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1文字ずつ縦に書くとは、まさに外道。(ページ長さ的な意味で)
「……さて」
練習用のノートを閉じる月詠 神削(
ja5265)。
確かに『父』を100文字も書くのは大変な作業だと解った。ゲシュタルト崩壊の危険があるなら尚更だ。
今回の依頼、如何に崩壊を食い止めるか、それに尽きる。
そこで彼は考えた。
ゲシュタりそうになった瞬間、より強烈な衝撃を与えることで精神を正気に引っ張り戻せないだろうか。
そして、その『衝撃』として用意したのが――
サルミア●キぃ〜!(CV:青い猫型ロボット(先代))
説明しよう。
サルミア●キとはフィンランドに実在する「世界一不味い」と言われる飴である。主成分は塩化アンモニウムとリコリス。通常のリコリス菓子とは違い、罰ゲーム的な塩味と強烈なアンモニア臭がする北欧の伝統的菓子(以下略
科学室で量産される鉄くずの味がする。by 神削
「いざという時は、これは仲間達の口に……」
神削きゅんは食べないの?
「……俺は、食わないよ?」
もうこんなもん食う度胸は無いんだよ。
「ちなみにサルミア●キはネット通販で買える。興味を持ったのならMSも是非試してみr――」
全力で遠慮。
●星杜 藤花(
ja0292)&佐藤 としお(
ja2489)ペア
「こいつは何でここに現れたんだろう……?」
何はともあれ討伐しないとな。
としおは、「休憩用に」と学園から借り受けた『運動会とかでよく見る白いテント』を交差点の端に設置。
(ゲシュタルト崩壊しない為には、気持ちの切り替えが重要って誰かが言ってたっけ)
自前で用意した珈琲やジュース、お菓子などを並べ、癒し要員として自らのヒリュウを召喚。ついでにオペ子も召喚。
「例のブツが届きました」
申請されていた特殊V兵器の入った筆箱を持って現れた彼女から、としおは通常のクーゲルシュライバーを受け取る。
まずはどれくらいで崩壊が起こるのか知る為、ワザと普通に挑戦する事に。
ゲシュタるまでの時間を計りながらサーバント『父』を正面から見――
「ちち……おっぱい」
ソッコー崩壊。そういえば最初に「何で現れたんだろう」って言いながら既に視界に入れちゃってたしな!
「いいおっぱいだなー」
『父』の前で体育座りしながら、としおはブツブツと『父』に話しかけていた。
早くも相方が崩壊した藤花。
だが、現場に居る戦力は全部で8人。2人1組でそれぞれ東西南北の別方向から挑む手筈になっている為、ノルマは一人頭12文字ちょっと。
落ちたとしおの分を全部受け持ったとしても、自分のノルマは約24文字……
「十分できますね!」
書家の出であり雅号も持っている自分には、文字を書くなどお手の物。
にっこり微笑みながら、申請していた筆ペン型V兵器と彩り鮮やかな特殊クーゲルをオペ子から受け取り、ついでに持参した自分の雅号印も握って、『父』の前に立つ。
「折角なら父という字でデコりましょう」
父父父父父父父父父父父父父父父父父父父父…
楷書、行書、草書を織り交ぜて筆書。
藤花ちゃん、大丈夫?
「いやですね、これしきでゲシュタルト崩壊なんてするわけないじゃないですか」
にっこり。
「そういえば――」
ふと、手を止めて振り返る藤花。
徐にとしおの前で体育座りしながら、
「父という字の字源をご存知ですか。父という文字は古代中国で作られた斧の頭部を持つ形を意味した象形文字で、一族の統率者を示すのです。だから『斧』という字にも『父』の字が隠れているのです。ちなみに斧の刃の部分を下に置くと『士』。その大なるものが『王』。更に上部に玉飾りを加えると『皇』。すべて身分を表す語となります。余談ですが『母』は跪いている女性が子どもに乳を与えている姿だとか。今日の良い勉強になりますね」
にこにこ。
神削きゅーん、飴持ってきてー。
●向坂 玲治(
ja6214)&ロード・グングニル(
jb5282)ペア
「……変わったサーバントだな」
「時々、天魔が何を考えているのか分からなくなるな……」
依頼内容を確認しながら、テントでオペ子からクーゲルを受領したロードと玲治。
「どんな法則性で立ってるのか、気になってたりもするが……」
「ハゲます」
肩越しに顔を向けて『父』をチラ見したロードに、オペ子が言う。
「ん、そうだな。細かい事はキニシナイ、キニシナイ(´v`)」
あれ? その顔文字もしかして……
MSの心配を他所に、2人は崩壊の予兆が出そうになったら交代するという手筈で筆記を開始。先発はロード。
「たった4画の字だし、いきなり挫折する事は無い……筈、多分」
でもロード君、さっき顔文字が――
父父父父父父父父父父父父父……
おお、杞憂だったか。
「……やべ。見てるだけでもしんどい」
「そろそろ代わるか?」
「いやまだだいじょうぶ」
途中、引き継ぐ時がコワイナ。
汗を拭って筆記を続けるロード。
(´v`)(´v`)(´v`)(´v`)
ああっ、コイツやっぱりゲシュタってやがった!
「い、いいいE=mcの二乗わああぁぁ!」
いきなり叫びだし、ロードは持っていたクーゲルを放り捨てると、足下に落ちていた小石にガバッと飛びついた。
アスファルトの地面に相対性理論の方程式をガリガリと刻み始める。
選手交代。
崩壊した相棒に代わって、前に出る玲治。
「……いっそ清々しい位に見事な『父』だな」
彼は1人ごちながら、呆然と『父』を眺める。←←←
「さて、俺の華麗なペン捌きを見せてやるぜ」
肩を廻して気合を入れながら位置に着くが――
「あー……だんだんウサギの口元に見えてきた」※注1 まだ1文字目です。
意外と可愛いな、と呟きつつ、目をとろんとさせながらペンを滑らせる。
数式いっぱいウサギがいっぱい。
神削きゅん、飴ー。
●或瀬院 由真(
ja1687)&神削ペア
「父の日に、こんな恐ろしいサーバントを送り込んでくるだなんて……。もしや、その力を用いて父を斧に変え、この大切な日をSATUBATUめいたモノにするつもりですか!?」
ずびしっ、と『父』を指差す由真。
「なんて恐ろしい。絶対に退治せねば!」※注2 由真ちゃんはあくまでも真剣です。真剣にこんな子なんです。(ほろり
(たぶん)まだゲシュタルトしてない彼女は、ふんすと鼻息強めでクーゲルを手にする。
「行きますよ、月詠さん! 今こそ、100文字を書ききる時!」
神削は飴を持ちながら、こくりと頷く。
作戦その1:ヒリュウ様が見てる
召喚したヒリュウの視覚共有を利用し、自分の書く様を客観視しながら書く方法。
ヒトは集中すると視野が狭くなりがちで、そのせいで書き損じが出るかもしれない。しかし、これなら!
「大変です神削さん! 『父』が2つ見えます!」
ゲシュタルト@2倍
「というか、慣れない視覚のせいで書き難いですっ」
失敗。
作戦その2:お前、その字ちゃうやろ
ヒリュウに自分の動向を監視してもらい、意識が虚ろになってきたらツッコミを入れてもらう方法。これなら……
「ああ、ぺちぺちしてくるヒリュウ……可愛いです」
恍惚とした表情で鼻血を噴く由真。
失敗。
作戦その3:誤字死すべし、慈悲は無い
ヒリュウだと和んでしまって筆記どころではない事が判明。ならば――スレイプニルなら!
「大きな身体から繰り出される強烈なツッコミで、ゲシュタルト@撃退です!」
父父父父父父父ハメ――
\めこっ/
「げしゅたる!?」
頬にめり込む蹄。
「大丈夫です。痛いけど痛くありません!」
父父父/\〆――
\めっこり/
「ぷぎゅ!?」
顔にめり込む蹄。
由真はぴくぴくと震えながら地面に突っ伏した。
神削きゅん、飴――は可哀想だからやめとこか。
●鷹司 律(
jb0791)&ラテン・ロロウス(
jb5646)ペア――って、え? まだラテンさんが到着してない?
「というわけなのでとりあえず単騎で頑張ってください」
ポテチをばりばりしていたオペ子に頷きを返すと、律は徐に目を閉じた。
――まずは、見なくても文字が綺麗に書けるか練習。
手探りに腕を伸ばし、指先に何かが触れる。彼はそれを左手で掴んだまま、右手にクーゲルを持って感覚だけを頼りに父の字かきかき。
出来栄えを確かめるために瞼を開くと、額に父と刻まれた小次郎の顔があった。
これなら、暗闇の中でも頑張れば書けるかもしれない。
律は踵を返すと、『父』に目を向けないように気をつけながら配置についた。
作戦その1:スキル『ナイトアンセム』
暗闇で『父』の周囲を包み、『父』の姿を隠してしまおうという方法。
「見て書けないなら、見えなければいいと思いまして」
アンセム展開。が、物理法則を超越した謎次元構造である『父』は暗闇においても何故かはっきりと視えてしまい、効果が無かった。
失敗。
作戦その2:スキル『ナイトミスト』
アウルの黒霧を自らの身体に纏わせた状態で『父』に組みつき、自分の身体を遮蔽物にして、物理的に仲間への視覚異常を防ごうという方法。
律は他のメンバーが居る方角へと回り込み、ミスト展開&『父』にハグ。が、アンセム同様、黒霧に遮蔽効果はなく、それどころか律の身体が邪魔でサーバントの体表面に文字が書き難くなってしまった。
「これも駄目ですか……」
――ちなみに自分の瞼を完全に閉じた状態であれば流石の『父』も視えなくはなるが、その状態で果たして『綺麗に書く』という条件が満たせるかどうか……。それだけで攻略できる敵であれば、恐らく先行した部隊だけでも討伐できたであろう。
とか何とかストーリー的にそれっぽいこと言ったけど、ぶっちゃけ公開プレ部分に父100文字書いてあったら『合わせ技』で有効判定だった! 惜しかった!
と、そこへ、ロードと玲治がフラリと近づいてきた。
神削の飴治療も虚しく度重なる崩壊によりまるでゾンビのようになったその2人は、律の背中に『数式』やら『ウサギ』やらをひたすら書き込み続ける。
しまいにはうつ伏せに押し倒され、更に藤花ととしおが「字源」「おっぱい」と呟きながら体育座りでにじり寄り――
だがその時、ゲシュタルト崩壊したスクランブル交差点に1人の救世主が……!
相棒のアルパカ――ムサシ――に乗って現れたのは、ラテン。
すいません、ムサシちゃんがノンビリ歩いてて遅れました。
ラテンはテントの柱にムサシを繋ぐと、そこに居た小次郎を見て、
「猫の小次郎だと? フッ…私のムサシのライバルというわけか…。まっているがいい! アレを倒したら存分に語ろうではないか!」
ずびし、と言い放って本体(オペ子)に向き直る。
「オペ子よ。頼んでいた品は手に入れてくれたか」
「抜かりなしです」
彼女が筆箱から取り出したのは、普通のクーゲル…と見せかけたボールペン型爆弾。
「うむ、良い機会だ…このレベル別クーゲルシュライバーの試し書き比べをしてくれよう!」
取り出した自前のクーゲル(Lv0〜3)と混ぜるラテン。4本はクーゲル、1本は爆弾。
ロシアンルーレット。適度な緊張感。
ゲシュタルト崩壊しかけた都合のいいタイミングで爆弾ボールペンを押すと……
「ボンッ…というわけだ。完璧な策だ…」
更に精神崩壊を避ける為に、テントを振り返ればそこには相棒ムサシの姿!
ムサシを愛で、紅茶を飲み、優雅なリラックス気分で父を書いてやろうではないか!
「いざ勝負! 我が勇姿をその目に刻むがいい!」
カチッ
ドゴォォォォン!!
このヒト何しに来たの?
「なんの、これしきの爆発!」
「おや生きてましたか」
頭上に小次郎を乗せたムサシを愛でながら紅茶を飲むオペ子の前で、ラテンはむくりと起き上がった。
その時、彼は『父』の足下で転がっている由真に気がつく。
「様子がおかしいな…まさか崩壊したのか!?」
ならばすぐにこれを食するのだ!
取り出したのは、屑鉄アイテム『チョコレート壊』。
由真の口にぶち込み。
「傷は深いぞ! ぐったりしろ! きれいな川とお花畑は見えているか!? ……おのれサーバント、よくも仲間を! 許さんぞ!」
ポイッと由真を放り捨て、クーゲルLv3を握りしめてカッと『父』を睨みつけるラテン@ゲシュタルト
「――くっ、ふふ…どうやらここまでのようだな…だが! 私はサーバントには屈せぬぞ!」
徐に走り出し、スゴイタカイビルの屋上に向かうラテン。
「私は…私は! サラダバー!」
登ってきた勢いのまま屋上からダイブ。ジェロニモー!
※劇中の登場人物たちは非常に高度な訓練を受けています。スゴイタカイビルから飛び降りる行為は大変危険ですので、視聴者の皆様は絶対にマネをしないでください。
びしゃりと地面にスイカが散らばる。
「後は…任せたぞ…」
ぱたり。
救世主ェ…
●
神削きゅん。
「ん?」
もう神削きゅんしか残ってないよ? 頑張ろ? アルミサッキ舐めて頑張ろ?
「サルミア●キな」
仕方ない、と。神削は覚悟を決めて飴をぱくり。
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一見すると、画面表示へのテロにしか思えないこの書き方。だが実は、『1文字ごとに改行という別のリズムを挟む事で、ゲシュタルトを緩和する』という神削きゅんのスーパー頭脳プレイ(だったりそうじゃなかったり)。
加えて、アルミサッk――
「サルミア●キ」
――サルミア●キによるドーピングもあって、見事100文字達成。
『父』消滅。
「ま、満身創痍ではありますが……やりました! これで父の日は守られましたよ!」
顔の中心が蹄型に凹んだままの由真。
「早く家に帰って旦那様に父の日の贈り物を用意しませんとね」
既婚・養子持ちの藤花。
「恐ろしい敵だったぜ……」
玲治は額から流れる汗を袖で拭きながら、手は父の字(というかウサギ)を書き続けていた。
●
仕事終わりにふとラーメンが食べたくなって、1人寄り道をしたとしお。だったのだが、
「おじさん。このラーメン、父入ってますよ」
「…にーちゃん、何言ってんだ?」
ブツブツと呟くとしお。見ると、両目の形が『父』の字になっている。治ってねえ。
「いや入ってますって絶対、ほら。あっ、おじさんの後ろにも父が! 危ない!」
としおは厨房の中に乱入し、父…もといガス管のバルブを掴む。
おじさんを守る為、そのままバルブを力任せにもぎ取り――……
『ラーメン屋で爆発事故。犯人は久遠ヶ原の学生か――違うんです父が居たんです本当なんです――』
そんな見出しの記事が、その日の夕刊の隅を飾っていた。