「中二ですかぁ? 小一でも中二になれますかぁ〜?」
依頼書を見て首を傾げた深森 木葉(
jb1711)に、頭に小次郎を乗せたオペ子が頷く。
「小一から中二になってオトナのオンナにステップアップです」
「ではがんばりますよぉ〜」
パタパタと駆けていく木葉。入れ替わりに、何 静花(
jb4794)がふらりとやってきて――……
●
「中二病…聞いた事がありますわ。なんでも思春期の頃に発症する日本特有の風土病で、周囲に痛がられる程おかしな行動や行為に走る珍妙な症状だとか」
“患者”を探して現場中学校の敷地内をウロウロしていたのは、シェリア・ロウ・ド・ロンド(
jb3671)。元箱入り娘なせいで『若干』世間に疎い彼女は、中二病の事もよくは知らない。
まあ、きっと何かとても恐い病気なのだろう。
大昔の西洋諸国でも、風土病は“呪い”として広く恐れられたものだ。
そんなものを発症させるサーバントを放っておくわけにはいかない。
「呪いを振り撒く死天の使徒を、正義の光で覆滅ですわ」※シェリアちゃんはまだ憑かれてません
やがて1人の用務員を発見。その左肩には憑依の痣が。
一般人に憑かせたままにしておくわけにはいかない。彼女はやむを得ず自らの体にサーバントを移すべく、後ろから用務員の肩に触れた――
「偉大なる天帝ユラニュス様の天命の下に、ここに人間界への介入を宣言します」
発症。
数万年の時を経て天界ブリエ=サンティユから光臨した創生の女神。
偏見、差別、迫害……己が創造した現界に絶望し、今ここに『無慈悲なる世界の再構築(イデアル=クレアシオン)』の実行せし者也。
「世界改変段階マキシマム…」
両手を組んで微笑を浮かべたその女神は、聖女の如き出で立ちで終焉の始まりを宣言した。
一方、我に返った用務員は、
「ねーちゃん、変なもんでも食ったんか?」
「心配は無用。死苦は一瞬で済みますわ」
フッ、とシェリアの姿が消える。
屋上へと瞬間移動した彼女は、とろんとした目で空を見上げ、
「神託がわたくしに囁きかける…誰もが愛し合える世界を創造しろと! 同性愛でも子孫を残せる自由恋愛の真骨頂を具現せよと!!」
壁ドンの理想の身長差は20cm! 攻め男子はクール系不良学生、受けの目逸らし頬染めは基本! 異論は認める! デュフフ…い、いけないわ涎が。ロワ(理性)の適用化が上手くいってないのね」
もしかして:いつもと変わらない
中学校で不純な妄想を巡らせる腐女子S…じゃなかった、創生の女神。
用いる神法は高速かけ算。(物人問わず)なんでもカップリング。さすが創生(しろめ
「ふむ、これが中二。なかなかに興味深い現象です」
その時、樒 和紗(
jb6970)が到着。和紗は中庭から屋上を見上げながら小さく頷く。
まあそれはそれとして、
「では遠慮なく弓を引くとしましょうか」
サーバント討伐の為だから仕方ないよね。
上空へ射った和紗の矢が、シェリアの額にスコンッと刺さる。
「ホモォ!?」
ぱたり
倒れたシェリアが屋上の縁から落下。中庭の木に突っ込んでからバキバキドサァ!と芝生に転がった。
気絶しているようだが、サーバントはまだ健在。そして、
「おや、あそこを歩いているのはリーゼじゃありませんか」
見知った顔を見つけて和紗は手を振った。
「通りすがりとは偶然ですねリーゼ」
「通りすがりというか、通りすがらされたというか……」
MSもビックリだよ。
困惑する彼を他所に、和紗は思いついたようにその手を取る。
「リーゼ、ちょっと此方へ。少々手をお借りしますね」
転がっているシェリアのもとへと連れて行き、掴んでいた彼の手をぺたり。ちょおま――
憑依チェンジ。
「……来たか」
途端、リーゼは遠くの空を見上げてぽつりと呟いた。和紗は首を傾げながらその視線を追うが、ただ雲があるだけ。
彼は小刻みに震える左手でぎゅっと握りこぶしを作り、
「人間の中で生きるというのも悪くなかったが……所詮、俺には過ぎた夢…か」
ふ、と口元を揺らしていた。
もう勘弁してあげてください。
「…何でしょう、違和感なく格好良いと思えます」
和紗は珍しい物を見たという顔で、
「リーゼ、お疲れ様でした」
彼の体に手を触れた。チェンジ。
「…俺は今なにを…?」
「…くっ、リーゼ…俺から、離れ…て…(訳:帰っていいですよー)」
直後、和紗が豹変。
「――妾が眠りから覚めるとは、彼奴の封印が弱っておるのか?」
なんか出てきた。
するとそこへ、他の撃退士も続々と到着。先頭に居たのは幸村 詠歌(
jc0244)。
「一度、人と戦ってみたいと思っていた!」
「ぬしら、彼奴の手下かえ。目障りじゃ…去ね!」
中二和紗が吼えると、天から無数の光弾(コメットです)が降り注いだ。
詠歌も双剣を構えて応戦。
「身持ちが堅いな!」
詠歌の刃が閃く。しかし和紗が手を翳した瞬間、古代魔法で編まれた護光陣(シールドです)が浮かび出てそれを受け止める。
「少しはやりおるが…未だ六割じゃ」
交差する攻防。そこへディザイア・シーカー(
jb5989)が割って入る。
重体参加で既にボロボロな彼ではあったが、1人だけに肩代わりさせるわけにもいくまいと憑依チェンジ。
「くっ」
瞬間、上向き気味に顔を上げながら額に手を当てるディザイア。
「俺をここまで追い詰めるなんて、機関もずいぶん本気のようだな」
とある任務で皇龍を身に宿してしまった元機関員。力にだけ目をつけた機関から逃亡、常時追っ手に追われている……という設定。
追っ手にやられた傷(?)を押さえながら一同を見渡し、
「でもまぁ、ここまでだな」
光纏。腕に炎の痣を刻んだ。
「俺は『コイツ』を抑えてる封印のようなもんだ、つまり俺が弱ると言うことは、『コイツ』を抑えれなくなるってことなんだぜ?」
全身に炎を纏わせ、陽の光を帯びた瞳が金へと変わり――
「それじゃ、サヨウナラだ」
焔王顕現。鬼神の如き様相で暴れまわるディザイア。
しかしその身は既に手負い。自らの劫火と雷に喰われつつある彼を見た詠歌は、
「…すでに満身創痍か…ならば、斬る価値も無し!」
我関せず、と剣を引いていた。流石ライセンサー、フリーダム。
一方、中二ディザイアを別の意味で歯牙に掛けたのは、いつの間にか復活していたシェリア。ノートPCを取り出してキーボードをはぁはぁドカカ。
「組織を裏切り逃亡した男に迫るのは、死地を共に潜り抜けたかつての友! 銃を手に追い詰めた彼の指が触れるのは、引き金ではなく血が滲んだ友のくちびr――」
ダレカトメロヨー。
そんな時、ふらりと現れたのは静花(と、デジカメを持ったオペ子)。
真面目に任務。真面目に討伐。
大真面目センサーでサーバントの気配を追って参上し、仲間同士がどつき合うという殺伐現場にパーティーメガネ装備という冗談を混ぜる事で、空気を和ませる配慮も忘れない。
さりげなく生命力を30削ってから来たので、火事場の馬鹿力もいつでも発動OKだ。さすが真面目。
彼女は荒ぶるディザイアを見るなり、
「憑依されたな、殴る」
仲間への躊躇? スタンさせてから考える。
ヒュッと懐に飛び込んで、ズドンと鳩尾を打つ。星が飛んでディザイアぴよぴよ。
仲間への治療? 討伐終わったら考える。
が、接近戦を仕掛けた静花は当然のようにディザイアと体がぶつかり、
突如、中華包丁を持って高笑い。憑かれたようです。
校門を飛び出して商店街で食材を買い漁り、戻ってくるなり購買食堂を占拠して鍋を振るい始める静花。
やがて出来たのは雲南料理。辛い料理もあるがとても美味しい。あれ? 中…二……?
静花は包丁を持ったまま玉置 雪子(
jb8344)の前に料理を並べた。
「雪子以外も食べていい、残したら祟る」
料理が一番反撃二番三四で食わせて五に討伐!
↑今ココ
対する雪子は、スマホを取り出して電話をかけるフリをし始める。
少し寂しげな様子で口を開き、
「雪子です、大統領はどうやら雪子達とやりあう気らしいですね…。ええ、わかっています。あの人なりの考えですね。ラ・ヨダソウ・スティアーナ(別れの合言葉、意味はない)」
周囲に一頻り脅威を振りまいてから電話を切り、続けてスマホを弄り始めてまた呟きだす。
「学校のセキュリティもやっぱこんなもんですか。ま、民間委託の警備会社にしては上出来ですかね」
徐に充電用のUSBケーブルをスマホに挿し、
「なんだ、ファイアウォール破られてるじゃないですか。生徒名簿あたりはまだ無事ですね。ふーん、DOT(雪子の考えた架空のウィルス)を使ってるんですねぇ。ま、雪子の情報流されちゃ困りますし、ちょっと手を貸してあげますか」
これはイタイ。※現在、サーバントは静花に憑依中です
ふと、雪子は氷結晶で氷塊を作る。直後、
「久しぶりに外に出られた。この小娘は意思が強すぎて困るぜ(笑」
乱暴な口調で叫んだりしだした。
氷を見ると『冷羅(レイラ)』という魔族の人格が現れるらしい。これはイタイ。※現在、サーバントは静花に(ry
すると彼女は突然、目の前の湯気を立てている雲南料理を手掴みで――
「久々の飯だz…アッー! アっっツッ…!? ファッ●ンホット!(くそ熱い)」
――掴めずにベシャリと床に落とした。
これに御冠になったのは、静花。
料理をダメにした奴は討伐対象、死すべし。
RemiX A1で殴打して、ボッコボコ。たこ殴りにされる雪子。
「ンァッ! ハッハッハッハー! この雲南ンフンフンッハアアアアアアアアアアァン!」
みるみる削れていく雪子の生命力。見かねた木葉が身を呈して止めに入ろうとして、がばっと静花に抱きつき憑依チェンジ。
静花は正気に戻った……はずだったが、
たこ殴り継続。
雪子がッ 完食するまで 殴るのをやめないッ!
一方、憑依された木葉は……
「だめぇ……おさえられないのですぅ……みんな、にげてぇ〜!」
ずあっと黒い影が噴き出し、八つの首の怪物を模す。それは、木葉が己の体に封じ込めていた蛇神・八岐大蛇の黄泉還り……らしい。
「数千年ぶりか……、葦原中津国に顕現するのは……」
一から八まで並んだ蛇竜の首が、万物陰陽の理を以て暴れ狂う。
木:天空をも覆う深き緑の棘鞭
火:黄昏よりも尚朱き紅蓮の焔
土:地を割り天を砕く激震の渦
金:鉄をも切り裂く白銀の刃
水:星を呑む激流の深淵
陰:重力を司る裏の韻
陽:光の雨を示す表の韻
虚:全てを無に帰す破界の法
あらゆる界を飲み込み、あらゆる命を貪る。人の身に於いて抗う術は無し。
「ふはははぁ〜。前は酒による騙し討ちを受けたが、今回はそうはいかん。何しろこの器は酒を欲さぬ故!(訳:お酒は二十歳になってから!」
しかしこれはまずい。いくらサーバント討滅の為とは言え、大のオトナが幼女を取り囲んでボコる絵面は非常にまずい。
このままでは……
「おぬしら、ここにおったのか。探したぞ」
だがその時、1人の救世主が現れた。
切金 凪(
jc0218)。愛用の大剣をがらんがらんと引きずるその姿は、名実共に立派な『ょぅι゛ょ』
ょぅι゛ょなら幼女を殴っても何も問題はないな!
凪は荒ぶる木葉を見て興味津々と頷く。
「ようするに誇大妄想をさも本物であるかのように垂れ流せばよいのじゃな?」
これが中二病、凪、覚えた。
アウルとサーバント補正で誇大妄想の域を若干はみ出してはいるが、それはともかく……
「撃退士として前線で活躍してる猛者達じゃ、我がどこまで通用するか腕がなるのじゃ」
ょぅι゛ょ vs 幼女、開戦。
中二木葉の攻撃を掻い潜り、身の丈よりも巨大な両手剣を振り回す凪。
「ええい、この器、運動性能が悪すぎるわ!!」
思うように動かない幼女の体に苛立つヤマタノコノハ。
対する凪は、ブオンと風を巻いた切っ先を躱されるも、大剣を振り回した勢いで廻し蹴りを見舞う。
草履に乗せた凪の白い踵が、木葉の肩に命中。瞬間――
「あれ? あたし、なにをしてたのぉ?」
ふしゅる〜と影が窄み、木葉はきょとんと首を傾げた。
そして凪は、
「くくく、この忘却の刃の前にはあらゆるものはその存在を許されず、ただ消滅するのみなのじゃ。もっとも、おぬしらがこやつの真の力を引き出すまで我を追い詰められるとは思えぬがの?」
大剣を翳しながら、“存在の力”に目覚めてしまっていた。
あれ? 幼女は鎮圧したけど、ょぅι゛ょが暴れたらさっきと状況同じじゃん? やばいんじゃん?
と思われたが、
「そうだ……これとやりたかった!」
凪の大剣――剣という武器種――に超反応を示した詠歌。
双剣を抜いて問答無用で切りかかり、鍔迫り合いが火花を散らす。世間体がどうとか関係ねえ!
「かっかっか、やるではないか。では我も本気を出すのじゃ。目覚めるのじゃオブビリオンブレイド!」
吼える大剣。ぐあっと振り下ろされた刃はしかし、悉く詠歌の双剣に切り払われる。
「どれほどの性能差であろうと……今日の私は、阿修羅すら凌駕する存在だ!」
「なん……じゃと! こやつの力をレジストするなど……はっ! おぬし、まさか…いや、ありえぬ」
時に守り、時に攻め、互いの立ち位置をめまぐるしく変える2人。だがその度に、凪の格好には異変が起きていた。
はだける浴衣。このまま行けば蔵倫スタッフのお世話になってしまう……!
「柔肌を晒すとは、破廉恥だぞ!」
鋏のように交差させた双剣で凪の手から大剣を弾き飛ばす詠歌。
「そこだ!」
直後、突進。
抱きしめるように凪の体を押し倒して、サーバントを奪い取った。
すると、憑依したサーバントは鎧武者の面のように形を変えて詠歌の顔に固着。
「これが私の進む道! 修羅道だ!」
極みにある勝利をこの手に。
パイロット特性:極
毎ターン開始時にアウルコマンド『魂』発動。
謎の補正を受けながら、詠歌がくるりと一同の方を振り向――
「貴方の犠牲、無駄にはしません」
「いま元に戻してやるからな」
一斉攻撃。
あっという間に体力ゲージがレッドゾーン。
詠歌はガクリと膝を折ると、しかし最後の力で一同の射程外へと飛び退き、
「武士道とは死ぬ事と見つけたり!!」
カッ!と目を見開いて、持っていた双剣を自らに突き立てた。ざっくり。
ぱたりと倒れる詠歌。仮面となっていたサーバントは、音も無く砂と化した――
●斡旋所
『……来たか』
『つまり俺が弱ると言うことは、『コイツ』を抑えれなくなるってことなんだぜ?』
自分の中二動画をリピートされて、リーゼとディザイアは頭を抱えてテーブルに肘をつく。
静花のデジカメでオペ子に撮られていた。
「しかし、あれじゃな。中二アイテム持った中二病患者と、V兵器持った撃退士というのは根源的な部分で同(もがもが」
一方、デジカメの持ち主である静花はと言えば……
「報酬を貰った帰って寝よう」
マジカルステッキを振りながらボコボコの雪子を引きずって、寄り道せずに真面目に帰宅していた。