「ここから例の物の気配がするですぅ〜…」
物々しい雰囲気を身に纏い、入口前で斡旋所を見上げる謎の人物――神ヶ島 鈴歌(
jb9935)。あ、やべ言っちゃった。今の無し。
謎の鈴歌は扉をバァンしてロビーへ乱入。そこには、パーティー仕様に彩られた料理やお菓子が置かれていた。
飲料もお茶と炭酸、珈琲、紅茶等々。一通り揃っていてそれぞれの好き嫌いにバッチリ対応。
しかし彼女はそれらに目もくれず、壁際にあった常設の飲料自販機へ一直線。
「ここからですねぇ〜! レモネードの気配が…!」
ボタンを押し、紙コップに注いで一気飲み。
レモネードジャンキー。
「レモネードの美味しさを広めるテロ開始ですぅ〜♪」
ごそごそと自前のレモネードを大量に取り出して、ロビーに置かれていたあらゆる飲み物と入れ替える。その他の飲料は全てロペ子の中に放り込んで処分。
レモネードハザード。
一瞬にして侵食されるパーティー会場。
だがその時、
「パーティーですから楽しんでくださいね♪」
職員を手伝っていた木嶋香里(
jb7748)が、救援物資を持って現れた。
雪だるまとサンタの練切り、新鮮朝引き地鶏のお造り、産地直送馬刺、ローストビーフ、鰹の土佐造り、鶏皮の湯引き、牛スジの煮込み、鴨の治部煮、山芋の浅漬け、胡瓜のピリ辛浅漬け etc.
自作した本格料理の山。
よかった、これでレモネードテロが止ま…る……あれ?
もしかして:飲み物は持ってきてない
ドリンクオワタ。
今年のクリスマスはレモネードでお送りします。
●
パーティーの噂を聞いて斡旋所へと向かっていたシェリア・ロウ・ド・ロンド(
jb3671)。その道中、ラスト1つのプレミアムケーキを巡って揉めているハルとアーリィを目撃。
溜息混じりに仲裁に入る。
「こら2人とも! お店の人達に迷惑でしょう。いい加減にしないとアリハルカプで冬コミに晒すわよ!」
ひでぇ脅しである。
「もう手遅れだけど…」
ボソッと付け加え。
寒気を感じた2人はガバッ!と振り返――
既にシェリアの姿は見当たらず。
しかもその隙に、無関係の第三者が最後のプレミアムケーキを買っていってしまった。
ごつんっ、と再び額を衝き合わせる。
「貴様のせいで!」
「テメーのせいだ!」
言うが早いか、2人は次のケーキ屋めがけて猛ダッシュ。
「あら? 今のお2人は……」
バヒュンっと走り抜けていったハルアリと偶然すれ違ったのは、斉凛(
ja6571)。
「また喧嘩ですのね」
止めた方が良いだろうか。
しかしあの2人を生身で追いかけるのは大変だ。
ふと、凛の頭上に電球が点った。
●
依頼確認のついでにパーティーの様子でも見てくるか、と1人街中を歩いていたディザイア・シーカー(
jb5989)。その時、
「む…お嬢の気配!!」
彼の中のエリスセンサーが点灯。
角を曲がると、向こうからサンタ服姿のHeaven's Horizonメンバーが歩いてきていた。
「よぅ、勢揃いだな」
小走りで駆け寄り、勢いそのままにエリスを掬い上げるように抱き掲げてぐりんぐりん回るディザイア。
「ちょっ、目、目まわr」
「サンタ服似合ってんな、可愛いぞ」
エンジェルスマイルなディザイアさん。すげぇ楽しそう。
お嬢成分を補給した彼は、次いで隣に居たキャシーらオカマ勢の事も抱き掲げ…るのは無理そうだったので、代わりに軽くハグで挨拶。
「やぁん、ディっちゃんメリークリスマスぅ(低音サンタ」
キャシーらのハグ返し。
ぎゅうううう めきめきっ
「ハハッ、皆今日もキレッキレだな(色んな意味で」
するとそこへ、
「リーゼくんたちがサンタさんだ…!」
お茶汲み天使ことマリス・レイ(
jb8465)遭遇。
「珍しいものを見た」と目をきらきらさせながらリーゼに飛びつく彼女自身もまた、クリスマス仕様に着飾っていた。
「えへへ、頑張っておしゃれしたよ!」
どやっ
「似合う? にあうー?」
くるりと回ってみせる。
相変わらずの仏頂面で頷くリーゼ。するとマリスは、彼が付けている白いカイゼル髭を見ながらうずうず。
「リーゼくんひげさわっていい?」
返事を待たずにさわさわ。にぱー。
今日もテンションぶっちぎりである。
「あたしからもプレゼントあるんだー!」
マリスは鳥の羽を模したシルバーイヤーカフを2つ取り出すと、1つをリーゼの耳に、もう1つを自分の耳に装着。
「銀は邪悪な者から身を守ってくれるんだって。お守り代わりくらいには、なればいいなって」
こくりと頷くマリス。
「大切にさせて貰おう」
リーゼもこくり。「大した物が無くて悪いが」と前置きしながら、小さな紙袋をマリスへ差し出す。中には、緑茶入りの湯飲みを模ったキーホルダーが入っていた。
一方、ディザイアはパーティー用に持っていたモフモフの大きな白鬚を徐に取り出し、リーゼに装着。
「中々のイケメンサンタだな(ごくり」
「ふむ……」
すると何を思ったか、代わりにカイゼル髭をディザイアに付けてやるリーゼ。
サンタ増殖。
「かわいい…! 皆で写真! 写真とろ!」
マリスの言葉にエリスが頷き、取り出したデジカメを手近な手すりに固定してタイマーセット。ぱしゃり。
水無瀬 快晴(
jb0745)を連れ、買い物目的で街をうろつく支倉 英蓮(
jb7524)。
自家製の超濃厚またたび団子をちまちま食べながら歩いていると、角を曲がったところでオカマの群れとぶつかってしまった。
「あらぁ、ごめんなさいねぇ」
謝るオカマ。
直後、英蓮と快晴の視界にエリスらの姿も映る。学園内で何度か見かけた事がある。
「2人は買い物?」
先に尋ねたエリスに、英蓮が頷く。
ふと、英蓮は持っていたまたたび団子にキャシーの視線が注がれているのに気がつき、
「食べます?」
おすそ分け。
「ありがとぉ。じゃあ代わりに、はいこれ」
野太い声と共に返ってきたのは、手製クッキーが詰まった小袋。
そのやりとりを見ていた快晴は、今日が自分の誕生日でもある事を思い出し、
「あ、そういえば誕生日だったんだよねぇ、俺。プレゼントプリーズ」
冗談混じりに言った。瞬間、
「いいわよぉ。んむ〜〜」
キャシーが唇を3にして迫る。
全力で首を後ろに反らす快晴。
「んもぅ、いけずっ」
ちゅーを諦めて、クッキーを渡すキャシー。
快晴は礼を言いながら、英蓮と共に買い物へ戻っていった。
●
斡旋所に到着したシェリア。
入口付近では、絵美がせっせと料理を搬入していた。
「絵美さんお久しぶり。お店の方は繁盛しているかしら?」
「おーシェリちゃんおひさー。おかげさまだよー。今日もヴェスちゃんがいっぱいお手伝いしてくれてるしー」
見ると、ヴェス・ペーラ(
jb2743)が妙に鋭い目つきで、絵美の作った追加料理をロビーへ運びに行ったり来たり。
岡持を開け、皿を手に取り、不審な物がないか逐次確認。まるで空港の検閲である。
「ヒトの命が掛かっていますから」
絵美のチャーハンでダメージを受けるのは自分だけという説もあるが、いつ彼女が無差別チャーハンを新開発するとも限らない。
そうこうしている間にも、斡旋所を訪れる様々な人々。
腹ペコで金欠な魔女っ子、夏木 夕乃(
ja9092)。
金策の為にふらふらと斡旋所を訪れ、入口の扉をくぐると…わぉパライソ。
タダ飯たくさん。
「クリスマス…それは、ごちそう食べ放題の日。なんてすばらしい。ごちになります」
遠慮? なにそれ食べられるの?
猫缶に飛びつく猫の如く、紙皿片手にあっちへ行ったりこっちへ来たり。
「最近にぼしが主食だったから、動物性蛋白質が腹に染みます…(ホロリ」
もっきゅもっきゅと頬を膨らませ、一定のペースで食べ続ける夕乃。いつまで? きっと、食べ物がある限り。
いいのよ。好きなだけお食べ(ホロリ
一方、
「あたしは実家が貧乏でクリスマスが年に一回しか来なかった。だからクリスマスはどんな事するのかよく覚えてないの」
年に一回の記憶を頼りに手近な虚無僧衣装を身に付け、ロビーに現れた歌音 テンペスト(
jb5186)。
重厚な声で「バローム」とクリスマスの挨拶。いろいろおかしい。
中身どころか外見もキワモノと化していた彼女だったが、パーティーの楽しみ方は至って普通。
ケーキを祭壇に捧げ、生贄のフライドチキンに火を着け、神の降臨を祈る。
ごめん間違えた。楽しみ方もイッちゃってた。
儀式を終えた歌音は、オペ子が局長に「サボるなよ」と釘を刺されているのに気づき、思いやって声をかける。
「刺し傷は大丈夫? 深ければ抜かずに病院へ行った方が良いよ?」
釘違い。
●
斡旋所の談話室。
ノートパソコンを持参し、玉置 雪子(
jb8344)はオンラインゲーム『BrO』をプレイしていた。
同じくテーブルを囲み、知人のBrO関係者――嘉瀬 綾子、御堂 栄治、ヒメ、豚侍、その他運営スタッフさん――も居る。
クリスマス? ゲームのイベントですね、わかります。
「この時期限定のアイテムを収集して、夏頃になったら露店に高値で売り捌くんですわ? お?」
「だからって一日中プレイしなくても……」
やる気勢の雪子に対し、綾子はちょっとテンション低。
(せっかくのクリスマスなんだし……)
ちらりと隣の栄治を見やる綾子。
oi みす おいなんかカップル混じってんぞ紀伊店のか。
「ちょっと食べ物取ってきます」
だが雪子は気づかず、一度立ち上がって物資の補給へ。豚侍達も手伝いについて行く。
するとロビーには、豚侍達を探していた凛が居て、
「お願い聞いてくれましたら、凛手作り料理をごちそうしますわ」
――しばらくして、談話室に戻ってきたのは雪子だけ。
豚侍はどうしたの?
離してやった。
斡旋所の裏口から、阻霊符を展開した1台のソリが飛び出していく。
トカナイの被り物を付けさせられた豚侍達と、ミニスカサンタ衣装の凛。
黄昏ひりょ(
jb3452)がそれを目撃。
(サンタ姿の凛、可愛いなぁ)
随分と急いでいたようだが、何かあったのだろうか。
首を傾げた彼の頭上に、電球ピカッ。
斡旋所へ駆け込むひりょ。しばらくして……
裏口から、1台の犬ゾリが飛び出した。
ソリの上には、髭サンタ姿のひりょ。
猛スピードで雪道を滑り、凛の豚トナカイに並走。
「ヒャッハー、誰も俺の前は走らせねぇぇぇっ」
「……、…!?」
二度見。
●
斡旋所の駐車場。その一角で、職員と共に豚汁を作って配布していたミニスカサンタ風のRehni Nam(
ja5283)は、往来する人混みの中にふと覚えのある横顔が見えた気がした。
(あれ、ルディさん?)
まさか…いやしかし。
「すいません、ちょっと抜けますね!」
隣に居た職員に断り、しかし返事は聞かずに豚汁を2杯持ってルディを探しに。
人垣を掻き分けながらきょろきょろ。が、彼は見つからず。
またお話したかったのに、としょんぼりしながら戻る。
職員に「知り合いでも居たの?」と聞かれた彼女は、それとなく言葉を濁した。
(流石に野生の悪魔がその辺に居るとか言えませんよねぇ)
野生て。熊か。
●
「局長さま樫崎さま、お招きありがとうございます、なのです」
2人に声を掛ける華愛(
jb6708)。「オペ子です」と反射的に応答する彼女の頭上に手を伸ばし、小次郎もにもに。
次いで、局長にピコハンを、オペ子にお饅頭セットを、小次郎には小さなマフラーをプレゼント。巻き巻き。
そこへ、
「オペ子さんにもプレゼントですぅ〜♪」
レモネードという名のテロをばら撒いてた鈴歌が突っ込んできた。
「レモネードどうぞぉ〜♪ オペ子さんの美肌が更に美しくなる♪ はずなのですぅ〜♪」
言いながらオペ子が持っていたお饅頭セットを半分ぱっくり。もきゅもきゅ。
オペ子はお饅頭の残りを頬張りつつ、鈴歌の手にあった鳥肉を食い返す。わっしゃあ。
局長は貰ったばかりのピコハンで、2人の頭をぴこりと叩いた。
●
和泉 大和(
jb9075)はアルバイトをしていた。菓子屋前にて、ゴジ●的な着ぐるみ姿でプラカード片手に客引き。
ケーキが売れ残ったら、持参して斡旋所のパーティーにも行ってみようか。などと考えていると、ケーキを求めて喧嘩するハルアリが現れた。
見かねた大和が、声掛け。
「ケーキを一つ買って、それぞれ半分こにしてはどうですかね?」
L・B(
jb3821)は飲み屋を探して1人彷徨っていた。
嫉妬して暴れる可能性があるとして、行きつけの店からクリスマス出禁を食らって路頭に迷い中。
ふと顔を向けた先に、ゴ●ラに宥められるハルアリが居た。賑やかな事だ。
L・Bは同じケーキを2つ買うと、喧嘩する2人を蹴。
「喧嘩もっとやれって言いたいとこだけど、往来の真ん中で邪魔なんだよ……ほら!」
2つのケーキを強引に差し出す。
「今日くらい仲良くやんな。あ、代金はきっちり頂くよ? 飲み代なんでね……あれ? いくらだったかな。まあいいか、確か千札3枚くらいさね」
テキトー。有無を言わさず2人の懐を漁って徴収。新手のかつあげか。
直後――
ズサアァァ! どんっ
いきなり突っ込んできた2台のソリが、ハルアリを撥ねた。
ぴくぴくしているハルアリを凛がクリスマスリボンで縛り上げ、ソリの後ろに繋いで引きずり回す。
対してL・Bは、ズルズルとクリスマスベルを鳴らしながら遠ざかっていくソリを見送り、踵を返して歩き出した。
さて…どこで過ごそう…。
(どこも幸せそうで歩くだけで苦痛だよ)
クリスマスには良い思い出がない。浮気発覚、妻子持ち発覚、結婚詐欺 etc.
「全く…ろくなもんじゃ、ないよッ」
落ちていた空き缶を蹴ってゴミ箱in。
せめて今幸せな子達は…どうかそのまま幸せで…。
「なんて、何思ってんだか…」
くすりと自嘲するL・B。
「リア充はー! ばくはつしろーー!」
叫びながら飲み屋へと駆け込んだ。
●
まだバイトが終わらないゴジr…もとい大和。
そこへ現れる大次郎(とフェルミ)。
「なんだありゃ……巨大ぬいぐるみのイベントでもあったか? とりあえず写メしとくか」
「だっ、大次郎殿ー!」
瞬間、誰かが叫んだ。
大次郎へ突撃するエイネ アクライア (
jb6014)。
「お久しぶりでござるぅー!!」
もふもふもふもふ。堪能。
「ふう、まさかこんな所で大次郎殿をもれふるとは思わなかったのでござるよ。……やっぱり、久遠ヶ原にはこないでござるか?」
「ほうりつ、だっけ? 面倒そうだしねー」
答えたのはフェルミ。
「うー、久遠ヶ原に来ればいつでももふれると思ったのにでござる……」
しょぼんと肩を落とすエイネ。その時――
「はっ……ぽち?!」
エイネの謎聴覚が何かをキャッチ。
「ぽちでござるか!? どこでござるか、ぽちーっ!!」
ギュンッと飛び、人里離れた山荘へ。
扉をバァンして押し入ると、そこに居たのはエイネが冥魔時代に飼っていたぽち(人狼)ではなく、ナナコが飼っているぽち(仔犬)。
「……このぽちは偽者でござる。愛でられないよ! でござる」
某料理記者風にぽつり。
「ぽちは、拙者のぽちはもふもふふかふかの人狼でござる! ぽちー、ぽちー! どこにいるのでござる……」
めそめそ泣きながら去っていくエイネ。
ぽかーんとするナナコに、ベゾルクトはトーストのおかわりを出してやった。
●
「今日はイヴなんだな? そうだな、わかった」
頷く天険 突破(
jb0947)。
頷いただけ。
特にやることはない、と街中をぶらぶらしていると大次郎と遭遇。
「トナカイの格好の方がいいぞ」
「?」
突破を見下ろしながら首を傾げた大次郎は、ふと何かの匂いに鼻をすんすんさせながら振り返る。
またたび団子を持った英蓮と快晴が居た。
英蓮が某動物王国なテンションで「よーしよしよし」と撫でわしゃしに近づこうとしtむしゃあ!
頭から大次郎に齧られる英蓮。
瞬間、彼女から謎のオーラが噴き上がり、巨大獅子王『獅子蓮牙(ガオレンガー)』となって顕現。
デジャヴ…いや違う。
イブ補正を受けて、トナカイコス仕様にマイナーチェンジしている。
再会を果たした巨猫と巨獅子は、突破や快晴を咥え上げて斡旋所へとのしのし歩き出した。
●
シェリアは受付に居た銀髪ツインテールにこっそり近づき、後ろから両手で相手の両目を隠す。
「ふふ、だーれだ♪」
直後、首だけが360°ウィームと振り返る銀髪ツインテ。
「ハッ! これはロペ子!?」
「だーれだです」
逆に後ろから、もふぷにな肉球で目隠しされるシェリア。
彼女は振り返って小次郎を撫でながら、改めてオペ子にクリスマスの挨拶をした。
●
小次郎がシェリアに遊んでもらっている間、オペ子は雪子達に合流。
が、代わりに綾子と栄治が居ない。デートしに行きやがった。
ハイライトの消えた目でチキンを貪りながら、BrOにログインする雪子。
「クリスマスを理由に消えるリア充はこの先生きのこれない罠」
これはゲームであっても、遊びではない。
「ボスPOPを待つ時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ」
独りで静かで豊かで…
ドガシャーン!!
刹那、斡旋所が揺れた。
ロビーの壁をぶち抜いて、凛とひりょがソリで会場in。
直撃したロペ子がバラバラ。
壁の中にあった回線ケーブル真っ二つ。
強制ログアウト。
「(^o^)」
これでリアルにログインできるよ、やったねゆきこちゃん。
●
建物裏のゴミ捨て場に、バラバラのまま投棄されていたロペ子。
――ヴン
再起動。
と見せかけて中身は憑依したMS。
パーツ集めて再接続。
『ふふ、まさか中身が私になっているとは誰も気づくまい』
「おーにごっこシーマショー…ま・す・た〜♪」
瞬間、Unknown(
jb7615)が肩がしぃ。
ヤる気勢に気づかれた。
『待て早まるな。いま私が居なくなるとリプレイの続きが』
「我輩が鬼でいいぞ(にこ」
問答無用でますたを追い掛けるだけの簡単な遊び。
全力ホバーで脱兎するMS(inロペ子)。
冷凍マグロをぶんぶこ振り回して追うアンノウン。
時には空から! 時には猫と一緒に! 時にはガチで鬼の様に!!
ロビー内を爆走しながら、料理を食べ漁ることも忘れない。ごきゅむしゃ。
一方、逃げるロペ子ボディの破損箇所から飛び散ったオイルが、テリヤキソースのようにチキンにびちゃびちゃ――
●
オカマバーの面々が斡旋所に到着。そこへ、
「ごちそういっぱいと聞いて来ました!」
蓮城 真緋呂(
jb6120) が あらわれた!
ミニスカワンピのトナカイコス。
「トナカイ便でーす! 俺っ娘の友達から、プレゼントお届け♪」
リーゼに突撃し…ようとして、手前で躓き。
危ないっ。
咄嗟に受け止めようとするリーゼ。が、
ふと脳裏によぎるラキスケの4文字。
反射的に踏み止まって、避ける。
真緋呂、地面にどべちゃあ!
「リーゼさんひどいっ」
「す、すまない。今一瞬、もっとよくない事になるような気が……いや、何でもない。とにかく、大丈夫か?」
真緋呂はリーゼが差し出した手を取って立ち上がると、預かっていたプレゼントを渡し、
「送料お願いしまーす」
まさかの着払い。
友達便ェ。
「リーゼさんのご飯超美味しいって話。送料はそれで。約束」
「そこまで大層なものでもないが」
すっと差し出された真緋呂の小指に、リーゼは自身の小指を絡めて小さく頷いた。
その後、真緋呂の興味はキャシー達へ。
荒ぶるトカナイとオカマは、ガツガツ料理を平らげた。
一方ディザイアとマリスは、そのままエリスやリーゼときゃっきゃ。
「お嬢。美味いケーキががあるらしいぞ、食ってみるか?」
チャーハン味。
ディザイアが、絵美印の究極ケーキをエリスの皿に切り分けてやると――
「危険です」
ヴェスが飛んできた。
チャーハンではなくチャーハン味のケーキだが、あの絵美が作った品である。爆発するかもしれない。
(そういえば、このケーキを食べるとどうなるのでしょうか)
撃退庁の分析チームによれば、自分だけが絵美のチャーハンとの間の因果時空が捻れているせいで酷い目に遭うという事らしいが、これはあくまでもケーキである。
もしかすると、食べても平気なのでは……。
(チャーハンという単語が絡んでいるのでダメそうですが)
ヴェスはディザイアとエリスに「多分、20割の確率で自分の胃が爆発するか、何かが無かった事になる。何が起きるか記録してくれ」と言い残し、ケーキチャーハンとチャーハンケーキを食べ比べるべく自分の皿に乗せ――
ぼふぁっ!
突然、ヴェスが口から黒煙を噴いた。
まだ食べてないのに。
食べようとする意思に反応した感。
これは危ない。
ディザイアとエリスは食べるのをやめようと――
「どーん!」
瞬間、マリスが深く考えずに2人の口にケーキ捻じ込み。
「これはまた、斬新な味だな」
でも平気。
何事も無い2人を見てヴェスは、
「い、因果……」
ぱたり。
そこへ通りがかる夕乃。
大変そうだなーという顔でもっしゃもっしゃ料理を食べ続け、次の皿に手を伸ばす。
テリヤキソース…と見せかけてロペ子のオイルが掛かったクリスマスチキン。
ぱくぱくごっくん。
あれ? 大丈夫?
夕乃は何事も無く次の料理を取rどさぁ。
倒。
だれかー。きゅーきゅーしゃー。
●
「局長さん、一緒に食べましょう♪」
オペ子が料理に気を取られている間、香里は局長との歓談を楽しんでいた。
「好きな料理が有ったら一人分づつ小分けにして差し入れしますよ♪」
「すまんな」
せめてものお礼にと、局長は香里のコップにレモネードを注ぐ。
そこへ、あんころ餅を持った真緋呂がやって来る。
「あのね、道祖神にあんころもちを塗ると早く結婚出来るんですって」
長野ジンクス。
悪気の無い笑顔でプレゼント for 局長。
「あと猫を暗闇で転がすと結婚出来るってのもあったので、小次郎君?」
「夜に道祖神の前であんころ塗った小次郎を転がしてみるか」
冗談かな? 本気かな?
●
イブだけど暇だし、そこそこ面識ある人にプレゼント渡しに行こう。
というわけで街へ繰り出した天宮 葉月(
jb7258)。
え、彼氏? 今日は義妹ちゃんの番だから。わざわざ島外から来てくれてるし、断って去年みたいに彼を連れて行かれても困るから今日は我慢。
でも明日は私の番(こくり
とりあえず向かった先は、エリスが居るはずのオカマバー。が、
「誰も居ない……」
まさかのぼっち展開。
ふと、入口に斡旋所への地図が貼ってあった――……
●
物陰に隠れていた華愛は、意を決してエリスに声をかける。
が、どうしても人混みが苦手で隅っこへ移動。
「こ、これを、どうぞ、なのです…」
いつになく緊張した様子で差し出したのは、桃色のシュシュ。と、金平糖。
ぱぁっと顔を綻ばせながら受け取るエリス。
「ありがとう! 私からもハナにプレゼントあるの」
紙袋を取り出して、再び視線を上げると――
華愛が居ない。
「あれ?」
きょろきょろ。
「エリスちゃん、めり〜くりすますぅ〜、なのですよぉ〜」
そこへ現れる、深森 木葉(
jb1711)。
雪をイメージした簪を挿した、和風サンタな着物姿だ。
「エリスちゃんのサンタさん、かわいいのですぅ〜」
「あ、ありがと。木葉こそ、和風サンタすごい似合ってる」
互いに照れながら、木葉はエリスを連れてママ達の元へ。
「ママさんたちも、めり〜くりすます、なのですぅ〜」
「あら、可愛らしいサンタさん。メリークリスマス(野太刀ボイス」
挨拶を終えた後、木葉が取り出したのは手作りの猫のぬいぐるみ。
「えへへっ。エリスちゃんにプレゼント、なのですよぉ〜」
不器用な木葉が作った為、名状しがたき出来栄えの猫ぬい。
だがエリスはそんな事など微塵も気にせず、ただただ嬉しそうに猫ぬいを抱きしめる。
「ありがとう」
そしてエリスは、新緑の葉と雪だるまがセットになった小振りなキーホルダーを木葉にプレゼントした。
「エリスちゃんにクリスマスプレゼントです」
クラッカーぱこーんしながらダッシュで現れたのは葉月。バーへ行ったらぼっちで焦ったが、会えた。良かった。
ぜぇぜぇと肩で息をしながら、丸っこくて抱き易そうな梟のぬいぐるみを差し出す。
まさか葉月から貰えるとは思っていなかった。エリスは礼を言いつつ、少し申し訳無さそうにパーティー用に持ってきていた手作りキャンディーを渡す。
「エリスちゃん好きな食べ物は? リクエストがあれば今度作るよ!」
「え? うーん、お味噌汁かな」
「あ、全然関係ないけどこないだ測ったら1cm成長してた」
「擦り減ればいい(ぎりぃ」
依頼を探しに斡旋所を訪れたヒスイ(
jb6437)は、パーティーな光景に戸惑っていた。
(おかしい。場所を間違えたか?)
ふと目に付いたサンタ姿の少女の背に尋ねる。
「すまない、ここは斡旋所で合って…ん?」
振り返った金髪ツインテールの少女を見て、
「…エリス?」
予想外の再会に、瞠目した。
「げ、元気…だったか? …あぁいや、1度きり、それもあんな出会い方をした僕のことなど覚えてはいないだろうな…それに楽しい宴会の席だ。むぅ…忘れてくれ…」
言葉を切って足早に立ち去ろうとするヒスイだったが、
「覚えてるわよ。私が今こうして学園に来られたのは、あんた達に会ったのがきっかけだもの。あの時は言えなかったけど、ありがとね」
その言葉に、ヒスイは口調を取り繕うのも忘れて涙を滲ませる。
「ずっとずっと、話せばわかる子だったんじゃないかって…」
右目を怪我した時の事も、報告書づてに聞いた。
「助けには行けなかったけど、学園に来たならちゃんと顔を見て謝りたいって…あの時はごめんねっ」
ヒスイ…僕の名前だよ。
名乗り、溢れ出る感情を誤魔化すようにその場を立ち去ろうとする。去り際に「よいクリスマスを!」とポケットの飴を数個エリスに手渡し――
ぱしっと、エリスが彼の手を掴んでいた。
「せっかくだし、みんなで一緒に遊んでいきましょ」
私もまた会えて嬉しい、と。
エリスは、心からの笑顔で言った。
●
ロビーの一角に特設されていた、出し物用の簡易ステージ。
その上に立つ川澄文歌(
jb7507)は、一挺のヴァイオリンを携えていた。
彼女は旅をした。1人の女性がとある冥魔に聞かせていたという曲を探す旅。
途中訪れた地でアイドル活動をしたり、強大な天魔と戦ったり、恋人とめぐり逢えたり、おこた型の天魔でぬくぬk…もとい倒したり。
唯一の手掛かりは、その女性の支援者だったという元政治家の男。
彼を訪ねた結果――
曲は、分からなかった。
だが音楽史を調べる内に、数少ない情報を入手した。
女性がプロのヴァイオリニスト時代に公演した曲のリスト。
文歌は弓を構え、静かに音を奏で始める。
何所かにいるであろうあの冥魔に向けて――
(サンタ服、かわいかったのです…)
プレゼントを直に渡す恥ずかしさに耐え切れず、ヒトが居なさそうな屋上へと逃げてきた華愛。
だがそこには、1人寝転がるルディの姿。
彼は首を反らして華愛を見るが、すぐに視線を空に戻してふてぶてしく居座り続けていた。
何となく、彼の横に黙って金平糖を置き、それを挟んで隣に座る。
(寒いのです…)
そのまま隣でじーっと空を見る。
他意は無い。
「…寒く、ありませんか? 中は、暖かいのですよ?」
「……だろうな」
ふと、屋上の出入口からエリスのうさぬいがぽてぽて歩いてくる。
華愛の膝に、桜の花びらと雪だるまがセットになったキーホルダーをぽとりと置くうさぬい。
その時、階下からヴァイオリンの音色が聞こえてきた。
ルディが屋上に居る事を知らぬレフニーは、ロビーから流れてきた弦の音に彼の姿を重ね、
「…今頃、ユートさんとクリスマスを過していらっしゃるのでしょうか? ねぇ…」
そっと空を見上げた。
演奏を終えた文歌を、後ろからそっと抱き締めた者が居た。快晴だ。
直後、凛とひりょがぶち抜いた壁の崩れ目から、大次郎と獅子蓮牙が乗り込んでくる。
料理を食い散らかして去っていく大次郎とフェルミ。
文歌に飛びついて頬ずりする獅子蓮牙。
ぷちっと潰されながら、撫で返す文歌。
一方、獣から開放された突破もパーティー料理を遠慮なく頂く事に。
「ケーキ味のチャーハンって、見た目はチャーハン、中身はケーキなのか? せっかくの究極チャーハンなら食べておくか……至高はないの?」
某料理記者さんのお父上にお問い合わせください。
「まあいいか」とチャーハンケーキに手を伸ばした時、テーブルの前でぶにゅっと何かを踏んづける突破。
ヴェスが床に横たわっていた。
「死んでる!」
「まだ生きてます」
むくり。復活。
段々、胃がチャーハンに適応してきている気がする。
その頃ステージでは、起き上がった文歌が自慢の歌声を披露していた。
『出会ってくれてありがとう』
その歌に、駐車場を逃げ回っていたロペ子(MS)が足を止めて聴き入r――
瞬間、アンノウンに追いつかれてバキムシャゴックン。
ロボ(MS)の悲鳴。
それを他所に、空を見上げていたレフニー。
「あ…雪、降ってきたのです」
結晶舞い散る中、ヤク●トの空容器で作った人形を手紙付きで皆に配っていた歌音は、徐に虚無僧の被り物を脱ぎ、
「今年は色々迷惑かけてごめんね、来年もよろしくね」
まさかの真面目。
「Joyeux noel. 来年も良い年を向えられますように…」
シェリアはオペ子の頭に小次郎を戻しながら、静かに雪空を仰いだ。
●延長戦
夜通し続くパーティー。
バイトを終えた大和が到着。
「売れ残りだけど、クリスマス用のケーキをバイト先から仕入れてきたぞ。皆で食べてくれ」
その時、オペ子の端末に緊急コール。
駅前広場で暴徒発生の知らせ。
ソリにふん縛ってあったハルアリに告げる凛。
「喧嘩する体力が有り余ってるなら、役に立っていただきますの。後で高級リンゴ使用の限定アップルパイを差し上げますわ」
反論しようとするハルアリだったが、
「用が済んだら開放して差し上げますわ」
強制連行で発進していった――