学童保育所『へぶんず・ほらいずん』からのお知らせを目にしたジェラルド&ブラックパレード(
ja9284)。
(一緒にお花見? …折角だし、子供のスキそうな屋台でもやろうかな♪)
徐に携帯電話を取り出し、とある番号を呼び出す。
『はい、もしもし』
「どうも、いつもお世話になってます☆ 実はちょっとお願いが――」
ゲインの作業場を訪れる、1人の女性。
清冷とした銀の髪に、透き通るような白い肌。スラッと大人びた雰囲気のお姉さん、玉置 雪子(
jb8344)――え、なに? いつもと違って大きい? おい女性の胸のサイズを詮索するのはやめるんだ。
大人になって成長したんです。ifなんです。そっとしておいてあげてくださいおねがいします。
性格だってきっと、大人の色気たっぷりな感じに――
「ゲインさんのところへ差し入れしてみるテスト」
ふひひ、と口の端を引きながら和菓子の箱持って作業場のドアばーん。
うん。人間そんな簡単に中身変わらないよね知ってた。
「気兼ねなんて要りません、ゲインさんと雪子の仲ジャマイカ」
火薬玉を弄っていた手を止めて振り向いたゲインに、雪子はぐいぐいと菓子箱を押し付ける。
蓋を開けると、中にはふっくらもちもちの大福が複数。
「手製のロシアンルーレット大福を入れてあるんですわ? お?」
「ほう?」
「さあ、雪子と勝負しませう」
負けたら口が爆発…もとい、花火になる罠。
ひょいっ、と大福を1つ手に取る雪子。それに倣い、ゲインも1つ選び取る。
「いっせーので一緒に食べますよ?」
いいか一緒にだぞ? 一緒にだからな? 絶対に一緒にだからな?
雪子はチラチラとゲインの方を見やりながら、手に持った大福を自らの口の前に――
「まあ待て雪子。まずは俺のもてなしを受けるが良い」
不意にゲインが大福を箱に戻し、居間へと引っ込んでしまった。
しばらくして戻ってきたその手には、海苔煎餅の並べられた長皿。
「1枚だけ、海苔の内側にわさびをたっぷり練りこんである。さあ選べ」
見た目では判らぬよう、どの煎餅にも上からキッチンペーパーが被せてある。
「一度触れたら変更は認めん」
こんな展開聞いてないんですがそれは。
ぐぬぬ、と眉根を寄せつつ雪子チョイス。
が、ペーパー越しに抓んだその煎餅は、明らかにぶにゅっとした感触。オワタ。
既に勝利を確信した顔でゲインも煎餅を抓み、
「では同時に齧るとしよう」
煎餅ばりばり。
ゲインごっくん。雪子ぶふぉ。
キラキラと空中に虹を描いて倒れる雪子。
ゲインは彼女の手から、握られたままになっていた大福を毟り取る。
「大方、こちらの大福が正解なのだろう。そうはさせん」
勝ち誇った顔でがぶりと大福にかぶりつき――
ハバネロぶふぉ。
直後、作業場を訪れる新たな人物。
「花火って一度に着火するとおもしれーよな?」
悪魔の微笑みを振り撒きつつつつ、ラファル A ユーティライネン(
jb4620)IN。
彼女は倒れている2人を見て「なんだこりゃ」と首を傾げる。
2人の手には、わさびがはみ出た齧りかけの煎餅とハバネロが詰まった大福。
「おーい」
げしげしと踏んで揺り起こす。
目を覚ます2人。
「ハッ、そうだ気絶している場合ではない。花火玉を仕上げねば」
フラフラと作業に戻るゲイン。
発破大好きラファルさんはその作業を手伝いつつ、こっそり玉の数を把握。更に、ゲインには内緒でオリジナルの炸薬玉をごりごり――
「ラファル先輩も大福食べると良いんじゃなイカ?」
台所で水道ゴクゴクしてきた雪子が、大福の箱を差し出す。
「大丈夫です。さっき雪子がハズレを引きました」
ラファルは言われるがまま大福を手に取り……もりっと2つに割って中身を確認。
するとなんということでしょう! 全ての大福にハバネロが詰まっていたのです!
「ゆ、雪子知りませんしおすし」
これはきっと誰かが雪子を陥れようとした罠――
ぐもっ
口に全てのハバネロ大福を詰め込まれて、雪子轟沈。
わさび入りではない煎餅をばりばりしながら、ラファルとゲインは花火の完成を急いだ――……
●夜、夜光桜広場
花見とは。
主に桜の花を愛で、春を祝賀する、日本で古くから続いている風習。その起源は、奈良時代の貴族の行事だといわれている。鑑賞の際には花見団子や花見弁当などを持ち寄り、中には日本酒も運べる重箱もあったとか。
そして今、ここに一つの重箱がある。
高さ30cm横20cm四方。ご丁寧な事に、持ち運び易いように上部に持ち手が付いている。側面の板を上にずらすと中の物が取り出せる仕組みだ。
その中には――
「水音ー! 野球しようぜ!」
唐突に、ゼロ=シュバイツァー(
jb7501)が広場の中を駆けて来る。
野球ボールをガシィと掴み、『水音』という文字書き書き。
「お前ボールな」
『よかろう。デッドボールを覚悟するが良い』
「金属バットと木製バット、どっちがええ?」
『あ、待って今のなし。もっと安全な遊びを要求する』
そんな1人と1球を見つけて、ifで偽夜で大人になったΩ(
jb8535)もやって来る。
スレンダーなクールビューティー、胸は無い。やったねますたー。
『まるで私がまな板信仰者かのようなこの風潮』
2人と1球がてくてくと芝生の上を進むと、
ガッ
無造作に置かれていた重箱に躓くゼロ。
「なんやこれ」
板をずらして蓋を開けると、なんと中にはラーメンが入っていた。
\あぁーーーっはっはっはっ!!/
突然、ラーメンから佐藤 としお(
ja2489)の声が。
\遂に俺は究極の完全体になったぞ!!!/
黄金色の麺。こんがり焼いた肉厚のチャーシュー。こりこり食感のメンマ。シャキシャキぱらぱらのネギ。
深みのあるスープはまさに至高の一杯。
\そうだっ! 俺様はラーメンその物になったのだぁーー!!!/
最っ高だ、最っ高の気分だっ!
\さぁ究極の俺様を喰らうがよいっ!/
「…異常、アリ…」
「オ嬢、変なもん食べたらあかんで」
Ωはこくりと頷き、ゼロと共に去っていく。
重箱放置。
\……あれ? おーい? 待ってくださーい! 伸びるぅぅ/
(こういう場合、お酒は日本酒の方が…?)
桜広場に到着したリリー・S・プリンス(
jc0264)は、荷物の中から幾つもの酒瓶を引っ張り出した。
(でもシャンパンもキラキラと綺麗だと思うのです)
シャンパンボトルを持ち上げ、灯りに透かして見る。
夜空に大きく咲いた夜光桜の花。薄桃に輝く花びらがボトル越しに反射して、ゆらゆらと幻想的な色を浮かべている。
「はーい、皆さん集合ー!!」
その時、シエル・ウェスト(
jb6351)の声がして一同は振り返る。
上下ジャージ姿のシエル先生。ブオーとホバー移動するロペ子に乗っかりながら、迷子になった子が居ないか見て回る。
保母さんだけでは大変だろうと、リリーもおやつの桜の砂糖漬けを持ってお手伝い。
すると、人一倍興奮している児童を発見。
「Beautiful!」
マイケル=アンジェルズ(
jb2200)。アメコミや日本の漫画・アニメに出てくるヒーローに憧れている、米国から越してきたばかりの新学童。
将来の夢は乗り物⇔ロボットに変幻自在なヒーローだと言う彼は、夜桜の風景や生ロボットであるロペ子を見て、まだまだ勉強中の日本語をぶっちぎってついつい母国語で大燥ぎ。
「日本の桜に感動です(※都合により日本語訳でお送りしております)」
マイケルはママやキャシー達と一緒に桜景色を堪能。妙に懐いている。
(キャシー先生は、お名前がボクの母国のような感じなので恐らく同郷なのですね)
狩猟民族の末裔なので、母国には体格がよく声が低い女性も多い。
どうやら彼は、キャシー達をオカマではなくガチレディだと勘違いしているようだった。
そして彼の目には、細身が多いアジア系の男の子もすべからく女の子に見えている。
視界の映ったのは、気がつくと偽夜効果で10歳児にされていた黄昏ひりょ(
jb3452)。
マイケルは、シエル先生の乗ったロペ子にミルクの注がれた紙コップを渡し、
「こちらのミルクをあちらの女性に(※字幕)」
憧れのヒーローの真似。一度やってみたかった。
これにはひりょ少年もお冠。
「ばかにすんな、俺は男だぞー!」
証明してやるー、と叫びながらダッシュ。
アウルを練って韋駄天を発動し、疾風怒涛の――
スカートめくり。
「ユート姉ちゃんのパンチラげっと〜」
先生のスカートひらりして逃走。
更に、隠し持っていた水鉄砲を取り出してヒメの元へ。
「隙有りっ、これでも喰らえっ」
噴水直撃ぶしゃー。
「ヒメあばよ〜」
逃走。
男は度胸だぜー、と花見そっちのけで悪ガキモード。しかし、
「ふぇ……」
いきなりびしょ濡れにされて驚いたヒメが泣き出してしまった。
ドキッ、と固まるひりょ。
直後、ロペ子に乗ったシエル先生に後ろ襟を掴み上げられてぷらーん。
「悪い子はいねがー」
イジメて泣かせた子にはおしおきです。
ひりょの口にぐいぐいと大量のブルーチーズをねじ込むシエル先生。
ひりょはぴくぴくと口からチーズをはみ出させながら、リリーお姉さんにあやされているヒメの前で平謝り。
ごめんなさい、もうしません(涙目
お詫びに花輪を作ってプレゼント。
一方、仲直りを見届けたシエル先生は、芝生に敷いたシートの上でお弁当を広げ始める。
しかし中身は全てチーズ。
ご飯に見せかけたチーズ、雑煮っぽいチーズ、むしろお弁当箱の仕切り板までチーズ。
やだこの先生チーズくさい。
このままでは桜の花びらまでチーズになってしまう。一同が白目を剥きかけたその時、
「……えと、お待たせいたしましたぁ……」
現れたのは猫鍋亭のアルバイト店員、月乃宮 恋音(
jb1221)。
白いチャイナドレスを身に纏い、豊満…どころではない、膝丈まである巨大な乳を揺らしながら、岡持を抱えて登場。自作のチャイナ服が今にもはち切れそうだが大丈夫か。
「お花見料理とチャイナお姉さんの登場アル!」
そしてもう1人。青チャイナドレス姿の袋井 雅人(
jb1469)…いや“雅子”。
偽夜マジックでガチ女体化。でも女の子大好き。
雅子は岡持をシートの上に並べると、蓋を開けるのもそっちのけで恋音に飛びつく。
「いやー、今日も恋音は可愛いわねー。特にこのオッパイがー」
荷物を置いてフリーになった両手で、中に子供でも入っているんじゃないかという程の恋音の乳を揉みしだk…子供が見てる前でしょうがぁ!
「…………お、おぉぉ…………? …………と、とりあえず、その、皆さんに、お料理を出してからにしませんかぁ…………?」
恋音が熱々の中華料理をシートの上に並べていく。
よかったこれでまともなご飯にありつける。
ふと、ある物に気づいて手を止める恋音。
シートの上に、出した覚えの無い重箱が置かれている。
首を傾げながら蓋を開けると、中にはラーメンが。
「……うぅん……」
そっ閉じ。
よく分からないので放置。
\そんな!/
重箱から聞こえた声にも気づかず、後ろの方では雅子が子供達にまで絡み始めていた。
「ヒメちゃん、どう私のこの自慢のオッパイはっ!」
「え、えと、そ、その、お、おっきい、ですっ」
「触ってもいいアルよ、フェルミちゃん!」
「だいじろーの肉球よりぷにぷになのかー?」
教育委員会さんごめんなさい。
そしてそんな光景を空から俯瞰視点で眺めていた、大人ひりょ(の生き霊)。
(こんな幼少時代を送っていたら…撃退士にはなっていなかったかもな)
賑やかな一同に混ざって遊ぶ子供の自分を、寂しげに見守r――
「男の人には暗黒破砕拳をプレゼントするアル」
刹那、高々と跳躍した雅子が生き霊ひりょに拳をズガァ!!
「あびひ!?」
「女児を盗撮とはけしからんアル」
成 仏 。
不貞の生き霊?を祓った雅子は、心置きなく女の子へのセクハラを再開。
通りがかったΩの後ろから近づき、肩に触れ――
――た瞬間、Ωがギュンッと振り向いた。
雅子の指を掴んでボキィしつつ、ライターでチャイナ服に着火して丸焼き。黒焦げになった変態チャイナをギュッギュッと丸めて地面に埋める。
Ωお姉さん接触注意。
桜の木の養分と化した雅子を他所に、意気投合した男児組がわいわい。
その中心に居たのは、子供バージョンの天険 突破(
jb0947)。
せっかくだしみんなと杯を、と思ったが、どうも今の自分はお酒を飲むと色んな所から怒られそうな気がする。年齢的に。
「というわけで、俺の牛乳が飲めねえって奴はいねえだろ」
紙コップに牛乳をなみなみ注ぎ、ひりょとマイケルに差し出す。
ひらひらと待っていた薄桃色の花びらが、ふわりと白に浮かんだ。
「風情があるな」
ぐびっと一気に。
その様子をじーーーーっと見ていたのは、ぱとろーる中だったΩ。
「お、欲しいのか? 遠慮せず飲め」
さん付けや敬語なんて知らん、と。
Ωお姉さんにも堂々とした態度で牛乳を差し出す突破少年。
「…ありがとう…」
食べ物をくれる=イイヒト。
「……えと、よろしければ、お食事もありますよぉ……」
恋音が豪華中華料理の数々を持ってくる。
普段は豆腐しか口にしないΩも、今夜ばかりはもぐもぐだ。
また、フェルミを乗せた大次郎(大型犬サイズ)も、匂いに誘われてhshsしながら恋音にすり寄ってくる。
「…………お、おぉ…………(もふもふ)」
「食べきれないくらい、ごはんが一杯だなー(もぐもぐ)」
「……はい、その場合は、胃腸薬(Lv5)もありますよぉ……」
なんかすごい消化する魔法の粉。合法!
ただしカロリーは(ry
「みゃ♪」
キャシー先生の肩の上で、Rehni Nam(
ja5283)…ではなく、彼女によく似た手乗りサイズの猫型生物――レフにゃん@へぶんず・ほらいずんの飼い猫――が一鳴き。
ムキムキのオカマアームをでべでべと駆け下り、向かった先はリーゼにおんぶされているエリスの所。
リーゼの身体をよじ登って肩に乗ると、その背中に居るエリスをじー。
ふわもこの白い猫手を伸ばして、頬っぺたぷにぷに、ツインテくいくいっ。
対するエリスも、小さな手でレフにゃんの手を掴んで肉球ぷにぷに。
「みゃあ(くいくいっ)」
「ぁぅー(ぷにぷに)」
そんな光景に出くわしたオペ子先生。
2人を弄って遊ぼうと、こっそり近づk――
「やめんか」
ピコッ
局長…いや園長のピコハンに叩かれて、未遂に終わる。
「おー、ピコハンが、活躍してるのです」
ちょっとした感動を覚え呟いたのは、着物姿の華愛(
jb6708)先生。
ゲンコツされてばかりのオペ子を心配して、園長にピコハンをプレゼントした張本人。その効果は抜群だ。
偽夜なので普段よりちょっぴり大人で背も伸びている華愛先生は、徐に召喚獣達を呼び出す。
ヒリュウのヒーさん。
ストレイシオンのスーさん。
スレイプニルのプーさん。
フェンリルのリルさん。
どどーんと現れた召喚獣達と一緒に、エリスや児童達をあやして回る。
もふもふしたり、背中に乗っけてビューンしたり、甘噛みしたり、うっかり本気噛みしたrおいィ?
ヒーさんはともかく、他の3匹の本気噛みとかヤバすぎわろた。
そんな微笑ましい(?)ふれあいの中、エリスにご飯を持ってくるレフにゃん。
チャーハン、餃子、シュウマイ、フカヒレスープに中華まん。それと重箱。
せっせとエリスの元へ運ぶ銀猫を、ユート先生が苦笑しながら窘める。
「エリスちゃんはまだ赤ちゃんだから、大人のご飯は食べられないの」
「みゃあ……(´・ω・`)」
「お手伝いしてくれてありがとね(なでなで」
代わりに、ユート先生が哺乳瓶に入ったミルクをエリスに与える。レフにゃんも一所懸命お手伝い。哺乳瓶を両手の肉球で挟むように持って(9割方、ユートが持ってる)、エリスに飲ませる。
その後、満腹でご機嫌になったエリスをつんつんしていると、給仕を終えた恋音がやってきて遊んでくれた。
レフにゃんとエリスを自らの巨大な胸の上に乗せてみる恋音。
直後、谷間に埋まって見えなくなる2人。
保育事故。このままでは窒息するんだぜ。
「それはいけないアル! いま助けるアル!」
「…………お、おぉぉ…………?」
駆けつける包帯塗れの雅子。まだ生きてた。
ふほほ、と邪な鼻息を噴きながら頭から恋音の谷間に突っ込み、ふかふかごそごそもみもみ。
救出とは関係なさそうな音も混ざりつつ、雅子の手によって乳の中からぽーんと飛び出してくるレフにゃんとエリス。
リーゼがキャッチ。
「みゃうう……」
「ぅー……」
するとそこへ斉凛(
ja6571)…の6歳児バージョン、リーンがやってきた。
金髪碧眼のツインテ幼女。
「大丈夫なの。もうこわくないの」
手にしたパペット・ラビットで、2人をあやす。
「うふふふ……」
その様子を、遠巻きに見つめる怪しい影。
深森 木葉(
jb1711)……?
否。
赤ん坊エリスを『愛しの主(ぬし)さま』として付け狙う謎のストーカー猫幼女、“ねこのは”だ。
猫耳カチューシャに猫尻尾、黒のゴシックドレス(ミニ)という出で立ちで、桜の木の上で待ち伏せていた。
狙いを定め、気の上から猫ジャンプ!
が、着地に失敗してリーゼ達の前で顔面強打べしゃあ!
「みゅ?」
レフにゃんがねこのはへと駆け寄り、心配そうにぺろぺろてちてち。
「あううぅ…。失敗、失敗…」
すっくと立ち上がり、ねこのは復活。
「さぁ、リーゼちゃん。あたしの主さまを返すのですぅ!!」
言うが早いか、リーゼの背からエリスを強奪。
そのままあやしながら、ダッと走り去r――
「ふしゃー!」
「めっ、なの!」
瞬間、レフにゃんとリーンにみっちり怒られるねこのは。
エリスを奪還され、1人隅っこの方でしょぼ〜んと涙に暮れた。
リーゼが再びエリスをおぶう。
それをガン見するΩ。
どうやらエリスに興味があるらしい。
リーゼに頼み、抱っこを交代してもらう。
「…赤ん坊…」
ぽつりと呟いた彼女の口元は、小さく綻んでいた。
手の空いた今のうちにご飯を食べようと、シートの上の料理を物色しに行くリーゼ。
不意に、くいっと服の裾を引かれて振り返る。
リーンがもじもじとしながら立っていた。
「あのね…これ…あげるの」
気恥ずかしそうに差し出したのはチョコ。
「2月じゃないけど、好きな人に…チョコあげるの。リーンは…リーゼお兄さんが大好きなの。大きくなったら、リーゼお兄さんのお嫁さんになるの」
「……そうか」
仏頂面のまま受け取って、チョコもぐもぐ。
対するリーンは、無邪気な笑顔でリーゼに抱きついてごろごろ。
「桜綺麗なの。一緒に見るの。お兄さんも花見を楽しむの。みんな楽しいがいいの」
「(こくり。もぐもぐ)」
「けっ、デレデレ鼻の下伸ばしてんじゃねー」
野次を飛ばしたのはルディ。
「チビ(エリス)が居ねぇから、勝負の続きだ」
ルディがリーゼの肩を掴む。が、
「喧嘩はめっなの!」
リーンがうさぬいビームつぴー!
ジュッ、と焦げるルディ。
「みんなで仲良くなの」
「お茶ならあたしにおまかせだよー☆」
桜餅と抹茶を持参して、お茶汲み天使マリス・レイ(
jb8465)見参。
樒 和紗(
jb6970)から貰ったオリジナルの桜香水で、女子力もふわっと上昇。
そして、黒焦げルディを眺めながらチョコをもぐもぐしているリーゼ(偽夜効果で少年仕様)を発見。
「かわっ…」
マリスの髪がぴこんと跳ね、
「なにこれかわいいちっちゃいリーゼくんかっわいいー!」
大興奮。
「和紗ちゃんかずさちゃん、リーゼくんがいつもよりちっちゃくてかわいいよ…!?」
手をぶんぶんしながら、隣に居る和紗の方を振り向――
居ない。
「あれ? 和紗ちゃんが消えた……」
「可愛い…(すりすり」
見ると、いつの間にかリーゼの背に張り付いていた。
おんぶお化け状態でぴとり。
ブラコン暴走。当者比22倍アグレッシブ。
「あっ、和紗ちゃんずるい! あたしもー!」
マリスも、横から和紗ごとリーゼをはぎゅってなでなで。
「今日は新作です」
そう言って、手作りの菓子を取り出してリーゼの前に腕を回す和紗。
本日の素材チョイスは海産物。
海で採った天草で作った寒天使用の桜羊羹。
楊枝で刺してあーん。
「如何でしょう?(首傾げ」
「……(こくり」
無言でもぐもぐ。
和菓子うまし。
マリスも一口貰ってもぐもぐ。
「あまーい♪ しあわせー♪」
「口に合って良かったです」
和紗は自らの膝にリーゼを座らせ、花見料理や菓子を彼の口に運び続ける。
一口ごとに、はぎゅはぎゅ。
「…ブラコンが荒ぶっている…」
遠い目をして呟いたのは和紗のはとこ、砂原・ジェンティアン・竜胆(
jb7192)。
「和紗、ショタコンではないのに、特定の子はめっちゃ可愛がるよね」
きっと実家に居る弟と離れていて、寂しいのだろう。
だが……
「リーゼちゃん甘え過ぎ(砂原フィルター)でない?」
和紗といちゃいちゃしてずるい。
ジェンティアンに声を掛けられたリーゼは、羊羹に向けていた視線を上げ、
「……」
ついっと視線戻し。
無視。
「ひどくない!? 無視はひどくない!?」
まだ子供だからね仕方ないね。
「ほら、先生が呼んでるかもしれないから、離れたらどうかな!」
ぐいっと大人げなく引っ張るジェンティアンお兄ちゃん。
するとそれに抵抗したのはリーゼではなく――
ドカッ!
「ぐはっ!?」
和紗がジェンティアンを蹴り飛ばした。
更には左手に拳銃ちゃきり。
「和紗ちゃん暴力反対! 少年の前でバイオレンスはどうよ!?」
「リーゼ抱えてるので片手使えませんし(真顔」
(目が…据わってる…ヤられる)
ガタブル。
それを他所に、リーゼは和紗の腕の中で黙々とご飯もぐもぐ。
その一挙手一投足にわんこ耳をぴこぴこさせて喜色満面の和紗。
マリスもきゃっきゃっと世話を焼く。
「あ、桜餅あるよ…! はい、あーん」
「(こくり。もぐもぐ)」
「抹茶…は子供の味覚だと苦いかな…?」
「問題ない」
受け取ってぐびぐび。
「かわいいなあ、リーゼくんみたいな弟ほしい…」
むぎゅぎゅ。勢いついでにほっぺにちゅー。
それにヤキモチを焼いたのはリーン。マリスとは反対側からリーゼに抱きつつ、引っ張る。
「リーゼお兄さんのお嫁さんは、リーンなの」
「リーゼは俺が持って帰ります」
「みんなで住めば解決だよ☆」
ぐいぐいぐいぐいっ。
「……(汗」
引っ張り合い。
このままではリーゼが裂けるんだぜ。
「綺麗な桜だよ! ティアラ!!」
飼い猫と共に夜光桜の下で燥ぐ、水無瀬 快晴(
jb0745)@子供仕様。
その後ろを、川澄文歌(
jb7507)と支倉 英蓮(
jb7524)がついてくる。英蓮の方は、最初から獅子神様が憑依した獅子蓮牙(ガオレンガー)モードのようだ。
……いや、獅子蓮牙にしては小さすぎる。
『にゃすにゃす!』
普通の猫サイズ。
獅子の顕現に失敗。さしずめ猫蓮牙(にゃおれんがー)といったところか。
「猫蓮牙! うちのティアラと一緒に遊んであげて!」
快晴が猫蓮牙とティアラの頭をなでくり。
互いの尻尾を追いかけてぐるぐる走り回る2匹の猫。
その様子を見守りつつ、文歌はとある人物を探して辺りをきょろきょろ。
発見。
「あのっ」
「んー?」
声を掛けた相手は、ユート。
シートに座ってルディと花見団子を食べていた彼女は、首を反らして背後の文歌を見やる。
「あのっ、元ヴァイオリニストのユートさんですよね? 私、貴方のこと噂で聞いて、貴方の曲をずっと探してたんです! 一緒に演奏して貰えませんか?」
「あははー、『ずっと探してた』なんて言われると照れちゃうねー」
「『幻の』なんて大層な曲かよババア」
瞬間、前と後ろからガシィ!!と鷲掴まれるルディの頭。
「んー?(ぎりぎり」
「お姉ちゃん達、大事な話をしているの。ちょっと静かにしててね(めきめき」
「おごごご…!!」
Wアイアンクロー。
ポイッとされたルディに、華愛がそっと近づく。
「るっくん、あんまりおいたしちゃ、ダメなのですよ?」
言いながら、ルディの口に金平糖押し込み。
「あと、お姉さん…なのです」
ババアにあらず。
「……けっ(金平糖もきゅもきゅ」
華愛達が見守る中、ユートから曲のさわりを教えてもらう文歌。譜面を頭に叩き込んだ後、彼女が取り出したのは楽器型のV兵器。
ヴァイオリンタイプのConcerto B7と、鍵盤タイプのClavier P1。
え? ユート先生は一般人だからV兵器は使えない?
アウルに国境なし。偽夜効果でイケるイケる。
そこへタイミング良く、子供達を見て回っていたシエルがロペ子に乗ってブオーっと通りがかる。
呼び止めて、Concerto B7に繋いだコードをアウルロボであるロペ子の口にぶすり。電源供給。
最後に文歌は、オペ子&小次郎コンビに対抗して猫蓮牙を自らの頭上にセット。
準備は整った。
「とうとう幻の曲を聴く事が出来るんですね」
いざ。
一呼吸置いた後、ユートはヴァイオリンの弦を震わせる。
彼女の弓の動きに、そっと伴奏を乗せる文歌。
桜吹雪と共に、やさしいうたが夜空を舞う。
「ふふ、綺麗な、曲なのです」
ルディの隣で、ふわりと口ずさむ華愛。
やがて演奏が終わり、桜広場に穏やかな歓声が響く。
「……素晴らしい演奏だったよ、2人共凄いね!」
ティアラを抱えた快晴が駆け寄る。
照れるユートと、嬉しそうに快晴の頭を撫でながらお菓子を差し出す文歌。
「ありがと!」
逆にお礼を言いつつ、快晴が元気に笑う。
とその時、
ずしっ
唐突に、文歌の頭に乗っていた猫蓮牙が巨大化。
どうやら演奏時のアウルを吸って膨れ上がったらしい。
文歌がぷちっと潰れる。
「おやおや、大丈夫かい?」
優しい声がして、文歌は巨大猫蓮牙の下から何とか這い出し、顔を上げる。
そこには、笠木 喜代が居た。
「すてきな曲をありがとうね、文歌さん」
「喜んで貰えて嬉しいです!」
喜代の手を握り、笑う。
そのまま笠木家の面々に挨拶回り。
快晴もそれについて行き、ティアラに猫クッキーを持たせて花見参加者達へと配り歩いた。
「うむ、風流だな…たまには悪くない」
ママやキャシー達、そして親方や作業員らと一緒に居た、ディザイア・シーカー(
jb5989)。桜やお嬢(エリス)を眺めつつ、のんびりソフトドリンクを飲む。
親方がほんのり赤い顔をしながら酒を勧めてきたが、
「すまんが酒やタバコは苦手でな、勘弁してくれ」
そう言って、やんわりと断った。
「それに子供ってのはこういう臭いに敏感だからな」
だがせっかくだ。何か食い物でも貰うとするか。
目に入ってきたのは、未だ手付かずの重箱。
「何が入ってるんだ?」
\……(どきどき/
ディザイアは、すっとそれに手を伸ばし――
その時、恐怖半分いじけ半分のジェンティアンが泣きながら歩いて来た。
今日の和紗は怖いので、キャシーちゃんとこで慰めて貰おう。
「ジェンちゃんいらっしゃぁぃん!(大木のような声」
がばちょっとジェンティアンを抱き込み、よしよしと膝枕するキャシー。
頭なでこなでこ。
「反抗期かしら?(しくしく」
「お兄ちゃんも大変そうだな」
苦笑混じりに言いながら、ディザイアはジェンティアンの紙コップにドリンクを注いでやる。
「おっと、酒の方が良かったか?」
「そんなに強いわけじゃないから、ソフトドリンクで大丈夫。ありがと」
受け取ってぐびぐびしつつ、キャシー達とは料理の食べさせあいっこもぐもぐ。
ポ●キーゲームとかしてみたり。
「いやぁんジェンちゃん、だぁいぃたぁんんん〜!」
大燥ぎのオカマがポ●キー食い千切りボキィ!
そんな時、ふとジェンティアンの視界に映る重箱。
「誰も食べないの?」
\……(どきどきどき/
蓋に手を掛け――
「力比べと行こうぜ」
――る寸前、ディザイアがシート越しの地面をぽんぽんと叩いた。うつ伏せになり、肘を付いた手を差し出してくる。
腕相撲。
「シーカーちゃん、明らかに僕より身体大きいじゃない」
などと言いつつ、簡単に負ける気も無いジェンティアン。
向かい合ってうつ伏せになり、互いに手を握ってReady……Go!
「「ぬ……」」
互いの手がぎりぎりと揺れる。
ガタイの良いディザイアが強いのは想像に難くないが、ジェンティアンも柔和な外見に反して結構な腕力だ。
結局、勝負は引き分けとなった。
「キャシーもやってみるか?」
冗談半分でディザイアが勝負を持ちかけると、
「やぁん! お手柔らかにぃ!」
ノリノリで向かい側で肘をついてスタンバイ。
がしっと手を握り合いReady、G――
「ぬぅん!!」
ずだぁん!
ディザイアの手は、ディザイア本人が力を込めるよりも前に、何かスサマジイチカラに引っ張られてキャシーの手を地面に押し倒していた。
「きゃあぁん! やっぱり男の人ってつぅよぉいぃ〜!」
くねくね。
「……シーカーちゃん、今――」
「いや、よそう。詮索しないのが紳士ってもんだ……」
きゃっきゃっしているオカマ達に囲まれて、彼らは黙って花見の席を満喫する事にした。
その頃、ゼロとΩ(とMS)。
「すっかり忘れとったわ。俺らここに野球しに来たんやった」
『ちげーお。花見しに来たんだお』
でもせっかくだからやる。
MSを投げるのは良くないというΩの優しい提案により、水音はグローブに再憑依。
ピッチャー:Ω
バッター:ゼロ
投球。
ゼロがフルスイング。狙うはグローブ(水音)。
しかしMSの守護者であるΩは、グローブ(水音)を着けていない方の手で直接ボールをバシィ!と受け止める。
「オ嬢、グローブ意味ないやん」
「…MSは、護る…」
『おう、見習えよゼロぽん』
再度投球。
フルスイング。
快音。
想定より大きく飛んでいった打球が転がった先には――
「うん、見栄えはこんなところかな♪」
久遠ヶ原学園のお兄さん――ジェラルド――と、即席で組まれた射的屋台が在った。
木製ダーツと、ぬいぐるみや駄菓子といった景品が賑やかに並んでいる。
特に目を引いたのは、動物のぬいぐるみ。
犬や猫を模した物に混じって、学園のどこかに棲息していると噂の謎生物うしゃ――
「こちらは、どういったお店なのですか?」
その時、誰かの声がしてジェラルドが振り返る。
そこに居たのはリリー。
「やあ、いらっしゃい☆」
ジェラルドは人の良い笑顔を浮かべて、ルールの説明をする。
回転するボードに向かって3本のダーツを投げ、刺さった箇所に書かれている数字の合計に応じて景品をプレゼント。
挑戦はなんと無料! にも関わらず、普段付き合いのある業者から仕入れた景品はどれもしっかりとしている。
「せっかくのお花見だし、皆に楽しんでほしいよね♪」
まさかの好青年。
偽夜効果がこんなところにまで表れて…!
ともあれ、リリーは早速やってみる事に。
狙いを定め、ダーツを投擲。放たれた針先は見事に高得点をマーク。
「はい、大当たり♪ やるねー☆」
カランカランとベルを鳴らしながら、謎生物のぬいぐるみをリリーに手渡す。ついでに参加賞の花見団子も添えて。
花見に来たなら団子を食え(布教
するとそこへ、ボールを拾いにゼロとΩがやって来る。
「俺もやってみるか」
ゼロがダーツを抓み、狙いを定m――
「あー残念ハズレだね☆」
「おう、まだ投げとらんやんけ」
残念賞の団子をぐいっと押し付けるジェラルド。
そのジェラルドに向けてダーツを全力投射するゼロ。
ジェラルドが人差し指と中指の間でぴしぃ!とダーツを受け止めると、
「まぁ惜しい」
リリーが自らの頬に手を当てながらごちた。
「ところで、あの重箱も景品なのですか?」
見ると、景品群の中に重箱が混ざっていた。
「…変な物、食べたらダメ…」
答えたのはΩ。
うん? とジェラルドが蓋を開けると、中には湯気の立ち込める見事なラーメン。
\まだ! 今ならまだ伸びてませんよ!/
「しまっちゃおうね☆」
蓋閉め。
「すげー! 屋台があるー!」
「ニポンの社的、把持めて見まシタ」
「よし、勝負だな」
元気の良い声。
ひりょ、マイケル、突破の3人組。
ジェラルドからダーツを受け取ると、3人は勢い任せにわちゃわちゃと一斉に投擲。
9本中8本がボードから外れ、もはや誰のダーツかも分からなくなった唯一の1本も高得点には至らず。
残念賞の団子を頬張りながら、少年たちは次の遊びを求めて忙しなく走り去って行く。
そしてその後で、試しに挑戦してみたΩ。
ダーツを強く投げすぎてボードを粉砕。
「…当たった…」
「これは……残念賞かな?」
特に怒ったふうでもなく、ジェラルドお兄さんは団子をくれた。
イイヒト。
「さて、では花見酒とでもしゃれ込みましょうか」
飲めや歌えやで盛り上がる一同にお酌をして回っていた、20代半ばくらいの巫女服お姉さん。
夜桜 奏音(
jc0588)。
自分でも氷結晶を使ってロックで酒を味わいつつ、持ち寄られた料理に手を伸ばして宴の歓談に興じる。
そこへゼロやΩ、リリー、ジェラルドらもやってきた。
シートに腰を下ろし、リリーは持参した酒類を手にゼロの隣へ。
改めて、初めましての挨拶。
「ゼロ様…と、お呼びしても?」
「何でもええでー! よろしゅうなー!」
気さくに笑いながら挨拶を返すゼロ。リリーにお酌されつつ、お酌しつつ。
また、自分で持ち込んだ大量の手作り弁当も広げて周囲に振る舞う。
たこ焼き。
たこ焼き。
たこ焼き。
たこ焼きしかねえ。
「流石はたこ焼き神の称号保持者です」
匂いに釣られてオペ子エンカウント。
「よーしよーしたーんとお食べ〜♪」
銀髪ツインテを餌付けするゼロ。
リリーも一緒になって、桜の砂糖漬けを差し出す。
「……おぉ……。……では、こちらもいかがですかぁ……?」
「コーラもありますよ」
「お団子も要るよね♪」
山盛りの中華料理を持った恋音や、ドリンクを持った奏音、団子を掲げたジェラルドも支援射撃。
オペ子ゲットだぜ。
職員を仲間にした一行は、冒険(と言う名のいたずら)の旅に出――
「出んで良い」
園長が あらわれた!
オペ子は にげだした!
リリーは にげだした!
恋音は にげだした!
奏音は にげだした!
ジェラルドは にげだした!
ゼロは にげられなかった!
仲間ェ。
1人正座させられるゼロ。
(おかしい。年齢的には俺のが遥かに年上のはずやのに……)
悪魔400歳超え。
仕方が無いので、MSと酒を飲みながらテキトーに説教を聞き流す事に。
『水音』と書いた紙コップに酒だばだば。おう、飲めよ水音。
「聞いているのかシュバイツァー」
「あ、園長もどうですかご一緒に♪」
ゼロが水音コップを差し出す。
園長いじり。真面目な女の人を崩すのが一番面白い。
15分後。
「おいきいているのかシュバイツァー」
「はい……」
「だいたいかしざきのやつはいつもいつも――」
酔った園長の愚痴をひたすら聞かされるゼロ。
誰かたすけてくれ。
その時、Ωが何かを思い出したようにゼロの元へ歩いて来た。
「…ゼロにぃちゃん」
「ん〜? オ嬢どないしたんや?」
Ωは淡々とした様子でゼロの袖を引くと、自らの唇を彼の唇に近づけ――
瞬間、ガブゥ!
ゼロの唇ぶちぶちぃ!
「なんでやオ嬢……(血まみれ」
キスのつもり。
男はハジメテを貰うと嬉しいと聞いた。
「…他に、思いつかなかった…変…?(見上げて首傾げ」
いつも食べ物をくれる事へのお礼で、他意は無い。
「オ嬢はまずソフトタッチを覚えるところからやな」
ゼロは傷を隠す為にカラスの着ぐるみを装着。
唇の代わりにクチバシ姿に。
「おいきいているのかシュバイツァー」
園長が、団子の串先でクチバシ突っつき。
「カー」
カラスのフリをしてやり過ごす事にした。
一方、オペ子の横で酒盛りを続けていた奏音。
少し、いやかなり顔が赤い。
「綺麗な尻尾ですね」
オペ子の銀髪ツインテをなでなで。
「もっと褒めるとよいです」
「どれどれ! 私も撫で撫で揉み揉みするアル! 奏音ちゃんのオッパイも揉み揉みアル!」
ここぞとばかりに雅子が絡み付いてこようとするが――
ブオー ぷちっ
ロペ子に乗って子供達と鬼ごっこをしていたシエル先生が轢き逃げ。
ぺしゃんこになった雅子には気づかず、ひたすらお酒を呷り続ける奏音。
「あらら、なんだか景色がゆがんできましたわ」
ふと視線を落とすと、膝元に自分の物ではない重箱が。
\飲みすぎなようですが、大丈夫ですか!/
「……?」
はてと首を傾げながら奏音は重箱を小脇に抱えて立ち上がり、反対側の手に酒瓶を持ってフラフラと何処かへ行ってしまった。
「お嬢は相変わらず人気だなぁ」
ディザイアが、代わる代わるあやされていたエリスの顔を覗き込む。
「よぅ、楽しんでるか? ちょっと散歩しようぜ」
「ぅー?」
子守役を買って出て、エリスとうさぬいを抱え上げる。
右腕に乗せ、背中をぽんぽんしながら夜光桜以外の桜も遊覧。
適当な木の根元に腰を下ろし、星空をゆったりと眺める。
とその時、遠くの桜で何やら閃光が上がった。
文歌や快晴、ティアラ、フェルミと大次郎も乗せて、のしのし闊歩していた巨大猫蓮牙。
夜光桜の周囲に立っている桜の木を周回しながら、幹にじゃれついて高速猫ブロー。
ガカァ!
桜の木が、蛍のような光の粒子に変わる。
また、猫蓮牙を真似てティアラと快晴も桜に向けて高速猫パンチ。
「うりゃ!!」
「え、英蓮ちゃん、これは流石に怒られるんじゃないかな!?」
振り落とされないようにしがみつきながら、文歌がおろおろと口を開いた直後――
「…………うぅん…………。…………止めたほうが、良さそうですねぇ…………」
見かねた恋音が猫蓮牙に向けてライトニング発射。
「はわー!?」
ぴしゃーん!と直撃を受けて、密着していた文歌諸共丸焦げになった。
ひりょとマイケルを引き連れ、夜光桜の根元で腕組みしながら上を仰ぐ突破。
「目の前に輝く木があり、伝説の夜となれば……」
やることはひとつ。
「登るぞ」
花を間近で観察し、少しでも鮮明に記憶に留める……というのは建前で。
「競争だぜ、一番高いところまで登った奴の勝ちだ」
誰かが言った、花見は戦争だと。
「大人に止められたり、枝を折ったら負けな」
わー!と、幹にしがみ付いて登り始める男児3人。
だがその途中、
「みゃうう……」
上を向いた視界の奥。
枝の上で、レフにゃんが丸くなってぷるふると震えていた。
登ったは良いが、降りられなくなったらしい。
にゃーにゃーと泣くレフにゃんを、男児3人が力を合わせて救出。
無事着地。
あれ? 何か忘れているような……まあいいか。
――その頃、広場の裏側では。
ラファルと雪子とゲイン、そして合流したシエルの4人が、花火の準備に取り掛かっていた。
ここからでも見える夜光桜の灯りに、雪子は敢えて目を閉じながら呟く。
「こんな風景を、“あちら側”の私はあと何回見られるでしょうか」
短命の血筋。
大人な女性の姿になれること自体、おそらくは夢の中でだけ。
「……心配いらん」
答えたのはゲイン。
「俺は花火師だ」
花火師の仕事は、点火と消火の時間を操る事。
「早散りの運命を変えるなど造作もない。お前の命の花は、俺が何十倍にも長く燃やしてやる」
「……そうですね。ありがとうございます」
そう言って、雪子がゆっくり目を開くと――
いつの間にか、花火の発射筒に入れられていた。
「っておいィ? これは意味が違うんじゃなイカ?」
「咲き誇ってこい」
「これは餞別です」
そこにシエルが、何かの種をざらざらと混ぜ込み――
着火。
ボヒュッ ひゅるるるるる……どぱーん!!
リーンと共に両サイドからリーゼ(と和紗)を挟んでいたマリス。
薄桃色の花びらが、風に乗ってひらひらと舞い踊る。
「桜綺麗だねー…年中春ならいいのになあ」
その時、桜の木々よりも更に高い夜の空に、色取り取りの光が咲いた。
「一緒に見られて嬉しいです…」
光る桜や花火に微笑み、和紗は後ろからリーゼに抱きついたまますやぁ。
気がつけば、リーンもすやぁ。
「寝ちゃったね」
ジェンティアンの声。
「運べるなら運んであげて。無理なら…リーゼちゃんごと運ぶ」
だって剥がしたら怖いもん(真顔
リーゼは無言のまま背中に和紗を、正面にリーンを、そして腰にマリス(起きてる)をぶら下げて、ゆっくり(かなりゆっくり)立ち上がった。
「ううぅ…。主さまぁ〜。ぐすんっ」
夜光桜の幹の後ろで、1人いじけていたねこのは。
ふと、レフにゃんがやって来て、ねこのはのほっぺをぺろぺろ。どうやら慰めてくれているらしい。
更にはマイケルも顔を覗かせ、持っていた料理やジュースを差し出す。
「黒髪の子がボクのストライクなのです(※音声では英語です)」
その時、空から何かの種が降ってきた。
瞬間、ねこのはやレフにゃん、マイケルの頭から、“シエりじを”がにょきにょき。地面や木、果ては食器類からも生えてくる。
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ぱねえ。
そこへやって来る、シエル先生。
「オペ子さんへのお土産ですねー」
草ぶちぶちぃ。
収穫して浅漬けにする模様。
一方、その様子をじっと観察していたのはΩ。
草。
繁殖。
浅漬け。
メモメモ。
「…記憶した…ありがとう」
「どうかされましたか?」
幹の反対側から、ひょこっと現れる奏音。
手に持った酒をロックでチビチビ。頭からシエりじをにょっき。収穫ぶちぃ。
おや? そういえば抱えていた重箱はどこへ?
「ご希望の主さまを連れてきたぞ」
声がして振り返ると、エリスを抱えたディザイアの姿。
飛びつくねこのは。抱っこ交代。
そうしてにゃんにゃんあやしていると、次第にウトウトし始めるエリス。
「ん、そろそろおねむか? おやすみのキスはいるかい?」
クククとからかうように覗き込むディザイア。しかし――
「「ふしゃー!」」
レフにゃんとねこのはに威嚇され、彼はむぅと小さく唸った。
遊び疲れ、巨大猫蓮牙から獅子神様モードへと戻った英蓮。
体力補給?に酒やツマミを求めて彷徨う。
ふと、成人組の中にオカマの群れを見つけ、冬祭の時の事を思い出しながら挨拶。
「「あらぁん! 獅子神ちゃんおひさ〜!」」
『あの団子は味おうたか? 人間の口に合わなんだかも知れぬが、これなら程よい香りで酒を楽しめるじゃろ』
オカマ達のグラスに木天蓼の実をぽちゃん。
次いで獅子神様が発見したのは、恋音。
近づくやいなや、いきなり彼女の胸を鷲掴む。
「…………お、おぉ…………?」
『見事に月が三つ…』
獅子神様はちらりと自胸を見てから、
『普通サイズへ光に変えてやろうか(迫真』
「…………お、おいたは、良くないのですよぉ…………?(ふるふるふるふる」
恋人のピンチに、両腕を広げて飛び出す雅子。
「恋音はやらせないアル! やるなら変わりに私をやるアr」
獅子ぱんちドゴォ!
光になる雅子。
きれいなひかりだなー。
「次で最後か」
ゲインが〆の大玉を手に取る。
刹那、それまで大人しくしていたラファルがドカッとゲインを蹴り上げて、大玉ごと筒に押し込んでいた。
「おのれ何を!?」
この時を待っていた。
ラファルはこっそり用意しておいた自作の炸薬玉を、無理矢理まとめてゲイン入りの筒の中へ。
起点玉の炸裂に連動して、全ての玉が連鎖的に大爆発するように設定。
さて、あとは導火線に火を……あれ?
付けたはずの導火線が無い。
おかしいな、と周囲をきょろきょろ。そしていつの間にか地面に置かれていた重箱を発見。
中に入っていたのは、熱々のラーメン。
「これでいいか」
麺を抓んで、まるで導火線のように炸薬に接続。
\!?/
端に点火すると、麺はじじじっと勢い良く燃え進み――
カッ
どーーーーーーん!!
一際大きな花火が夜空を照らした。
「たーまーやー」
更にラファルは、両腕に仕込んだ大型砲塔を空へ向けて自前の花火を一斉発射。
広場に弾頭が降り注いで悲鳴のような音が聞こえてきたが、些細な問題だ。
夜の花火師ラファルさん、花見で華麗に炸裂デビゥー。
宴はまだまだ終わらない。
その時、雪子が落ちてきた。
夜光桜の根元に着弾。ボゴォッと地面にめり込んで埋まる。
えるしってるか桜の木の下にはしたいが(ry
咲き誇る夜光桜と、薄桃色の花木達。
幻の中で見た、一夜の宴。
どうかこの夜が明けても、撃退士達に穏やかな日々があらんことを――