ビーチに到着した玉置 雪子(
jb8344)。
「熱すぎワロタ」
そこへ放送部のカメラマンがやってくる。画面に映った雪子の姿は――
サッカーボールを抱えたサッカーユニフォーム姿。
「ボールはともd」
「そのネタ、野球の時にやっただろ」
カメラマンの冷たい一言。
「今回は宣伝なので二番煎じじゃないですから(震え声」
雪子はカメラの前で何かのゲームと購買の在庫情報を広げ、
「クオンステーション専用ソフト、茨城サッカー久遠ヶ原イレブン! 好評完売ちゅ――」
「海ー♪ そしてビーチバレー♪ 何か面白い事になりそうなのだ♪」
寸前、白いツーピースビキニを来た元気幼女…もとい焔・楓(
ja7214)が画面の前を横切った。
薬物混入要注意。
そこで樒 和紗(
jb6970)が用意したのは、専 属 バ ー テ ン ダ ー。
「リーゼ、俺の飲み物宜しくお願いしますね」
「てっきり9人目のメンバーにされるかと思ったが」
簡易バーを設置し、ビーチチェアに寝転がりながらノンアルカクテルのストローを銜える和紗。
1人優雅なビーチライフ。
ちなみに水着は藤紫のビキニ。
「紐が解けたりはしないタイプです(キリッ」
「なるほど」
リーゼはシェイカーを洗いながら小さく頷いた。
その頃、コートで黙々と作業する人影があった。
仁良井 叶伊(
ja0618)。
金属探知機を翳すと、ごろごろ見つかる地雷、爆雷、虎バサミ。紛争地域も真っ青なトラップの山を掘り起こす。
戦争と書いてビーチバレーと読む。
殺す気で行かないと勝てない……無茶苦茶ですわ。
(まあ…こっちもそのつもりで、逃げる準備だけはしておきますか…)
「オペ子さんの水着写真集…欲しいな…」
呟いた桜花(
jb0392)は、緑のビキニで参戦。
早速、敵組への工作に動く。
目をつけたのは、年端もいかぬ少年少女。優しいお姉さんを装って、この試合にオトナ達の醜い策略が渦巻いている事を説いて聞かせる。
妨害、裏切り、etc.
「なにそれこわい」
「大丈夫。お姉さんが守ってあげるよ」
ニコリと笑った桜花に安心したのか、子供らはすっかり懐いた様子で彼女に抱きついた。
(よしよしうへへ)
「ぺーちゃんの写真集!? まぁいつものスカシやろ」
俺は騙されんで、と首を振るゼロ=シュバイツァー(
jb7501)。
「騙されん。が、貰うもんは貰う」
斉凛(
ja6571)と共に、主催の海の家へと乗り込み直談判。
「おい、参加賞が何もないんはおかしいやろ」
「小次郎さんのブロマイドが欲しいですの」
「下っ端じゃ埒があかん。ボス(MS)に電話や」
トゥルルル ガチャ
『はーい、水音ちゃんどぅえっす☆』
「俺や」
『この回線は安全か?』
「問題ない」
『よし話せ』
「小次郎ブロマイドよこせ」
『お上の許可がいる』
「頼む今すぐ必要や」
『しょうがないにゃあ。じゃあSDには内緒で今からそっちに――おや、誰か来たようだ。はーい、今出ますよー…って、ロペ子じゃないか。何か用k』
バキューン
ブツッ ツーツーツー
「「……」」
沈黙。
「さ、バレーをしますか」
何も聞かなかった。
ゼロ達はそそくさと戻って行った。
(ふふ…ジャッジの笛が試合開始の合図と誰が決めたの? 試合は競う前から既に始まっているんでしてよ)
ちょっぴり大胆な黒のビキニに身を包み、髪型をツインにしたシェリア・ロウ・ド・ロンド(
jb3671)が不敵に笑う。
先手必勝。まずは敵の男達を落とす。
年頃。
色白。
西洋出身の銀髪美人。
たぶん日本男子はこういう女子に弱いはず。
睡眠薬を盛りに行くという義妹(凛)と共に、シェリアは1回戦の相手のテントを訪れ、
「ハァーイ♪」
ぱちん、とウィンクして軟派なフランス人少女を演じた。フィアンセさんごめんなさい。
同様に、凛は妖艶なアイパッチ姿で男子共に流し目を向けて迫る。
「実はビーチバレーは初めてで結構緊張しているの。お、お手柔らかにお願いしますね?」
「あら…素敵な殿方ですわ。一緒のチームが良かったですの。ボール怖いから…手加減してくださいね♪」
「し、仕方ねえな」
可憐な銀髪姉妹に、容易く頷くチョロ男達。
凛の持ってきた異様に泡立っているアイスコーヒーを疑いも無く飲み干しデレデレ。
軟派とアイパッチの仮面の下で、ニヤリと笑みが歪んだ……
(そろそろ着替えようかしら)
知り合いのヲタク撃退士(豚侍)を電話で呼びつける凛。
「凛殿、何用でござるか」
凛は恥ずかしそうに頬を染めながら――
「わたくしの水着になりませんか?」
「ふお!?」
●1回戦
対戦相手はチョロ男チーム。“なぜか”既にフラフラだ。
撃退士じゃなかったらきっと今頃は病院のICUに居ただろう。クスリだめ絶対。
そこへ水着姿の凛も到着し、
前から見ると赤、後ろから見ると白のワンピース。水着から赤い液体を滴らせ、豚侍の足首を掴んで引きずりながら登場。
“水着になる”ってそういう……
試合開始。
凛は豚侍をブンブンと振り回し、
豚侍の顔面レシーブ
豚侍の顔面アタック
豚侍の顔面ブロック
空を飛び、豚侍でボールを敵陣地に叩き付ける。
また、ラインスレスレに返ってきたボールはゼロが自慢の機動力で華麗にトス。
「さぁ、暴れておいで♪」
凛は豚侍をぐおん!と振り上げ、
「猫鴉アタック!」
小凛と鴉のカットインが入り、コメット魔球が唸りを上げた。試合前の色仕掛けェ……。
いや、そういえば、もう1人色仕掛けをしていた銀髪美少女がいたはず――
眠気と恐怖を堪えながら、チョロ男達はシェリアを見る。
こちらが放つスパイクをおっかなびっくりブロックするその姿は、か弱い少女そのものだった。
「そうだ俺達はこういう女子を求めていt」
瞬間、光纏するシェリア。
ズアッ!と黄金のオーラを噴き上げ、
「燃え尽きろぉー!!!」
ブラストレイで渾身スパイク。
爆ぜるボール。
消し飛ぶコート。
シェリアは焼け焦げたチョロ男達を見下ろし、
「あらコンガリ♪ 色黒な殿方はモテますよ、きっと」
にっこり。
女は魔物。
●2回戦
「試合になれば遠慮はしません…光纏!」
審判の合図を待たずして、いきなり魔球をぶち込む和紗嬢。
放ったのはアシッドショット。合図前で油断していた敵組前衛の装甲がジュワッ。
「装甲…水着しかないようですね、おやおや困りましたね(棒」
「この試合も勝って優勝するのだー♪ ルールはよくわからないけど、ボールを向こうのコートに撃ちこめばいいんだよねー♪」
更に、元気印のお馬鹿娘こと楓が本領発揮。
腐敗の難を逃れた敵後衛の返球をゼロが高々とトスしてやり、楓は全力跳躍。普通のスマッシュ、と見せかけてスキルのスマッシュでぶちかます。
が、力みすぎた球はネットに当たってイレギュラーバウンド。敵組の女子の水着紐を掠めて、はらり。
「あや、ごめんなさいなのだー。ちょっと手元がずれちゃったのだ…はやや?」
そしてあろう事か、腕を振り回した弾みで楓のビキニもはらり。
謎光線が飛び交う中、そんな事はお構いなしとボールを打ち続ける和紗。
敵組は肌色を隠すので精一杯だった。
●3回戦
前屈み姿勢でレシーブ待ちの和紗。それをビキニでやってるもんだから、敵組の男子は視線がキョロキョロだ。
男の子だからね、仕方ないね。
甘い球を受け、ゼロがトス。瞬間、カッ!と和紗のカットイン。
跳躍しながらアンタレスを発動し、火の海と化した敵側へ容赦の無いスパイク。
「か、和紗ナイスアタック」
おや、場外から声援が?
見ると、カンペを持たされたリーゼが遠慮がちに声を張っていた。
親指を立てる和紗。
火達磨になって転げ回る敵組。
ドクターストップが掛かり、試合は和紗達の勝ち。
●4回戦
ぴひゅるる〜
イラッ☆とするような、間の抜けたホイッスル音。
吹いているのは審判…ではなく雪子。コートの外で、学ランに鉢巻姿の1人応援団。
ぴひゅるる〜
試合開始。
ゼロのジャンプサーブならぬ飛行サーブ。ネットスレスレにボールを放り、それを踵落としで鋭角から叩き込む。
ぴひゅるる〜
だが相手も流石に撃退士。咄嗟に前衛が拾ってトス――
その時、突風が吹いた。
放ったのは雪子。イロモノV兵器『応援大うちわ』を振り、浮いたボールを吹き飛ばす。
敵組から抗議の声が上がる。
雪子は唇を3にしてすっとぼけ、審判もセーフの判定を下すが、
「うるせぇさっきから変な笛吹き鳴らしやがって!」
トサカに来た敵組が雪子に詰め寄りプチ乱闘。
「ちょ、顔! 顔はやめてくだsアッー!?」
ボカスカと彼女を蹴たぐり回し、敵組は退場処分となった。
●5回戦
敵組は、高等部の兄4人と小等部の弟妹4人という構成。
4回戦までのカオスを目の当たりにした兄達は、事前に審判を購買食券で買収。が、失敗。
「まあ良い。向こうが無茶をやらかすなら、俺達も力ずくで――」
「「お兄ちゃん達ひどい!」」
叫んだのは小等部4人。
謀略に走った兄の姿にショックを受け、反対側のコートに居た桜花の元へと駆けていく。
「この姉ちゃんが言ってた通りだ!」
「オトナってキタナイんだ!」
弟妹離反。まさかの4人対12人。
「オンドゥルルラギッタンディスカー!」
「お、落ち着け。こんな人数差試合、審判が許可するはずがない」
兄の訴えに審判もこくりと頷き、桜花達の方を見――
「トラップカード発動!」
瞬間、高らかに宣言する雪子。
餌付け攻撃:なんとなく不都合になった時に効果を発動する! 雪子は痛紙袋より、GSF-2200、CD-016、うすいほん、立体マウスパッドを特殊召喚!
審判は、主にうすいほんと立体マウスパッドを受け取ってこくりと頷き……
「じゃ試合はじめまーす」
「うぉおい審判!」
「くっ……審判を買収するとは、汚い奴めっ」
「お前が言うのか」
試合開始。
すっかり諦めムードの敵相手に、ツーアタックやら回し蹴りスパイクやら大暴れのゼロ達。
もはや勝負になっていなかった。
●昼休憩
テントに開封済みのコーラが大量に置かれていた。明らかに怪しい。
しかしそれを見つけた楓は、
「あや、せっかくだからこれを皆に配ってくるねー♪」
お馬鹿印の無垢な親切心。いくつかのコーラを持って他チームのテントへ。
「間違っても自分で飲んじゃダメですの」
「あーい♪」
忠告の意味は分からなかったが、素直に頷く楓。
その背を見送り、凛は安全の確保された手料理をメンバーに振舞った。
桜花は先の試合で寝返ったロリショタを侍らせながら、凛の料理や自前のサンドイッチをもぐもぐうへへ。鼻血という名の欲望がだくだくと溢れ出る。
一方、和紗の分はリーゼが調理。もはやバーテンダーというより執事である。
しかしその裏で、こっそり動く影が一つ。雪子だ。
もやしっ子でヒッキーな雪子ちゃんはコーラが大好物。凛に隠れて、怪コーラをぐびぐびごくり。
コーラおいしいでs
「うっ…ぽんぽんぺいん……」
まじ迂闊。
その頃、
「やだゼロさんの着ぐるみカーワーイーイぃ」
「ほんとまじカラスぅ」
「せやろ? ふかふかのもふもふやねんで」
ゼロは別のテントで水着女子達に囲まれていた。
「「ねぇねぇ、もふもふして良い〜?」」
「しゃーないなー、試合始まるまでやで?」
●6回戦
開始時刻になっても、ゼロと桜花と雪子が現れない。
「ふふん、あのカラスなら海に沈めてやったわ。今頃、いつもの鮫の胃の中よ」
敵の女子達が海を指差す。海面にカラスの羽根がぷかりと浮いていた。
倍返し……それは妨害された後も生きていられればの話だ!
ちなみに桜花は、ロリショタサンドで鼻血ぶぱぁして医務室に。
雪子はお花を摘みに。
「いまよA子!」
「まかせてB子!」
モブだからって名前テキトーすぎだろ。
などと言っている暇もなく叩き込まれる敵のアタック。
それを防いだのは叶伊だった。
両利きを活かして左右を問わず巧みに動き、取り溢した球は足で拾うファインプレー。時折、仕込んでおいたレフ板で太陽光を反射して相手の目を眩ませるという、ちょっぴり姑息な手も織り交ぜつつ。
だが敵も諦めず、高くトスを上げてスパイクの構えを見せる。
すると和紗がネット前で飛び上がり、シールドで鉄扇を緊急活性してブロック…した勢いでそのまま相手を張り倒した。
「急には止まれませんから」
「あわわわ……」
さも当然という顔で言い放った彼女に恐怖を覚え、敵組降参。
2人(と雪子)が欠けたくらいじゃ止まらない。
●7回戦
幼女(楓)の差し入れコーラを飲んだロリコン組が重体。
楓達の不戦勝。
続く準決勝も、命の危険を感じた相手が辞退。不戦勝。
●決勝戦
桜花が復帰。貧血で倒れたのに、なぜか肌ツヤぴっかぴか。ロリショタ成分か。
雪子も復活。
学ランを脱ぎ捨てた下には、なんとチア服とポンポン。回避の上がるこのチア装備なら、もう何も怖くない。
懲りずに再び応援プレイ。
「もってけ! セーラーふk――」
「CGES freeze! NEET Fu(ピー) don't move!(字幕:クラウドゲート執行部隊だ! そこまでだ玉置 雪子!)」
刹那、雪崩れ込んでくる恐いヒト達。
音楽関係は著作権厳しいからね、仕方ないね。
「ちょまっ! まだチア服の下に水着ネタ仕込んであr」
尻を蹴られながら、雪子退場。
ビーチバレー依頼なのに1回もバレーしてねえとか、ユッキーまじBe CooL。
一方、試合はと言えば――
「良いボールが来たのだ。それじゃあ全力跳躍して…全力全開、封砲アタックなのだー♪」
楓のカットイン。
更にそこへ和紗がコメットを重ね、桜花も大口径ライフルで砂地を捲り上げる。
爆炎と砂煙で視界が零になったのをいいことに、直接相手をボコりに行く銀髪姉妹。
シェリアはスターライトハーツを振り回し、凛は足首に鎖を巻きつけた豚侍をガン●ムハンマーのように投擲。
視界が晴れた後、二本足で立っているのは彼女達だけだった――……
●
先輩部員とその後輩は焦っていた。
ポスターをよく見ろ。写真集は『(予定)』と書かれている。
そう言って賞金だけ渡してウヤムヤにするつもりだった。だが……
「小次郎さんのブロマイド早く下さいですの」
「オペ子さんの水着写真集」
「賞金もお忘れなく」
凛や桜花、和紗達が詰め寄ってくる。
他のチームならいざしらず、彼女達に「ありません」などと言ったら命が危ない。
とその時、
ブオー
何かの排気音。振り向くと、首にプラカードを下げたロペ子が居た。
カードには『オペ子聞いてないです』と書かれており――
カッ!!
きのこ雲。
●後日
1人だけ爆破を免れた叶伊。
オペ子と共にメンバー達の見舞いに訪れた彼は、小次郎をもふる凛達に別れを告げてロビーへと出る。
ふと、長椅子に置かれていた新聞記事に目がとまる。
『打ち上げられた鮫の中からカラスが1匹。奇蹟の生還』
どうやらゼロも無事らしい。
(何よりですね)
叶伊は新聞を元に戻すと、「甘味でも食べて帰ろう」と頷いて、1人病院を後にした。