ろ襟を掴み、探検の基礎をレクチャー。

「まずは迷わないように目印を作ります」
「ふむふむ!」

 そこら辺に生えているテキトーな草木を燃やし始める広星。
 何の植物かは知らない。

「あ、そういやコレ燃料にするのか。まあいいや」

 メラメラ炭へと変わっていく森の緑。
 春都も一緒になってその光景を眺めていると、ふと彼女の視界の隅を何かがゆっくりと横切っていく。

 斧を担いだ青いどらごんと、マッチョなオカマの群れ(怖くない
 無言のままのしのしと奥へ突き進み、やがて見えなくなる。

「こうにぃ、今なんかいた!」
「なんかって何」
「えーっと、えーっと、球団と…オカマさん?」
「ちょっとなにいってるかわからない」

 いいから燃やすの手伝いなさい。
 所々で着火しつつ進む広星と、「ホントにいたのに!」とぷっくりしながらついていく春都。
 すると少し前方の獣道に、鼻先を地面に擦り付けるようにして這っている熊と狼がいた。

 野生動物の足跡を辿り、食事跡を探し、ナワバリを推測。
 そこにきっと“アレ”があるはず。
 だが肉食動物のものはダメだ。

『匂いがマシな草食動物がいい。わかったか?』
\ぐる/

 そうしている内に、ミハ熊と人狼は数匹の鹿の群れと遭遇。
 ミハ熊は友達汁を撒きながら、身振り手振りで誠意をこめて一言。

『ウ●コくれ』


      しばらくお待ちください


 画面が戻ると、人狼の持っている桶に収穫したてのモザイクが掛かっていた。
 だが出来たてホヤホヤは使えない。

『次はこれを乾燥させるんだ』
\ぐる/

 草木を集めて火で燻す作業。
 頑張れ、シェルターの空調と俺の炎焼スキル。

 とその時、ミハ熊は広星&春都の存在に気がついた。
 見れば2人の後ろで、木々が今まさにイイ感じにファイヤーしているではないか。
 ミハ熊はモザイクを手にした人狼と共に2人へと近づき、

『その火くれ』
「「どうぞ」」

 でも臭いから近づかないでください。



 ――その裏で蠢く、怪しい人影。

 歌音 テンペスト(jb5186)。
 単身、謎の樹海で勇気を出して有機物集め。

「有機物と言えば…コレ…?」

 彼女の目の前には、獣が残していった出来たてホヤホヤの例のブツ(モザイクもじゃー

「頑張るのよテン子。負けちゃだめ」

 テン子は自らを奮い立たせ、震える手でモザイクに掴み掛かった――



 大自然丸出しな深緑の匂いで肺を満たし、感嘆の念を吐く浪風 悠人(ja3452)。

「地球の環境もこれくらいの力強さがあれば良いんですけどね…」
\生存競争/
\淘汰/
\さばいばる/

 サラウンドで相槌を打つシエりじを。
 力強すぎる気がしないでもない。

 ところで、と。悠人はちらりと後ろを見やる。

 ブオー。
 入口からずっと、ロペ子がぴったりとついてきていた。

「あの、何か用でも?」
「オ構イナク デス」
「まあ別に良いですけど…」

 ついてきている事は特に問題ではない。悠人が気になっているのはそこではなく、ロペ子が持っている道具の方だった。

 家庭用のビデオカメラ。
 Cの形をしたロボハンドで器用に掴み、目の高さに構えてレンズを悠人に向けている(REC

(ロボなのに何故わざわざ家庭用カメラを…)

 頭部パーツに録画機能とか内蔵してそうなのに。

 ガサッ。
 その時、少し離れた草陰で獣の気配がした。

 悠人はロペ子と一緒に背の高いシエりじをに身を隠しつつ、音がした方へ目を凝らす。
 どうやら鹿のようだ。
 得物を弓に持ち替え、屈んだまま狙いを付ける。勢い余って肉を吹き飛ばさないよう手加減して……

 射。
 トスッと小さな音がして、直後、鹿は地面に倒れて動かなくなった。

「弱肉強食…これも自然の摂理」

 糧となった生命に供養と感謝をこめて、鹿肉ゲット。
 傷む前に軽く解体してしまおう。燃料にする分を残して、一部はこの場で焼いて携行食にしてしまうのもありか。
 そう考えた悠人は、ふとロペ子を見やり、

「…火とか出せる?」
「オイル ナラ 出セマス」
「じゃあ自分で起こすか」

 炎焼スキルあるし。

 と思った矢先、どこからか草の焦げる臭いが。
 出所を辿って移動すると、火を使って何かしているミハ熊&人狼のコンビを発見。

 糞燻し中。
 ミハ熊も悠人に気づいて振り向き、

『お、火なら貸すぜ』
「いやお構いなく」

 糞を燃やした火で食材を焼くのはちょっと。



 探索班が着々と歩を進めるその頃、地上では――

「卒業前のお礼参りに行かないといけませんわよね」

 パーティー会場の一角で、喫茶店『キャスリング(出張版)』の準備をしていた斉凛(ja6571)。
 作業は順調。一息ついてティータイム中。

「大好きな皆さんとの絆は永遠に不滅ですわ」

 カップの中で揺れる紅茶にたくさんの思い出を浮かべながら、優雅に口をつける。
 胸に広がる温かな香り。凛は小さく吐息をもらした後、自身が腰掛けている“椅子”に声を掛けた。

「今まで色々ありがとうですの。とても便利だったわ」
\ありがたき幸せ!/

 椅子(豚侍)。

\卒業は別れにあらず!/
\然り!/
\例え星を隔てた地であろうとも!/
\まさに!/
\我らはいつでも駆けつけるでござる!/
\プロミス!/

 ぶひぶひ。

「その心意気やよしですの」

 凛は持っていたティーカップをそっとテーブル(豚侍)に置くと、おもむろに1つの魔具を取り出す。
 『In Elysion』。楽園の名を冠した、唯一無二の盾。

「絆の結晶で殴ればもっと深い絆で結ばれるわよね」

 豚侍達にもお礼参り(物理
 ボグシャア!

\\感謝の極み…!!//

 喜び豚。

 ――その光景を、通りすがりに眺めていたとしお。

 真っ先にラーメンセットを燃料タンクに詰め込んだ彼。
 だが本当にこれで良かったのだろうかと、悶々と自問自答しながら歩き回っていた。

「豚さん……とんこつ……チャーシュー……」

 ブツブツ。
 うわ言のように呟きながら、としおはどこかへと消える。

 一方、凛はそれに気づく事なく、

「ではわたくしは他の皆さんにもご挨拶に行ってくるわ。準備の方はよろしくお願いしますですの」

 盾をぶんぶこ素振りしながら、にこにこと歩き出した。

 ふと、会場を横切っていくレン子と大次郎を発見。大次郎の上には、フェルミ&内務室メンバーも乗っている。
 どうやら今までどこかへ出掛けていて、これからシェルター内部へ向かうようだ。

「ごきげんよう。これから探索ですの?」
「……はい……。……少々、探し物があったのですよぉ……」

 秘宝の地図。

「なるほどですの。お気をつけていってらっしゃいませ。とっておきの紅茶とお菓子をご用意して朗報をお待ちしてますわ」
「……おぉ……。……ありがとうございますぅ……。……それでは、行ってまいりますねぇ……」

 手を振りながら凛と別れ、内務室組は斡旋所の中へ。
 玄関の高さよりも大きい大次郎だったが、運よく誰も阻霊符を使用していないタイミングだったらしく、フェルミ共々透過能力でスイーっと進入――

 ガンッ!
 と思ったら、一緒に乗っていた内務室メンバーが入口のドア枠に頭をぶつけて詰まる。

「…………お、おぉぉ…………(ふるふるふるふる」
「そういえば選挙運動車も、『オープンカー禁止』や『乗車人数制限』が法律で規定されてたわね…」
「これもまた人間に与えられた試練なので御座いますね…」
「重機が使えないような狭い場所でも通れる体。羨ましい…」
「あらあら、クライエントさんを乗せる時も気をつけないとですぅ」
「おでこにタンコブが出来ちゃうんだよ…」
「ねこじゃらし以外にも危険が潜んでましたわね…」
「うーん…視界がブルースクリーンに…」
「あ、新しくホテルを建てる時は、大次郎さんでも通れるくらい、広い入口を…」

 姿勢を低く、びたーっと大次郎にしがみついて改めて通過。
 受付カウンターでダベっているオペ子と奏音に小さく手を振りつつ、シェルター前へ。扉を開けていざ探索開始――

 みしっ。
 と思ったら、今度はシェルターの扉で大次郎が詰まった。
 透過失敗。

「あ、すみません」

 後ろから誰かの声。振り返ると、頭に黒うさを乗せた透次が立っていた。
 どうやら彼もこれから樹海に潜るようで、魔物?対策としてつい先ほど阻霊符を発動したらしい。
 とりあえず、大次郎が扉を抜けるまでオフ。

 簡単な挨拶の後、調が透次に尋ねる。

「陽波様も、やはりオペ子様のお話をお聞きになられてこちらに?」
「はい。シェルターが樹海になった原因が迷宮の奥にあるかもしれませんし、もしそうなら何とかそれを取り除けないかなと思って」

 相槌を打つように、頭上で黒うさも頷いた。

 対して、今度は繭佳が、

「エリスお姉さん達も冒険しに行くのかな、だよ?」

 透次の隣にいるエリスを見やる。

「うん、宙子の燃料も確保しないとだしね。それと…まあ、なんていうか、その…ちょっとだけ、で、デート…的な?(もじもじ」
「なるほどだよ」

 頷く繭佳。

「でもその格好だと、とても今からデートしに行くとは思えないんだよ」

 そう言って繭佳は、視線を少し下――ーずっとエリスを肩車しているディザイア――に移した。

 巨大な戦斧を握りしめ、変形合体した量産型ロペ子シリーズ(陸、海、空)を身に纏い完全武装したフルアーマーディザイア。
 担いでいるエリスの頭上に索敵レーダー兼砲台としてうさぬいを設置したその姿は、まさにアルティメット!

「…奴が大人しくしている筈がない」

 久遠ヶ原に住まう白い獣。その名は、白くまー。

「道中はまだ良い、問題は料理…そして俺をロケットに詰め込もうとするだろう」

 経験による先読み。
 約束された未来。ディザイアの目には、\がおー/と来て『ズシャー』されて\ぐわー/となる光景までもがしっかりと視えていた。

「だが最後は、最後こそは俺が勝つ!」

 勝てるといいな!

 一方、大次郎の背に居た美詩は、内務室の仲間達と改めて探索プランの確認を行なう。

「手に入れた地図に描かれている『記号』の場所を順に回る、で良いかしら?」
「……はい……。……問題無いと思いますぅ……」

 記号は全部で9個。
 『茸』、『扉』、『土偶』、『虎』、『鶏』、『魚』、『果実』、『温泉』、『神社』。
 とりあえず、入口から近い順に行ってみるとしよう。

「シェルター内がダンジョン化する前の見取り図も手に入れてあるよ」

 雨唯が、資料室で借りた当時の建築資料のコピーを差し出す。
 これを樹海の地図と照らし合わせれば、より正確な位置関係が割り出せるはずだ。

「じゃあ、端末に取り込むね」

 艶華が、内務室標準装備のタブレットを使ってそれぞれの図面をスキャン。合成した地図データをメンバー全員のタブレットに送信。
 するとそれを見ていた透次が、

「すみません。その地図、僕も書き写させてもらって良いですか?」

 手書きで地道にマッピングしながら進まなければいけないと思っていたので、完成版の地図があるならとても助かる。

「あ、はい。じゃあ、どうぞ」

 人見知りな態度を覗かせつつも、タブレット画面を見せてくれる艶華。
 その後、今度は調が荷物の中から緑色の衣服を取り出して配り始める。

「ジャングルの探索にはこちらのお召し物がお勧めですわ」

 サファリスーツ一式。
 動きを損なわず、例え堅い草木で擦れても、丈夫なコットン生地でお肌も安心。

「予備もありますので、宜しければ皆様もどうぞ」

 こんなこともあろうかと。
 調は透次やディザイア、エリスにもサファリ服を貸与。

「ありがとうございます」
「ありがたい」
「ありがとー」

 お着替えタイムごそごそ。
 ちなみに女子達が着替えている間は、うさぬいと黒うさがディザイア&透次の目をもっふりブラインド。

 着替えも終え、周囲の警戒は主に艶華と優祢が担当。
 優祢のヒリュウも加えれば、上からの視界で景色や地形の確認が可能だ。草木に邪魔されない範囲で、だが。

「もしもお怪我なさった場合のご用意もしてありますぅ」

 涙羽が救急箱を撫でながら告げた。
 次いで、艶華と愛良耶も言う。

「後はオペ子さんが言っていた防災物資の入れ替えですね」
「輸送用に、台車を手配して御座いますわ」

 牽引はレン子が担当。
 これで準備は整った。いざシェルターの中へ――

「よっしゃあ、やりますよ!!」

 その時、新たな人物が声を張り上げた。

 蔵倫殺しの変たi…じゃなかった、ラブコメ男子の袋井 雅人(jb1469)、現着。
 その格好は、もちろんほぼ全裸なラブコメ仮面スタイル。ではなく、シャツも上着もパンツもズボンも正しく着用して魔具も忘れず装備した、大規模作戦にも耐えられそうなガッチガチの戦闘スタイル。
 これには待機していたモザイク担当スタッフも困惑を禁じえない。

「私も有機燃料の素材を集めまくりますよ!」

 探索エリアで大暴れできると聞いてテンションMAX。
 全裸の時も服を着ている時も彼はいつだって本気なのだ。

「袋井様も宜しければこちらをどうぞ」
「やあ、ありがとうございます!」

 調が差し出したサファリ服を喜んで受け取る雅人。
 その場でシュバッとお着替え(0.4秒

「さあ行きますよ!!」

 シェルターの中へ飛び込む、フルアーマー雅人。

「俺達も負けてられん」

 アルティメットディザイアも改めてエリス&うさぬいを担ぎ、樹海へ突入。

「お嬢、俺が守るから…俺を守ってくれ(名言」
「うーん…たぶん無理かも?(経験」

 まさに慈悲もなし。

 あ、でも一気に踏破しちゃったらデートもすぐ終わっちゃうから、できるだけゆっくり進もね。



 一方、完全武装といえばこちらも。

「爆殺、圧壊、まとめてどっかーんだぜ」

 宙子のてっぺんに登って地上を見下ろすラファル A ユーティライネン(jb4620)。
 わざわざ何が棲んでいるか分からない樹海の中を歩かずとも、斡旋所ごと吹き飛ばして後から瓦礫を漁ればよかろうなのだ。

 全身に仕込まれた兵装のロックを解除ガショーン。
 完全義体スーパーラファルモードへと変形して、ありったけの火力を――

『馬鹿やってないで降りてこい』

 宙子の足元から、拡声器を持った局長が言った。

『地下の造りはシェルターそのものだと言っているだろう。ロビーだけ消し飛ばす気か』
「ちぇー」

 口を尖らせて渋々降りるラファルさん。

「私もまだ仕事があるから、くれぐれも普通に頼むぞ」

 そう言い残して、局長は斡旋所へと戻っていく。

「つれねーなー」

 ラファルは不満げに呟いた後、仕方なく普通に燃料を採りに行く事に。
 シェルターの扉を通り、ちょっと歩いた所でシエりじをを発見。

\メカだ/
\ロボだ/
\たーみねーたーだ/

「これでいいか」

 茎を掴んでテキトーにぶちぶちー。

「…ん?」

 ふと、気配を感じて顔を上げるラファル。
 普段から義体の整備で世話になっている技師達が、いつの間にか彼女を取り囲むようにして立っていた。

「なんだオマエらこんなとこで――ウワナニヲスルー!」



 これといって目的地を定める事なく地下迷宮の中を進んでいた石。ぶっちゃけ自分が今どの辺にいるのか既に分からない。
 でも獣道に沿って適当にうろうろしていると、シエりじをの群生地を発見。

「刈らねば」

 忍刀で根元からズバー!

\ま゛ー(断末魔)/

 返す刀でズババー!

\ま゛ー(断末魔)/

「クセになりそうな手応えじゃのう」

 気がつくと刈り跡がまるでミステリーサークルのように。
 そのまま草むらを楽しくバッサバッサしていると、

\ウワナニヲスルー!/

 謎の集団に拉致られるラファルを目撃。
 あっという間にどこかへと連れ去られていく。

「……」

 それをじーっと見ていた石は、

「刈らねば」

 何事も無かったように草刈りを再開した。



「ち、地図によると、この辺りですね」

 大次郎の背で、優祢が言う。
 図面に記されている記号は【茸】。身を乗り出して周囲の地面を覗いてみると、木々の根元に乳白色の物体が群生していた。
 正体不明のぁゃιぃ茸。

 するとそこへ、悠人とロペ子が通り掛かった。

「キノコか…」

 眼鏡をクイッとして謎茸を凝視する悠人。
 採取すべきか否か。嫁との狩猟生活で、自分にもそこそこ見分ける知識と技術も身に付いてはいると思うが……

「やめとこ」

 なにせここは久遠ヶ原の地下。どんな初見殺し茸があるか分からない。

「で、では、代わりに私が」

 優祢はヒリュウに頼んで茸をもぎ取ってもらい、レン子が牽引する荷台へせっせと積み込む。
 ぁゃιぃとは言え、茸類はバイオ燃料にも向いているはず。

「お手伝いしますよ!」

 雅人が進み出る。
 ヒリュウと一緒に茸狩り。

 その時、不意に大次郎がくしゃみをブシャン!
 大容量の鼻息が直撃して、謎茸の胞子が僅かにふわ〜。

 直後、

「…あれ? 私、ちょっと胸おっきくなってない!?」

 自身の体を見下ろしながら声を上げるエリス。
 一同がディザイアの肩に乗っている彼女の方を振り返るも、しかしそのバストサイズはこれといって変わっていなかった。にも関わらず、

「すごい…! これEくらいあるかも…!?(ふんすふんす」

 おや? エリスの様子がおかしい。

 更に次の瞬間、大次郎の頭に乗っていた恋音にも異変が起きた。
 胸が突然2倍ほどに肥大化し、うつ伏せだった姿勢が押し上げられて仰向けころりん。

「…………お、おぉぉ…………?」

 こちらは実際にバストアップしている。

 エリス:幻覚
 恋音:豊胸

 どうやら同じに見えた謎茸にも種類があるようで、乳に関連したナニカという共通点はあるものの、その作用はそれぞれ微妙に違うらしい。

「目を覚ますんだお嬢…!」
「やっぱりヤバイキノコだったか」

 悠人は鼻と口を布で覆いながら、ロペ子を掃除機モードでブオー。
 空気中の胞子を除去してから、食用可能な獲物を探して他のエリアへと歩いていく。

 優祢達も一通り謎茸を採取した後、地図にある次の記号を目指して歩みを再開した。



 優祢達が去ってからしばらくして、

「たくさん採りますよ〜」

 地下シェルターへと挑む幼女、深森 木葉(jb1711)が通り掛かった。
 大きな籠を背負い、樹海をてくてく。

「ところで、バイオ燃料って何だろう…」

 よくわからないけど、きっと何かよく燃えるもの。

「まあ、適当に落ちているものを拾っていきましょう〜」

 木葉は視界に入った乳白色の茸に手を伸ばし、ぽいぽいと籠に放りながら奥へ奥へと歩いていった――



 元気に探索する2人組、蒼井 流(ja8263)と築田多紀(jb9792)。

「燃料探して最後はロケット見送るんだぜっ」
「さて、何が出るか」

 足場の悪い道は極力避けつつ、しかし右往左往して方角を見失わぬよう器用に進む。
 多紀が読書で培ったボーイスカウトのテクニックが、ここぞとばかりに大活躍。

 だが大自然を相手に100%の保障など決して存在しない。
 万一に備え、事前に準備したおやつは温存。小腹が空いたらスカウトテクを駆使して現地調達するのだ。

「るーくん、薩摩芋があるぞ!」

 多紀が地表を這っている蔓を発見。掘り起こしてズボッと引っこ抜く。
 芋とったどー!

「早速焼いて食べよう」

 薩摩芋の蔓を使って即席のユミギリ式火起こし道具を拵えつつ、水気の少ない枝葉を集めて焚き木を組む。
 手早く着火。
 こんがりプスプス。

\ウルトラ上手に焼けましたー!(効果音)/

 仲良く半分こ。
 こんがり芋Gをほくほくと頬張りながら、多紀は余った芋について考察してみる。

「るーくん、薩摩芋は皮を剥いて食べるとオナラが出る。焼き芋の皮を剥いて燃料に出来ないか?」
「は〜、多紀はやっぱり物知りだなっ」
「もしくは皮を剥いた焼き芋をたくさん食べた生物を乗せる」

 愛護団体が白目不可避!

「まあそれはは冗談だが」
「冗談なのかっ、それが本当に出来たら面白そうなのになっ」

 元気に感心しながら焼き芋はもはも。
 ふと、薩摩芋とは違う別の蔓草を発見する流。気になって手で掻き分けてみると、

「多紀、スイカだっ」

 まるっとした緑の大玉。

「やったな、るーくん!」
「スイカ割りができるぜっ」

 2人はヒャッハー!とスイカに飛び掛かった。



 樹海の中をうろつく1匹の熊。

 いやよく見るとその姿はお腹にチャックが付いたキグルミで、中身は上野定吉(jc1230)だった。
 すぐ後ろには、ふわふわと付いて歩く真白 マヤカ(jc1401)。

 マヤカは笑顔で樹海を見渡しながら言う。

「不思議な場所ね」

 鉄とコンクリートで出来ているはずのシェルターが、今はすっかり原生のかほり。

「何が出てくるか分からんからのう。マヤカどのはわしの後ろを付いてくるのじゃ」

 ヒトの背よりも丈の高い草もある。
 定吉はもっふりとした熊足で草を踏みしめて道を作りながら、慎重にマヤカをエスコート。

「ありがとう、お供するわ」

 マヤカは寄り添うように進みつつ、しかしふと後ろを振り返る。

「どうかしたかのう?」
「なんだか気配がするの」

 だが振り向いた先には特に何も見当たらず。

「気のせいみたいね」
「オペ子どのの話では、他の者達も探索しておるようじゃ。足音がこだましたのかもしれぬ」

 2人は納得したように頷くと、改めて樹海の中を歩き出した――



 地図記号【扉】のポイントにやってきた内務室組と雅人、そして透次とディザイア&エリス。すっかり蔦に覆われてしまっているが、壁に取り付けられた金属製の大きな扉がそこにあった。
 ちなみにエリスの幻覚や恋音の乳膨張はもう治まった模様。

 タブレット画面の地図と目の前の扉を交互に見比べていた艶華が、一同に言う。

「ここで間違いないです」
「……では、開けてみましょう……」

 恋音が頷き、レン子に指示を出す。
 樹海探索という事で装備しておいた草刈り機のスイッチオン、ブイーンぞりぞり。

 障害の無くなった扉を潜ると、中は大量のモニターや電子機器がずらりと並ぶ『警備室』のような部屋になっていた。どうやらシェルター内のシステムを管理する為の施設らしい。
 艶華がスイッチを入れてみると、問題なく起動。

「監視カメラもちゃんと稼動してますね。レンズに蔦が被ってて緑色しか映ってませんけど」

 やっぱり大掃除しないとダメっぽい。
 まあ、それらはとりあえず置いておくとして、

「地図だと、【土偶】もここのはずなんだよ」

 繭佳がタブレットの画面を指す。
 【扉】のすぐ隣に【土偶】のマークが記されている。

 室内をぐるりと見渡すと、入ってきたのとは別の扉を発見。おそるおそる開けてみる。すると扉の向こうには管理室よりも大きな空間が広がっており、缶詰や飲料水、毛布や衣類といった防災グッズが積まれていた。
 更に、その保管庫の奥にも扉があり、中には『土偶』や『埴輪』といったよくわからない物がずらり。シェルター建設時に地中から発掘された物を一時的に入れておいたものの、そのまま忘れ去られた…とかだろうか。

「あれ? ここにも地図があるんだよ?」

 そう言って繭佳が手に取ったのは、1枚の石板。石の表面に、このシェルターとは違う、どこかのジャングルの見取り図が彫られている。
 繭佳の手元を覗きこんだエリスとディザイアが、はてと首を傾げる。

「その見取り図、どこかで見た事あるような…」
「確かに…」

 直後、ぴこーん!と思い出す。

「「1万年前の牛乳…!」」

 大きくなる秘宝。
 石板に彫られているのは、いつぞや挑んだジャングルの地図と同じものだった。

「だとすると、ここにある発掘物を作ったのは、秘宝を作った文明と同じ文明っていう可能性が高そうなんだよ」

 そして倉庫内には、もう1枚石板が保管されていた。
 そちらは地図ではなく、絵文字のような記号で構成された、何らかの文章。

「……おぉ……。……少し興味がありますねぇ……」
「調べてくかー?」

 尋ねたフェルミに、恋音が小さく頷く。

「……そうさせていただけると、ありがたいのですよぉ……」

 という訳で、発掘物を解析する為、内務室組はしばしこの場に留まる事に。
 一方、恋音や繭佳達が発掘物と睨めっこしている後ろで、艶華は荷台に積んできた新しい保存食を古い物と入れ替える作業に取り掛かる。

 レン子に指示を出すだけの簡単なお仕事。
 清掃業務ではチート級のスペックを誇るロペ子シリーズ。それは姉妹機においても例外ではなく、レン子は凄まじい勢いで物資の搬出・搬入をこなした。

 対してディザイアは、これといって手伝えそうな事も無さそうだったので透次や雅人に提案。

「じゃあ俺達は先に進むとするかね」
「そうですね」
「恋音達が頑張ってる間に、私もイロイロ頑張りますよー!」

 内務室組に手を振り、ディザイア達は保管庫および管理室を後にした。



 草を踏みしめながら進んでいた定吉&マヤカだったが、不意に開けた空間を発見。
 草がキレイに刈り取られ、まるで絨毯のようにミステリーサークルがぽっかりと。

「一休みするのに丁度よさそうじゃのう。ここらで腹ごしらえするのじゃ」

 腹が減ってはいくさができぬ。そう言って定吉は、ミステリーサークルの真ん中でどっこらせと腰を下ろした。
 マヤカもそれに続き、出かける前に作った手製のお弁当を広げる。
 手を合わせていただきます。

「うむ旨いのう、良い嫁になるじゃろうて(未だ自らの嫁だと実感が湧かない熊」
「嬉しいわ、ありがとう(おかしい事に気づかない天使」

 天然×純真。ボケの化学反応が止まらない。
 どなたかお客さまの中にツッコミが得意な方はいらっしゃいませんかいや確か何人かいたはず早く来て――


「……(じー」

 しゃがみこんで地面を凝視していた悠人。
 落ち葉の上に土が被っているのを発見。同じような状態の葉が、一定の間隔で点々と。

「この歩幅……小動物かな」

 ナバホ族なみのトラッキング技術。
 一部始終をロペ子に撮影されつつ、悠人は獲物の後を追う。


 歩くのに飽きて座りこんだジェンティアン。

「早上ちゃん、お茶ちょーだい」
「持っていない」
「じゃあ榊ちゃん、ハバネロスナックちょーだい」
「持っていない」
「ちょっと2人共、なんにも持ってないじゃん。何でここにいるの」
「「お前が喚んだからだ」」


「つ、疲れたんだな。こ、交代の時間なんだな」
「じゃあ次は三田さんね」

 強盗トリオの子分(太)を馬代わりにして楽々と進んでいた真緋呂。
 5分経ったので次の馬に乗り換える。

「おのれ、高貴なる私をこんな扱いに…」
「あ、奥さんは私と一緒に乗って良いからね」
「ごめんねダーリン(でも乗る」

 三田馬の背に横座りで二人乗り。

「あ。すいません。うちのが、ほんと。すいません」

 一機はどこまでも恐縮しながら、ひたすら頭を下げる。


「姫叔父! 今度はホントにタケノコ見つけた!」
「だから『姫』を付けて呼ぶんじゃないといつも言って――あ、こら、タケノコを斬るな。ちゃんと掘り出して採れ」

 刀をブンブンしながら走り回るあけびを、やんわりと叱りつける藤忠。


 ――ツッコミ班は忙しくて来られそうになかった。

 しかしそれとは別の問題として、クマグルミで頭まですっぽり覆われている定吉はどうやってお弁当を食べているのか。
 映像は何故か定吉の後方からのアングルで固定されており、食べている間ずっと彼の後頭部しか見えなかった。



 薙刀でぞりぞりとタケノコを掘り起こす藤忠。
 キレイに土から引っこ抜き、掘った穴は馴れた手つきでぱっぱと埋め戻す。
 そして傷一つ無い見事なタケノコを、収穫用の籠の中へ入れr

\プギー!/

 おっと通りすがりの暴れイノシシ!

 藤忠は慌てずにスッと半歩横へ移動。
 猛進してきたイノシシは藤忠を撥ねる事なく、そのまま彼の脇を抜けて一直線に走り抜けていった。

 何事も無かったかのようにタケノコを籠に納める藤忠。

 こう見えても不知火の家は忍の一族。自然の環境には慣れている。
 その事は過去の依頼やマイページでもちょくちょく主張しているのだが…

「忘れていた奴はいないだろうな?」

 はい(挙手

「あっ、ウサギ発見!」

 不意にあけびが林の一角を指差す。
 そこには、雑草をもしゃもしゃしている野うさぎがいた。

「ふむ。良い毛並みだ」
「もふもふ!」

 抱っこしたい衝動に駆られて飛び掛かるあけび。
 藤忠もそれに続き、ウサギの方へ足を向け、

 瞬間、あけびの眼前で、草陰から飛んできた矢がウサギの頭部に深々と突き刺さ(しばらくお待ちください――


 ――仕留めた獲物(ウサギ)をロペ子に積み込む悠人。
 レシピを考えながら、鮮度が落ちる前に次の獲物を探して森の中へと消えていく。

「あっ、ウサギ発見!」
「ふむ。良い毛並みだ」

 目の前で起こった衝撃映像は見なかった事に。
 あけびと藤忠は別の野うさぎを見つけて、じっくりたっぷりもふもふを堪能した。



 真緋呂は馬(爆弾魔)の背に腰掛けて酢昆布をもしゃもしゃしながら、馬(爆弾魔)の後頭部をつっつく。

「お腹すいた」
「えっ、いま酢昆布を食べているのに?」
「あ。すいません。うちのが、ほんと。もう、すいません」
「早く燃料持って帰ってお肉食べたい」

 A5霜降り牛。
 炭火でジュワーな光景を頭に思い浮かべつつ、その隅っこの方で燃料についても考えてみる真緋呂(脳内メーカー

「バイオ燃料って糖質、でんぷん質とかだっけ?」

 思いつくのはトウモロコシ。
 お肉と一緒に焼いて食べればより幸せ。
 探さねば。

「出番よポチ(仮)!」

 三田夫妻の愛犬(人狼)にトウモロコシを探すよう指示。
 犬っぽいからきっと匂いでワンチャン。ワンちゃんだけにな!

\わふ/

 鼻をスンスンするポチ(仮)。すぐさま匂いをキャッチ。のしのしと二足歩行で脇道へ入っていき、トウモロコシ畑を発見。
 ここ採れワンワン。

「ぐう有能」

 これで美味しい燃料が出来る!

「ちなみにトウモロコシからできてるからってたべらんないからね?」

 一機@心配。
 食べるなら燃料にする前の状態で食べよね。余った分でね。

「じゃあいっぱい余るようにいっぱい採らないと。債務班さん、よろしくね!」
「「はい」」

 項垂れるように返事をしてトウモロコシをもぎ始める爆弾魔、強盗トリオ、三田夫妻。
 テキトーな蔓で縛って肩に担いでえんやこらせっせ。
 だがその時、

\プギー!/

 あっと通りすがりの暴れイノシシ!
 まるでボーリングピンのようにパカーン!と小気味の良い音を響かせて撥ね散らかされる債務班。一方、ぶつかった弾みで足が止まったイノシシは、周辺に転がったトウモロコシを貪り始めた。

 いかん、このままではせっかく収穫した燃料素材が食べ尽くされてしまう。
 一機はそっとイノシシの懐柔を試みる。

「よーしよしよし。いい子だなー? いい子だよねー? いい子だからこっちおいでー?」
\ブギー!/

 しかし鳩尾に突進プギー!

 かずきは やられてしまった!
 イノシシは けいかいしている!

 すると今度は真緋呂が友達汁を撒きながら、やさしくイノシシへ話しかける。

「大丈夫。大丈夫よ」

 風の谷のマヒロ。
 右手の指をそっとイノシシの鼻先へ差し出し…ながら左手ではコレダーバリバリ。

「怖くない(ニッコリ」

 巨神兵かな?
 本能で悟ったイノシシはごろんと仰向けに転がり、降伏の意思表示プギー。

「よーしよしよし(お腹わしゃしゃー」

 イノシシ、ゲットだぜ!

\ぽけっとだ/
\もんすたーだ/
\ぼーるがない/
\じむばっぢ/

 近くに生えていたシエりじを達が揺れる。
 真緋呂はイノシシを立たせると、シエりじををぶちぃと引っこ抜き、

「これあげるからトウモロコシは食べたらめっ、よ」

 イノシシに与えた。
 ついでに自分もお腹が空いていたのでシエりじをもしゃもしゃ。口いっぱいにサラダ感。

「一機君も食べる?」

 助け起こして草を差し出す。

「うん。なんていうか、うん」

 受け取って、同じようにもしゃる一機。
 獣を懐柔したり道草勧める逞しい真緋呂はきっとサバイバルな得意なフレンズ。

 そうしてフレンズ真緋呂は探索を再開しようと、新たにゲットしたイノシシの背に乗り――しかしその寸前、横から飛来した矢がイノシシの頭にグサー!
 とさぁ、と天に召されるイノシシ。

 現れたのは悠人&ロペ子。
 糧となったイノシシに手を合わせてから血抜き解体ロペ子に積載。

 対して、移動手段…もといフレンズを失った真緋呂は猛抗議。

「なんてひどい事を。お肉ください」

 お肉ください。

「燻製でよければ」

 炎焼で焚き火を起こして、その上に肉を吊るす。
 前菜にシエりじを焼きつつ燻製肉の仕上がりを待つ真緋呂達を残し、悠人とロペ子は次の獲物を探して去っていった。



 妙に拓けた場所に出た定吉とマヤカ。
 そこはなんとブロッコリー畑だった。

「よく手入れされとる」

 丁寧に耕された土、共栄作物であるシュンギクやレタスの混植、更には防虫ネットと追肥まで。
 いったい誰が世話をしているのか。

 ふと、定吉の頭上で豆電球がピカーン。

「マヤカどの、こうして見るとぶろっこりーが日本の山に見えぬか? 小さな森林じゃ。ばいおとやらいけるかもしれぬ」
「ええ、力強い緑の房ね。とても良い案だと思うわ」
「ちょっとばかし分けてもらうのじゃ」

 ふんすふんすと畑へ入っていく定吉。
 どこか嬉しそうな彼を見て、マヤカは他にも定吉の喜びそうな物がないか辺りを見回し――

 不意に熊と目が合った。
 定吉ではないガチ熊が後ろにいた。

 どうやらずっと感じていた気配の正体はこの熊だったらしい。

「あら、大変」

 定吉さん、熊さんよ。定吉さんも熊さんだけど、定吉さんじゃない方の熊さんよ。
 そう声を掛けようとした瞬間、

\ぐもー!/

 吠え熊。
 その咆哮で、ブロッコリーに手を伸ばしていた定吉も気がついて振り向く。

「なんと。ひょっとすると畑の主じゃろうか」

 ブロッコリーを守ろうとしているのかもしれない。
 定吉はマヤカを庇って前へ出つつ、身振り手振りで熊へ語りかける。
 ぶろっこりー くれ

 対する熊も、二本足で歩く定吉(クマグルミ)に対抗して立ち上がり、ベアクローで威嚇シャキーン。
 熊(着)vs熊(生)。

「ブロッコリーを賭けて男同士の戦いね」

 見守るマヤカ。
 どこからともなくゴングの音が鳴り響く。

 ボコスカボコスカ。
 取っ組み合って土煙を上げる2匹の熊。
 しばらくして、

「か、勝ったのじゃ…(ぷるぷる」

 所々に噛み跡のついたクマグルミが、小刻みに震えて立っていた。

 改めて畑へと入り、勝者の証『ブロッコリー』を手にする定吉。
 その後、しょんもりと地面に垂れている熊へと再度近づき、感謝を捧げる。

「見事なブロッコリーだのう。大切に使わせてもらうのじゃ」
「もしよければ、これをどうぞ」

 言いながらマヤカが手製のマヨネーズを熊に手渡す。
 つけて食べるとより美味しい。

\ぐも…/

 のそりと身を起こし、マヨネーズのチューブを受け取る熊。
 その時、

『あら。もふもふがいるわね』

 斧を担いだドラゴン(背番号1997)と、オカマ(筋骨隆々)の群れが通りすがった。
 ビクッとする熊ーズ。

『せっかくだから、もふらせてもらおうかしら』
「やだぁ〜ん、1人だけずぅ〜るぅ〜いぃ〜!」
「アァ〜タァ〜シィ〜もぉ〜!」

 2匹の熊に殺到する背番号とオカマ(怖くない(いいえ

 代わる代わる撫で回される定吉と熊。だがその直後、突然飛んできた1本の矢が定吉の頭にぶっすー。

「ん? いま何か当たったかのう?(きょろきょろ」

 しかし定吉は平然としていた。
 キグルミなので中身は無事だった模様。

「熊肉は失敗か…」
「鍋ハ オアズケ デス」

 草むらから姿を見せる悠人&ロペ子。
 例え熟達したハンターであろうとも、時には狩りをしくじる事もある。自然の摂理を噛み締めながら、悠人とロペ子は振り返る事なく次の獲物を探して去っていった。



 内務室の面々と別れた透次と雅人とディザイア&エリス。

 書き写しておいた地図と見比べながら、壁に一定間隔置きに剣で印を刻んで歩く。特に分かれ道等では、番号を記してより位置を判別し易く。そうやって迷わないように注意しながら、透次が無音歩行も駆使して先頭を行く。

 最大限の警戒。
 なにせここは久遠ヶ原の地下に発生した謎の樹海。いつ謎の猛獣に襲われて謎の失踪を遂げてもおかしくはないのだ。

 前方に曲がり角が見え、透次は後ろにいる雅人やディザイアらに手の平を向けて足を止める。
 音を立てず、角の縁からそっと片目を出して先の様子を確認。透次の頭に乗っていた黒うさも、一緒に片目を出してじー。

 自らの口に収まりきらぬほど大きな牙を持った虎――サーベルタイガーがいた。体も大きい。
 道の真ん中を塞ぐように、地面に伏せて寝息を立てている。

\グル!?/

 と思った次の瞬間、謎の検知能力で透次達に気づくサーベルタイガー。
 さすが謎のダンジョン、なんでもありだぜ。

\グルルル…/

 ゆらりと起き上がって威嚇タイガー。
 するとそこへ、

「今度こそ野獣が現れたんジャマイカ?」
「そう言ってまた誰かのキグルミじゃないだろうな」

 氷と炎がベストマッチフォームな雪子&日菜子が参上。

「あっちがサーベルなタイガーなら、こっちはメドローアなゴリラですよ筋肉達磨先輩!」
「よし今からお前を虎の昼メシにしてやる歯を食いしばれ」

 などと悪態を吐き合いながら、雪子が日菜子にdefragmentation.exeを使用。
 日菜子自身も光纏し、その拳に氷と炎のアウルが宿る。

 先手を取ったのはアルティメットなディザイア。
 肩に乗せたエリスのうさぬいビームに合わせ、握りしめた戦斧を振るってサーベルタイガーの右の牙を折りに行く。

 すかさず透次も援護。
 爆雷符で牽制しつつ距離を詰め、風斬りで左の牙を。

 同時に日菜子が、虎の鼻っ柱を狙って氷炎の正拳を衝き入れる。

 いずれも直撃ズドーン!
 …にも関わらずサーベルタイガーは微動だにせず、なんと両の牙と顔面だけでそれらの攻撃を完全に受け止めていた!

 瞬間、サーベルタイガーの反撃。
 巨大な牙を剥き、飛び掛かりつつ獲物を両手で抱きこむようにして繰り出されるダブル虎爪パンチ!

 咄嗟に拳でサーベルタイガーの顎を弾き上げて突進の軌道を逸らし、流れるように身を屈めて相手の体の下を滑り抜ける日菜子。
 両サイドから迫ったタイガーフックを空蝉で躱す透次。
 まさしくサーベルのように振り下ろされた牙の勢いをエリスがうさぬい砲で削ぎ、鎧と盾の堅牢さを以て正面から弾き返すアルティメットディザイアとフルアーマー雅人。
 そして最初からずっと安全な距離に位置取っていた雪子。

 接敵一番、一瞬の攻防。
 だがその刹那の中で、一同…特にディザイアと雪子は、すぐに悟った。

\この斡旋所の依頼に出てくる野生の獣メッチャ強い/

 その時、また新たな人影が通り掛かった。
 ジェンティアン with Bと和紗とリーゼ(と、それをこっそり追跡する謎の段ボール箱)。
 先頭にいたジェンティアンとサーベルタイガーの目が合う。

 やばい、狩られる。 by ジェンティアン@ヒエラルキー底辺

「助けてwith B!」

 ジェンティアンは咄嗟にお供のwith B(早上&栄一)に隠れようとするが、ジェンティアンが1歩下がると同時に2人も1歩後退。
 右へ回り込もうとすると、2人も右へ。左に行こうとすると、2人も左へ。頑なに前へ出ようとしない早上と栄一。

「ちょっとなんで逃げるの!?」
「逃げてなどいない」
「俺達は今、with Bだからな」

 with Bは常にセンターの両サイド斜め後ろに位置するのが役目なのだ。

「何その言われた仕事はちゃんとやるけど自分からは何したら良いか分かんない新社会人みたいな思考…!」

 などとやっている間に、ゆっくり1歩ずつ近づいてくるサーベルタイガー。

「パサラン…! パサランたすけてぱさらん!」

 咄嗟にでっかい毛玉を呼び出すジェンティアン。
 パサランは体が大きい! 野生の獣は自分よりも大きいケモノに怯むはず!

 という思惑も空しく次の瞬間、のみこむ間も無く虎ぱんちで吹き飛ぶパサラン(ダメージは召喚主に直通どん!
 ジェンティアンは やられてしまった!

 次いでサーベルタイガーが目を付けたのは、和紗&リーゼ。
 しかし先手を取ったのは和紗だった。おもむろに猫じゃらし…っぽい槍『エノコロ』を取り出す。

\!/

 反応タイガー。

 右に一振り。
 左に一振り。
 穂先でサーベルタイガーの鼻先をこしょこしょと煽った後、遠くに猫槍ぽーい。

 虎まっしぐら。
 その隙に和紗はリーゼと共に戦場から離脱(レモンmgmg

 直後、入れ違いでやって来るドラゴンとオカマ団。
 消えた猫槍を探してキョロキョロしているサーベルタイガーの存在に気がつく。

『ここにももふもふがいるわね』
「おっきぃねこちゅあ〜ん!」
「羽交い絞めぇ〜ん!」

 猛獣へと襲い掛かる獣の頂点(?)と霊長類の頂点(確信)。
 もふもふ!

\グルルル!!/
『あらあら、暴れん坊ね』

 もがいて華宵達を振り払うサーベルタイガー。
 直後、何かに気づいてピクリと耳先を揺らす。

 謎の検知能力で、草むらに隠れていた悠人&ロペ子を発見。
 悠人が矢を番えるよりも早く、牙と爪を翳して飛び掛かっていた。

「!?」
「アバー」

 頭からガプっとされて倒れる悠人。
 バリバリ爪砥ぎされて転がるロペ子。

 荒ぶる虎のポーズ。

 こいつぁやべぇ。
 一同はジェンティアンと悠人とロペ子の尊い犠牲を乗り越えて、全速力で逃走した。



 ――その少し後。

 発掘物を解析していた内務室組。

「ふむふむ。なるほど、だよ」

 繭佳がざっくりと石板の解読に成功。
 石板に彫られている文章は、どうやら秘宝のレシピを記しているらしい。

 牛乳、素材、調合。
 牛乳をベースに、幾つかの素材を加えてじっくりコトコト。先ほど優祢が見つけた乳白色の茸も、材料の1つであるようだ。

「もしかしたら他の素材もシェルター内で見つかるかもしれないんだよ」

 繭佳に促され、内務室組は再び緑樹の海へと繰り出す。
 しばらく歩いて幾度目かの曲がり角に近づいた時、その手前で愛良耶が待ったを掛ける。

「地図に【虎】のような印が御座います」

 角を曲がった先に、がおー!なマーク。
 猛獣の生息域なのかもしれない。気をつけて進まねば。

 大次郎に乗ったまま一同が角を曲がると、

\グルルル!/

 サーベルタイガーが あらわれた!

 だいじろうは みおろした!

\グルッ!?/

 体格差3倍以上。
 予想外の巨猫に、へにょっと僅かに腰が下がる虎。

「野生のトラかー。まあまあ大きいなー」
「……おぉ……。……牙も、中々立派ですねぇ……」
「でも肉食獣の放し飼いは有権者に与えるイメージがあまり良くなさそうね」
「獰猛なもふもふ……モフリストたる人間に与えられた試練に御座います」
「顎の力も結構ありそうだ。解体した柱や壁材を砕くのに一役買ってくれるかもしれないな」
「あらあら。噛み癖はしっかり躾けないと、誰かが怪我をしたら大変ですぅ」
「久遠ヶ原なら、噛まれて喜ぶヒトもたくさんいそうなんだよ」
「貴族の中には、庭で獅子を飼われるような方もいらっしゃるとお聞きした事があります。きっとこの子もそういうご趣向のアレですのね」
「こんなのを飼ってたらキーボードがいくつあっても足りないね」
「ほ、ホテルの近くに動物園を開いて、そこで活躍してもらうというプランも」

 上から目線(物理的な意味で)。

「というか、こういうトラは大昔に絶滅したって前にテレビで見たぞー」
「……う、うぅん……。……そういえば以前エリスさんが、秘宝探しの際に遺跡の中で遭遇した事があると仰っていたような気がしますねぇ……」

 もしや、その時の個体がお引越ししてきた…?

 対して、怯みつつも逃げようとはしないサーベルタイガー。
 ここは自分のナワバリである。易々と明け渡す訳にはいかないのだ。

\グルァ!/

 牙と爪を振り翳し、大次郎へとジャンピング虎パンtびたーん!(大次郎のカウンターパンチ

\グル…/

 ぺしゃんこ。
 巨大な肉球にスタンプされてペラペラになったサーベルタイガーは、ぺら〜んと仰向けに引っくり返って服従の意を示した。

 サーベルタイガーが なかまになった!

 ふと、道端の草むらに横たわっているナニカに気づく愛良耶。
 ズタボロの悠人とロペ子。返事がない。ただの眼鏡とドラム缶のようだ。

「試練の贄となってしまわれたので御座いますね…」
「大次郎に乗ってなかったら私らも危なかったかもしれないなー」

 フェルミの言葉に頷き、愛良耶達は大次郎に感謝と労いを掛けながらもふもふ。
 内務室on大次郎は墓標のような眼鏡とドラム缶に手を合わせてから、サーベルタイガーを引き連れてのしのしのと先へ進んでいった。



 草や木をファイヤーしながらのんびり探検していた広星。
 ここまで戦闘なし。

「もっと誰かが襲われたりやられたりしてひどい目に遭わされる様が見られるかと思ったけどそうでもないな」

 せやろか。
 広星は目につく草木に放火して回りながら、気ままに奥へ。

 一方、一緒に探検していた春都は歩くのに疲れて、たれたパンダならぬ“たれはる”と化していた。
 広星の頭に乗って、たれ〜。

「こうにぃ、おやつ〜」
「草でも食べてなさい」

 引っこ抜いたシエりじをを与える。
 もしゃもしゃ(ヘルシー

 広星は引き続き樹海を焼き払…もとい迷子防止の目印を作るべく、手近な草に着火。
 だがその時、

 ころん

 屈んだ拍子に、たれはるが頭から転がり落ちる。

 シエりじををもしゃもしゃしながら顔を上げるたれはる。
 きょろきょろと辺りを見回すも、既に広星の姿は見えず。

「おろ?」

 もしかして:はぐれた可能性100%。

 たれはるは迷子になった。



 夢中で茸を拾っていた木葉。
 はたと我に帰って周りを見渡す。

「ここ、どこだろう…。あうう、迷子ですぅ…」

 気がつけば、何処とも知れぬ樹海の奥。

「まあ進んでいけば、いつか出れるでしょう〜」

 典型的遭難者の発想。
 再び茸を拾い集めながら、てくてくと歩き出す。

 その後、木葉の姿を見た者は誰もいなかった――……



「って、こんな終わり方、イヤですぅ〜」

 ぐすん、ぐすん、とベソをかきながら更に奥へ(歩くのはやめないスタイル

「だれかぁ…、いませんかぁ…。ぐすんっ」
\だんしんぐふらわー/

 呼び掛けに答えた声。木葉は咄嗟に顔を向ける。
 だがそこにいたのはヒトではなく、大きな木の根元で揺れるシエりじを達だった。

 しゃがみこんでシエりじをを撫でる。

「お花さん達も、迷子ですかぁ…?」
\定住/
\永住/
\らすとりぞーと/

 会話が成立しているのかいないのか。
 歩き疲れた木葉はそのままシエりじをの絨毯にぽてりと寝そべり、丸くなってうとうと。

「おとうさん、おかあさん…。むにゃむにゃ…」

 寝。

 しばらくして…

「ホワッツ?」

 アメリカが生んだ奇跡のおバカ、マイケル=アンジェルズ(jb2200)が通りすがった。
 木の根元で眠っている木葉を発見。

「Oh! 眠れる樹海の美少女デース☆」
「う〜ん…誰ですかぁ〜…?」

 その声で目が覚める木葉。

「こんな所でスリーピンしていては、カゼを召し上がってあっという間にインフルエンザデース☆」
「でも帰る道がわからないのですぅ…」
「オーライッ! 拙者が惨状仕ったからには、どんな問題もノープロブレム☆なのデース☆」

 そう言ってマイケルは、木葉をひょいっとお姫様抱っこ。

「困っている美少女を助けるデース☆」



 その頃、地上では――

 宙子の様子を見に来た凛。
 どっしりと聳え立つ巨大なドラム缶を足元から見上げていると、

「そこをどけヤンキー。給油の邪魔だ」
「テメエこそどこ見てやがるコラ。給油なら、いま俺がやってるとこだろうが」

 おや? 燃料ハッチの前で誰かが言い争いをしている?

「割れたガラスやプラスチック片を放り込む事のどこが給油だ」
「収集日以外に捨てられて業者のおっちゃんが困ってたんだから、宙子に食わせてやりゃあ一石二鳥じゃねえか」
「不燃物のどこをどう燃料にするつもりだ馬鹿め」
「アァ!? そう言うテメエもゴミ袋ばっかのくせしやがって。同じだろコラ」
「これは生ゴミだ、ちゃんと燃える。貴様と一緒にするな」

 ヴァニタスのハルと、シュトラッサーのアーリィ。
 おでこをゴッチンして睨み合い。

「上等だオイ表出ろ頭でっかち」
「既に屋外だろう。成層圏離脱でもするつもりかロケット頭」
「そこまでですの」

 瞬間、ハルアリの頭にゴイ〜ン!と振り下ろされる凛の盾。

「二人とも…もう少しは仲良くしてね。わたくし達お友達でしょう」
「テメエ凛コラ何しやがるコラ」
「お前とはともかく、この脳筋猿と友になった覚えは無い」

 ゴイ〜〜ン!

「まだ何か仰いまして?」
「「いえ、なにも…(タンコブぷしゅー」」
「暇でしたらお店の準備を手伝ってくださいですの」

 凛はハルアリの後ろ襟を掴み、会場までズルズルと引きずっていく。

 そんな凛達の背景で、同じようにどこかへと運ばれていく者がいた。
 義体技師に拉致られたラファル。

 会場裏にこっそりと建てられた特設ラボへ、ラファルを搬入。
 手術台に固定。

「やめろぶっとばすぞおらー」

 ぶんむくれるラファル。しかし技師達は聞く耳持たず。

\我々も技術力の高さを見せつけるのだ/

 ロボ研の宙子に対抗意識メラゾーマ。
 ラファルの持っていたシエりじを達を押し固めて芯にして、高密度の燃料棒を精製。ラファル本体にブースターユニットとして取り付け、『ラファルロケッティァ』として打ち上げるのだ――



 再びシェルター内の様子。
 新たにサーベルタイガーが加わった内務室組。引き続き大次郎に乗って地図の道順を辿っていると…

\\コケー!//

 真っ赤なトサカに黄色いクチバシ。筋肉のラインがみっちりくっきり浮き出た小麦肌のマッチョボディ。首から下が人間の姿をしたニワトリ頭の謎の生物、鶏男の群れが現れた。
 っていうかコイツら見た事ある。

「正月の山にいたなー」
「……はい、おりましたねぇ……(ふるふる」
「けったいな風貌…。でも体格は悪くないね」

 言いながら、雨唯は地図を確認。
 現在地は、丁度【鶏】の印が書かれている辺り。

「なるほど、鶏」

 納得。

「……うぅん……。……それにしましても、確かこの鶏男さん達は、元旦を過ぎた後、普通の鶏に戻られたはずなのですよぉ……」

 当時、研究用に数体持ち帰って観察していたので間違いない。
 鶏の中に眠る酉年の超自然的なぱぅわーが謎の樹海補正で解き放たれて謎の変容を遂げたのだろうか。

「何にせよ、あまり話し合いの通じる相手では無さそうだね。“鶏頭”だし」
「実際こいつら3歩あるいたら忘れるからなー」

 という訳で即時排除の方向で。

 そこへ、サーベルタイガー戦の騒乱で他のグループと散り散りになってしまっていたジェンティアン with B&ルフトハイト夫妻が鉢合わせた。
 神の兵士を使って何とか生き延びていたジェンティアン。大次郎の足元にいるサーベルタイガーと目が合う。

\グル/
「(びくっ)」
「お座り、で御座います」

 愛良耶がサーベルタイガーに指示。大人しく従うタイガー。
 それを見てジェンティアンはホッと一息ついた…のも束の間。今度は、石槍を持って佇む鶏男と視線がぶつかる。

\コケー!/
「(びくっ)」

 雄叫びを上げて走ってくる鶏男。
 これきっとまた狩られるやつ。 by ジェンティアン@ピラミッド最下層

「先手必勝、夜想曲…!」

 そうはさせじと、氷の夜想曲を放つジェンティアン。
 見事に直撃スヤァ。

 しかし走っていた慣性で前のめりに1歩、2歩、3歩――直後、ぱちりと目覚める鶏男。
 3歩進んだら寝ていた事を忘れた(鶏頭

 目の前にジェンティアン。

\コケ?/

 とりあえず手に持っていた槍でサクッ。
 ジェンティアンは やられてしまった!

 そのまま鶏男は、すぐ近くにいた和紗&リーゼを狙――

 トンッ

 瞬間、和紗が先制。
 鶏男の顎…クチバシ?を掌底で一撫で。脳が揺れて足が止まったトサカをフライパンでパカーン! まるっとした鳥目にレモン汁ブシャー!!

 悶絶チキン。

「今です」
「(こくり)」

 だばだばと離脱していく和紗&リーゼ。
 他の鶏男達が2人を追おうとするも、

「なんだか騒がしいのう」

 草刈り中だった石がエンカウント。
 マッチョチキンの群れと目が合う。

「面妖な」

 狩らねば。 by 石@猛禽類

 鬼術解放。タロットの七、罪人運びし火の車。
 炎の戦車で丸焼きチキン!

「こっちも負けてられないね」

 雨唯がもふもふ2匹にゴーサイン。
 大次郎のハンマーパンチとサーベルタイガーのジャンピングアタックで一掃ズバーン!

 後に残ったのは、普通の見た目に戻ったローストチキンと鶏ハムの山。
 そこへ、ふらりと通り掛かるとしお。

「ニワトリ……鶏がら……」

 そのままブツブツと歩き去っていく。

「そう言えば、石板に書かれていた調合に必要な素材。鶏の血液もその1つだったよね?」
「うん、だよ。丁度良いから、この鶏さんを使うんだよ」

 雨唯の問いに繭佳が頷く。
 燃料にもなって、まさに一石二鶏。
 鶏回収。

 手羽先を咥えながら草刈りを再開した石に手を振り、内務室組は次のポイントへと向かった。



 大量の芋とスイカを抱えて奥へとやって来た多紀&流。

「…ん?」
「多紀どうしたっ」
「潮の匂いがする。ような気がする」

 鼻をすんすんしながら道を進むと、なんと小さな海岸を発見。

「シェルターの中なのに、なぜ海水が」
「まあ久遠ヶ原島は海に囲まれてるからなっ」

 地下に海があってもおかしくはない。

「海……しお……(ブツブツ」

 としお通過。

「悩み事だろうか」
「大人は大変そうだなっ」

 まあいいか、せっかくだから休憩していこう。
 荷物を抱えて歩きっ放しだった足を休めるべく、浜辺に腰を下ろす2人。

「有害な水じゃないといいが…」

 靴下を脱ぎ、おそるおそる海に足を入れる。

 瞬間、水面が青く発光。
 星の光のような無数の粒が、波に合わせて眩く揺れた。

 すぐさまその正体に気づく多紀。

「るーくん、これだっ。バイオ燃料になるぞ!」

 光の正体はプランクトン。
 対する流も、手についた砂を払おうとして、ある物を発見。

「多紀、こっちは星の砂だっ」

 しかも光っている。
 この海岸は有機物の宝庫だった。

「多紀がプランクトンなら俺は光る星の砂をバイオ燃料にしてみるんだぜっ」
「よし、集めよう!」

 多紀と流はタッパーを取り出し、海水や砂をせっせと詰め始めた――



 ――多紀と流が光る海岸を見つけるよりも、少し前。

 受付カウンターに座ってサボ…もといパーティーで出す食べ物の味見をしていたオペ子と奏音。
 mgmgしながらロビーの様子をぼへーっと眺めていると、

\ギョ/
\ギョギョ/

 手足の生えた二足歩行の魚達が、銛を片手にぺたぺたと来訪。

「しんだ魚のような目をしてますね(mgmg」
「オペ子見た事あります。今年のバレンタインにチョコレー島に居ました(mgmg」

 当時の生き残りだろうか。
 しかし半魚人達は2人に襲い掛かってくる様子はなく、受付を素通り。通路を進み、先を急ぐように地下シェルターの方へと消えていく。

 複数の背びれを見送りつつ、無線機のスイッチを入れて突破に繋ぐオペ子。

「オペ子です。どうぞ」
『どうした。どうぞ』
「魚の群れがそちらへ歩いていきました。どうぞ」
『了解だ。見つけたら一緒に温泉入るか聞いてみるぜ』



 積み上げたタッパーを前に一息つく流と多紀。

「これだけあると流石に重そうだなっ」」
「芋とスイカもあるし…さて、どうやって運ぼうか」

 するとそこへ、別の探索班がやって来た。

「【魚】の印は、ここみたいね」

 美詩の声。
 大次郎に乗った内務室組。地図に描かれた『ため池』のような絵と目の前の海岸を見比べ、頷く。

 と同時に、

\ギョ/
\ギョギョ/

 林の中から半魚人達が現れた。

 更に別の方向からは、日菜子&雪子が会遇。ひなゆきコンビは、大次郎の足元にいるサーベルタイガーの存在にも気がつく。
 瞬間、雪子が発作。

「アイエエエエ! タイガー!? タイガーナンデ!?」

 逃げ切ったと思ったのにゴボボーッ!

「御安心ください。危険は御座いません」

 愛良耶が説明。
 きちんとお座りして待つ虎。

 一方で、半魚人達も一同を攻撃するような素振りはなく、水掻きのついた足でぺたぺたのたのたと水辺へ近づいていく。
 ちゃぷっと入水。

\\ギョギョー…//

 乾いた鱗に海水が染み渡る。

「……察するに、沈んでしまったチョコレー島の代わりになる住み処を探していた、というところでしょうかぁ……」

 恋音教授による考察。

「風呂は命の洗濯って言うしな」

 言いながら現れたのは突破@温泉探し中。

「水場を探せるなら温泉も探せたりしないか」

 手伝ってくれ、と半魚人達に頼んでみる。

\ギョッ/

 海水で身も心も潤った魚類の群れは快く返事をした。

「じゃあ私達は、とりあえず苔や水草あたりでも集めようかしら」

 バイオ燃料の材料を確保する美詩達。
 レン子の荷台にどっちゃり載せる。

「すまない、僕らの収穫物も一緒に載せてはもらえないだろうか」
「重くて2人だけじゃ運びきれないんだぜっ」
「OKよ」

 という訳で一緒に積載。

 半魚人らと共に引き続き温泉を探す突破や、失神している雪子の両頬をビビビビッ!と往復ビンタして文字通り叩き起こしている日菜子。それぞれに別れを告げて、内務室組と多紀&流は次のポイントへ移動した。



 広星の頭から落っこちて迷子になってしまった春都。

「はぐれた時は…動いちゃだめ」

 こうにぃの教え。

 教えを守り、春都はその場に拠点を築いて待つ事に。
 おやつバッグの中から取り出したティーカップを地面に置き、角砂糖とコメディぱぅわーを奉納。手を合わせて祈りを捧げ、召喚呪文なむなむ。

「付喪神ハルト召・喚!」

 ぼうんっ

 一瞬ティーカップが煙に包まれ、その中に、春都によく似た姿のちんまりとした付喪神が現れた。

『よばれた? よばれた?』
「疲れたからお菓子のお家作って?」
『あい!』

 びしっと敬礼する付喪神ハルト。カップに入ったまま『うむむー』と神通力を溜め、お菓子の家どーん。
 実際便利。

「わーい♪」

 春都はハルトを持ってお菓子ハウスに入り、のんびりまったり寛ぎモードへ突入。
 倒壊しない程度にお菓子の壁を齧り、眠くなったらケセラン召喚。枕代わりにもっふりお昼寝。

「こうにぃが迎えに来るまで〜(すぴー」



 その頃、広星は――

「これでよし」

 地面に張ったワイヤーを草で覆って、こくりと点頭。
 トラップを作っていた。

 近くの草むらに隠れて、誰かが通り掛かるのを待つ。
 すると早速、獲物()がやって来た。

「完全にはぐれてしまいましたね」
「まあ、あっちはあっちで逞しく生きるだろう」
「むしろ一番危ないのはディザイアだもんね」
「チョット ナニイッテルカ ワカラナイ」

 サーベルタイガー戦で日菜子や雪子、雅人らと散り散りになってしまった、透次とディザイア&エリス。
 透次が暗視鏡を装着し、木々が深く被った暗がりの中でも着実に進行。

「あっ、止まってください」

 巧妙に隠されていた地面のワイヤーに気づく透次。
 危ない所だった。うっかり踏んでいたら何が起こっていたか分からn

「刈らねば(使命感」
「新たな道を発券デース☆」
「おぉ〜、エリスちゃんも発見なのですぅ〜」
「皆さんご無事で何より!」

 草を刈るマシーンと化した石が登場。
 続けざまに、木葉を抱えたマイケルや、はぐれたと思っていた雅人も。

 そして草刈りを続行していた石が何も知らずに草ごとワイヤーをズバァ。

「ん? いま何か切――」

 ヒュッ

 ドゴォ!

 横から振り子のように落ちてきた巨大な丸太が、屈んだ石の頭頂部ギリギリを掠めて壁を叩く。

「「……」」

 それは一発だけでは終わらず、

 ヒュヒュヒュッ

 大量に迫りくる丸太トラップ。

「いかん、走れ!」

 ディザイアの怒号。

 全員脱兎。
 だがその矢先に、先頭を走っていたマイケルが悉く仕掛けを踏み抜いていく。

 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ
 ドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンッ!!

 走れど走れど、次々と。一同の背中を掠めて壁を打つ、無数の丸太。

「Oh! 丸太が拙者を追いかけて来るデース☆ 人気物はつらいデース☆」
「なんの! 私も負けていられませんよ!」

 対抗心を燃やして並び走る雅人。一緒に罠を全開で踏み抜く。
 おいばかやめろ――



「ひどい目に遭ったなぁ…」

 眼鏡のレンズをキュッと拭く悠人@探索再開。
 サーベルタイガーにガップリやられたものの、久遠ヶ原の不憫筆頭はあの程度ではしなないのだ。

 ロペ子も自己診断モードで再起動。
 ウィームと起き上がり、再びカメラを回しながら悠人のお供を続ける。

 だがその時、

「たすけてぇ〜!」

 道の奥から集団が走ってきた。

 マイケルに抱えられている木葉の悲鳴。その後ろで、ドカンドカンと丸太が降っている。
 幼女ピンチ。
 幼女以外もピンチ。

「HAHAHA! ノープロブレム☆ 力仕事は拙者達に任せるデース☆」
「全力で駆け抜けてみせますよー!」

 罠を1つ残らず踏み散らかしながら爆走するマイケルと雅人。
 壁走りでアクロバットに駆ける透次と石。
 エリスを担ぎ、陸子モードでギュイーンと疾走するディザイア。

 土煙と轟音ドドドド!!

「ちょっ――」

 ぶぎゅるっ
 罠を粉砕しながら走り抜けていく一同に巻き込まれ、悠人&ロペ子は再び地面の一部と化した。



 手術台の上で、ぶんむくれまくるラファル。

「やめろっつてんだろー。砲身にぶちこんで大気圏外まで射出すんぞこらー」

 抗議むなしく、高高度結露対策でボディを特殊素材に換装ガシャーン!



 お菓子ハウスで寝息春都。

「こうにぃが迎えに来るまで〜…(むにゃ」

 その頃、こうにぃは――

 光る海岸エリアに、足に巻きついて木に吊り上げる縄トラップ設置。

「Oh! 光る海で拙者オンステージデース☆」
「ロマンチックなパワースポットでラブコメエナジー充電しますよー!」

 踏み抜くマイケル(と木葉)&雅人。ヒュバッと作動した縄が足首に絡む。
 が、そのまま縄を引き千切って走り続ける2人の足。

「HAHAHA! 捕まえてごらん遊ばせデース☆」
「私の攻略ルートは一筋縄では行きませんよ! 縄だけに!」

 そして連鎖で作動した罠が後続組の足も狙う。
 それを水上歩行で華麗に避ける石と透次。
 エリスを抱え、海子モードで水中を魚雷のように突き進むディザイア。

 水飛沫と爆音ドドドド!!

「どえらい目に遭ったなぁ…」

 丸太から何とか抜け出して彷徨っていた悠人&ロペ子。
 眼鏡のレンズをキュキュッと拭k

「誰かたすけてぇ〜!」

 幼女の叫び。
 迫る集団。

 ぷちっ
 ヒュバッ
 びゅーん

 轢かれた悠人とロペ子は縄に吊り上げられて飛ばされた。



 技師達のおもちゃとして遊ばれるラファル。

「てめーらのオイルは何色だー」

 ブースター装着ジャキーン!



「こうにぃが迎えに〜…」

 だがしかしタライが落ちてくる鳴子トラップを設置にぃ。

「てーもない目に遭っt」

 爆走ドドドド!!

 ぷちっ
 カーン!

 悠人とロペ子は頭にタr



 放熱板の束のようにも見える対デブリ遠隔砲撃ユニット『ラファンネル』を装備し、完成に至ったラファルロケッティァ。

「てめーら後でぜってーぶっころ」

 技師達は改造が完了したラファルをロケット発射場へと設置しに行った。



「こうにぃが〜…」

 迎えに…。
 来る…。
 まで。
 …。

 迎えに来る気配なし。

 ふと窓の外を見ると、いつの間にかお菓子ハウスは野生の獣やシエりじを達にすんすんと取り囲まれていた。

「あわわ…」

 涙目でケセランを抱える春都。

「たすけてハルト!」
『あい!』

 付喪神ぱぅわーで神通力どどーん!
 掃除機のように周囲のケモノ共をお菓子ハウスに吸引し、その隙に春都は脱出。広星を探しに向かった――



 地図に記された【果実】のポイントへと到達した内務室組と流&多紀。
 目につくのはバナナやパパイア、マンゴー等々。印が示す通り、そのエリア一帯は果樹園となっていた。
 だが、何やら植生がおかしい。熱帯系の果物だけでなく、リンゴやモモなどの温帯果物まで混じっている。本来の収穫時期もてんでバラバラだ。

 更によく見ると、エリアの一角に焦げ茶色のどろっとした泉が涌き出ていた。近づいておそるおそる匂いを嗅いでみる。
 甘い香り。
 涙羽が指先に付けて、一口ぺろり。

「あらあら、どうやらチョコレートのようですぅ」

 それを聞き、恋音はすぐに思い至る。

「……チョコレー島の環境と、似ていますねぇ……」

 だから半魚人達も引き寄せられたのだろうか。

『あら、果物がたくさん。美味しそう』
「熟〜れ〜た〜てぇ〜!」

 その時、マサカリ担いだ華宵とキャシー達が出現。
 どらごんとオカマも引き寄せられた模様。

 折角なので皆で収穫していこう。
 パパイアは青い物も調理用に確保。各種葉の部分も糖質をたっぷりと含んでいてバイオ燃料に向いてそうなので一緒にもぎ、泉のチョコレートは掬ってタッパーに詰めておく。

 そうして、これまでに集めた素材の分もあり、レン子の荷台がいっぱいに。

「一度、荷物を整理しに戻った方が宜しいかと存じます」
「そうね。じゃあ私も一緒に行くわ」
「では私も」
「わ、私も、お手伝いします」

 愛良耶の提案に、美詩と愛良耶、そして優祢が同意。
 大所帯で往復するのも大変なので、探索と輸送の2班に分かれる事に。

 探索班は恋音&フェルミと共にこのまま大次郎に乗って次のポイントへ。
 輸送班は美詩が分隊長を努め、レン子と一緒に荷物を地上へ搬出。

『それなら私達も相乗りさせてもらおうかしら』

 大次郎をもふもふしながら華宵が言う。
 いろんなもふもふも堪能したし、素材も採ったし、そろそろ帰る。

 するとそこへ、ボロボロになりつつも採集を続けていた悠人とロペ子が。

「俺もその便に乗せてください」

 帰還する美詩班を見て、自分も一度ロペ子の中に溜まった収穫物を置きに行く事を選択。

「それじゃ、行きましょうか」

 探索班に手を振り、地上へ足を向ける美詩達。
 華宵は山積みの素材に紛れて荷台にちゃっかり乗っかり、

『ラクチンだわ』

 ゆらゆらどなどな〜。



 爆走している内に、石は皆とはぐれてしまった。
 しかし何はともあれ探索を再開。

 ここまで、目に付く草をひたすら刈りながら進んできた石。
 だが角を曲がった先で、草のない空間を発見。いや、よく見ると中央に1本だけシエりじをが生えている。

「刈らねば」

 根元めがけて忍刀をフルスイング。
 が、

 ガチンッ
 茎に当たった瞬間、硬い音がして刃が止まる。

\屈強/

 どや顔のシエりじを。

「どうやら完成したようですね」

 その時、どこからともなくシエルが現れた。

 蠱毒りじを。超常的な強度を誇るソレを土ごと掘り起こして回収。
 そのままシエルは、スーっと歩き去っていった。



 広星を探して樹海を彷徨っている内、偶然地上への脱出に成功した春都。

「た、たすかった…!」

 ロビーを抜け、外に出て、隣の特設会場でお店の準備をしているはずの凛の元へダッシュ。

 すると準備中のパーティー会場で、広星が平然とした様子で凛とティータイムしていた。
 迎えに来る気0。

「凛さん! こうにぃがひどいのです〜(泣」
「罠とか迷子とか、皆が悲鳴あげてるの面白かった」

 愉悦にぃ。

 一方で、凛は春都を「あらあらよしよし」と撫でてやりつつ、

「これから水音神の所へお礼参りしに行こうと思いますの。お二人とも手伝っていただけるかしら?」

 凛、春都、広星。それぞれ『神』の称号を持つ3人。
 『紅茶神』、『付喪神』、『私が神だ』。
 チームゴッド。神のぱぅわーで(水ω音)光臨の儀式。

 頷く春都と広星。
 3つの神の気とコメディ粒子が合わさり、出でませ出でませ召喚なむなむ――

 カッ!!

 視界が光に包まれた次の瞬間、3人は見た事のない景色に立っていた。
 水中とも宇宙ともつかぬ不思議な空間――コメディ時空。その中心に、一軒のログハウスが建っている。
 どうやら召喚ではなく固有結界を発動してしまったらしい。

「まあいいですの」

 凛は春都&広星と共にログハウスの中へ。

「お邪魔しますですの(ドアばぁん」
\よく来た/

 出迎えたのは水饅頭的なぷるんっとした謎の塊、(水ω音)。

「ここは水音ハウス。ゆっくりしていってね!」

 ぽよんぽよん跳ねる。
 そんな(水ω音)を、凛はむぎゅっと抱きかかえ、

「今までありがとうございましたですの。大好きですわ」
「こちらこそセンキューゴッド。私も愛してる」

 ひんやりぷるるん。
 それを横からつんつん突く春都。

「…みずまんじゅう(じゅるり」
「食べられないよ!(警告」
「とか言って実は…」
「食べられないよ!(確認」

 他方で広星も(水ω音)に挨拶。

「貴方が神か…」
「ドーモ。コウセイ=サン」
「ほかのWTRPGにはいつ出発する?」
「近々、頭文字がGで始まる世界が開放されるらしいじゃん? たぶん私の分身もそこに行くんじゃん?」
「私も同行しよう」
「よろしくお頼み申す」

 その時――

\みーずーねー! あーそーぼー!/

 ガシャーン!
 なんと窓を突き破って毬栗が飛び込んできた。

 ※)ω音)直撃グサー

 投げ入れたのは(ゼ▽ロ)@たこ焼き神。
 彼もまた、神ぱぅわーでこの時空にやって来たようだ。

「プッフー! 刺さってやんのー!」
「ありがとう。くらえ」

 仕返しの毬栗グサー!

 ※)▽ロ)
 ※)ω音)

 なかよし。

 次いで、また新たな来客が――

「ここが神の家か」

 草刈りしたり走ってたりしていたらいつの間にか辿り着いていた石。どうやら『草刈り神』の域へと至った模様。
 せっかくなのでゴッズハウスに押しかけて挨拶。

「どーもじゃ」
「いやはや、どーもどーも」
「そういやこの斡旋所に関わったの初めてじゃったのう」
「楽しんでもらえるとよいですがー」

 そうして集まった一同に、凛がティーセットを用意。

「水音神にお茶のおもてなしですわ」

 紅茶とチーズケーキお供え。
 ありがたくむしゃむしゃ。

「皆さんもどうぞ」
「「いただきます」」

 水音ハウスでの優雅なひととき。プライスレス。

「このまま皆で永遠にお茶会したいですの」

 それは儚くも強い願い。

 いつか、また会う日まで――






























 ――ってエンディングロールとか流れてそうな感じになってるけどリプレイはまだまだ続くよ!



 斡旋所の受付にいるオペ子と奏音。
 携帯ゲーム機で協力プレイぴこぴこ。もはや完全にサボッていた。

 そこへ、樹海から帰還したミハ熊と人狼がやって来る。
 漂う異臭。

『バイオな素材はバッチリ手に入れた。きっとよく燃えるぜ!』
\がう/

 人狼が、手に持っていた桶(モザイク)をずいっとオペ子に差し出す。

『おつおつです(コーホー』

 ガスマスクオペ子。

『15mほど離れてください(コーホー』

 ガスマスク奏音。

 受け取り拒否。
 だが更にそこへ、

「オペ子さん、頼まれたモノを持ってきたわ」

 悪臭を撒き散らしながら樹海から戻ってきたテン子。
 右手に生パ●ツ。
 左手に生ウ●コ。
 そしてすぐ後ろには、荷台いっぱいの予備の生パン●と生ウン●。
 勇気を出して採ってきた有機ブツ。震える手でオペ子&奏音に差し出s

 シャッターガラガラ!!
 受付閉。

「こら、うるさいぞ。何を騒いでいる」

 特設会場の様子を見に行っていた局長が戻ってきた。

 パ●ツとかウ●コとか持ったテン子&人狼と目が合う。

「……」
「……」
\……/

 じり、じり…。

「局長さん、受け取っt」

 ヒュゴォォォォ!!(火炎放射器

 汚物は消毒。
 ミハ熊を巻き込み、テン子と人狼は有機ブツごと灰になった。

 その後、オペ子と奏音がロビーにフローラルな芳香剤を撒いていると、レン子を連れた美詩と愛良耶と優祢、流と多紀、華宵とオカマ勢、ボロボロの悠人とロペ子が一時帰還。

「荷がいっぱいになったから、一旦戻ってきたわ」
「燃料は勿論、お料理にお使いになられる分も御座います」
「ど、どちらに置いておけば、よろしいですか?」
「お疲れ様です。パーティー会場で調理班が待機しているので直接渡してあげるとよいです」

 促され、外へと出る輸送班。
 屋外用の特設キッチンで歌音とレフニー、そしてお手伝いの華愛とヒーさんが、テキパキ準備を進めていた。

 レン子の荷台から採ってきた食材を下ろす一同。

「スイカを見つけてきたぜっ」
「薩摩芋もあるぞ!」
『果物もたくさんどうぞ』
「獣肉もある」

 どさどさと並べられた素材を見て、歌音がこくりと頷く。

「良いね。調理で余った端材も燃料に出来るし、無駄がない」

 続いて優祢も採取したモノを、おずおず差し出す。

「あ、あの、こちらもたくさん採れたので、よろしければ…」

 乳白色の茸。

「うん、ありがとう」

 言いながら歌音は茸を受け取り、

 『宙子行き』と書かれた箱に即刻ボッシュート。

「すまない。茸はやばい」

 実際この茸、乳周りで幻覚とか出るやべえやつ。
 見事な判断。使うのは燃料としてだけにしとこね。

「皆さんまた樹海に潜るんです?」

 素材の引継ぎを済ませて身軽になった面々に、レフニーが尋ねた。

「まだまだ採れそうだし、食材も燃料ももっとあった方が良いかなって」

 悠人が答え、再び採取へと向かうべく踵を返す。

「了解だよ。待ってるから気をつけて行ってくると良い」
「くれぐれもー(こくり」
「ふぁいと、なのです(こくり」

 彼らの背を見送る歌音、レフニー、華愛の3人。
 そして食材の下拵えを始めながらレフニーは、

「さて、今頃ダンジョンではどうなっているでしょうか?」

 地下の様子を想像――

「あっと、デザートに使うイチゴソースが足りません。ちょっと冷蔵庫から取ってくるのですよ」

 鼻歌混じりにキッチン裏へ歩いていった。



「またはぐれちまったなぁ」
「おそろしい所(こくり」

 気がつけば透次達と散り散りになってしまったディザイア&エリス。

「まあ、2人っきりってのも悪くないなお嬢!」

 ぴろーん!

「あ、いまなんか旗の建つ音が」

 そうエリスが言った直後、

\がおーん!/

 野生の白くまーが現れた!

「やはり来たか…! 来ると思っt」

 ずしゃー!
 しろくまーの こうげき!
 つうこんのいちげき! ディザイアは やられてしまった!

 喋り終わるのを待たないスタイル。
 野生だからね仕方ないね。

\がおー/

 勝利のポーズを取った後、地に伏したディザイアに代わってエリスをひょいっと肩に乗せる白くまー。
 ぶぎゅっとディザイアの後頭部を踏んづけて、のしのしとどこかへ去っていく。

「アルティメットの装甲を貫通してくるとは…おのれ白くまー…!」

 Dへの特効ダメージ持ち。
 ディザイアは「ぐぎぎ」と僅かに顔を持ち上げて、白い背と金のツインテを目で追い…

「お嬢、愛してる(ガクリ」

 力尽きた。

「やっぱりこうなっちゃうわよね」

 エリスは白いもふもふの上で後ろを振り返り、なむなむと手を合わせる。
 まあ、10分もすればきっと生き返るだろう。

 一方、エリスをゲットした白くまーは、迷う事なく真っ直ぐ樹海の奥へ。
 最深部に到達…するも、なんと通路はまだあった。壁を覆っている草を暖簾のように押し退けて、隠されていた横穴をくぐる白くまー。

 繋がっていた先は、いつぞやの安全教習所跡地に掘られていた地下迷宮物件。その最深部。
 どうやら白くまーは、ここからやって来たらしい。

 そうしてしばらく歩いて辿り着いたのは、豪奢な宝箱が置かれた小空洞。

「あ、これ見たことある」
\がお/

 頷いた白くまーは宝箱の蓋を開け、エリスをぽいちょ。
 宝箱部分はただの扉代わりで、中は謎のスイートルーム。

\みゃおーん!/
\こーん!/

 野生のレフにゃんと野生のキュウレフがお出迎え。
 白くまーも、どっこいっしょと宝箱の中へ入ろうと――

「……」
「(ブオー)」

 その時、再び採集に来ていた悠人&ロペ子と遭遇。どうやら彼らも最深部の隠し通路を見つけていたらしい。
 宝箱に片足を突っ込んでいる白くまーと目が合った。

「……」
\……/

 立ち止まり、無言で見合う悠人と白くまー。
 しばらくして…

「(こくり)」
\(こくり)/

 何かを通じ合った後、争う事なくその場で別れる。

 寛ぎの贅を尽くした宝箱ルーム。電気、ガス、水道完備。
 白くまーはエアコンの温度を調整し、野生のレフーズをもふっていたエリスを抱っこ。皆でシエりじを煎餅を齧りながらカーペットに寝そべって、ごろごろとテレビを見始めた。



 悠人に貰った猪の燻製肉をカミカミしながら探索を続けていた真緋呂&一機+被害者の会ご一行。
 木々が途切れ、代わりに少し開けた草原のような場所に出る。
 なんとそこには、複数の牛の群れが生息していた。

 素人目にも分かるほど、たっぷりとお肉が付いたA5ランクの高級牛。

「捕まえないと!」

 真緋呂のお目目がキラキラ。

「だそうです。うちのがほんと、すいません」

 一機の頭がぺこぺこ。
 だが次の瞬間、

\ぐもー!/

 危険を感じた牛の頭突きが、強盗トリオのアニキに直撃。

「アニキー!?」
「ま、まずいんだな。この牛、とっても強いんだな」

 直後、牛のバックキックが子分ズと爆弾魔に炸裂。
 高々と弧を描いて宙を飛び、メシャッと地面に落ちる子分&爆弾魔。

「ふん、惰弱な。これだから人間は」

 三田は高貴な前髪をファサァっとかき上げながら、「私に任せろ」と牛の前に立っボグシャア!(A5ランクの突進

 ポキッ(腰骨のレントゲン写真

「よくもダーリンを…!」

 残されたセトは、人狼と共に「うおおおお!」と拳を握ってA5牛の群れに向かっていった――



 半魚人達と共に、温泉を探し歩いていた突破。半魚人の水辺センサーに従うまま、やがて最深部へ到達。
 そこには、何やら湯気っぽいものが出ている泉が湧いていた。

「お、もしかして見つけたか」
\ギョ/

 頷く魚類。
 それとタイミングを同じくして、

「ここで間違いなさそうですわね」

 大次郎に乗った調達も最深部へと辿り着いた。
 地図にある【温泉】ポイント。早速、突破と協力して泉質チェック。

「結構熱いな」
「とは言え、屋外である事を考えれば丁度良いくらいですわ」

 その後ろで、ふとフェルミが壁の隠し穴に気がつく。
 大次郎がズボッと頭を突っ込んで向こう側を覗いてみると、自分達が別荘として時折使っていた迷宮物件の最深部に繋がっているではないか。

「……おぉ……。……なるほど、そういう事ですかぁ……」

 恋音が合点。
 当時、迷宮物件の最深部は溶岩に覆われてしまったという経緯がある。地面に噴き出た分は既に冷えて固まっているが、地下深くには今もマグマの流れがあるはず。
 その熱に温められて、この泉は温泉として涌き出ているのだろう。

「なるほどな。まあ折角だから入って汗を流していこうぜ」

 突破が言う。
 ダンジョンの温泉宿では休むもの。宿は建ってないけど。
 この時の為に、牛乳もクーラーボックスで持ってきた。

「水着もご用意いたしましたわ」

 調が荷物の中からレンタル水着ばばーん!
 これで混浴も安心。

\がお/

 対して、唐突にくまーの鳴き声。
 振り返ると、エリスとレフにゃんとキュウレフを乗せた白くまーが隠し穴の向こうからやって来ていた。

 エリスが一同に手を振る。

「白くまーが『温泉がある』って(フリップで)言うから見に来たんだけど、みんなも来てたのね」
「折角だから、エリスお姉さん達も一緒に入ると良いと思うんだよ」
「水着のサイズも各種取り揃えておりますわ」

 繭佳と調の誘い。

「うん、じゃあそうしようかな」
\がう(こくり/
「私も入りますよー!」

 瞬間、ばびゅーん!と現る雅人。

「混浴はラブコメの定番! さあ皆で仲良く!」

 しゅばっ!と服を脱ぎ捨てていきなり全裸に…と思ったら、既に下に海パンを穿いていた。
 今日の彼は徹底してフルアーマー(水着)。

「俺も便乗させてもらおうか!」

 追加で現れたのは、蘇ったディザイア。

\がるるる!/

 威嚇くまー。
 だがディザイアは怯まない!

「お嬢との温泉イベント! しんでいる場合ではない!」

 ずしゃーされても温泉効果で回復ぴろろんするから平気平気!

 という訳でお着替えタイム。
 カーテンの代わりに大次郎に“伏せ”をしてもらって、その後ろで。

\エリスお姉さんと一緒に入るお風呂、とっても楽しみなんだよ(sound only)/

 同じツインテという事で親近感があるらしい繭佳。但し発育は繭佳の方が…(たゆん(sound only)

\ぐぎぎ…(sound only)/
\がるるる…(sound only)/

 おや? なぜか白くまーも威嚇を…?(sound only)

 ――そんなこんなでお着替え終了。

 皆で顎までお湯に使って、ふい〜っとのんびり。
 突破と調が、木々に覆われた天井を見上げながら呟く。

「良い湯だな。上のパーティー会場でも入れれば便利なのにな」
「地上にもお湯を引けないか、後で試してみるといたしましょう」

 そしてほっこり温まった後、牛乳で乾杯。もちろん瓶だ。
 腰に手を当ててぐびっとな。

 HPとMPが回復した一同は燃料集めをもう一頑張りするべく、思い思いのエリアへと散っていく。

 そんな皆の姿を大次郎の上から見送っていた恋音達も、最後の印を目指して地図に視線を落とす。
 【神社】の記号。が、その印は【温泉】マークのすぐ隣――この最深部の隅っこにあった。

「……おぉ……。……どうやら、あちらの壁際ですねぇ……」

 まるで祠のような、小さな窪み。
 壁に出来たその隙間を大次郎が猫手でカリカリほじってみると、何やら小ぶりな塊がぽろりと転げ落ちてきた。

 人間の手の平ほどのサイズ。まんまるの、まさしく“真円”と言っても差し支えない、謎のオーパーツ。
 不思議な波動を感じる。
 ふと、恋音の持っていたアールトアーム『豊乳女神の霊杖』が起動。杖に据え付けられている八色の環玉が、オーパーツの波動と共振、増幅を始める――

 その時、異変が起きた。
 石の草刈りによって樹海内の至る所に出来上がっていたミステリーサークルが、増幅されたオーパーツの波動に反応して発光。
 なんとサークルの配置が偶然にも呪術的な起点と一致し、樹海そのものが1つの巨大な魔法陣となって謎の大魔術が発動してしまった。クオンガハラマジック!

 大魔術の集約先は恋音。
 樹海に満ちていた謎のぱぅわーを取り込み、乳牛系悪魔娘のようなコスプrもとい衣を纏った姿へと変容。

「……この世すべての乳は、我のもの、なのですよぉ……(ゴゴゴ」

 裏ボス、降臨。



 温泉から戻ってきて宝箱ルームで再びごろごろしていた白くまーと、エリス&野生のレフーズ。
 ちなみに一緒に入室しようとしたディザイアは、白くまーが閉めた宝箱の蓋に挟まれてしぼうした模様。

 その時、

 ピキーン!

\がお?!/

 不穏な霊圧を感知した白くまー。
 これは乳ボスもとい裏ボスの気配…!

\もげ…/

 するとその気配に呼応するように、野性の“妖怪・乳置いてけ”が現れる。
 同時に、エリス&レフーズも共鳴して妖怪化。

\\もげー!//

 出撃――



 水音ハウスでダベッていた神々。

 ピキーン!

 裏ボスの霊圧を感知。

「ついに現れてしまったか…」
「まだ戦いは終わっていませんですの」
「みずまんじゅう…(じゅるる」
「私が神だ」
「刈らねば」

 ティーカップを置き、その重い腰(ダベってた的な意味で)を上げる神々。

 出陣――



 裏ボス乳牛魔神となった恋音。
 そこへ積荷の整理を終えて戻ってきた美詩、愛良耶、優祢も合流。

 刹那、各々の魔装が突如活性化。装飾として組み込まれていた勾玉が、強い輝きを帯び始めた。

 青の勾玉、青花天。政治の従神――美詩。
 紫の勾玉、紫雪天。信仰の従神――愛良耶。
 赤の勾玉、赤鳥天。建築の従神――雨唯。
 緑の勾玉、緑風天。癒しの従神――涙羽。
 黄の勾玉、黄露天。生命の従神――繭佳。
 橙の勾玉、橙琴天。礼法の従神――調。
 黒の勾玉、黒賦天。叡智の従神――艶華。
 桃の勾玉、桃玉天。商業の従神――優祢。

 裏ボスとして覚醒した恋音のぱぅわー『豊穣の加護』を受けた内務室の全員が、裏ボスの御使いとして世界に反旗を翻す。

 ちなみにフェルミ&大次郎+サーベルタイガーはと言えば、

「面白そうだし、こっちにつくかー」

 裏ボス勢力に加入。

「……手始めに、例の秘宝を完成させるとしましょう……(ゴゴゴ」

 一行は恋音の命に従い、【扉】の印があったシェルター管理室へと移動。
 樹海ダンジョンの中枢である管理室を根城と定め、道中で手に入れた素材の調合を始める。

 牛乳で満たした鍋に、粉になるまですり潰した乳白色の茸を入れ、超自然的なぱぅわーを帯びた鶏の血液をぴちょりと垂らして、中火でじっくりコトコト。
 怪しげな煙がモワ〜。
 後はこのまま数分煮込めば完成――

 ドアばぁん!

\そこまでですの!/

 その時、別の神々が一斉に乗り込んできた。
 紅茶神、私が神だ、付喪神、たこ焼き神、そして草刈r

「……邪魔はさせないのですよぉ……(ゴゴゴ(たゆん」
「ぐふっ」

 なぜか昏倒する草刈り神。

「これが神位の格差というやつか…(ぱたり」

 神位(乳)。

「おそろしい相手ですの…(とさぁ」

 気がつけば紅茶神まで。

「アカン、ひんぬーが次々にしんでいく…!」

 慄くたこ焼き神。

 直後、恋音と御使い組が、見るからに強力そうな極太合体ビームを発射。
 ジュッと香ばしい音を立てて、たこ焼き神に直撃。彼が立っていたはず場所には、芳醇なソースの上でカツオ節が踊る熱々のたこ焼きだけが残されていた。

 残るは、私が神だ神と付喪神のみ。
 と思ったら、それら2柱の姿が見当たらない。

 辺りを見回すと、床に2枚のメモが。

『お先に失礼します』
『こうにぃが逃げたので私も』

 神はしんだ。

 これで邪魔する者はいなくなった。
 裏ボスきょぬー軍はぐつぐつと煮え立つ鍋の様子を確認しようと――

「何の騒ぎです?」
「ナンだかとってもカーニバルの予感デース☆」
「楽しそうですねぇ〜」

 偶然通り掛かる、透次とマイケル&木葉。
 マイケルは裏ボスが従えているサーベルタイガーを見るなり、

「野生のケモノはベリーデンジャラス! ここは拙者にお任せあれデース☆」

 それまでお姫様抱っこしていた木葉を下ろし、タウントを発動。

「美少女は拙者がお守り申すデース☆」

 神の翼。股間から生えたアヒルさんでバサァと飛翔し、サーベルタイガーへと戦いを挑m

「あ、すごいつよいですよ」

 寸前、透次が警告。
 しかし時既に時間切れ。

 ジャンピング虎パンチどごーん!
 マイケルはカトンボのように叩き落とされてしまった!

「これはいったいどうした事でしょう!?」

 物音を聞きつけてやってきた雅人が、現場を目撃。
 斯々然々ラグナロク。

「なるほど!」

 事情を把握した雅人。
 恋音の恋人という立場である彼はしかし、

「愛するヒトが道を踏み外したら、叱ってやるのもまた恋人の務め! ここは心を鬼にして恋音を止(ジュッ」

 蒸発。

「……邪魔はさせないのですよぉ……(ゴゴゴ」

 無慈悲。
 暴走してるからね無理もないね。

 次いで、運悪くその場に出くわしてしまうジェンティアン with B&ルフトハイト夫妻。
 巨大な猫科のもふもふ、大次郎と目が合う。

「知ってる、これぜったい僕がびたーんされるやつ…!」

 鶏男の襲撃も神の兵士でなんとか生き延びたものの、正直つらたん。

「だって気絶しなかったらずっと攻撃されるし!(気絶すれば攻撃されないとは言ってない」

 なのでここは今度こそwith Bを無理矢理盾にして強引且つ安全に凌ぐのだ――

\今や、行け!/

 だがその時、背後に潜んでいた謎の段ボールが、荒ぶるペンギンの群れをけしかけてきた。
 ペンギン達の嘴からは、小魚の尾ひれがチョロッとはみ出ている(買収ペンギン

「!?」

 小魚を飲み込み、ギョワッギョワッと吼えながら突進してくる鳥類。

「ちょっと2人共、盾にする為に呼んだんだからちゃんと盾になってよ!」
「おい貴様」
「それはヒトとしてどうなんだ」

 そうこうしている間にも、だばだばと迫ってくるペンギン。
 もうダメだ肉盾は間に合わない。咄嗟に防壁陣を使って自力で何とかするジェンティアン。

 瞬間、ペンギンの突き抉るようなドリルタックル(防御掘削
 それを見て、即座にしんだフリをするwith B。

 ジェンティアンは やっぱり やられてしまった!

\ざまぁ味噌汁や/

 謎の段ボールは発煙手榴弾を投げ入れて煙幕を焚くと、ペンギン達を回収してずりずりと逃走。
 一方、和紗は、

「危なそうなので帰りますね(レモンmgmg」

 リーゼと共にてくてくと管理室の前を素通りしていった。

 代わりに訪れるシエル。
 その手には例の蠱毒りじをが。

「これは蠱毒りじをが如何に最強のりじをであるかを示す絶好の機会でしょうねそうでしょうね」

 言いながら裏ボスの前に立つ。

 容赦なく放たれる極太合体ビーム。
 シエルは手に持った蠱毒りじをを盾のように翳し――

 ジュッ

 跡形も無く蒸発するシエル。
 無傷で残る蠱毒りじを。

 蠱毒りじをは裏ボスが放つ大魔法の直撃にも耐える(持ち手も耐えるとは言ってない

 もはや誰も裏ボスを止められない。
 かに思われたその時!

\\もげ…//

 妖怪・乳置いてけの群れが出現。

 すかさず極太合体ビームを放つ裏ボス軍。
 だが次の瞬間、妖怪達は手に持っていた出刃包丁を一閃。ビームを細切れにして霧散させた!

「…………お、おぉぉ…………?(ゴゴゴ」

\\もげげー!//

 包丁を振り回しながら(※よい子はゼッタイにマネしてはいけない※)、裏ボスきょぬー軍へと飛び掛かる。
 更に、

「お嬢が妖怪化してまで頑張っているとあれば、箱に挟まっている場合ではなかろうなのだ!」

 アルティメットディザイアR(リペア)!

 瞬間、流れ弾の裏ボスビームが直撃。
 しかしアルティメットディザイアRには掠り傷1つ付けられない!

「白くまーの攻撃に比べれば蚊ほども効かん!」

 その堅牢さはもはや神の域!(なお白くまー相手には濡れた障子紙なみな模様
 そして倒れたと思っていたマイケルと雅人も、

「HAHAHA! 拙者の溢れ出るオーラにケモノ達が恐れを梨ているデース☆」
「諦めたらそこでラブコメ終了ですよ!」

 ぴんぴんしていた。
 オバカと変態は頑丈だってはっきりわかんだね。

 大乱闘――



 ――地上の特設会場。

 トトトトッと小気味の良い音を響かせながら食材を刻む歌音。
 大鍋の蓋がカタカタと揺れ始めたのに気づき、取っ手を抓んで中を確認。包丁からおたまに持ち替え、味見用の小皿によそって一口ぺろり。

「うん」

 納得。

 火から降ろして、別の鍋と入れ替える。
 なにせ今日は人数が多い。まだまだたくさん作らねばならないのだ。

「このお肉は、何に使うのです?」

 華愛が、皮を剥いでキレイに解体された状態の鹿や猪の肉を見て小首を傾げる。
 牛や豚と比べるとかなりクセが強そうだが…。

「シチューなどどうだろう。野菜(シエりじを)もたくさんあるし」
「ぉー、シチュー。美味しそう、なのです(こくり」
「浪風があらかじめ血抜きしておいてくれたおかげで、臭みもほとんど無い」

 他の食材に関しても、足りない分は買い出しへ行こうと考えていたが、どうやらその必要は無さそうだ。
 それにしても…

「少し探索組の帰りが遅い気がするね」
「なのです…」
「ちょっと見てこよう。ここは任せても良いかな?」
「合点承知、なのです(こくり」

 華愛に留守を預け、シェルターの様子を見に行く歌音。
 オペ子と奏音がサボっている受付ロビーを横切り、通路を抜け、地下への扉をくぐって樹海の中へ。

 すると入ってすぐに、奥から歩いてきた和紗&リーゼとすれ違う。

「他の皆を見なかった?」
「管理室にいました(レモンmgmg」
「ふむ、ありがとう」

 帰還する和紗達と別れ、歌音は教えてもらった通り管理室へ。
 到着して中を覗くと、

\\もげらー!//
「…………お、おぉぉ…………!?(ゴゴゴ」
「身体が軽い! これが俺と戦友の真の力…!(ギュイーン」
「スターダスト・ファントム・フェニックスモードデース☆(ピカー!」
「愛のぱぅわーが漲ってきましたよー!(シュワンシュワン」

 楽しそう(小並感

「ちゃんとご飯の時間までには帰っておいで」

 とは言え、どちらの攻撃も決定打にはならず。
 このままでは打ち上げまでに決着がつきそうにない。そう危惧したその時、

\再生/
\植林/
\緑化/

\\光合成//

 樹海中に轟く、シエりじを達の産声。

 先のビームでシエルが消し飛んだ際、彼女の持っていたシエりじをの種が飛散。空調の配管を通ってシェルターのあらゆる場所へ届けられ、ミステリーサークル上に着床し、侵略的な速度で発芽・成長。
 そしてミステリーサークルが上書きされた事で樹海を覆っていた魔法陣が消失。

 その瞬間、恋音の裏ボス化が強制解除された。

「……お、おぉぉ……? ……いったい私は、何をしていたのでしょう……?(ふるふる」
\\もげ…//

 乳圧の急激な低下に伴い、妖怪達も徐々に鎮静化。野生の白くまー、レフにゃん、キュウレフ、エリスへと戻る。

「拙者の見事な舞いが、また世界の機器を巣食ったデース☆」
「いやいやこれはきっとラブコメ神のご加護に違いありませんよ!」

 げきたいしたちは うらボスを やっつけた!

 だが、戦いはまだ終わってはいなかった――

《War. War never changes.(人は過ちを繰り返す)》

 突如として管理室のモニターに浮かび上がる、意味深なテロップ。
 直後、

\Vault1145141919810へようこそ/

 隣の備蓄倉庫から雪子の声。

\雪子はついにコイツと一体になった/

 備蓄倉庫という名の、最強の引き篭もりシェルター。

\食料の蓄えも十分、PCとwifi持参でネット環境も完備。ネット預金で数年先までは困りません。消えろイレギュラー!/

 ダァーイ、ブレイカァー!!(強気

 対して、日菜子がやって来た。

「おいニート氷。アホなこと言ってないでさっさと出てこい」

 扉ドンドン。ダメだ、シェルター内の扉だけあってビクともしない。
 仕方ない、と日菜子は溜息をこぼした後、

「出発前、私が準備しに一旦離れたのを覚えてるか?」
\プロテインを取りに行った件ンゴねぇ…/
「実はあの時、お前の使っているネットプロバイダーを解約しに行っていた」
\ファッ!?/

 こんな事もあろうかと。

 雪子が何の悪巧みも無く自分に声を掛けてくるはずが無い。そう思って用意した、ゆさぶりをかける為のカード。
 何事も無ければそのまま再契約と補償を支払うつもりだったがやはり何事もあった。

「わかったらさっさと帰るぞ」
\そ、そそそ、そんな脅しに屈するような雪子じゃありませんし!? 先輩は策士プレイなんかより、オーク的な天魔にやられて『くっころ』とか言ってる方がお似合いなんですわ!?お!?/

 そうだ、まだあわ、あわ、あわわ、慌てる時間じゃない。
 シェルターのシステムはこちらが掌握しているのだ。

\どうせ火達磨先輩にはこの扉は破れませんし。悔しかったらその無駄に盛った筋肉でこじ開けてみろバーカ!/
「そうか…わかった」

 その時、不思議な事が起こった。
 日菜子が持っている回線契約書に書かれている文字が紙面から飛び出し、渦を巻きながら広がって周囲の空間を覆っていく。

 扉も壁も、管理室と倉庫を隔てていた一切の障害が消え、固有結界と化した空間の中で日菜子は雪子へと向き直る。

「今お前が居るのは『プロバイダー時空』。ここでは私の力は30倍に、お前の力は30分の1になるさあ戦おう」
「そんなバナナ/(^o^)\」

 こうなったら先手必勝ですしおすし。
 雪子は、魔法防御が低いという日菜子の弱点を突くべく、trouble-shooting.exeを起動。同時に、徹底した遠距離攻撃を維持する為にextension.exeで上方へ飛行…

「あれ、こ↑こ↓天井の高さ大丈夫ですかね」

 ゴーン!

 瞬間、まさしく天井に頭をぶち当てる雪子。
 ぼてりと落下。

 日菜子のターン。
 修羅の眼力で睨みつけ、動けなくなった雪子につかつかと歩み寄る。

「待ってください! 降参です! 雪子は、指示された通りやっただけです。水音神がいないなら、戦う意味もないですしおすし。それに、先輩達はまだ生きてます。ノーカウントです、ノーカウント! ね、わかるでしょう? 同じ撃退士ジャマイカ」
「お前の罪を数えろ」

 炎を纏い、全力渾身の萬打羅・火箭。

\アッー!/

 樹海の中に、雪子の悲鳴がこだました――


●探索完了
 優祢から回収した茸を宙子の燃料室にどさどさ投入する歌音。
 涙羽と美詩も、果樹の葉や海岸の苔、水草をぽいぽい。

 流も多紀と一緒に、プランクトン入りの海水や星の砂、それと倉庫の奥で見つけた学園長の顔付きチョコ、流が見つけたスイカを搾って作ったスイカジュース、多紀の掘った薩摩芋の山などをどばー。

「多紀っ、学園長チョコも入れちゃっていいのか?」
「大丈夫だるーくん。ちゃんと自分の分は食用・保存用・観賞用・布教用と確保したぞ」
「流石だなっ」

 海水ついでに突破も、

「よくわからないけど熱量だな!」

 ダンジョンで見つけた温泉のお湯をどばどば。

 その横では、あけびがトウモロコシや竹をぽいちょ。
 藤忠も籠をひっくり返してどさどさー。

「おっと、野菜は少し残しておいて後で焼いて食べよう」
「まよねーずを付けると生でもうまいのじゃ」

 定吉の言。
 熊から譲ってもらったぶろっこりーを齧りつつ、宙子にもお裾分け。

「マヨネーズもどうぞ」

 一緒にマヨネーズをぶにゅるーするマヤカ。

「っていうかこれ、そのままぶちこむものなんですかね?」

 調理で余った獣の皮や肉の切れ端を抱えていた悠人が首を傾げる。
 普通はもっとこう、発酵させたり化学的に濾過したりしてから使うものなのでは…。

「アウルガアレバ 大丈夫 デス」

 カメラを回しながらロペ子が言う。
 説明に困った時は「アウルのおかげ」って言っとけば大体何とかなる。たぶん。

 そして一同が一通りの素材を詰め終わった後、

「バイオ燃料の“D”はディザイアさんの“D”!」
「その単語のどこに“D”が入ってるんですかねぇ」

 燃料室前で押し問答するレフニーとディザイア。

「細けぇこたぁいいのです」

 燃料室にディザイアをぐいぐい押し込もうとするレフニー。

「やめようね…!」

 ぐぐぐっ、と押し留まるディザイア。

 他方で、食材の段ボールに紛れてヘヴホラ勢を観察している“謎の段ボール”がいた。

\(ぽりぽり)/

 段ボールの中で何者かが何かを食べている音。

 するとその段ボールは、自分以外にも物陰から会場の様子を窺っている者の存在を発見
 人目を避けながらずりずりと移動して近づき、声を掛けてみる。

\おっちゃん何しとんのや/

 すると向こうもこちらの存在には気づいていたようで、

「社会科見学…といったところですかねぇ」

 特に慌てた素振りもなく答える、ローブを目深に被った男――ウォラン。

\誰か狙とるんか? まあこれでも食いや/

 段ボールの下からにょきっと手を伸ばして、このもんを差し出す。
 実家のおかんが嵌まって大量作成したこのもん。

「おやおや、これはご丁寧に」

 慇懃に受け取るウォラン。
 口に含んでぽりぽり。
 美味しい。

 段ボールとウォランはぽりぽりとこのもんをつまみながら潜伏を続行した――



 素材は採った。
 燃料室にも入れた。
 あとはメッセージカードを託すだけ。

「宙子お前最終的に線を浴びてエンペラーになるんじゃろ?」

 虚無かな?
 シエル@再生は、逞しく育った蠱毒りじをとチチりじをとチョコりじを、そして無印りじをそれぞれの種をカプセルに封入。そこにメッセージカードを添える。

《私は好きにした、君たちも好きにしろ》

 なお爆発的繁殖力を考えてない模様。
 きっと数時間後にはシンりじを。

 一方、それまでサボっていた奏音も、せっかくなのでメッセージを入れてみる事に。
 とは思ったものの、何を書こう。

「まあ適当に」

《水音神へ。いつか会いましょう》

 投函。
 ハンバーガー屋に行けばエンカウント率が8割くらい上がるかもしれない(元の確率には触れない

 そして突破も、

《GDの空で会ったらよろしく》

 そこはかとなくグロリアス。
 こちらこそよろしくどうぞー。

 お次はテンペストな方の歌音ちゃん@蘇生。

「ちょっと恥ずかしいけれど有機を出して書くわ」

 メッセージカードに自分とオペ子のめくるめく愛の営み(妄想)をしたためる。
 具体的には、

《オペ子さんがあたしのくぁwせdrftgyふじこlp――》

 おや? なにやら文字化けがひどい。

「まあいいわ。とにかく宇宙規模での既成事実作りにGO!」

 投かn

「宙子にも蔵倫フィルターが付いているのです」

 寸前、いつの間にか後ろに立っていたオペ子。

「はっ、オペ子さん!? 違うのこれはちょっとしたオチャメゴコロで癒し系乙女を目指していたらいつの間にかいやらし系乙女になっていたとかいうそういうアレがソレで決してやましい事じゃないのやらしい事なの!」
「訴訟不可避です」
「待ってごめんなさいもうしますん!」

 投函!
 ついでにデータ化した自身の全ネタ帳も混入してやった。

「ラブコメなら負けませんよ!」

 雅人なう。

「私のメッセージはこれです!」

《宇宙でもラブコメ!!》

 でかるちゃー。

「文化ですね」

 透次が頷く。
 このメッセージを受け取るのは、きっと地球の者ではない宇宙人。ならば自分は、絵を描こう。

「文字が通じなくても、絵なら通じるかも」

 どことなくエリーに似た女の子が、笑顔で手を差し伸べている絵。

《貴方達を歓迎します。仲良くしてね》

 そんな想いを込めて。

「ステキな絵なのです」

 隣で見ていた華愛が、ほっこりと頷く。
 そんな彼女も、メッセージを一筆。

《お友達になりましょう》

 そしてディザイアも、

《戦友を、宙子をよろしく!》

 合言葉はフレンズ。

 そしてマイケルの番。

「拙者はこれデース☆」

 己のブロマイドにサインを描いてカプセルIN!

「遂に拙者も全銀河に名を轟かすスーパー☆スターになったデース☆ 地球のスター代表は任せるデース☆」

 スーパーポジティブアース☆
 きっと宇宙も平和になる。

 だがそれとは逆に、不穏な願いを込める者も。
 その名はミハイル@復活。

《ピーマンを滅ぼしてくれ》

「宇宙人なら出来るはず」

 なんかすごい破壊光線的な兵器で。

「じゃあ自分はボイスメッセージにしてみるかのう」

 そう言ったのは石。
 ごそごそとアナログテープをセットして、録音ボタンぽちっとな――

《宇宙の皆さん元気ですか
 今地球は危機に瀕しています
 そのロペ子(宙)は私達の希望です
 あった事のないあなたたちにいうのも変だと思いますが

 助けて






























    *    *
  *    + うそです
   n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
   Y     Y  *            》



 テープによる音声メッセージのはずなのにAAが見えるという謎の超技術。
 宙子にIN。

 続いて、悠人のメッセージ。

「俺が伝えられるとしたら、これかな」

《不幸な事があったら地球を訪れると良い。話くらい聞いてあげるから》

 迎える側になった場合を想定して。

 すると、それまでずっと後ろをついてきていたロペ子が、回し続けていたカメラを止めておもむろに録画内容を確認し始める。
 悠人が樹海で狩りをする様子が映っている……のは大体最初の方だけで、後半に行くほど齧られたり轢かれたり潰されたり吊られたり落ちてきたり、ロクな目に遭っていなかった。

「良イ画ガ 撮レマシタ」

 不幸の一例動画。
 聞き役としての説得力。

「えっ、その為の録画!?」

 悠人のメッセージと一緒に宙子にぽいちょ。
 任務を全うしたロペ子は、ブオーっと去っていった。

 それを他所に、マヤカもカードを作成。
 定吉と自分を描いたカード。
 隣にいた定吉と一緒に持ち、そっと宙子の中へ入れた。

「届くと良いのじゃ」
「きっと届くわ」

 また、流と多紀も互いを想う気持ちをカードに込める。

《多紀がずっと大好きだっ》
《いつまでも君だけ》

 手紙を入れた瓶を大海原へ託すように、2人は星の海へと向かう宙子にカードを預けた。

 色々な想いが宙子に積まれていく様子を眺めながら、藤忠も自分の分の台紙に筆を走らせる。

《家族が幸せでありますように》

 カプセルに封入。

「俺も少しは強くなれただろうか…」

 そうぽつりと呟いた横で――

「姫叔父の写真入れた! こんな美女がいるって知ったら宇宙人も地球に来るよ!」

 あけびテンション↑↑
 シリアスなんてなかった。

「俺は男だと言っているだろう!(汗」

 取り上げようとするも既に遅し宙子にぽーい!
 地球の美女()代表。

 そして音声データでもいけるなら音楽でもいけるはずと、真緋呂は学園の校歌をフルートで演奏して録音。

「音楽に境界無し」

 カプセルに封入して宙子へ。

「では俺は絵で」

 そう言って、久遠ヶ原の四季の絵を入れる和紗。
 その後、和紗は皆と一緒に会場のヘヴホラ(出張版)へと戻り、パーティーに参加していた伊里野 風香に声を掛ける。

「ただいまを言う場所、もう1つ増やしませんか?」
「言う場所?」
「ええ。“お姉さん”になって欲しいのです」

 懐から母子手帳ばーん!(印籠感

「8週だそうで…」
\!?/

 なんであんなにレモンmgmgしてるのかと思ったらお腹の子の影響だった模様。

「春には家族が増えますよ、リーゼ(微笑」
「む、そうか」

 対して、グラスを洗っていたリーゼはいつもの仏頂面で淡々とした返事。
 あれ? あんまり驚いてない?

「それならゆっくり体を休めないとな(グラスでクロスを拭き拭き」

 いかん、既にオロオロだ。

 一方、式葉兄弟を連れて飲み食いを始めていたジェンティアン。
 和紗の懐妊報告に当然驚くも、なによりその朗報を心から喜ぶ。

「2人共おめでt「今のほんまか!?」

 飛び蹴りと共に突如割り込んでくる人物。
 樒 和人(jc2602)――和紗の弟。
 リプレイ前半からずっと段ボールを被って潜伏していたが、もはやそれどころではない。

 弟の登場に、「おや」と驚く和紗。

「いつから此方に」
「先週や。メタやと4月やけどな」

 新規登録期限とかあったからね致し方ないね。
 だがしかしいやそんなことよりも、

「兄ちゃんら妊婦に探索とか阿呆か!」
「いた、いたいっ! かおっ、顔はやめてかお!」

 踏んづけたジェンティアンをげしげし蹴り。
 買収されたペンギン達もドスドス啄んでくる。

「なぁおっちゃんもそう思うやろ!?」

 がしっと掴んでいたウォランを激しく揺さぶりながら同意を迫る和人。

「思うやろ!? 思うよな!? 思うって言わんかいぼけぇ!!(投げ捨てぽーい!」

 そしてジェンティアンをサッカーボールキックGOOOOOOAL!!

「元気そうで何よりです(姉馬鹿」

 ちなみにリーゼとは、結婚報告で樒家へ挨拶しに行った際に一度会っている。はず。

 荒ぶる弟の乱入で途切れてしまっていた話へ戻る。家族になって欲しいという、和紗から風香への提案。
 対して風香は、

「んぅ……でも、涼介とルディの事も放っておけないの…」

 それに、『伊里野』という名は両親が残してくれた大切なものの1つでもある。その名が消えてしまうという事には、少なからず抵抗があった。

「だけど、2人の赤ちゃんの“おねえさん”には、わたしもなりたいの……それでも、いい?」

 おそるおそる尋ねた風香に、和紗はにこりと微笑む。

「勿論です。養子縁組ではなくとも家族にはなれます。真緋呂も今やリーゼの義妹ですしね」
「え、ごはん!?」

 会場にあったオードブルで頬袋をぱんぱんにしながら振り向く真緋呂@呼ばれた気がした。

 和紗は改めて風香へ手を差し出す。

「お腹の子のお姉さんになってもらえませんか?」
「うんっ。今度お店に行った時は、わたしも元気に“ただいま”を言うの!」

 繋いだ手は、温かく。

 一方、真緋呂は口に詰めていたものをんぐっと飲み込み、

「和紗さん、兄様おめでとう!」

 心からの祝福。
 また、一機もリーゼの肩をばしばし叩きながら、

「子供? やるじゃなぁーい」

 マジ●チスマイル。もとい、満面の笑み。

 ディザイアとエリス、ママやキャシーらも盛大に2人を祝う。

「おめでとさんだ!」
「おめでとう!」
「おめでとう2人共」
「「お〜め〜で〜たぁ〜ん!!」」

 そして騒ぎを聞きつけたあけびと藤忠も、まるで自分の事のように大喜びで駆けつけてくれた。

「和紗さんとリーゼさん、おめでとうございます! 天然な二人がとうとうくっついたと思ったら、もうそこまで…! 沢山幸せになってくださいね!」
「二人共おめでとう。末永く仲良くな。和紗とリーゼなら心配ないだろうが」
「男の子かな? 女の子かな?」
「めでたい報告に一層酒が進むな」

 水のように清酒ぐびー。
 わいわいがやがや。

 その中で、華宵が風呂敷に包まれた2つの箱を取り出す。

「まだちゃんとお祝い出来てなかったから結婚祝いのつもりだったけど、めでたい事が重なったわね」

 桐箱メロン。
 祝辞を添えて、ルフトハイト夫妻とシーカー夫妻へ。

 多くの祝福を受け、和紗とリーゼ、そしてディザイアとエリスも、幸せな笑みを浮かべる。

「ありがとうございます」
「ありがとう」
「改めて感謝だ!」
「ありがとー!」

 それを眺めながら、和人はぐぎぎ…と歯軋りしつつ、それでも姉の幸せに祝いの念を贈る。

「おめでとうな」

 言いながら、たこ焼きピックでジェンティアンぐさー(八つ当たり
 お姉ちゃん大好きすぎか。

「将来両家の家族が増えたら、お手伝いは私達に任せてね」

 微笑む華宵。
 長く生きてきた分、育児や保育もお手のもの。

 また、ママやキャシーらオカマ勢も頷く。

「私達も遠慮なく頼ってくれて良いのよ」
「赤ちゅぁんのもっちりお肌、う〜ら〜や〜ま〜!!」

 大地のように力強く海のように深い母性()で、総力を上げてバックアップするのだ。
 真緋呂もそれに続き、

「私、助産師目指して春から看護大学に進学するの。5年後には必ず資格を取ってみせるから、いつか兄様と和紗さんの子供取り上げさせてね(ぐっ」
「頑張ります(こくり」
「(こくり)」

 それと、進路の報告ついでにもう1つ…

「一機君と付き合う事に な り ま し た !」
\!!/

 直後、横から一機が出てくる。

「あ、ま、そういう事なんで、一つ宜しく!」

 真緋呂をお姫様抱っこよっこいしょ。
 この重みを感じながら新しい道が今、始まる。

\おめでとう!/
\おめでとー!/
\よきかな!/

 口笛と喝采のシャワー。
 リーゼも義妹の明るい報告を聞き、拍手の音に祝福を乗せる。

「兄様、義妹が欲しくば俺を倒せとか…無いの?」
「真緋呂が信じる相手なら問題無い。それが米田…いや、一機であるなら尚更だ」
「ちっ(ちょっと残念」
「うん、まって真緋呂、リーゼ君と戦えとか僕の門出が病院スタートになっちゃうからまって」
「なら代わりに自分が爆破してやるんでしょうがぁ!?」

 その時、色恋ラッシュに耐え切れなくなった爆弾魔がぷっつん。
 隠し持っていたダイナマイトに火を点k

「ハウス」

 真緋呂がコレダーばりばりー!
 爆弾魔はぱたりと動かなくなった。

「あ、じゃあ僕からも報告が」

 そう言って、頭にたこ焼きピックの刺さったジェンティアンが起き上がる。

「例の冥魔空挺軍に入団させてもらえる事になったよ。だから、たぶん数年後くらいには平行世界を旅してると思う」

 ようやく見つけた、己の願い。
 辿り着いた、心の居場所。

「もっと遊びたかったけどね」

 そう言って彼は笑みを浮かべながら、式葉兄弟の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
 対して陸と海も、祝福の意を込めてジェンティアンの頭を撫で返す。

「そうだね(たこ焼きピックなでくり」
「ここは、『寂しくなる』と言っておいてあげるよ(たこ焼きピックなでくり」
「わー、なんだかとっても片頭痛(イチゴソースだくだく」

 ジェンティアンは刺さりっ放しだったピックをスポッと引っこ抜きつつ、話の続きを。

「それでさ、頑張り次第でお頭のヴァニタスにしてもらえる可能性もあるんだよね」

 天魔の力に耐性のあるアウル能力者を眷属化させるのは容易ではないが、主となる者の力量によっては決して不可能でもない。
 それは、人間ではなくなるという選択肢。しかしそれが必ずしも不幸だとは限らない事をジェンティアンは、この場にいる者達は、知っていた。

 人間も、天使も、悪魔も、等しく心を持った“ヒト”であるのだ。

「皆の子孫、リーゼ達が願う未来を見届けられるかもね」

 という訳だから…

「切るモノ無い?」

 自身のおさげ髪を持ちながら尋ねるジェンティアン。

 これまで『和紗が幸せを見つけられるように』と願掛けで伸ばしていた長髪。
 でもそれはもう必要無くなったから。

「刀ならある(二刀流シャキーン」

 真顔リーゼ@未だにオロオロ。

「うん、それはしまっとこうか?」

 髪だけじゃなくて首もバッサリいきそう。

 結局、ハサミを使ってジョッキン。
 短髪。

「すっきりしましたね、竜胆?兄」
「おめでとう、砂原?さん!」
「新しい場所でも元気にね、ジェン?君」
「皆なんでちょっと疑問形なの」

 砂原・タブン・ジェンティアン・竜胆(jb7192)。

「おいチビスケ、手間掛けさせんじゃねぇ」

 そこへ、相変わらず不機嫌そうな顔をしたルディがやって来た。
 どうやら風香を探していたらしい。

「丁度良いところに」

 和紗はルディを見て、用意しておいた何かを荷物置き場から持ってこ…ようとしてリーゼに止められた。
 代わりに彼が取りに行き、和紗の代わりにルディへ“それ”を差し出す。

 満開の桜大木の下、ユートが笑顔で演奏している絵。

「花を添えてみました」

 説明は和紗本人が。
 加えて、もう1つ告げる。

「次女が生まれたらユートの名を頂きますね」

 頂いて良いですか、ではなく、頂きます。

「確定かよ。つーか何で俺に言う。勝手に付けりゃぁ良いだろぉが」

 悪態を吐くルディの胸元で、音符のアクセサリーが笑う。
 それを受け、和紗もくすりと笑みをこぼした。

「産まれたら会いに来てくれると嬉しいです」
「……チッ」

 しかめっ面で、しかしそっと絵を受け取るルディ。

「ついでに何か食べていきませんか? 真緋呂達の進路も祝わねば」

 それぞれの進路や交際報告、諸々を含めて皆で乾杯しよう。

「めでたい尽くしで一層酒が進むな」

 藤忠がお茶のように焼酎ぐびー。
 飲み叔父。

 対してジェンティアンも早上や栄一、涼介を捕まえて、キャシー達と一緒に酒盛り。

「僕もうすぐココ離れちゃうんだから、早上ちゃんと榊ちゃんは早く借金返して?」
「何の事だか分からんな」
「ちょっと待ってくれ」
「その借金は俺達も背負うのか」
「いっそ3人共うちで働くぅ〜?」

 いい加減修理費払わないと大阪商人和人に取立引継ぐぞプルァ。

 瞬間、金勘定と聞いて和人がキュピーン!

「取立て引継ぎは商談しよか?」

 算盤ぱちぱち。

「兄ちゃんの方も、ちゃんと引継ぎ手数料払ぉてや」
「僕も!?」

 しまった人選ミス!
 ジェンティアンうぃずびーぷらすは にげだした!



 会場の真ん中に巨大な露天風呂が出来ていた。
 発起人である突破と調が、道行く来場者達を案内。

「ダンジョンの中(にあった源泉)の温泉宿だ。ゆっくりしていってくれ」
「ぴったりなサイズの水着も取り揃えておりますわ」

 更にそれだけに留まらず、源泉を地上へ引いた結果、斡旋所支部のシャワールームが温泉に進化。
 やったぜ!

「もちろん風呂上りは牛乳な!」

 突破は瓶牛乳の詰まった冷蔵庫を設置し、湯船に浸かって煎餅を齧りながら、来たる打ち上げの瞬間をのんびりと待った。



 来場者の中にウォランがいた。らしい。
 そんな話をちらりと耳にした華愛。

「随分、遅くなって、しまったのです」

 ――いつかまた、空の下で、お友達として…お茶でも致しましょう。

 いつか交わした約束。いや…それは約束とも呼べない、単なる一方的な宣言だった気もする。
 それでも、もう一度会わねば。

 華愛は会場の隅でそっとしゃがむと、着物の袂から小さな袋を取り出した。
 中に入っていたのは金平糖。それを地面にぱらぱらと撒きつつ、忍法スキル『響鳴鼠』を使用。僅かな間を置いて、付近にいたネズミやスズメ達が集まってくる。

「とあるヒトを、探してほしいのです」

 金平糖の包み紙を広げて、ウォランの似顔絵カキカキ。
 なんかこんな感じの悪魔さん。

 じーっと絵を見つめた後、金平糖を咥えて会場中に散っていく小動物達。
 そしてしばらくして戻ってきた小動物達に促され、その後をついていくと、人通りの少ない花壇にウォランが頭から真っ直ぐ刺さっていた。
 顔が土に埋まっているのにどうやって判別したのかとか細かい事は気にしてはいけない。

 スコップでざくざく掘り起こす。

「おやおや…どこかで見た顔ですねぇ」

 助け出され、とぼけた調子で華愛を見やるウォラン。
 一方で華愛は、こくりと小さく頷き、

「お外に、出られたのですね」
「はい、おかげさまでこの通り。今も花壇の肥料にならずに済みましたしねぇ」
「良かったのです」
「ああ、でも今日はこれでもお忍びですからねぇ。私に会った事はくれぐれも秘密でお願いしますよ」
「了解なのです(こくり」

 良い機会をくれた水神様に感心なのです。
 おっと、これは口にしない(心の内でしーっ


 話したい事があった。
 伝えたい事があった。
 偶然でもまた会えたらと思っていた。

 少しは落ち着いたのかな?
 仲良くできるかな?
 心に浮かんだ言葉が、鼓動に溶けて流れていく。

 ――ボクと、お友達になって、ほしいのです。

 いつかの願い。
 だがそれに直接触れる事はせず――


 華愛は、一呼吸置いた後…

「一緒に、ロケットを見学しませんか?」
「……ええ、構いませんよ」

 そう言ってウォランは、それまで目深に被っていたローブのフードを静かに外した。

「お前となら、俺にも別の答えが見つかるかもしれないなぁ…」

 ぽつりと呟くように。
 取り繕ったものではない、本当の声。

「でも偉いヒト達に私の居場所を教えるのはやめてくださいねぇ?」

 次の瞬間には再びいつもの慇懃な口調へと戻る。

「なのです(こくり」

 うへへ、と緩みかけた頬を誤魔化すように。華愛は袂から新しい金平糖の包みを取り出して、ウォランへと差し出す。
 受け取った彼の隣で、自分の分をもきゅもきゅ。


 ――それを離れた物陰からこっそり見守っていたエリス。
 口元に小さく笑みを浮かべ、うさぬいと共に静かに踵を返してその場を後にした。



 そしてパーリータイム!

 身重が判明した和紗をソファーに座らせて、甲斐甲斐しくもオロオロとお世話するリーゼ。
 他方では、大喜びでジャンクフードを頬張るマイケルの姿。

「ピザとフライドチキンとポテトとコーラ最高デース☆」
「ちゃんとお野菜も食べないと、めっ、ですよ〜」

 木葉がシエりじを系の料理を取り皿によそって差し出す。
 サラダや胡麻和え、おひたしにお吸い物。刻んで薬味にしたり、漬物としてご飯に乗せても美味しい。

「Oh! これが伝説のOMOTENASHIというやつデースネー☆ ワンダフォー、フジヤマゲイシャデース☆」

 だがこれらを作ったのは木葉ではない。
 特設キッチンスタジオの方へ目を向けると、歌音がちゃかちゃかと調理の腕を振るっていた。

「シェフと呼びなさい」
「食材ですね? 提供ですね?」
「たんまりあるわよ」

 食材用のテーブルに、各種りじをやダンジョンで採れた果実や肉を運び乗せるシエルと華宵。

「野菜……マシマシ……チョモランマ……」

 迷えるとしお。

 一方、他の料理人達も負けてはいない。
 ジビエ路線で攻めるのは悠人。

「肉の貯蔵は十分だ」

 獲ってきた獣肉を直火で炙り、あるいはじっくり煮込んで鍋物に。臭みだけを取り除いた自然の風味が、湯気に乗ってふわりと会場中を包み込む。
 隣の台では、レフニーが鉄鍋ジャカジャカ。

「チャーハン作るのです!」

 フライパン返しジャジャー!
 そして蒸篭の中には熱々の肉まん。更に、ローストビーフをお客さんの目の前でスライスして切り分ける粋なサービスも。

 デザートも忘れてはいけない。目玉はロケット型のジオラマケーキ!(発射台付き
 レフにゃんとキュウレフがデコレーションのお手伝い。

 ディザイアも対抗心を燃やして豪快にバーベキュー祭り。
 新鮮な果実は絞ってジュースとしても有効利用。

 蘇ったアイアンシェフ達。
 審査員席では、オペ子と奏音が一足先に試食なう。

「よいお味です(mgmg」
「技ありですね(mgmg」

 頬袋マキシマム。

 ほどなくして、来場者達にも振る舞われる料理の数々。
 作ってもらうだけというのもあれなので、華宵はヘヴホラの営業も兼ねて給仕を手伝う事に(キャシー達によるOMOTENASHI付き

「これも焼いてください!」

 一方、キッチンへ乗り込んでトウモロコシとタケノコをずいっと差し出すあけび。
 醤油をかけて、炭火で網焼きジュワー。

「美味いツマミで一層酒が進むな」

 隣で飲み叔父。

 会場では、2匹の熊がブロッコリーにマヨネーズを付けてボリボリ食していた。
 定吉と畑熊。

「うむ。やはりマヤカどののまよねーずを付けると、よりうまいのじゃ」
\ぐも/
「そう言ってもらえて嬉しいわ」

 見守りマヤカ。

 そして――

「取立ての時間です」

 お箸とお茶碗を持った真緋呂@真顔。
 A5ランクのスーパー霜降肉タイムで、爆弾魔と強盗トリオと三田夫妻を見やる。

「あ。すいません。うちのが、ほんと。すいません」

 と謝りつつ自分もしっかりお箸を持つ一機。せっかくだからね。

 被害者の会が体を張って手に入れたA5霜降牛肉。
 調理してくれたのはアイアンシェフ達。焼き加減や味付けを変えた高級肉の皿が、ずらりと真緋呂&一機の前に並べられる。

 手を合わせていただきます。
 ぷるんっとした柔らかな肉を箸で持ち上げ、そっと口へ運び入れる。
 瞬間、上質な脂のほどけるような味わいが鼻腔の奥までふわりと広がった。

 美味しい。
 美味しいのだが、

「霜降りの多い肉って数切れで飽きてこない?」

 一機の談。
 言いながら彼が隣の真緋呂を見ると、

「A5和牛やご飯いっぱいカモン!(もりもり」

 全然そんな事はなかったぜ。

 だがその時、じっと脇に立っていた三田がぷるぷると震え出した。

「……いかん……」
「「え?」」

「やはり納得いかーん!!」

 キレた。
 三田は「キエェェェ!」と叫びながら真緋呂の皿を奪い取ると、そのままA5霜降肉を丸のみムシャア!

「ず、ずるいんだな。オ、オイラも食べたいんだな」

 それを見た子分(太)を筆頭に、他の債務者組もお肉に殺到。
 あっという間にA5ランクが無くなってしまった。

 mgmgしながら訴状を申し立てる三田。

「我々は不当な取立てに断固抗議する!」

 今は過払い分に対して払い戻しだって請求できるご時勢なのだ。
 っていうか我々の債務そもそもおかしくね? むしろ架空請求と言っても過言ではないのではなかろうかと小一時間主張したい。

「ひどい。私はただ過去の労働の対価を要求していただけなのに(よよよ」

 よよよ。
 お肉を失った悲しみで、右手にお箸を持ったまま泣き崩れる真緋呂(左手でコレダーばりばりー

 雷撃に打たれて炭と化す債務者達。

「失ったお肉は返ってこない。新しいお肉を請求しないと」
「なんや借金の話か? 勘定なら任せてや」

 商談の匂いを嗅ぎ付けて和人が算盤ジャララ。
 和人屋は損害と賠償の見積もりもお受けいたします。



 調が用意したドレスでパーティー仕様におめかしした内務室組。
 会場を巡り、方々へ挨拶回り。

 すると、ペンギン達に絡まれている流&多紀を発見。

\ギュワッ ギュワッ/
「おっ、なんだっ。これが欲しいのか?」

 手に持っていたスイカジュース入りのグラスを、ペンギンの口元に近づけてみる流。
 瞬間、グラスに嘴を突っ込んでズズズーとジュースを吸い上げるペンギン。

\ぐぇっぷ/
「ペンギンとは、もっと愛嬌があるものではなかっただろうか」

 うーむ、と首を傾げる多紀。

「あらあら、きっとペンギンさん達も、お腹が空いているのですぅ」

 別のテーブルで見つけた生ハムを差し出す涙羽。
 ガツガツムシャムシャと群がるペンギン達をなでなで。

 一方、愛良耶は会場にいたベゾルクト@なんか高貴そうな天魔勢を捕まえて、ここぞとばかりに冥魔界についての話を聞く。

「是非ともお伺いしたい事が御座います」
「何かな?」

 現地の風土、風習、個人的な習慣 etc.

「ふむ……冥界や魔界と一括りに言っても、様々だ」

 基本的には薄暗いけど場所によっては明るかったり暑かったり寒かったり地域性があったりなかったり。

「そう言った意味では、人界も冥魔界も大した違いはないのかもしれない」
「なるほど…」

 愛良耶は深く頷きながら、彼の言葉一つ一つに、熱心にメモを取った。

 その頃、美詩もこの機に新たな人脈作りに精を出していた。

「局長さん、おかわりはいかがですか?」
「すまない、いただこう」

 将来(政治家)の為のコネ作り。
 ローマは一日にしてなんとやら。小さなコトでも今の内からコツコツと。

 そこへオペ子と奏音も現れる。

「今はオペ子も選挙に行ける時代です」

 永遠の18歳。

「私も普通に選挙権を持ってます」

 と、見た目20歳の大学部5年。

「ええ、存じてます。特にオペ子さんには、先の大規模作戦の折、とてもお世話になりました。ありがとうございます。どうぞ今後ともよしなに」
「「苦しゅうないです」」

 美詩はにっこりと微笑んで、2人のグラスにもドリンクを継ぎ足した。

「なんや黒い話しとるなぁ」

 通りすがりのゼロ。

「いえいえ。健全に親交を温めさせていただいているだけですよ。よろしければシュバイツァーさんも一杯どうかしら?」
「あ、ドーモドーモ」

 グラスにお酒トクトク。
 コネ話ついでにと、ゼロは局長に一声。

「なぁ紗江ちゃん」
「……」
「おーい紗江ちゃん」
「……」
「さーえちゃーん」
「……」
「あれ!? ひょっとして俺、無視されとる…!?」
「ん? ああ、いやすまん。誰も私を名前で呼ばないからすっかり自分の名前を忘れていた」
「紗江ちゃん…(ほろり」

 まあそれは置いといて、

「紗江ちゃん、俺んとこで働いてみる気ないか?」

 久遠ヶ原ではない、別の場所を拠点としたゼロの新たな道。

「独立組織作る予定やから、紗江ちゃんの能力はぜひ欲しい」
「ふむ……評価と誘いはありがたいが――」
「あと本拠地は島やから結婚相手には困らんで」
「 絶 対 に行かん」

 別に異性に相手にされてないわけじゃないし!?
 その気になれば自分だって相手くらい見つけられるし!?
 ウォッカのボトルぐびー!

「しまった地雷か」

 踏み抜きゼロ。
 一方、横で話を聞いていたオペ子が、いつもの眠たげ半目な眼差しでゼロをじー。

「局長よりも有能に違いないオペ子を誘わないとはけしからんです」
「ぺーちゃん? 人気者みたいやから引き抜いたらわるいかなって。きたかったらおいで。うまいものは多いぞ」
「今度食べに行きます」

 あかん、これタダ飯食うだけ食って帰るパターンや。
 などとやっていたら突然ゼロに掴み掛かりだす局長。

「おいどういう事だそれだとまるで私は人気が無いみたいじゃないかどういうことだ(首絞めギュギュー」
「やめてくださいしんでしまいます(虫の息」

 それを他所に、奏音もオペ子にそれとなく今後の話を振ってみる。

「今年は留年してしまいましたけど、来年以降、卒業後にオペ子さんの職場で一緒に働けないでしょうか」
「オペ子の人気とコネを持ってすれば人事部への根回しもチョチョイのチョイです」

 たぶん。

「その時はよろしくお願いします」
「よきに計らいます」

 また、別のテーブルでは艶華と雨唯がBrO運営チームと話していた。
 特に艶華の方は、コンピューター絡みという事でオンラインゲームの運営業務に興味があるようだ。

 会話が弾む中で、運営チームで働く悪魔のヒメから、さらっと重要なネタが。

「じ、実は今、BrOのスマホ版を、つ、作ろうっていう、企画が上がっててですね。で、でも、プログラムも含めて、こ、細かい仕様がまだ、まとまらなくて…」
「え。その話、社外に漏らして大丈夫なんですか?」
「な、内緒ですよ?」
「ガチャは悪い文明です」

 そこへオペ子と奏音がやって来た。

「オペ子はガチャではなく経験値とドロップ率のブーストアイテムやアバターで稼ぐ方針を要求します」
「実際にガチャに頼らず、ゲーム内の便利アイテムやアニメや漫画のメディアミックスで稼ぎ抜いた前例もありますね。山で修行している時に学びましたよ」

 すると、

「ガチャは甘え。粉砕しないと」

 何故かエリスも参戦。
 それを見た繭佳が、かくりと小首を傾げる。

「エリスお姉さんも“はいかきんしゃ”なのかな、だよ?」
「いや私は基本、無(理のない)課金だけど」

 石はゲーム内でコツコツ溜めて、イベント時に一気に回す派。

「でもレアキャラとか未実装だから(ふるえ」

 ゲーマー達の話を聞き、雨唯も言う。

「よく分からないけど、重課金者は通算額で重機が買えるって、どこかで聞いたなぁ。重機って結構な値段だよ?」
「やめろくださいその話は雪子に効きます」

 ふらりと、口からイチゴシロップを吐きながら雪子が湧いた。
 いまさら後には退けない沼。

 咄嗟に優祢が気を遣い、頑張って話題を逸らす。

「あ、あの、ところで、例の秘宝の調合が完了したので、よ、よろしければどうぞ…」

 瓶詰めにした乳白色のドリンク。
 大きくなる秘宝(再現版)。

「「ください」」

 瞬間、エリスとレフニーが、ずいっと手を差し出す。
 受け取り、2人は腰に手を当てて秘宝をグイッと一気飲み。すると…

 カッ!

 ちゅどーん!!

 なんとエリスとレフニーが爆発してしまった。
 普段からひんぬーに最適化されている身体が急激な乳の膨張に耐えられなかった模様。

「……うぅん……。……以前にお飲みになられた秘薬で、因子は改善されていると思ったのですけれど、やはり、急にというのは、少々難しかったですかねぇ……」

 乳膨張の負荷を誰よりも理解している恋音が言う。

「大丈夫! ひんぬーもラブコメには欠かせない大切な要素ですよ!」

 サムズアップで肯定する雅人。
 みんな違って、みんな良い! それこそがラブコメの真髄!

「ちなみに恋音が飲むとどうなります?」
「……おぉ……。……はい、せっかくですので、試してみるとしましょう……」
「じゃ、じゃあ、どうぞ」

 雅人に促されて優祢から秘宝ドリンクを受け取り、ぐびっと一気。
 直後、

 ぺかー!

「…………お、おぉぉ…………(ふるふるふるふる」

 神々しく輝きだす恋音の体。
 乳力が溢れ、ぱぅわーが漲ってくる。

 溢れ出た乳力に呼応するように、アールトアーム『豊乳女神の霊杖』も起動。
 杖に取り付けられた八色の環玉に恋音がその乳力を注ぎ込んで虚空に翳すと、謎のぱぅわーによって何かの“門”が現れた。

「どこに繋がっているんでしょう」

 雅人がゴゴゴと門を開くと――

\いらっしゃいませどうぞー/
      (水ω音)

 ゴッドハウス。

「あら、恋音さん達もいらっしゃったのね。ごきげんようですの」
「おめでとう、ここは本編クリア後のおまけ部屋じゃ」
「お先にまったりさせてもらってますー」
「私が神だ」

 凛ゴッドや石ゴッド、春都ゴッドと広星ゴッドも、ゴッド紅茶とゴッドお菓子でゴッドティータイム中だった。

「やりましたよ恋音! 私のラブコメパワーも遂に神の域に!」
「……お、おぉ……。……おめでとうございますぅ……」

 そこへ、荒ぶる局長から逃げてきたゼロも到着。

「あやうく神から仏にクラスチェンジするところやった…」

 ふぅ、と一息。

「つーわけでほんとに最後だな水音神…今まで遊んでくれてありがとう」
「おいばかやろう泣いちゃうだろ…こちらこそありがとう」
「初めてのWTでまさかMSが召喚できるなんて思わなかったよ。そのせいで職員室に呼び出されたらしくてごめんね」
「ええんやで。そのおかげで私もここまで辿り着けたん」
「あとなんで住所教えてくれへんの?」
「ゴッドハウスはいつでもアナタの心の中に」

 やいのやいの。

 ゴッドハウスも、会場も。騒がしくも華やかで、賑やかな一同の笑顔。
 華宵はそれらをポラロイドカメラで写し出し、そっと宙子のメッセージカプセルへと入れた――


●ロケット点火
 予定の時刻が近づき、宙子のエンジンに火が入れられる。

 カウントダウン開始。
 10…
 9…

 ウォランと共に、群衆から少し離れた場所でその様子を見学していた華愛。
 肩に乗ったヒーさんも一緒に見守る。

 その時――

「……ちょっとまて! やっぱりラーメンは俺の全てだ!」

 突然、脇をすり抜けて飛び出していくとしお。

「やっぱどんぶり取ってくる!」

 会場からは死角となっている発射台の階段を上り、燃料室の扉に手を掛ける。

 8…
 7…

「ヒャア 我慢できねぇ 0だ!」

 瞬間、早まった部長が発射スイッチぽちっとな。

 赤を超えて白く発光する閃熱と噴煙を吐き、宙子の巨体が持ち上がる。
 重力に逆らい、青く澄み渡った広大な空へ。
 扉に掴み掛かっていたとしおも一緒に空へ。

 壮大な光景を見上げながら、華愛は小さな声で感動の意を表した。

「タマヤー(」



 白煙を引いて空へと上がっていく宙子。

「ロケットなんて初めて見たよ!」

 興奮を露わに、じっと空を見つめるあけび。

「また皆で遊べたら良いなぁ」
「ああ。そうだな」

 藤忠も静かに頷く。

 他方で、打ち上げに沸く会場の空気を素直に楽しんでいた日菜子も同意。

「こういうのも、悪くないな」

 すぐ隣では、流と多紀、ディザイアやエリスらも、宙子の勇姿を見届けている。

「多紀、すごい迫力だなっ」
「ああ、壮観だな、るーくん!」
「止まるな戦友…!」
「無事に宇宙へ上がれますように…(なむなむ」

 高度は直に大気圏外へと差し掛かろうとしている。
 その経過を見上げながら広星がぽつり。

「爆発しねえかな…」
「爆発オチなのです!?」

 咄嗟にディザイアを掴み、Dシールドの構えを取るレフニー。
 やめてそんなこと言ってるとホントに爆発しちゃう!

「冗談だよ、ジョーダン」

 フラグ折にぃ。

 一方、歌音は広星がポキッと折った旗をオムライスに刺して有効利用しつつ、

「ときに、このイベント。ロケット打ち上げと打ち上げ宴会をかけてるのかね?」

 ハハッ。いやまさか決してそんな事は(ないとは言わない

 と、その時だった――

 プスンップスンッ

\!?/

 宙子が謎の失速。
 まずい、このままでは宇宙まで届かない…!

\我々の出番のようだな/

 そこへ現れた技師集団。
 同時に、発射場の地面がゴウンゴウンと開き、カタパルトに設置されたラファル…いやラファルロケッティァが姿を見せる。

「俺さまにまかせろー」

 脚から噴射炎を吐き出し、バヒューン!と空へ上がるラファルロケッティァ。

\だが燃料棒だけでは足りなかったので、宙子の燃料室からバイオ燃料を少し拝借した/

 もしかして:失速の原因。

 取り囲まれてボカスカと蹴たぐり回される技師集団。
 それを他所に、ラファルロケッティァは重力脱出がおぼつかなくなった宙子へと一気に追いついて下から押し上げ始めた。

「今タスケテやるぜー(マッチポンプ」

 その光景はまるで、落ちてくるアク●ズを押し上げるνガン●ムの如し。

「こんなロケットの1個や2個、俺さまの力があればぁぁぁ」

 出力全開。
 ラファルロケッティァは伊達じゃない!

 更にそこへ駆けつける、友軍の機影!

「ラル!」
「ヒナちゃんか!」

 カタパルトで雪子を打ち上げてその背に乗った日菜子。

「ちょおま、明らかに飛行スキルの高度限界超えてますしおすし」

 生き物が生身で耐えられる高度も超えてますしおすし。

「うっさい、溶けるまで気張れバカキ氷」

 修学旅行で1回飛んでるからいけるいける!
 そしてもう1機、

「踏ん張れ戦友!」

 陸海空子を装着したアルティメットディザイア。
 νガ●ダムを手伝って集まるジェ●ンやギラ・ド●ガの如く、雪子ライダー日菜子とアルティメットディザイアも宙子を押し上げ支援。

 瞬間、宙子に搭載されていたアウルリアクターが共鳴。
 タイミングを同じくして、燃料室内部にも変化が。

\\刻がみえる//

 バイオ燃料として詰め込まれていたシエりじを達が、質量やらエントロピーやらの法則を凌駕して莫大なエネルギーを放出し始めた。
 宙子のブースターが吼え、シエりじをの形をした巨大な噴煙が雲のように空に浮かび上がる。

 そのまま一気に宇宙へ。

「止まるんじゃねえぞ」

 手を離れて星の海へと上がっていく宙子を見送る、ラファルロケッティァ達。
 だがその直後、今度は彼女らの燃料と体力が底を尽いた。

 推力を失い、高度ウン万メートル下の会場へ向けて自然落下。その速度はあっという間にマッハに達する。
 超高高度域での高速落下で、肌に触れる空気の温度も瞬く間に南極レベル。

 そんな中、縦列隊形に並んだ日菜子達の風圧避けにされる雪子。

「喜べ雪ダルマ。お前の得意な氷点下だぞ」
「限度ってもんがあるんですわおぼぼぼ(顔面ガボボ!」

 ふと、そのすぐ隣で、

「やや、皆さんも一緒に打ち上げられたクチですか?」

 としおが同じように高速落下していた。
 無事?に燃料室から取り戻したラーメンどんぶりを、両腕で大事そうに抱えている。

 だがしかしこのままでは全員もれなく地上にメテオ!

「大変ですの」

 立ち上がる凛。
 他のゴッド達と一緒に(水ω音)の端っこを掴み、四方八方にびろーんと引っ張る。

 (   水   ω   音   )

 なんだかとってもマット感。

 直後、ズドーン!!と着地。
 緩衝ぷるるん。

 奇跡の生還。

「生きてる…! かみさまありがとう!!」

 よろよろと身を起こし、ラーメンどんぶりに頬ずりちゅっちゅするとしお@ラーメン王。

「ごめん俺が間違ってた…! もう離さないぞ!」

 王の帰還。

 対して、メッセージついでに己のあらゆるネタを記した丸秘ノートも打ち上げたテン子。
 宙子を無事に見送った空を眺めながら、ぽつりと呟く。

「やれやれ…バカのふりも楽じゃなかったわね…」

 くるりと振り向き、オペ子ら会場の面々のグラスにドリンクを注いで回る。

「私、色々迷惑おかけしましたわね…。お詫びしますわ、オペ子さん」

 唐突な真面目キャラ。
 ロケットと一緒にキャラも見送った模様。

「何事も妥協せず真剣に、がポリシーですのよ」

 素のキャラを開放して、しめやかに。
 このテンションこそが本来の私です(と言い張る

「どうか先程のご無礼をお許しくださいませ」
「大丈夫ですオペ子の心は太陽系よりも広いです。とりあえず続きは裁判所で聞きます」
「あらあらうふふ」

 逃走。

 そのしめやかな俊足っぷりを遠目に眺めていた雅人は、「ところで…」と恋音を見やる。

「恋音と内務室のみんなはどんなメッセージを宇宙に送りましたか? 私は私らしく『宇宙でもラブコメ!!』ですよ」
「……お、おぉ……。……そういえば、すっかりと失念しておりましたねぇ……」

 とは言え、真の裏ボスと名高いジスウ=セイゲーンはプレイングシートにも容赦なく出没する。

「……ですので、宇宙へのメッセージに関しては、いつかまた、どこかの機会に、という事でぇ……」

 コンテンツが終了してしまったとしても、この世界はこれからも続いていくのだから。

 一方、宙子が旅立っていった空をぼんやりと見上げていたシエル。

「結局シエりじをって何だったんだ……」

 なんか雲にもなってるし。

 その時だった。
 突如、ぶるぶると震えだす雲りじを。

\なんか来るぞ!/

\なんか来たぞ!/

\なんか来t/

 瞬間、雷鳴が轟き、雲りじをを粉砕して会場の上空を覆う巨大な影。

\我は平行世界の覇王/

 闘牛を思わせる2本のツノを生やした髑髏顔。
 鋭く吊りあがった眼窩の奥で、紫色の禍々しい闇がぼうっと灯る。

\この世界を明け渡せ。さもなくば全て滅ぼす/

 生命豊かな地球を狙って現れた、別世界の覇王(自称)。

 天を喰らうほどの巨大な敵の出現に、顔を見合わせる一同。
 やがて彼らは不敵に笑いながらその侵略者を見上げ、


「「やめておけ」」


 光纏。


 アウルの光が、世界を照らした――



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: ドクタークロウ・鴉乃宮 歌音(ja0427)
 ラーメン王・佐藤 としお(ja2489)
 久遠ヶ原から愛をこめて・蒼井 流(ja8263)
 久遠ヶ原から愛をこめて・天険 突破(jb0947)
 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
 アメリカン☆ドリーム・マイケル=アンジェルズ(jb2200)
 ペンギン帽子の・ラファル A ユーティライネン(jb4620)
 新たなる風、巻き起こす翼・緋打石(jb5225)
 久遠ヶ原から愛をこめて・シエル・ウェスト(jb6351)
 竜言の花・華愛(jb6708)
 氷結系の意地・玉置 雪子(jb8344)
 学園長FC終身名誉会員・築田多紀(jb9792)
 空の真ん中でお茶を・夜桜 奏音(jc0588)
 茶華道のたしなみ・琴ヶ瀬 調(jc0944)
 ハッカー候補生・賦 艶華(jc1317)
重体: −
面白かった!:65人

未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
ドクタークロウ・
鴉乃宮 歌音(ja0427)

卒業 男 インフィルトレイター
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
紅茶神・
斉凛(ja6571)

卒業 女 インフィルトレイター
久遠ヶ原から愛をこめて・
蒼井 流(ja8263)

大学部2年6組 男 ディバインナイト
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
久遠ヶ原から愛をこめて・
天険 突破(jb0947)

卒業 男 阿修羅
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
ねこのは・
深森 木葉(jb1711)

小等部1年1組 女 陰陽師
死のソースマイスター・
数多 広星(jb2054)

大学部4年4組 男 鬼道忍軍
アメリカン☆ドリーム・
マイケル=アンジェルズ(jb2200)

大学部2年257組 男 ディバインナイト
久遠ヶ原から愛をこめて・
春都(jb2291)

卒業 女 陰陽師
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍
主食は脱ぎたての生パンツ・
歌音 テンペスト(jb5186)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー
新たなる風、巻き起こす翼・
緋打石(jb5225)

卒業 女 鬼道忍軍
護黒連翼・
ディザイア・シーカー(jb5989)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプA
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
天性の政治センス・
花祀 美詩(jb6160)

大学部3年3組 女 ルインズブレイド
久遠ヶ原から愛をこめて・
シエル・ウェスト(jb6351)

卒業 女 ナイトウォーカー
竜言の花・
華愛(jb6708)

大学部3年7組 女 バハムートテイマー
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
あなたへの絆・
米田 一機(jb7387)

大学部3年5組 男 アストラルヴァンガード
異優教徒・
雪篠 愛良耶(jb7498)

高等部3年1組 女 アストラルヴァンガード
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅
氷結系の意地・
玉置 雪子(jb8344)

中等部1年2組 女 アカシックレコーダー:タイプB
建築家・
鳥辺 雨唯(jb8999)

大学部2年5組 女 阿修羅
見習いカウンセラー・
風香院 涙羽(jb9001)

大学部1年3組 女 陰陽師
学園長FC終身名誉会員・
築田多紀(jb9792)

小等部5年1組 女 ダアト
空の真ん中でお茶を・
夜桜 奏音(jc0588)

大学部5年286組 女 アカシックレコーダー:タイプB
乳の妖精・
露園 繭佳(jc0602)

中等部2年1組 女 ディバインナイト
茶華道のたしなみ・
琴ヶ瀬 調(jc0944)

高等部2年1組 女 インフィルトレイター
大好きマヤカどの・
上野定吉(jc1230)

大学部2年7組 男 ディバインナイト
ハッカー候補生・
賦 艶華(jc1317)

高等部3年1組 女 鬼道忍軍
大好き熊さん・
真白 マヤカ(jc1401)

大学部2年4組 女 陰陽師
ホテル王女・
玉笹 優祢(jc1751)

中等部2年1組 女 バハムートテイマー
明ける陽の花・
不知火あけび(jc1857)

大学部1年1組 女 鬼道忍軍
藤ノ朧は桃ノ月と明を誓ふ・
不知火藤忠(jc2194)

大学部3年3組 男 陰陽師
来し方抱き、行く末見つめ・
華宵(jc2265)

大学部2年4組 男 鬼道忍軍
撃退士・
樒 和人(jc2602)

小等部3年1組 男 インフィルトレイター