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マスター:水音 流
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2014/10/08


みんなの思い出



オープニング

 コンビニは24時間365日営業中。
 雨が降っても槍が降っても営業中。

 つまり、天魔に襲われていても営業中――


●07:00
 ――カーテンを閉め切った手狭な空間。

「フフ、できたぞ……完璧だ」

 スタンドライトの小さな明かりだけが灯った薄暗い部屋の中、デジタルタイマーを繋いだ爆薬を眺めて1人悦に入る悪魔が居た。

 爆弾は素晴らしい。
 派手な音、煌びやかな炎、豪快な破壊力。魔力とは違う物理的なその暴力は、もはや芸術的ですらある。
 人界に来て初めて“それ”を目にした時、心が震えた。この気持ち、まさしく愛だ。

 独学で試行錯誤を繰り返し、ついに完成した手製の爆弾。
 さっそくその威力を確かめるとしよう――……


●01:00
 ――日付が変わった深夜。

「いらっしゃーせーこんばーあー」

 出入口の自動ドアが開いて入店音が鳴り、レジに居た若い店員が慣れすぎた口調で挨拶を飛ばす。
 入ってきた客の男は真っ直ぐにレジカウンターへとやってくると、

「全員今すぐ俺の言う通りにするんだー!」

 突然、拳銃を抜いて怒鳴った。
 店員が両手を挙げ、買い物や立ち読みをしていた客達もその場で固まる。

「心配するな俺は撃退士だー! この店に爆弾が仕掛けられているという情報を入手した、それを探し出したいー!」

 撃退士を名乗った男――バック・ジャウアー――は、店員に銃口を向けながら店内をぐるりと一望。犯人が変装している可能性を危惧して、油断無く一同を睨みつける。
 すると、恐怖に駆られた客の1人が出口めがけてダッシュ。

 バックは咄嗟に後ろから飛び掛ってその客を組み伏せ、

「なぜ逃げたー! さては貴様テロリストの一味だなー!」

 手錠で縛り上げ、店内奥にあるお弁当コーナー前まで引きずっていきボディチェック。免許証やら保険証やらを照合した結果、その客は間違いなく無関係の一般人だった。

「すまない。約束する、大人しくしていれば危害は加えない。俺は爆破を阻止したいだけだ」

 手錠を外してやりながら他の客へも視線を向けた後、彼は店員へと尋ねる。

「この店に今日届いた荷物はあるか」
「宅配サービスで預かったのがいくつか置いてありあすけどー」
「全部見せてくれ」

 店員がスタッフルームに保管されていた小包を持ってくると、バックは有無を言わさず封を剥がしていく。するとその内の一つから、既にカウントダウンが始まっているデジタル時計付きの金属箱が出てきた。

「これだ間違いないー!」

 タイマーは残り6時間。
 ちょうど通勤前の買い物客で店内の混み具合がピークになる時間帯だ。

「おきゃっさま避難させたほーがいっすかね?」
「いや駄目だ爆弾を見つけた事を犯人に気づかれるー! 誰も店から出すんじゃないー!」

 遠隔スイッチで今すぐ起爆されるとも限らない。

「誰も出入りしなかったら、それはそれで不自然じゃないっすか?」

 店員の疑問に、バックは鼻をすすってしばし考えた後、

「いや心配ないコンビニは24時間営業だ。全員雑誌コーナーで立ち読みさせろ、爆弾は俺がスタッフルームで解体する」

 幸い、あまり精巧そうな爆弾ではない。

「新しいおきゃっさまが来たらどーしたらいっすか」
「それは帰しても大丈夫だ。ただし気取られるなよ、騒ぎが漏れて犯人に気づかれるとまずい。とにかく今居る客は外に出さず、君は普通に接客を続けろ」


●01:30
「よし、これでタイマーは止まった」

 最後のコードを切り、バックは額の汗を拭って工具を置いた。だが、まだ起爆装置そのものが無効化できたわけではない。犯人がスイッチを押せば、今この瞬間にも爆発してしまうだろう。
 その時、監視カメラのモニターに新たに入店してきた人影が映り、彼は注意深く画面に目を向ける。

 キャップを目深に被り、プラスチック製のコンテナを積んだ台車を押しながら入ってくる男。

「まさか追加の爆弾かー!」

 バックは拳銃を抜きながらスタッフルームから飛び出し、男に銃口を突きつけた。

「そこまでだ動くんじゃないー! コンテナの中身は何だー!」
「な、何だあんた!? 私はただ、いつも通り入荷商品を搬入しに来ただけだ!」

 万歳する男に右手で銃口を向けたまま、左手でコンテナの蓋を開ける。中にはスナック菓子やカップ麺、日用品等が詰まっていた。
 レジに立っていた店員も、「いつもの運送業者さんだ」と頷く。弁当やパン以外の商品は、いつも夜中のうちに補充が行われるらしい。

 ふー、と深呼吸しながらバックが銃口を下ろす。だが――

「爆発まで時間があるから暇潰しに見に来てみれば、とんだ邪魔者が居るようだ」

 不意に声が響き、バッと銃を構え直して振り返る。
 天井を透過して1人の悪魔が降りてきた。

「貴様が犯人かー!」
「おっと動くなよ撃退士」

 銃口を向けたバックに、悪魔――ゲイン――は商品棚に並べられていた小さなスナック菓子を複数手に取って見せる。
 うま●棒。

「コイツがどうなっても良いのか?」
「貴様なにをするつもりだー!」
「スナック菓子が潰れ易いというのは知っているな? 俺がちょっと手に力を入れればコイツは粉々だ。そうと知らずにコイツを買って封を開けた客は、いったいどれほどの怒りと絶望を味わうか……」
「何だと!? おいよせやめるんだー!」

 バックが拳銃の撃鉄をチキリと起こす。

「わかったら銃を置け撃退士」
「貴様こそ撃ち殺されたくなかったら、今すぐうま●棒から手を離すんだー!」
「そうか。残念だ」
「よせやめろー!」

 みしみし、ぐしゃあ!

「くそおぉぉぉぉ!!!」
「「なんてむごい……」」

 絶叫するバック。
 顔を覆う従業員と客。

「次は2本目だ」
「わかった銃を置くー! だからやめるんだー!」

 刹那、バックはガシャンと拳銃を手放して両手を頭の後ろで組んだ。
 ゲインは、バックの持っている手錠で彼と運送屋を拘束するよう店員に指示。

「許さんぞ貴様ー!」
「バック・ジャウアーとか言ったな。お前のせいで計画が台無しだ」

 買い物客から見えないように2人をレジカウンター内の隅に座らせると、ゲインは店員にいつも通りレジに立つように命じ、雑誌コーナーに居た客達にも「店から出るな」と釘を刺す。

「爆弾を外に捨てられては堪らんからな。店が混み出すまで、ここで見張らせてもらうとしよう」

 スタッフルームにあった爆弾を目立たないように箱に戻し、見える位置――カウンターの奥にある店員専用の電話機の横――に置く。
 その後、うま●棒と起爆スイッチを握りしめたまま、弁当コーナーを物色し始めるゲイン。

 こっそりと……

 偶然トイレに入っていた客の1人が、ドアの隙間から店内を窺いながら携帯で斡旋所の番号を呼び出していた――


リプレイ本文

●2:00
 ヴェス・ペーラ(jb2743)は万が一に備え、ある知人に増援を要請していた。

 トゥルル ガチャ

『ふぁい…もしもしぃ……』

 寝起き声で電話に出たのは中華飯店『猫鍋亭』の従業員、芳野 絵美。

「絵美さんの力が必要です」
『わかったチャーハン作るよ!』

 友の呼びかけに絵美覚醒。
 ヴェスは電話をしまい、一同と共に作戦を開始した。



「こちらヲターク――オペ子ちゃんにみっく●クなコスをして欲しい欲を持て余すで御座る」
『ネギを振り回すのは吝かではないです』

 源平四郎藤橘(jb5241)のイヤホンに、オペ子が通信を返す。

「それにしても、コンビニで御座るかぁ……我ら独身貴族の頼もしい相棒で御座るなぁ」

 あれ、目から汗が。
 四郎は塩味をぐっと堪え、ヴェスと共に透過してスタッフルームへと潜入。

 ヴェスは索敵スキルを絡めて陰から店内の状況を肉視。スマホのメールで仲間達へ伝達。

 一方、四郎は空の段ボールを発見。欲求を抑えきれずに、ひっくり返して被る四郎。そのままズリズリと地面を這い、監視カメラのモニター前へ。

「さぁワイリヤバい祭りの開催で御座るぜ。オラワクワクシテキタゾ」

 今日は語学の授業はお休みだ。


●2:10
 私は 犯人を 許しません
 何故なら この店には 今


 季節限定リンゴタルトが売っているからです


 潜入班の合図を受け、パウリーネ(jb8709)が正面から突入。その方法とは――

「宜しいか! コレは爆弾だ!」

 強盗のフリ。

 入店するなり、ただの空箱を掲げて吼える。

「一度爆発すれば周囲にヤバめの毒を振りまく、ヤバい系のな! ねぇ! 聞きたい? 毒の構造とか、聞きたい!?」
「いや、別に」

 店員と客が万歳しながら返事をする。
 にょろ〜んと消沈しながらも、彼女はすぐに気を取り直してレジに詰め寄った。

 我輩は本気だ、と叫びながら売り場のブラ●クサンダーを1つ手に取る。乙女に大人気。
 直後、それをぐしゃあ!と粉砕。

「林檎と林檎を用いた商品をあるだけ出せ! ………忘れてた。ついでに金! WebM●neyを買い占めさせろ!」

 作戦に託けて大金ゲッtげふげふ。


●2:15
「僕アルバイトォォォ!」

 深夜の歩道で1人絶叫する玉置 雪子(jb8344)。コンビニ強盗と聞いて叫ばずにはいられなかった。
 だが周りには誰も居なかったのでリアクションは無し。

(ちょとsYレならんしょこれは…?)

 ぼっちという現実から目を逸らす為、雪子は光纏。

 over-clock.exeでとんずらを使って普通ならまだ付かない時間できょうきょ現着。
 「もうついたのか!」「はやい!」「きた! コメディきた!」「メインコメディきた!」「勝てるわきゃねえだろぉぉっ!!」と大歓迎状態だった。

「…おいィ? お前らは最後の言葉聞こえたか?」

 「聞こえてない」「何か言ったの?」「雪子のログには何もないな」

 ――ここまで全部雪子の自演――



 フヒヒ、と脳内で妄想を繰り広げながら天使形態の雪子が入口前に立ったその時、リンゴタルトをバリムシャしながらWebM●neyシートを握りしめたパウリーネが飛び出してきた。

 衝突。
 しかしパウリーネは謝るどころか、

「其処の君…何か言いたげだね?」

 「お? お?」と下から雪子を睨める。だんだん楽しくなってきた。

 それに対し雪子はsnow-noise.exeで吹雪を纏い、強敵感を見せ付けてやる事で無謀な喧嘩だと諭す。
 だが相手が引き下がらないので、ここでエアロバーストを使用。怪我をしないように優しく吹き飛ばしてやった(この辺の心配りが人気の秘訣)。

 吹き飛んだカマセ…もといパウリーネを他所に雪子入店。すると、

「お前、撃退士か」

 ゲインがうま●棒と起爆スイッチに指を掛けながらこっちを睨んでいた。パウリーネを吹き飛ばす所を見られていたらしい。
 だが雪子は慌てない。

「悪魔さん悪魔さん、あそこに冷凍食品があるでしょ〜?」

 徐に売り場を指差し、

「数分後の貴様の姿だ」

 どやっ

 ガスッ

 殴られた。
 イラッとしたゲインにボコスカと蹴り回される雪子。やめてくださいしんでしまいます。


●2:20
 ヴェス&四郎から雪子ピンチとの知らせを受け、突入するミハイル・エッカート(jb0544)。
 だがまだ犯人に正体を知られるわけにはいかない。考えた結果――

「俺は脱獄犯だ! 食料と金を用意しろ!(威嚇射撃バキューン」

 こうなった。

「言うこと聞かないとお前らもこうなっちまうぜ?」

 ミハイルはうま●棒(納豆味)を1本グシャア!
 しかしそれに一番反応したのは、モニターを見ていた四郎だった。

(手前ぇの血は何色で御座るかぁーっ!?)

 激おこ。
 しかし潜伏中なので声には出せず、ミハイルの横暴?をプルプルしながら見守る。

「分かったらご飯を持って来い!」

 レトルト品をレンジでチンする店員。
 潰したうま●棒を振りかけて食べるミハイル。そこで彼は「ようやく気づいた」というフリで、雪子を踏んでいるゲインの方を見やり、

「おう、強盗の先客がいるのか。丁度良い、手を組まないか? 味方は多い方が楽だぜ?」
「……お前が味方だという保証はあるのか?」
「ないな」
「では証明しろ」

 この天使を殴って見せろ、と雪子を指すゲイン。

(許せ雪子。犯人確保の為だ)

 雪子、アウトー。
 ミハイルは既にボコボコな雪子を壁に向かって立たせると、ケツバットならぬケツキック。身悶。

「ふむ。いいだろう」
「俺はミハイルだ。アンタは?」
「ゲインだ」

 互いに小さく頷いたその時――

「ウオオー! 俺は強盗爆弾魔だ! ついでに撃退士だ!」

 突如、新たな男が入店してきた。


●2:25
 現れたのは伊藤 辺木(ja9371)。
 『爆弾魔』と書かれたタオルを頭に巻き、顔のサングラスには修正液で『強』『盗』の2文字。わかりやすい。
 撃退士とかカミングアウトしてしまっているが、きっと悪い撃退士に違いない。

 彼は「スキルを使うぞ! スキルを使うぞ!」と威嚇しながら、店前に停めた大型トラックを指さす。

「聞いて驚け! 爆弾だ! まいったか! こいつぁ種族関係なく逃げられんぞー! しかもなんかすげぇばくはつするんだぜ! すごいぞ!」

『男の発破は、命の花道』
『この車には爆弾魔が乗っています』
『法定速度遵守車。お先にどうぞ』

 ペイントやら看板やらで豪勢に盛り付けられたデコトラ。

「爆弾だ間違いない」

 戦慄してみせるミハイル。迫真。
 更に辺木は自らの本気度を示す為に、売り場にあった蒲焼●ん太郎とホ●カイロを鷲掴んだ。
 開封して熱々になったホ●カイロで、袋に入ったままの蒲焼●ん太郎を挟む。

 高熱により、包装の中でタレがベッチョリ。

(キサマのその行為、宣戦布告と判断で御座る――覚悟完了当方に迎撃の用意アリで御座る)

 瞬間、モニター前の四郎が激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム。
 それでも声には出せない哀戦士。

 しかしゲインは半信半疑。
 先ほどと同じく、雪子を殴って証明しろと迫る。

(すまねぇ玉置さん。爆弾の為だ)

 雪子、アウトー。
 辺木は散弾銃型魔具を取り出し、銃身を握って雪子の尻めがけてフルスイング。悶絶。

「いいだろう」

 頷くゲイン。だがそこへ――

「いらっしゃーせーこんばーあー」

 店員が、新たな男の乱入を告げた。


●2:30
 ずざざざざ!
 高速で匍匐前進しながら入口をくぐる男。なんか変なの来た。

 男は足拭きマットの上を通過した瞬間、バンッと地面を叩いて跳躍。華麗なクアドラプルジャンプを決めておでんコーナー前に着地し、振り乱した髪をふぁさっと整えて顔を露わにする。
 砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)、その人である。

「おっと動かないでね。この店に爆弾を仕掛けている。全員、大人しくしてもらおうか。言うこと聞かないと……これがどうなっても良いのかい?」

 徐に鍋の中から箸で白滝を摘み上げ、その結び目にナイフを当てる。

「こいつを切れば白滝はバラバラ。掬えない客がどれだけ苛立ちと絶望を覚えるか、わかるよね?」
「強盗だ間違いない」

 証明する為には雪子を(ry

 でも女の子に手を上げるのはよくないよね。そう考えたジェンティアンは、白滝の代わりにがんもを摘み上げてニッコリ。
 ゲインに羽交い絞めにされた雪子へとにじり寄り、その顔に熱々のがんもを――

 べちょり
 じゅっ

 転げ回る雪子。
 一方、ジェンティアンは頷くゲイン達に向き直ると、不意に鼻で笑いながら、

「わざわざコンビニを狙うなんて、この程度のショボイ店しか爆破出来ない爆弾なのかい?」

 自分の事は棚に上げつつ挑発。

「僕の爆弾は凄いよ。もっと派手な場所で勝負といかないかい?」

 売り場のカップ麺をテキトーに手に取り、「カップ麺型爆弾だ」と嘯く。
 するとミハイルが、

「ゲイン兄貴、ここは俺に任せて行ってくるといい。兄貴の爆弾が最高だと知らしめようぜ」

 ――ゲインとその爆弾を店外に誘い出す作戦。しかし……

「今回の舞台はコンビニこそが相応しい」

 一度決めた目標は変えん、と拒むゲイン。

「無論、私は爆破前に店を去らせてもらう。お前達も巻き込まれないようにするが良い」


●2:35
 その言葉を聞き、誰よりも憤る男が居た。

「…貴様、爆弾を作っておきながら共に爆発しないとは!」

 ラテン・ロロウス(jb5646)。
 ガタッと立ち上がり、持っていたティーカップを置いて飛び出していく。スタッフルームから。

 もしかして:ずっと中に居た

「その性根叩き直してくれる!」

 扉をバァンしながら売り場へと躍り出て一喝。
 優雅なティータイムは終わりを告げた! ここからはスーパー救世主タイムだ!

「ゲインといったか。甘い! 甘すぎるぞ! ヌメヌメだ!」

 そもそも爆弾とは造形にも拘らなければならぬのだ。ただの箱など以ての外だ。
 ラテンは電話の横にあるゲインの爆弾を指しながら、もう一方の手を自らの懐に突っ込む。

「私が発注した完璧なフォルムを見るがいい!」

 取り出したのは、ハリセンボンそっくりの爆弾。
 血走った目を見開き、パンパンに膨らんだ腹で「は…弾けるぜ…もうイクゼ…」とぷるぷるしている。

「爆発の威力? そんなもの私は知らん! 事前に分かってしまったら楽しみが減るではないか!」

 プンスカと捲し立てるラテン。その時、手の上のハリセンボンが急激に震え始めた。

「おのれここまでか! だが覚えておくがいい! この世界には私のようなマスタークラスがいる事を! そしてこれまでの行為を悔い改めろ!」

 彼はハリセンボンをむぎゅっと握りしめると、店の外へ飛び出していき――

\サラダバー!/

 ちゅどーん!


●2:40
 場外勝負を持ちかけてきた一同に、疑念を抱き始めるゲイン。
 雲行きが怪しくなってきた。いや最初から色々おかしい気はするが。

 だがその時、一つの好機が訪れる。

「チャーハンお届けに来やっしたー」

 岡持を下げた芳野 絵美が入ってきた。

「何故コンビニに出前が届く」
「お腹が空いたからです」

 訝しむゲインに答えたのはヴェスだった。
 最初から客として居ました、という体で姿を見せる。

「弁当も売っているのにか?」
「絵美さんのチャーハンは天魔も黙るほどの一品ですから」
「いやーそんなに褒められると照れるにゃー」
「ほう?」

 興味を示すゲイン。
 岡持から出てきたチャーハンは2皿。

「よければ半分いかがですか?」

 ヴェスは、ゲインに好きな皿を選ぶよう促す。しかし、

「ヴェスちゃんのはこっちだよー」

 ゲインが選ぶ前に、絵美が皿を分けてしまった。

「ヴェスちゃんの方から食べたいって言ってくれて、嬉しすぎていつも以上に気合入れて作ったよー。爆発する美味しさだよ」

 なにそれ聞いてない。
 想定外の事態に固まるヴェスを見て、ゲインの目が細まる。

「どうした食べないのか?」

 食べられないということは、毒でも仕込んであるのか。
 強まる疑いの眼差し。迫られた彼女は意を決し、

『私が倒れたら、何としてでもこのチャーハンを彼にも食べさせてください』

 道連れが欲しい、と。意思疎通スキルで仲間達に言い残し、レンゲを口に運ぶ。

 ぱくり
 ボンッ

 ヴェスは口から黒煙を吐いて動かなくなった。
 爆発する美味しさェ。

 そしてゲインは――

「おのれ毒入りか! やはりお前達、味方ではないな!?」

 起爆スイッチを押そうと指に力を込めr

「やらせはせんぞで御座る!」

 刹那、スタッフルームから飛び出した四郎が、溶けたまま放置されていた蒲焼●ん太郎を開封して投げつけていた。
 べちょあ!とガムテープ並の粘着力で手に張り付く蒲焼●ん太郎。ゲインは思わず手を振り、スイッチとうま●棒を放り出してしまった。

 瞬間、ミハイルがそれらを足で蹴ってゲインから遠ざける。
 ゲインは咄嗟に弁当コーナーを背にして一同に警告。

「俺を攻撃すれば、後ろにある弁当もタダでは済まんぞ!」

 すると店員が、

「そこにあるの消費期限4時までなんでー、別にいっすよー」
「「……」」

 フルボッコタイム。

「危険な火遊びする悪魔にはお仕置きだぜ」

 魔具やらスキルの大乱舞。
 更にはクライマックスの匂いを嗅ぎつけたのか、雪子に吹き飛ばされて駐車場に転がっていたパウリーネも復活参戦。

「WebM●neyが欲しいと言ったけれど…あれは嘘だ!」

 本当はNET C●SH派! 木・金・土は25人に1人が半額!

 鎮圧完了。
 ヴェスの遺言を思い出した一同は、縛り上げたゲインにチャーハンを食わせようと皿に手を伸ばすが、

「いや駄目だそれは鑑識にまわすー!」

 手を出すなー!とバックに阻まれた。



 一方、床ペロしたまま放置されていた雪子。
 目の前に転がってきた起爆スイッチを見て、うずうず。

「スイッチは押すのが礼儀なんですわ? お?」

 我慢できずにぽちっとな。

 ピーッ

 即爆発……ではなく、停止していたタイマーが再起動。しかも凄まじい勢いで数字が減っていく。どうやら時限加速式だったらしい。
 爆発まで残り10秒。全員オワタ。

 だがこの瞬間、神がかった反応速度を見せた男が居た。辺木だ。

「爆弾ってのは爆発オチに使うためのもんで、こういうことに使うもんじゃねぇ! きっちりわからせてやる! 俺の正しい爆弾愛をわからせてやる!」

 爆弾を抱え、駐車してあったデコトラに飛び乗る。

 デコトラ型爆弾。
 爆発オチを愛する者による爆発オチを愛する者のための爆弾…オールアフロボム! 殺傷力ゼロ! オチ能力最大!
 これでゲインの爆弾を不幸な結末ごと消滅させてやる!

 アクセル全開で遠ざかっていく辺木とデコトラ――

「これが 俺の 魂だぁぁ!」



 カッ!!




















●6:58
「いらっしゃーせーおはーござーす」

 店員が来店した男達を見やる。辺木(アフロ)とミハイルだった。
 斡旋所への報告を終えた2人は、デザートコーナーを物色。スーパーよりもほんの少し割高なプリンを手に取り、レジに並ぶ。

 雨でも強盗でも天魔でも、コンビニは24時間年中無休。
 さあ、今日もまた騒がしい一日の始まりだ。

 ――7:00


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: スペシャリスト()・ヴェス・ペーラ(jb2743)
 あおいりゅうせい・源平四郎藤橘(jb5241)
重体: 自爆マスター・ラテン・ロロウス(jb5646)
   <マジで弾ける5秒前>という理由により『重体』となる
面白かった!:8人

しあわせの立役者・
伊藤 辺木(ja9371)

高等部2年1組 男 インフィルトレイター
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
スペシャリスト()・
ヴェス・ペーラ(jb2743)

卒業 女 インフィルトレイター
あおいりゅうせい・
源平四郎藤橘(jb5241)

大学部7年216組 男 ダアト
自爆マスター・
ラテン・ロロウス(jb5646)

大学部2年136組 男 アストラルヴァンガード
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
氷結系の意地・
玉置 雪子(jb8344)

中等部1年2組 女 アカシックレコーダー:タイプB
大切な思い出を紡ぐ・
パウリーネ(jb8709)

卒業 女 ナイトウォーカー