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マスター:水音 流
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/12/22


みんなの思い出



オープニング

「す、すいません、これで勘弁してください……」
「そうやって最初から誠意見せてくれとったら、こっちもこんな事言わんで済むんやで」

 路地の隅で頭を下げながら、財布に入っていた万札を2枚差し出すサラリーマン。
 対して、脱臼したという左肩をこれ見よがしにダラリと下げながら、右手でお金を受け取るジャージ姿の男。

 ぶつかった。慰謝料よこせ。
 確かめるまでもなく、ただの当たり屋である。

 財布が空になった相手にもはや用は無く、当たり屋の男――当屋(あたや)――はサラリーマンに背を向けて反対方向へと歩き出す。
 どうやら肩はもう治ったようだ。

(もう1人くらい当たっとくか……)

 などと考えつつ曲がり角に差し掛かった時、角の向こうから歩いてくる人影が地面に映る。
 のっそりとした動きで、ゆっくりと近づいてくる気配。

(トロそうやな。こいつにするか)

 下手に顔を出して気づかれてしまっては意味が無い。相手の姿を直接見る事はせずに壁際に張り付いて息を潜め、獲物が近づいてくるのをじっと待つ当屋。
 足音と呼吸が角までやってきた瞬間、当屋は相手より一足早く角から飛び出してぶつか――

 すかっ

 ――れなかった。
 確かに相手の体を捉えたはずが次の瞬間には手応え一つなくすり抜けて、勢い余った当屋は一人で地面に突っ伏して肩を強打する。

(この俺が外した!?)

 何が起きたか分からないまま、しかしすぐに思考を切り替えて演技続行。
 あたかも相手に突き飛ばされたフリで大げさに痛がってみせる、当たり屋(当たれてないけど)の当屋。

「あいたたたぁ!? アカン、これきっと棘上筋挫傷(きょくじょうきんざしょう)やー! めっちゃ痛いわー! もしかしたら烏口腕筋裂傷(うこうわんきんれっしょう)も起こしとるかもしれんわー!」

 チラッ
 顔を上げて相手を見る。すると、

「ぐる?」

 ぶつかろうとしていた相手は、人狼だった。
 2m超えの巨躯。ふさふさの尻尾。鋭く並んだ犬歯の横からテロンと下を垂らして、小首を傾げてこちらを見下ろしている。
 すり抜けたのは透過能力のせい。

 アカンのにぶつかってもうた(ぶつかってないけど)。

「お、おう、なんやわれ、犬みたいな顔して、おちょくっとんのか」

 しかし当屋は逃げなかった。

 ビビッたら負ける。コンマ3秒ほどの葛藤の末、立ち上がってヤンキーの鉄則を優先。
 大人しくゴーホームしとけよマジ。

「ぐる?」

 対して、先ほどとは反対側に首を傾げる人狼。
 当屋が何を言っているのかよく分からなかったが、やたらと喧しく絡んでくるので、とりあえずデコピンしてみる。

 ぺちん 

 瞬間、当屋は、

「ぐわー!? もふもふのケダモノにデコを殴られたー!? これは頭蓋骨前頭鱗外傷骨折(とうがいこつぜんとうりんがいしょうこっせつ)に違いねー! モウダメダー!!」

 当たり屋の意地。

「ぐる……」

 そんなに強く弾いたつもりはないのに、とでも言いたげな様子で自らの手を見る人狼。

「アカンわー! さっき転ばされたせいか、なんか大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)もメッチャ痛むわー! コレ絶対、腸脛靱帯損傷(ちょうけいじんたいそんしょう)やわー! こらもう、何らかの誠意見せてもらわな収まらへんわー!」

 ぎゃあぎゃあ。

「ぐるるる……」

 うるさいなー……仕方ない、埋めるか。
 面倒臭くなった人狼は、その大きな手をぬっと当屋へ伸ばした――


リプレイ本文

「人狼? ゲーム買いに来た奴か?」

 ミハイル・エッカート(jb0544)は過去の依頼を思い出しながら首を傾げる。
 もしBrO愛好家の下僕ならば倒したくないぜ。ここは穏便に収めよう。

 彼は衣装バッグを抱え、そそくさと更衣室へ消えた――



 一足早く現場に到着したのは、真っ赤なケープ姿の若松 匁(jb7995)。
 電柱の陰からこっそり様子を窺う。

 ぎゃあぎゃあと人狼に喚き散らす当屋。

「あー…はー…」

 納得する匁。
 ふと、人狼が当屋にデコピン。当屋が更に騒ぎ立てる。

「コウイウ ノ ダメダワー…ウザイワー…(棒」

 すると人狼が彼へ手を伸ばし――

「危ないっ!!」

 その時、1人の女子が飛び出してきた。
 蓮城 真緋呂(jb6120)。全力移動で容赦なく当屋を突き飛ばし…もとい庇う。
 肩から突っ込んできた真緋呂に撥ねられ、そのまま塀と真緋呂に挟まれる当屋。

 人狼に絡んでいた当たり屋の当屋に当たり屋かます女子高生を陰からこっそり見守る赤ずきんの光景。
 一体何が起こってるんだ。

「大丈夫ですか!?」

 真緋呂が当屋を抱き起こすと、彼はここぞとばかりに慰謝料を請求してきた。

「アイタタタァ!? なんやメッチャ脇腹痛いわー!? ぜったい外腹斜筋損傷(がいふくしゃきんそんしょう)やわー! 誠意欲しいわー!」
「……(イラッ」

 そこへ、

「大丈夫ですか!」
「間に合ったみたいだな」

 警官服姿の不二越 悟志(jb9925)と、緑ジャケット姿のルパn…おっと間違えた、天険 突破(jb0947)が到着。

「見た感じ悪いのは天魔だな」

 常識的に考えても、やはり人狼“に”絡まれているとするのが妥当だろう。
 2人を背に庇って立つ突破。

「今、助けますからね!」

 悟志もそれに続くが、ふと当屋の人相を見て思う。

(それにしても…この人、チンピラっぽいですね。何か悪いことやってる気がしてなりません)

 元警官の勘。
 いやしかし人を外見だけで断ずるなど、正義にあるまじき行為。どちらにせよ、まずは争いを止めなければ。
 その時、匁が動いた。

「これはカオスの予感!」

 人類の敵として生まれながらも悪い事はまだ何もしていない人狼と、そうとは知らずにドクズ一直線な当屋を庇う撃退士達。

『誤解が生んだこの不幸な事件、不詳私…匁が…熱く! ATUKU!! 実況させて頂きますっ!!!』

 小指を立ててマイクを握りしめる。
 その前に事情説明してやれよマジ。

「悪vs悪……真の正義はどちらか……」

 そこへ、意味深に呟きながら姿を見せるファリオ(jc0001)。
 様子を窺っていた匁の様子を更に後ろから窺っていた彼は、匁の為に実況席を用意。
 対して匁は席に着くと、顔に『水音』と書かれた豚のぬいぐるみを机の上に置いた。

『こちら解説の水音さんですっ。本日はよろしくお願いします』
『よろしくお願いします』

 そうこうしている内に、突破が人狼に剣を向けながら当屋に話しかけていた。

「あいつが本気を出す前で良かったな。気をつけろ、あの力は一般人が善人だと消し飛び、悪人だとその悪の力をあくまいと的な何かで膨らませ破裂させる」

 もしかしたら天下一武○会で2回くらい優勝してるかもしれない。

「俺達の後ろにいて動くなよ――」

 言った直後、ハッとした顔をする突破。

「――拙僧達の後ろにいて動くでないぞ」

 急に坊主口調。
 実況の匁が首を傾げる。

『今のは何故言い直しを?』
「こう見えて、今はアストラルヴァンガードなる聖職についてる故」
『なるほどー』

 一方、真緋呂は当屋の介抱?を続行。

「とりあえず、ここは皆に任せて、怪我の手当しましょ?」

 にっこり。

「任せて。私、医者の娘だから」
「えっ? 医者?」

 途端、露骨に慌てだす当屋。
 まずい、仮病がバレる。いやでも、さっき真緋呂に撥ねられてから割とマジで体が痛い。上手く誤魔化すしか……

「これは…traumatic cervical syndrome…」
「え?」

 当屋の体を触診していた真緋呂が、深刻な顔で何かの横文字を口にする。

「rupture of cruciate ligamentも引き起こしてるかも…」

 更に深刻な顔。

「いえ、でも…(ぶつぶつ」
「え? え?」

 小難しい英語の羅列に、狼狽える当屋。
 医者の独り言って、無駄に不安になるよね。

 それを他所に、突破と悟志はジリジリと人狼との距離を詰めていく。
 2対1。人狼ピンチ。

 だがその時――

「がうがう!」

 突如、1匹の熊が乱入してきた。

『やせいの くまが あらわれたー!?』
『あらかわいい』

 どう見ても着ぐるみ。だがしかし、背中に翼の飾りを付けてファンシーな熊型の天魔を装っている。
 スマホでパシャパシャ撮影する匁を他所に、熊はのしのしと人狼の方へ歩いていき、

「がうがう、ががうがうがう(訳:俺が来たからにはもう大丈夫だ。ここは任せて下がってろ)」

 身振り手振り。が、

「ぐる?」

 首を傾げる人狼。伝わってねえ。
 すると熊はお菓子を取り出し、

「いい子だからこれ食ってあっち行ってろ」

 人狼の手に握らせた。

『さっそく熊語を諦めてしまったようですが、これは大丈夫なんでしょうか水音さん』
『細けぇこたぁいいんだよ』
『どうやらセーフのようです』

 熊は人狼の隣に立ち、悟志達に牙を剥く。
 こいつはやらせねえ。俺が相手だ。

「がるるるる…」

 荒ぶる鷹のポーズ。
 次いで、もふもふの熊手でシュシュッとシャドーボクシング。
 ファンシーな見た目に反してエグそうな赤黒いオーラを噴き上がらせ、

「さあいくぜ撃退士ども。本当の地獄を見せてやr」
「ふぉおおおおおおおおもっふもふうううううう!!!」

 不意に、雄叫び。

 振り向くと、土煙を上げ、大地を揺らしながら猛スピードで駆けてくる1人の少女。
 瀬波 有火(jb5278)。

「もふもふの! 一番乗りは! あたしだーー!!」

 刹那、彼女は音の壁を越えた。
 ドンッと衝撃波の環をくぐり、一気に加速して人狼のしっぽ目掛けて砲弾ダイブ。だが、

 すかっ

 光纏のし忘れでしっぽ透過。
 すり抜けた先には熊が立っていて――

 ドゴォ!!

「べあ!?」

 有火弾が突き刺さり、くの字に曲がりながら吹き飛ぶ熊。
 塀を砕き、木をへし折り、家屋を貫いて100m以上突き抜けた後、穴の奥からターンした有火だけが「わはー!」と戻ってくる。

 光纏して今度こそしっぽに抱きつき。もっふり。

「あーんもふもふ! もふもふ! しっぽもふもふ! 耳もふもふ! 三角耳もふもふ! 毛皮すりすり! すりすり! 暖かすりすり! のど! のどわしゃわしゃ! そしてしっぽもふもふ…はっ!? 肉球!? ぷにぷに肉球! もふもふすりすりわしゃわしゃぷにぷにもっふもっふ!!」

 最後は人狼のふかふかの背中へとおぶさり、

「はぁぁぁ〜〜〜〜………しあわせだぁ」
「ぐる」

 まじフリーダム。
 一方、熊も穴の奥からヨロヨロと戻ってくると、腹を押さえながら塀の崩れていない部分に寄りかかって息を整えr

「人狼殿ー! ご無事でござるかぁーッ!!」

 と思いきや、新たな叫び声。人狼“が”絡まれていると聞きつけたエイネ アクライア (jb6014)が、人狼へと全力タックル。
 押し出された人狼の巨体と塀に挟まれて、熊圧殺。メメキャア!と奇音がして、熊の顔半分が塀にめり込んだ。

 だがそんな事には見向きもせず、タックルついでに抱きついてもふもふしていたエイネはその感触にハッと顔を上げる。

「この毛皮の色艶毛並み、お主はまさか……拙者が冥魔軍に所属する前、冥界の故郷に居た頃に飼っていたぽちでござるか?!」
「ぐる?」
「ぽちー! 会いたかったのでござるよーっっ!!」

 もこもこの人狼の胸に顔を埋めるエイネ。

「まあ、ぽちは冥魔軍に所属する前に寿命?で死んでいるので、きっと生まれ変わりでござろうか。というわけで、今日からお主はぽち二世、拙者の飼い人狼でござる!」
『自分のものにしてしまいましたね』
『首輪してないからね、仕方ないね』

 その頃、当屋はどうなっているかと言うと、ちょうど真緋呂が応急手当を始めるところだった。

「とにかく固定しなくちゃ」

 包帯を取りだし、むち打った首にぐるぐるぎゅううううう。
 当屋がばしばしと彼女の腕を叩くも、

「大丈夫、すぐによくなるわ!」

 患部は冷やすのも大事。氷結晶で大量の氷塊を作り、当屋の服の中へ投入。
 転げ回る当屋。

「暴れないで、傷が開いちゃう!」

 後ろから押さえつける真緋呂。F級の2つの膨らみが当屋の背中にむぎゅぽよ。

『解説、どう見ますか? 当たってますよ?』
『当てる屋ですね。誠にけしからんと思います』

 このままでは当屋がもたない。
 もはや一刻の猶予も無しと、突破と悟志が改めて人狼に剣を向ける。

「え、これやっつけるの?」

 有火が顔を上げる。
 本当に? 冗談じゃなく? リアリィ?

「……ダメ、あたしにはできない! だってもふもふなんだもの!」

 すると、エイネも慌てて弁護。

「ぽっ、ぽちは悪い仔じゃないのでござる!」

 うちの仔が人に絡むとかありえない!

「本当のことを言うのでござる! お主が全部悪いのでござろう?!」

 当屋の襟を掴んでガクガク揺さぶり。
 その時、塀に埋まっていた顔を何とか引き抜いて復活した熊が視界に映る。

「ハッ! さては貴様がぽちに濡れ衣を着せたのでござるな?! 許すまじ、滅ぼしてくれるでござるーッ!」

 抜刀して熊に斬りかかる。

「この人は僕が守ります! 当屋さん、僕の後ろに隠れてください!」
「俺m…拙僧も全力でいかせてもらう」

 悟志と突破も加わり、3人掛かりで熊狩り開始。
 イジメ、カッコワルイ。

『これは……想像以上にひどいっ! 耳がもげ、手があらぬ方向に曲がっております…! がんぱれ熊サイドっ!』
『がんばれミハイルサイド』
『今はっきりミハイルさんって言っちゃいましたが大丈夫でしょうか』
『え、何だって?』
『ラノベか』
「さぁー! 寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい!! これから始るのは、街の厄介者である当屋と人狼の対決だよー!!」

 その時、騒ぎとは正反対の場所から賑やかな声がした。
 なんとメガホン片手に野次馬を呼び集めるファリオの姿。

「しかも、今回はお互いに助っ人がいる状態! さぁ、どっちが勝つかな!? 実況の若松さん? ずばり勝敗のポイントは何でしょうか?」
『数の暴力こそ最強ですよね』

 いつの間にか賭券を握りしめている匁。

「どっちが勝つか、賭けた、賭けたぁ!! 現在オッズは当屋側の方が硬いよぉ!!」

 依頼のついでに小遣い稼げて報酬うめぇ。
 対して、有火を乗せたまま隅っこに移動してお座りする人狼。ボロ雑巾のようになっていく熊を傍観。

 ドカッ

「いてっ、お前らやりすぎだって」

 バキッ

「手加減ってもんを――」

 ボコスカボコスカ

「うおぉおおおお!!」

 あ、熊がキレた。

「俺の右手が真っ赤に燃えるうぅぅ!」

 熊手に乾坤一擲の輝きを宿し、野次馬もろとも爆砕大暴れ。
 大惨事である。

(こらアカン、逃げるが勝ちや)

 どえらい大事になって焦った当屋は、這い蹲ってコッソリその場を去ろうとするが、

「あ、状況聞きたいから逃げないでね」

 真緋呂が笑顔で髪芝居。
 一方、野次馬をも敵に回した熊は文字通りフルボッコの刑に処されていた。

「がる…がるる…ごふっ」

 マジ吐血しそう。てか吐血してる。

「これがとどめの光だ、受けてみろ」

 そこへ突破のラストアタック…と思いきや、飛んできたのはライトヒール。回復ぴろろん。

「なんてナイスガイ!」

 その優しさに全熊が感動のスタンディングオベーション――

「熊め、正義の鉄槌をくらえ!」

 ――からの悟志の一刀両断ズバァ!

『試合終了〜!』

 ゴングカンカン。
 これ以上は命に関わる。そう思った匁は(ようやく)立ち上がって一同を止めに入った。

 さりげなく人狼のしっぽをにぎにぎもふもふしながら、最初に到着した時の事情を説明。
 かくかくしかじか当屋が悪い。

「ふふ、やはりな。俺は最初から分かってたぜ」

 ボロボロの熊がむくりと起き上がる。

「実は俺も撃退士だったのさ」

 ネタばらし的な感じで熊ぐるみの頭を脱ぐ。その正体は――

「俺だ」

 顔変形ボッコボコ。

「「誰だ」」

 たぶんミハイル。
 ふと、エイネがくいくいと熊手を引いた。彼女は人狼の方を指差し、

「拙者、ちゃんと面倒見るでござるから……」

 散歩も行くでござるし、餌もやるでござるし、躾もするでござる。

「だから、連れて帰って良いでござろう?! 母上!」
「いけません! ちゃんと山に帰してあげなさい!」

 窘めるミハイルママ。
 すると空気を察したのか、人狼がすっくと立ち上がり、

「ぐる……」

 有火を乗せたまま、のしのしとどこかへ去っていった。
 咄嗟に追いかけようとする突破だったが、思い出したように一度立ち止まって当屋を見る。

「何ともないか? 奴は一番大事なものを奪っていくからな」

 そう、お前の心だ。

「待て〜、天魔〜」

 それ、緑のジャケット的に立場逆じゃね?
 などというツッコミも間に合わず、突破は有火が乗ったままの人狼を追いかけに行ってしまった。

 そしてそんな一同を他所に……

(アニメグッズ買い放題だ!)

 オッズの元締め料を両手に握り締め、ウハウハ状態のファリオ。
 しかし独り占めというのも皆に申し訳ないので、一緒に何か美味しいものでも食べに――

「あー、キミちょっと良いかな?」

 不意に誰かがファリオの肩を叩く。振り返ると悟志…ではなく、本物のお巡りさん達が立っていた。

「この辺りで恐喝と不法賭博が行なわれてるって通報があったんだけど……キミ、そのお金どうしたの?」

 瞬間、匁は自分の分の賭券を豚水音のぬいぐるみの口に捻じ込み、どむっと遥か彼方へ蹴り飛ばして知らん顔。

「ちょっとお話聞かせてもらえるかな?」

 ファリオは当屋と共に連行されていった――


●警察署
 ファリオが事情聴取されている横で、刑事そっちのけで当屋にお説教するミハイル。

「お前のせいで俺のニヒルなマスクがボコボコだろうが! 頭蓋骨も大腿筋膜張筋も腸脛靱帯も粉砕して再起不能にするぞ、クソ野郎!」

 もはやただの八つ当たりである。

「これ食べないなら貰っていい?」

 テーブルに置かれていたカツ丼に手を伸ばす真緋呂。

「あなた、当たり屋ですよね? この周辺でぶつかられて慰謝料請求されたという事件がありまして。その犯人が、当屋さんに似ているそうなんですよ」

 捜査資料を見ながら詰問したのは制服姿の警官――と見せかけて悟志。
 刑事の1人が首を傾げながらおずおずと尋ねる。

「あのー、おたくどこの署のヒト?」
「今は久遠ヶ原学園所属の撃退士です!」

 反射的に敬礼する悟志。

「ミハイル殿、誤解してフルボッコにした事については謝るでござる……」

 土下座するエイネ。

「だからぽちを飼ってもよいでござろう…?」
「おかわり」

 もぐもぐしながら空のどんぶりを突き出す真緋呂。

 わいわいがやがや。
 喧しい光景に、刑事達は机に両肘をついて頭を抱えていた。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: Eternal Wing・ミハイル・エッカート(jb0544)
 バイオアルカ・瀬波 有火(jb5278)
 あなたへの絆・蓮城 真緋呂(jb6120)
重体: −
面白かった!:8人

Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
久遠ヶ原から愛をこめて・
天険 突破(jb0947)

卒業 男 阿修羅
バイオアルカ・
瀬波 有火(jb5278)

大学部2年3組 女 阿修羅
撃退士・
エイネ アクライア (jb6014)

大学部8年5組 女 アカシックレコーダー:タイプB
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
一期一会・
若松 匁(jb7995)

大学部6年7組 女 ダアト
熱血刑事・
不二越 悟志(jb9925)

大学部6年255組 男 ルインズブレイド
神経がワイヤーロープ・
ファリオ(jc0001)

中等部3年3組 男 アーティスト