.


マスター:水音 流
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
形態:
参加人数:23人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2016/10/06


みんなの思い出



オープニング

 ――今は去る事、2016年の3月14日。
 とあるお菓子メーカーの本社ビル。

「この季節は笑いが止まらんなぁ!」

 社長室の椅子でふんぞり返るスーツ姿の中年おやじ。
 収支報告書の黒字を眺めながら、なんか高そうな葉巻すぱー。

「バレンタインとホワイトデー様々だのう」

 いつものチョコやクッキーを3割増しに値上げしているにも関わらず飛ぶように売れる。自社系列のケーキショップでは、パッケージや広告に『プレミアム』の文字を載せるだけで原価の2倍でも即売れだ。
 消費期限間近で値引きされていた材料を使えばコストは更に安くなる。

「イベント柄、腐って食中毒が発生する前に消費されてしまいますからね」

 そう相槌を打ったのは、眼鏡を掛けた女性秘書。

「株価のポイントも順調に推移しています」
「うむうむ。しかも今、我が社には金の卵があるからな」

 新商品の開発中に偶然出来上がった“飲料”。
 何故かどんな設備を用いても解析・複製・再生成が出来ないという謎の飲み物だが、あれは確実に金になる。

 まあそっちはその内じっくり考えるとして、

「ホワイトデーが終わるまでは、安い菓子をかき集めて少しでも高値で捌かんとな!」

 何ならいっそ、期限切れで廃棄された材料でも良い。
 日付だけ書き換えて菓子用素材として再販。

「万が一腹を壊しても、作った者のドジッ子属性のせいにできるからな!」

 バレなければよかろうなのだ。

「流石ですわ社長(眼鏡きらーん」

 だがその時、

「動くな! 消費者庁だ!」

 黒服のお兄さん達がドアをばぁん!して、ドカドカと雪崩れ込んできた。
 バレました。


●そして現在――
 とある警備会社のビル。
 元はお菓子メーカーのビルだったそこに、てくてくと入ってくる謎の一団。

 先頭を歩いていたのはエリス。地図を手に持ち、図面と睨めっこしながら真っ直ぐ進んでくる。
 ロビーの受付嬢が丁寧にお辞儀。

「おはようございます。本日はどのような御用件でしょうか?」

 だがエリス達は受付嬢には目もくれず、地図に目を落としながら直進。地図に夢中なあまり、聞こえていないようだ。
 そのまま受付カウンターを避けようともせず、

 どっかん!
 メキメキ!

 まるで重機のようにカウンターを破壊しながら頑なに直進。
 目的地への最短距離は常に直線なのだ。

「お客様!? 困ります! お客様ぁ!?」
「テロか!?」

 そこへ騒ぎを聞きつけた警備員がドカドカと集まってきた。
 暴徒鎮圧用の盾を構えてエリス達を取り囲み、ぐいぐい押し込む。

「なにするだー!?」
「こちらの台詞だこのぺったん娘共め!」

 拘束。
 エリス達は袋に詰められて、ビルの外へぽいちょされた。



 ――斡旋所。

 受付にやってきた中年おやじと、その秘書っぽい女性。

「潜入依頼ですか」
「うむうむ」

 応対していたオペ子の言葉に、おやじが頷く。
 今は警備会社の物となっているビルの一室――元社長室――の壁の中に隠し金庫があり、その中に“とある飲料”が保管されている。それを回収してきて欲しいと言うのだ。

「会社は潰れたが、アレさえ回収できればいくらでも挽回できる。ビルの設計図にも載っとらん隠し金庫だから、警備会社の連中はまだ気付いとらんだろう」
「引き受けてくださるのであれば、正確な場所を見取り図でお教えします」

 眼鏡をきらーんさせながら付け加える秘書。

「もちろん報酬もお支払い致しますわ」

 結構な金額を記した小切手をオペ子に手渡す。

「なるほろ」

 その額面を見て、オペ子はこくりと頷きながらそっと懐へ。

「しかし回収に成功しても倒産した会社の備品として役所に押収されるかもしれないです」
「心配いらん、極秘の品だったからな。差し押さえリストには載っとらん」

 バレなければよかろうなのだ。

「なるほろ(こくり」
「うむうむ(こくり」
「ちなみにどんな飲料ですか」
「言うなれば、そう…運命を変える賢者の石だ」

 この世界に生きとし生ける全てのモノが多かれ少なかれ持つと言われている宿命、通称ウシロノヒトルール。その中の1つ“ぺったんこ因子”を書き換える魔法の液体。
 課せられた貧相なサダメから解放され、今度こそ憧れの“豊かな者”になる事が可能なのだ。

 本当に大きくなる秘宝。

\その依頼受けた!/

 入口から声。
 振り向くと、袋から頭だけ出したエリス達が立っていた。

「おお、引き受けてくれるか!」
「任せて。必ず手に入れてみせるわ」

 そう。どんな手段を用いてでも…。

「では応援を要請しておきます」

 そう言ってオペ子は立ち上がると依頼書を掲示板に張り出し、協力してくれそうな知り合い達に連絡を取った――




リプレイ本文

「つまりそれを飲めば強くなるのね! あたい頑張るわ!」

 あたいがかんがえた さいきょーのきょじんかけいかく!
 話をちゃんと聞いていなかった様子の雪室 チルル(ja0220)が、準備しに飛び出していった。

「ふーん、噂の薬には興味ないけど潜入ミッションって楽しそうだわァ♪」
「飲めばたちどころに大きくなる秘宝…まだ似たようなのがあったんだ」

 依頼書を手にする黒百合(ja0422)と天宮 葉月(jb7258)。
 葉月はエリス達を振り返り、

「私はもういらないけど、頑張ってるエリスちゃんの為に協力するよ! 今度こそホントに大きくなるみたいだし」
「え。葉月、秘宝いらないの?」

 前はあんなに欲しがってたのに。

「その…彼氏に諭されまして…(照」

 このままでも良いかなって☆
 いやー参りましたなーハハハとはにかむ葉月。

「「乳おいてけ(ぐぎぎ」」
「乳がデカくなりたいのならチーズ食えば良いのに……」

 そう言ったのは、シエル・ウェスト(jb6351)。
 チーズを頬張りながらチーズの詰まった風呂敷を背負って両手にもチーズを握りしめている。

「食うかね?」

 乳をダシにして一同をチーズ教に入信させる魂胆である。

「乳製品は一通り試したし…」

 貰ったチーズを泣きながら齧る。しょっぱい。
 だが秘宝なら…今度こそ秘宝なら…!
 どんな手段を用いてでも、秘宝を飲んで大きくなって見せる。

「だめだ」

 不意に後ろからエリスのツインテが掴まれる。
 何 静花(jb4794)が立っていた。

 金髪ツインテ捕縛令。

「なんで!?」

 (依頼成立前に突撃した)エリスが悪い、慈悲は無い。

「それ以上はいけない」
「でも私達、これから潜入準備とか色々…」
「後な」

 ずるずるとツインテを引っ張っていき、説教部屋へ。
 説教は地球の形状と重力による実際の最短距離についての解説付きである。

「エリスは間違っている」
「え。直線が一番短いんじゃないの?」
「メルカトル図法と一緒に地球儀で説明した方が分かり易い、でも地球儀が見当たらなかった。代わりに月乃宮を見つけた、月乃宮で説明する」
「……お、おぉ……?(ふるふる」

 いつの間にか隣に立たされていた月乃宮 恋音(jb1221)。
 恋音のビッグな乳を地球に見立てて説明。

「月乃宮には地球が2つあるけど片方は忘れろ。お前達の生活圏にある地球は1つだ」
「(ぐぎぎ)」
「……な、何やら、謂れのない敵意を向けられている気が……?(ふるふるふるふる」
「目的地までの距離は測地線が一番短い。測地線は直線的だが直線じゃない、曲線だ。地球は丸い」

 なるほど、わからん。

 一頻り説教した所で、静花は再び金髪ツインテをむんずと掴む。

「しまっちゃおうしまっちゃおう」

 悪いエリスはしまっちゃおうね。

 向かった先は警備会社のビル。
 到着するや否や、静花は外壁にエリスを問答無用で叩き込んだ。

 前衛的なオブジェと化したツインテを放置して斡旋所へ帰還。

「オペ子ー。茶の時間なー」
「給湯室で沸かせば飲み放題です」

 一方、静花の行動を終始見ていた恋音。
 作戦を決行すると更なる器物損壊の予感。

「……念の為、こちらでも申請しておいた方が良さそうですねぇ……」

 依頼で必要な事という名目で、学園にも書類を出しておく事にした。
 ちなみにエリスは、しばらくして自力で戻ってきた。



 警備システムの保守を委託されている会社を調べ、作業員に変装して侵入しようという算段の佐藤 としお(ja2489)。
 必要な小道具は、時限式の警報回路。ロペ子を作ったロボ研部に製作を依頼。部長はラーメン1杯で快く回路を作ってくれた。

 それを持ってとしおはビルへ。作業員に扮し、帽子を深めに被りつつ受付へ。

「ちわーっす……」

 サーバーの保守点検と称し、警備員に付き添われて24階へ。
 すぐ隣に警備員がいるので今はまだ秘宝を取る事はできない。本物のレーザー警報についても今offにしてしまうと、作戦当日までの間に異常に気づかれてしまうリスクが増える。
 よって、今日の所は用意した警報回路をさりげなくサーバーに組み込むだけ。

 回路を設置した後は早々に退散である。

「あざーっしたー……」



 ビル内の一室。
 スーツ姿の社員と向かい合って座る、ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)。

「ブラックパレードさん、弊社を志望した動機をお聞かせいただけますか?」 
「撃退士としての能力や経験を活用できる場として、御社の環境は最適であると考えております。あと家から近い☆」
 
 潜入(就職)。本物の社員になってしまえばビル内に入り放題である。

 就職し、しっかりと仕事をこなして信頼を得て、それからタイミングを見計らい普通に秘宝回収という極めて常識的かつ紳士的な解決法!

「隠されているだけで、これ自体を警備してるんじゃないし。正攻法が一番よね♪」
「何か仰いましたか?」
「空耳じゃないです?(ニッコリ」
「そうですか。ところで仮に採用された場合、警備業法に基づいて30時間以上の新任研修が必要となります。とは言え会社としては、現役撃退士さんにはすぐにでも来て頂きたい」

 でも法律でね? 決まっててね? すぐに現場に出しちゃいけないって。
 雇いたいな〜。惜しいな〜。この履歴書の日付があと5日くらい早ければ即戦力だったんだけどな〜(チラッチラッ

「書き直します☆」
「よし採用」

 不正なんてなかった。



 潜入の為、ビル近くで張り込む事にした天険 突破(jb0947)。
 仕事終わりの社員を尾行して、ゲーセン等で“偶然”仲良くなろうと試みるトモダチ作戦。トモダチならビルの中にも入れてもらえるかもしれない。

「入場管理の厳しい職場にトモダチ呼ぶのは、流石に難しいんじゃないかしらァ…」

 すると、同じく物陰からじーっと社員達を見ていた黒百合が言う。

「やっぱり無理か。じゃあプランBだな」

 諦めて作戦を切り替える突破。
 一方の黒百合は、

「潜入するなら下調べは重要よねェ…」

 言いながら、どんな社員がいてどんな服装をしているか、細かく観察。
 必要な視覚情報を頭に叩き込んだ後、その場を離れた――


●作戦開始
 正面から堂々とビルへ入る黄昏ひりょ(jb3452)。
 受付嬢が応対。

「おはようございます。本日はどのような御用件でしょうか?」

 ひりょはさりげなくスキル『紳士的対応』を発動させながら答える。

「大学部になったし、そろそろ就職先も考えないといけない…。撃退士が多く勤めているこの会社をぜひ就職先の候補としたいので、見学に来ました」
「まぁ、ありがとうございます。すぐに担当の者をご用意いたしますので、少々お待ちください」

 しばらくして現れたのは、マッチョな先輩警備員と新人社員のジェラルドだった。

(何故ジェラルドさんがここに!?)
(やっほー☆)

 一瞬の目配せ。
 それとは気づかず、マッチョはひりょと握手。

「見学なら俺が案内しよう」
「よろしくお願いします」

 次いで、マッチョはジェラルドにも同行するよう告げる。

「研修を終えた(※という事になっている)とは言え、まだうちの会社には慣れていないだろう。一緒に来ると良い」
「お気遣いどうも♪」

 対して、ひりょは着信があったフリをして徐にスマホを取り出す。

「すみません、急に依頼が入ったみたいで…。今日の所は、各階をぐるっと見せてもらうだけでも良いですか?」
「構わんぞ。事件はいつ起こるか分からんものだからな」

 マッチョに連れられて、ひりょとジェラルドは上の階へと移動していった。



 新たな客を装って黒百合が受付に現れる。

「イベントの警備について、営業担当のヒトと打ち合わせしたいんだけどォ…」

 イベント(架空)。

「畏まりました」

 しばらくしてやって来たスーツ姿の社員に付き添われ、黒百合は3階の応接室へ。
 でっち上げの企画をテキトーに相談した後、話を切り上げる。

「それじゃァ、続きはまた後日お願いするわァ…。ところで、帰りに食堂でご飯食べていっても良いかしらァ…?」
「構いませんよ」
「ありがとォ…♪」

 食堂前で社員と別れる黒百合。そのまま食堂に入…らずに、周囲をチラり。誰も見ていないのを確認し、変化の術を使用しつつお着替え。
 事前の下調べで見かけた社員と同じ姿に変装した。

「食堂がココだからァ、配電盤はあっちねェ…」

 ビル内の配電経路は非常電源も含めて建築資料で把握済み。
 現役社員に変装しているので堂々と各階を移動し、用意してきたナニカを配電設備に仕掛けていく。

 時限式の自家製爆弾。

「きゃはァ、電気が停まれば警備システムも役立たずよねェ…♪」

 タイマーはダイブ組の降下予定時刻の15秒前に設定。
 これでよし。

「うっかり“本人”と鉢合わせする前に帰りましょォ…」

 黒百合は変装を解き、何食わぬ顔でロビーを通ってビルを出た。



 蓮城 真緋呂(jb6120)がロビーにIN。
 依頼人が納得いかないけど、乙女の願いは無碍に出来ない。

「私には必要ないものだけど(F的に」
「お、おはようございます…?」

 唐突な独り言に首を傾げる受付のおねーさん。
 真緋呂は構わず話を切り出す。

「ストーカーに付き纏われてるみたいなの。家のセキュリティについて相談したくて…」
「まあ…! そんなカス野郎は許せませんね!」

 すぐさま担当者が登場。

「では詳しいお話は応接室で――」
「食堂でお願いします(キリッ」
「え?」
「怖くて何も喉に通らなかったから…」

 警備員さんがいっぱいのここなら安心!

「さあ早く食堂へ行きましょ!」
「ここの食堂は社員さん以外も利用できるんです?」

 そこへ別の客が声を掛けてきた。
 シエルだ。陸地につき動けない海ロペ子を小脇に抱えている。

「はい、ご利用いただけますよ」
「IDください」

 ごはんください。
 というわけで食堂へ案内される真緋呂とシエル。

「では警備のご相談についてですが…」
「メニューにあるやつ上から順番に全部!」
「お住まいは戸建てですか? それとも集合住宅?」
「このカレー、じゃがいも大きくて美味しい…!(もぐもぐ」

 聞いてねえ。
 一方のシエルも、その様子を尻目に料理をチョイス。

「グラタンとグラタンと、あとグラタンください」

 そして席へは戻らず、周囲の目が真緋呂の爆食いに集中している隙に海子と共に食堂の外へ。
 海子の蓋を開けて中にライドオンしつつ、『装備開発室宛』と書いた段ボールを海子に被らせて通路でぽつんと待機した――



 地下の社員入口に狙いを定めた雫(ja1894)。
 老警備員が相手なら、友達汁とか使いなら話せばポロッとIDを貸してくれるかもしれないと考えたのだ。

 そして情報通り、そこに老警備員は居た。
 通称、仏の地下じい。

「おじいさん、ちょっと良いですか?」
「ん〜? なんじゃお嬢ちゃん、迷子かのう?(ぷるぷる」
「ID貸してください(友達汁ぶしゃー」
「お〜そうかそうか。よしよし、これをやろうのう」

 飴玉。

「…これじゃないです」

 でも貰って舐める。
 そこへ、出社してきた若い警備員がやって来る。

「地下じい、今日も生きてるか? …ん? なんだ地下じいのお孫さんか?」
「違います」

 こんな所でモタつく訳にはいかない。秘宝の量には限りがあるのだ。

「全ての者に恩恵が授けられないなら、こうするしか…」

 雫は作戦を奥の手に変更。
 徐に若い警備員へと話しかけ、

「エリスさんという方達がこのビルを襲撃しようとしています」
「なんだってそれは本当かい!?」

 こいつ裏切りやがった。

「詳しい話を聞かせてくれるかい!?」

 警備員に連れられ、雫はすたすたとビルの中へ入っていった。



「この時代に生きてて良かった」

 そうごちるのは米田 一機(jb7387)。
 秘宝を飲んで“豊か”になった女子達の姿を想像。

「来年の夏は桃源郷まったなしだ、がんばろ」

 そんな彼を率いるのは樒 和紗(jb6970)。
 後ろにリーゼも連れて、全員眼鏡&スーツできりっとしながらロビーへ。

「撃退庁の方から来ました。撃退士業務に関して抜打ち監査を行ないますので、担当者を1名お願いします」
「では恐れ入りますが、身分証を御提示いただいてもよろしいでしょうか?」

 言われて和紗は懐からシュパッと素早く学生証を取り出し、

「どうぞ」

 受付嬢の顔面にぐいぐい押しつけ。

「ちょっ、近っ、見え…!」

 シュパッと学生証しまい、和紗は眼鏡をスチャッとしながらリーゼの方をチラリ。

「課長、今の応対の記録を」
「(こくり)」

 カキカキ。

「では改めて担当者をお願いします」
「し、少々お待ちください…」
「おぉぉぉ待たせしましたぁぁぁ!」

 今だ嘗て無いスピードで担当者到着。

「では、各階30秒で説明を」
「秒!?」

 なんという無茶振り。

「後25秒です」
「……」

 無言で時計を凝視するリーゼ。

「ヒェッ…!」
「課長、記録を」
「(こくり)」

 カキカキ。

「では次は2階をお願いします」

 移動。
 すると和紗は徐に発煙筒をリーゼへ渡す。
 煙を焚いて火災報知機に近づけるリーゼ。ベルが作動。そうとは知らない各階で、社員がワーッと避難を始める。

「避難誘導、確認」
「(こくり)」

 カキカキ。

「あ、あの…契約相談中のお客様もおられますし、避難誘導の方はほどほどにしていただけると…」
「どうしますか課長?」
「(こくり)」

 他の潜入組まで強制避難させられたら本末転倒だからね仕方ないね。
 ちなみに一機はと言うと、

(無言で頷くだけでホイホイ事が進んでいく…すげー)

 隣でのほほんと見物していた。



「凛殿に指定された場所はここでござるな」
「間違いないでござる」

 斉凛(ja6571)に呼び出された豚侍達。
 合流地点として指定されたビル前できょろきょろ待っていると、

 プップー!
 なんと暴走した4tトラックが突っ込んできたではないか!

 運転席に居たのは、凛そっくりの小型生物――凛ぱっぱ。
 トラックはそのまま一直線に豚侍を撥ねつつ、ビルにドギャァン!

「おい誰か轢かれたぞ!?」

 ざわざわ。
 そこへ凛(本体)が登場。

「緊急事態ですわ。怪我人治療の為場所お借りしますの」
「こ、こちらです」

 豚肉をストレッチャーに乗せ、社員に案内されてエレベーターで22階へ。
 更に社内の注意をロビーへと逸らす為、置き台詞を残していく凛。

「トラックが突っ込んで怪我人がでましたわ。テロですの」
「え? テロ?」
「飯テロ?」
「豚の挽肉?」

 イベリコ侍。
 ざわざわ。

「お、なんかよく分からんがチャンスだな」

 ビルの外で待機していた突破が動いた。

 プランB:外から侵入。

「ビルクライムは初めてだな」

 外壁の僅かな凹凸に指やワイヤーを掛けてよじ登っていく突破。
 まあ他の連中も動くようだし、これはこれで失敗しても陽動にはなるだろう。たぶん。



 その頃、マッチョ先輩とジェラルドに各階を案内されていたひりょ。
 ジェラルドは彼を案内しながら、福利厚生などについても真面目に説明。

「モチロン残業代もきちんと出るよ☆ ですよね先輩」
「当然だ。専用の申告書に超過労働時間を記載して事務局に提出すれば給料に上乗せされると、契約書にも書いてある。その申告書がどこに行けば貰えるのかは誰も知らんが」

 ブラックの香り。

 その時、不意に鳴り響いた火災報知機。
 かと思えば、1階からは交通事故の音。

 ひりょはすぐさま事態を察する。

(皆も動き始めたみたいだな…)

 ならば、少しでも皆から注意を逸らそう。
 ひりょは一瞬の隙を突き、さっと小道に逸れてわざと迷子に。

「ん? 黄昏君はどこへ行った?」

 あちこち探し回る2人。
 必死に2人から逃げr…もとい逸れるひりょ。

 しばらくしてひりょ発見。

「ここに居たか」
「すいません、お手数をお掛けして」
「結構大きい建物だからね☆」

 見つかったからには仕方がないと、ひりょは2人の方へ近づこうとして、しかし躓いてうっかり転倒。
 咄嗟に手を付いた壁には火災警報のボタンが!

 ジリリリリ!

「おいなんて事を!」
「違っ、これはわざとでは…!」
「とんだドジ野郎ですな☆」

 無線ですぐさま誤報と伝えるマッチョ。

「まったく。次の階へ行くぞ」
「はい」

 2人の後について階段を上r

 再び躓き。
 思わずマッチョの服を掴んだひりょの掌には、うっかり活性化していたトーチの火が。

 マッチョ炎上。
 その煙に反応して報知器作動。

「なんとぉ!?」
「やあこれは大変☆」

 ジェラルドが消火器ブシャーして何とか鎮火。

「すいませんわざとじゃないんです…!」

 だがこれはこれで陽動になったかもしれない。
 ひりょは平謝りしつつ、ここからは見えぬ仲間達に気を向ける。

(頑張れよエリスさん、皆)
「おいボサッとするなこのドジッ子野郎! 来い、教育してやる!」

 ひりょはムカ着火ファイヤーしたマッチョにずるずると連れていかれた。



 ふとっちょボディーの満月 美華(jb6831)が、騒がしいロビーを横切って受付を訪ねてきた。
 学生証を提示しながら告げる。

「調査依頼を受けて来ました。この建物、以前はお菓子会社のビルだったそうですね」

 当時の社員に天魔が紛れ込んでおり、お菓子と偽ってアウルに関する怪しい品を作成。それをこのビルのどこかに隠しているという情報を掴んだ。
 という体。

「な、なるほど」
「隠し場所の目星は付いているので、中に入れてもらえますか?」
「畏まりました。では警備の者を同行させますので…」

 やって来た警備員達を誘導するように歩き出す美華。
 すると警備員の1人が質問。

「その目星というのは?」
「まずは食堂です」

 きつねうどんを注文する美華。どっこいしょと椅子に座って、おうどんちゅるる。
 エリス達ダイブ組が到着するまでの時間を稼ぐのだ。

「あの、調査の方は…?」
「そうでした。食べてる場合じゃないですね(もぐもぐ」

 うどんを啜りながら次の階へ移動。
 あそこが怪しいここも怪しいと警備員達を連れ回して通路を歩いていると、ふと窓の外にビルクライムしている突破の姿が。
 いかん、見つかる!
 美華は咄嗟に突破と正反対の方向を指差す。

「あんな所に鯨がいるほえ!」
「「!?」」

 釣られる警備員。

(さあ、今の内に)
(悪いな)

 さむずあっぷして、突破はぺったんぺったんビルを登っていった。



「皆その侭で良いと思うんだけど、女の子の頼みは断れないね」
「ジェンちゃんってば紳士ぃ〜!」

 ワゴン車で地下駐車場に到着した、砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)。
 車内にはキャシー達オカマ勢の姿も。

 狙いは地下じい。
 発煙手榴弾で監視カメラを遮りつつ社員専用口前にブイーン!と乗りつけ、皆でわーっと車に攫う。
 GPS機能がありそうなIDカードや携帯はぽいちょして、ブイーン!と駐車場を脱出…と見せかけて、社員達の車に紛れてそのまま潜伏。

「灯台下暗しって言うよね」
「おじいちゃん、ごめんねぇ〜ん(野太い声」
「お煎餅食べるぅ〜?(ハスキーな声」

 ぷるぷるしている地下じいを車内でOMOTENASHIするキャシー達。
 それを横目にジェンティアンは、作戦通りにロビーへ電話を掛ける。プルルル…ガチャ。

「地下のおじいちゃんは預かった!」
『!?』
「警備会社の警備員が誘拐されるとか信用問題だね」

 公表したらどうなるかなー。
 マスコミが喜ぶだろうなー。

「バラされたくなかったら言う通りにしてね?」



 地下じいの誘拐現場を物陰から見ていた夜桜 奏音(jc0588)。

「チャンスですね」
「オペ子危ない橋はまず他人に渡らせる主義です」

 と、オペ子。
 オペ子を拉…一緒に来てもらいながら、奏音は無人となった社員入口を通過。

「ここで待っていてください」

 監視カメラの死角でオペ子を待たせ、蜃気楼で先行してエレベーターへ。カメラを破壊してから天井のハッチをこじ開け、上からオペ子を引っ張り上げる。
 シャフトに隠れてハッチをぱたり。

「さて、とりあえず侵入はできましたか」
「そのようだな」

 いつの間にか隣にもう1人居た。
 同じく蜃気楼で透明になっていたディザイア・シーカー(jb5989)。

「おやシーカーさん。てっきりダイブ組で行くかと思ってました」
「一緒にダイブしたかった…!(苦渋の表情」

 だが、お嬢が秘宝を手に入れて飲む事こそが至上命題!
 今度こそは本物の秘宝。お嬢の為に逃してはならない。

 ディザイアは上空を移動中であろうヘリ…そこに乗っているはずのRehni Nam(ja5283)の姿を思い浮かべる。

「…お嬢は頼んだぞ、我が最大の壁よ」

 断腸の思い。
 すると、奏音がぽつり。

「今日は断腸されずに済むと良いですね」
「何の話ですかねぇ?(ごくり」



『只今より2階食堂が無料開放されます』

 突然の社内放送。そして警備員達の様子がおかしな事に。
 偶数階では通路で反復横跳び、奇数階ではV字バランスと、社内中で揃って奇行に走っていた。

(どうやら竜胆兄は上手くいったようですね)

 ダメ押しで案内役に圧を加える和紗。

「騒がしい様ですが何かトラブルでも?(眼鏡きりっ」
「い、いいえ〜、食後の運動ですお構いなくぅ〜」

 すると一機も行動を開始。
 意味ありげにスマホを覗く仕草を見せた後、

「不審者が侵入したって連絡があったんだけど…」
「ふぁ!?」
「管理室見せてもらえます?」
「ままままさかそんな事あるわけがないですし!?」
「見せてもらえます?(眼鏡きらーん」
「あ、あああ案内させます…」

 和紗達と別れ、一機は警備員と共に23階へ移動した。



 食堂。

「あの…そろそろ付き纏い被害についてのお話を…」

 涙目で真緋呂に話しかけ続けていた社員。それを他所に真緋呂は壁の時計をチラリ。
 そろそろ頃合か。せっかく無料になったのに食べられなくなるのは口惜しいが、仕方ない。また後で食べに来よう。

 徐に立ち上がり、

「…! お腹が…っ」

 唐突に、食べ過ぎ腹痛を装う。
 真緋呂ちゃんが食べ過ぎ? ハハッ、ないわー。

 有無を言わさずトイレダッシュ。
 直後、蜃気楼で透明化。IDを個室に置き捨てて上階へと移動。監視カメラを誘導するべく騒ぎを起こす。
 反復横跳び中の警備員の足元に水を撒いてみたり、V字バランス中の警備員同士をくっつけてWにしてみたり――



 管理室に到着した一機。
 監視モニターに真緋呂による悪戯の跡が映る。

「侵入者の仕業かもしれないですね、ズームしてください」

 そう言って、全てのカメラを寄せる。

(よし、これでカメラは死角だらけになったな)



 22階、宿泊室。
 豚侍をベッドにぽいちょした凛は、付き添いの社員へと振り返り…

「案内ありがとうございましたですの。もう結構ですわ、ゆっくりお眠りなさいませ」

 シルバートレイで首筋をチョップ!
 どさり。
 動かなくなった社員を豚入りのベッドに押し込み、IDを毟り取ってからエレベーターで23階へ――



 23階に停まるエレベーター。
 天井裏に隠れていた奏音達は乗員が出て行く気配を確かめつつ、ドアが閉まる前にハッチを開けて素早く23階へ侵入。

 一方でディザイアは、

「俺はレーザーの警報を解除してこよう」

 翼を広げ、シャフト内を移動して24階へ。

 そのままオペ子を引きつれて進む奏音。
 ふと、通路の先に見覚えのある後姿を発見。凛だ。

「どうも」
「お2人も無事に侵入できたようで何よりですの」

 一緒に管理室へ。ドアの前で互いに頷き、突入ばぁん!
 中に居た全員を背後から昏倒させて、一気に制圧。
 しかし、

「あら?」

 奏音が殴った相手の中に、一機が混じっていた。
 気絶している一機をつっつくオペ子。

「1発だけなら誤射かもしれないです」
「3発は殴りましたけど」

 ごめんなさい、とぺこり。
 まあそのうち目を覚ますだろう。

「さぁ、情報処理はオペ子さんの出番ですよ」
「安全な仕事はオペ子にお任せです」

 頷いて端末操作カチャカチャ。
 奏音もテキトーに操作ガチャガチャ。

 操作は2人に任せ、凛はエリスのヘリに無線連絡。

「システムは押さえましたわ」

 後はレーザーの警報解除のみ。
 凛は奏音達を残して、24階へと向かった。



 ヘリコプターばるばるばる。操縦士が凛からの報告を伝える。
 頷いたエリスに、レフニーが自身も含めて補助スキルを付与。効果時間? コメディ補正で何とか…!!

 秘宝…。今度こそ、我が、我等が手に。

「行きましょうエリスちゃん、皆」

 深森 木葉(jb1711)も頷く。

「あたしは、今のままのエリスちゃんが好きですよぉ〜。胸が大きくなくても、エリスちゃんは素敵な女性なのですぅ。でも、エリスちゃんが望むなら、そのための協力は惜しまないですよぉ〜」

 鳳凰を召喚し、同乗者達に韋駄天を付与。
 そして鳳凰には、

(もしレーザーの無効化に失敗してあたしがやられた時は、体当たりしてでもエリスちゃんがレーザーに落ちないようにして欲しいのです)

 と、こっそり命令しておいた。

「夢を追いかける子は素敵ね」

 やる気勢な少女達を眺めながら微笑む華宵(jc2265)。

「微力ながら私も夢を叶えるお手伝いをしましょうか」

 取り出したのはアルミホイルを貼り付けたビニール傘。
 アルミは工学的にレーザーの反射率が高いのだ。

「昨夜作っておいたの。良かったら使って?」

 傘貼りも中々楽しかった。

「あと…保険に」

 エリス達にもアルミホイル巻き巻き。

「ありがとう。でもちょっと動き辛いような…。華宵は巻かないの?」
「私はいいわ。動き難いから(いい笑顔」

 対して葉月が、盾とアウルの鎧を準備して意気込む。

「仮にレーザーが切れてなくても押し通る気概で! 神の兵士もあるから撃沈しないはず…余裕があったらライトヒール使うね」

 そして予定時刻が近づき、ヘリもビルの真上に到着。
 木葉が宣言。

「あたしが先にダイブするのです。もし怪我しちゃっても、あたしはお薬はいらないのですよ」

 あたしに使う分のお薬は、他のヒトに回してあげてください。
 するとエリスが、やさしく諭す。

「木葉…。もっと自分の事も大切にしなきゃ、お母さんとお父さんも安心して眠れないわよ?(なでなで」
「あうぅ…あっ」

 もじもじする木葉。だが次の瞬間、なんとヘリから足を踏み外してしまった。
 ドジっ娘LV99。

 レフニーが叫ぶ。

「エリスちゃんが撫でたら落ちたのです!」
「違っ、いや違わないけど…!」
「深森ちゃぁぁん!」

 葉月が咄嗟に身を乗り出して木葉を掴もうと…して失敗。一緒に落下。
 全部アルミホイルって奴の仕業なんだ。

 そのまま一直線に落ちていく2人。
 だが安心して欲しい。アルミホイルで包まれているからきっとレーザーを反sy

 スンッ

 一瞬でアルミホイルごと細切れにされる幼女とボイン。
 ひでえ画である(モザイクもじゃもじゃ

「やっぱりアルミホイルくらいじゃダメだったわね…」

 頬に手を当ててごちる華宵。
 良かった、自分には巻かなくて(←

「バカどもの夢になんて興味はねーんだけれどもな」

 通風孔を見下ろすラファル A ユーティライネン(jb4620)。
 でも現場を混乱の渦に突き落とすのはとても楽しい。

 当初の予定ではビルごと解体してから後でお宝を掘り起こそうと考えていたラファルさん。以前にビル1つをコメディ殺法でバラした実績もある。
 しかし今回、作戦前に別件でドジを踏んで重体に。これでは出力が上がらない。仕方がないのでふつーに飛ぼうとヘリに乗った今日この頃。
 予定時刻には少し早いが、

「俺も先にダイブするぜ」

 その背に華宵が祈りの言葉を贈る。

「もしoff出来てなくてもきっと大丈夫。V兵器じゃなければ天魔はしなないわ(微笑」

 天魔はしなない(人間はしぬ

 しかしビル周辺には常に阻霊符が展開されているので、レーザーが当たれば例え天魔と言えども無事では済まない。メカボディのラファルさんもタダでは済まない。

「いけるいける」

 構わずダイブするラファルさん。光学迷彩で潜行しつつ、びゅーんと落下して穴の中へ。
 そしてレーザーの直前で闇渡り発動。影から影へと空間跳躍。無傷で24階に到達してみせた。

「あら便利」

 華宵も感嘆。
 そのままラファルは混乱を煽るべく、23階の管理室へと向かった。



 その頃、地下駐車場。
 皆でお煎餅ぱりぱり。

「おじいちゃん只者じゃないでしょ。実は社長とか?」

 社員入口を1人で警備=全員の顔記憶&危機対応可能説。

「はて…。創業当時から働かせてもらっとるが、社長には会った事がないのう」
「実は隠し金庫とかもバレてるよねぇ」

 24〜25階改修時に、壁の中も弄っているはず。常識的に考えて。

「家の金庫なら婆さんの通帳が入っとるがのう」

 お茶ずずー。
 地下じいはぷるぷるしながらジェンティアンに目を向け、

「ところで健司や。煎餅はまだかのう(ぱりぱり」
「おじいちゃん今食べてるでしょ」

 健司って誰だ。



 ディザイアが24階に到達。
 すると、突如レーザー警報が作動。

「何故だ!?」

 実はこれ、としおが仕掛けていった時限式の偽警報である。
 そうとは知らず、焦るディザイア。スイッチを探して右往左往していると、エレベーターの方からヒトの気配が。
 慌てて段ボールを被り、息を潜める。

 現れたのは警備員に付き添われたとしお(作業員ver.)だった。

 誤報を受けて駆けつけた体で警報器に近づくとしお。
 蓋を剥がして偽警報をカットしつつ、さりげなく本物の警報回路もカット。

「もう大丈夫ですよ!」
「規則だから、警報が正常に戻ったかどうかテストさせてもらうぞ」
「え」

 無線で管理室に連絡しようとする警備員。いかん、工作がバレる!
 だがその時、

 がしっ
 ゴキッ
 どさり

 突然背後から首ゴキされて倒れ伏す警備員。
 凛が立っていた。

 何も知らない凛は、そのまま作業員(としお)も始末しようとして、

「ままま待って! 僕ですよ僕!」
「まぁ、としおさんでしたのね。気づきませんでしたわ」

 それを見てディザイアも姿を現す。
 動かない警備員をつんつん。

「うぅん…むにゃむにゃ…」

 良かった生きてた。

 ともあれ、これで警報は潰した。
 としおがヘリに連絡。

「……OK、レーザーをカットしてダイブしろ!」

 次いで、ディザイアは23階の支援へ。

「お嬢、成功を祈ってる…」



 管理室を監査しにきた和紗一行。
 目にしたのは床に転がる一機&警備員と、それを他所に端末をカチャカチャターン!している奏音&オペ子。

「何事」

 直後、目を覚ます一機。すぐさま己の役割を思い出し、倒れている警備員に剣を向けつつ、和紗の傍にいる案内員に告げる。

「はい、ホールドアップ。今管理室で僕の言う通りにしなければこの人の首飛ぶからね」

 実はテロリストだったという体。
 予定は狂ったがここから軌道修正すればよかろうなのだ。

 だがそこへ別のテロリストが。

「解体してやるぜおらー」

 ぶっぱ大好きラファルさん入室。
 レーザーのスイッチを切ると同時に、端末にナックルバンカーダイダロスディスラプターダイオウジョウをぶち込んでナノマシンウィルスを注入。ビルの鉄壁防御というグッドステータス?を剥ぎ取った。

 そのまま奏音やオペ子と一緒になって端末ガチャガチャ。監視カメラをぐいんぐいん振り回したり、シャッターガラガラさせてみたり。

 ディザイアが到着した頃には、管理室内は何だかよく分からない事になっていた。



 1人だけ帰宅してごろごろしていた黒百合。

「そろそろかしらァ…」

 時計を見ながらカウントダウン。
 時限装置作動――



 ――ビルの随所で小規模爆発。
 黒百合が仕掛けた爆弾が、既にレーザーはoffになってる事などお構いなしに電気経路を吹き飛ばす。
 時限式だから今更止められないのだ。

 全システム停止。
 そして、

「時間なのです!」

 レフニーがエリスと抱き合って、ヘリからダイーーブッ!
 直後、万が一に備えて砂嵐発動。
 レーザーは擾乱を受け減衰。つまり威力を発揮し得ない。はず。
 砂で壊れても知らない。

「むしろ、我等が前に立塞がり死全ての愚かなる者には等しく滅びを与えるのです!」

 そのまま穴に突入。レーザーもoffになっている。いける!
 しかしその瞬間、木葉の鳳凰が、

『“もしレーザーの無効化に失敗してあたしがやられた時は”、体当たりしてでもエリスちゃんがレーザーに落ちないようにして欲しいのです』

 命令を忠実に実行。
 通気孔内でエリス(+レフニー)に体当たりして、内壁に叩きつけた!

 壁にめり込んで止まるエリス(+レフニー)。
 ぴくぴくっ。

 召喚主である木葉が細切れになっているのに何故鳳凰がまだ現界してるかって?
 コメディ補正でラグってるんじゃないかな(鼻ほじ



 時計をチラリして、予定時刻が過ぎた事を確認する和紗と一機。
 2人は案内員を振り返り、

「…といった危機対策は?」

 レーザースイッチ戻し。
 あくまで監査の一環という体を貫く。

「びっくりした? これもチェック項目にあるんだ。脅かしてごめんね」

 でもスイッチを戻してもonにならない。っていうかビルに電気自体通ってない。
 そういえばさっき爆発音も聞こえたような?
 案内員は首を傾げつつ、

「ちょっと24階も見てきますね」
「いえ大丈夫です。見ていませんが大丈夫です」

 案内員の肩をがしぃする和紗。ぐぐぐっ。

「監査終了です。撤収しましょう課長」
「(こくり)」



 ビル近くに潜伏していた恋音。
 エリス達の突入時刻に合わせてロペ子達に送電線を破壊させ、ビルの電力を断つつもりだったのだが、

「……配線が爆破されたようですし、必要なくなりましたねぇ……」

 だがその時、通りすがりの2人の電気工が焼け焦げたビルの外壁を発見。

「ちょ先輩あのビルの電線まじプッツンしちゃってねっすか?」
「まじ? なら俺らが直すっきゃなくね?」

 壁をよじ登り、配線を弄り始める。

「あー、これダメなやつ。完全に吹き飛んじゃってる? みたいな?」
「まじすか。ちょそれヤバくねっすか? まじ復旧必要なやつじゃねっすか?」
「まじまじ。だから今マッハで直した。つーかもう電力復活? みたいな?」
「まじすか。ちょそれ早くねっすか? まじワープとか出来る早さじゃねっすか?」
「コメディだし? 次のコマには復活? みたいな?」
「先輩マジぱねぇ」

 電力回復。

「…………お、おぉぉ…………?」

 それをふるふるしながら見上げていた恋音。

「……う、うぅん……。……これでは、切断しても、またすぐに電線を繋がれてしまうかもしれませんねぇ……」

 仕方ない、町ごと破壊しよう(よく訓練された久遠ヶ原生の発想

「……発電所はどこにありましたかねぇ……(ふるふる」

 恋音はロペ子の頭に乗り、ブオーッと移動を始めた。



 ダイブ組に加わっていたものの、壁にめり込んだレフニー達に気を取られていたらレーザーが復活してしまったチルル。
 しかもダイブした一同を雨雪(異物)だと誤認したセンサーにより、通風孔の屋根が閉じるという事態に。

 だがこんな事もあろうかとチルルは直接中へはダイブせず、穴の縁に着地して待機していたのだ。華宵もちゃっかりそれに倣う。

「“ずのうは”のあたいについてくれば、ばんじ解決よ!」
「確かにこの方が安全そうね」

 チルルは徐に、用意しておいたビニールシートを広げ始める。
 屋根が閉じて狭くなった換気口にシート詰め詰め。

 排熱を優先して一時的に開く通気孔。

「もう1回レーザーをおふにしてちょーだい!」

 無線で23階の仲間達へ呼びかけた後、ロープを垂らしてゆっくり降下。壁にめり込んだままのエリス達をスルーして、レーザー手前でoffになるまで待機する。
 これでダメなら、強引に壁でもぶち破って突入するしかないが…

 突如、遠くで爆発音。発電所の辺りだろうか。
 直後、町全域大停電。

 レーザー消失。

「よくわからないけどチャンスね!」

 一気に飛び降りて着地。

 一方、通気孔の中ではどこからともなく静花が登場。
 壁の金髪ツインテを見て…

「(ニッコリ)」
「ヒェッ」

 すぅ〜
 ズンッ
 ボガーン!

 消し飛ぶ壁。
 落ちるエリス(+レフニー)。

 全員24階へ到達。
 直後、なんと細切れになっていた木葉がうぞうぞ肉片合体して復活。

「あたしはお薬はいらないのですよ」

 ダイブ前とは違った意味に聞こえる不思議。

 同じく葉月も超再生。
 これが神の兵士の力だ!(いいえ

 一同は一足先に24階で待っていた凛と合流。
 隠し金庫がある位置まで移動し、ハンマーで壁叩きを開始した。

 そして遂に金庫を発見する葉月達。
 だがその時、爆発音等々を聞きつけた警備員達が24階に集まってきた。その中には美華の姿も。

 物陰に隠れてやりすごそうとする金庫組。
 だが度重なる騒動で警戒心を強めた警備員達は、執拗に室内を捜索。このままでは見つかってしまう。

 すると美華が、電力が断たれて薄暗い状況を利用し、何やらこっそりと警備員達の死角へ移動。
 直後、適当なサーバー目掛けて頭突き。

 ドカッ
 とさぁ

「何の音だ!?」

 振り向いた警備員達が目にしたのは、何者かに殴られて動かなくなった(と思しき)美華の無残な死体(生きてます

「学園の調査員がやられた! 誰がこんな事を!」
「やはり侵入者が!」

 その時、窓の外に何者かの影。
 見ると、外壁を登りきってきた突破が居た。

「……」
「……」

 目が合う。

「お、追えー!」

 殺到する警備員。

「これまでか…」

 突破は侵入を諦め、ワイヤーを階下の凹凸目掛けてシュパー。

「後は任せたぜ、大きくなれよ」

 捨て台詞と共に落ちていく突破。
 それを追って出て行く警備員。

 今の内である。

 レフニーが金庫を解錠。
 情報通り、中には牛乳そっくりの飲み物が入っていた。

「とうとうやったのです!」

 一口で効果を発揮。
 分け合える。
 後は、コップに分けて皆で飲むだけ――

 寸前、不意にチルルが金庫の中に手を伸ばした。
 誰かしら裏切る可能性が高いと踏み、やられる前にやる構え。

 目的:秘宝を回収して飲み干す

\!?/

「独り占めは許さないのです!」

 タックルどごぉ!

「じゃまする気ね!」
「どの口が言うんです!?」

 仲間割れ勃発。

 その時、新たな足音が。
 先程とは別の警備員達を引き連れた雫。金庫組を指差し、

「いました。あれが賊です」

\!!/

「「オンドゥルルラギッタンディスカー!」」

 大乱闘。

 その戦闘を尻目に、雫は隠密と遁甲の術を併用して金庫へと近づく。

「…恨むのなら秘宝の量の少なさを恨んで下さい」

 中の秘宝に手を伸ばs

「天誅ー!」

 背後から振り下ろされるレフニーの一撃。
 咄嗟に大剣で受ける雫。斬り返し、兜割りで反撃。
 鍔迫り合いぐぎぎ。

 みにくいあらそいが繰り広げられる中、別の手が秘宝へと伸びる。

「これを手に入れておけば……結構色んな人と交渉出来るね♪」

 警備員に混じっていたジェラルド。

\乳(の薬)おいてけー!/

 集中砲火。
 爆散。

 おおジェラルドよ それにてをだすとは なんとおろかな



 ビル内の送電室。

「早く電気を回せ!」
「発電所がやられたみたいで」
「まだ人力があるだろ!」

 若い衆を集めて、送電室にある自転車を全力ケイデンス。
 よく見るとひりょも駆りだされている。

 電力回復。



 復旧した管理室のモニターにエリス達のドンパチが映る。

「お嬢が危ない…!」

 飛び出していくディザイア。

 一方、騒音を聞きつけたジェンティアンも地下じいを連れて突撃。
 地下じいは威嚇してくる一同にクワッと目を見開き、

「望むところじゃあああはああぁぁ…(魂ふわ〜」

 とさぁ
 仏の地下じい。

「ちょっ、戻ってきて!?」

 ジェンティアンは慌てて魂を口に捻じ込んだ。



 その頃、真緋呂は悪戯がバレて追い回されていた。

 隠れていた場所に警備員が近づいてくる。咄嗟にケセランを召喚して転がす真緋呂。
 それを見た警備員は、

「何だ、野良ケセランか…」

 一頻りもふもふした後、踵を返して去っていった。
 ケセランまじ有能。


 装備開発室。
 暴徒鎮圧の為、試作兵器『出番破壊銃』を借りに来る警備員達。
 頷いた研究員が、鍵を開けようと保管ケースの元へ。だがふと、その脇にいつの間にか段ボールが運び込まれている事に気づく。

「なんぞこれ」

 気になって開封。
 瞬間、海子がデデンデンデデン!
 更にシエルが顔を出し、阿鼻叫喚発動。研究員を幻惑に陥らせた。

 出破銃の銃口からチーズがどぼどぼ出てくる幻覚を見る研究員。
 チーズなら撃っても安心だな!
 錯乱して警備員達目掛けて乱射。出番をターミネート。

 それを他所にシエルは再び海子の中へと引き篭もり、買っておいたグラタンもぐもぐ。

「クッソうめぇこのグラタンうめぇ」

 一方、その光景を監視モニターで見ていたラファルさん。

「海子には水をやらねーとな」

 掌握した警備システムでスプリンクラー作動。辺り一面水浸しにしてやる。
 水を得た海子、大燥ぎで全力ダッシュ。

「おぼぼぼ!」

 加速のGで圧縮されてグラタンになるシエル。

「じゃ俺もとっとと逃げるか」

 ラファルはそそくさとその場を後にした。



「このままじゃジリ貧なのです!」
「三十六計…」
「にげるにしかずってやつね!」

 同時に秘宝を掴むレフニー、雫、チルル。
 ディザイアがエリスを、華宵が木葉を担ぎ、一同大逃走。

 しかしロビーを封鎖されて挟み撃ち。もはやこれまでかと思われたが、

「……えと、その、失礼いたしますぅ……(ふるふる」

 ロペ子に乗った恋音がロビーに入場。

「……皆さんを、引き渡していただきに参りましたぁ……」

 言いながら恋音が差し出したのは、学園の判が押された依頼許可証。内容は、『最近学園を騒がせている“各所に潜入し楽しむという悪戯を行なう一団”の捕縛』。
 陸子が一同に縄を掛け、それを空子が空輸で連行。

「……それでは、失礼いたしましたぁ……」

 恋音はふるふるしながら、ロペ子に乗ってブオーッと去っていく。

「見事な脱出工作ですね(ずぞぞー」

 そのやりとりを、ビル前に停まっていたラーメン屋台から見物していた奏音とオペ子。
 店主はとしお。

 3人は通行人を装い、チャルメラの音を響かせながら斡旋所へ帰還した。



「奪い合いで戦争が起きぬ様かさましですわ」

 秘宝ミルクに紅茶を足してミルクティーに作り替える凛。

「わたくしも胸を大きくして大人の女になりますわ」

 Dカップ希望。
 自分の分のミルクティーを手にしつつ、

「静花さんも一緒にいかが?」
「私はいい」

 静花が欲しいのは胸ではなく、癖の無い髪質。
 なので、仮に飲んでも胸は無いままなのだ。今のエリスより無いのだ。

 対して、ミルクティーを受け取ろうとする突破。

「ついに俺も大きくなる時が来たようだ」
「胸の話なー」
「え、俺に効果ないの? 伸びないの?」

 容赦のない打ち切り。
 突破の成長期はまだ始まったばかりだ。

 ミルクティーを持ってドキドキしながら、レフニーが言う。

「余った分は教授にあげるのです」
「……大変ありがたいのですけれど、半年以上常温保存されていた牛乳状の飲料は、色々怖いような気も……?」

 でもまあ一応貰っておこう。

 いざ乾杯。

 夢よ

 叶え!

 ぐびっとな。
 瞬間、プピッと鼻から噴く。紅茶でも誤魔化しきれぬ常温保存の味。
 でも気合で飲みきる。すると――

 ぽよんっ

\胸が重い…!/

 急激に衣服が締め付けられる感触!
 各自後ろを向いて、服の上から自分の乳をさわさわ。

 ぽよよんっ


 大 き く な っ た !!


「やったなお嬢!」
「あ、カメラあるから記念撮影しよう!」

 ディザイアと葉月がシャッターぱしゃぱしゃ。

 ついでにメジャーで測定もしてあげる葉月。
 レフニーはCの中程、凛とエリスはD、雫も見事にサイズアップ。チルルは…うん、まあ、これ巨人化の薬じゃないからね。

「ところで、急に胸が大きくなったら服とか大変そうだけど、その辺り大丈夫なのかな?」
「「今から買いに行く!」」

 それはもうダッシュで。
 が、その時だった――

 ぽひゅん…

 元に戻る乳。

\!!/

 どうやらぺったんこ因子は書き換わったものの、飲んだ分が消化されると乳も元に戻ってしまうようだ。
 でも因子が書き換わったので、今後は成長期と共に徐々に膨らんでいく事だろう。

 ショックで真っ白に風化する4人。
 どこからともなく声が聞こえる。

『レフニー、聞こえますかレフニー。あなたの背後です。あなたにこの言葉を贈ります……ぷぎゃー(指差し』

 ディザイアは白エリスを抱っこして背中ぽんぽん。

「願いは叶えよう…でもそのままのお嬢も大好きだぞ!」

 華宵もやさしく微笑む。

「私はそのままの皆が好きよ」

 一方、特に意味は無く何となく尋ねる和紗。

「リーゼは胸どれくらいが好きですか?」
「どんな体型でも、健康であるならそれが一番だと思う」

 野菜も食べよね。






























 脱出の際、食堂無料が諦めきれずに1人で食べに戻っていた真緋呂。
 しっかり捕まっていた。

 警察署の取調室。

「また君か…(頭抱え」
「私はお腹いっぱいタダ飯が食べたかっただけ(キリッ」

 弁護士が来るまで私は何も喋らn

「ここに近所の焼肉店の無料券があるんだが」
「元社長が『差押えリスト漏れ品』を回収したらご飯くれるって言いました(告発」



 後日、元社長の所に莫大な賠償請求が届いた。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 歴戦の戦姫・不破 雫(ja1894)
 紅茶神・斉凛(ja6571)
 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
 あなたへの絆・蓮城 真緋呂(jb6120)
 チチデカスクジラ・満月 美華(jb6831)
 光至ル瑞獣・和紗・S・ルフトハイト(jb6970)
 ついに本気出した・砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)
 あなたへの絆・米田 一機(jb7387)
重体: −
面白かった!:16人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
紅茶神・
斉凛(ja6571)

卒業 女 インフィルトレイター
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
久遠ヶ原から愛をこめて・
天険 突破(jb0947)

卒業 男 阿修羅
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ねこのは・
深森 木葉(jb1711)

小等部1年1組 女 陰陽師
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍
遠野先生FC名誉会員・
何 静花(jb4794)

大学部2年314組 女 阿修羅
護黒連翼・
ディザイア・シーカー(jb5989)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプA
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
久遠ヶ原から愛をこめて・
シエル・ウェスト(jb6351)

卒業 女 ナイトウォーカー
チチデカスクジラ・
満月 美華(jb6831)

卒業 女 ルインズブレイド
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
この想いいつまでも・
天宮 葉月(jb7258)

大学部3年2組 女 アストラルヴァンガード
あなたへの絆・
米田 一機(jb7387)

大学部3年5組 男 アストラルヴァンガード
空の真ん中でお茶を・
夜桜 奏音(jc0588)

大学部5年286組 女 アカシックレコーダー:タイプB
来し方抱き、行く末見つめ・
華宵(jc2265)

大学部2年4組 男 鬼道忍軍