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マスター:水音 流
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/11/26


みんなの思い出



オープニング

●12:00
 逮捕されたゲインが収監されている、撃退庁の施設。

 ――爆発

「なんだ今のはー!」
「し、収監区画で火災です!」

 モニターに表示されたレッドアラートを見ながら、職員の1人が叫ぶ。撃退庁所属の撃退士バック・ジャウアーは、大慌てで現場へと走った。
 黒煙の壁を押し退けて拉げた扉をくぐると、壁に開いた穴から外へ逃げようとしている人影が2つ。
 即座に拳銃を抜くバック。

「止まれ動くんじゃないー!」

 銃口を向けて叫ぶ。
 足を止めて振り向く2人。それは脱走したゲインと、この施設の男性職員だった。
 バックの姿を見て、口元をククッと歪めるゲイン。

「撃ちたければ撃つがいい。無論、大人しく当たってやるつもりは無いが」

 瞬間、ゲインが隠し持っていたスイッチを押す。バックと彼らの間に位置する天井が爆ぜ、降り注いだ瓦礫が射線を塞いだ。
 苦し紛れに放った銃弾はゲインに届かず、しかしその内の1発が職員の腿に命中。

 小さく呻いて蹲る職員。

「ちぃ!」

 足手まといになると判断したゲインは彼を見捨て、1人黒煙の向こうへと姿を消した――……


●12:30
 ――取調室

「なぜ奴を逃がした」

 机を挟んで対面に座る眼鏡の男性職員へと問うバック。
 両手を後ろで縛られ、応急処置された腿の疼きにも耐えながら、職員は首を横に振る。

「俺は何も喋らない。弁護士が来るまでな」
「いやダメだ弁護士は呼ばない」
「俺には弁護士を雇う権利がある!」
「落ち着くんだ。そういえば昼飯の時間だったな。お前も腹が空いたんじゃないか?」
「……」

 こくりと頷く職員。
 バックは小さく笑うと、カチカチに凍ったパ●コを一袋取り出した。開封し、カフェラテ色のそれを2つに割――らずになんと1人で一気食い。

「!?」
「誰がお前にもやると言った」
「パ●コは2人居たら半分こにするのが常識だろうバック!? いやそれよりも、半分に折らないでそのまま食べるなど、パピ●に対する冒涜だ…!」

 縛り付けられたまま、ガタガタと椅子を揺らす職員。

「情報をあらいざらい吐けば、きちんと半分こにしてやる」

 もう一袋取り出して見せ付けるが、職員はフーフーと鼻息を荒げてそっぽを向いてしまった。
 ふと、暴れた弾みで掛けていた眼鏡が中途半端にずり落ちる。視界が歪んで、落ち着かない。

「大変そうだな。直してやろう」

 言いながらバックは、徐にポテチの袋を開封。素手で摘んで食べた後、そのままその手を職員の眼鏡へと伸ばす。

「お、おいばかやめ――」

 レンズべちゃあ

「ぬあああああ!」

 ガタン!と椅子ごと床に倒れてもがく職員。

「正直に話せばレンズを拭いてやる」

 ウェットティッシュを見せるが、職員は頑として従わず。するとバックは、今度はカセットコンロでサラダ油を熱し始めた。
 職員の顔から眼鏡を外し、片栗粉、卵、パン粉が敷き詰められた皿の中へ眼鏡を浸ける。

「いいか。今この油の温度は180℃もある。どういう事か分かるな?」

 俺に揚げさせるな。
 だが、職員は黙って歯を食い縛ったまま。

 業を煮やしたバックは、下拵えでモチャモチャになった眼鏡を職員の顔に戻しながら胸倉を掴み上げた。

「こうしてる間にも奴はまた爆弾を持ってどこかを襲おうとしているー! 言えー! 奴と何を取引したー! 奴と一緒にどこへ逃げるつもりだったんだー!!」

 コンコン ガチャ
 その時、取調室のドアを開けて1人の鑑識官が入ってきた。

「バック、ちょっと聞いて欲しいことが」
「あとにしろ尋問中だー!」
「例のチャーハンの件です」
「……」

 するとバックは職員からゆっくり手を離し、部屋の隅へと移動して小声で話を始めた。

「チャーハンの分析結果が出たのか」

 先の事件でコンビニを襲ったゲインを捕縛する際、学園生の1人が手配した猫鍋亭の出前チャーハン。
 先んじて食したその女子生徒は悪魔かつ撃退士であったにも関わらず、食べた瞬間に胃をやられて行動不能に陥っていた。

「それが、何もおかしなところは無いんですよ」
「じゃあ何故あの学園生の少女は胃が爆発した」
「全くの不明です。化学的な分析データを見る限り、他の者が食べても危険は無いと思われます」

 それどころか、出前仕様のものだったので冷めても美味しい。

「これはあくまでも私の推測ですが、過去にあのチャーハンの原型を初めて食べた時に想定外の物理的事象が重なり、チャーハンとの間の因果時空が彼女だけ捻れてしまっているのではないかと」
「物理的事象?」
「ええ、プレイングとかダイス判定とか(メタァ」
「……そうか。わかった、ありがとう」

 鑑識官はバックに頷きを返し、部屋を出ていく――

「いや待て」

 寸前、バックがそれを呼び止めた。

「そのチャーハンは、いま手元にあるか」
「はい、ここに」
「貸してくれ」
「構いませんが、どうするんです?」
「殺人チャーハンだと言って奴の口に突きつける」

 ヒソヒソと、椅子に縛り付けたままの職員をチラ見する。

「でも、ただの美味しいチャーハンですよ?」
「奴はそれを知らない」

 そう言ってバックは、皿ごとラップに包まれているチャーハンを受け取って、再び職員へと詰め寄った。

「今からお前にある映像を見せる」

 モニターに浮かび上がったのは、コンビニの防犯カメラ映像。
 チャーハンを食べた瞬間、口から黒煙を噴いて倒れる撃退士の少女が映っている。

「これはその時のチャーハンだ。分析チームが調べた結果、あれから日数が経過して更に危険な毒気を放っているという化学的証拠が出た」

 がたがたと震え始める職員。

「食べれば一口で胃が吹き飛ぶ。アウル能力者でもないお前が食えば、助かる見込みは無いだろう」

 顎にシワを寄せ、唇を歪めながらベソを掻く。

「はやく言うんだー! こいつを食わされたいのかー!」

 その時、バックのポケットで携帯が音を立てた。

「はい、ジャウアーです。……わかりました」

 ピッ、と通話を切る。

「何だよ、何の電話だバック」
「……久遠ヶ原学園は知っているな」
「それが何だ」
「俺の上司が、そこの学生達を呼んだ」
「!!」
「お前がさっさと口を割らないからだ。……お前も知っての通り、連中はスペシャリストだ。その拷問は熾烈を極めるだろう」
「いやだ、バック! 頼むやめさせてくれ!」
「これはお前が自分で招いた事だー! どうしようもないー! だが今すぐにゲインの居所を言えばまだ間に合うー!」

 震えながら俯き、それでもフルフルと首を横に振る男。

「……残念だ」

 バックは職員の肩についていた埃をそっと払い落としてやってから、部屋の隅に立って学園生の到着を待った――


リプレイ本文

●13:00
 バクダンテロ? ナニソレ?
 事情を聞いたグラサージュ・ブリゼ(jb9587)は、はてと頭に疑問符を浮かべる。

「テロって言ったら今はスイーツテロでしょ♪」

 私はスイーツテロで文化祭グルメ部門準優勝まで登りつめたの! テロだけど!
 甘いものは正義! 甘いもの好きに悪い人はいないの! テロだけど!
 だから甘いもの好きになっちゃえばいいのだー♪ テロだk

「というわけでイチゴパフェテロ部隊長、グラ行きま〜す♪」

 言いながら、明後日の方向へ走り去るグラサージュ。材料取ってきます。
 対して、仏頂面で唸る武田 誠二(jb8759)。

「自白させる、か…拷問とかか? 難しそうだな…」
「情報吐かせるなら……指折り?」

 首を傾げたのは、絶対に妥協しない女シエル・ウェスト(jb6351)。
 拷問といえば指。アルマゲドンが到来しようと、私は絶対に妥協しないでありまs…え? 蔵倫?

「拷問はさすがに駄目かぁ……」

 たまに妥協する女シエル・ウェスト。
 一方、ヴェス・ペーラ(jb2743)はバックからチャーハンの鑑定結果を聞き、

「チャーハンとの間の因果時空が私だけ捻れてしまっているって、そんな因果放り投げた…いやもしかして」

 何やら思いつき、チャーハンの創造主である芳野 絵美に電話を掛けた――


●13:10
 取調室に入り、藻部田の前に立ったのはディザイア・シーカー(jb5989)。

「黙秘とは…無駄なことを」

 キリッとした顔で、いそいそとエプロンを着始める。
 コンロの火を点け、

「早く吐いちまうんだな…他の連中は、俺ほど甘くないぜ?」

 取り出したのは“アジ”と“コアラのマ●チ”と“鶏肉”。
 “死んだ魚のような目”で“睡眠”を欲して“中学時代に空を掴みたがっていた”藻部田の眉がピクリと反応する。

 熱した油にアジ(以下略)を放り込むディザイア。

「コレが、お前の末路だ…」
「お、おどど、脅しには、屈指ななない」

 するとディザイアは彼の鼻先で南蛮酢を煮込みだす。マジ臭い。

「ククク、耐え切れまい? さぁ、吐くんだ!」
「ゴボボー!!」

 色々吐いた。ただし情報以外。
 一旦退室するディザイア。廊下で待機していたバックが様子を尋ねる。

「どうだ?」
「しぶとそうだな」

 その時、ディザイアの携帯に着信。エリスだ。
 彼は、取調室のドアを開けてわざと藻部田に聞こえる声量で電話に出た。

「ああ、お嬢か? どうだ、予定通り行けそうか? …そうか、助かる」

 藻部田を見ながら、

「喜べ、お前の為に彼女が来てくれるそうだ」

 楽しみにしてろ、と宣言した。
 また、幸村 詠歌(jc0244)も――

「おっと、今回の私は幸村 詠歌ではない。火消しの稲妻、プリヴェンター・ライトニングだ」

 ――ライトニングも、オペ子と電話。

「例の物の状況は」
『突貫作業でやっています』
「私は我慢弱い」

 そんな中、眼鏡のおっさnもとい誠二は、廊下の隅で愛用の人形(※魔具です)を膝に乗せながら、ときめきエリュシオンで遊んでいた。
 そのソフト、女性用って書いてあるけど大丈夫か――


●13:15
「撃退庁職員格付けチェックの時間がやって参りました」

 取調室に入る玉置 雪子(jb8344)。
 プリンセスドレスにスノークリスタルティアラ、ハイヒール。ベリッシモ豪華なスタイルで華麗に参上。

「雪子は一流の撃退士ですしおすし。一流が一流の格好をするのは当たり前なんですがそれは」※あくまでも自称です。番組への苦情はご遠慮ください。

 一流の雪子様は椅子に縛られたままの藻部田を見下ろし、

「それにひきかえこの男は、無い見栄を張るために何て言い残して渡米したかと思えば『NO MUSIC, NO LIFE(キリッ』だってお!」

 爆笑しながら机バンバン。

「かと思えば今度は悪魔に手引きして…文集書いてた頃から今までずっと厨二病引きずってたんジャマイカ?」

 ぷるぷると震える藻部田。

「そもそも公務員という事実自体が怪しい件。とすれば藻部田ンゴは天魔のスパイの可能性が微レ存。とすれば貴様は天魔も同然だなー! 弁護士なんて呼ぶ間も無く撃退してやるー!!」

 そうでなければ一流の撃退庁職員ということを証明してくだしあ。

 直後、雪子様は藻部田にアイマスクをパイルダーオン!
 匂いも分からないよう、鼻の穴に向けて香水をブレストファイヤー!

「ゼーーーット!?」

 藻部田の悲鳴。
 そして雪子様が取り出したのは2種類の焼きそば。

「レンジでチンしたのでほっともっ●焼そば…略してホモ焼そばですね」

 先日の久遠ヶ原文化祭で出店された屋台の焼そばと、ただの焼そば。
 当然、撃退士に関わる一流の撃退庁職員なら味だけで見分けられるはず。

 が、嗅覚まで潰された藻部田は正解できず。
 続く第2問はチョコバナナ。

「美男の多い撃退士に関わる以上は一流のフェr――」

 瞬間、CG処理を施されて雪子の姿が画面から消える。
 蔵倫一発アウトで、映す価値なしへとランクダウンしてしまったようだ。一流とは何だったのか。

 取調べ役が居なくなり――

\まだちゃんとここに居るんですわ? お?/

 ――映せない撃退士しか居なくなり、代わりに入室したのはシエル。

「バックさんにパ●コ食べさせてもらえなかったようですな。代わりといっては何ですが……」

 目隠しされたままの藻部田に鰻の天ぷらを食べさせてやる。

「今食べたのはアナゴの天ぷらではなくウナギの天ぷらです。珍しいでしょう?」

 次いでスイカを取り出し、藻部田の口にIN。
 彼が飲み込んだのを確認した後、

「そう言えば……天ぷらとスイカを同時に食べると消化不良を起こすんでしたっけ?」
「?」
「今のはスイカであります」
「!!」
「一応、正露●ならありますが……」

 欲しければ情報を吐け。
 が、藻部田は拒否。

「なら次は梅ジュースであります」
「ちょ、確かさっきの天ぷら……」
「食べ合わせでは有名所ですよね? 確か……梅とウナギを同時に食べると死んでしまう、とか」
\ちょとsYレならんしょこれは…?/

 映す価値なし撃退士も合いの手を入れる。
 咄嗟に口を閉じる藻部田。だがスパウト付きパウチに入ったジュースを取り出したシエルは、吸口部分を彼の鼻穴にぶっ挿し。

「3カウントであります。ひとーつ」

 ぶしゃあ!

 1カウントだった。

「咽頭で繋がってるんです、口も鼻も同じですね」

 マジキチスマイルの女シエル・ウェスト。
 鼻ツンと恐怖に震える藻部田を残して退室。ドアを閉める。

「ウナギと梅の食べ合わせなんて迷信なんですがねぇ……」

 化学的根拠無し。
 でも天ぷらとスイカはマジらしいから、良い子はマネしないでね!


●13:25
「今からお前に動画を見せる」

 藻部田のアイマスクを外しながら、自分の携帯を操作する誠二。
 内容は、学園内のカップルや既婚者への赤裸々惚気インタビュー。

「ちょ」
「お前が口を割るまで止めない」

 瞼はセロテープで留めて強制視聴。目が乾かないように目薬ぽちょり。
 が、一向に動画が始まらない。

 おかしい。
 誠二は一緒に画面を覗き込みながら2倍速ボタンぽちぽち。
 するとようやく映像が切り替わり、誠二は再生速度を元に戻した――

『えー、インタビューですかぁ? いいですけどぉ、あなた誰ぇ?』
『ほら、オペ子ちゃんのところの記録官さんだよ』

 こくりと頷くカメラ。

『や〜ん、たっくん物知りぃ〜』

 チュ☆

『ハハッ、こらこら。記録官さんが見てるじゃないか』

 チュ☆

『たっくんこそ〜。もうえっちぃ〜』
『おっと、ついいつもの癖で。悪い悪い』
『も〜。でも今のチューも上手だった、ぞ☆』

 唇つんつん。

「「カハッ!」」

 瞬間、誠二と藻部田とMSは目と耳と口から血を噴いて動かなくなった。


●13:30
 頬を叩かれて藻部田が目を覚ます。ディザイアが立っていた。

「待たせたな。お前の彼女になってくれそうな美人が来たぞ」
「えっ?」

 やつれた顔を輝かせる藻部田。
 ディザイアがドアを開けると、入ってきたのは金髪ツインテールのゴスロリ少女――ではなく、その後ろに居た筋骨隆々のオカマだった。

「という訳で、本命のキャシーさんです!」
「あらぁ、可愛い子じゃなぁい!(ごっつい声」

 やつれ気味でナヨっとした所が母性本能をくすぐられる、と燥ぐキャシー。

「良かったな、彼氏と彼女が一遍に出来たぞ!」

 藻部田の肩に手を置くディザイア。
 もげそうな勢いで首を横に振る藻部田。

「彼女を止めれるのは俺だけだ…吐くなら、今の内だぞ?」

 藻部田はただ一言、

「チェンジで」
「なによ! 失礼しちゃうわね!(火山ボイス」


●13:35
 だが藻部田もそろそろ限界のはず。
 畳み掛けるべく、樒 和紗(jb6970)とヴェスに続いて全員で再度部屋に入り圧力を掛ける。

 和紗が手にしたのは、藻部田の卒業文集。
 無表情で淡々と読み上げる。

「今の俺には、まだ届かない。だがいつか必ず掴んでみせる、あの空を。だから今はただ、がむしゃらになってこの汚れた羽を強く振り続ける」
「いやあああ!?」

 のたうつ藻部田。黒歴史ドカ抉り。
 するとヴェスが彼の肩にそっと手を置き、

「貴方の羽――叶わぬと知りつつ望む夢や世界が幸せに見える嘘――の中に、未来も仲間に加えてあげて下さい」
「やめてえええ!?」

 純粋に諭すつもりだったが、傷口に塩。だがかなり効いている。

「そんなに叫ぶと喉が渇きませんか?」

 和紗が荷物の中からダイエットコーラを取り出す。
 と、屈んだ拍子にポケットから何かが落ちる。

「おや、何故かメ●トスが」

 せっかくです、まずは此方をどうぞ。
 藻部田の口に5粒ほど捻じ込んで飲み込ませる。

「そう言えば、メン●スガイザーなる現象がありましたか。確かダイエットコーラが1番噴出が高いとか2.5m行くとか、破裂するとか…」

 いえただの世間話ですさあコーラをどうぞ遠慮せずに。
 ボトルの口を藻部田の口に捻じ込んでガボボ。
 刹那、茶色い噴水がゴボボブシャー。

 まだ息がある。なかなかしぶとい。

「そのしぶとさを別の方向に発揮して欲しいものですね」

 和紗は休む隙を与えず、徐に弓と矢を手にし、

「ここに1本の矢があります。1本だけでは細く頼りなく――」

 ヒュンッ ドス

「――しかし狙い易い。そこで矢を3本にすると頑丈になり――」

 ヒュヒュンッ ピッ ドドス

「――ますが、難易度があがる」

 真顔。
 掠めた藻部田の頬に赤い筋が出来ていた。

「べ、べべべ、弁護、弁護士を……」
『もしかして――』

 不意に、ヴェスが藻部田の頭に透過で手を差し込みながら意思疎通で語りかけてきた。

『こんな風にゲインに頭の中へ直接話しかけられたり、体の中に何か入れられたりしましたか? これは思念会話ですのでゲインが何らかの手法で貴方の見聞きする事を監視していても、貴方の思念が読めない限り感知はできません』

 だが、藻部田はこれを否定。
 自白する気は無いが、嘘をつく気も無いらしい。だが、

「――更に矢の数を10本にすると、超頑丈になります。そして難易度も鬼のように跳ね上がり、俺も流石に当てると思います」

 和紗が矢を番えて超真顔。
 やっぱり、そろそろ自白しようかな…いやしかし……

「長い時間弦を引いていますと腕が疲れますので、喋るならお早めに。ああ、そろそろ限界かもしれません」

 腕がぷるぷる。モウダメダー。
 直後、暴れ飛んだ矢が仲間達にも降り注ぐ。

 心眼は鍛えている、と剣で切り払うライトニング。
 黄色工事帽を被ってガードするディザイア、エリス、キャシー。
 バックに盾にされる誠二。
 スコンッ、と頭に刺さってぺこ顔になるシエル。
 尻に刺さるが画面には映らない雪…雪…雪なんたら。
 何とか全員無事なようだ。

 が、一同が顔を上げると、なんと藻部田に1本深々と突き刺さっていた。

「医療班ー!」

 叫ぶバック。だが入ってきたのは、

「呼ばれて飛び出てニーハオー」

 究極チャーハン入りの岡持を下げた芳野 絵美だった。

「いいところに」

 ヴェスは右手のレンゲでチャーハンを掬い、左手で藻部田に刺さった矢を掴む。
 本当は藻部田の中に仕込まれているかもしれなかった爆弾等に対して試すつもりだったが、因果時空が本当に捻れているのだとしたら、この矢を自分の身体の一部だと強く念じながらチャーハンを食せばもしかしたら――

 ぱくっ
 ボンッ

 瞬間、ヴェスの胃が爆ぜる。
 同時に、藻部田に刺さっていた矢は『刺さっていたという事実ごと』消滅した。


●13:45
 殺される。
 藻部田が自白との天秤に揺れ始めたその時、現れたのは帰ってきたグラサージュ。
 見るだけで胸焼けしそうな量のイチゴパフェを持っている。

「甘いもの食べるとハッピーになれるですよ〜♪ はい! どうぞなのです〜!」

 拘束されているのをいい事に、藻部田の口に次々と押し込む。

「どうです? 善人になりました? まだです? まだ甘さが足りないです? どんどんどうぞ〜♪」

 無尽蔵のスイーツ。
 殺される。

「私のスイーツ食べれないなんて言わないですよね♪ ね♪ 食べますよね♪」

 更に詰め込み。
 極めつけはホワイトキュラソーたっぷりのケーキ。それを炎焼スキルでフランベ!

「燃え盛るケーキの出来上がり〜♪ 本日のメイン、フルーツケーキです♪ さあどうぞ〜!」

 炎の塊を口の中へ。もちろんアツアツだ。

 ジュッ

「もしかして火傷しちゃったです?」

 グラサージュは小首を傾げながら慌てて氷結晶で氷塊を作り、藻部田の口内に捻じ込む。
 これで安心。

「で、なんで脱走のお手伝いしたです?」

 今思い出したとでも言うように尋ねる。が、藻部田の口はそれどころではなかった。
 その時――

 ブオー

 掃除機の排気音。

「待ちかねたぞ!」

 叫んだのは詠kいやプリヴェンター・ライトニング。
 ドアを開けると、そこにはロペ子が居た。何やら両肩にバインダーが増設されている。

「今回、自白に使うのはロペ子ライザーだ」

 HK(ヒヒイロカネ)ドライブのアウル粒子で意識共有フィールドを展開すれば、口が利けなくとも問題ない!
 というわけで起動ボタンぽちっとな。

「さぁ! お前は何故、脱走の手助けをした?! 何の目的で協力した!? 答えろぉー!!」

 ロペ子から噴き出したアウルの輝きが、世界(取調室)を満たす。
 心が邂逅する中で、ふとMSの声がした。

『ごめんね。雑記でウインドとライトニング間違えてごめんね』

 だが、いま彼女が欲している真相はこれではない。
 知りたいのは――

『……金が欲しかったんだ』

 藻部田の声。
 まとまった金をくれると言うゲインの言葉に、つい魔が差した。

『あいつは24時間以内に、ブローカーと会うと言っていた』

 爆弾の材料を扱っている闇商人。場所はファミレス。
 ただし、正確な時間までは知らない。

 共有空間終了。

「24時間以内だとー!」

 時計を見るバック。
 相手は既に動き出している。

「今すぐファミレスへ向かうんだー!」

 ヴェスを揺さぶり起こし、一同は特殊部隊を率いてファミレスへと急行した――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 『楽園』華茶会・グラサージュ・ブリゼ(jb9587)
 火消しの稲妻・幸村 詠歌(jc0244)
重体: −
面白かった!:9人

スペシャリスト()・
ヴェス・ペーラ(jb2743)

卒業 女 インフィルトレイター
護黒連翼・
ディザイア・シーカー(jb5989)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプA
久遠ヶ原から愛をこめて・
シエル・ウェスト(jb6351)

卒業 女 ナイトウォーカー
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
氷結系の意地・
玉置 雪子(jb8344)

中等部1年2組 女 アカシックレコーダー:タイプB
撃退士・
武田 誠二(jb8759)

大学部7年118組 男 陰陽師
『楽園』華茶会・
グラサージュ・ブリゼ(jb9587)

大学部2年6組 女 アカシックレコーダー:タイプB
火消しの稲妻・
幸村 詠歌(jc0244)

大学部2年201組 女 阿修羅